説明

情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム

【課題】利用者の移動履歴情報のみを用いて、利用者の移動手段を正確に特定し得る情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置は、代表ベクトル履歴情報保持手段が、代表ベクトル情報と、代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者識別子とを対応付けた代表ベクトル履歴情報を保持する。比較対象ベクトル情報取得手段は、比較対象となる代表ベクトル情報である比較対象ベクトル情報を取得する。そして、比較手段は、比較対象ベクトル情報の位置情報及び方向情報に対応する代表ベクトル履歴情報を代表ベクトル履歴情報保持手段から検索し、検索した代表ベクトル履歴情報の速度情報と、比較対象ベクトル情報の速度情報とを比較する。そして、比較結果出力手段は、前記比較手段が比較した結果に関する出力処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが移動に用いる交通機関で移動上の問題が発生したことをユーザに報知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ユーザの現在位置情報と、地図情報・路線ネットワーク情報とに基づいてユーザの利用する交通機関(路線)を特定し、特定された交通機関の運行会社より、運行スケジュール等の情報の提供を受け、運行遅延・問題の発生をユーザに報知するサービスがある。
【0003】
従来の方法では、ユーザが利用する交通機関を特定するために地図情報に記録されている交通機関に関する位置情報(ネットワーク情報)が必要であり、地図情報データベースのインフラ整備や、路線ネットワーク情報の提供を受ける必要がある。また、交通機関の運行上の遅延を知るために、交通機関の運行会社から遅延情報の提供を受ける必要があるが、交通機関の運行会社から得られる遅延情報は、運行会社の基準により遅延の度合いや遅延発生報知のタイミングが設定され、ユーザ個々に適した情報となっていない。
【0004】
ところで現状、携帯電話の全てにGPS(Global Positioning System)が搭載されるなど、個人の移動情報をプローブ情報として取得できる環境が整いつつある。上記移動情報を収集し、当該移動情報から算出した移動速度情報に基づいて移動手段を特定する情報サービスシステムがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−152655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、電車で移動している利用者を特定する場合、一人のユーザの移動パターンを分析するだけでは十分でない場合がある。例えば、高速道路等を自動車で移動中であっても長い直線の移動となる可能性が高く、電車での移動と車での移動とを確実に識別できないという問題点がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のものが例として挙げられる。本発明の目的は、利用者の移動履歴情報のみを用いて、利用者の移動手段を正確に特定し得る情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、情報処理装置であって、複数の利用者端末から利用者端末の識別子と、位置情報と、時刻情報とを取得する利用者端末情報取得手段と、前記利用者端末情報取得手段が取得した位置情報と、時刻情報とを用いて、方向情報及び速度情報を算出し、前記利用者端末の識別子と、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とを有するベクトル情報を生成するベクトル情報生成手段と、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とが互いに近似する複数のベクトル情報を共通化して得られる位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速度情報とを有する代表ベクトル情報を生成する代表ベクトル情報生成手段と、前記代表ベクトル情報と、前記代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者端末の識別子とを対応付けた情報である代表ベクトル履歴情報を保持する代表ベクトル履歴情報保持手段と、比較対象となる代表ベクトル情報である比較対象ベクトル情報を取得する比較対象ベクトル情報取得手段と、前記比較対象ベクトル情報の位置情報及び方向情報に対応する代表ベクトル履歴情報の速度情報と、前記比較対象ベクトル情報の速度情報とを比較する比較手段と、前記比較手段が比較した結果に基づいた出力処理を行う比較結果出力手段と、と備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、代表ベクトル情報と、前記代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者端末の識別子とを対応付けた情報である代表ベクトル履歴情報を保持する装置で行う情報処理方法であって、複数の利用者端末から利用者端末の識別子と、位置情報と、時刻情報とを取得する利用者端末情報取得工程と、前記利用者端末情報取得工程で取得した位置情報と、時刻情報とを用いて、方向情報及び速度情報を算出し、前記利用者端末の識別子と、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とを有するベクトル情報を生成するベクトル情報生成工程と、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とが互いに近似する複数のベクトル情報を共通化して得られる位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速度情報とを有する代表ベクトル情報を生成する代表ベクトル情報生成工程と、比較対象となる代表ベクトル情報である比較対象ベクトル情報を取得する比較対象ベクトル情報取得工程と、前記比較対象ベクトル情報の位置情報及び方向情報に対応する代表ベクトル履歴情報の速度情報と、前記比較対象ベクトル情報の速度情報とを比較する比較工程と、前記比較手段が比較した結果に基づいた出力処理を行う比較結果出力工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、代表ベクトル情報と、前記代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者端末の識別子とを対応付けた情報である代表ベクトル履歴情報を保持するコンピュータ装置で実行される情報処理プログラムであって、複数の利用者端末から利用者端末の識別子と、位置情報と、時刻情報とを取得する利用者端末情報取得手段、前記利用者端末情報取得手段が取得した位置情報と、時刻情報とを用いて、方向情報及び速度情報を算出し、前記利用者端末の識別子と、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とを有するベクトル情報を生成するベクトル情報生成手段、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とが互いに近似する複数のベクトル情報を共通化して得られる位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速度情報とを有する代表ベクトル情報を生成する代表ベクトル情報生成手段、比較対象となる代表ベクトル情報である比較対象ベクトル情報を取得する比較対象ベクトル情報取得手段、前記比較対象ベクトル情報の位置情報及び方向情報に対応する代表ベクトル履歴情報の速度情報と、前記比較対象ベクトル情報の速度情報とを比較する比較手段、前記比較手段が比較した結果に基づいた出力処理を行う比較結果出力手段、として前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】情報処理システムの概略図である。
【図2】サーバ装置の構成図である。
【図3】情報処理ユニットの機能構成を示すブロック図である。
【図4】プローブ情報データベースのデータ構造を示す図である。
【図5】移動情報データベースのデータ構造を示す図である。
【図6】代表ベクトル履歴情報データベースのデータ構造を示す図である。
【図7】利用者の移動軌跡と、代表ベクトルとの関係を示す図である。
【図8】ベクトル情報を生成する手順を示すフローチャートである。
【図9】ベクトル情報を比較する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好適な実施形態では、情報処理装置であって、複数の利用者端末から利用者端末の識別子と、位置情報と、時刻情報とを取得する利用者端末情報取得手段と、前記利用者端末情報取得手段が取得した位置情報と、時刻情報とを用いて、方向情報及び速度情報を算出し、前記利用者端末の識別子と、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とを有するベクトル情報を生成するベクトル情報生成手段と、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とが互いに近似する複数のベクトル情報を共通化して得られる位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速度情報とを有する代表ベクトル情報を生成する代表ベクトル情報生成手段と、前記代表ベクトル情報と、前記代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者端末の識別子とを対応付けた情報である代表ベクトル履歴情報を保持する代表ベクトル履歴情報保持手段と、比較対象となる代表ベクトル情報である比較対象ベクトル情報を取得する比較対象ベクトル情報取得手段と、前記比較対象ベクトル情報の位置情報及び方向情報に対応する代表ベクトル履歴情報の速度情報と、前記比較対象ベクトル情報の速度情報とを比較する比較手段と、前記比較手段が比較した結果に基づいた出力処理を行う比較結果出力手段と、と備える。
【0013】
上記の情報処理装置は、具体的には、サーバ装置等に適用することができる。利用者端末情報取得手段は、複数の利用者端末から利用者端末の識別子と、位置情報と、時刻情報とを取得し、ベクトル情報生成手段は、利用者端末の識別子と、位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速度情報とを有するベクトル情報を生成する。代表ベクトル情報生成手段は、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とが互いに近似する複数のベクトル情報を共通化して得られる位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速度情報とを有する代表ベクトル情報を生成する。代表ベクトル履歴情報保持手段が、代表ベクトル情報と、代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者識別子とを対応付けた代表ベクトル履歴情報を保持する。比較対象ベクトル情報取得手段は、比較対象となる代表ベクトル情報である比較対象ベクトル情報を取得する。比較対象ベクトル情報取得手段が、比較対象ベクトル情報を取得する方法としては、他の装置から取得する方法や、情報処理装置自体で生成した代表ベクトル情報を取得する方法などがある。そして、比較手段は、前記比較対象ベクトル情報の位置情報及び方向情報に対応する代表ベクトル履歴情報の速度情報と、比較対象ベクトル情報の速度情報とを比較する。そして、比較結果出力手段は、前記比較手段が比較した結果に関する出力処理を行う。
【0014】
この場合、情報処理装置は、比較対象ベクトル情報と方向及び位置が近似する代表ベクトル履歴情報の速度と、比較対象ベクトル情報の速度とを比較する。各利用者端末から現在の各情報をリアルタイムに取得し、比較対象ベクトル情報を生成すれば、その比較対照ベクトル情報は、比較対象ベクトル情報の位置で、比較対象ベクトル情報の方向に走行している移動手段(例えば、電車等)の移動状況を示す情報となる。一方、代表ベクトル履歴情報に保持されている代表ベクトル履歴情報は、移動手段の過去の移動状況を示す情報であり、言い換えれば移動手段が平常通り運行している場合の移動状況を示している。よって、リアルタイムで得られた比較対象ベクトル情報の速度情報と、その比較対象ベクトル情報と方向及び位置が近似する代表ベクトル履歴情報の速度とを比較することにより、対応する移動手段が正常に走行しているか否かを判断することができる。つまり、比較対象ベクトル情報の速度情報が代表ベクトル履歴情報の速度情報とほぼ同一であれば、比較対象ベクトル情報が示す移動手段は平常通り運行していると判断できる。また、比較対象ベクトル情報の速度情報が代表ベクトル履歴情報の速度情報より遅い場合には、比較対象ベクトル情報が示す移動手段に遅れなどが生じていると判断できる。
【0015】
また、比較対象ベクトル情報となる代表ベクトル情報は、位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速度情報とが互いに近似する複数のベクトル情報の位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速度情報とを共通化した情報であるので、本願発明の情報処理装置は、単に1つのベクトル情報に基づいて移動手段が路線タイプの乗り物(例えば、電車、バス等)であるか非路線タイプの乗り物(例えば、自家用車、タクシー、トラック等)であるかを判断する場合に比して、路線タイプの乗り物であるか非路線タイプの乗り物であるかの判断の確からしさが増し、高精度に判断することができる。また、情報処理装置は、利用者端末情報取得手段が取得した位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速度情報とを用いて、ベクトル情報を生成することができる。そして、情報処理装置は、上記ベクトル情報を用いて、代表ベクトル情報を生成し、当該代表ベクトル情報を比較対象ベクトル情報とすることにより、情報処理装置自体で比較対象となる代表ベクトル情報を生成することができる。
【0016】
ここでいう共通化とは、位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速度情報とが互いに近似する複数のベクトル情報の方向情報や速度情報を平均化する処理等をいう。
【0017】
上記情報処理装置の一態様では、前記比較結果出力手段は、前記比較手段が比較した結果、前記代表ベクトル履歴情報の速度情報と前記比較対象ベクトル情報の速度情報との間に所定閾値以上の差がある場合に、前記比較手段が比較した代表ベクトル履歴情報に含まれる利用者端末の識別子に対応する装置へ通知を行う。この場合、情報処理装置は、代表ベクトル履歴情報に基づき、所定位置を通過する移動手段を利用すると予測される利用者を特定し、当該利用者が保持する端末装置へ通知を行うことができる。
【0018】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記比較対象ベクトル情報取得手段は、前記代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の位置情報間の距離が所定値以上である代表ベクトル情報を比較対象ベクトル情報として取得する。この場合、情報処理装置は、代表ベクトル情報を構成するベクトル情報の位置情報に基づいた距離が所定以上ある代表ベクトル情報を比較対象ベクトル情報とするので、端末装置を保持している利用者が利用している交通手段を判別することが可能となる。
【0019】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記比較対象ベクトル情報と、前記比較対象ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者端末の識別子とを対応付けた情報を代表ベクトル履歴情報として、前記代表ベクトル履歴情報保持手段へ登録する代表ベクトル履歴情報登録手段をさらに備える。この場合、情報処理装置は、比較対象ベクトル情報となる代表ベクトル情報と、当該代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者IDとを対応付けた情報を、代表ベクトル履歴情報として代表ベクトル履歴情報保持手段に登録するので、より多くの代表ベクトル履歴情報を保持することが可能となる。
【0020】
本発明の他の実施形態では、代表ベクトル情報と、前記代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者端末の識別子とを対応付けた情報である代表ベクトル履歴情報を保持する装置で行う情報処理方法であって、複数の利用者端末から利用者端末の識別子と、位置情報と、時刻情報とを取得する利用者端末情報取得工程と、前記利用者端末情報取得工程で取得した位置情報と、時刻情報とを用いて、方向情報及び速度情報を算出し、前記利用者端末の識別子と、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とを有するベクトル情報を生成するベクトル情報生成工程と、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とが互いに近似する複数のベクトル情報を共通化して得られる位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速度情報とを有する代表ベクトル情報を生成する代表ベクトル情報生成工程と、比較対象となる代表ベクトル情報である比較対象ベクトル情報を取得する比較対象ベクトル情報取得工程と、前記比較対象ベクトル情報の位置情報及び方向情報に対応する代表ベクトル履歴情報の速度情報と、前記比較対象ベクトル情報の速度情報とを比較する比較工程と、前記比較手段が比較した結果に基づいた出力処理を行う比較結果出力工程と、を備える。
【0021】
このような、情報処理方法でも、比較対象ベクトル情報と方向及び位置が近似する代表ベクトル履歴情報の速度と、比較対象ベクトル情報の速度とを比較することにより、比較対象ベクトル情報の位置で、比較対象ベクトル情報の方向に走行している移動手段(例えば、電車等)が、正常に走行しているか否かを判断することができる。そして、比較対象ベクトル情報となる代表ベクトル情報は、位置情報と、方向情報と、速度情報とが互いに近似する複数のベクトル情報の位置情報と、方向情報と、速度情報とを共通化した情報であるので、本願発明の情報処理装置は、単に1つのベクトル情報に基づいて判断する場合に比して、移動手段を正確に判断することができる。
【0022】
本発明のさらに他の実施形態では、代表ベクトル情報と、前記代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者端末の識別子とを対応付けた情報である代表ベクトル履歴情報を保持するコンピュータ装置で実行される情報処理プログラムであって、複数の利用者端末から利用者端末の識別子と、位置情報と、時刻情報とを取得する利用者端末情報取得手段、前記利用者端末情報取得手段が取得した位置情報と、時刻情報とを用いて、方向情報及び速度情報を算出し、前記利用者端末の識別子と、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とを有するベクトル情報を生成するベクトル情報生成手段、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とが互いに近似する複数のベクトル情報を共通化して得られる位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速度情報とを有する代表ベクトル情報を生成する代表ベクトル情報生成手段、比較対象となる代表ベクトル情報である比較対象ベクトル情報を取得する比較対象ベクトル情報取得手段、前記比較対象ベクトル情報の位置情報及び方向情報に対応する代表ベクトル履歴情報の速度情報と、前記比較対象ベクトル情報の速度情報とを比較する比較手段、前記比較手段が比較した結果に基づいた出力処理を行う比較結果出力手段、として前記コンピュータを機能させる。
【0023】
このような、情報処理プログラムを、各種装置上で実行することにより、本発明の情報処理装置を実現することができる。なお、この情報処理プログラムは記録媒体に記録した状態で好適に取り扱うことができる。
【実施例】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0025】
[発明概要]
図1に、情報処理システム1の概念図を示す。本実施例では、情報提供システム1は、複数の端末装置50、及び情報処理サーバ100から構成される。
【0026】
端末装置50は、具体的には、GPS(Global Positioning System)受信機を有する携帯電話等、人が持ち運び可能な端末装置である。端末装置50は、現在地情報800を情報処理サーバ100へ適宜送信したり、一括で送信したりする。ここで、現在地情報800は、GPS受信機を介して取得した位置情報712と、当該位置情報712を取得した時点の時刻情報711と、端末装置50を識別するための利用者ID710とを含む情報である。なお、端末装置50は、所定の測位間隔でGPS受信機から取得した情報に基づいて算出した位置情報712を取得し、所定の送信間隔で、現在地情報800を情報処理サーバ100へ送信する。
【0027】
情報処理サーバ100は、サーバ装置であり、端末装置50から取得した現在地情報800に基づいて各端末装置50の移動(例えば、位置、時刻、方向、速さ等)に関する情報(以下、この情報を「ベクトル情報」とも呼ぶ)を生成し、当該ベクトル情報の位置、時刻、方向、速さが近似する複数のベクトル情報を共通化した代表ベクトル情報を生成する。そして、情報処理サーバ100は、代表ベクトル情報と、代表ベクトル情報に対応する端末装置の利用者ID710とを対応付けた情報(以下、この情報を「代表ベクトル履歴情報」とも呼ぶ)を保持している。
【0028】
情報処理サーバ100は、端末装置50から取得した現在地情報800に基づいてベクトル情報を生成し、複数の端末装置50で位置、時刻、方向、速さが共通するベクトル情報がある場合、当該共通したベクトル情報の速さ情報と、当該共通したベクトル情報に対応する代表ベクトル履歴情報の速さ情報とを比較し、差異がある場合は、比較した代表ベクトル履歴情報に含まれている利用者IDに対応する端末装置50に対して「異常事態が発生している可能性がある」旨の通知をする。
【0029】
このように、情報処理サーバ100は、複数の端末装置50で共通化したベクトル情報に基づいた情報である代表ベクトル履歴情報を保持しておき、各端末装置50から取得した現在地情報800に基づいて生成したベクトル情報について共通化した情報と、それに対応する代表ベクトル履歴情報とを比較することにより、複数の利用者が共通して利用する移動手段(例えば、電車等)で遅延が発生しているか否かを判断することができる。
【0030】
[情報処理サーバ]
図2は、本発明の実施例に係る情報処理サーバ100の概略構成を示す図である。情報処理サーバ100は、例えば、サーバ装置により構成され、システムバス111と、CPU(Central Processing Unit)112と、メモリ113と、キーボード114と、マウスなどの座標指示デバイス115と、ディスプレイ116と、通信装置117と、ハードディスクなどのデータ記憶装置118とを備える。ここで、キーボード114及び座標指示デバイス115は、入力装置である。また、ディスプレイ116は、出力装置である。通信装置117は、他の装置とデータを授受する所定の通信装置である。CPU112は、情報処理サーバ100全体を制御し、入出力装置の制御を行う。
【0031】
CPU112、メモリ113、通信装置117、データ記憶装置118は、システムバス111に接続される。キーボード114、座標指示デバイス115、ディスプレイ116、も図示しないインタフェースを介してシステムバス111に接続される。メモリ113は、作業メモリとしても使用される。
【0032】
データ記憶装置118は、図示の通り、プローブ情報データベース130、移動情報データベース140、及び代表ベクトル履歴情報データベース150を保持する。プローブ情報データベース130、移動情報データベース140、及び代表ベクトル履歴情報データベース150の詳細については、後述する。
【0033】
[情報処理ユニット]
図3は、情報処理ユニット200の機能ブロック図である。情報処理ユニット200は、実体的には、情報処理サーバ100の構成要素により構成される。図3に示すように、情報処理ユニット200は、利用者端末情報取得部201、ベクトル情報生成部202、代表ベクトル情報生成部203、比較対象ベクトル情報取得部204、代表ベクトル履歴情報登録部205、比較部206、及び比較結果出力部207を備える。そして、情報処理ユニット200は、データ記憶装置118と接続している。
【0034】
利用者端末情報取得部201は、通信装置117を介して、複数の端末装置50から現在地情報800を取得し、取得した現在地情報800に含まれる利用者ID710、時刻情報711、位置情報712をプローブ情報データベース130へ登録する。
【0035】
プローブ情報データベース130は、図4に示すように、端末装置50から受信した現在地情報800に基づいて、利用者ID710毎に位置情報712(X座標及びY座標)と、時刻情報711とを集計したデータベースである。
【0036】
図4に示すプローブ情報データベース130の場合、「ユーザ1」、「ユーザ2」が利用者ID710に対応する情報であり、「時刻」が時刻情報711に対応する情報であり、「X座標」が位置情報712のX座標に対応する情報であり、「Y座標」が位置情報712のY座標に対応する情報である。
【0037】
ベクトル情報生成部202は、プローブ情報データベース130に登録されている情報を用いて、ベクトル情報を生成する。具体的に、ベクトル情報生成部202は、最初に、プローブ情報データベース130で保持している情報を用いて、端末装置50の方向及び速さを算出する。方向を求める式の例として、以下の式がある。
【0038】
【数1】

即ち、ベクトル情報生成部202は、ある端末装置50から取得した現在地情報800と同一の利用者ID710を有し、且つ上記現在地情報800の時刻情報711の直後の時刻の時刻情報711を有する現在地情報800(この現在地情報800を以降、「方向算出用現在地情報」とも呼ぶ)をプローブ情報データベース130から検索し、現在地情報800の位置情報712及び方向算出用現在地情報の位置情報を用いて方向を算出する。なお、方向の算出方法は、上記の方法以外の種々の方法で算出するようにしても良い。
【0039】
また、速さを求める式の例として、以下の式がある。
【0040】
【数2】

即ち、ベクトル情報生成部202は、ある端末装置50から取得した現在地情報800と、当該現在地情報800の方向算出用現在地情報をプローブ情報データベース130から検索し、現在地情報800及び方向算出用現在地情報の位置情報と時刻とを用いて速さを算出する。なお、速さの算出方法は、上記の方法以外の種々の方法で算出するようにしても良い。
【0041】
そして、ベクトル情報生成部202は、プローブ情報データベース130で保持している現在地情報800の利用者ID710と、現在地情報800の時刻情報711と、現在地情報800の位置情報712のX座標と、現在地情報800の位置情報712のY座標と、ベクトル情報生成部202自身で算出した方向情報と、ベクトル情報生成部202自身で算出した速さ情報とを対応付けた情報であるベクトル情報を生成する。ベクトル情報生成部202は、生成したベクトル情報を移動情報データベース140へ登録する。
【0042】
移動情報データベース140が保持するベクトル情報を概念的に表した図を図5に示す。図5に示す移動情報データベース140の場合、「ユーザ1」、「ユーザ2」は、利用者ID710に対応する情報であり、「時刻」は、時刻情報711に対応する情報であり、「X座標」は、位置情報712のX座標に対応する情報であり、「Y座標」は、位置情報712のY座標に対応する情報であり、「方向」は、ベクトル情報生成部202が算出した方向であり、「速さ」は、ベクトル情報生成部202が算出した速さに対応する情報である。
【0043】
代表ベクトル情報生成部203は、同一の移動手段を利用して集団で移動していると想定されるベクトル情報を特定し、特定したベクトル情報の集合を集団移動ベクトル集合として収集し、当該集団移動ベクトル集合を構成するベクトル情報を共通化したベクトル情報を代表ベクトル情報として生成する。
【0044】
具体的に、代表ベクトル情報生成部203は、まず、所定の基準となる時間幅(例えば、10秒等)に含まれ、且つ利用者IDが異なるベクトル情報を移動情報データベース140から取得する。ここで、代表ベクトル情報生成部203が検索した、同一の時間幅に含まれるベクトル情報の集合を「同時刻ベクトル集合」とする。
【0045】
次に、代表ベクトル情報生成部203は、同時刻ベクトル集合に含まれるベクトル情報のうち、方向及び速さが略同一のベクトル情報を特定する。ここで、代表ベクトル情報生成部203が特定した、同時刻ベクトル集合に含まれるベクトル情報のうち、方向及び速さが略同一のベクトル情報の集合を「移動ベクトル合致集合」とする。
【0046】
次に、代表ベクトル情報生成部203は、移動ベクトル合致集合に含まれるベクトル情報のうち、互いに近傍である位置情報を有するベクトル情報の集合(以下、この集合を「集団移動ベクトル集合」とも呼ぶ)を特定する。
【0047】
次に、代表ベクトル情報生成部203は、集団移動ベクトル集合に含まれるベクトル情報の方向及び速さについて平均値を算出し、集団移動ベクトル集合の基準となる時刻、基準となる位置情報、集団移動ベクトル集合に含まれるベクトル情報の方向の平均値、及び集団移動ベクトル集合に含まれるベクトル情報の速さの平均値を有する情報を代表ベクトル情報として生成する。このように、代表ベクトル情報生成部203が、基準となる時刻や位置を決定したり、方向や速さの平均値を算出したりすることを、「ベクトル情報の共通化」と呼ぶ。
【0048】
このようにして生成された代表ベクトル情報は、ある移動手段(交通手段)の移動状況を示す情報となる。つまり、複数の利用者端末がほぼ同一の位置で、ほぼ同一時刻にほぼ同一の方向へほぼ同一の速さで移動している場合には、それら複数の利用者端末の利用者が同乗した移動手段が存在していることが推測され、代表ベクトル情報はその移動手段の位置、時刻、方向、速度などを示していることになる。従って、複数の利用者端末からリアルタイム取得した現在地情報800を使用して生成した現在の代表ベクトル情報は、対応する移動手段の現在の移動状況を示すことになる。また、過去に複数の利用者端末から取得した現在地情報800を利用して生成された過去の代表ベクトル情報は、過去の時点における移動手段の移動状況を示すことになる。
【0049】
比較対象ベクトル情報取得部204は、比較対象となるベクトル情報を取得する。本実施例では、比較対象ベクトル情報取得部204は、上記代表ベクトル情報、特に現在の代表ベクトル情報を比較対象ベクトル情報として取得する。
【0050】
代表ベクトル履歴情報登録部205は、上記の代表ベクトル情報と、当該代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者IDとを対応付けた情報を、代表ベクトル履歴情報として、代表ベクトル履歴情報データベース150へ登録する。これにより、代表ベクトル履歴情報データベース150には、移動手段の過去の移動状況を示す代表ベクトル履歴情報が蓄積される。なお、新たな代表ベクトルが生成された場合、代表ベクトル履歴情報登録部204は、代表ベクトル履歴情報データベース150内の代表ベクトル履歴情報を更新する。更新の方法としては、新たな代表ベクトル履歴情報を代表ベクトル履歴情報データベースに追加登録してもよく、既に登録済みの代表ベクトル履歴情報を削除して新たな代表ベクトル履歴情報のみを登録してもよい。また、新たな代表ベクトル履歴情報の方向、速さなどと登録済みの代表ベクトル履歴情報の方向、速さなどを平均化してその結果を登録してもよい。
【0051】
代表ベクトル履歴情報データベース150は、図6に示すように、代表ベクトル情報生成部203が取得した代表ベクトル情報に含まれる時刻、X座標、Y座標、方向、速さを有すると共に、当該代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者IDも有する。
【0052】
各端末装置50のベクトル情報と、代表ベクトル履歴情報データベース150に含まれる代表ベクトル履歴情報とを、概念的に表した図を図7に示す。
【0053】
図7はユーザ1の移動軌跡を破線とし、ユーザ2の移動軌跡を1点鎖線とし、ユーザ3の移動軌跡を実線とした場合における、代表ベクトル情報を太矢印で示したイメージ図である。ユーザ1、ユーザ2、ユーザ3の軌跡が重なっている部分の代表ベクトル情報は、ユーザ1、ユーザ2、ユーザ3で構成され、ユーザ1、ユーザ3の軌跡が重なっている部分の代表ベクトルはユーザ1、ユーザ3で構成される。代表ベクトル情報を構成するベクトル情報は、ユーザ1、2、3以外のベクトル情報も含んでおり、一連の代表ベクトル情報は夫々構成するユーザのベクトル情報を変えながら連続した軌跡を描くことになる。この軌跡は上記ユーザ1等が利用していた移動体(例えば、電車等)の路線形状であり、地図データと位置情報ベースで合わせこめば、電車、バスの路線図となりえる。
【0054】
比較部206は、比較対象ベクトル情報と、X座標、Y座標、及び方向情報が近似する代表ベクトル履歴情報を検索し、検索した代表ベクトル履歴情報の速さと、比較対象ベクトル情報の速さとを比較する。比較対象ベクトル情報として現在の代表ベクトル情報を使用した場合、それは対応する移動手段の現在の移動状況を示す情報となる。一方、その比較ベクトル情報とX座標、Y座標、及び方向情報が近似する代表ベクトル履歴情報は、同じ移動手段の過去における移動状況を示す情報となる。代表ベクトル履歴情報として、過去の複数の時点における情報を平均化して保持しておけば、それは対応する移動手段が平常通り運行した場合の移動状況を示す情報となる。
【0055】
比較結果出力部207は、比較部206が比較した結果、比較対象ベクトル情報の速さと、検索した代表ベクトル履歴情報の速さに所定値以上の大きな差があるか否かを判定する。具体的に、比較対象ベクトル情報の速さと代表ベクトル履歴情報の速さがほぼ同一であれば、それは対応する移動手段が現在ほぼ平常通り運行していることを示している。一方、比較対象ベクトル情報の速さが代表ベクトル履歴情報の速さより所定以上遅ければ、それは対応する移動手段に現在遅れが生じていることを示している。よって、比較結果出力部207は、当該代表ベクトル履歴情報に含まれる利用者IDの端末装置50へ「利用する可能性のある交通手段に遅延の可能性がある」旨の通知を行う。
【0056】
[ベクトル情報生成方法]
次に、ベクトル情報生成方法について説明する。ベクトル情報生成方法とは、端末装置50から現在地情報800を取得し、当該現在地情報800からベクトル情報を生成する方法をいう。図8に示すフローチャートを用いてベクトル情報生成方法について説明する。
【0057】
本実施例では、メモリ113で保持しているプログラムをCPU112が実行することにより、上述のベクトル情報生成方法を実現する。
【0058】
まず、利用者端末情報取得部201は、複数の端末装置50から現在地情報800を取得する(ステップS1)。
【0059】
ベクトル情報生成部202は、各端末装置50から取得した現在地情報800と、その方向算出用現在地情報とを用いて、方向及び速さを算出する(ステップS2)。
【0060】
そして、ベクトル情報生成部202は、現在地情報800の利用者ID710と、位置情報712のX座標と、位置情報712のY座標と、時刻情報711と、方向と、速さとを含むベクトル情報を生成し、当該ベクトル情報を移動情報データベース140へ保存し、処理を終了する(ステップS3)。
【0061】
[ベクトル情報比較方法]
次に、ベクトル情報比較方法について説明する。ベクトル情報比較方法とは、移動情報データベース140で保持しているベクトル情報から代表ベクトル情報を生成し、生成した代表ベクトル情報と、当該代表ベクトル情報に対応する代表ベクトル履歴情報とを比較し、差異がある場合に、当該代表ベクトル履歴情報に含まれている利用者IDの端末装置50へ「遅延発生の可能性がある」旨の通知を行う方法をいう。前提として、移動情報データベース140にベクトル情報が保持されているものとする。図9に示すフローチャートを用いてベクトル情報比較方法について説明する。
【0062】
本実施例では、メモリ113で保持しているプログラムをCPU112が実行することにより、上述のベクトル情報比較方法を実現する。
【0063】
代表ベクトル情報生成部203は、まず、所定の基準となる時間幅(例えば、10秒等)に含まれ、且つ利用者IDが異なるベクトル情報を移動情報データベース140から取得することにより、同時刻ベクトル集合を取得する(ステップS11)。
【0064】
次に、代表ベクトル情報生成部203は、同時刻ベクトル集合に含まれるベクトル情報の方向及び速さが同一のベクトル情報を特定することにより、移動ベクトル合致集合を取得する(ステップS12)。ここで「同一」とは、その差異が所定の幅に含まれるものを含む。
【0065】
次に、代表ベクトル情報生成部203は、移動ベクトル合致集合に含まれるベクトル情報のうち、相互に近傍に位置する複数のベクトル情報、即ちベクトル情報の位置情報が所定範囲内であるベクトル情報の集合である集団移動ベクトル集合を特定する(ステップS13)。
【0066】
次に、代表ベクトル情報生成部203は、集団移動ベクトル集合に含まれるベクトル情報の方向及び速さについて平均値を算出し、集団移動ベクトル集合の基準となる時刻、基準となる位置情報、集団移動ベクトル集合に含まれるベクトル情報の方向の平均値、及び集団移動ベクトル集合に含まれるベクトル情報の速さの平均値を有する情報を代表ベクトル情報として生成する(ステップS14)。なお、代表ベクトル情報生成部203は、当該代表ベクトル情報をメモリ113で保持しておく。そして、比較対象ベクトル情報取得部204は、上記代表ベクトル情報を比較対象ベクトル情報として取得する。
【0067】
そして、比較部206は、比較対象ベクトル情報と、X座標、Y座標、及び方向情報が近似する代表ベクトル履歴情報を代表ベクトル履歴情報データベース150から検索する(ステップS15)。検索対象の代表ベクトル履歴情報がある場合(ステップS16;Yes)、比較部206は、検索した代表ベクトル履歴情報の速さと、比較対象ベクトル情報の速さとを比較する(ステップS17)。
【0068】
比較部206が比較した結果、比較対象ベクトル情報の速さと、検索した代表ベクトル履歴情報の速さに所定値以上の差(例えば、時速10km/h以上)がある場合(ステップS18;Yes)、比較結果出力部207は、当該代表ベクトル履歴情報に含まれる利用者IDを検索し(ステップS19)、当該端末装置50へ「利用する可能性のある交通手段に遅延の可能性がある」旨の通知を行い、処理を終了する(ステップS20)。このように、情報処理ユニット200は、端末装置の利用者が利用している移動手段に異常が発生している可能性がある場合、当該移動手段を利用している可能性のある利用者の端末装置へ、その旨を通知することができる。
【0069】
一方、ステップS16において比較部206が比較対象ベクトル情報とX座標、Y座標、及び方向情報が近似する代表ベクトル履歴情報を検索した結果、検索対象の代表ベクトル履歴情報がない場合(ステップS16;No)、又は、ステップS18において比較部206が検索した代表ベクトル履歴情報の速さと、比較対象ベクトル情報の速さとを比較した結果、所定値以上の差が無い場合(ステップS18;No)、代表ベクトル履歴情報登録部205は、上記の代表ベクトル情報と、当該代表ベクトルの基となるベクトル情報の利用者IDとを対応付けた情報を、代表ベクトル履歴情報として、代表ベクトル履歴情報データベース150を更新し(ステップS21)、処理を終了する。
【0070】
この場合、情報処理ユニット200は、比較対象ベクトル情報(代表ベクトル情報)と、当該代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者IDとを対応付けた情報を代表ベクトル履歴情報データベース150へ登録することにより、多くの代表ベクトル履歴情報を保持することができるので、より幅のある情報を登録することができる。また、ステップS18において、代表ベクトル履歴情報の速さと所定値以上の差があると判断された比較対象ベクトル情報は、ステップ21における代表ベクトル履歴情報データベース150の更新に使用されることはないので、代表ベクトル履歴情報データベース150には常に移動手段の平常運行状態を示す代表ベクトル履歴情報を保持することができる。
【0071】
以上述べたように、情報処理装置は、比較対象ベクトル情報と方向及び位置が近似する代表ベクトル履歴情報の速さと、比較対象ベクトル情報の速さとを比較することにより、比較対象ベクトル情報の位置で、比較対象ベクトル情報の方向に走行している移動手段(例えば、電車等)が、正常に走行しているか否かを判断することができる。そして、比較対象ベクトル情報となる代表ベクトル情報は、位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速さ情報とが互いに近似する複数のベクトル情報の位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速さ情報とを共通化した情報であるので、本願発明の情報処理装置は、単に1つのベクトル情報に基づいて移動手段が路線タイプの乗り物(例えば、電車、バス等)であるか非路線タイプの乗り物(例えば、自家用車、タクシー、トラック等)であるかを判断する場合に比して、路線タイプの乗り物であるか非路線タイプの乗り物であるかの判断の確からしさが増し、高精度に判断することができる。
【0072】
また、上述の情報処理ユニット200では、利用者端末情報取得部201が複数の端末装置50から現在地情報800を取得し、ベクトル情報生成部202がベクトル情報を生成し、代表ベクトル情報生成部203がベクトル情報から代表ベクトル情報を生成し、比較対象ベクトル情報取得部204が代表ベクトル情報を比較対象ベクトル情報として取得する。この場合、情報処理ユニット200は、利用者端末情報取得部201が取得した現在地情報800を用いて、ベクトル情報を生成することができる。そして、情報処理ユニット200は、上記ベクトル情報を用いて、代表ベクトル情報を生成し、当該代表ベクトル情報を比較対象ベクトル情報とすることにより、情報処理装置自体で比較対象ベクトル情報を生成することができる。
【0073】
また、ステップS13に示すように、情報処理ユニット200は、複数の端末装置50の同時刻のベクトル情報のうち、方向及び速さが合致し、かつ互いに近傍に位置する複数のベクトル情報を抽出し、抽出した複数のベクトル情報の平均により代表ベクトル情報を生成する。
【0074】
このように、情報処理ユニット200は、互いに近傍の位置情報を有する複数のベクトル情報を抽出しているので、抽出したベクトル情報群はある密度以上で分布することになる。情報処理ユニット200は、上記密度が車の渋滞時における密度を超えるような互いに近傍の位置情報を有する複数のベクトル情報を抽出すれば、車による個別の移動が排除され、一つの移動手段を複数のユーザが同時に利用して移動している状態を判定することが可能となる。
【0075】
また、情報処理ユニット200は、比較した代表ベクトル情報と、当該代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者IDとを対応付けた情報である代表ベクトル履歴情報を登録し、当該代表ベクトル履歴情報には代表ベクトルの計算に用いられたベクトル情報の利用者IDも合わせて記録している。
【0076】
このように、情報処理ユニット200は、代表ベクトル情報で示される移動体を利用しているユーザを、ユーザが移動体を利用して移動した時刻と共に特定可能となるので、移動体の移動に遅延が発生したときに、その遅延の影響を受けるユーザの移動時刻情報に基づいて、移動体の移動に遅延が発生した時刻よりも後の時刻で移動体を利用した履歴のユーザを特定して、遅延情報として報知することが可能となる。
【0077】
また、上記代表ベクトル履歴情報の代表ベクトル情報は、位置情報と速さとを含むので、夫々をノードとリンクコストに対応させると、道路ネットワークに相当するネットワーク情報として利用可能となる。即ち、本実施例における情報処理ユニット200が生成した代表ベクトル履歴情報を用いることにより、電車・バスの路線情報を生成することもできる。
【0078】
[他の実施例]
上述の実施例では、情報処理ユニット200は、端末装置50から現在地情報800を取得し、取得した現在地情報800等から方向及び速さを算出する場合について述べたが、本発明は、これに限られず、端末装置50自体が、方向や速さを計測できるセンサー等を用いて方向及び速さを算出し、端末装置50が、現在地情報800と共に方向や速さも情報処理ユニット200へ送信するようにしても良い。
【0079】
この場合、端末装置50が、端末装置50自体で保持しているセンサーを利用して速さ及び方向を算出しているので、現在地情報800に基づいて方向及び速さを算出する場合に比して正確な方向及び速さを算出することができる。
【0080】
上述の実施例では、情報処理ユニット200は、移動情報データベース140内のベクトル情報を用いて、代表ベクトル情報を生成する場合について述べたが、本発明は、これに限られない。端末装置50が近距離無線通信機能を有する端末であれば、複数の端末装置50同士でベクトル情報を共有してもよい。この場合、複数の端末装置50のベクトル情報が合致したことを端末装置50で判定し、複数の端末装置50のベクトル情報が合致している場合に、情報処理ユニット200へ、上記ベクトル情報を代表ベクトル情報として送信しても良い。
【0081】
これによれば、端末装置50が代表ベクトル情報の算出まで行うので、情報処理ユニット200が代表ベクトル情報を算出する必要がなくなり、情報処理ユニット200の処理負荷を軽減させることができる。
【0082】
上述の実施例では、代表ベクトル履歴情報を情報処理サーバ100で一括して保持する場合について述べたが、本発明は、これに限られない。端末装置50で、当該端末装置50の利用者IDに対応する代表ベクトル履歴情報を保持しておき、端末装置50が端末装置50のベクトル情報と、保持している代表ベクトル履歴情報とを比較し、差異が大きい場合は、遅延情報として、情報処理サーバ100へ送信するようにしても良い。この場合、情報処理サーバ100は、同一位置で複数の端末装置50から遅延情報を取得したときに、最終的に遅延が発生していると判断する。
【0083】
これによれば、情報処理サーバ100は、端末装置50自身で保持している代表ベクトル履歴情報とベクトル情報との比較結果を端末装置50から取得し、当該比較結果に基づいて遅延が発生しているか否かを判断しているので、情報処理サーバ100が保持している代表ベクトル履歴情報を用いて、各利用者端末50の現在地情報800から生成した代表ベクトル情報との比較を行う場合に比して、情報処理装置の処理負荷を軽減させることができる。
【0084】
上述の実施例では、特に記載しなかったが、図9のフローチャートのステップS13で特定した集団移動ベクトル集合に含まれるベクトル情報の位置情報に基づいたベクトル情報間の距離が所定値以上であることを条件に、集団移動ベクトル集合を特定するようにしても良い。
【0085】
この場合、情報処理ユニット200は、利用者が自動車に乗車している場合の現在地情報800から算出したベクトル情報の集合を集団移動ベクトル集合として特定してしまうことを回避することができる。従って、情報処理ユニット200は、移動手段が電車である利用者の現在地情報800から生成したベクトル情報の集団移動ベクトル集合を特定することが可能となる。
【0086】
上述の実施例では、情報処理ユニット200は、代表ベクトル情報を生成し、当該代表ベクトル情報に対応する代表ベクトル履歴情報の速さと、代表ベクトル情報の速さとを比較することにより、代表ベクトル情報の位置情報に該当する位置を通過している移動手段に遅延が発生しているか否かを判断しているが、本発明はこれに限られない。既に保持している代表ベクトル履歴情報の時刻及び位置情報(X座標及びY座標)を基に、当該時刻及び位置情報で代表ベクトルが生成されているか否かにより、遅延が発生しているか否かを判断するようにしても良い。
【0087】
この場合、情報処理ユニット200は、代表ベクトル履歴情報から、本来であれば代表ベクトルが生成される時刻及び位置において、代表ベクトル情報が生成されているか否かを確認することにより、移動体が完全に静止して代表ベクトル情報の生成が不可能な場合にも遅延情報を検出できる。
【0088】
上述の実施例では、情報処理ユニット200は、複数の利用者が同一の移動手段を用いて移動していることを検出するために、同一の速さで且つ位置が近いベクトル情報に基づいて代表ベクトル情報を生成する場合について述べたが、本発明は、これに限られない、相対距離関係が変動するか否かにより、同一の移動手段を用いているか否かを判断するようにしても良い。相対距離関係が変動するか否かを判断する方法として、対象となる現在地情報800の直近の現在地情報800を利用する方法がある。
【0089】
上述の実施例では、特に述べなかったが、複数の同一の速さで移動している利用者の位置情報が形成する形状が、幅広くないことを条件に移動手段の判定を行うようにしても良い。
【0090】
上述の実施例では、代表ベクトル情報に時刻情報を含める場合について述べたが、本発明は、これに限られず、時刻情報を含めないこととしても良い。
【0091】
上述の実施例では、ベクトル情報生成部202が、ベクトル情報を生成することにより、ベクトル情報を取得する場合について述べたが、本発明は、これに限られない。例えば、情報処理ユニット200が、別途、ベクトル情報取得部を備え、当該ベクトル情報取得部が別の装置からベクトル情報を取得するようにしても良い。
【0092】
上述の実施例では、代表ベクトル情報生成部203が、代表ベクトル情報を生成することにより、代表ベクトル情報を取得する場合について述べたが、本発明は、これに限られない。例えば、情報処理ユニット200が、別途、代表ベクトル情報取得部を備え、当該代表ベクトル情報取得部が別の装置から代表ベクトル情報を取得するようにしても良い。
【0093】
上述の実施例では、比較結果出力部207は、遅延が発生している可能性がある場合に、比較で用いられた代表ベクトル履歴情報に含まれる利用者IDに対応する端末装置50へ通知する場合について述べたが、本発明は、これに限られない。例えば、移動手段の運行が正常な場合には、正常である旨も所定のタイミングで通知するようにしても良い。
【0094】
上述の実施例では、代表ベクトル情報生成部203が、同時刻ベクトル集合に含まれるベクトル情報の方向、速さが略同一のベクトル情報を特定することにより、「移動ベクトル合致集合」を特定する場合について述べたが、本発明は、これに限られない、代表ベクトル情報生成部203は、ベクトル情報の方向、速さが略同一であるだけでなく、速さが所定値以上(例えば、時速10km/h以上)であることも条件に追加しても良い。この場合、情報処理ユニット200は、集団の歩行者移動についてのベクトル情報集合を移動ベクトル合致集合として特定してしまうことを回避することができる。
【符号の説明】
【0095】
100 情報処理サーバ
111 システムバス
112 CPU
113 メモリ
114 キーボード
115 座標指示デバイス
116 ディスプレイ
117 通信装置
118 データ記憶装置
130 プローブ情報データベース
140 移動情報データベース
150 代表ベクトル履歴情報データベース
200 情報処理ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の利用者端末から利用者端末の識別子と、位置情報と、時刻情報とを取得する利用者端末情報取得手段と、
前記利用者端末情報取得手段が取得した位置情報と、時刻情報とを用いて、方向情報及び速度情報を算出し、前記利用者端末の識別子と、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とを有するベクトル情報を生成するベクトル情報生成手段と、
前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とが互いに近似する複数のベクトル情報を共通化して得られる位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速度情報とを有する代表ベクトル情報を生成する代表ベクトル情報生成手段と、
前記代表ベクトル情報と、前記代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者端末の識別子とを対応付けた情報である代表ベクトル履歴情報を保持する代表ベクトル履歴情報保持手段と、
比較対象となる代表ベクトル情報である比較対象ベクトル情報を取得する比較対象ベクトル情報取得手段と、
前記比較対象ベクトル情報の位置情報及び方向情報に対応する代表ベクトル履歴情報の速度情報と、前記比較対象ベクトル情報の速度情報とを比較する比較手段と、
前記比較手段が比較した結果に基づいた出力処理を行う比較結果出力手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記比較結果出力手段は、前記比較手段が比較した結果、前記代表ベクトル履歴情報の速度情報と前記比較対象ベクトル情報の速度情報との間に所定閾値以上の差がある場合に、前記比較手段が比較した代表ベクトル履歴情報に含まれる利用者端末の識別子に対応する装置へ通知を行うことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記比較対象ベクトル情報取得手段は、前記代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の位置情報間の距離が所定値以上である代表ベクトル情報を比較対象ベクトル情報として取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記比較対象ベクトル情報と、前記比較対象ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者端末の識別子とを対応付けた情報を代表ベクトル履歴情報として、前記代表ベクトル履歴情報保持手段へ登録する代表ベクトル履歴情報登録手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
代表ベクトル情報と、前記代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者端末の識別子とを対応付けた情報である代表ベクトル履歴情報を保持する装置で行う情報処理方法であって、
複数の利用者端末から利用者端末の識別子と、位置情報と、時刻情報とを取得する利用者端末情報取得工程と、
前記利用者端末情報取得工程で取得した位置情報と、時刻情報とを用いて、方向情報及び速度情報を算出し、前記利用者端末の識別子と、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とを有するベクトル情報を生成するベクトル情報生成工程と、
前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とが互いに近似する複数のベクトル情報を共通化して得られる位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速度情報とを有する代表ベクトル情報を生成する代表ベクトル情報生成工程と、
比較対象となる代表ベクトル情報である比較対象ベクトル情報を取得する比較対象ベクトル情報取得工程と、
前記比較対象ベクトル情報の位置情報及び方向情報に対応する代表ベクトル履歴情報の速度情報と、前記比較対象ベクトル情報の速度情報とを比較する比較工程と、
前記比較手段が比較した結果に基づいた出力処理を行う比較結果出力工程と、
を備えることを特徴とする情報処理方法。
【請求項6】
代表ベクトル情報と、前記代表ベクトル情報の基となるベクトル情報の利用者端末の識別子とを対応付けた情報である代表ベクトル履歴情報を保持するコンピュータ装置で実行される情報処理プログラムであって、
複数の利用者端末から利用者端末の識別子と、位置情報と、時刻情報とを取得する利用者端末情報取得手段、
前記利用者端末情報取得手段が取得した位置情報と、時刻情報とを用いて、方向情報及び速度情報を算出し、前記利用者端末の識別子と、前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とを有するベクトル情報を生成するベクトル情報生成手段、
前記位置情報と、前記時刻情報と、前記方向情報と、前記速度情報とが互いに近似する複数のベクトル情報を共通化して得られる位置情報と、時刻情報と、方向情報と、速度情報とを有する代表ベクトル情報を生成する代表ベクトル情報生成手段、
比較対象となる代表ベクトル情報である比較対象ベクトル情報を取得する比較対象ベクトル情報取得手段、
前記比較対象ベクトル情報の位置情報及び方向情報に対応する代表ベクトル履歴情報の速度情報と、前記比較対象ベクトル情報の速度情報とを比較する比較手段、
前記比較手段が比較した結果に基づいた出力処理を行う比較結果出力手段、として前記コンピュータを機能させることを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載の情報処理プログラムを記憶したことを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−53819(P2011−53819A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200731(P2009−200731)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(595105515)インクリメント・ピー株式会社 (197)
【Fターム(参考)】