説明

情報処理装置、受信方法及び無線通信システム

【課題】伝送路の周波数特性の影響を受けた場合であっても受信性能を低下させないことが可能な情報処理装置を提供する。
【解決手段】受信信号の中からプリアンブル部を検出してサンプリングタイミングを抽出するプリアンブル検出部と、シンク部の候補を複数検出するシンク検出部と、受信信号を記憶する記憶部と、受信信号に対し遅延を与える遅延時間付与部と、遅延時間が与えられた受信信号と、マンチェスタ符号での1クロック分に相当する遅延時間がさらに与えられた受信信号との差分を計算する傾き演算部と、マンチェスタ符号のクロック2回に1回の間隔で抽出する1/2サンプリング部と、シンク部の各候補を用いてトレーニング等化を行う適応等化部と、トレーニング等化されたシンク部の各候補の等化誤差を比較し、最も誤差の小さい候補位置を確定する等化性能判定部と、適応等化された受信信号を2値判定して復号する2値判定部と、を備える、情報処理装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、受信方法及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触通信は、0〜数十cm程度の伝送距離でデータ伝送を行う無線技術であり、例えば非接触ICカードとリーダライタからなるRFIDシステムに適用される。その通信方向によって、リーダライタからカードへの通信と、カードからリーダライタへの通信の2種類に分けることができる。本明細書では、前者を「ダウンリンク」と呼び、後者を「アップリンク」と呼ぶことにする。どちらの通信方向においても、リーダライタは常にキャリア周波数を発振し、カードはこのキャリア周波数から得られる電力を基に送信処理並びに受信処理を行なう。
【0003】
非接触通信方法には、静電結合方式、電磁誘導方式、電波通信方式などが挙げられる。このうち電磁誘導方式は、リーダライタ側の1次コイルとカード側の2次コイル間のコイルの磁気的な結合(すなわち、2つのコイルのLC共振回路としての動作)によってデータ通信が行なわれる。リーダライタは、1次コイルで発生する磁界すなわちキャリアを振幅変調することによって、ダウンリンクのデータ送信を行ない、トランスポンダ側ではこれを検波する。一方、アップリンクには負荷変調が用いられ、カード内の送信情報に基づいて2次コイルの負荷抵抗が切り替えられる。リーダライタ側では、電磁結合している2次コイルの負荷が変化すると、電磁結合の入力インピーダンスが変化するので、結果として、キャリア周波数の出力レベルが変化する。したがって、このレベル変動をみることによって、カードからの送信情報を読み取ることができる。
【0004】
例えば、ISO/IEC IS 18092(NFC IP−1)は、2003年12月に国際標準となった、リーダライタの仕様を規定した非接触通信規格である。同規格は、元々、非接触式ICカードとして広く普及しているソニーの「FeliCa(フェリカ、登録商標)」やPhilips社の「Mifare」を継承している。このうち、フェリカ・フォーマットでは、マンチェスタ(Manchester)符号が用いられ、ダウンリンクとアップリンクでは同一のパケット構造を使用する。図17には、フェリカ・フォーマットのパケット構造を示している。図示のパケットは、「プリアンブル」、「シンク」、「データ」の3つのパートで構成される。プリアンブルは、6バイト長の“0”の系列からなり、シンクは、2バイトの既知系列“0xB24D”からなる。また、データは、パケット長を示す1バイトのLENと、(LEN−1)バイト長のデータ本体(ペイロード)と、2バイトのCRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)コードからなる。これら3つのパートはすべてマンチェスタ符号化される。
【0005】
ここで、マンチェスタ符号は、例えば、2進値“0”を送るときはビット区間の中央でロー・レベルからハイ・レベルに変化させ(入力0を「01」に)、一方、2進値“1”を送るときは逆にビット区間の中央でハイ・レベルからロー・レベルに変化させる(入力1を「10」に)。言い換えれば、1つのビット区間を中央で前部セルと後部セルに分割し、前部セルがロー・レベルで且つ後部セルがハイ・レベルの場合は論理値「0」とし、前部セルがハイ・レベルで且つ後部セルがロー・レベルの場合は論理値「1」とする符号形式である。マンチェスタ符号は、入力1ビットを2ビットに変換する(若しくは、2パルス(2T)で1ビットを伝送する)、と言うこともでき、2倍の帯域に広げることで、通信レートは半分になるが、伝送信号のDC成分を無くしている。
【0006】
プリアンブル部は6バイトの0がマンチェスタ符号化される。そのため「01」が48回続く連続波形になる。また、シンク部は、「0xB24D」をマンチェスタ符号化したパターンからなる。データ部は送信情報とLength情報(LEN)、CRCがまとめられてマンチェスタ符号化される。
【0007】
パケットの受信側では、連続波形であるプリアンブル部を基にクロック(サンプリング・タイミング)の抽出が行なわれる。本明細書では、この動作を「タイミング同期」と呼ぶ。続いて、「0xB24D」をマンチェスタ符号化したパターンからなるシンク部を検出して、後続のデータ部の開始位置を推定する。本明細書では、この動作を「フレーム同期」と呼ぶ。そして、この開始位置を基にデータ部の復号が行なわれる。
【0008】
マンチェスタ符号をNRZ(Non Return to Zero:NRZ)符号に復号する受信回路については、幾つかの提案がなされている(例えば、特許文献1〜3を参照のこと)。
【0009】
ところで、フェリカ・フォーマットでは、通信レートとして、212kbpsの倍数である、424kbps、848kbps、1.7Mbps、3.4Mbpsなどが規定されている。通信レートが高くなると、それに比例して送信信号の周波数帯域が広くなる。信号の周波数帯域が広くなると、伝送路や送信RFアナログ回路や受信RFアナログ回路の周波数特性の影響が増えてくる。一般に、これらの周波数特性は高い周波数になるほど減衰が大きくなる。また、高い周波数になるほど位相特性の乱れも大きくなる。このため、高い通信レートの信号ほど、受信波形の乱れが大きくなる。
【0010】
高速通信などにおける受信信号の乱れを補償する1つの方法として、適応等化処理を挙げることができる(例えば、特許文献4〜6を参照のこと)。適応等化回路は、例えば、FIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答)フィルタと学習回路で構成される。図18は、FIRフィルタの構成を模式的に示す説明図である。FIRフィルタは、複数個の遅延素子を直列接続したディレイ・ラインを備え、配列された遅延素子の個数分だけの時系列的な入力データを、それぞれ乗算器でフィルタの特性に応じたタップ係数で重み付けを行なった後、これらを累積加算して平均化処理することによって等化信号を得ることができる。送信側からは、受信側にとって既知の学習信号を送信する。学習信号には、通常、ランダム・パターンが用いられる。受信側の学習回路は、伝送路を通って乱れた学習信号を受信すると、FIRフィルタから出力される等化信号をその所望信号に近づけるようにフィルタのタップ係数を調整する。
【0011】
適応等化を行なうには、FIRフィルタのタップ係数を学習するのに十分な長さのランダム・パターン系列の送信が必要となる。一方、パケット内のデータ部を先頭からデコードするためには、それよりも前の段階でFIRフィルタの学習を完了させておく必要がある。
【0012】
データ部が到来するよりも前にFIRフィルタの学習を完了させるため、シンク部とデータ部の間に学習用に十分長いランダム・パターンを挿入する方法や、学習のための専用パケットを通常のパケットに先立って送信する方法などが考えられる。しかしながら、これらの方法を実現するには、NFC IP−1規格で規定されているフェリカ・フォーマットとは異なるパケット・フォーマットを使用することになるため、互換性において問題を招来する可能性がある。また、既知信号である学習用のランダム・パターンを送信する時間のために、情報を送信するための時間が削減されるため、通信レートの低下にもつながってしまう。
【0013】
そこで、適応等化の性能を向上させるために、フェリカ・フォーマットのパケット・フォーマットをそのまま利用して適応等化を行う方法も提案されている。具体的には、この方法は受信側にとって既知の信号系列であるパケットのシンク部を適応等化の学習に用いるものである。しかし、フェリカ・フォーマットのパケット・フォーマットでは、シンク部はマンチェスタ符号化されたビット数で高々32ビットであり、学習回数が十分であるとは言い難い。
【0014】
フェリカ・フォーマットのパケット・フォーマットをそのまま利用して適応等化を行う方法では、高速で収束誤差の少ない適応等化の学習を実現するため、例えばシンク部前半で高速な学習を行い、後半で低速な学習を行う方法が提案されている。
【0015】
しかし、データ部の先頭までに好適な学習結果を得るためには、FIRフィルタのタップを数タップに制限する必要がでてくる。一方で、FIRフィルタのタップ数が少ないと、きめ細かな周波数特性を表現することが困難なため、伝送路によって受けた周波数特性の影響次第では、適応等化を行っても受信特性の十分な改善を得られない場合があるという問題があった。
【0016】
例えば、通信レートが3.4Mbpsである場合、マンチェスタ符号化されたチャネルレートは6.8Mbpsとなり、ベースバンド信号の帯域幅は6.8MHzとなる。また、マンチェスタ符号化された信号の最短波(1T)は3.4MHz、最長波(2T)は1.7MHzとなるため、信号のスペクトラムは3.4MHz、1.7MHzを中心に分布する。ここで、FIRフィルタのタップ数が5であるとき、図3に示すように、ベースバンド帯域幅が6.8MHz内の5つの周波数ポジションを表現することが可能である。しかしながら、1Tと2Tの間で制御可能な周波数ポジションは1つしか存在しない。そのため、伝送路の周波数特性が1Tと2Tとの間で複雑になっている場合、その周波数特性の逆特性を表現することが難しく、良好な等化をすることが困難であった。
【0017】
このように、電磁結合を利用する非接触通信システムにおいて、フェリカ・フォーマットに準拠しつつより高速な伝送レートに対応させるためには、少ないFIRフィルタのタップ数で、より複雑な周波数特性を改善する適応等化が必要であった。
【0018】
そこで、受信信号の傾き演算を行い、1/2サンプリングされた信号を適応等化して2値化判定を行うことで、従来と同じFIRフィルタのタップ数でありながら受信性能を向上させる方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平11−146022号公報
【特許文献2】特開平11−251916号公報
【特許文献3】特開2005−160042号公報
【特許文献4】特開2004−64681号公報
【特許文献5】特開2008−22422号公報
【特許文献6】特開2008−27270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、受信信号の傾き演算を行い、1/2サンプリングされた信号を適応等化して2値化判定を行う方法では、伝送路の周波数特性の影響を受け、同期検出位置がずれてしまうと等化性能が悪化してしまう場合があり、受信性能が低下してしまう問題があった。
【0021】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、受信信号の傾き演算を行い、1/2サンプリングされた信号を適応等化して2値化判定を行う場合に、伝送路の周波数特性の影響を受けた場合であっても受信性能を低下させないことが可能な、新規かつ改良された情報処理装置、受信方法及び無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、受信信号の中から、連続波形からなるプリアンブル部を検出して前記連続波形を基にサンプリングタイミングを抽出するプリアンブル検出部と、前記サンプリングタイミングを基に前記受信信号の中から、所定の条件を満たす、特定パターンからなるシンク部の候補を複数検出して該シンク部の開始位置を示すタイミング信号を出力するシンク検出部と、前記受信信号を記憶する記憶部と、前記記憶部への前記受信信号の記憶及び前記記憶部からの前記受信信号の読み出しを制御する記憶制御部と、前記記憶制御部が前記記憶部から読み出す前記受信信号に対し、前記シンク検出部においてシンク部の検出を確定するまでシンク部の先頭が出力されないように遅延を与える遅延時間付与部と、前記遅延時間付与部で遅延時間が与えられた受信信号と、マンチェスタ符号での1クロック分に相当する遅延時間がさらに与えられた受信信号との差分を計算する傾き演算部と、前記傾き演算部で傾き演算されたシンク部の先頭から、マンチェスタ符号のクロック2回に1回の間隔で抽出する1/2サンプリング部と、前記タイミング信号を基に、1/2サンプリングされたシンク部の各候補を用いてトレーニング等化を行う適応等化部と、前記適応等化部でトレーニング等化されたシンク部の各候補の等化誤差を比較し、最も誤差の小さい候補位置を確定する等化性能判定部と、前記適応等化部で適応等化された受信信号を2値判定して、マンチェスタ符号をNRZ符号に復号する2値判定部と、を備え、前記記憶制御部は、前記等化性能判定部が確定した最も誤差の小さい候補位置の情報に基づいて前記記憶部から前記受信信号を読み出す、情報処理装置が提供される。
【0023】
前記適応等化部は、前記等化性能判定部が確定した最も誤差の小さい候補位置の情報に基づいて、前記受信信号に含まれる特定パターンからなるデータ部の適応等化を行ってもよい。
【0024】
前記シンク検出部は、シンク部の候補として、隣接するサンプル位置を複数抽出するようにしてもよい。
【0025】
前記シンク検出部は、シンク部の候補として、偶数個離れたサンプル位置を複数抽出するようにしてもよい。
【0026】
前記適応等化部は、FIRフィルタのタップ係数をトレーニングするトレーニング等化を実行するようにしてもよい。
【0027】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、受信信号の中から、連続波形からなるプリアンブル部を検出して前記連続波形を基にサンプリングタイミングを抽出するプリアンブル検出ステップと、前記サンプリングタイミングを基に前記受信信号の中から、所定の条件を満たす、特定パターンからなるシンク部の候補を複数検出して該シンク部の開始位置を示すタイミング信号を出力するシンク検出ステップと、前記受信信号を記憶する記憶ステップと、前記受信信号に対し、前記シンク検出部においてシンク部の検出を確定するまでシンク部の先頭が出力されないように遅延を与える遅延時間付与ステップと、前記遅延時間付与ステップで遅延時間が与えられた受信信号と、マンチェスタ符号での1クロック分に相当する遅延時間がさらに与えられた受信信号との差分を計算する傾き演算ステップと、前記傾き演算ステップで傾き演算されたシンク部の先頭から、マンチェスタ符号のクロック2回に1回の間隔で抽出する1/2サンプリングステップと、前記タイミング信号を基に、1/2サンプリングされたシンク部の各候補を用いてトレーニング等化を行う適応等化ステップと、前記適応等化ステップでトレーニング等化されたシンク部の各候補の等化誤差を比較し、最も誤差の小さい候補位置を確定する等化性能判定ステップと、前記等化性能判定ステップで確定した最も誤差の小さい候補位置に基づいて前記記憶ステップで記憶した受信信号を読み出す読み出しステップと、前記読み出しステップで読み出され、適応等化された受信信号を2値判定して、マンチェスタ符号をNRZ符号に復号する2値判定ステップと、を備える、通信方法が提供される。
【0028】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、リーダライタと、前記リーダライタと所定の周波数の搬送波により非接触通信する情報処理装置と、を備え、前記リーダライタまたは前記情報処理装置の少なくともいずれか一方は、受信信号の中から、連続波形からなるプリアンブル部を検出して前記連続波形を基にサンプリングタイミングを抽出するプリアンブル検出部と、前記サンプリングタイミングを基に前記受信信号の中から、特定パターンからなるシンク部の候補を複数検出して該シンク部の開始位置を示すタイミング信号を出力するシンク検出部と、前記受信信号を記憶する記憶部と、前記記憶部への前記受信信号の記憶及び前記記憶部からの前記受信信号の読み出しを制御する記憶制御部と、前記記憶制御部が前記記憶部から読み出す前記受信信号に対し、前記シンク検出部においてシンク部の検出を確定するまでシンク部の先頭が出力されないように遅延を与える遅延時間付与部と、前記遅延時間付与部で遅延時間が与えられた受信信号と、マンチェスタ符号での1クロック分に相当する遅延時間がさらに与えられた受信信号との差分を計算する傾き演算部と、前記傾き演算部で傾き演算されたシンク部の先頭から、マンチェスタ符号のクロック2回に1回の間隔で抽出する1/2サンプリング部と、前記タイミング信号を基に、1/2サンプリングされたシンク部の各候補を用いてトレーニング等化を行う適応等化部と、前記適応等化部でトレーニング等化されたシンク部の各候補の等化誤差を比較し、最も誤差の小さい候補位置を確定する等化性能判定部と、前記適応等化部で適応等化された受信信号を2値判定して、マンチェスタ符号をNRZ符号に復号する2値判定部と、を含み、前記記憶制御部は、前記等化性能判定部が確定した最も誤差の小さい候補位置の情報に基づいて前記記憶部から前記受信信号を読み出す、無線通信システムが提供される。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように本発明によれば、受信信号の傾き演算を行い、1/2サンプリングされた信号を適応等化して2値化判定を行う場合に、同期位置を複数選出してそれぞれの同期位置についてシンク部のトレーニング等化を行うことで、伝送路の周波数特性の影響を受けた場合であっても受信性能を低下させないことが可能な、新規かつ改良された受信装置、非接触ICカード、リーダライタ及び受信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る非接触通信システム1の構成を示す説明図である。
【図2】図1に示した非接触通信システム1におけるデータ送受信処理を示す流れ図である。
【図3】図1に示した非接触通信システム1におけるデータ送受信処理を示す流れ図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るリーダライタ10に含まれる受信回路13の構成を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るリーダライタ10に含まれる受信回路13の別の構成を示す説明図である。
【図6】伝送路の周波数特性の影響を受けた受信信号波形の一例を示す説明図である。
【図7】受信信号と、プリアンブル部(4ビット)及びシンク部(16ビット)との相互相関値の一例を示す説明図である。
【図8】マンチェスタ符号化されたデータを復号する手順を示す説明図である。
【図9】図7の位置Aを同期位置とした場合の等化後信号点分布を示す説明図である。
【図10】図7の位置Bを同期位置とした場合の等化後信号点分布を示す説明図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る、リーダライタ10に含まれる受信回路13の構成を示す説明図である。
【図12】RAM制御部111により読み出されるシンク部の例を示す説明図である。
【図13】平均二乗誤差により求めた、第1候補と第2候補の等化誤差値の一例を示す説明図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る、リーダライタ10に含まれる受信回路13の動作を示す流れ図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る受信回路13による、等化後信号点分布の一例を示す説明図である。
【図16】シンク部繰り返し回数を2とした場合のRAM制御部51から後段の回路へ出力されるデータ列を示す説明図である。
【図17】フェリカ・フォーマットのパケット構造を示す説明図である。
【図18】FIRフィルタの構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0032】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
<1.本発明の一実施形態>
[1−1.非接触通信システムの構成例]
[1−2.非接触通信システムにおけるデータ送受信処理]
[1−3.受信回路の構成]
[1−4.受信回路の動作]
<2.まとめ>
【0033】
<1.本発明の一実施形態>
[1−1.非接触通信システムの構成例]
まず、本発明の一実施形態に係る非接触通信システムの構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る非接触通信システム1の構成を示す説明図である。以下、図1を用いて本発明の一実施形態に係る非接触通信システム1の構成について説明する。
【0034】
図1に示したように本発明の一実施形態に係る非接触通信システム1は、リーダライタ10と、非接触ICカード30と、を含んで構成される。リーダライタ10と、非接触ICカード30との間では、例えばフェリカ・フォーマット(前述)のパケットが所定の通信手順で交換されるものとする。
【0035】
リーダライタ10は、制御部11と、送信回路12と、受信回路13と、アンテナ共振回路部14で構成される。一方、非接触ICカード30は、制御部31と、アンテナ共振回路部32と、負荷切り替え変調回路部33で構成される。図示の例では、制御部34は、送信回路と受信回路、ロジック回路、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Memory)などの不揮発メモリーを含んだ構成とする。
【0036】
制御部11は、リーダライタ10内の各部を制御し、データを送受信する処理を行なわせる。ダウンリンクのデータ送信時には、送信回路12は、キャリア発振器(図示しない)を備え、送信データをマンチェスタ符号化した後、キャリアを例えば振幅変調してデータを送信する。また、アップリンクのデータ受信時においても、送信回路12からキャリアを送信し続ける。
【0037】
リーダライタ10側のアンテナ共振回路部14は、コイルL10とコンデンサC10からなる並列共振回路で構成され、1次コイルとして作用する。その共振周波数は、送信回路12で生成するキャリア周波数付近に設定される。
【0038】
一方、非接触ICカード30側のアンテナ共振回路部32は、コイルL30とコンデンサC30でと構成され、2次コイルとして作用する。アンテナ共振回路部32の共振周波数は、コンデンサC30のキャパシタンス及びコイルL30のインダクタンスにより所定の値に設定される。通常、アンテナ共振回路部32をキャリア周波数周辺に設定することで、リーダライタ10側のアンテナ共振回路部14と電磁結合する。コイルL10とコイルL30は、結合係数K13で磁気的に結合しており、その値は両者の位置が近づくほど大きくなっていく。
【0039】
アンテナ共振回路部32には、負荷切り替え変調回路部33が並列的に接続されている。負荷切り替え変調回路部33は、直列接続される抵抗R31と、MOS(Metal Oxide Semiconductor)からなるトランジスタ・スイッチQ31で構成され、トランジスタ・スイッチQ31をオン/オフ操作することによって、アンテナ共振回路部32の負荷変調を行なう。
【0040】
ダウンリンクのデータ受信時には、アンテナ共振回路部32は、リーダライタ10のアンテナ共振回路部14からの受信信号を制御部34に供給する。制御部34内では、受信信号を復調した後、マンチェスタ復号処理して、元の送信データを再現する。なお、高速通信などにおける受信信号の乱れを補償するために、マンチェスタ復号する前に適応等化処理が必要であるが、この点の詳細については後述する。
【0041】
また、アップリンクのデータ送信時には、制御部34は送信データをマンチェスタ符号化する。リーダライタ10側からはキャリアが送信し続けられており、アンテナ共振回路部12のコイルL30には磁界が発生している。負荷切り替え変調回路部33は、制御部34から供給された1並びに0からなるマンチェスタ符号化されたビット系列に応じてMOSスイッチQ31のオン/オフをスイッチングすることにより送信データに応じて磁界を負荷変調し、これによって、リーダライタ10のアンテナ共振回路部12にデータ送信する。
【0042】
リーダライタ10側では、電磁結合している2次コイルL30の負荷が変化すると、電磁結合の入力インピーダンスが変化するので、結果として、キャリア周波数の出力レベルが変化する。したがって、受信回路13は、このレベル変動をみることによって、非接触ICカード30からの送信データを読み取ることができ、マンチェスタ復号処理して元の送信データを再現すると、制御部11に渡す。なお、高速通信などにおける受信信号の乱れを補償するために、マンチェスタ復号する前に適応等化処理が必要であるが、この点の詳細については後述する。
【0043】
以上、続いて、図1を用いて本発明の一実施形態に係る非接触通信システム1の構成について説明した。次に、図1に示した非接触通信システム1におけるデータ送受信処理について説明する。
【0044】
[1−2.非接触通信システムにおけるデータ送受信処理]
図2及び図3は、図1に示した非接触通信システム1におけるデータ送受信処理を示す流れ図である。以下、図2及び図3を用いて、図1に示した非接触通信システム1におけるデータ送受信処理について説明する。なお、図2のフローチャートはリーダライタ10が実行する処理手順を示し、図3のフローチャートは非接触ICカード30が実行する処理手順を示している。
【0045】
リーダライタ10の送信回路12は、キャリア周波数を生成する(ステップS1)。
【0046】
送信回路12は、制御部11より取得した送信データを、マンチェスタ符号に符号化する(ステップS2)。
【0047】
次いで、送信回路12は、符号化データに基づいて、ステップS1で生成されたキャリアを振幅変調する(ステップS3)。
【0048】
ステップS3で振幅変調された変調信号は、アンテナ共振回路部14に供給される(ステップS4)。そして、アンテナ共振回路部14は、供給された変調信号に応じた磁界を発生させる。
【0049】
ステップS4で発生された磁界による磁気結合の結果、非接触ICカード30側のアンテナ共振回路部32に起電力が誘起される(ステップS21)。
【0050】
非接触ICカード30は、IC用電源生成回路(図示しない)を備えており、ステップS21で誘起された起電力を基に電源回路を形成し、各部に必要な電力を供給する(ステップS22)。また非接触ICカード30は、ステップS21で誘起された起電力からクロック成分を抽出する(ステップS23)。
【0051】
制御部34内の受信回路は、ステップS21で誘起された起電力の電圧振幅変化を基に、振幅変調されている変調信号を復調処理する(ステップS24)。
【0052】
ステップS24で復調された信号はマンチェスタ符号へ符号化されている。制御部34内の受信回路は、この復調信号をマンチェスタ復号する(ステップS25)。なお、高速通信などにおける受信信号の乱れを補償するために、マンチェスタ復号する前に適応等化処理が必要であるが、この点の詳細については後に詳述する。
【0053】
制御部34内のロジック回路(図示しない)は、あらかじめ設定された所定のプログラムに従って、復号されたデータをEEPROM(図示しない)などに不揮発的に記憶させたり、不揮発的に記憶されているデータを読み出したり、あるいは削除する。また、このロジック回路で、リーダライタ10への送信データを作成する(ステップS26)。
【0054】
符号化/復号化回路39は、ステップS26で作成された送信用情報をマンチェスタ符号に符号化し、負荷切り替え変調回路部33に供給する(ステップS27)。
【0055】
リーダライタ10側からはキャリアが送信し続けられており、アンテナ共振回路部12のコイルL30には磁界が発生している。負荷切り替え変調回路部33は、マンチェスタ符号化されたデータのビット系列に従ってMOSスイッチQ31のオン/オフをスイッチングすることにより、アンテナ共振回路部32のインピーダンスを変化させて、磁界を負荷変調する(ステップS28)。これによって、マンチェスタ符号化されたデータがリーダライタ10のアンテナ共振回路部12に送信される(ステップS29)。
【0056】
リーダライタ10のアンテナ共振回路部14には無変調のキャリアが流れており、キャリアに、ステップS29で発生したインピーダンス変化に応じた電圧振幅変化が誘起される。アンテナ共振回路部14は、この変化を検出することで非接触ICカード30からの信号を受信する(ステップS5)。
【0057】
受信回路13は、ステップS5で誘起された電圧振幅変化を基に、負荷変調された信号を復調する(ステップS6)。復調された信号はマンチェスタ符号へ符号化されているので、受信回路13では復調信号をさらにマンチェスタ復号して(ステップS7)、送信データを再現して、制御部11に供給する。なお、高速通信などにおける受信信号の乱れを補償するために、マンチェスタ復号する前に適応等化処理が必要である(同上)。
【0058】
既に述べたように、フェリカではマンチェスタ符号が用いられ、また、ダウンリンクとアップリンクでは同一のパケット・フォーマット(図17を参照のこと)を使用する。
【0059】
また、リーダライタ10と非接触ICカード30間の通信レートを、212kbpsの倍数である、424kbps、848kbps、1.7Mbps、3.4Mbpsへと高速化すると、それに比例して送信信号の周波数帯域が広くなり、伝送路や送信回路並びに受信回路内のRFアナログ回路の周波数特性の影響が増え、受信波形の乱れが大きくなっていく。すなわち、電磁結合を利用した非接触通信において高速な通信を実現しようとすると、周波数特性の劣化を補償するために、受信側での適応等化が必要となる。
【0060】
そこで、本実施形態では、例えばリーダライタ10又は非接触ICカード30の少なくとも一方の受信回路において、適応等化を採用して、受信信号の乱れを補償するようになっている。
【0061】
また、適応等化を行なうには学習用に十分長い信号系列が必要であるが、このような信号系列を送信すると、NFC IP−1規格で規定されているフェリカ・フォーマット(図17)との互換性の問題や、オーバーヘッドの増加による通信レートの低下を招来する可能性がある。
【0062】
そこで、本実施形態では、フェリカ・フォーマットをそのまま使用して、パケットのシンク部を学習ビットとして用いて適応等化を行なうようにしている。これにより、互換性の問題やオーバーヘッドの増加を避けることができる。実際には、受信回路内に遅延バッファを設けることで、シンク部を用いたフレーム同期と、同じシンク部を用いた適応等化の両方を実現するようにしている。
【0063】
さらに、本実施形態では、1/2サンプリングされた信号を適応等化して2値化判定を行う場合に、同期位置を複数選出してそれぞれの同期位置についてシンク部のトレーニング等化を行い、最も誤差が小さい同期位置に対してデータ部のトラッキング等化を行う。これにより、伝送路の周波数特性の影響を受けた場合であっても受信性能の低下を防ぎ、受信性能を向上させることができる。
【0064】
[1−3.受信回路の構成]
まず、1/2サンプリングされた信号を適応等化して2値化判定を行う場合の受信回路の構成について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係るリーダライタ10に含まれる受信回路13の構成を示す説明図である。以下、図4を用いて本発明の一実施形態に係るリーダライタ10に含まれる受信回路13の構成について説明する。
【0065】
図4に示したように、受信回路13は、プリアンブル検出部41と、シンク検出部42と、遅延バッファ43と、遅延素子44と、加算器45と、1/2サンプリング部46と、適応等化部47と、2値判定部48と、を含んで構成される。
【0066】
プリアンブル検出部41は、受信信号の中から連続波形であるプリアンブル部を検出するものである。また、プリアンブル検出部41は、連続波形を基にサンプリングタイミングの抽出を行い、タイミング同期を取る。
【0067】
シンク検出部42は、受信信号と、プリアンブル検出部41で抽出されたサンプリングタイミングをもとに、特定パターンであるシンク部の検出を行い、フレーム同期をとるものである。このシンク部の検出には、一般に、パターンマッチングや相互相関などの方法が用いられる。どちらの方法も、既知であるシンク部パターンとの同一性を求めるもので、通常はノイズ耐性を高めるためにシンク部のほぼ全体を使って同一性の確認が行われる。尚、プリアンブル部も既知な特定パターンであるので、プリアンブル部の後半の数サンプルを同一性の確認に含めることができる。そしてシンク検出部42は、最も同一性が高いと判断された位置をシンク部の開始位置を示すタイミング信号として出力する。
【0068】
遅延バッファ43は、シンク検出部42がシンク部の検出を確定したタイミングで、出力する受信信号がシンク部の先頭データとなるように遅延を与えるものである。具体的には、遅延バッファ43は、シンク検出部42がシンク部の検出を確定するまで、シンク部の先頭が出力されないような遅延を与えるものである。
【0069】
遅延素子44は、1サンプルデータ分だけ受信信号を遅延させるものである。加算器45は、遅延バッファ43から出力される受信信号を、遅延素子44で1サンプルデータ分だけ遅延させた受信信号から減算する処理を実行するものである。この処理は受信信号の傾きを求めることに相当し、高域の周波数を強調する特性となり、遅延素子44と加算器45とで微分フィルタとして作用する。
【0070】
1/2サンプリング部46は、2サンプリングデータ毎に1回、データを間引いて出力するものである。具体的には、1/2サンプリング部46は、シンク検出部42によるシンク部検出のタイミングを起点に、偶数番目の受信信号を破棄する。1/2サンプリング部46によりデータが間引かれた受信信号は適応等化部47に送られる。
【0071】
適応等化部47は、FIRフィルタと学習回路で構成される学習型の等化回路であり、シンク検出部42が出力するシンク部の開始位置を示すタイミング信号を基に、受信信号と内部に持つシンク・パターンとの比較を行なう。そして適応等化部47は、その差が小さくなるようにFIRフィルタのタップ係数を調整する。適応等化部47は、タップ係数を調整するための学習アルゴリズムとして、例えばNLMS(Normalized Least Mean Squares)アルゴリズムなどを用いても良い。適応等化部47により等化された受信信号は2値判定部48に送られる。
【0072】
2値判定部48は、適応等化部47により等化された受信信号の符号の正負判定を行い、NRZ符号に変換するものである。
【0073】
このように受信回路13を構成することで、FIRフィルタのタップ数を増やさずに、より複雑な周波数特性を改善する適応等化を可能とすることができる。
【0074】
以上、図4を用いて本発明の一実施形態に係るリーダライタ10に含まれる受信回路13の構成について説明した。次に、本発明の一実施形態に係るリーダライタ10に含まれる受信回路13の別の構成について説明する。
【0075】
図5は、本発明の一実施形態に係るリーダライタ10に含まれる受信回路13の別の構成を示す説明図である。以下、図5を用いて本発明の一実施形態に係るリーダライタ10に含まれる受信回路13の別の構成について説明する。
【0076】
図4に示した受信回路13では、適応等化前に1/2サンプリングを行っている。すると、適応等化でタップ係数の学習に利用するシンク部のビット数が半減する。そのため、タップ係数の収束性能が落ちてしまう場合がある。図5に示した受信回路13はタップ係数の収束性能を落とさないための構成を有している。
【0077】
図5に示したように、受信回路13は、プリアンブル検出部41と、シンク検出部42と、遅延素子44と、加算器45と、1/2サンプリング部46と、適応等化部47と、2値判定部48と、RAM制御部51と、RAM52と、を含んで構成される。
【0078】
図4に示した構成と異なるのは、遅延バッファ43の替わりにRAM制御部51と、RAM52とが設けられている点である。
【0079】
RAM制御部51は、シンク検出部42から送られる受信信号をRAM52へ書き込んだり、RAM52に書き込まれた受信信号を所定のタイミングで読み出し、後段の回路へ出力したりするものである。
【0080】
RAM制御部51は、シンク検出部42が確定したシンク部の検出タイミングを起点にして、シンク部の先頭データが格納されるアドレスを記憶する。そして、シンク部の最終データが出力されると、RAM制御部51は読み出しアドレスを再度シンク部の先頭データの格納アドレスに設定し、シンク部の読み出しを行なう。事前に決められたシンク部繰り返し回数の読み出しを終えると、RAM制御部51はデータ部の読み出しを行う。図16は、シンク部繰り返し回数を2とした場合のRAM制御部51から後段の回路へ出力されるデータ列を示す説明図である。
【0081】
このように、シンク部をRAM52へ記憶するとともに事前に決められたシンク部繰り返し回数の読み出し、繰り返し回数分のタップ係数の学習を行なうように構成することで、1/2サンプリングに伴うシンク部のビット数半減にも拘らず、タップ係数の収束性能を維持することができる。
【0082】
しかし、このようにRAM制御部51及びRAM52を受信回路13に設けた場合であっても、伝送路の周波数特性の影響等により、シンク検出部42において同期検出位置がずれてしまうと、受信性能が悪化してしまう場合がある。以下において、シンク検出部42において同期検出位置がずれた場合と、その場合の受信性能について説明する。
【0083】
図6は、伝送路の周波数特性の影響を受けた受信信号波形の一例を示す説明図であり、図7は、受信信号と、プリアンブル部(4ビット)及びシンク部(16ビット)との相互相関値の一例を示す説明図である。
【0084】
図7に示した相互相関値の結果から、最も相関値の高い位置Aと、位置Aの1サンプル前に、次いで相関値の高い位置Bが存在していることがわかる。このケースでは、本来、位置Bが正しい同期位置であるが、位置Aのほうが高い相関値となっている。伝送路の周波数特性がフラットである場合、相互相関結果から同期位置を一意に決定することが可能であるが、周波数特性によって振幅や位相が影響を受けると、図7のように1サンプルずれた位置でも高い相関値を示し、ひいては、本来の位置より相関値が高くなる場合がある。
【0085】
上述したように、受信回路13では、受信信号の傾き演算を行い、同期位置を起点に1/2サンプリングを行う。図8は、マンチェスタ符号化されたデータを復号する手順を示す説明図である。
【0086】
NRZ符号である送信データNRZ「1,0,1,1,0,0,1,0,0,1,0,0,1,1,0,1」は、マンチェスタ符号化され、送信信号MAN「1,−1,−1,1,1,−1,1,−1,−1,1,−1,1,1,−1,−1,1,−1,1,1,−1,−1,1,−1,1,1,−1,1,−1,−1,1,1,−1」として送信される。
【0087】
受信信号は、伝送路の周波数特性の影響を受けて受信され、A/Dコンバータを経て量子化された値となるが、ここでは簡単化のために特性変化のない、「1」「−1」の2値で処理の行程を説明する。すなわち、送信信号MAN=受信信号MANとなる。受信信号MANと、受信信号MANを1クロック遅延させた遅延信号Dを減算すると、信号D−MAN「−1,2,0,−2,0,2,−2,0,−2,2,−2,0,2,0,−2,2,−2,0,2,0,−2,2,−2,0,2,−2,2,0,−2,0,2」を得る。
【0088】
次に、同期位置を起点に1/2サンプリングを行い「2,−2,2,2,−2,−2,2,−2,−2,2,−2,−2,2,2,−2,2」となる。次に、本来は適応等化により波形を等化するが、ここでは伝送路の周波数特性の影響を考慮していないので等化なしでも復号が可能である。次に、信号の正負からNRZ−Dec「1,0,1,1,0,0,1,0,0,1,0,0,1,1,0,1」に復号される。復号データNRZ−Decは送信データNRZと等しくなり、正しく受信できたことがわかる。
【0089】
一方、1サンプル遅れた位置を同期位置とした場合を考える。本来、マンチェスタ符号はNRZデータ「0」を「01」に、「1」を「10」に符号化するため、必ず傾きが存在することになるが、1サンプル遅れた場合、後続のデータとの境の傾きを評価することになる。後続のデータが0であるか1であるかは不定であり、傾きは正か負のみならず、0となる状態も存在し、3値となる。こうして、1サンプル同期位置がずれた場合の1/2サンプリング結果は、図8に示すように「0,0,−2,0,2,0,0,2,0,0,2,0,−2,0,0」となる。後段の適応等化は、受信信号を+1と−1の二値へ等化する方式であるため、上述の同期ずれで生じた3値信号を良好に等化することは困難になる。同様の理由で、1サンプル早い位置を同期位置とした場合も、良好に等化することは困難になる。
【0090】
図9は、図7の位置Aを同期位置とした場合の等化後信号点分布を示す説明図であり、図10は、図7の位置Bを同期位置とした場合の等化後信号点分布を示す説明図である。図9及び図10に示した信号点分布より、図7の位置Aのほうが相関値は高いが、正しい同期位置でないために等化誤差が大きくなることが分かる。
【0091】
このように、電磁結合を利用する非接触通信システムにおいて、伝送路の周波数特性の影響により同期検出位置がずれる場合があり、同期検出位置のずれが等化性能の悪化をもたらす要因となっていた。
【0092】
そこで、本実施形態では、受信回路において相関値が高い同期位置を複数選出し、それぞれの同期位置候補に対してシンク部のトレーニング等化を行い、各候補の等化後信号点の誤差を比較し、最も誤差が小さいと判定された同期位置候補に対してデータ部のトラッキング等化を行う。これにより、電磁結合を利用する非接触通信システムにおいて、最も相関の高い位置が正しい同期検出でない場合でも、複数の同期位置候補の中から好適な同期位置を判定し、等化を行うことが可能になる。
【0093】
以下、本発明の一実施形態に係る、リーダライタ10に含まれる受信回路13の構成について説明する。
【0094】
図11は、本発明の一実施形態に係る、リーダライタ10に含まれる受信回路13の構成を示す説明図である。以下、図11を用いて本発明の一実施形態に係る受信回路13の構成について説明する。
【0095】
図11に示したように、本発明の一実施形態に係る、リーダライタ10に含まれる受信回路13は、プリアンブル検出部101と、シンク検出部102と、遅延素子104と、加算器105と、1/2サンプリング部106と、適応等化部107と、2値判定部108と、RAM制御部111と、RAM112と、等化性能判定部113と、を含んで構成される。
【0096】
プリアンブル検出部101は、受信信号の中から連続波形であるプリアンブル部を検出するものである。また、プリアンブル検出部101は、連続波形を基にサンプリングタイミングの抽出を行い、タイミング同期を取る。
【0097】
シンク検出部102は、受信信号と、プリアンブル検出部101で抽出されたサンプリングタイミングを基に、特定パターンであるシンク部の検出を行い、フレーム同期をとるものである。このシンク部の検出には、一般に、パターンマッチングや相互相関などの方法が用いられる。どちらの方法も、既知であるシンク部パターンとの同一性を求めるもので、通常はノイズ耐性を高めるためにシンク部のほぼ全体を使って同一性の確認が行われる。尚、プリアンブル部も既知な特定パターンであるので、プリアンブル部の後半の数サンプルを同一性の確認に含めることができる。そしてシンク検出部102は、最も同一性が高いと判断された位置をシンク部の開始位置を示すタイミング信号として出力する。
【0098】
そして、シンク検出部102は、最も同一性が高いと判断された相関値のピーク位置を、シンク部の開始位置を示すタイミング信号として出力する。更に、2番目に高い相関値が、あるスレッショルド値以上であるならば、第2候補が存在することを表すフラグ信号と、その位置信号とを出力する。
【0099】
RAM制御部111は、シンク検出部102から送られる受信信号をRAM112へ書き込んだり、RAM112に書き込まれた受信信号を所定のタイミングで読み出し、後段の回路へ出力したりするものである。
【0100】
RAM制御部111は、シンク検出部102が確定したシンク部の検出タイミングを起点にして、シンク部の先頭データが格納されるアドレスを記憶する。そして、シンク部の最終データが出力されると、RAM制御部111は読み出しアドレスを再度シンク部の先頭データの格納アドレスに設定し、シンク部の読み出しを行なう。事前に決められたシンク部繰り返し回数の読み出しを終えると、RAM制御部111はデータ部の読み出しを行う。
【0101】
そしてRAM制御部111は、シンク検出部102から同期位置の第2候補が存在することを表すフラグ信号が入力されている場合、第1候補位置に基づきRAM112に記憶されているシンク部の読み出しを行った後、引き続き第2候補位置に合わせて読み出しアドレスを変更し、RAM112に記憶されているシンク部を読み出す。
【0102】
図12は、RAM制御部111により読み出されるシンク部の例を示す説明図である。図12は、同期位置の候補が2つある場合に、RAM制御部111が第1候補のシンク部及び第2候補のシンク部を読み出す場合について示したものである。
【0103】
遅延素子104は、1サンプルデータ分だけ受信信号を遅延させるものである。加算器105は、RAM制御部111から出力される受信信号を、遅延素子104で1サンプルデータ分だけ遅延させた受信信号から減算する処理を実行するものである。この処理は受信信号の傾きを求めることに相当し、高域の周波数を強調する特性となり、遅延素子104と加算器105とで微分フィルタとして作用する。
【0104】
1/2サンプリング部106は、2サンプリングデータ毎に1回、データを間引いて出力するものである。具体的には、1/2サンプリング部106は、シンク検出部102によるシンク部検出のタイミングを起点に、偶数番目の受信信号を破棄する。1/2サンプリング部106によりデータが間引かれた受信信号は適応等化部107に送られる。
【0105】
なお、同期位置の第2候補が存在する場合には、1/2サンプリング部106は、RAM制御部111から読み出された第1候補のシンク部の第1候補位置を起点に偶数番目の受信信号を破棄し、第2候補のシンク部の第2候補位置を起点に偶数番目の受信信号を破棄する。
【0106】
適応等化部107は、FIRフィルタと学習回路で構成される学習型の等化回路であり、シンク検出部102が出力するシンク部の開始位置を示すタイミング信号を基に、受信信号と内部に持つシンク・パターンとの比較を行なう。そして適応等化部107は、その差が小さくなるようにFIRフィルタのタップ係数を調整する。適応等化部107は、タップ係数を調整するための学習アルゴリズムとして、例えばNLMSアルゴリズムなどを用いても良い。
【0107】
そして適応等化部107は、同期位置の第2候補が存在する場合には、第1候補のシンク部と内部に持つシンク・パターンを比較し、例えばNLMSアルゴリズムなどを用いてFIRフィルタのタップ係数をトレーニングするトレーニング等化を実行する。また適応等化部107は、シンク部の等化後信号を等化性能判定部113へ出力する。第1候補に対してトレーニングされたタップ係数を、テンポラリのレジスタ(図示せず)へ保持し、続いて、タップ係数を初期化する。次に第2候補のシンク部と内部に持つシンク・パターンを比較し、再度FIRフィルタのタップ係数をトレーニングするトレーニング等化を実行する。第2候補に対しても、シンク部の等化後信号を等化性能判定部113へ出力する。このように、複数の同期位置の候補が存在する場合に、その複数の候補に対してFIRフィルタのタップ係数をトレーニングするトレーニング等化を適応等化部107で実行することで、受信回路13は、複数の同期位置の候補の中から最も適した同期位置を探し出すことができる。
【0108】
2値判定部108は、適応等化部107により等化された受信信号の符号の正負判定を行い、NRZ符号に変換するものである。
【0109】
等化性能判定部113は、シンク・パターンとシンク部の等化後信号点の誤差を求める。等化誤差を求める際には、一般的には、平均二乗誤差が用いられる。等化性能判定部113は、同期位置の第2候補が存在する場合、第1候補の等化誤差と第2候補の等化誤差とを求め、各候補のトレーニング終了時点での等化誤差値を比較する。そして、等化性能判定部113は、誤差値が少ない候補を最も適した同期位置として決定する。
【0110】
図13は、平均二乗誤差により求めた、第1候補と第2候補の等化誤差値の一例を示す説明図である。図13に示した例では、各候補のトレーニング終了時点の等化誤差値を比較すると、第2候補の誤差値のほうが小さい。よって、等化性能判定部113は、第2候補が最も確からしい同期位置であることを、RAM制御部111と適応等化部107へ通知する。
【0111】
RAM制御部111は第1候補と第2候補のシンク部読み出しを終えると、データ部の読み出しを開始するが、このとき、等化性能判定部113から通知されてくる情報に基づき、データ部を第1候補の同期位置を起点に読み出すか、第2候補の同期位置を起点に読み出すかを切り替える。
【0112】
また、適応等化部107は第1候補と第2候補のトレーニングを終えると、データ部のトラッキング等化を開始する。このとき、等化性能判定部113から通知されてくる情報に基づき、テンポラリのレジスタ(図示せず)に格納されている第1候補でトレーニングしたタップ係数を基にトラッキング等化を開始するか、第2候補でトレーニングしたタップ係数で引き続きトラッキング等化を行うかを切り替える。
【0113】
このように受信回路13を構成することで、最も相関の高い位置が正しい同期検出でない場合でも、複数の同期位置候補の中から好適な同期位置を判定し、等化を行うことが可能になる。なお、上述した受信回路13は、1/2サンプリング部106は、2サンプリングデータ毎に1回、データを間引いて出力する。従って、シンク検出部102は、シンク部の候補として、隣接する、または偶数個離れたサンプル位置を複数抽出してもよい。
【0114】
以上、図11を用いて本発明の一実施形態に係る、リーダライタ10に含まれる受信回路13の構成について説明した。なお、ここではリーダライタ10に含まれる受信回路13の構成について説明したが、非接触ICカード30にも、同様の構成を有する受信回路が含まれていても良い。次に、図11に示した本発明の一実施形態に係る、リーダライタ10に含まれる受信回路13の動作について説明する。
【0115】
[1−4.受信回路の動作]
図14は、本発明の一実施形態に係る、リーダライタ10に含まれる受信回路13の動作を示す流れ図である。以下、図14を用いて本発明の一実施形態に係る受信回路13の動作について説明する。
【0116】
まず、プリアンブル検出部101が、リーダライタ10が受信した受信信号に対して、受信信号の中から連続波形であるプリアンブル部を検出する処理を実行する(ステップS101)。
【0117】
上記ステップS101で、リーダライタ10が受信した受信信号の中から、プリアンブル検出部101がプリアンブル部を検出すると、続いて、シンク検出部102が、受信信号と、プリアンブル検出部101で抽出されたサンプリングタイミングを基に、特定パターンであるシンク部の検出を行うが、ここで、相関値が、あるスレッショルド値以上であるならば、相関値が高い位置を同期位置として複数選出する(ステップS102)。同期位置を複数選出する際には、例えばシンク検出部102は、同期位置の候補が存在することを表すフラグ信号と、その位置信号とを出力する。
【0118】
上記ステップS102でシンク検出部102が相関値の高い位置を同期位置として複数選出すると、RAM制御部111は、受信信号が格納されるRAM112から、それぞれの同期位置からシンク長分の長さの信号を読み出して出力する(ステップS103)。
【0119】
同期位置として選出された数だけ読み出されたシンク長分の長さの信号は、遅延素子104と加算器105とで傾きが求められ、1/2サンプリング部106で、2サンプリングデータ毎に1回データを出力する間引き処理が行われる。そして、適応等化部107は、1/2サンプリング部106で、2サンプリングデータ毎に1回データを出力する間引き処理が行われた各信号に対し、トレーニング等化する(ステップS104)。
【0120】
例えば、シンク検出部102が相関値の高い位置を同期位置として2つ選出した場合には、適応等化部107は、まず最も相関値の高い第1候補の同期位置に基づいてトレーニング等化を実行し、FIRフィルタのタップ係数をテンポラリのレジスタ(図示せず)へ保持する。続いて適応等化部107は、まずその次に相関値の高い第2候補の同期位置に基づいてトレーニング等化を実行する。
【0121】
上記ステップS104で、適応等化部107が1/2サンプリング部106で間引き処理が行われた各信号に対しトレーニング等化すると、続いて、等化性能判定部113が、各候補の等化誤差を比較し、最も誤差の少ない候補を同期位置に確定する(ステップS105)。等化性能判定部113が確定した同期位置の情報はRAM制御部111及び適応等化部107に送られる。
【0122】
RAM制御部111は、等化性能判定部113が上記ステップS105で確定し、等化性能判定部113から送られる同期位置の情報に基づいて、RAM112から受信信号を読み出してデータ部の信号を出力する(ステップS106)。
【0123】
上記ステップS106でRAM制御部111がRAM112から読み出したデータ部の信号は、遅延素子104と加算器105とで傾きが求められ、1/2サンプリング部106で間引き処理が行われる。そして、適応等化部107は、1/2サンプリング部106で間引き処理が行われたデータ部の信号を、等化性能判定部113が上記ステップS105で確定し、等化性能判定部113から送られる同期位置の情報に基づいてトラッキング等化する(ステップS107)。
【0124】
図15は、本発明の一実施形態に係る受信回路13による、等化後信号点分布の一例を示す説明図である。このように、第1候補と第2候補のトレーニング結果から正しい同期位置を判定した結果、データ部が良好に等化されたことがわかる。
【0125】
以上、図14を用いて本発明の一実施形態に係る受信回路13の動作について説明した。このように受信信号に対して受信回路13が動作することによって、最も相関の高い位置が正しい同期検出でない場合でも、複数の同期位置候補の中から好適な同期位置を判定し、等化を行うことが可能になる。また、トレーニング等化によって複数の同期位置候補の中から好適な同期位置を判定することで、CRCチェックを繰り返す必要がなく、受信信号の判定に要する時間を短縮することが可能になり、ひいては非接触通信に要する時間を短縮することが可能になる。
【0126】
<2.まとめ>
以上説明したように本発明の一実施形態によれば、フェリカ・フォーマットをそのまま使用して、パケットのシンク部を学習ビットとして用いて適応等化を行なうようにしている。これにより、互換性の問題やオーバーヘッドの増加を避けることができる。実際には、受信回路内に遅延バッファを設けることで、シンク部を用いたフレーム同期と、同じシンク部を用いた適応等化の両方を実現するようにしている。
【0127】
さらに、上述した本発明の一実施形態では、1/2サンプリングされた信号を適応等化して2値化判定を行う場合に、同期位置を複数選出してそれぞれの同期位置についてシンク部のトレーニング等化を行い、最も誤差が小さい同期位置に対してデータ部のトラッキング等化を行う。これにより、伝送路の周波数特性の影響を受けた場合であっても受信性能の低下を防ぎ、受信性能を向上させることができる。
【0128】
このように、電磁結合を利用する非接触通信システムにおいて、受信側で受信信号の傾き演算を行い、1/2サンプリングを行うことで受信信号の帯域が1/2に低減される。この信号を適応等化する場合、従来と同じFIRフィルタのタップ数でありながら、より複雑な周波数特性を表すことが可能となる。また、同期位置がずれることによって起こる等化性能の低下に対し、複数の同期位置候補の中から好適な同期位置を判定し、等化を行うことを可能にしたため、等化が良好に行われ受信性能が向上する。
【0129】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0130】
例えば、上記実施形態では、NFC IP−1規格に従う非接触通信システムに本発明を適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。電気的負荷の変更方向の切り替えによる変調を利用して通信を行なう、さまざまな規格に準拠した通信システムに、同様に本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、受信装置、非接触ICカード、リーダライタ及び受信方法に適用可能であり、特に電磁結合を利用した非接触通信システムにおいて、マンチェスタ符号化された無線信号を受信処理する際に、通信レートの高速化に伴う受信波形の乱れを適応等化しながらマンチェスタ符号化された無線信号を受信処理する受信装置、非接触ICカード、リーダライタ及び受信方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0132】
1 非接触通信システム
10 リーダライタ
11 制御部
12 送信回路
13 受信回路
14 アンテナ共振回路部
30 非接触ICカード
31 制御部
32 アンテナ共振回路部
33 負荷切り替え変調回路部
34 制御部
101 プリアンブル検出部
102 シンク検出部
104 遅延素子
105 加算器
106 1/2サンプリング部
107 適応等化部
108 2値判定部
111 RAM制御部
112 RAM
113 等化性能判定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号の中から、連続波形からなるプリアンブル部を検出して前記連続波形を基にサンプリングタイミングを抽出するプリアンブル検出部と、
前記サンプリングタイミングを基に前記受信信号の中から、所定の条件を満たす特定パターンからなるシンク部の候補を複数検出して該シンク部の開始位置を示すタイミング信号を出力するシンク検出部と、
前記受信信号を記憶する記憶部と、
前記記憶部への前記受信信号の記憶及び前記記憶部からの前記受信信号の読み出しを制御する記憶制御部と、
前記記憶制御部が前記記憶部から読み出す前記受信信号に対し、前記シンク検出部においてシンク部の検出を確定するまでシンク部の先頭が出力されないように遅延を与える遅延時間付与部と、
前記遅延時間付与部で遅延時間が与えられた受信信号と、マンチェスタ符号での1クロック分に相当する遅延時間がさらに与えられた受信信号との差分を計算する傾き演算部と、
前記傾き演算部で傾き演算されたシンク部の先頭から、マンチェスタ符号のクロック2回に1回の間隔で抽出する1/2サンプリング部と、
前記タイミング信号を基に、1/2サンプリングされたシンク部の各候補を用いてトレーニング等化を行う適応等化部と、
前記適応等化部でトレーニング等化されたシンク部の各候補の等化誤差を比較し、最も誤差の小さい候補位置を確定する等化性能判定部と、
前記適応等化部で適応等化された受信信号を2値判定して、マンチェスタ符号をNRZ符号に復号する2値判定部と、
を備え、
前記記憶制御部は、前記等化性能判定部が確定した最も誤差の小さい候補位置の情報に基づいて前記記憶部から前記受信信号を読み出す、情報処理装置。
【請求項2】
前記適応等化部は、前記等化性能判定部が確定した最も誤差の小さい候補位置の情報に基づいて、前記受信信号に含まれる特定パターンからなるデータ部の適応等化を行う、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記シンク検出部は、シンク部の候補として、隣接するサンプル位置を複数抽出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記シンク検出部は、シンク部の候補として、偶数個離れたサンプル位置を複数抽出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記適応等化部は、FIRフィルタのタップ係数をトレーニングするトレーニング等化を実行する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
受信信号の中から、連続波形からなるプリアンブル部を検出して前記連続波形を基にサンプリングタイミングを抽出するプリアンブル検出ステップと、
前記サンプリングタイミングを基に前記受信信号の中から、特定パターンからなるシンク部の候補を複数検出して該シンク部の開始位置を示すタイミング信号を出力するシンク検出ステップと、
前記受信信号を記憶する記憶ステップと、
前記受信信号に対し、前記シンク検出部においてシンク部の検出を確定するまでシンク部の先頭が出力されないように遅延を与える遅延時間付与ステップと、
前記遅延時間付与ステップで遅延時間が与えられた受信信号と、マンチェスタ符号での1クロック分に相当する遅延時間がさらに与えられた受信信号との差分を計算する傾き演算ステップと、
前記傾き演算ステップで傾き演算されたシンク部の先頭から、マンチェスタ符号のクロック2回に1回の間隔で抽出する1/2サンプリングステップと、
前記タイミング信号を基に、1/2サンプリングされたシンク部の各候補を用いてトレーニング等化を行う適応等化ステップと、
前記適応等化ステップでトレーニング等化されたシンク部の各候補の等化誤差を比較し、最も誤差の小さい候補位置を確定する等化性能判定ステップと、
前記等化性能判定ステップで確定した最も誤差の小さい候補位置に基づいて前記記憶ステップで記憶した受信信号を読み出す読み出しステップと、
前記読み出しステップで読み出され、適応等化された受信信号を2値判定して、マンチェスタ符号をNRZ符号に復号する2値判定ステップと、
を備える、通信方法。
【請求項7】
リーダライタと、
前記リーダライタと所定の周波数の搬送波により非接触通信する情報処理装置と、
を備え、
前記リーダライタまたは前記情報処理装置の少なくともいずれか一方は、
受信信号の中から、連続波形からなるプリアンブル部を検出して前記連続波形を基にサンプリングタイミングを抽出するプリアンブル検出部と、
前記サンプリングタイミングを基に前記受信信号の中から、所定の条件を満たす特定パターンからなるシンク部の候補を複数検出して該シンク部の開始位置を示すタイミング信号を出力するシンク検出部と、
前記受信信号を記憶する記憶部と、
前記記憶部への前記受信信号の記憶及び前記記憶部からの前記受信信号の読み出しを制御する記憶制御部と、
前記記憶制御部が前記記憶部から読み出す前記受信信号に対し、前記シンク検出部においてシンク部の検出を確定するまでシンク部の先頭が出力されないように遅延を与える遅延時間付与部と、
前記遅延時間付与部で遅延時間が与えられた受信信号と、マンチェスタ符号での1クロック分に相当する遅延時間がさらに与えられた受信信号との差分を計算する傾き演算部と、
前記傾き演算部で傾き演算されたシンク部の先頭から、マンチェスタ符号のクロック2回に1回の間隔で抽出する1/2サンプリング部と、
前記タイミング信号を基に、1/2サンプリングされたシンク部の各候補を用いてトレーニング等化を行う適応等化部と、
前記適応等化部でトレーニング等化されたシンク部の各候補の等化誤差を比較し、最も誤差の小さい候補位置を確定する等化性能判定部と、
前記適応等化部で適応等化された受信信号を2値判定して、マンチェスタ符号をNRZ符号に復号する2値判定部と、
を含み、
前記記憶制御部は、前記等化性能判定部が確定した最も誤差の小さい候補位置の情報に基づいて前記記憶部から前記受信信号を読み出す、無線通信システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−254157(P2011−254157A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125023(P2010−125023)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】