説明

情報伝送システム,列車伝送システム

【課題】複数系の伝送路に対応する複数の伝送インタフェースを持たない機器でも伝送路二重化に対応できるようにする鉄道車両システムを提供することを目的とする。
【解決手段】複数系の伝送路に対応する複数の伝送インタフェースを持たない機器は二重化変換装置を介して二重化伝送路に接続し、前記二重化変換装置は、前記機器から受信したパケットを複製し、一方のパケットは宛先IPアドレスを1系伝送路を明示するIPアドレスに変換して1系伝送路へ送信し、他方のパケットは宛先IPアドレスを2系伝送路を明示するIPアドレスに変換して2系伝送路へ送信する。さらに、1系伝送路あるいは2系伝送路からパケットを受信した前記二重化変換装置において、受信したパケットの宛先IPアドレスを複数系の伝送路に対応する複数の伝送インタフェースを持たない機器が接続された伝送路を明示するIPアドレスに変換し、前記機器へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に搭載する情報伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.3規格準拠のネットワークなどのような1対1接続を行う伝送路を使用し、二重系伝送路を構成する鉄道車両用伝送システムにおいて、伝送インタフェースを1個しか持たない機器を1系伝送路と2系伝送路からなる二重系伝送システムに接続するために、1系伝送路に接続された1系伝送器と2系伝送路に接続された2系伝送器と前記機器に接続される伝送切換器を設け、前記伝送切換器が、前記機器から送られてくるデータを前記1系伝送器及び2系伝送器にコピーして送信する。また、前記1系伝送器と2系伝送器の一方又は両方から送られてくるデータについては、前記伝送切換器は決められた基準に基づき一方のデータのみ選択してその宛先機器に送信することにより、伝送インタフェースを1個しか持たない機器を二重系伝送システムに接続することを可能としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−295210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記先行技術では、1系伝送路および2系伝送路全体が同一のIPサブネット(同一のネットワークアドレス)の場合に有効であるが、伝送インタフェースを複数持ち1系伝送路および2系伝送路の両系へ同時に接続される機器や、伝送インタフェースを1個しか持たないが1系伝送路および2系伝送路の両系へ接続することが必要な機器や、伝送インタフェースを1個しか持たず1系伝送路あるいは2系伝送路の一方の系にしか接続されない機器などが混在するシステムでは、各機器の各伝送インタフェースをそれぞれIPアドレスを用いて識別する場合、パケット(packet:情報の伝送単位)を出力する伝送路をそれぞれ区別するため、二重化したネットワークをそれぞれ異なるIPサブネットで管理する必要がある。
【0005】
しかし、前記先行技術において、1系伝送路と2系伝送路でそれぞれIPサブネットを分離し、異なるネットワークアドレスを割り当てる場合、機器から送信されたパケットは前記伝送切換器でコピーされて1系伝送路および2系伝送路の両系へ送信されるが、例えば伝送インタフェースを複数持ち1系伝送路および2系伝送路の両系へ同時に接続される機器に対してデータを送信した場合、1系伝送路へ接続された機器の伝送インタフェース宛ての宛先IPアドレスを持つデータがそのまま2系伝送路へ流れても、2系伝送路に接続された機器の伝送インタフェースでは前記1系の伝送インタフェース宛てのパケットを受信できないため伝送路二重系の機能を実現できないという問題がある。
【0006】
そこで本発明では、各系の伝送路が互いに異なるIPサブネットで構成されることが必要な多重系伝送システムにおいて、複数系の伝送路に対応する複数の伝送インタフェースを持たない機器でも伝送路多重化に対応できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、機器が送信した、宛先の伝送路の系を示す識別子を含むパケットから、各系に対応する宛先の識別子を有する複数のパケットを生成して、生成された複数のパケットを識別子に対応する系の伝送路へ送信することを特徴とする。
【0008】
または、機器は、伝送路にパケットを送受信するための伝送インタフェースを有し、機器には、少なくとも二重化された伝送路の各系に対応した複数の伝送インタフェースを持たない第一の機器が含まれ、第一の機器が送信したパケットは、パケットの宛先を示す識別子の一部が、伝送するいずれかの系の伝送路を明示する識別子に変換され、明示された伝送路を伝送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、各系の伝送路が互いに異なるIPサブネットで構成されることが必要な多重系伝送システムにおいて、複数系の伝送路に対応する複数の伝送インタフェースを持たない機器でも伝送路多重化に対応可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の1実施形態に係る列車伝送システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の1実施形態に係る列車伝送システムの構成を示す図である。
【図3】本発明の1実施形態に係るパケット中継方法を示す図である。
【図4】本発明の1実施形態に係るパケット中継方法を示す図である。
【図5】本発明の1実施形態に係るパケットのアドレス変換方法を示す図である。
【図6】本発明の1実施形態に係る二重化変換装置の構成を示す図である。
【図7】本発明の1実施形態に係る列車伝送システムの構成を示す図である。
【図8】本発明の1実施形態に係る中継装置の構成を示す図である。
【図9】本発明の1実施形態に係るパケットのアドレス変換方法を示す図である。
【図10】本発明の1実施形態に係るパケット伝送を示す図である。
【図11】本発明の1実施形態に係るパケット伝送を示す図である。
【図12】本発明の1実施形態に係るパケット中継方法を示す図である。
【図13】本発明の1実施形態に係るパケット中継方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0012】
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態について説明する。
【0013】
まず、図1および図2に、第1の実施形態に係る鉄道車両システムの一構成例を示す。
【0014】
図1における鉄道車両システムでは、列車の編成は少なくとも1両の車両100から構成される。各車両100は、データを伝送する伝送路が二重化され、すなわち1系幹線伝送路91および2系幹線伝送路92と1系支線伝送路910および2系支線伝送路920があり、各系の幹線伝送路と支線伝送路の間でパケットを中継する中継装置21,22から構成される。
【0015】
さらに図2に示すように、各車両100の各系の支線伝送路910,920には、少なくとも1系支線伝送路910に接続された1系伝送インタフェース281と2系支線伝送路920に接続された2系伝送インタフェース282とを持つ機器291や、一重化機器伝送路930に接続された伝送インタフェース283を持ち各系に対応した複数の伝送インタフェースを持たない機器292や、1系支線伝送路910と2系支線伝送路920と一重化機器伝送路930に接続された二重化変換装置200と、1系支線伝送路910に接続された1系伝送インタフェース281のみを有する機器293や、2系支線伝送路920に接続された2系伝送インタフェース282のみを有する機器293などが接続されている。
【0016】
各機器に設けられた前記各伝送インタフェース281,282,283には接続された伝送路を明示するIPアドレスが設定されている。IPアドレスの設定例としては、例えば、各々の伝送インタフェースを特定する識別子として「10.A.B.C/16」というIPアドレスを使用した場合、Aは伝送インタフェースを接続する伝送路の系を表し、A=a1であれば1系支線伝送路910に接続されていることを表し、A=a2であれば2系支線伝送路920に接続されていることを表し、A=a3であれば一重化機器伝送路930に接続されていることを表し、Bは号車番号を表し、Cは機器の固有番号を表してもよい。なお、a3=a1あるいはa3=a2であってもよい。
【0017】
また、各伝送インタフェースから送信するパケットの宛先IPアドレスとして、例えば、「239.A.D.E」というマルチキャストIPアドレスを使用する場合、A=a1であれば1系支線伝送路910および1系幹線伝送路91を伝送されることを表し、A=a2であれば2系支線伝送路920および2系幹線伝送路92を伝送されることを表し、A=a3であれば一重化機器伝送路930を伝送されることを表し、DおよびEはマルチキャストパケットの受信グループを指定する識別子を表してもよい。なお、a3=a1あるいはa3=a2であってもよい。
【0018】
次に二重化変換装置200の動作について図3および図4および上述のIPアドレス設定例を用いて説明する。
【0019】
図3において、各系に対応した複数の伝送インタフェースを持たない機器292からパケット(データ700およびヘッダ713を含む)を受信した二重化変換装置200は、前記パケットを複製し、図5に示すように、一方のパケット(データ700およびヘッダ711を含む)は宛先IPアドレス(A=a3)を1系伝送路を明示する宛先IPアドレス(A=a1)に変換して1系支線伝送路910へ送信し、他方のパケット(データ700およびヘッダ712を含む)は宛先IPアドレス(A=a3)を2系伝送路を明示する宛先IPアドレス(A=a2)に変換して2系支線伝送路へ送信する。
【0020】
1系支線伝送路910へ送信された前記パケット(データ700およびヘッダ711を含む)は1系中継装置21により1系幹線伝送路91へ中継されて伝送される。同様に、2系支線伝送路920へ送信された前記パケット(データ700およびヘッダ712を含む)は2系中継装置22により2系幹線伝送路92へ中継されて伝送される。
【0021】
一方、図4において、1系中継装置21により1系幹線伝送路91から1系支線伝送路910へ中継されたパケットのうち二重化変換装置200が受信したパケット(データ700およびヘッダ711を含む)は、宛先IPアドレス(A=a1)を一重化機器伝送路930を明示する宛先IPアドレス(A=a3)に変換したパケット(データ700およびヘッダ713を含む)にして一重化機器伝送路930へ送信する。同様に、2系中継装置22により2系幹線伝送路92から2系支線伝送路920へ中継されたパケットのうち二重化変換装置200が受信したパケット(データ700およびヘッダ712を含む)は、宛先IPアドレス(A=a2)を一重化機器伝送路930を明示する宛先IPアドレス(A=a3)に変換したパケット(データ700およびヘッダ713を含む)にして一重化機器伝送路930へ送信する。
【0022】
なお、図4において1系支線伝送路910と2系支線伝送路920の双方から同じデータ700のパケットを二重化変換装置200が受信した場合、上記宛先IPアドレス変換後、特許文献1の先行技術で述べられている方法と同様に、どちらか一方のパケットのみを選択して宛先アドレス変換して機器292へ送信してもよいし、いずれのパケットも機器292へ送信し、機器292でいずれか一方を選択させてもよい。
【0023】
なお、二重化変換装置200は、上述の処理を論理記号で表し、FPGA(Field Programmable Gate Array)などでハードウェア化したり、ネットワークプロセッサを用いてパケット受信やデータ変換やパケット送信を並列に動作させることが可能である。さらに、CPU(Central Processing Unit)を備えたコンピュータ上で動作するソフトウェアにおいても実現可能であり、その場合のハードウェア構成例を図6に示す。
【0024】
図6において、二重化変換装置200は、各手段の処理を行うCPUやキャッシュメモリや主記憶メモリなどを搭載する演算装置201と、送受信データを蓄積したり、処理プログラムや初期設定情報やログ情報などを蓄積しておくハードディスクやシリコンディスク,不揮発性メモリなどの記憶装置204と、1系支線伝送路910を介して1系中継装置21との間のデータ送受信のインタフェース機能を持つ1系伝送路インタフェース装置211と、2系支線伝送路920を介して2系中継装置22との間のデータ送受信のインタフェース機能を持つ2系伝送路インタフェース装置212と、一重化機器伝送路930を介して各系に対応した複数の伝送インタフェースを持たない機器292との間のデータ送受信のインタフェース機能を持つ機器インタフェース装置213と、から構成される。
【0025】
また、必要であれば、アドレスや伝送路の動作モードなどの初期設定項目を入力するスイッチやキーボードなどの入力装置202と、設定項目の確認や、動作状態やログ情報を表示するLEDや液晶パネルなどの出力装置203を実装してもよい。
【0026】
また、各伝送路91,92,910,920,930は、IEEE802.3規格準拠のLANやSDH(Synchronous Digital Hierarchy),ATM(Asynchronous Transfer Mode)などの有線伝送手段を使用してもよいし、IEEE802.11規格準拠の無線LANなどの無線伝送手段を使用してもよい。
【0027】
また、上述の内容では、宛先IPアドレスのみを変換したが、図9に示すように、宛先IPアドレスと送信元IPアドレスの双方を変換する方法もある。宛先IPアドレスのみを変換する方法に比べて、宛先IPアドレスと送信元IPアドレスの双方を変換する方法では、パケットを受信した機器291,293側から見て、送信元の機器292が仮想的にそれぞれの系の伝送路に対応した伝送インタフェースを持っているように見せることができ、特にTCP/IP通信を行う場合の応答パケット(ACK)を、1系伝送路から受信したものに対しては1系伝送路に、2系伝送路から受信したものに対しては2系伝送路に対して返信することが可能となる。
【0028】
以上、第1の実施形態について説明した。
【0029】
以上に述べたことにより、本実施例では、各系に対応した複数の伝送インタフェースを持たない機器や、伝送インタフェースを複数持ち複数の各系の伝送路へ接続される機器などが混在し、各系の伝送路で互いに異なるIPサブネットで構成することが必要な多重系伝送システムにおいて、各系に対応した複数の伝送インタフェースを持たない機器が送信したパケットを、他の機器が各系の伝送路から受信可能とし、また、複数の系の伝送路から送られてきたパケットを各系に対応した複数の伝送インタフェースを持たない機器が受信可能とすることにより、各系に対応した複数の伝送インタフェースを持たない機器でも伝送路多重化に対応可能とすることができる。
【0030】
〔第2の実施形態〕
上述の第1の実施形態では、宛先アドレスの変換を二重化変換装置200で実施したが、宛先アドレス変換の機能を各系の中継装置21,22で実施する方法も考えられる。
【0031】
そこで、次に第2の実施形態について説明する。
【0032】
二重化変換装置200の動作および1系中継装置21について、図12および図13により説明する。
【0033】
図12において、機器292からパケット(データ700およびヘッダ713を含む)を受信した二重化変換装置200は、前記パケットを複製し、1系支線伝送路910および2系支線伝送路920にそれぞれ送信する。
【0034】
1系支線伝送路910から前記パケット(データ700およびヘッダ713を含む)を受信した1系中継装置21は、図5に示すように、パケット(データ700およびヘッダ713を含む)の宛先IPアドレス(A=a3)を1系伝送路を明示する宛先IPアドレス(A=a1)に変換したパケット(データ700およびヘッダ711を含む)を1系幹線伝送路91へ送信する。
【0035】
一方、2系支線伝送路920から前記パケット(データ700およびヘッダ713を含む)を受信した2系中継装置22は、図5に示すように、パケット(データ700およびヘッダ713を含む)の宛先IPアドレス(A=a3)を2系伝送路を明示する宛先IPアドレス(A=a2)に変換したパケット(データ700およびヘッダ712を含む)を2系幹線伝送路92へ送信する。
【0036】
また、図13において、1系幹線伝送路91からパケット(データ700およびヘッダ711を含む)を受信した1系中継装置21は、宛先IPアドレス(A=a1)を一重化機器伝送路930を明示する宛先IPアドレス(A=a3)に変換したパケット(データ700およびヘッダ713を含む)にして1系支線伝送路910に送信する。二重化変換装置200は1系支線伝送路910から前記パケット(データ700およびヘッダ713を含む)を受信すると一重化機器伝送路930へ送信する。
【0037】
一方、2系幹線伝送路92からパケット(データ700およびヘッダ712を含む)を受信した2系中継装置22は、宛先IPアドレス(A=a2)を一重化機器伝送路930を明示する宛先IPアドレス(A=a3)に変換したパケット(データ700およびヘッダ713を含む)にして2系支線伝送路920に送信する。二重化変換装置200は2系支線伝送路920から前記パケット(データ700およびヘッダ713を含む)を受信すると一重化機器伝送路930へ送信する。
【0038】
なお、図13において1系支線伝送路910と2系支線伝送路920の双方から同じデータ700のパケットを二重化変換装置200が受信した場合、特許文献1の先行技術で述べられている方法と同様に、どちらか一方のパケットのみを選択して宛先アドレス変換して機器292へ送信してもよいし、いずれのパケットも機器292へ送信し、機器292でいずれか一方を選択させてもよい。
【0039】
また、1系中継装置21および2系中継装置22は、上述の処理を論理記号で表し、FPGA(Field Programmable Gate Array)などでハードウェア化したり、ネットワークプロセッサを用いてパケット受信やデータ変換やパケット送信を並列に動作させることが可能である。さらに、CPU(Central Processing Unit)を備えたコンピュータ上で動作するソフトウェアにおいても実現可能であり、その場合のハードウェア構成例を図8に示す。
【0040】
図8において、1系中継装置21は、各手段の処理を行うCPUやキャッシュメモリや主記憶メモリなどを搭載する演算装置251と、送受信データを蓄積したり、処理プログラムや初期設定情報やログ情報などを蓄積しておくハードディスクやシリコンディスク,不揮発性メモリなどの記憶装置254と、1系支線伝送路910を介して支線側に接続された機器との間のデータ送受信のインタフェース機能を持つ支線伝送路インタフェース装置263と、1系幹線伝送路91を介して隣接した1系中継装置との間のデータ送受信のインタフェース機能を持つ幹線伝送路インタフェース261と、から構成される。なお、幹線伝送路インタフェース261は隣接した1系中継装置21の数に合わせて複数装備してもよいし、1個の幹線伝送路インタフェース261で全ての隣接した1系中継装置21に接続されてもよい。
【0041】
なお、必要であれば、アドレスや伝送路の動作モードなどの初期設定項目を入力するスイッチやキーボードなどの入力装置202と、設定項目の確認や、動作状態やログ情報を表示するLEDや液晶パネルなどの出力装置203を実装してもよい。
【0042】
2系中継装置22に関しては、上記1系中継装置21と同様の構成であるため、説明は省略する。
【0043】
以上、第2の実施形態について説明した。
【0044】
第2の実施形態は第1の実施形態に比較して、IPアドレス変換を実施するのが、二重化変換装置200ではなく、各系の中継装置21,22に変わるだけで、発明の効果は第1の実施形態と同様である。
【0045】
ただし、上述の第2の実施形態では、二重化変換装置200は、IPアドレス変換処理が不要となるため、内部処理を簡略化することができる。
【0046】
〔第3の実施形態〕
上述の第2の実施形態では、二重化変換装置200の内部処理を簡略化することができた。さらに簡略化して、二重化変換装置200として、IEEE802.3規格準拠のLANで使用されるスイッチングハブの機能を持つ装置を適用する方法も考えられる。
【0047】
そこで、次に第3の実施形態について説明する。
【0048】
二重化変換装置200に、IEEE802.3規格準拠のLANで使用されるスイッチングハブ(例えばアライドテレシス社のCentre COM FS808TP V1)を適用した場合、各系に対応した複数の伝送インタフェースを持たない機器292から送信されたマルチキャストパケットやブロードキャストパケットは1系支線伝送路910および2系支線伝送路920の両方へ送信され、それぞれの系の中継装置21,22において、上述の第2の実施形態のようにIPアドレスを変換されて各系の幹線伝送路91,92へ中継される。
【0049】
しかし、二重化変換装置200に、IEEE802.3規格準拠のLANで使用されるスイッチングハブを適用した場合の課題として、各系の幹線伝送路91,92からそれぞれ系の中継装置21,22により中継されてきたマルチキャストパケットやブロードキャストパケットが一方の系の支線伝送路(910あるいは920)から二重化変換装置200へ流入した場合、機器292へ前記パケットを送信するだけでなく、他方の支線伝送路(920あるいは910)へも前記パケットを送信する。この後、図10に示すように、他方の系の中継装置が前記マルチキャストパケットやブロードキャストパケットを他方の系の支線伝送路から他方の系の幹線伝送路へ中継してしまい、この現象が繰り返されると前記パケットが無限に両系の伝送路間を循環し、伝送路負荷が急激に高くなることにより、システム全体がパケット伝送できない状態に陥る可能性がある。
【0050】
そこで、第1の実施形態におけるIPアドレスの例で述べたように、IPアドレスに号車番号を表す数値を明示しておき、各系の中継装置21、22において、支線伝送路側から、その支線が属する車両の号車とは異なる号車を明示している送信元IPアドレスを持つパケットを受信した場合に前記パケットを幹線伝送路に中継せずに廃棄する。
【0051】
図11にその例を示す。図11では、号車番号Yから2系幹線伝送路92へ送信されたマルチキャストパケットあるいはブロードキャストパケットのヘッダ内の送信元IPアドレスに号車番号Yを明示しておき、前記号車番号Yから送信されたパケットが号車番号Zの1系中継装置21で1系支線伝送路910から受信されると、前記号車番号Yから送信されたパケットを中継せずに廃棄することにより1系幹線伝送路を介して再び他の号車の車両へ伝送されることを防ぐことができる。
【0052】
しかし、上述の方法では、同じ号車内の一方の中継装置が生成して支線伝送路へ送信したパケットが、他方の中継装置では廃棄されず、他方の系の幹線伝送路へ中継されてしまうという問題がある。そこで、各系の中継装置21,22において、支線伝送路側から、その支線が属する車両の号車とは異なる号車を明示している送信元IPアドレスを持つパケットを受信した場合か、あるいは、送信元IPアドレスが自号車内の他系の中継装置であるパケットを受信した場合には、前記パケットを幹線伝送路に中継せずに廃棄するとすればよい。
【0053】
以上、第3の実施形態について説明した。
【0054】
上述のパケット廃棄する機能を各系の中継装置21,22に実装することにより、二重化変換装置200を簡略化してスイッチングハブの機能を持つ装置を適用することも可能となる。
【0055】
〔第4の実施形態〕
第1および第2および第3の実施形態において、二重化変換装置200への電力供給が中断すると両系にパケットを伝送できなくなるという課題がある。そこで、第4の実施形態として、図7に示すように、二重化変換装置200は、1系中継装置21または他の1系の機器へ電力供給している1系電源装置851と、2系中継装置22または他の2系の機器へ電力供給している2系電源装置852の双方から電力を供給され、一方の電源装置で障害が発生して電力供給が止まっても、他方の電源装置から電力供給を受けてパケット伝送を継続できるようにする。
【0056】
このとき、二重化変換装置200は、電力が供給されている系を検知し、前記電源が供給されている系へのみIPアドレス変換してパケットを中継するようにすればよい。
【0057】
以上、第4の実施形態について説明した。
【0058】
以上に述べたことにより、本発明の実施例では、各系に対応した複数の伝送インタフェースを持たない機器や、伝送インタフェースを複数持ち複数の各系の伝送路へ接続される機器などが混在し、各系の伝送路で互いに異なるIPサブネットで構成することが必要な多重系伝送システムにおいて、各系に対応した複数の伝送インタフェースを持たない機器が送信したパケットを、他の機器が各系の伝送路から受信可能とし、また、複数の系の伝送路から送られてきたパケットを各系に対応した複数の伝送インタフェースを持たない機器が受信可能とすることにより、各系に対応した複数の伝送インタフェースを持たない機器でも伝送路多重化に対応可能とすることができる。
【0059】
また、上述した各実施形態においては、パケットが伝送されるべき伝送路や車両の号車番号を明示する手段としてIPアドレスを使用したが、TCPやUDPで使用するポート番号や、IEEE802.1D規格で規定されたVLANIDなどを使用しても、上記各実施例を適用することは可能であり、上記各実施形態と同様の効果を奏する。
【0060】
さらに、パケットが伝送される伝送路や車両の号車番号を明示する手段として、パケット内に独自の明示領域を設け、二重化変換装置200や各系の中継装置21,22が前記明示領域の値を参照あるいは変換してもよい。この場合でも、上記各実施形態を適用することは可能であり、上記各実施形態と同様の効果を奏する。
【0061】
また、上述した各実施形態における鉄道車両システムは二重化伝送路を想定しているが、三重化以上の多重化伝送路に関しても、各系に対応する伝送インタフェースを増やすことにより上記各実施形態を適用することは可能であり、上記各実施形態と同様の効果を奏する。つまり、上記した各実施例に記載した二重化変換装置の図2に示す伝送路インタフェース装置をさらに多重化して複数の系の伝送路に対応できるようにすれば良い。また、実施例4においては、二重化変換装置の電源を多重化された各系の電源装置から供給するようにすれば良い。
【0062】
また、上述した各実施形態において二重化変換装置200の一重化機器伝送路930側には複数の機器292が接続されても上記各実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0063】
21 1系中継装置
22 2系中継装置
91 1系幹線伝送路
92 2系幹線伝送路
100 車両
200 二重化変換装置
201 演算装置
202 入力装置
203 出力装置
204 記憶装置
211 1系伝送路インタフェース装置
212 2系伝送路インタフェース装置
213 機器インタフェース装置
281 1系伝送インタフェース
282 2系伝送インタフェース
283 伝送インタフェース
291,292,293 機器
700 データ
711,712,713 ヘッダ
851 1系電源装置
852 2系電源装置
910 1系支線伝送路
920 2系支線伝送路
930 一重化機器伝送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二重系の伝送路と、前記伝送路を介して接続され互いに情報の伝送が可能な機器と、を備える情報伝送システムにおいて、
前記機器が送信した、宛先の伝送路の系を示す識別子を含むパケットから、各系に対応する宛先の識別子を有する複数のパケットを生成して、生成された複数の前記パケットを前記識別子に対応する系の伝送路へ送信することを特徴とする情報伝送システム。
【請求項2】
請求項1記載の情報伝送システムにおいて、
前記パケットは、宛先および送信元の伝送路の系を示す識別子を含み、
前記機器が送信した前記パケットから、各系に対応する宛先および送信元の識別子を有する複数のパケットを生成して、生成された複数の前記パケットを前記識別子に対応する系の伝送路へ送信することを特徴とする情報伝送システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の情報伝送システムにおいて、
前記機器および少なくとも二重系の前記伝送路にそれぞれ接続され、前記機器が送信した前記パケットに基づき、各系に対応する前記識別子を有する複数のパケットを生成して、生成された複数の前記パケットを前記識別子に対応する系の伝送路へ送信する変換装置を有することを特徴とする情報伝送システム。
【請求項4】
請求項3に記載の情報伝送システムにおいて、
前記伝送路は、異なる車両間を接続する基幹伝送路と、車両内の前記機器と接続する支線伝送路で構成され、
前記基幹伝送路と前記支線伝送路とを中継する少なくとも二重系の中継装置とを備え、
前記変換装置は、複数の前記中継装置へ電源を供給する複数の電源装置から電力の供給を受け、前記電源が供給されている系へパケットを送信することを特徴とする情報伝送システム。
【請求項5】
請求項1または請求項2記載の情報伝送システムにおいて、
前記伝送路は、異なる車両間を接続する基幹伝送路と、車両内の前記機器と接続する支線伝送路で構成され、
前記基幹伝送路と前記支線伝送路とを中継する少なくとも二重系の中継装置とを備え、
前記中継装置は、前記機器が送信した前記パケットの識別子を中継先の基幹伝送路の系に対応して変換して、前記基幹伝送路へ中継することを特徴とする情報伝送システム。
【請求項6】
請求項5記載の情報伝送システムにおいて、
前記パケットの送信元の機器は、送信元を示す識別子の一部に搭載される車両の号車情報を明示し、
前記中継装置は、前記支線伝送路から受信したパケットが、送信元を示す識別子の一部に自号車以外の号車が明記されている場合、あるいは、送信元を示す識別子の一部に自号車内の他系の中継装置が明記されている場合に、当該パケットを廃棄することを特徴とする情報伝送システム。
【請求項7】
同一車両内の機器および連結された異なる車両の機器を接続する少なくとも二重化された伝送路を有する列車伝送システムにおいて、
前記機器は、前記伝送路にパケットを送受信するための伝送インタフェースを有し、
前記機器には、少なくとも二重化された前記伝送路の各系に対応した複数の伝送インタフェースを持たない第一の機器が含まれ、
前記第一の機器が送信したパケットは、パケットの宛先を示す識別子の一部が、伝送するいずれかの系の伝送路を明示する識別子に変換され、前記明示された伝送路を伝送することを特徴とする列車伝送システム。
【請求項8】
請求項7記載の列車伝送システムにおいて、
前記第一の機器が送信したパケットは、パケットの宛先および送信元を示す識別子の一部が、伝送するいずれかの系の伝送路を明示する識別子に変換され、前記明示された伝送路を伝送することを特徴とする列車伝送システム。
【請求項9】
請求項7または請求項8記載の列車伝送システムにおいて、
前記第一の機器および少なくとも二重化された各伝送路にそれぞれ接続され、
前記第一の機器から受信したパケットを複製し、複製した各パケットの識別子の一部を、それぞれ伝送する系の伝送路を明示する識別子に変換し、前記各パケットを変換した前記識別子に明示された系の伝送路へ送信する機能を持つ変換装置を有することを特徴とする列車伝送システム。
【請求項10】
請求項9記載の列車伝送システムにおいて、
前記伝送路は、連結された異なる車両間を接続する基幹伝送路と、同一車両内の前記機器と接続する支線伝送路で構成され、
前記基幹伝送路と前記支線伝送路との間でパケットを中継する中継装置とを備え、
前記変換装置は、少なくとも二重化された各系の前記中継装置または前記機器へ電力を供給する複数の電源装置から電力を供給され、
前記パケットの少なくとも宛先を示す識別子の一部を、電力の供給を受けている系の伝送路を明示する識別子に変換して、電力の供給を受けている系の伝送路へパケットを出力することを特徴とする列車伝送システム。
【請求項11】
請求項7または請求項8記載の列車伝送システムにおいて、
前記第一の機器が送信したパケットを、同一車両内の機器を接続する支線伝送路から、連結された異なる車両間を接続する基幹伝送路へ中継する際に、少なくとも宛先を示す識別子の一部を中継先の基幹伝送路の系を明示する識別子に変換して中継する中継装置を有することを特徴とする列車伝送システム。
【請求項12】
請求項11記載の列車伝送システムにおいて、
前記パケットの送信元の機器は、送信元を示す識別子の一部に搭載される車両の号車情報を明示し、
前記中継装置は、同一車両内の機器間を接続する前記支線伝送路から受信したパケットのうち、送信元を示す識別子の一部に自号車以外の号車が明記されたパケットを廃棄するか、あるいは、送信元を示す識別子が自号車内の他の中継装置であることを示すパケットを廃棄することを特徴とする列車伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−105164(P2012−105164A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253372(P2010−253372)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】