説明

情報処理装置、画像形成装置及びプログラム

【課題】画像形成装置の保守管理のために用いられる情報を、情報の欠落を防ぎつつ、かつサーバ装置の負荷を増やすことなく管理することのできる技術を提供する。
【解決手段】通信制御装置2の制御部21は、画像形成装置1の保守管理のために用いられる品質特性情報を画像形成装置1から取得し、品質特性情報記憶領域221に格納する。制御部21は、品質特性情報記憶領域221の残記憶容量が予め定められた閾値未満か否かを定期的に判定し、判定結果が肯定的である場合に、記憶された品質特性情報のなかから、画像形成装置1の動作状況の定期的な検出結果を示す第2の品質特性情報を抽出し、抽出した第2の品質特性情報の統計結果を示す情報を、第2の品質特性情報に代えて品質特性情報記憶領域221に格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、画像形成装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の保守管理にかかるコストを削減するため、通信回線を介して画像形成装置とサービスセンタとを接続し、遠隔地から画像形成装置の保守を行うシステムが開発されている。例えば、特許文献1には、画像形成装置のロギングデータを通信回線を介してサービスセンタへ送信するシステムにおいて、画像形成装置とサービスセンタ間にロギングデータを格納する通信コントロール装置を設け、通信コントロール装置の格納領域の未使用領域がなくなった場合にロギングデータをサービスセンタに送信する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−305886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、画像形成装置の保守管理のために用いられる情報を、情報の欠落を防ぎつつ、かつサーバ装置の通信にかかる負荷を増やすことなく管理することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る情報処理装置は、画像形成装置の動作状況を識別する識別子が付与された情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された情報を記憶手段に蓄積する第1の記憶制御手段と、前記記憶手段の残記憶容量が予め定められた閾値未満である場合に、前記記憶手段に蓄積された情報から、前記画像形成装置の動作状況を予め定められたタイミングで検出した検出結果を示す標本を、予め定められたアルゴリズムに従って抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出された標本に基づいて統計値を算出する統計手段と、前記抽出手段によって抽出された標本を前記記憶手段から削除するとともに、前記統計手段によって算出された統計値を前記記憶手段に蓄積する第2の記憶制御手段と、前記記憶手段に蓄積された情報を、予め定められたタイミングにおいて、通信回線を介して接続されたサーバ装置へ送信する送信手段とを具備することを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る情報処理装置は、請求項1に記載の構成において、前記記憶手段に蓄積された情報の重要度を予め定められたアルゴリズムに従って判定する重要度判定手段を具備し、前記抽出手段は、前記記憶手段の残記憶容量が予め定められた閾値未満である場合に、前記記憶手段に記憶された品質特定情報から、前記標本のうちの前記重要度判定手段によって判定された重要度が予め定められた閾値よりも低い標本を抽出することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る画像形成装置は、画像を形成する画像形成手段と、当該画像形成装置の動作状況を識別する識別子が付与された情報を生成し、生成した情報を記憶手段に蓄積する第1の記憶制御手段と、前記記憶手段の残記憶容量が予め定められた閾値未満である場合に、前記記憶手段に蓄積された情報から、当該画像形成装置の動作状況を予め定められたタイミングで検出した検出結果を示す標本を、予め定められたアルゴリズムに従って抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出された標本に基づいて統計値を算出する統計手段と、前記抽出手段によって抽出された標本を前記記憶手段から削除するとともに、前記統計手段によって算出された統計値を前記記憶手段に蓄積する第2の記憶制御手段と、前記記憶手段に蓄積された情報を、予め定められたタイミングにおいて、通信回線を介して接続されたサーバ装置へ送信する送信手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係るプログラムは、コンピュータを、画像形成装置の動作状況を識別する識別子が付与された情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された情報を記憶手段に蓄積する第1の記憶制御手段と、前記記憶手段の残記憶容量が予め定められた閾値未満である場合に、前記記憶手段に蓄積された情報から、前記画像形成装置の動作状況を予め定められたタイミングで検出した検出結果を示す標本を、予め定められたアルゴリズムに従って抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出された標本に基づいて統計値を算出する統計手段と、前記抽出手段によって抽出された標本を前記記憶手段から削除するとともに、前記統計手段によって算出された統計値を前記記憶手段に蓄積する第2の記憶制御手段と、前記記憶手段に蓄積された情報を、予め定められたタイミングにおいて、通信回線を介して接続されたサーバ装置へ送信する送信手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1、3及び4に係る発明によれば、画像形成装置の動作状況を識別する識別子が付与された情報を、情報の欠落を防ぎつつ、かつサーバ装置の通信にかかる負荷を増やすことなく管理することができる。
請求項2に係る発明によれば、画像形成装置の動作状況を識別する識別子が付与された情報のうちの重要度が予め定められた閾値よりも低い情報を抽出しない場合と比べて、重要度の高い情報はそのまま記憶しつつ、かつ全体のデータ量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る保守管理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】品質特性情報の内容を説明するための図である。
【図3】通信制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図4A】品質特性情報の内容を説明するための図である。
【図4B】品質特性情報の内容を説明するための図である。
【図5】通信制御装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】第1のモードにおける品質特性情報のデータの内容の一例を示す図である。
【図7】第2のモードにおける品質特性情報のデータの内容の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<構成>
図1は、この発明の一実施形態である保守管理システム100の構成の一例を示すブロック図である。図示のように、保守管理システム100は、画像形成装置1と通信制御装置2とがLAN(Local Area Network)等の通信回線200によって通信可能に接続されているともに、通信制御装置2とサービスセンタ3とが、WAN(Wide Area Network)や公衆回線網等の通信回線300によって通信可能に接続されている。画像形成装置1は、本発明に係る画像形成装置の一例であり、用紙等の記録媒体に画像を形成する画像形成機能や、記録媒体に形成されている画像を読み取るスキャン機能などを備えている。画像形成装置1が備える機能はこれらの機能に限定されるものではなく、例えばファクシミリ機能を備えていてもよい。また、画像形成装置1は、上述した機能を全て備えているものに限定されず、例えば、画像形成機能のみを備えており、他の機能を備えていない構成であってもよい。
【0012】
通信制御装置2は、本発明に係る情報処理装置の一例であり、画像形成装置1の保守管理のために用いられる情報(以下「品質特性情報」という)を蓄積する記憶領域を備えるとともに、蓄積した品質特性情報を予め定められたタイミングでサービスセンタ3に送信する機能を備える。サービスセンタ3は通信制御装置2から送信されてくる品質特性情報を受信し、予め定められた記憶装置に蓄積するとともに受信された品質特性情報の解析を行う。サービスセンタ3は、本発明に係るサーバ装置の一例である。なお、図1に示すシステムでは、図面が煩雑になるのを防ぐため、1台の画像形成装置1と1台の通信制御装置2のみを図示しているが、画像形成装置1や通信制御装置2の台数は複数であってもよい。また、画像形成装置1と通信制御装置2は1対1で対応するに限らず、1台の通信制御装置2に対して複数の画像形成装置1が対応付けられていてもよい。
【0013】
次いで、図1を参照しつつ、画像形成装置1のハードウェア構成の一例について説明する。図において、制御部11は、CPU(Central Processing Unit)や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備え、ROM又は記憶部12に格納されたコンピュータプログラムにしたがって画像形成装置1の制御を行う。記憶部12は、ハードディスク等の記憶手段であり、画像形成装置1の制御に関するプログラムなどの各種プログラムが格納されている。操作表示部13は、タッチパネルとして機能する液晶ディスプレイを備えており、画像形成装置1の利用者はこの液晶ディスプレイに触れることで各種の操作を行う。通信部14は、通信ケーブルで通信回線200に接続され、通信回線200に接続されている通信制御装置2とデータ通信を行う。
【0014】
画像読取部15は、光学系部材(図示略)を備えており、原稿の画像を光学的に読み取り、読み取った画像を表す画像データを生成する。画像処理部16は、入力される画像データが表す画像に色補正や階調補正等の各種の画像処理を施し、画像処理が施された画像データからイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各色の画像の画像データを生成し、生成した画像データにスクリーン処理を施して画像形成部17へ出力する。画像処理部16は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路によって構成される。画像形成部17は、電子写真方式によって記録媒体に画像を形成する。画像形成部17は、感光体ドラムや帯電装置、定着装置(図示略)等を備え、画像処理部16によって生成されたY、M、C、Kの各色の画像データに基づいて、Y、M、C、Kの各色のトナー像を生成し、このトナー像を用紙に転写して定着させることによって用紙に画像を形成する。
【0015】
次いで、通信制御装置2のハードウェア構成の一例について図1を参照しつつ説明する。図において、制御部21は、CPUや、ROM、RAMを備え、ROM又は記憶部22に格納されたコンピュータプログラムに従って通信制御装置2の制御を行う。記憶部22は、ハードディスク等の記憶手段であり、通信制御装置2の制御に関するプログラムなどの各種プログラムが格納されているほか、画像形成装置1から出力される品質特性情報を蓄積する品質特性情報記憶領域221を備えている。通信部23は、通信ケーブルで通信回線200及び通信回線300に接続され、通信回線200に接続されている通信制御装置2及び通信回線300に接続されているサービスセンタ3とデータ通信を行う。通信制御装置2の制御部21は、通信部23を介して、品質特性情報記憶領域221に格納された品質特性情報を、サーバ装置3に向けて定期的に送信する。この送信処理は、画像形成装置1の顧客(すなわち画像形成装置1の利用者)の通信回線環境を借用して行われるため、緊急度の高い故障情報を除き、顧客の通信回線環境への影響を少なくすることが好ましい。そのため、この実施形態では、大量のデータ送信となる品質特性情報のサーバ装置3への送信は、顧客の稼動時間中や通信回線のメンテナンス時間中を避けて設定される通信許可時間帯の中で行われることが好ましい。
【0016】
サーバ装置3は、通信制御装置2から受信される品質特性情報を蓄積するとともに、品質特性情報の解析処理を行う。解析は1台の画像形成装置1の情報について行ってもよく、また、複数台の画像形成装置1の情報を集計して行ってもよい。サーバ装置3は、品質特性情報を解析することにより、緊急に対応する事象、数日のうちに保守すべき事象、通常の保守スケジュールの中で処理可能な事象といった各種の事象が画像形成装置1に発生しているかの診断を行う。
【0017】
次いで、品質特性情報の内容について、図2を参照しつつ説明する。図2は、品質特性情報の内容を説明するための図である。品質特性情報は、画像形成装置1の稼動状況、画質等の性能、消耗品・部品の使用状況を把握するための情報であり、画像形成装置1の動作状況を識別する識別子(ID)が付与されている。図において、「ID」の項目は、品質特性情報の種別毎に割り振られたIDを示す。「名称」の項目は、品質特性情報の種別を示す。「取得時期」の項目は、通信制御装置2が画像形成装置1から品質特性情報を取得するタイミングを示す。「重要度」の項目は各品質特性情報に割り当てられた重要度を示す。重要度は、Aが最も重要度が高く、B、C、Dの順に重要度が低くなっていく。重要度Aは故障が発生して画像形成装置が稼動できない状態を示す。重要度Bは消耗品や部品の交換時期が近づいている状態を示す。重要度Cは後述するため、ここではその説明を省略する。重要度Dの情報は画像形成装置1の動作状況を予め定められたタイミングで検出した検出結果を示す標本である。「取得データ」の項目は、各品質特性情報に含まれるパラメータを示す。
【0018】
具体的には、例えば、IDが「001」の品質特性情報は、トナーが空になった状態を示すものであり、この場合は「トナー色」と「前回交換からの累積画素数」のデータが画像形成装置1から取得される。また、IDが「002」の品質特性情報は、感光体ドラムを帯電させるための帯電高圧電源が故障した旨を示すものであり、この場合は帯電高圧電源の電圧値や電流値等を示す「出力値」のデータが画像形成装置1から取得される。また、IDが「003」の品質特性情報は、レーザ走査書込装置の走査開始位置に異常が発生した旨を示すものであり、この場合はレーザ走査書込装置の光量モニタ値と副走査方向の走査開始位置の間隔のモニタ値が画像形成装置1から取得される。IDが「004」の品質特性情報は、用紙の供給に失敗した旨を示すものであり、この場合は「発生トレイ」を示すデータが画像形成装置1から取得される。IDが「005」の品質特性情報はレジ前における紙詰まりが発生した旨を示すものであり、この場合は「発生トレイ」を示すデータが画像形成装置1から取得される。
【0019】
また、IDが「101」の品質特性情報は、トナーの残量が少なくなった状態を示すものであり、この場合は「トナー色」と「前回交換からの累積画素数」のデータが画像形成装置1から取得される。また、IDが「102」の品質特性情報は、レーザ走査書込装置の光量が適正範囲外である旨を示すものであり、この場合は「光量モニタ値」と「画像濃度センサのモニタ値」が画像形成装置1から取得される。また、IDが「201」の品質特性情報は、トナーの色毎の、ラスタライズ処理が施された場合に実際にオンになる画素の数のモニタリング結果を示すものであり、「用紙サイズ」と「Y(イエロー)画素数」、「M(マゼンタ)画素数」、「C(シアン)画素数」、「K(ブラック)画素数」の各データが、ページ単位で画像形成装置1から取得される。また、IDが「機内温湿度」の品質特性情報は、画像形成装置1の装置内の温度と湿度のモニタリング結果を示すものであり、「温度」と「湿度」の各データが、1分毎に画像形成装置1から取得される。IDが「203」の品質特性情報は、トナーの色毎のトナー濃度(トナーとキャリアの混合比)を示すものであり、「Yモニタ値」、「Mモニタ値」、「Cモニタ値」、「Kモニタ値」の各データが画像形成装置1から取得される。なお、品質特性情報は、図2に例示したものに限らず、例えば、定着装置の温度をモニタリング値であってもよく、画像形成装置1の保守管理の際に用いられる情報であればどのようなものであってもよい。
【0020】
重要度Aや重要度Bの品質特性情報(以下、「第1の品質特性情報」という)は、その事象が発生したときにその都度取得される情報であり、故障の原因調査のために用いられる情報である。一方、重要度Dの品質特性情報(以下、「第2の品質特性情報」という)は、例えば、1ページ毎、1分毎、といったように、予め定められた単位処理(又は単位時間)毎に取得される標本であり、故障の予兆診断のために用いられる情報である。重要度Dの品質特性情報は、単位処理(又は単位時間)毎に取得される標本であるため、蓄積されるデータ量は大きなものとなる。重要度Aや重要度Bの事象は頻繁に発生するものではないため、通常の使用状態においては、可能な限り重要度Dの品質特性情報を蓄積しておくことが好ましいと言える。
【0021】
この実施形態では、図2に示すように、重要度Aの品質特性情報には一桁又は二桁のIDが割り当てられ、重要度Bの品質特性情報には100番台のIDが割り当てられている。また、重要度Dの品質特性情報には200番台のIDが割り当てられている。
【0022】
次いで、通信制御装置2の機能的構成について図面を参照しつつ説明する。図3は、通信制御装置2の機能的構成の一例を示すブロック図である。図において、データ取得部211、第1の記憶制御部212、抽出部213、統計部214及び第2の記憶制御部215はそれぞれ、制御部21がROM又は記憶部22に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行することによって実現される。
【0023】
図において、データ取得部211は、画像形成装置1から品質特性情報を取得するものであり、本発明に係る取得手段の一例である。第1の記憶制御部212は、データ取得部211によって取得された品質特性情報を品質特性情報記憶領域221に逐次書き足していくことによって、取得された品質特性情報を品質特性情報記憶領域221に蓄積する。すなわち、品質特性情報記憶領域221には品質特性情報が時系列に書き込まれる。第1の記憶制御部212は、本発明に係る第1の記憶制御手段の一例である。
【0024】
抽出部213は、品質特性情報記憶領域221の残記憶容量(空き容量)が予め定められた閾値未満である場合に、品質特性情報記憶領域221に記憶された品質特性情報から、重要度Dの品質特性情報(第2の品質特性情報)を予め定められたアルゴリズムに従って抽出する。抽出部213は、本発明に係る抽出手段の一例である。ここでは、抽出部213は、品質特性情報記憶領域221の残記憶容量が予め定められた閾値未満であるか否かの判定を、予め定められた単位時間毎(例えば、1時間毎、10分毎、等)に行う。判定結果が否定的である場合(すなわち残記憶容量が予め定められた閾値以上である場合)には、抽出部213は、抽出処理を行うことなく、残記憶容量が予め定められた閾値以上になるまで待機する。一方、判定結果が肯定的である場合(すなわち残記憶容量が予め定められた閾値未満である場合)には、抽出部213は、品質特性情報記憶領域221に記憶された品質特性情報のなかから第2の品質特性情報を抽出する。この抽出処理は、品質特性情報記憶領域221に記憶された品質特性情報のIDを識別することによって行われる。より具体的には、この実施形態では、IDが200番台である品質特性情報が抽出部213によって抽出される。以下の説明では、説明の便宜上、残記憶容量が予め定められた閾値以上である場合を「第1のモード」と称し、一方、残記憶容量が予め定められた閾値未満である場合を「第2のモード」と称して説明する。
【0025】
統計部214は、抽出部213によって抽出された第2の品質特性情報に基づいて統計値を算出するものであり、本発明に係る統計手段の一例である。より具体的には、この実施形態では、統計部214は、抽出された第2の品質特性情報の画素数、機内湿温度、トナー温度などを予め定められた期間において統計処理し、各情報のそれぞれについて平均値、中央値、最頻値、標準偏差、最大値、最小値、ヒストグラムといった統計値を算出する。
【0026】
第2の記憶制御部215は、抽出部213によって抽出された第2の品質特性情報を品質特性情報記憶領域221から削除するとともに、統計部214による統計結果を示す情報を品質特性情報として品質特性情報記憶領域221に格納する。第2の記憶制御部215は、本発明に係る第2の制御手段の一例である。図3の送信制御部216は、品質特性情報記憶領域221に記憶された品質特性情報を、予め定められたタイミングで、通信回線300を介して接続されたサービスセンタ3へ送信する。送信制御部216は、本発明に係る送信手段の一例である。
【0027】
図4A及び図4Bは、第2のモードにおいて品質特性情報記憶領域221に格納される品質特性情報の内容を説明するための図である。図2と図4A及び図4Bを比較すると明らかなように、第1の品質特性情報は、第1のモード(図2を参照)と2つのモード(図4Aを参照)とで違いは無い。これは、第1の品質特性情報は、元々データ量も少なく、また必要不可欠な情報であるためである。一方、第2の品質特性情報(重要度Dの品質特性情報)は、第1のモードにおいては画像形成装置1から出力される情報がそのまま記憶される一方、第2のモードにおいては統計処理が施されて重要度Cの情報として格納される。具体的には、例えば、画素数については、「201」のIDを有する重要度Dの情報と「301」のIDを有する重要度Cの情報との2種類の情報のいずれかが、モードに応じて格納される。同様に、機内温湿度については、ID「202」とID「302」、トナー濃度はID「203」とID「303」というように2種類の情報がモードに応じて格納される。第2のモードにおいて格納される重要度Cの情報は、図4Bに示すように、重要度Dの情報に含まれる各パラメータの平均値、最大値、最小値等の、統計結果を示す情報がパラメータとして含まれる。
【0028】
<動作>
次に、通信制御装置2が行う処理について図5に示すフローチャートを参照しつつ説明する。通信制御装置2の制御部21は、画像形成装置1から品質特性情報を取得すると(ステップS1)、取得した品質特性情報を品質特性情報記憶領域221に記憶する。制御部21は、品質特性情報記憶領域221の残記憶容量が予め定められた閾値未満であるか否かを判定し(ステップS2)、判定結果が否定的である場合には(ステップS2;NO)、ステップS1の処理に戻る。制御部21は、品質特性情報記憶領域221の残記憶容量が予め定められた閾値未満になるまで待機し、予め定められた閾値未満になると(ステップS2;YES)、品質特性情報記憶領域221に記憶された品質特性情報のなかから、第2の品質特性情報をIDに基づいて抽出する(ステップS3)。制御部21は、抽出した第2の品質特性情報を統計処理し(ステップS4)、品質特性情報記憶領域221に記憶された第2の品質特性情報を、統計結果を示す情報で書き換える(ステップS5)。ステップS5の処理を終えると、制御部11はステップS1の処理に戻り、データの取得処理を行う。
【0029】
ここで、品質特性情報記憶領域221に記憶される品質特性情報の具体例について、図6及び図7を参照しつつ説明する。図6は、第1のモードにおける品質特性情報記憶領域221の記憶内容の一例を示す図であり、図7は、第2のモードにおける品質特性情報記憶領域221の記憶内容の一例を示す図である。図6及び図7に示す例では、画像形成装置1は、12枚/分の生産能力があり、プリント動作中に2枚に1回トナー濃度を測定する。図6に示す例では、装置が早朝から稼動しており、稼動時間中における17:00〜17:02の間の部分を切り出したものを示している。品質特性情報は、図示のように、「時刻」と「プリント枚数」と「ID」と「パラメータ」との各項目が互いに関連付けて構成されている。これらの項目のうち、「時刻」の項目には、その品質特性情報が生成された時刻を示す情報が格納される。「プリント枚数」の項目には、画像が形成された用紙の枚数を示す情報が格納される。「ID」の項目には、品質特性情報の種類を識別するIDが格納される。「パラメータ」の項目には、品質特性情報に含まれるパラメータが格納される。「パラメータ」の項目については、品質特性情報の種類によってパラメータの数が異なるため、それ以上情報が無いところはENDと記し、それ以降の欄は空白にしている。
【0030】
図6及び図7においては、通信制御装置2の制御部21は、最初は第1のモードで動作していたが、17:02に格納領域の残容量が閾値を下回ったために第2のモードに移行して動作する場合を例示している。第2のモードにおいては、制御部21は、図7に示すように、画素数、機内温湿度、トナー濃度等の重要度Dの情報(第2の品質特性情報)については、そのまま格納せず、予め定められた期間毎に統計量に置き換えて重要度Cの情報にしてから格納する。更に、制御部21は、前回にサービスセンタ3へ送信したとき(例えば、前日)以降から現時点までの情報も統計値に置き換えて格納し、以前の重要度Dの情報を削除する。制御部21が上述の処理を行うことによって、品質特性情報記憶領域221に空き領域が生じ、重要度Aや重要度Bの情報が上書きされる等によって欠落してしまうことがない。
【0031】
重要度Dの情報は、複数の情報を総合的に解析することによって、その情報の値は徐々に変化しているのか、それともある時点を境に大幅に変化したのか、更には全期間を通してばらついているのか、といった数値の傾向が把握される。一方、重要度Cの情報からは、重要度Dの情報ほどの詳細な分析はできないものの、母集団の特性が統計量として把握されるため、ある程度の分析を行うことが可能である。そのため、重要度Dの情報に代えて重要度Cの情報を格納しておくことによって、その期間の情報が欠落してしまうということが無い。また、この実施形態では、品質特性情報記憶領域221の残記憶容量が閾値未満である場合に、品質特性情報を第1の品質特性情報と第2の品質特性情報とに分類し、第2の品質特性情報の統計処理を行って第2の品質特性情報を統計結果の情報で書き換えるから、サービスセンタ3への品質特性情報の送信回数や送信データ量が大きくなることがない。すなわち、サービスセンタ3の通信にかかる負荷が増えることがない。
【0032】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその例を示す。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
(1)上述の実施形態では、画像形成装置1と通信制御装置2とがそれぞれ別体の装置として構成され、それらの装置が通信回線200で接続されたシステムについて説明したが、これらの装置が一体として構成されていてもよい。すなわち、画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置の制御部が、品質特性情報を生成して品質特性情報記憶領域に記憶し、該記憶領域の残記憶容量が予め定められた閾値未満である場合に、該記憶領域に記憶された品質特性情報から第2の品質特性情報を抽出し、抽出した第2の品質特性情報を統計処理して得られた情報によって記憶領域を書き換えるようにしてもよい。
【0033】
(2)上述の実施形態では、抽出部213は、200番台のIDが割り振られている品質特性情報を抽出することによって、品質特性情報のなかから第2の品質特性情報を抽出するようにしたが、第2の品質特性情報の抽出の態様はこれに限らず、他の態様であってもよい。例えば、抽出部213が、IDが予め定められた閾値以下である品質特性情報を抽出することによって第2の品質特性情報を抽出するようにしてもよく、また、例えば、パラメータの数が予め定められた数以上の品質特性情報を抽出するようにしてもよい。要は、抽出部213は、品質特性情報記憶領域221に記憶された品質特性情報のなかから、第2の品質特性情報を、予め定められたアルゴリズムに従って抽出するものであればよい。
【0034】
(3)上述の実施形態では、統計部214は、平均値、中央値、最頻値、標準偏差、最大値、最小値、ヒストグラムといった統計量を算出する統計処理を行ったが、統計処理の内容はこれに限らず、他の態様であってもよい。要は、統計部214は、抽出された第2の品質特性情報から、第2の品質特性情報の集合体についての特徴や第2の品質特性情報の時間的な変化の態様を示す情報であって、第2の品質特性情報の集合体よりもデータ量の少ない情報を生成するものであればどのようなものであってもよい。
【0035】
(4)上述の実施形態において、制御部21が、統計処理を複数の段階にわけて行うようにしてもよい。すなわち、制御部21が、品質特性情報記憶領域221の残記憶容量が少ないほど統計結果を示す情報のデータ量が少なくなるように統計処理を行ってもよい。具体的には、例えば、制御部21が、品質特性情報記憶領域221の残記憶容量が少ないほど、統計処理を行う単位期間を長くするようにしてもよい。また、例えば、制御部21が、品質特性情報記憶領域221の残記憶容量が少ないほど、品質特性情報のパラメータの数を少なくするようにしてもよい。
【0036】
(5)上述の実施形態において、第2の品質特性情報に複数の重要度を設ける構成とし、制御部21が、品質特性情報の重要度を予め定められたアルゴリズムに従って判定し、品質特性情報221の残記憶容量が予め定められた閾値未満である場合に、品質特性情報記憶領域221に記憶された品質特性情報から、重要度が予め定められた閾値よりも低い第2の品質特性情報を抽出して統計処理を行うようにしてもよい。品質特性情報の重要度の判定処理としては、例えば、制御部21が、品質特性情報のIDを判別することによって重要度を判定するようにしてもよい。また、例えば、品質特性情報に重要度を示す情報を含める構成とし、制御部21が、品質特性情報に含まれる情報を判別することによって品質特性情報の重要度を判定するようにしてもよい。
【0037】
(6)上述した通信制御装置2のROM又は記憶部22に記憶されているプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスク(HDD(Hard Disk Drive)、FD(Flexible Disk))など)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶した状態で提供し得る。また、インターネット等の通信回線を介して通信制御装置2にダウンロードさせてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…画像形成装置、2…通信制御装置、3…サービスセンタ、11,21…制御部、12,22…記憶部、13…操作表示部、14…通信部、15…画像読取部、16…画像処理部、17…画像形成部、200,300…通信回線、211…データ取得部、212…第1の記憶制御部、213…抽出部、214…統計部、215…第2の記憶制御部、221…品質特性情報記憶領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置の動作状況を識別する識別子が付与された情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された情報を記憶手段に蓄積する第1の記憶制御手段と、
前記記憶手段の残記憶容量が予め定められた閾値未満である場合に、前記記憶手段に蓄積された情報から、前記画像形成装置の動作状況を予め定められたタイミングで検出した検出結果を示す標本を、予め定められたアルゴリズムに従って抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された標本に基づいて統計値を算出する統計手段と、
前記抽出手段によって抽出された標本を前記記憶手段から削除するとともに、前記統計手段によって算出された統計値を前記記憶手段に蓄積する第2の記憶制御手段と、
前記記憶手段に蓄積された情報を、予め定められたタイミングにおいて、通信回線を介して接続されたサーバ装置へ送信する送信手段と
を具備することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記記憶手段に蓄積された情報の重要度を予め定められたアルゴリズムに従って判定する重要度判定手段
を具備し、
前記抽出手段は、前記記憶手段の残記憶容量が予め定められた閾値未満である場合に、前記記憶手段に記憶された品質特定情報から、前記標本のうちの前記重要度判定手段によって判定された重要度が予め定められた閾値よりも低い標本を抽出する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
画像を形成する画像形成手段と、
当該画像形成装置の動作状況を識別する識別子が付与された情報を生成し、生成した情報を記憶手段に蓄積する第1の記憶制御手段と、
前記記憶手段の残記憶容量が予め定められた閾値未満である場合に、前記記憶手段に蓄積された情報から、当該画像形成装置の動作状況を予め定められたタイミングで検出した検出結果を示す標本を、予め定められたアルゴリズムに従って抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された標本に基づいて統計値を算出する統計手段と、
前記抽出手段によって抽出された標本を前記記憶手段から削除するとともに、前記統計手段によって算出された統計値を前記記憶手段に蓄積する第2の記憶制御手段と、
前記記憶手段に蓄積された情報を、予め定められたタイミングにおいて、通信回線を介して接続されたサーバ装置へ送信する送信手段と
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
コンピュータを、
画像形成装置の動作状況を識別する識別子が付与された情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された情報を記憶手段に蓄積する第1の記憶制御手段と、
前記記憶手段の残記憶容量が予め定められた閾値未満である場合に、前記記憶手段に蓄積された情報から、前記画像形成装置の動作状況を予め定められたタイミングで検出した検出結果を示す標本を、予め定められたアルゴリズムに従って抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された標本に基づいて統計値を算出する統計手段と、
前記抽出手段によって抽出された標本を前記記憶手段から削除するとともに、前記統計手段によって算出された統計値を前記記憶手段に蓄積する第2の記憶制御手段と、
前記記憶手段に蓄積された情報を、予め定められたタイミングにおいて、通信回線を介して接続されたサーバ装置へ送信する送信手段と
して機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−20360(P2013−20360A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151948(P2011−151948)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】