説明

患者起動による緊急アラート取消機能を持つ移動式生理学モニタ

移動式生理学モニタ(10)が与えられる。そのモニタは、患者の少なくとも1つの生理学パラメタを検出する少なくとも1つのセンサと、患者に固定されるよう適合される筐体(42)とを含む。記録可能な生理学的データを生成するためそのセンサから生理学的パラメタを表わす信号を受信及び処理し、並びにそのデータが事前に設定されたアラームリミットを越えたかを決定する回路(50)がその筐体に配置される。アラームリミットが越えられるとき患者に通知するイベントインジケータ(12)が筐体に結合される。操作上その回路に結合され、アラームリミットが越えられたとき緊急通知を送信する無線送信機(28)が筐体に配置される。アラームリミットが越えられた後所定時間内に患者によりされた起動に応じて無線送信機による緊急通知の送信を防ぐ、患者が操作可能なアクチュエータ(22)がその筐体に結合される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、移動式生理学モニタに関し、より詳細には、患者が緊急事態の場合には、アラーム又は警告を送信する移動式生理学モニタに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の生理学的な状態データを監視することは、多くの医療的、産業的、科学的及び娯楽的分野において高いレベルの関心を受けており、そのレベルは増大している。例えば、心電図検査(ECG)データの監視は、患者の心臓の状態を診断するのに役に立つツールである。従来の生理学モニタは、表示される生理学的パラメタの瞬時的な値を可能にする。
【0003】
移動式生理学モニタは、デバイスにより検出される生理学的パラメタが連続的に監視されることができるよう、より長い(extended)時間期間、患者に固定される携帯型の電子デバイスである。そのモニタは、連続的な分析のためのデータを格納する記録ユニット及び/又は分析が行われるリモートの位置へそのデータを送信する無線送信機を含むか又は含まないことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの移動式モニタは、例えば心室性不整脈のような、たまにしか起きない、しかしそれらが起こると命に関わるイベントを検出するようデザインされる。移動式モニタの効果は、患者と、応答する人又は人々との両方に受け入れられるかにかかっている。斯かるモニタを身に付ける患者をがっかりさせる1つの要因は、モニタが間違ったアラームを生成し、恐らく緊急時応答者の不必要な配置を生じることになるという恐れである。そのことは患者にとって高くつく行為であり迷惑でもあるだろう。同様に、緊急時応答者は、実際に緊急状態が生じていることに自信を持てなければ、自動的に生成されたアラームに渋々応答する場合がある。
【0005】
従って、実際に緊急状態が発生したときのみ緊急通知を送信する移動式生理学モニタを提供することが望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、移動式生理学モニタが与えられる。そのモニタは、患者についての少なくとも1つの生理学的パラメタを検出する少なくとも1つのセンサと、その患者に固定されるよう適合された筐体とを含む。記録可能な生理学的データを生成するセンサからの生理学的パラメタを表す信号を受信及び処理するため、並びにそのデータが予め確立されるアラームリミットを越えるかどうかを決定するための回路が、筐体の中に配置される。そのアラームリミットが越えられるとき患者に通知するイベントインジケータが、その筐体に結合される。操作上その回路に結合され、そのアラームリミットが越えられるとき緊急通知を送信する無線送信機が、その筐体内に配置される。そのアラームリミットが超えられた後所定時間内に患者による起動に応じて、無線送信機による緊急通知の送信を阻止する、患者が操作可能なアクチュエータがその筐体に結合される。
【0007】
本発明の1つの側面によれば、そのイベントインジケータは、オーディオトランスデューサである。
【0008】
本発明の別の側面によれば、そのイベントインジケータは、メカニカルトランスデューサである。
【0009】
本発明の別の側面によれば、そのイベントインジケータは、アラームリミットが越えられた後所定の時間期間にわたって強度が増加する物理的な刺激を生成する。
【0010】
本発明の別の側面によれば、患者が操作可能なアクチュエータはボタンである。
【0011】
本発明の別の側面によれば、患者が操作可能なアクチュエータは押圧起動である。
【0012】
本発明の別の側面によれば、患者の生理学的なパラメタが受け入れ可能な値から所定量分離れたことの検出に応じて、移動式モニタからの緊急通知を送信する方法が提供される。その方法は、患者の少なくとも1つの生理学的パラメタを検出することにより始まる。生理学的パラメタを表す信号が受信され、記録可能な生理学的データを生成するために処理される。そのデータが予め確立されたアラームリミットを越えると決定される場合、患者は通知を受ける。緊急通知は、そのアラームリミットが越えられた後、所定の時間期間して、その所定時間内に患者により取り消されない場合に送信される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明者は、アラームが生成される前に目立たない信号で患者にまず通知することにより、誤ったアラームが削減される、更には削除されることができることを認識した。患者はアラームが発生する前にそれをキャンセルする機会も与えられる。おそらく患者が手が話せない状態であるか又は気づいていない状態にあるため、患者がアラームをキャンセルしない場合、真の緊急事態が存在している可能性が高い。アラームが最終的に生成される前に、限られた時間期間に対して、目立たない信号が数ステップで段階的に大きくなることができる。こうして、患者はアラームをキャンセルするための最大の機会を与えられる。
【0014】
最初は目立たないしかし連続的に段々大きくなる、階段状の信号シーケンスを伴い、そのシーケンスにおけるいずれの時点においても患者がアラームをキャンセルする機会を与えながら、患者に通知する(signal)ことにより、誤ったアラームが発生することが一層少なくなる。こうして、患者には目立たない通知が保証され、従って、緊急状態が誤って報告される場合に生じるであろう困惑と不都合とを回避することができる。同時に、アラームキャンセルがないことが、真の緊急事態が存在する可能性を確認するものとなり、そこで、一旦アラームが応答者に通知すると、それが誤ったアラームを示す確率は非常に小さいものとなる。
【0015】
本発明による移動式生理学モニタ10の断面図が、図1に示される。モニタ10の要素は、筐体42に囲まれている。イベントインジケータ12、イベント・キャンセレーション・アクチュエータ22、患者コネクタ18及びアンテナ19がモニタ10に組み込まれる。患者コネクタ18は、移動式生理学モニタ10の回路と、患者の状態を監視するため患者に添付されるセンサ又は別のトランスデューサとの間の電気的な接続を提供する。モニタ10は、患者の通常の活動の間に、移動する患者により運ばれ、患者の生理学的パラメタのうち注目するものが患者の移動中に記録される。
【0016】
モニタ10は通常、シンプルでコンパクトであるようにデザインされるが、本発明のいくつかの実施形態においては、モニタが追加的な機能、例えば、連続的な分析のためのデータを格納する記録ユニット及び/又はそれが分析されることができる遠隔地へデータを送信する無線送信機を含むことができることに留意されるべきである。しかしながら、斯かる機能は、オプションであり、本発明の限定事項と解釈されるべきでない。
【0017】
イベントインジケータ12は、少なくとも最初は、第三者の注意を引くことなく患者に知らせることが可能な音声アラート又は機械的なバイブレータとすることができる。イベントキャンセレーションアクチュエータ22は、もしユーザが応答することができ、支援を必要としないとすれば、第三者の注意を引くことができる又は緊急医療支援の配置を生じさせることができるイベントの連鎖を開始するアラート信号の生成をキャンセルするために、そのユーザがそのデバイスに信号で知らせる(signal)ことを可能にする。アンテナ19は、以下に説明する無線通信に使用される。
【0018】
移動式生理学モニタ10の一実施形態のブロック図が図2に示される。患者コネクタ18における接点が電子モジュール20におけるアナログ回路50に接続される。上述されたように、患者に付けられたセンサは、コネクタ18を介してモニタ10に電気的に接続される。アナログ回路50は、患者のセンサからの生理学的信号を増幅及び処理する。アナログ回路50の出力は、取得プロセッサ52に接続される。取得プロセッサ52は、モニタ動作の一部を制御し、増幅されたアナログ生理学信号をデジタルデータに変換する。取得プロセッサ52は、プログラム格納エリア56とデータバッファ58とを含むメモリ54に接続される。プログラム格納エリア56は、取得プロセッサ52の動作を制御するためのプログラムを格納するのに使用される。データバッファ58は、生理学的データの一時的な格納を提供する。リアルタイムクロック62が、取得プロセッサ52に接続される。
【0019】
コマンドプロセッサ66は、取得プロセッサ52とメモリ54とに接続される。プログラム格納エリア56は、コマンドプロセッサ66の動作を制御するためのプログラムを格納するのに使用される。コマンドプロセッサ66は、後述される無線アラート送信機28を介した情報の送信及び受信も制御する。モニタ10の一部は、使用状態にないときバッテリーパワーを節約するために電源が切られることができる。
【0020】
無線送信機28は、緊急時応答者に通知するため遠隔地にアラートを送信する。本発明のいくつかの実施形態において、無線送信機28は、電話回線網又はコンピュータネットワーク越しに順にデータを応答者にフォワードするデバイスにデータを送信する場合がある。例えば、モニタが、患者の住居において主に使用されることになる場合、無線送信機28は、その住居に同様に配置される特別の機能を持った(specially enabled)電話にデータをフォワードすることができる。
【0021】
動作中において、取得プロセッサ52は、アナログ回路50により測定された生理学的パラメタを表す信号を取得し、その信号をデータに変換し、そのデータをデータバッファ58に格納する。取得プロセッサ52は、生理学的データに関するアラームリミット(例えば、命に関わるイベント)もチェックする。例えば、生理学的データが測定される場合、取得プロセッサ52は、異常な心拍の発生に関するデータをチェックすることができる。アラームリミットは、プログラム格納エリア56又は取得プロセッサ52によりアクセスされることができる任意の別の適切な位置に格納されることができる。アラームリミットを越えたことを取得プロセッサ52が決定する場合、緊急状態を示し、取得プロセッサ52はイベントインジケータ12を起動する。イベントインジケータ12は、患者にアラームリミットが越えられたことを通知する、映像、音声又は他のいずれかのインジケータ手段とすることができる。例えば、インジケータ12は、音色又は楽曲を演奏する音声トランスデューサとすることができる。また、インジケータ12は、例えばモニタを振動させることにより触知性の刺激をもたらす機械的なトランスデューサとすることができる。イベントインジケータ12は、患者がそれに応答する機会を持つことを確実にするために、徐々に強度(例えば、音量、明るさ、触知性の刺激)を増加することができるべきである。
【0022】
下記に述べるように、イベントインジケータ12が起動された後所定の時間期間が経過しても、患者が干渉しないならば、取得プロセッサ52は、無線送信機に、緊急時応答者を呼び集める緊急通知を送信させる。特に、取得プロセッサ52は、コマンドプロセッサ66を開始させる。取得プロセッサ52は、コマンドプロセッサ66と無線送信機28とが電源オン状態にされることをもたらす。そして、緊急通知が送信されることを要求するコマンドがコマンドプロセッサ66に送信される。するとその通知は、無線送信機28を介して送信される。
【0023】
イベントインジケータ12が、患者に警報を出すために起動され、アラームリミットが誤って越えられたため、患者は、誤ったアラームが生成されようとしていることを認識する場合、その患者は、緊急通知の送信を取り消すためイベント・キャンセレーション・アクチュエータ22を使用することができる。イベント・キャンセレーション・アクチュエータ22は、ボタン、圧力スイッチその他とすることができ、取得プロセッサ52がコマンドプロセッサ66の電源を入れることを防ぐ。それにより、緊急通知が無線送信機に送信されることを防ぐ。もし患者が、イベント・キャンセレーション・アクチュエータ22を用いて、イベントインジケータに応答しない場合、イベントインジケータ12は、その患者に警報が伝えられたことを確実にするために、所定の時間期間にわたり(例えば1分)、強度を増加させることになる。イベント・キャンセレーション・アクチュエータ22が作動することなく所定の時間期間が経過すると、取得プロセッサ52は、緊急通知を送信するため前述したプロセスを開始することになる。
【0024】
本書において様々な実施形態が特別に説明され記述されているが、本発明の修正及び変形が、上述した教示により覆われ、かつ、本発明の精神及び意図された範囲から逸脱することなく添付された請求項の範囲に含まれることは理解されるであろう。例えば、様々な要素が別個の要素として描かれているが、当業者であれば、そうした要素の機能は、ハードウェア、ソフトウェア又はその組み合わせにより実現されることができ、従って、必ずしも別個の物理的な要素で実現されるものではないことを理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による移動式生理学モニタの断面図を示す図である。
【図2】図1に示される移動式生理学モニタの一実施形態のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に関する少なくとも1つの生理学的パラメタを検出する少なくとも1つのセンサと、
前記患者に固定される筐体と、
記録可能な生理学的データを生成するために前記少なくとも1つのセンサからの前記生理学的パラメタを表わす信号を受信及び処理するよう、並びに、前記データが事前に設定されたアラームリミットを越えるかを決定するよう前記筐体に配置される回路と、
前記アラームリミットが越えられたとき前記患者への通知を行うよう前記筐体に結合されるイベントインジケータと、
操作上前記回路に結合され、前記アラームリミットが越えられたとき緊急通知を送信するよう前記筐体に配置される無線送信機と、
前記アラームリミットが越えられた後所定時間内の前記患者による起動に応じて前記無線送信機による前記緊急通知の送信を防ぐため、前記筐体に結合される、患者が操作可能なアクチュエータとを有する移動式生理学モニタ。
【請求項2】
前記イベントインジケータが、音声トランスデューサである、請求項1に記載のモニタ。
【請求項3】
前記イベントインジケータが、機械的なトランスデューサである、請求項1に記載のモニタ。
【請求項4】
前記イベントインジケータが、前記アラームリミットが越えられた後、所定の時間期間にわたり、強度が増加する物理的な刺激を生成する、請求項2に記載のモニタ。
【請求項5】
前記患者が操作可能なアクチュエータが、ボタンである、請求項4に記載のモニタ。
【請求項6】
前記患者が操作可能なアクチュエータが、押圧起動される、請求項4に記載のモニタ。
【請求項7】
患者の生理学的パラメタが、受け入れ可能な値から事前に設定された量分離れたことを検出すると、移動式モニタから緊急通知を送信する方法であって、
前記患者の少なくとも1つの生理学的パラメタを検出するステップと、
記録可能な生理学的データを生成するため前記生理学的パラメタを表わす信号を受信及び処理するステップと、
前記データが事前に設定されたアラームリミットを越えるかどうかを決定するステップと、
前記アラームリミットが越えられたとき前記患者に通知するステップと、
前記アラームリミットが所定の時間期間に対して越えられた後、前記所定の時間期間内に前記患者によりキャンセルされない場合に、緊急通知を送信するステップとを有する方法。
【請求項8】
前記送信ステップが、前記モニタに配置される、患者が操作可能なアクチュエータで行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記通知ステップが、前記モニタに配置されるイベントインジケータにより行われる、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記イベントインジケータが、音声トランスデューサである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記イベントインジケータが、機械的なトランスデューサである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記イベントインジケータが、音声トランスデューサである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記イベントインジケータが、前記アラームリミットが越えられた後所定の時間期間にわたり強度が増加する物理的な刺激を生成する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が操作可能なアクチュエータが、ボタンである、請求項7に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2007−525268(P2007−525268A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500322(P2007−500322)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050429
【国際公開番号】WO2005/084532
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】