説明

情報処理装置、情報処理方法、情報処理装置用プログラム、および、記録媒体

【課題】対象物の追跡が正確にできる情報処理装置等を提供する。
【解決手段】動画の予め選択された1のフレームの画像における対象物2上に少なくとも1つのパーティクルpを設定し(S3)、予め選択された1のフレーム20以降、動画における時間的に前のフレームと時間的に後のフレームとを順次取得し(S4)、取得される前のフレームの画像と後のフレームの画像との背景差分画像30を算出し(S5)、算出された背景差分画像に応じて、パーティクルの追跡範囲の外縁3aを決定し、前のフレームの画像におけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内かつ追跡範囲の外縁内であって、基準としたパーティクルの位置の画素の色情報と類似の色情報を有する画素の位置に、後のフレームの画像におけるパーティクルを設定し(S6)、設定されたパーティクルの位置から、後のフレームの画像における対象物の位置を特定する(S9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画データに対して情報処理を行う情報処理装置、情報処理方法、情報処理装置用プログラム、および、記録媒体の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動画中における特定の対象物を追跡する手法として、パーティクルフィルタが知られている。例えば、特許文献1では、動画像データをフレームごとに読み出し、画像フレームのエッジ画像を生成し、係数のセットの空間および形状空間ベクトルの空間においてパーティクルを分布させ、各パーティクルの尤度観測、確率密度分布を取得し、確率密度分布によって各パラメータに重み付け平均して得られる曲線を追跡結果として生成する画像処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−152557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パーティクルフィルタでは、あるフレーム内で対象物の色とその周囲の色とが近似すると、当該フレーム内でそれらの間の境界を特定することが困難となる。このような場合には、本来対象物の境界の外であるはずの領域にパーティクルがはみ出して、発散してしまうことがあった。そのため、対象物の追跡ができなくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その課題の一例は、対象物の追跡が正確にできる情報処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数のフレームからなる動画中における所定の対象物を追跡する情報処理装置において、前記動画の予め選択された1のフレームの画像における前記対象物上に少なくとも1つのパーティクルを設定するパーティクル初期設定手段と、前記予め選択された1のフレーム以降、前記動画における時間的に前のフレームと時間的に後のフレームとを順次取得するフレーム取得手段と、前記フレーム取得手段により取得される前記前のフレームの画像と前記後のフレームの画像との背景差分画像を算出する背景差分画像算出手段と、前記背景差分画像算出手段により算出された背景差分画像に応じて、パーティクルの追跡範囲の外縁を決定する追跡範囲外縁決定手段と、前記前のフレームの画像におけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内かつ前記追跡範囲外縁決定手段により決定された外縁内であって、前記基準としたパーティクルの位置の画素の色情報と類似の色情報を有する画素の位置に、前記後のフレームの画像におけるパーティクルを設定するパーティクル設定手段と、前記パーティクル設定手段により設定されたパーティクルの位置から、前記後のフレームの画像における前記対象物の位置を特定する対象物特定手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の情報処理装置において、前記背景差分画像算出手段が、画素値の相違度が閾値以上の場合に前景とした前記背景差分画像を算出し、前記追跡範囲外縁決定手段が、前記対象物に対応する前記前景に応じて、パーティクルの追跡範囲の外縁を決定することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の情報処理装置において、前記パーティクル初期設定手段が、前記対象物の複数の部分に、各々前記パーティクルを設定し、前記対象物の各部分のパーティクルが位置する画素の色相を各々算出し、前記部分間の色相の角度を算出する色相角度算出手段を更に備え、前記対象物特定手段が、前記色相角度算出手段により算出された部分間の色相の角度にも基づき、前記対象物の位置を特定することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の情報処理装置において、前記パーティクル設定手段により設定されたパーティクルに基づき、前記対象物の追跡が可能か否かを判定する追跡判定手段と、前記追跡判定手段が追跡不可能と判定した場合に、前記パーティクル初期設定手段または前記パーティクル設定手段により設定されたパーティクルの位置に応じて、前記後のフレームの画像におけるパーティクルを再設定するパーティクル再設定手段と、を更に備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の情報処理装置において、前記パーティクル初期設定手段またはパーティクル設定手段が設定したパーティクルの位置を記憶する記憶手段を更に備え、前記追跡範囲外縁決定手段が前記追跡範囲の外縁を決定することが不可能である場合に、前記パーティクル設定手段が、前記記憶手段を参照し、前記追跡範囲の外縁を決定することが不可能とされる前のフレームにおけるパーティクルの位置に応じて、前記後のフレームの画像におけるパーティクルを設定することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、複数のフレームからなる動画中における所定の対象物を追跡する情報処理方法において、前記動画の予め選択された1のフレームの画像における前記対象物上に少なくとも1つのパーティクルを設定するパーティクル初期設定ステップと、前記予め選択された1のフレーム以降、前記動画における時間的に前のフレームと時間的に後のフレームとを順次取得するフレーム取得ステップと、前記フレーム取得ステップにおいて取得される前記前のフレームの画像と前記後のフレームの画像との背景差分画像を算出する背景差分画像算出ステップと、前記背景差分画像算出ステップにおいて算出された背景差分画像に応じて、パーティクルの追跡範囲の外縁を決定する追跡範囲外縁決定ステップと、前記前のフレームの画像におけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内かつ前記追跡範囲外縁決定ステップにおいて決定された外縁内であって、前記基準としたパーティクルの位置の画素の色情報と類似の色情報を有する画素の位置に、前記後のフレームの画像におけるパーティクルを設定するパーティクル設定ステップと、前記パーティクル設定ステップにおいて設定されたパーティクルの位置から、前記後のフレームの画像における前記対象物の位置を特定する対象物特定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、複数のフレームからなる動画中における所定の対象物を追跡する情報処理装置用のプログラムにおいて、コンピュータを、前記動画の予め選択された1のフレームの画像における前記対象物上に少なくとも1つのパーティクルを設定するパーティクル初期設定手段、前記予め選択された1のフレーム以降、前記動画における時間的に前のフレームと時間的に後のフレームとを順次取得するフレーム取得手段、前記フレーム取得手段により取得される前記前のフレームの画像と前記後のフレームの画像との背景差分画像を算出する背景差分画像算出手段、前記背景差分画像算出手段により算出された背景差分画像に応じて、パーティクルの追跡範囲の外縁を決定する追跡範囲外縁決定手段、前記前のフレームの画像におけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内かつ前記追跡範囲外縁決定手段により決定された外縁内であって、前記基準としたパーティクルの位置の画素の色情報と類似の色情報を有する画素の位置に、前記後のフレームの画像におけるパーティクルを設定するパーティクル設定手段、および、前記パーティクル設定手段により設定されたパーティクルの位置から、前記後のフレームの画像における前記対象物の位置を特定する対象物特定手段として機能させることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、複数のフレームからなる動画中における所定の対象物を追跡する情報処理装置用のプログラムであって、コンピュータを、前記動画の予め選択された1のフレームの画像における前記対象物上に少なくとも1つのパーティクルを設定するパーティクル初期設定手段、前記予め選択された1のフレーム以降、前記動画における時間的に前のフレームと時間的に後のフレームとを順次取得するフレーム取得手段、前記フレーム取得手段により取得される前記前のフレームの画像と前記後のフレームの画像との背景差分画像を算出する背景差分画像算出手段、前記背景差分画像算出手段により算出された背景差分画像に応じて、パーティクルの追跡範囲の外縁を決定する追跡範囲外縁決定手段、前記前のフレームの画像におけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内かつ前記追跡範囲外縁決定手段により決定された外縁内であって、前記基準としたパーティクルの位置の画素の色情報と類似の色情報を有する画素の位置に、前記後のフレームの画像におけるパーティクルを設定するパーティクル設定手段、および、前記パーティクル設定手段により設定されたパーティクルの位置から、前記後のフレームの画像における前記対象物の位置を特定する対象物特定手段として機能させることを特徴とする情報処理装置用プログラムがコンピュータ読み取り可能に記録される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、動画の予め選択された1のフレームの画像における対象物上に少なくとも1つのパーティクルを設定し、予め選択された1のフレーム以降、動画における時間的に前のフレームと時間的に後のフレームとを順次取得し、時間的に前のフレームの画像と後のフレームの画像との背景差分画像に応じて、パーティクルの追跡範囲の外縁を決定し、前のフレームの画像におけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内かつ追跡範囲の外縁内であって、基準としたパーティクルの位置の画素の色情報と類似の色情報を有する画素の位置に、後のフレームの画像におけるパーティクルを設定し、設定したパーティクルの位置から、後のフレームの画像における対象物の位置を特定することにより、背景差分画像に応じた追跡範囲の外縁内に限定して、後のフレームの画像におけるパーティクルを設定しているため、パーティクルの発散を防ぐことができ、正確に対象物の追跡が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る情報処理装置の概要構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1の情報処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【図3】図1の情報処理装置が処理する動画のフレームの一例を示す模式図である。
【図4】図3のフレーム内の対象物にパーティクルを設定の一例を示す模式図である。
【図5】図3のフレームに対する背景差分画像一例を示す模式図である。
【図6】対象物にパーティクルに対する色相角度の一例を示す模式図である。
【図7】図1の情報処理装置が処理する動画のフレームにおいて、対象物の追跡の一例を示す模式図である。
【図8】パーティクルの増減の一例を示す模式図である。
【図9】図2のパーティクル設定のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図10】対象物のパーティクルに対する近傍の一例を示す模式図である。
【図11】後のフレームにおける類似するパーティクルの一例を示す模式図である。
【図12】対象物を示す位置にパーティクルが存在する状態の一例を示す模式図である。
【図13】図12の変形例を示す模式図である。
【図14】本実施形態の方法を使用した場合と、使用しない場合とにおけるパーティクル数の推移の一例を示す線図である。
【図15】図9のパーティクル設定のサブルーチンの変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、情報処理装置に対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0017】
[1.情報処理装置の構成および機能概要]
まず、本発明の一実施形態に係る情報処理装置の構成および概要機能について、図1を用いて説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置10の概要構成例を示す模式図である。
【0019】
図1に示すように、コンピュータとして機能する情報処理装置10は、通信部11と、記憶部12と、表示部13と、操作部14と、入出力インターフェース部15と、システム制御部16と、を備えている。そして、システム制御部16と入出力インターフェース部15とは、システムバス17を介して接続されている。
【0020】
情報処理装置10は、動画データに対して情報処理を行う。例えば、情報処理装置10は、競馬サイト(図示せず)からの競馬の実況中継等の画像データを、ネットワーク(図示せず)を介して受信し、受信した動画データに対して情報処理を行い、情報処理された動画データをユーザの端末装置(図示せず)に送信する。なお、情報処理装置10は、ユーザの端末装置として、情報処理された動画データを表示部13に表示させてもよい。
【0021】
通信部11は、情報処理装置10がネットワークやローカルエリアネットワークに接続する場合、通信状態を制御し、データの送受信を行う。情報処理装置10は、通信部11を介して、競馬サイトからの競馬の実況中継等の画像データを受信する。
【0022】
記憶手段の一例である記憶部12は、例えば、ハードディスクドライブ等により構成されており、オペレーティングシステムおよびサーバプログラム等の各種プログラムや、動画データ等を記憶する。なお、各種プログラムは、例えば、他のサーバ装置等からネットワークを介して取得されるようにしてもよいし、記録媒体に記録されてドライブ装置(図示せず)を介して読み込まれるようにしてもよい。
【0023】
また、記憶部12には、競馬レース等を撮影した動画データを記憶したり、競馬の実況中継等の動画データを一時的に記憶したりする動画データベース12a(以下「動画DB12a」とする。)等が構築されている。また、記憶部12は、競馬サイトからの情報を端末装置や表示部13に表示させるために、HTML(HyperText Markup Language)、XML(Extensible Markup Language)等のマークアップ言語等により記述されたウェブページのファイル等が記憶されている。
【0024】
表示部13は、例えば、液晶表示素子またはEL(Electro Luminescence)素子等によって構成されている。表示部13には、競馬のレース等の画像データが表示される。
【0025】
操作部14は、例えば、キーボードおよびマウス等によって構成されている。ユーザは、操作部14により応答を入力する。なお、表示部13がタッチパネルのようなタッチスイッチ方式の表示パネルの場合、操作部14は、ユーザが接触または近接した表示部13の位置情報を取得する。
【0026】
次に、入出力インターフェース部15は、通信部11および記憶部12とシステム制御部16との間のインターフェース処理を行う。
【0027】
システム制御部16は、CPU(Central Processing Unit)16a、ROM(Read Only Memory)16b、RAM(Random Access Memory)16c(記憶手段の一例)等により構成されている。システム制御部16は、CPU16aがROM16bや記憶部12に記憶された各種プログラムを読み出し実行することにより、動画における対象物にパーティクルを背景差分画像に応じて設定するパーティクル設定手段や、パーティクルの位置から対象物の位置を特定する対象物特定手段等として機能する。
【0028】
[2.情報処理装置10の動作]
(2.1 情報処理装置10の動作例)
次に、本発明の1実施形態に係る情報処理装置10の動作例について図2から図8を用い説明する。図2は、情報処理装置10の動作例を示すフローチャートである。図3は、情報処理装置10が処理する動画のフレームの一例を示す模式図である。図4は、フレーム内の対象物にパーティクルを設定の一例を示す模式図である。図5は、フレームに対する背景差分画像一例を示す模式図である。図6は、対象物にパーティクルに対する色相角度の一例を示す模式図である。図7は、情報処理装置10が処理する動画のフレームにおいて、対象物の追跡の一例を示す模式図である。図8は、パーティクルの増減の一例を示す模式図である。
【0029】
図2に示すように、情報処理装置10は、動画の1フレームの画像を取得する(ステップS1)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、動画DB12aから、動画データを読み出し、動画の1フレーム(動画の予め選択された1のフレームの一例)を取得し、RAM16c等に記憶する。例えば、情報処理装置10のシステム制御部16は、図3に示すような1フレームの画像を取得し、表示部13に表示させる。
【0030】
次に、情報処理装置10は、サーチ領域の初期設定を行う(ステップS2)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、取得したフレームの画像から、サーチ領域を複数箇所設定する。例えば、図3に示すように、情報処理装置10のユーザが操作部14により、サーチ領域25およびサーチ領域26を設定する。競馬の場合、図3に示すように、馬に騎乗する騎手は、ヘルメット(ヘルメット部分2a)および勝負服(勝負服部分2b)を着用している。このヘルメットおよび勝負服に対して別々の色の組み合わせにより、各騎手が識別されやすくなっている。騎手および馬の対象物2に対して、サーチ領域25は、騎手のヘルメット部分2aを含むように、サーチ領域26は、騎手の勝負服部分2bを含むように設定される。サーチ領域25が位置する座標(X1、Y1)およびサーチ領域26が位置する座標(X2、Y2)は、フレーム20に対して設定される。情報処理装置10のシステム制御部16は、設定されたサーチ領域25、26の位置情報やサーチ領域25、26の大きさの情報をRAM16c等に記憶する。
【0031】
次に、情報処理装置10は、サーチ領域内の対象物にパーティクルを初期設定する(ステップS3)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、設定された各サーチ領域25、26内における対象物2の一部(例えば、ヘルメット部分2aや勝負服部分2b)に対して、対象物の一部の境界付近や、境界により囲まれる領域においてヘルメットや勝負服の色に最も近い色の部分にパーティクルpを設定する。図4に示すように、サーチ領域25内の対象物のヘルメット部分2aに対して、パーティクルpが複数個設定される。各パーティクルpに対して、サーチ領域を基準として、サーチ領域における座標(x1、y1)等が設定される。例えば、サーチ領域25の座標(X1、Y1)を基準(x=0、y=0)として、サーチ領域に25における座標(x1、y1)が設定される。情報処理装置10のシステム制御部16は、設定されたパーティクルpの位置情報や色の情報をRAM16c等に記憶する。なお、パーティクルpは、フレームの画像のデータにおける1画素でも、複数の画素でもよい。
【0032】
このように、情報処理装置10のシステム制御部16は、動画の予め選択された1のフレームの画像における対象物上に少なくとも1つのパーティクルを設定するパーティクル初期設定手段の一例として機能する。また、情報処理装置10のシステム制御部16は、対象物の複数の部分に、各々パーティクルを設定するパーティクル初期設定手段の一例として機能する。また、RAM16cは、パーティクル初期設定手段またはパーティクル設定手段が設定したパーティクルの位置を記憶する記憶手段の一例として機能する。
【0033】
次に、情報処理装置10は、後のフレームの画像を取得する(ステップS4)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、動画DB12aから、動画データを読み出し、動画において時間的に後のフレームの画像を取得し、RAM16c等に記憶する。このように、情報処理装置10のシステム制御部16は、予め選択された1のフレーム以降、動画における時間的に前のフレームと時間的に後のフレームとを順次取得するフレーム取得手段の一例として機能する。
【0034】
次に、情報処理装置10は、背景差分画像を算出する(ステップS5)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、ステップS4において取得した後のフレームの画像から、時間的に前のフレームの画像(例えば、時間的に1フレーム前の画像)を差し引いて、画素値の相違度を求め、画素値の相違度が所定値以上ならば、前景として、所定値より小さいならば、背景として背景差分画像を算出する。なお、競馬において走行している馬を撮影している場合、カメラが馬を追って撮影しているが、馬場の背景の変化は少ないため、背景として特定されやすい。一方、走っている馬や騎手は上下動するため、図5に示すように、馬や騎手の輪郭が前景として浮かび上がりやすい。
【0035】
このように、情報処理装置10のシステム制御部16は、フレーム取得手段により取得される前のフレームの画像と後のフレームの画像との背景差分画像を算出する背景差分画像算出手段の一例として機能する。また、情報処理装置10のシステム制御部16は、画素値の相違度が閾値以上の場合に前景とした背景差分画像を算出する背景差分画像算出手段の一例として機能する。
【0036】
次に、情報処理装置10は、パーティクルを設定する(ステップS6)。情報処理装置10のシステム制御部16が、前のフレームにおけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内で、かつ、基準としたパーティクルの位置の画素の色情報と類似の色情報を有する画素の位置に、パーティクルを生成し、背景差分画像の前景に応じて決定される追跡範囲の外縁(パーティクルを追跡する追跡範囲の外縁)外のパーティクルを削除することにより、パーティクルを設定する。そして、情報処理装置10のシステム制御部16は、設定されたパーティクルpの位置情報や色の情報をRAM16c等に記憶する。このように、RAM16cは、パーティクル初期設定手段またはパーティクル設定手段が設定したパーティクルの位置を記憶する記憶手段の一例として機能する。なお、パーティクルの設定に関して、パーティクル設定のサブルーチンにおいて詳細を説明する。
【0037】
次に、情報処理装置10は、色相の角度を算出する(ステップS7)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、ヘルメット部分2aの各パーティクルの色相と、勝負服部分2bの各パーティクルの色相を算出する。図6に示すように、情報処理装置10のシステム制御部16が、色相空間におけるヘルメット部分2aの各パーティクルの座標の平均値と、勝負服部分2bの各パーティクルの座標の平均値とを求める。そして、情報処理装置10のシステム制御部16が、ヘルメット部分2aのパーティクル群と、勝負服部分2bのパーティクル群との部分間の色相の角度を、ヘルメット部分2aの各パーティクルの座標の平均値と勝負服部分2bの各パーティクルの座標の平均値とから算出する。このように、情報処理装置10のシステム制御部16は、対象物の各部分の前記パーティクルが位置する画素の色相を各々算出し、部分間の色相の角度を算出する色相角度算出手段の一例として機能する。
【0038】
なお、ステップS2でサーチ領域を初期設定し、ステップS3で対象物にパーティクルの初期設定した際も、情報処理装置10のシステム制御部16が、この色相角度を算出して、初期の色相角度として、RAM16c等に記憶しておく。
【0039】
次に、情報処理装置10は、対象物に対する追跡が可能か否かを判定する(ステップS8)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、ステップS8で算出した時間的に後のフレームの画像における部分間の色相の角度が、初期の色相角度と、所定以上異なるとき、対象物に対する追跡が不可能と判定する。また、パーティクルが全て消滅した場合も、情報処理装置10のシステム制御部16が、対象物に対する追跡が不可能と判定する。
【0040】
なお、オクルージョンにより対象物が隠れ、連続した所定数以上のフレームにおいて、追跡範囲の外縁が決定できない場合も、情報処理装置10のシステム制御部16は、対象物に対する追跡が不可能と判定してもよい。一方、一時的に対象物が隠れたり、対象物の微妙な動きや写り方等により背景差分画像の前景が一時的に不鮮明となったりして、追跡範囲の外縁が一時的に決定できない場合(連続した所定数より少ない場合)は、情報処理装置10のシステム制御部16は、対象物に対する追跡が可能と判定してもよい。
【0041】
ここで、他の馬が近づき、追跡している騎手と、他の騎手とが重なりかけることにより、他の対象物をパーティクルが示してしている場合に、ヘルメットの色と、勝負服の色との組み合わせが異なることにより、部分間の色相の角度が変化することがある。また、追跡している対象物が、フレーム外になった場合や、対象物の大きさが小さくなった場合や、対象物が他の馬と騎手や建造物等に隠れるオクルージョンが発生した場合に、パーティクルが消滅しやすい。
【0042】
対象物に対する追跡が可能であると判定された場合(ステップS8;YES)、情報処理装置10は、パーティクルの位置から対象物を特定する(ステップS9)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、各パーティクルの位置の平均値により、追跡している対象物を特定したり、パーティクル群により、追跡している対象物の位置を特定する。このように、情報処理装置10のシステム制御部16は、パーティクル設定手段により設定されたパーティクルの位置から、後のフレームの画像における対象物の位置を特定する対象物特定手段の一例として機能する。
【0043】
対象物に対する追跡が可能でないと判定された場合(ステップS8;NO)、情報処理装置10は、ステップS3に戻り、サーチ領域25、26内の対象物(2a、2b)のパーティクルを再設定する。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、RAM16c等に記憶されている設定されたパーティクルpの位置情報(例えば、座標(x1、y1)、座標(x2、y2))を読み出し、サーチ領域25、26内の同じ場所、すなわち、サーチ領域25、26内において初期設定されたパーティクルの位置にパーティクルpを再設定する。なお、オクルージョンにより、一時的に隠れた馬および騎手等の対象物は、フレーム上においるサーチ領域内の同じ位置にまた出現しやすい。
【0044】
なお、初期設定されたパーティクルの位置ではなく、ステップS6において時間的に前に設定されたパーティクルの位置に、ステップS3において、情報処理装置10のシステム制御部16が、パーティクルpを再設定してもよい。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、RAM16c等に記憶されている設定されたパーティクルp(例えば、追跡不可能と判定される前の最新のパーティクル)の位置情報を読み出し、サーチ領域25、26内の同じ場所にパーティクルpを再設定する。
【0045】
このように、情報処理装置10のシステム制御部16は、追跡判定手段が追跡不可能と判定した場合に、パーティクル初期設定手段またはパーティクル設定手段により設定されたパーティクルの位置に応じて、後のフレームの画像におけるパーティクルを設定するパーティクル再設定手段の一例として機能する。
【0046】
次に、情報処理装置10は、パーティクルの位置からサーチ領域を設定する(ステップS10)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、パーティクルの位置の平均値より、サーチ領域25、26を再設定する。例えば、情報処理装置10のシステム制御部16が、パーティクルの位置の平均値が、再設定されるサーチ領域25、26の中心に位置するように再設定する。
【0047】
図7に示すように、対象物がフレーム内を移動しているとき、パーティクルも移動して、それに合わせて、サーチ領域25、26が再設定される。サーチ領域25の位置は、座標(X3、Y3)となり、サーチ領域26の位置は、座標(X4、Y4)となる。
【0048】
次に、情報処理装置10は、処理が終了か否かを判定する(ステップS11)。処理が終了でない場合(ステップS11;NO)、ステップS4に戻り、情報処理装置10のシステム制御部16が、後のフレームの画像を取得することにより、フレームを順次取得していく。処理が終了の場合(ステップS11;YES)、情報処理装置10のシステム制御部16が、処理を終了させる。
【0049】
ここで、図8に示すように、ズームインされ、サーチ領域25内のヘルメット部分2aが拡大されて撮像されると、追跡範囲の外縁が広がり、パーティクルの数が増加する。一方、ズームアウトされ、サーチ領域25内のヘルメット部分2aが縮小されて撮像されると、追跡範囲の外縁が狭まり、パーティクルの数が減少する。
【0050】
(2.2 パーティクル設定のサブルーチン)
(2.2.1 パーティクルの生成)
次に、パーティクル設定のサブルーチンにおけるパーティクルの生成について図9から図11を用いて説明する。
【0051】
図9は、パーティクル生成のサブルーチンを示すフローチャートである。図10は、対象物のパーティクルに対する近傍の一例を示す模式図である。図11は、後のフレームにおける類似するパーティクルの一例を示す模式図である。
【0052】
情報処理装置10は、前のフレームの画像におけるパーティクルの位置および色情報を取得する(ステップS20)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、時間的に前のフレームの画像におけるパーティクルの位置(前のフレームの画像におけるパーティクルの位置を基準の一例)および色情報を、RAM16c等から取得する。
【0053】
次に、情報処理装置10は、パーティクルの位置の近傍を特定する(ステップS21)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、図10に示すように、ステップS4で取得した後のフレームの画像において、時間的に前のフレームの画像におけるパーティクルの位置(基準としたパーティクルの位置)と同じ位置にある画素のパーティクルpおよびパーティクルpの8近傍の画素qのいずれか1つの画素を、パーティクルの位置の近傍として1つ特定する。なお、パーティクルpの位置とpの8近傍の画素qの位置とが、前のフレームにおけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内の一例である。
【0054】
次に、情報処理装置10は、色が類似しているか否かを判定する(ステップS22)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、ステップS21において1つ特定した画素が、時間的に前のフレームの画像におけるパーティクルのRGB等の色情報(基準としたパーティクルの位置の画素の色情報の一例)と類似の色を有するか否かを判定する。
【0055】
色が類似している場合(ステップS22;YES)、情報処理装置10が、特定されている近傍の画素の位置にパーティクルを生成する(ステップS23)。
【0056】
次に、情報処理装置10が、全ての近傍を特定したか否かを判定する(ステップS24)。そして、情報処理装置10のシステム制御部16が、全ての近傍を特定していない場合(ステップS24;NO)、ステップS21に戻り、中心の画素と8近傍の画素の中から、まだ特定していない次の画素を特定する。
【0057】
色が類似した画素が複数ある場合、それに合わせてパーティクルも複数個生成される。また、色が類似した画素がない場合、生成されるパーティクルはゼロとなる。また、図11に示すように、時間的に前のフレームの画像におけるパーティクルの位置と同じ位置に、パーティクルが生成されるとは限らない。後のフレームにおいて、パーティクルの位置がずれることもある。
【0058】
(2.2.2 パーティクルの消失)
次に、パーティクル設定のサブルーチンにおけるパーティクルの消失について図9、図12および図13を用いて説明する。
【0059】
図12は、対象物を示す位置にパーティクルが存在する状態の一例を示す模式図である。図13は、図12の変形例を示す模式図である。
【0060】
図9に示すように、全ての近傍を特定した場合(ステップS24;YES)、情報処理装置10は、パーティクルを特定する(ステップS25)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、ステップS20からステップS24において生成されたパーティクルから1つのパーティクルを特定する。
【0061】
次に、情報処理装置10は、パーティクルが追跡範囲の外縁内か否かを判定する(ステップS26)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、図5に示すように、ステップS5において算出された背景差分画像30において、サーチ領域25に同じ位置と大きさを有するサーチ領域35と、サーチ領域26に同じ位置と大きさを有するサーチ領域36と、を設定する。そして、情報処理装置10のシステム制御部16が、各サーチ領域35、36の背景差分画像30を取り出す。例えば、ヘルメット部分2aの場合、サーチ領域35の背景差分画像のヘルメット部分の外縁3a(追跡範囲の外縁の一例)を含む画像が取り出される。ここで、追跡範囲の外縁は、パーティクルを追跡する追跡範囲の外縁であって、背景差分画像の前景に応じて決定される。例えば、追跡している対象物(対象物の部分でもよい)の輪郭や、この輪郭を含む領域等が挙げられる。
【0062】
このように、情報処理装置10のシステム制御部16は、背景差分画像算出手段により算出された背景差分画像に応じて、パーティクルの追跡範囲の外縁を決定する追跡範囲外縁決定手段の一例として機能する。
【0063】
次に、情報処理装置10のシステム制御部16が、図12に示すように、例えば、ヘルメット部分2aの輪郭を示すヘルメット部分の外縁3aの画像上にあるパーティクルpは、追跡範囲の外縁内であると判定する。さらに、情報処理装置10のシステム制御部16が、ヘルメット部分の外縁3aの画像上あるパーティクルp同士を結ぶ直線Lを設定し、直線Lに所定の幅Dを与え、その幅の中にパーティクルが存在すれば、追跡範囲の外縁内であると判定する。
【0064】
または、図13に示すように、情報処理装置10のシステム制御部16が、パーティクルを中心して、所定の長さの直線rを、例えば、8方向等間隔の角度で設定する。この有限長の直線rが、ヘルメット部分の外縁3aを示す画素と重なる本数が、所定数(例えば4本)以上ならば、情報処理装置10のシステム制御部16が、そのパーティクルは、追跡範囲の外縁内であると判定してもよい。
【0065】
図12および図13に示すように、ヘルメット部分2aの輪郭を示すヘルメット部分の外縁3aの画像が閉じていなくても、追跡範囲の外縁内であるか否かを判定できる。ここで、動画中においてヘルメット等は上下には動きやすく、背景差分画像において上下側に輪郭が出やすいが、左右にはあまり動かなく、左右側に輪郭が出にくい。また、ヘルメット等と背景との関連により、ヘルメット等の輪郭の一部が出にくくなることもある。そのため、ヘルメット部分2aの輪郭等が完全な閉領域にならないことがある。
【0066】
このように、情報処理装置10のシステム制御部16は、パーティクル設定手段により設定されたパーティクルに基づき、対象物の追跡が可能か否かを判定する追跡判定手段の一例として機能する。
【0067】
パーティクルが追跡範囲の外縁内である場合(ステップS26;YES)、情報処理装置10が、特定されているパーティクルをパーティクルとして残す(ステップS27)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、図12に示すように、ヘルメット部分の外縁3aの画像上あるパーティクルpや、直線Lに所定の幅Dの中に存在するパーティクルpを残す。または、図13に示すように、ヘルメット部分の外縁3aを示す画素と重なる本数が5本であるパーティクルpを残す。
【0068】
一方、パーティクルが追跡範囲の外縁内でない場合(ステップS26;NO)、情報処理装置10が、パーティクルを削除する(ステップS28)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、図12に示すように、パーティクルp0は、ヘルメット部分の外縁3aの画像上でなく、直線Lに所定の幅Dの中に存在しないので削除して消失させる。また、図13に示すように、パーティクルp0は、ヘルメット部分の外縁3aを示す画素と重なる本数が3本であるので、情報処理装置10が、パーティクルp0を削除する。情報処理装置10のシステム制御部16は、各パーティクルpの位置情報や色の情報が記憶されているRAM16c等から、特定しているパーティクルを削除する。
【0069】
なお、ステップS26において、オクルージョンにより対象物が一時的に隠れるように、追跡範囲の外縁が決定されなくて、追跡範囲の外縁内か否かを判定できない場合、情報処理装置10のシステム制御部16は、ステップS27のように、全てのパーティクルを残す処理をしてもよい。
【0070】
次に、情報処理装置10は、全てのパーティクルを特定したか否かを判定する(ステップS29)。全てのパーティクルを特定していない場合(ステップS29;NO)、ステップS25に戻り、情報処理装置10のシステム制御部16が、次のパーティクルを特定する。全てのパーティクルを特定した場合(ステップS29;YES)、サブルーチンが終了し、情報処理装置10は、ステップS7の処理を行う。
【0071】
このように、パーティクルを生成し、背景差分画像に応じて決定された追跡範囲の外縁内にあるパーティクルに絞ることにより、前のフレームにおけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内かつ追跡範囲外縁決定手段により決定された外縁内であって、基準としたパーティクルの位置の画素の色情報と類似の色情報を有する画素の位置に、後のフレームにおけるパーティクルが設定される。
【0072】
次に、背景差分画像に応じて決定された追跡範囲の外縁内にあるパーティクルに絞る本実施形態の方法(以下、「本実施形態の方法」とする。)を使用した場合と、使用しない場合とにおけるパーティクル数の推移の一例について、図14を用いて説明する。
図14は、本実施形態の方法を使用した場合と、使用しない場合とにおけるパーティクル数の推移の一例を示す線図である。なお、パーティクル数は、フレーム内全体のパーティクルの数を示した。
【0073】
図14に示すように、フレーム番号がおよそ60を超えると、本実施形態の方法を使用しない場合(図中破線)、パーティクル数が増加する傾向がある。一方、本実施形態の方法を使用した場合(図中実線)、パーティクルの追跡範囲の外縁が、背景差分画像に応じて設定されているため、パーティクル数が安定している。また、パーティクルの生成を、近傍かつ類似の色情報を有する画素の位置に限っているため、パーティクル数が安定している。このように、パーティクル数が安定して、パーティクル数が爆発的に増加しないため、計算量が膨大になることを未然に防いでいる。
【0074】
以上、本実施形態によれば、動画の予め選択された1のフレーム20の画像における対象物2上(ヘルメット部分2aおよび勝負服部分2b)に少なくとも1つのパーティクルpを設定し、予め選択された1のフレーム以降、動画における時間的に前のフレームと時間的に後のフレームとを順次取得し、時間的に前のフレームの画像と後のフレームの画像との背景差分画像30に応じて、パーティクルの追跡範囲の外縁3a等を決定し、前のフレームの画像におけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内かつ追跡範囲の外縁内であって、基準としたパーティクルの位置の画素の色情報と類似の色情報を有する画素の位置に、後のフレームの画像におけるパーティクルを設定し、設定したパーティクルの位置から、後のフレームの画像における対象物の位置を特定することにより、背景差分画像に応じた追跡範囲の外縁3a内に限定して、後のフレームの画像におけるパーティクルpを設定しているため、設定されるパーティクルのはみ出しが抑制されて、パーティクルpの発散を防ぐことができ、正確に対象物の追跡が可能となる。さらに、追跡範囲の外縁3a内に限定されているため、パーティクルの数が爆発的に増加することを防止して、パーティクルの増加による計算量の増加を抑えることができる。
【0075】
また、パーティクルを生成させ、背景差分画像に応じた追跡範囲の外縁3a内に限定しているため、ズームイン、ズームアウトにより、フレームにおける対象物の大きさが変化しても、対象物を追跡できる。
【0076】
また、画素値の相違度が閾値以上の場合に前景とした背景差分画像を算出し、対象物に対応する前景に応じて、パーティクルの追跡範囲の外縁を決定する場合、パーティクルが背景差分画像に応じた追跡範囲の外縁3a内に適切に限定され、パーティクルpの発散を防ぐことができ、正確に対象物の追跡が可能となる。
【0077】
また、対象物の複数の部分に、各々パーティクルを初期設定し、対象物の各部分のパーティクルが位置する画素の色相を各々算出し、部分間の色相の角度を算出し、算出された部分間の色相の角度にも基づき、対象物の位置を特定する場合、対象物2の複数箇所(ヘルメット部分2aおよび勝負服部分2b)での関係を、部分間の色相の角度により対象物2を特定して追跡できるので、誤った追跡を防止でき、対象物の追跡精度がより高まる。例えば、部分間の色相の角度が所定以上異なるとき、異なった対象物を追跡している可能性が高く、このような場合、情報処理装置10のシステム制御部16が、追跡不可能と判定することにより、誤った追跡をしなくて済む。また、ヘルメットが似たような色でも、勝負服との組み合わせで排除でき、正確に対象物を特定できる。また、色相の情報を利用して、明度の変化量を無視する場合、計算量の軽減を図ることができる。また、天候等により明るさが変化しても色相の値はほとんど変化しないので、対象物の追跡精度がより高まる。
【0078】
設定されたパーティクルに基づき、対象物の追跡が可能か否かを判定し、追跡不可能と判定したときに、設定されたパーティクルの位置に応じて、後のフレームの画像におけるパーティクルを再設定する場合、対象物が一時的に障害物等に隠れたり、対象物がフレームの端に来て、一時的にフレームから外れたりする場合にも、対象物の追跡を継続でき、対象物の追跡精度がより高まる。このように、オクルージョンが発生したり、対象物がフレームから外れたりして、パーティクル数がゼロになっても、サーチ領域25、26内の設定されたパーティクルの初期の位置や対象物の追跡が不可能になる前のパーティクルの位置にパーティクルが再設定されるため、対象物の追跡可能となる。なお、背景差分の処理に関係なく、初期設定されたパーティクルの初期位置を記憶しておくことにより、オクルージョン等の発生時にも、パーティクルの初期の位置を利用して再度追跡が可能となる。
【0079】
(2.3 パーティクル設定のサブルーチンの変形例)
次に、パーティクル設定のサブルーチンの変形例について図15を用いて説明する。
図15は、パーティクル設定のサブルーチンの変形例を示すフローチャートである。
【0080】
図15に示すように、情報処理装置10は、ステップS20のように前のフレームの画像におけるパーティクルの位置および色情報を取得する(ステップS30)。
【0081】
次に、情報処理装置10は、パーティクルの位置の近傍かつ追跡範囲の外縁内の画素を特定する(ステップS31)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、図10に示すように、前のフレームにおけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内の一例として、パーティクルの近傍内に含まれる画素で、かつ、図12または図13に示すように、追跡範囲の外縁内の画素を特定する。
【0082】
次に、情報処理装置10は、ステップS22のように、特定した画素の色が類似しているか否かを判定する(ステップS32)。
【0083】
特定した画素の色が類似している場合(ステップS32;YES)、情報処理装置10は、画素の位置にパーティクルを設定する(ステップS33)。
【0084】
次に、情報処理装置10は、所定の条件を満たす画素を全て特定した否かを判定する(ステップS34)。具体的には、情報処理装置10のシステム制御部16が、前のフレームにおけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内に含まれる画素で、かつ、追跡範囲の外縁内の条件を満たす画素を全て特定したか否かを判定する。全てを特定していない場合(ステップS34;NO)、情報処理装置10は、次の画素を特定する。全てを特定した場合(ステップS34;YES)、サブルーチンが終了し、情報処理装置10は、ステップS7の処理を行う。なお、前のフレームにおけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内および追跡範囲の外縁内に類似の色情報の画素が無かったら、パーティクルは設定されない。
【0085】
このように、本変形例では、情報処理装置10は、パーティクルを消失させず、背景差分画像に応じた位置にのみパーティクルを設定する。
【0086】
なお、ステップS2およびステップS3において、サーチ領域25、26および各パーティクルpの設定は自動でもユーザによる手動でもよい。自動の場合、情報処理装置10が、各騎手のヘルメットの色、勝負服の色の情報と、ヘルメットと勝負服との位置関係の情報より、これらの情報にマッチする対象物のフレームを探索し、対象物の一部を含むように、サーチ領域25、26を自動的に設定する。そして、情報処理装置10が、設定された各サーチ領域25、26内における対象物の一部に対して、対象物の一部の境界付近や、境界により囲まれる領域においてヘルメットや勝負服の色に最も近い色の部分を探索してパーティクルpを自動的に設定する。
【0087】
また、ステップS6のパーティクル設定において、オクルージョンにより一時的に対象物が隠れたり、対象物の微妙な動きや写り方等により背景差分画像の前景が一時的に不鮮明となったりして、追跡範囲の外縁が一時的に決定できない場合(連続した所定数より少ない場合)に、情報処理装置10のシステム制御部16が、RAM16cを参照して、追跡範囲の外縁を決定することが不可能とされる前のフレームにおけるパーティクルの位置に応じて、後のフレームの画像におけるパーティクルを設定してもよい。この場合、オクルージョンにより対象物が一時的に隠れる等により、追跡範囲の外縁が求められなくても、正確に対象物の追跡が可能となる。
【0088】
例えば、フレームt−1〜フレームt+2において、フレームtの時に、背景差分画像((フレームt)−(フレームt−1))から、追跡範囲の外縁が特定でき、フレームt+1の時に、背景差分画像((フレームt+1)−(フレームt))から、追跡範囲の外縁が特定できなかったが、フレームt+2に時に、背景差分画像((フレームt+2)−(フレームt+1))から外縁が特定できた場合を想定する。このとき、情報処理装置10のシステム制御部16が、フレームtの時におけるRAM16c等を参照して、フレームtの時に設定されたパーティクルpの位置情報を読み出し、サーチ領域25、26内の同じ場所に、フレームt+1やフレームt+2の時におけるパーティクルpを再設定する。
【0089】
また、ステップS7において、色相の角度を算出する代わりに、RGB空間において、ヘルメット部分2aの各パーティクルと、勝負服部分2bの各パーティクルとのRGBの距離を算出してもよい。情報処理装置10は、この部分間のRGBの距離が、所定の閾値の範囲より変化した場合、ステップS8において、追跡不可能と判定する。
【0090】
また、対象物の複数の部分として、ヘルメット部分2aと、勝負服部分2bとの代わりに、馬の部分と、騎手の部分でもよい。また、対象物は、馬と騎手とを合わせた一体的に動くものでもよいし、騎手のみでもよいし、馬のみでもよい。
【0091】
また、追跡する対象物の数は、フレーム内に複数あってもよい。
【0092】
さらに、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。上記各実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0093】
2:対象物
2a:ヘルメット部分
2b:勝負服部分
3a:背景差分画像のヘルメット部分(追跡範囲の外縁)
10:情報処理装置
12:記憶部(記憶手段)
16:システム制御部
16c:RAM(記憶手段)
20:フレーム
25、26:サーチ領域
30:背景差分画像
p:パーティクル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフレームからなる動画中における所定の対象物を追跡する情報処理装置において、
前記動画の予め選択された1のフレームの画像における前記対象物上に少なくとも1つのパーティクルを設定するパーティクル初期設定手段と、
前記予め選択された1のフレーム以降、前記動画における時間的に前のフレームと時間的に後のフレームとを順次取得するフレーム取得手段と、
前記フレーム取得手段により取得される前記前のフレームの画像と前記後のフレームの画像との背景差分画像を算出する背景差分画像算出手段と、
前記背景差分画像算出手段により算出された背景差分画像に応じて、パーティクルの追跡範囲の外縁を決定する追跡範囲外縁決定手段と、
前記前のフレームの画像におけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内かつ前記追跡範囲外縁決定手段により決定された外縁内であって、前記基準としたパーティクルの位置の画素の色情報と類似の色情報を有する画素の位置に、前記後のフレームの画像におけるパーティクルを設定するパーティクル設定手段と、
前記パーティクル設定手段により設定されたパーティクルの位置から、前記後のフレームの画像における前記対象物の位置を特定する対象物特定手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記背景差分画像算出手段が、画素値の相違度が閾値以上の場合に前景とした前記背景差分画像を算出し、
前記追跡範囲外縁決定手段が、前記対象物に対応する前記前景に応じて、パーティクルの追跡範囲の外縁を決定することを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置において、
前記パーティクル初期設定手段が、前記対象物の複数の部分に、各々前記パーティクルを設定し、
前記対象物の各部分のパーティクルが位置する画素の色相を各々算出し、前記部分間の色相の角度を算出する色相角度算出手段を更に備え、
前記対象物特定手段が、前記色相角度算出手段により算出された部分間の色相の角度にも基づき、前記対象物の位置を特定することを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の情報処理装置において、
前記パーティクル設定手段により設定されたパーティクルに基づき、前記対象物の追跡が可能か否かを判定する追跡判定手段と、
前記追跡判定手段が追跡不可能と判定した場合に、前記パーティクル初期設定手段または前記パーティクル設定手段により設定されたパーティクルの位置に応じて、前記後のフレームの画像におけるパーティクルを再設定するパーティクル再設定手段と、
を更に備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の情報処理装置において、
前記パーティクル初期設定手段またはパーティクル設定手段が設定したパーティクルの位置を記憶する記憶手段を更に備え、
前記追跡範囲外縁決定手段が前記追跡範囲の外縁を決定することが不可能である場合に、前記パーティクル設定手段が、前記記憶手段を参照し、前記追跡範囲の外縁を決定することが不可能とされる前のフレームにおけるパーティクルの位置に応じて、前記後のフレームの画像におけるパーティクルを設定することを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
複数のフレームからなる動画中における所定の対象物を追跡する情報処理方法において、
前記動画の予め選択された1のフレームの画像における前記対象物上に少なくとも1つのパーティクルを設定するパーティクル初期設定ステップと、
前記予め選択された1のフレーム以降、前記動画における時間的に前のフレームと時間的に後のフレームとを順次取得するフレーム取得ステップと、
前記フレーム取得ステップにおいて取得される前記前のフレームの画像と前記後のフレームの画像との背景差分画像を算出する背景差分画像算出ステップと、
前記背景差分画像算出ステップにおいて算出された背景差分画像に応じて、パーティクルの追跡範囲の外縁を決定する追跡範囲外縁決定ステップと、
前記前のフレームの画像におけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内かつ前記追跡範囲外縁決定ステップにおいて決定された外縁内であって、前記基準としたパーティクルの位置の画素の色情報と類似の色情報を有する画素の位置に、前記後のフレームの画像におけるパーティクルを設定するパーティクル設定ステップと、
前記パーティクル設定ステップにおいて設定されたパーティクルの位置から、前記後のフレームの画像における前記対象物の位置を特定する対象物特定ステップと、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
複数のフレームからなる動画中における所定の対象物を追跡する情報処理装置用のプログラムにおいて、
コンピュータを、
前記動画の予め選択された1のフレームの画像における前記対象物上に少なくとも1つのパーティクルを設定するパーティクル初期設定手段、
前記予め選択された1のフレーム以降、前記動画における時間的に前のフレームと時間的に後のフレームとを順次取得するフレーム取得手段、
前記フレーム取得手段により取得される前記前のフレームの画像と前記後のフレームの画像との背景差分画像を算出する背景差分画像算出手段、
前記背景差分画像算出手段により算出された背景差分画像に応じて、パーティクルの追跡範囲の外縁を決定する追跡範囲外縁決定手段、
前記前のフレームの画像におけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内かつ前記追跡範囲外縁決定手段により決定された外縁内であって、前記基準としたパーティクルの位置の画素の色情報と類似の色情報を有する画素の位置に、前記後のフレームの画像におけるパーティクルを設定するパーティクル設定手段、および、
前記パーティクル設定手段により設定されたパーティクルの位置から、前記後のフレームの画像における前記対象物の位置を特定する対象物特定手段として機能させることを特徴とする情報処理装置用プログラム。
【請求項8】
複数のフレームからなる動画中における所定の対象物を追跡する情報処理装置用のプログラムであって、
コンピュータを、
前記動画の予め選択された1のフレームの画像における前記対象物上に少なくとも1つのパーティクルを設定するパーティクル初期設定手段、
前記予め選択された1のフレーム以降、前記動画における時間的に前のフレームと時間的に後のフレームとを順次取得するフレーム取得手段、
前記フレーム取得手段により取得される前記前のフレームの画像と前記後のフレームの画像との背景差分画像を算出する背景差分画像算出手段、
前記背景差分画像算出手段により算出された背景差分画像に応じて、パーティクルの追跡範囲の外縁を決定する追跡範囲外縁決定手段、
前記前のフレームの画像におけるパーティクルの位置を基準とする所定範囲内かつ前記追跡範囲外縁決定手段により決定された外縁内であって、前記基準としたパーティクルの位置の画素の色情報と類似の色情報を有する画素の位置に、前記後のフレームの画像におけるパーティクルを設定するパーティクル設定手段、および、
前記パーティクル設定手段により設定されたパーティクルの位置から、前記後のフレームの画像における前記対象物の位置を特定する対象物特定手段として機能させることを特徴とする情報処理装置用プログラムがコンピュータ読み取り可能に記録された記録媒体。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図15】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−77073(P2013−77073A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215415(P2011−215415)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【特許番号】特許第4922472号(P4922472)
【特許公報発行日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【出願人】(399037405)楽天株式会社 (416)
【Fターム(参考)】