患者位置決め画像形成装置を含むハドロン治療装置及びハドロン治療に使用される情報を求める方法
本発明は、回転ガントリー(20)を備えたハドロン治療装置において患者の位置決めをするための患者位置決め画像形成装置に係わる。患者位置決め画像形成装置は、画像形成ビーム源(121)を連結するように配置された伸展式アームまたは折り畳み式旋回アーム(12)を具備する回転構造(10)と、画像形成ビームレシーバ(141)を支持するように配置された伸展式構造または折り畳み式旋回構造(14)を含む。回転構造(10)は、患者がハドロン治療装置のアイソセンターに対するオフセット位置に位置決めされている間に患者のCBCTショットを撮るために配置されており、オフセット位置は、回転ガントリー(20)の回転軸の方向にある。回転構造(10)は、回転ガントリー(20)が固定されたままである間、且つ伸展式または旋回アーム(12)及び伸展式または旋回構造(14)が伸展した、または折り畳まれていない位置にある間、回転するように配置されている。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、患者位置決め画像形成装置と、ハドロン治療装置において患者の位置決めをする方法に係わる。
【公知技術】
【0002】
患者の体内に悪性腫瘍が発見されると、腫瘍は先ず、さらなる検査のために可視化される必要がある。これは、例えば、(第3世代)3Dコンピュータ断層撮影(CT)走査システムで行うことができる。このようにして収集された情報に基づいて臨床治療計画が作成される。その後、治療装置による実際の治療が開始される。
【0003】
公知のハドロン治療装置では、例えば、陽子線治療において使用されるのと同様に、サイクロトロンのような加速装置によって加速された治療放射線ビームが、患者が治療用ベッドなどのような施術台に固定されている治療室へ誘導される。照射の前に、患者の体の問題部位が治療放射線ビームと一直線上に位置するように、施術台は、位置決めシステムによって正確に位置決めされなければならない。
【0004】
照射は幾つもの異なる角度から行われることが多い。そのとき、放射線源を回転させるのに、ガントリー・システムが使用される。ハドロン治療の場合、典型的には、例えば、陽子、中性子またはα粒子または炭素イオンのようなハドロン粒子をノズルから患者の特定のターゲット部位、例えば、治療すべき腫瘍に向かって放射する。腫瘍塊は、アイソセンターと呼称される特定の基準点との関係で定義される。アイソセンターはノズルビーム進路の軸がガントリーの回転軸と交差する点である。治療の工程を通じて、アイソセンターは不変である。
【0005】
治療計画の段階で設定されたターゲットだけにビームが照射されるように、患者が治療装置に対して正確に位置決めされる必要がある。さもないと、ビームが患者の体内の健康な細胞を損傷する恐れがある。従って、治療に先立つ正確な患者の位置決めは施術の成功にとって極めて重要である。
【0006】
典型的には、治療を受ける患者は、定期的に治療を受けることになり、長期間に亘ってターゲットに繰返し照射が行われる。従って、毎回の治療に先立って、正しい患者の位置決めが必要とされる。
【0007】
既に述べたように、治療放射線を照射する直前にターゲット塊の正確な位置を確認する工程が決定的に重要である。治療装置のアイソセンターに対して患者を正確に位置決めするため、先ず患者の体内の1つまたは2つ以上の目印を基準にしてターゲットの位置を決定する。この操作はPET−スキャナのような外部の画像診断システムで行われる。標準的な患者位置決めにおいて、目印は患者の骨格上の点から成り、ターゲットの位置はこれらの目印を基準にして決定される。次いで、治療装置における患者保定装置(positioner)のベッド上に患者を位置させる。ラジオグラフ、レーザー光線及び/または前記目印を示す能力を有する他の位置決め補助を利用して患者の位置を決定するいわゆる‘セットアップ’位置へ患者保定装置を移動させる。必要に応じて修正する。次いで、患者保定装置を利用して患者を順次治療位置へ移動させる。セットアップ位置においては、患者はアイソセンターまたはその近傍に位置することになる。このアプローチは、飽くまでもCTスキャンの時点と毎回の治療日と間で腫瘍が動いていないことを前提としている。
【0008】
この制約はコーン・ビーム・コンピュータ断層撮影(CBCT)によって取り除かれる。CBCTを利用すれば、療法士は患者の体内の3D画像を再構成することができる。画像で、骨格だけでなく軟組織をも観察することができる。療法士は患者体内の任意の部位の手動または自動3Dマッチングを行うことによって患者の位置を調整することができる。また、療法士が治療に先立つCTスキャンと治療期間中の腫瘍の変化との差異をモニターするのを助けることにもなる。ハドロン治療は現時点では最も正確な放射線治療技術であるから、療法士はより良い患者位置決めのためにCBCT装置を最大限活用することができる。
【0009】
ハドロン治療の環境においてCBCT画像を得る解決方法の一例を図1に示す。このようなCBCTシステムにおけるデータ取得手段は、ノズルに配置されたX−線管と、フラット・パネルとから成る。これら2つの装置が患者の両側に配置され、患者の周りを可能な限り、理論上は360°に亘って回転し、その間、連続X−線ショットが撮られる。しかし、X−線管とフラット・パネルがビーム軸に対して90°の角度となるようにガントリー上に配置される従来の放射線治療と比較して、プロトン治療では、別の幾つかの制約が図1のような構成において確認されている。即ち:
− 側部の半陰影(lateral penumbra)をできるだけ少なくするため、開口(及びひいては開口を支持するノズル)をできる限り患者の近くにする。但し、患者保定装置の移動と開口/レンジ補正器の交換を可能にする距離が確保されるに過ぎない。ノズルと患者のベッドとの間でX−線管またはフラット・パネルを移動させることはできない。
− ノズルの内側に位置するX−線管は、従来の放射線治療界と同じジオメトリー(即ち、X−線管、患者及びフラット・パネルの間の距離)を有するには、アイソセンターから遠く離れ過ぎている。ノズル・フレーム及び開口支持体のために、ノズルの内側に位置するX−線管を使用する視野は小さすぎる。
− 画像を得るための重いガントリー構造のフル回転は非実用的と感じられる。
【0010】
CBCTシステムを治療室内に配置するという解決方法も考えられるが、当然の結果として治療室のスペースがその分狭くなり、療法士にとっては不便である。
【0011】
特許文献US2004/024300−A1には、1つまたは2つ以上の放射線源と対向するように多重エネルギー画像形成装置を位置決めする方法と装置が開示されている。高エネルギーのX−線照射線を発生させるためのMVエネルギー範囲の電子ビームを伝播することができる治療用照射源と、診断用のKV X−線照射源とを別々のアーム(ガントリー)に取付ければよく、そこでは、一方のアームが他方のアームの内側に添って配置されている。2つのアームは共通の旋回軸を有し、互いに独立して旋回することができる。また、内側アームは位置決めと間隔調整のため診断用放射線源を伸ばしたり、引っ込めたりすることができる。この文献においては、ターゲット塊の3次元画像作成に必要な、異なる角度での多重X−線画像を得るために、診断用放射線源と治療用放射線源との間の間隔が維持されるように両アーム(ガントリー)を一緒に回転させることが必要である。
【0012】
患者に安心感を与えるためには、できる限り短時間で患者位置決めのための画像を得ることが望ましい。1分が位置決め画像を撮るのに費やす許容時間と考えられ、超過するべきでない。
【発明の開示】
【発明の目的】
【0013】
本発明は、先行技術の解決法の幾つかの問題点を克服できるハドロン治療装置における患者位置決めのための患者位置決め画像形成装置及び方法を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、ハドロン治療装置において患者を位置決め用患者位置決め画像形成装置に係わる。ハドロン治療装置には回転ガントリーが設けられている。患者位置決めシステムは、画像形成ビーム源を連結するように配置された伸展式アームまたは折り畳み式旋回アームを具備する回転構造と、画像形成ビームレシーバを運搬するために配置された伸展式構造または折り畳み式旋回構造を含む。回転構造は、患者がハドロン治療装置のアイソセンターに対するオフセット位置(回転ガントリーの回転軸の方向にずれた)に置かれている間に患者のCBCTショットを撮るために配置されており、それによって回転構造は、回転ガントリーが固定されたままである間、且つ伸展式または旋回アーム及び伸展式または旋回構造が伸展した、または折り畳まれていない位置にある間、回転するように配置されている。
【0015】
好ましい実施例では、画像形成ビーム源が画像形成X−線照射源を含む。画像形成ビームレシーバはフラットな画像パネルであることが好ましい。有利には、回転構造に旋回アームが設けられ、旋回アームにさらに、旋回アームが折り畳まれた位置にある時にX−線ビームが旋回アームを通過することを可能にする透孔が設けられている。
【0016】
有利な実施例では、旋回アームと旋回構造が異なる長さを有する。これによって位置決め装置を円滑に折り畳むことが可能になる。
【0017】
他の実施例では、回転構造がさらに少なくとも1つの凹部を有する。
【0018】
特定の実施例では、回転構造及び回転ガントリーが同じ回転軸を有する。
【0019】
最も有利には、回転構造が回転ガントリーの後方に取付けられる。伸展式支持アームを介して後方に取付けられてもよい。
【0020】
有利な実施例では、患者位置決め画像形成装置が、さらに、フラット・パネルが取付けられた入れ子構造を含み、前記構造が前記凹部の上を移動可能である。
【0021】
もう一つの目的において、本発明は、上述のハドロンビーム治療に使用される患者位置決め情報を求める方法にも係わる。それは以下のステップを含む。:
− 患者を治療位置近くのベッド上に置く、
− 上述のハドロン治療装置に含まれる患者位置決め画像形成装置の旋回構造及び旋回アームを展開するか、または伸展式構造及び伸展式アームを伸展させる、
− 患者保定装置を利用して回転ガントリーの回転軸の方向におけるオフセット位置にベッドの位置を合わせる、
− 回転構造の回転を引き起こして連続するCBCTショットを得る、
− 連続するCBCTショットに基づいて患者の3D画像を算出する、
− この3D画像を治療計画システムからもたらされた画像と比較して患者保定装置のための補正ベクトルを計算する、
− 患者保定装置を補正ベクトルに基づいて補正された治療位置へ移動させる。
【0022】
他の目的において、本発明は、患者の位置または呼吸サイクルに関する情報を求める方法に係わり、前記情報はハドロンビーム治療に利用される。方法は以下のステップを含む:
− 患者を治療位置近くのベッド上に置く、
− 上述のハドロン治療装置に含まれる患者位置決め画像形成装置の前記旋回構造及び前記旋回アームを展開するか、または前記伸展式構造及び伸展式アームを伸展させる、
−伸展式支持アームを伸展させて患者位置決め画像形成装置を前記ハドロン治療装置のアイソセンターに移動させる、
−ラジオグラフィまたはフルオロスコピーを利用して患者の画像を得て患者の位置または患者の呼吸サイクルに関する前記情報を求める。
【発明の詳細な説明】
【0023】
本発明は、ハドロン治療装置において患者の位置決めをするための患者位置決め画像形成装置及び方法を開示する。上述した種々の制約を克服するために、本発明による解決策は、はビーム治療装置のガントリーの内側に小型軽量の回転構造を含む患者位置決め画像形成システムを提供することにある。これには幾つかの利点がある。:
− 従来の放射線治療(RT)の場合と同じ間隔でX−線管とフラット・パネルを導入するのに充分なスペースが得られる。
− 従来のRTの場合と同様に全視野が得られる。
− 直交関係にあるフラット・パネルから完全に独立したシステムが得られる。直交方向のショットを撮る際に何かを回転させる必要がない。
− 治療室スペースは使用されないから、療法士が十分に利用可能なままである。
− ガントリー・ローリング・フロアのためのスペースが部屋が利用可能なままであり、CBCTの軽量構造が回転中、そのフロアを移動させる必要がない。
− X−線ショットを撮る間、ガントリーを回転させる必要が無い。
【0024】
図2及び3に示す患者位置決め画像形成装置は画像形成ビーム源121を連結することができる旋回アーム12を具備する軽量の回転構造10、及び画像形成ビームレシーバ141を運搬するために配置された旋回構造14または引込式構造を含む。典型的には、画像形成ビーム源121は図2に示すように画像形成X−線照射源からなる。
装置のジオメトリーは、構造10の後方に位置し、ガントリーの回転軸に沿った方向に向けられた画像形成X−線照射源の導入が可能なようにコーン・ビーム構造の中心を空の状態に保つことを可能にする。透孔122は、このX−線ビームが回転構造または折り畳まれた状態の旋回アーム12を通過することを可能にする。
旋回アーム12及び旋回構造14は互いに異なる長さを有するから、それらは、図3に示すように、円滑に折り畳まれることができる。しかし、旋回アーム12及び旋回構造14を引っ込める方法は、例えば、横に並んで保持するアームなど、ほかにも考えられる。
図2及び3はまた、フラット・パネルが取り付けられている入れ子構造の通過を可能にする2つの凹部30を示す。
【0025】
典型的な実施例では、回転構造がハドロン治療装置の回転ガントリーの後方に取り付けられる。回転ガントリーと回転構造は、有利には、同じ回転軸を有する。
【0026】
図4A及び4Bは、ハドロン治療装置のガントリーに取り付けられた患者位置決め画像形成装置を示す。それぞれ(回転構造が後方にある)正面図と(ハドロン治療装置のガントリーを通して見た)頂面図である。図4Aは、折り畳まれていない状態の回転構造を示し、図4Bは、折り畳まれた休止位置にある回転構造を示す。画像形成ビームレシーバ141はX線管構造121の上方で折り畳まれている。図4Aは、患者保定装置(即ち、3つの並進運動の、及び3つの回転運動の自由度に沿ってベッド28を移動させることができる機械装置)が患者をガントリー20の後方のいわゆる‘CBCTセットアップ位置’へ移動させたときのベッド28上に横たわっている患者を示す。患者位置決め画像形成装置を折り畳まれていない状態にあり、画像形成ビーム源121及びフラット・パネル・イメージャ141がCBCT画像を得るために使用される。図4Bでは、旋回アーム12及び旋回構造14が折り畳まれた状態にあり、患者はセットアップ位置または治療位置にあってノズル25からの治療用ビームを照射される。尚、CBCT画像が得られる位置であるCBCTセットアップ位置(図4A)と、図4Bの治療位置との間にずれ(offset)があることがわかる。また、ガントリー20の後方に取り付けられた場合の位置決め画像形成装置の最低位はフロアのレベルよりもまだ上方にあることがわかる。従って、ガントリー・フロアを所定の位置に置いたまま回転構造10をフル回転させることができる。
【0027】
特定の実施例では、フラット・パネル・イメージャは横長であり、194ミクリンピクセルピッチの39.7x29.8cm2の有効エリア及び2048x1536ピクセルの画素数を有する。最大解像モードでは7.5fpsのフレーム・レートで機能し、2x2ビン分割モードでは30fpsのフレーム・レートで機能することができるが、この場合の画素数は1024x768pixel2に下がる。
例えば、フラット・パネル・イメージャとして、カリフォルニア州パロ・アルト市に所在のヴァリアンメディカルシステムズ(VARIAN MEDICAL SYSTEMS)社から商品名パックススキャン(PAXSCAN)4030Aで入手可能なアモルファス・シリコン(A−SI)イメージャを使用することができる。パックススキャン(PAXSCAN)4030A検出器はそれぞれ40cmx30cmである。これらの検出器は、コントラスト解像度及びダイナミック・レンジを改善するための、米国特許第6486808号明細書に記載されているような、動的制御可能な信号利得を備えたプリアンプ回路を含む信号処理回路に接続されている。
【0028】
本発明の解決策はまた、いわゆるガントリー・ローリング・フロア、即ち、ガントリーの回転中、水平位置のままであるフロアを備えた治療装置に組み入れられるのに適用している。
【0029】
図5は、回転構造10が伸展式支持アーム50に取り付けられた特定の実施形態を示す。伸展式支持アーム50は複数の位置設定が可能である。図5Aに示されているように、画像形成ビーム源121及び画像形成ビームレシーバ141が非オフセット位置、即ち、アイソセンターにおいて使用されることが可能である。画像形成ビームレシーバ及び画像形成ビーム源は、下記の異なる2通りの様式でアイソセンターにおいて使用されてもよい。:
− 回転構造の回転を伴わない。画像形成システムは、例えば、骨格上の目印に基づいて患者の位置をチェックするため、患者のスチール・ラジオグラフを撮るために利用されてもよい。あるいは、画像形成システムがフルオロスコピーのために利用されてもよい。フルオロスコピーの場合、患者の動作をモニターするため、例えば、患者の呼吸サイクルをモニターするために連続するラジオグラフが撮られる。
− 回転構造の回転を伴う。患者の周りを画像形成ビームレシーバと画像形成ビーム源が回転して連続する射影を得る。コーン・ビーム・コンピュータ断層撮影と異なり、幾何学的なノズルとの衝突のために、患者の周りを360°回転させることは不可能である。記録できるのは円弧に沿った部分的な射影だけである。例えば、デジタル断層画像を利用したこの不完全なデータ・セットから、患者の3D構造を再構成するためにアルゴリズムが利用されてもよい。
あるいは(図5に示す)、伸展式または旋回アーム12だけが引っ込められてもよい。この場合、画像形成ビームレシーバがノズルにおけるX−線管と併用されてもよい。
【0030】
他の好ましい実施形態では、患者位置決め画像形成システムが折り畳み式旋回アームではなく、伸縮可能なアームを有していてもよい。同様に、折り畳み式旋回構造を伸展式構造に代えてもよい。図6Aは、引っ込んだ位置にある回転構造10を示す。図6Bは、伸展した位置にある回転構造10を示す。図6Bでは、画像形成ビームレシーバ141お画像形成ビーム源121とが共に伸展している。回転構造は図6Aに示された位置に対して45°だけ半時針方向に回転している。図6Cは、伸展した位置にある回転構造を示す。図6Bに加えて、画像形成ビームレシーバ141が、画像形成容積を増大させるために、回転構造及び画像形成ビーム源の回転軸によって画定される平面と直交する方向にシフトしている。図6Dは、本発明によってもたらされる重要な効果を示す。引っ込んだ位置にある回転構造を備えた、別の画像形成技術を提供するもう一つの画像形成構造が伸展されてもよいことを示す。換言すると、図6Dは、回転構造10が他の画像形成技術の利用に適していることを例証している。図6Eでは、回転構造が再び伸展している。伸展式支持アーム50も伸展した位置にある。この状態では、伸展式構造上の画像形成ビームレシーバと伸展式アーム上の画像形成ビーム源を、上述したように非オフセット位置において使用することができる。最後に、図6Fは、引っ込んだ位置にある回転構造を、引っ込んだ位置にあるロ−リング・フロアとともに示す。
【0031】
本発明は、ハドロン治療セッションを開始する前に患者位置決めに関する情報を求める方法にも係わる。
【0032】
最初に、‘CBCTセットアップ位置’という概念を明らかにしなければならない。この位置の狙いは従来の‘セットアップ位置’と全く同じである。それら2つの位置の間の唯一の違いは、ガントリー軸方向の所与のずれ(offset)である。典型的な距離は、現行の患者位置決め装置で得られる850−1000 MMの範囲である。
【0033】
(CBCTを利用して)位置補正値が算出されると、療法士は、患者位置決め装置を利用して、ガントリー軸方向における逆の所与のずれ(offset)に加えて所要の並進及びアイソセントリックな回転を引き起こす。方法は下記のステップを含む。:
1.患者を治療位置近くのベッド(28)上に載せる、
2.上述の患者位置決め画像形成装置の旋回アーム12及び旋回構造14を展開する、
3.患者保定装置を利用して回転ガントリーの回転軸の方向におけるオフセット位置にベッドの位置を合わせる、
4.患者位置決め画像形成装置の回転構造(10)の回転を引き起こして連続するCBCTショットを得る、
5.患者の3D画像を算出する、
6.3D画像を治療計画システム(TPS)からもたらされた画像と(手動または自動で)比較して患者保定装置のための補正ベクトルを計算する、
7.患者保定装置を前記補正ベクトルに基づいて補正された位置へ移動させる。
尚、
・‘CBCTセットアップ位置’(即ち、オフセット位置)へ移動する前、
・‘CBCTセットアップ位置’と治療位置との間、
・患者が治療位置に置かれて、且つ治療が開始される前
のいずれの時点においても、療法士は1または2以上のX−線ショットを撮ってそれらを対応するDRRと比較して、位置合わせのプロセスをチェックし、必要に応じて対策を講ずることができる。
【0034】
回転構造10が伸展式支持アーム50に取り付けられている実施形態は、有利には、ハドロンビーム治療に利用される患者の位置または患者の呼吸サイクルの相を求める方法に利用され得る。この方法は下記のステップを含む。:
− 患者を治療位置近くのベッド(28)上に置く、
− 上記患者位置決め画像形成装置の前記旋回構造及び前記旋回アームを展開するか、または伸展式構造及び伸展式アームを伸展させる、
− 伸展式支持アーム(50)を伸展させて患者位置決め画像形成装置をアイソセンターに移動させる、
− ラジオグラフィまたはフルオロスコピーを利用して患者の位置または患者の呼吸サイクルに関する情報を求める。
【0035】
本発明の設計及び方法を利用すれば、回転ガントリー(20)を定位置に維持したまま回転構造(10)を回転させることによって種々の角度から連続するCBCTショットを得ることができる。ハドロン治療装置で使用される回転ガントリー(20)は重い装置であり、画像取得に当てられた時間内では容易に動かすことはできない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】最先端のCBCT画像取得システムを示す。
【図2】可動アームが折り畳まれていない状態にある本発明の患者位置決め画像形成装置を示す。
【図3】可動アームが折り畳まれた状態にある本発明の患者位置決め画像形成装置を示す。
【図4a】本発明の折り畳まれていない患者位置決め画像形成装置を含む治療装置とCBCTセットアップ位置(オフセット位置)にある患者の正面図及び頂面図を示す。
【図4b】図4Bは、折り畳まれた患者位置決め画像形成装置を含む治療装置と治療位置にある患者の正面図及び頂面図を示す。
【図5】回転構造が伸展式支持アームに取付けられている実施例を示す。
【図6】伸展式アーム及び伸展式構造を備えた実施例を示す。
【発明の分野】
【0001】
本発明は、患者位置決め画像形成装置と、ハドロン治療装置において患者の位置決めをする方法に係わる。
【公知技術】
【0002】
患者の体内に悪性腫瘍が発見されると、腫瘍は先ず、さらなる検査のために可視化される必要がある。これは、例えば、(第3世代)3Dコンピュータ断層撮影(CT)走査システムで行うことができる。このようにして収集された情報に基づいて臨床治療計画が作成される。その後、治療装置による実際の治療が開始される。
【0003】
公知のハドロン治療装置では、例えば、陽子線治療において使用されるのと同様に、サイクロトロンのような加速装置によって加速された治療放射線ビームが、患者が治療用ベッドなどのような施術台に固定されている治療室へ誘導される。照射の前に、患者の体の問題部位が治療放射線ビームと一直線上に位置するように、施術台は、位置決めシステムによって正確に位置決めされなければならない。
【0004】
照射は幾つもの異なる角度から行われることが多い。そのとき、放射線源を回転させるのに、ガントリー・システムが使用される。ハドロン治療の場合、典型的には、例えば、陽子、中性子またはα粒子または炭素イオンのようなハドロン粒子をノズルから患者の特定のターゲット部位、例えば、治療すべき腫瘍に向かって放射する。腫瘍塊は、アイソセンターと呼称される特定の基準点との関係で定義される。アイソセンターはノズルビーム進路の軸がガントリーの回転軸と交差する点である。治療の工程を通じて、アイソセンターは不変である。
【0005】
治療計画の段階で設定されたターゲットだけにビームが照射されるように、患者が治療装置に対して正確に位置決めされる必要がある。さもないと、ビームが患者の体内の健康な細胞を損傷する恐れがある。従って、治療に先立つ正確な患者の位置決めは施術の成功にとって極めて重要である。
【0006】
典型的には、治療を受ける患者は、定期的に治療を受けることになり、長期間に亘ってターゲットに繰返し照射が行われる。従って、毎回の治療に先立って、正しい患者の位置決めが必要とされる。
【0007】
既に述べたように、治療放射線を照射する直前にターゲット塊の正確な位置を確認する工程が決定的に重要である。治療装置のアイソセンターに対して患者を正確に位置決めするため、先ず患者の体内の1つまたは2つ以上の目印を基準にしてターゲットの位置を決定する。この操作はPET−スキャナのような外部の画像診断システムで行われる。標準的な患者位置決めにおいて、目印は患者の骨格上の点から成り、ターゲットの位置はこれらの目印を基準にして決定される。次いで、治療装置における患者保定装置(positioner)のベッド上に患者を位置させる。ラジオグラフ、レーザー光線及び/または前記目印を示す能力を有する他の位置決め補助を利用して患者の位置を決定するいわゆる‘セットアップ’位置へ患者保定装置を移動させる。必要に応じて修正する。次いで、患者保定装置を利用して患者を順次治療位置へ移動させる。セットアップ位置においては、患者はアイソセンターまたはその近傍に位置することになる。このアプローチは、飽くまでもCTスキャンの時点と毎回の治療日と間で腫瘍が動いていないことを前提としている。
【0008】
この制約はコーン・ビーム・コンピュータ断層撮影(CBCT)によって取り除かれる。CBCTを利用すれば、療法士は患者の体内の3D画像を再構成することができる。画像で、骨格だけでなく軟組織をも観察することができる。療法士は患者体内の任意の部位の手動または自動3Dマッチングを行うことによって患者の位置を調整することができる。また、療法士が治療に先立つCTスキャンと治療期間中の腫瘍の変化との差異をモニターするのを助けることにもなる。ハドロン治療は現時点では最も正確な放射線治療技術であるから、療法士はより良い患者位置決めのためにCBCT装置を最大限活用することができる。
【0009】
ハドロン治療の環境においてCBCT画像を得る解決方法の一例を図1に示す。このようなCBCTシステムにおけるデータ取得手段は、ノズルに配置されたX−線管と、フラット・パネルとから成る。これら2つの装置が患者の両側に配置され、患者の周りを可能な限り、理論上は360°に亘って回転し、その間、連続X−線ショットが撮られる。しかし、X−線管とフラット・パネルがビーム軸に対して90°の角度となるようにガントリー上に配置される従来の放射線治療と比較して、プロトン治療では、別の幾つかの制約が図1のような構成において確認されている。即ち:
− 側部の半陰影(lateral penumbra)をできるだけ少なくするため、開口(及びひいては開口を支持するノズル)をできる限り患者の近くにする。但し、患者保定装置の移動と開口/レンジ補正器の交換を可能にする距離が確保されるに過ぎない。ノズルと患者のベッドとの間でX−線管またはフラット・パネルを移動させることはできない。
− ノズルの内側に位置するX−線管は、従来の放射線治療界と同じジオメトリー(即ち、X−線管、患者及びフラット・パネルの間の距離)を有するには、アイソセンターから遠く離れ過ぎている。ノズル・フレーム及び開口支持体のために、ノズルの内側に位置するX−線管を使用する視野は小さすぎる。
− 画像を得るための重いガントリー構造のフル回転は非実用的と感じられる。
【0010】
CBCTシステムを治療室内に配置するという解決方法も考えられるが、当然の結果として治療室のスペースがその分狭くなり、療法士にとっては不便である。
【0011】
特許文献US2004/024300−A1には、1つまたは2つ以上の放射線源と対向するように多重エネルギー画像形成装置を位置決めする方法と装置が開示されている。高エネルギーのX−線照射線を発生させるためのMVエネルギー範囲の電子ビームを伝播することができる治療用照射源と、診断用のKV X−線照射源とを別々のアーム(ガントリー)に取付ければよく、そこでは、一方のアームが他方のアームの内側に添って配置されている。2つのアームは共通の旋回軸を有し、互いに独立して旋回することができる。また、内側アームは位置決めと間隔調整のため診断用放射線源を伸ばしたり、引っ込めたりすることができる。この文献においては、ターゲット塊の3次元画像作成に必要な、異なる角度での多重X−線画像を得るために、診断用放射線源と治療用放射線源との間の間隔が維持されるように両アーム(ガントリー)を一緒に回転させることが必要である。
【0012】
患者に安心感を与えるためには、できる限り短時間で患者位置決めのための画像を得ることが望ましい。1分が位置決め画像を撮るのに費やす許容時間と考えられ、超過するべきでない。
【発明の開示】
【発明の目的】
【0013】
本発明は、先行技術の解決法の幾つかの問題点を克服できるハドロン治療装置における患者位置決めのための患者位置決め画像形成装置及び方法を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、ハドロン治療装置において患者を位置決め用患者位置決め画像形成装置に係わる。ハドロン治療装置には回転ガントリーが設けられている。患者位置決めシステムは、画像形成ビーム源を連結するように配置された伸展式アームまたは折り畳み式旋回アームを具備する回転構造と、画像形成ビームレシーバを運搬するために配置された伸展式構造または折り畳み式旋回構造を含む。回転構造は、患者がハドロン治療装置のアイソセンターに対するオフセット位置(回転ガントリーの回転軸の方向にずれた)に置かれている間に患者のCBCTショットを撮るために配置されており、それによって回転構造は、回転ガントリーが固定されたままである間、且つ伸展式または旋回アーム及び伸展式または旋回構造が伸展した、または折り畳まれていない位置にある間、回転するように配置されている。
【0015】
好ましい実施例では、画像形成ビーム源が画像形成X−線照射源を含む。画像形成ビームレシーバはフラットな画像パネルであることが好ましい。有利には、回転構造に旋回アームが設けられ、旋回アームにさらに、旋回アームが折り畳まれた位置にある時にX−線ビームが旋回アームを通過することを可能にする透孔が設けられている。
【0016】
有利な実施例では、旋回アームと旋回構造が異なる長さを有する。これによって位置決め装置を円滑に折り畳むことが可能になる。
【0017】
他の実施例では、回転構造がさらに少なくとも1つの凹部を有する。
【0018】
特定の実施例では、回転構造及び回転ガントリーが同じ回転軸を有する。
【0019】
最も有利には、回転構造が回転ガントリーの後方に取付けられる。伸展式支持アームを介して後方に取付けられてもよい。
【0020】
有利な実施例では、患者位置決め画像形成装置が、さらに、フラット・パネルが取付けられた入れ子構造を含み、前記構造が前記凹部の上を移動可能である。
【0021】
もう一つの目的において、本発明は、上述のハドロンビーム治療に使用される患者位置決め情報を求める方法にも係わる。それは以下のステップを含む。:
− 患者を治療位置近くのベッド上に置く、
− 上述のハドロン治療装置に含まれる患者位置決め画像形成装置の旋回構造及び旋回アームを展開するか、または伸展式構造及び伸展式アームを伸展させる、
− 患者保定装置を利用して回転ガントリーの回転軸の方向におけるオフセット位置にベッドの位置を合わせる、
− 回転構造の回転を引き起こして連続するCBCTショットを得る、
− 連続するCBCTショットに基づいて患者の3D画像を算出する、
− この3D画像を治療計画システムからもたらされた画像と比較して患者保定装置のための補正ベクトルを計算する、
− 患者保定装置を補正ベクトルに基づいて補正された治療位置へ移動させる。
【0022】
他の目的において、本発明は、患者の位置または呼吸サイクルに関する情報を求める方法に係わり、前記情報はハドロンビーム治療に利用される。方法は以下のステップを含む:
− 患者を治療位置近くのベッド上に置く、
− 上述のハドロン治療装置に含まれる患者位置決め画像形成装置の前記旋回構造及び前記旋回アームを展開するか、または前記伸展式構造及び伸展式アームを伸展させる、
−伸展式支持アームを伸展させて患者位置決め画像形成装置を前記ハドロン治療装置のアイソセンターに移動させる、
−ラジオグラフィまたはフルオロスコピーを利用して患者の画像を得て患者の位置または患者の呼吸サイクルに関する前記情報を求める。
【発明の詳細な説明】
【0023】
本発明は、ハドロン治療装置において患者の位置決めをするための患者位置決め画像形成装置及び方法を開示する。上述した種々の制約を克服するために、本発明による解決策は、はビーム治療装置のガントリーの内側に小型軽量の回転構造を含む患者位置決め画像形成システムを提供することにある。これには幾つかの利点がある。:
− 従来の放射線治療(RT)の場合と同じ間隔でX−線管とフラット・パネルを導入するのに充分なスペースが得られる。
− 従来のRTの場合と同様に全視野が得られる。
− 直交関係にあるフラット・パネルから完全に独立したシステムが得られる。直交方向のショットを撮る際に何かを回転させる必要がない。
− 治療室スペースは使用されないから、療法士が十分に利用可能なままである。
− ガントリー・ローリング・フロアのためのスペースが部屋が利用可能なままであり、CBCTの軽量構造が回転中、そのフロアを移動させる必要がない。
− X−線ショットを撮る間、ガントリーを回転させる必要が無い。
【0024】
図2及び3に示す患者位置決め画像形成装置は画像形成ビーム源121を連結することができる旋回アーム12を具備する軽量の回転構造10、及び画像形成ビームレシーバ141を運搬するために配置された旋回構造14または引込式構造を含む。典型的には、画像形成ビーム源121は図2に示すように画像形成X−線照射源からなる。
装置のジオメトリーは、構造10の後方に位置し、ガントリーの回転軸に沿った方向に向けられた画像形成X−線照射源の導入が可能なようにコーン・ビーム構造の中心を空の状態に保つことを可能にする。透孔122は、このX−線ビームが回転構造または折り畳まれた状態の旋回アーム12を通過することを可能にする。
旋回アーム12及び旋回構造14は互いに異なる長さを有するから、それらは、図3に示すように、円滑に折り畳まれることができる。しかし、旋回アーム12及び旋回構造14を引っ込める方法は、例えば、横に並んで保持するアームなど、ほかにも考えられる。
図2及び3はまた、フラット・パネルが取り付けられている入れ子構造の通過を可能にする2つの凹部30を示す。
【0025】
典型的な実施例では、回転構造がハドロン治療装置の回転ガントリーの後方に取り付けられる。回転ガントリーと回転構造は、有利には、同じ回転軸を有する。
【0026】
図4A及び4Bは、ハドロン治療装置のガントリーに取り付けられた患者位置決め画像形成装置を示す。それぞれ(回転構造が後方にある)正面図と(ハドロン治療装置のガントリーを通して見た)頂面図である。図4Aは、折り畳まれていない状態の回転構造を示し、図4Bは、折り畳まれた休止位置にある回転構造を示す。画像形成ビームレシーバ141はX線管構造121の上方で折り畳まれている。図4Aは、患者保定装置(即ち、3つの並進運動の、及び3つの回転運動の自由度に沿ってベッド28を移動させることができる機械装置)が患者をガントリー20の後方のいわゆる‘CBCTセットアップ位置’へ移動させたときのベッド28上に横たわっている患者を示す。患者位置決め画像形成装置を折り畳まれていない状態にあり、画像形成ビーム源121及びフラット・パネル・イメージャ141がCBCT画像を得るために使用される。図4Bでは、旋回アーム12及び旋回構造14が折り畳まれた状態にあり、患者はセットアップ位置または治療位置にあってノズル25からの治療用ビームを照射される。尚、CBCT画像が得られる位置であるCBCTセットアップ位置(図4A)と、図4Bの治療位置との間にずれ(offset)があることがわかる。また、ガントリー20の後方に取り付けられた場合の位置決め画像形成装置の最低位はフロアのレベルよりもまだ上方にあることがわかる。従って、ガントリー・フロアを所定の位置に置いたまま回転構造10をフル回転させることができる。
【0027】
特定の実施例では、フラット・パネル・イメージャは横長であり、194ミクリンピクセルピッチの39.7x29.8cm2の有効エリア及び2048x1536ピクセルの画素数を有する。最大解像モードでは7.5fpsのフレーム・レートで機能し、2x2ビン分割モードでは30fpsのフレーム・レートで機能することができるが、この場合の画素数は1024x768pixel2に下がる。
例えば、フラット・パネル・イメージャとして、カリフォルニア州パロ・アルト市に所在のヴァリアンメディカルシステムズ(VARIAN MEDICAL SYSTEMS)社から商品名パックススキャン(PAXSCAN)4030Aで入手可能なアモルファス・シリコン(A−SI)イメージャを使用することができる。パックススキャン(PAXSCAN)4030A検出器はそれぞれ40cmx30cmである。これらの検出器は、コントラスト解像度及びダイナミック・レンジを改善するための、米国特許第6486808号明細書に記載されているような、動的制御可能な信号利得を備えたプリアンプ回路を含む信号処理回路に接続されている。
【0028】
本発明の解決策はまた、いわゆるガントリー・ローリング・フロア、即ち、ガントリーの回転中、水平位置のままであるフロアを備えた治療装置に組み入れられるのに適用している。
【0029】
図5は、回転構造10が伸展式支持アーム50に取り付けられた特定の実施形態を示す。伸展式支持アーム50は複数の位置設定が可能である。図5Aに示されているように、画像形成ビーム源121及び画像形成ビームレシーバ141が非オフセット位置、即ち、アイソセンターにおいて使用されることが可能である。画像形成ビームレシーバ及び画像形成ビーム源は、下記の異なる2通りの様式でアイソセンターにおいて使用されてもよい。:
− 回転構造の回転を伴わない。画像形成システムは、例えば、骨格上の目印に基づいて患者の位置をチェックするため、患者のスチール・ラジオグラフを撮るために利用されてもよい。あるいは、画像形成システムがフルオロスコピーのために利用されてもよい。フルオロスコピーの場合、患者の動作をモニターするため、例えば、患者の呼吸サイクルをモニターするために連続するラジオグラフが撮られる。
− 回転構造の回転を伴う。患者の周りを画像形成ビームレシーバと画像形成ビーム源が回転して連続する射影を得る。コーン・ビーム・コンピュータ断層撮影と異なり、幾何学的なノズルとの衝突のために、患者の周りを360°回転させることは不可能である。記録できるのは円弧に沿った部分的な射影だけである。例えば、デジタル断層画像を利用したこの不完全なデータ・セットから、患者の3D構造を再構成するためにアルゴリズムが利用されてもよい。
あるいは(図5に示す)、伸展式または旋回アーム12だけが引っ込められてもよい。この場合、画像形成ビームレシーバがノズルにおけるX−線管と併用されてもよい。
【0030】
他の好ましい実施形態では、患者位置決め画像形成システムが折り畳み式旋回アームではなく、伸縮可能なアームを有していてもよい。同様に、折り畳み式旋回構造を伸展式構造に代えてもよい。図6Aは、引っ込んだ位置にある回転構造10を示す。図6Bは、伸展した位置にある回転構造10を示す。図6Bでは、画像形成ビームレシーバ141お画像形成ビーム源121とが共に伸展している。回転構造は図6Aに示された位置に対して45°だけ半時針方向に回転している。図6Cは、伸展した位置にある回転構造を示す。図6Bに加えて、画像形成ビームレシーバ141が、画像形成容積を増大させるために、回転構造及び画像形成ビーム源の回転軸によって画定される平面と直交する方向にシフトしている。図6Dは、本発明によってもたらされる重要な効果を示す。引っ込んだ位置にある回転構造を備えた、別の画像形成技術を提供するもう一つの画像形成構造が伸展されてもよいことを示す。換言すると、図6Dは、回転構造10が他の画像形成技術の利用に適していることを例証している。図6Eでは、回転構造が再び伸展している。伸展式支持アーム50も伸展した位置にある。この状態では、伸展式構造上の画像形成ビームレシーバと伸展式アーム上の画像形成ビーム源を、上述したように非オフセット位置において使用することができる。最後に、図6Fは、引っ込んだ位置にある回転構造を、引っ込んだ位置にあるロ−リング・フロアとともに示す。
【0031】
本発明は、ハドロン治療セッションを開始する前に患者位置決めに関する情報を求める方法にも係わる。
【0032】
最初に、‘CBCTセットアップ位置’という概念を明らかにしなければならない。この位置の狙いは従来の‘セットアップ位置’と全く同じである。それら2つの位置の間の唯一の違いは、ガントリー軸方向の所与のずれ(offset)である。典型的な距離は、現行の患者位置決め装置で得られる850−1000 MMの範囲である。
【0033】
(CBCTを利用して)位置補正値が算出されると、療法士は、患者位置決め装置を利用して、ガントリー軸方向における逆の所与のずれ(offset)に加えて所要の並進及びアイソセントリックな回転を引き起こす。方法は下記のステップを含む。:
1.患者を治療位置近くのベッド(28)上に載せる、
2.上述の患者位置決め画像形成装置の旋回アーム12及び旋回構造14を展開する、
3.患者保定装置を利用して回転ガントリーの回転軸の方向におけるオフセット位置にベッドの位置を合わせる、
4.患者位置決め画像形成装置の回転構造(10)の回転を引き起こして連続するCBCTショットを得る、
5.患者の3D画像を算出する、
6.3D画像を治療計画システム(TPS)からもたらされた画像と(手動または自動で)比較して患者保定装置のための補正ベクトルを計算する、
7.患者保定装置を前記補正ベクトルに基づいて補正された位置へ移動させる。
尚、
・‘CBCTセットアップ位置’(即ち、オフセット位置)へ移動する前、
・‘CBCTセットアップ位置’と治療位置との間、
・患者が治療位置に置かれて、且つ治療が開始される前
のいずれの時点においても、療法士は1または2以上のX−線ショットを撮ってそれらを対応するDRRと比較して、位置合わせのプロセスをチェックし、必要に応じて対策を講ずることができる。
【0034】
回転構造10が伸展式支持アーム50に取り付けられている実施形態は、有利には、ハドロンビーム治療に利用される患者の位置または患者の呼吸サイクルの相を求める方法に利用され得る。この方法は下記のステップを含む。:
− 患者を治療位置近くのベッド(28)上に置く、
− 上記患者位置決め画像形成装置の前記旋回構造及び前記旋回アームを展開するか、または伸展式構造及び伸展式アームを伸展させる、
− 伸展式支持アーム(50)を伸展させて患者位置決め画像形成装置をアイソセンターに移動させる、
− ラジオグラフィまたはフルオロスコピーを利用して患者の位置または患者の呼吸サイクルに関する情報を求める。
【0035】
本発明の設計及び方法を利用すれば、回転ガントリー(20)を定位置に維持したまま回転構造(10)を回転させることによって種々の角度から連続するCBCTショットを得ることができる。ハドロン治療装置で使用される回転ガントリー(20)は重い装置であり、画像取得に当てられた時間内では容易に動かすことはできない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】最先端のCBCT画像取得システムを示す。
【図2】可動アームが折り畳まれていない状態にある本発明の患者位置決め画像形成装置を示す。
【図3】可動アームが折り畳まれた状態にある本発明の患者位置決め画像形成装置を示す。
【図4a】本発明の折り畳まれていない患者位置決め画像形成装置を含む治療装置とCBCTセットアップ位置(オフセット位置)にある患者の正面図及び頂面図を示す。
【図4b】図4Bは、折り畳まれた患者位置決め画像形成装置を含む治療装置と治療位置にある患者の正面図及び頂面図を示す。
【図5】回転構造が伸展式支持アームに取付けられている実施例を示す。
【図6】伸展式アーム及び伸展式構造を備えた実施例を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハドロン治療装置における患者位置決め用患者位置決め画像形成装置であって、前記ハドロン治療装置が回転ガントリー(20)を具備し、前記患者位置決め画像形成装置が、画像形成ビーム源(121)を連結するように配置された伸展式アームまたは折り畳み式旋回アーム(12)を具備する回転構造(10)及び画像形成ビームレシーバ(141)を運搬するために配置された伸展式構造または折り畳み式旋回構造(14)を含み、前記回転構造(10)が、前記患者が前記ハドロン治療装置のアイソセンターに対するオフセット位置に位置決めされている間に前記患者のCBCTショットを撮るために配置されており、前記オフセット位置が前記回転ガントリー(20)の回転軸の方向にあり、前記回転構造(10)が、前記回転ガントリー(20)が固定されたままである間、且つ前記伸展式または旋回アーム(12)及び前記伸展式または旋回構造(14)が伸展した、または折り畳まれていない位置にある間、回転するように配置されていることを特徴とする前記患者位置決め画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成ビーム源(121)が画像形成X−線照射源を含むことを特徴とする請求項1に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成ビームレシーバがフラットな画像パネルであることを特徴とする請求項1または2に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項4】
前記旋回アームが、さらに、前記旋回アームが折り畳まれた位置にある時にX−線ビームが前記旋回アーム(12)を通過することを可能にする透孔(122)をも有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項5】
前記旋回アーム(12)及び前記旋回構造(14)が異なる長さを有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項6】
前記回転構造(10)が、さらに、少なくとも1つの凹部(30)を有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項7】
前記ハドロン治療装置の前記回転構造(10)及び前記回転ガントリー(20)が同じ回転軸を有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項8】
前記回転構造(10)が前記回転ガントリー(20)の後方に取付けられていることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項9】
前記回転構造(10)が、伸展式支持アーム(50)を介して前記回転ガントリー(20)の後方に取付けられていることを特徴とする請求項8に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項10】
さらに、フラット・パネルが取付けられた入れ子構造をも含み、前記構造が前記凹部(30)の上を移動可能であることを特徴とする請求項6に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項11】
ハドロンビーム治療に使用される患者位置決め情報を求める方法であって、以下のステップを含むことを特徴とする前記方法:
− 患者を治療位置近くのベッド(28)上に置く、
− 請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の患者位置決め画像形成装置の前記旋回構造及び前記旋回アームを展開するか、または前記伸展式構造及び前記伸展式アームを伸展させる、
− 患者保定装置を利用して前記回転ガントリーの回転軸の方向におけるオフセット位置に前記ベッドの位置を合わせる、
− 回転構造(10)の回転を引き起こして連続するCBCTショットを撮る、
− 前記連続するCBCTショットに基づいて患者の3D画像を算出する、
− 3D画像を治療計画システムからもたらされた画像と比較して前記患者保定装置のための補正ベクトルを計算する、
− 前記患者保定装置を前記補正ベクトルに基づいて補正された治療位置へ移動させる。
【請求項12】
患者の位置または呼吸サイクルに関する情報を求める方法であって、前記情報はハドロンビーム治療に使用されるべきものであり、以下のステップを含むことを特徴とする前記方法:
− 患者を治療位置近くのベッド(28)上に置く、
− 請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の患者位置決め画像形成装置の前記旋回構造及び前記旋回アームを展開するか、または前記伸展式構造及び前記伸展式アームを伸展させる、
− 伸展式支持アーム(50)を伸展させて患者位置決め画像形成装置を前記ハドロン治療装置のアイソセンターに移動させる、
− ラジオグラフィまたはフルオロスコピーを利用して患者の画像を得て患者の位置または患者の呼吸サイクルに関する前記情報を求める。
【請求項1】
ハドロン治療装置における患者位置決め用患者位置決め画像形成装置であって、前記ハドロン治療装置が回転ガントリー(20)を具備し、前記患者位置決め画像形成装置が、画像形成ビーム源(121)を連結するように配置された伸展式アームまたは折り畳み式旋回アーム(12)を具備する回転構造(10)及び画像形成ビームレシーバ(141)を運搬するために配置された伸展式構造または折り畳み式旋回構造(14)を含み、前記回転構造(10)が、前記患者が前記ハドロン治療装置のアイソセンターに対するオフセット位置に位置決めされている間に前記患者のCBCTショットを撮るために配置されており、前記オフセット位置が前記回転ガントリー(20)の回転軸の方向にあり、前記回転構造(10)が、前記回転ガントリー(20)が固定されたままである間、且つ前記伸展式または旋回アーム(12)及び前記伸展式または旋回構造(14)が伸展した、または折り畳まれていない位置にある間、回転するように配置されていることを特徴とする前記患者位置決め画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成ビーム源(121)が画像形成X−線照射源を含むことを特徴とする請求項1に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成ビームレシーバがフラットな画像パネルであることを特徴とする請求項1または2に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項4】
前記旋回アームが、さらに、前記旋回アームが折り畳まれた位置にある時にX−線ビームが前記旋回アーム(12)を通過することを可能にする透孔(122)をも有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項5】
前記旋回アーム(12)及び前記旋回構造(14)が異なる長さを有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項6】
前記回転構造(10)が、さらに、少なくとも1つの凹部(30)を有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項7】
前記ハドロン治療装置の前記回転構造(10)及び前記回転ガントリー(20)が同じ回転軸を有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項8】
前記回転構造(10)が前記回転ガントリー(20)の後方に取付けられていることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項9】
前記回転構造(10)が、伸展式支持アーム(50)を介して前記回転ガントリー(20)の後方に取付けられていることを特徴とする請求項8に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項10】
さらに、フラット・パネルが取付けられた入れ子構造をも含み、前記構造が前記凹部(30)の上を移動可能であることを特徴とする請求項6に記載の患者位置決め画像形成装置。
【請求項11】
ハドロンビーム治療に使用される患者位置決め情報を求める方法であって、以下のステップを含むことを特徴とする前記方法:
− 患者を治療位置近くのベッド(28)上に置く、
− 請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の患者位置決め画像形成装置の前記旋回構造及び前記旋回アームを展開するか、または前記伸展式構造及び前記伸展式アームを伸展させる、
− 患者保定装置を利用して前記回転ガントリーの回転軸の方向におけるオフセット位置に前記ベッドの位置を合わせる、
− 回転構造(10)の回転を引き起こして連続するCBCTショットを撮る、
− 前記連続するCBCTショットに基づいて患者の3D画像を算出する、
− 3D画像を治療計画システムからもたらされた画像と比較して前記患者保定装置のための補正ベクトルを計算する、
− 前記患者保定装置を前記補正ベクトルに基づいて補正された治療位置へ移動させる。
【請求項12】
患者の位置または呼吸サイクルに関する情報を求める方法であって、前記情報はハドロンビーム治療に使用されるべきものであり、以下のステップを含むことを特徴とする前記方法:
− 患者を治療位置近くのベッド(28)上に置く、
− 請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の患者位置決め画像形成装置の前記旋回構造及び前記旋回アームを展開するか、または前記伸展式構造及び前記伸展式アームを伸展させる、
− 伸展式支持アーム(50)を伸展させて患者位置決め画像形成装置を前記ハドロン治療装置のアイソセンターに移動させる、
− ラジオグラフィまたはフルオロスコピーを利用して患者の画像を得て患者の位置または患者の呼吸サイクルに関する前記情報を求める。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図6e】
【図6f】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図6e】
【図6f】
【公表番号】特表2008−522677(P2008−522677A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544702(P2007−544702)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/BE2005/000183
【国際公開番号】WO2006/060886
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(502017227)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/BE2005/000183
【国際公開番号】WO2006/060886
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(502017227)
【Fターム(参考)】
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