説明

情報処理装置および方法、並びにプログラム

【課題】再生信号に対するデコード処理能力の、外乱に対する耐性を向上させることができるようにする。
【解決手段】OP112は、光ディスク131の記録面にレーザ光を照射してBCAの再生信号を得る。その再生信号をOP112より取得すると、BCA115は、微分器を用いて、その再生信号を微分し、その微分結果を用いてスライスレベルを設定し、2値化を行う。BCA115は、その2値化結果をODC117に供給する。ODC117は、BCA115において得られた2値化結果からBCAに記録されている情報を抽出し復号する。本発明は、例えば、光ディスク記録再生装置に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置および方法、並びにプログラムに関し、特に、再生信号に対するデコード処理能力の、外乱に対する耐性を向上させることができるようにした情報処理装置および方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、BCA(Burst Cutting Are)再生において、再生された信号は、そのままデコード回路に供給され処理されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−192749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この場合、ディスクに書き込まれているBCAに指紋や傷のようなものがあったとき、うまくデコードできないことがあった。また、できるとしても色々な設定の最適化をしなければならず容易に設定を行うことが困難であった。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためのものであり、再生信号に対するデコード処理能力の、外乱に対する耐性を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、記録媒体の所定の領域に記録されている管理情報の再生信号を取得する取得手段と、前記取得手段により得られた前記管理情報の再生信号を微分して得られる微分信号を用いて前記再生信号を2値化する2値化手段と、前記2値化手段により得られる2値化結果を復号する復号手段とを備える情報処理装置である。
【0007】
前記管理情報は、前記記録媒体の識別情報であるようにすることができる。
【0008】
前記所定の領域は、前記記録媒体の、通常の記録領域とは異なる領域に形成されるようにすることができる。
【0009】
前記2値化手段は、前記管理情報の前記再生信号を微分する微分手段と、前記微分手段により前記再生信号が微分されて得られる微分信号の低域成分を抽出する低域抽出手段と、前記低域抽出手段により抽出された前記低域成分のピーク値を検出するピーク値検出手段と、前記低域抽出手段により抽出された前記低域成分のボトム値を検出するボトム値検出手段と、前記ピーク値検出手段により検出されたピーク値と、前記ボトム値検出手段により検出された前記ボトム値より、2値化の際に閾値として利用されるスライスレベルを生成するスライスレベル生成手段と、前記スライスレベル生成手段により生成された前記スライスレベルを用いて、前記低域成分を2値化する低域成分2値化手段とを備えることができる。
【0010】
前記微分手段による前記微分のカットオフ周波数は、円盤状の前記記録媒体の回転数に応じて決定されるようにすることができる。
【0011】
前記スライスレベル生成手段は、前記スライスレベルを、前記ボトム値から前記ピーク値までの範囲を所定の比率で分割する閾値として生成することができる。
【0012】
本発明の一側面は、また、情報処理装置の情報処理方法において、前記情報処理装置は、取得手段と、2値化手段と、復号手段とを備え、前記取得手段は、記録媒体の所定の領域に記録されている管理情報の再生信号を取得し、前記2値化手段は、前記取得手段により得られた前記管理情報の再生信号を微分して得られる微分信号を用いて前記再生信号を2値化し、前記復号手段は、前記2値化手段により得られる2値化結果を復号する情報処理方法である。
【0013】
本発明の一側面は、さらに、コンピュータを、記録媒体の所定の領域に記録されている管理情報の再生信号を取得する取得手段と、前記取得手段により得られた前記管理情報の再生信号を微分して得られる微分信号を用いて前記再生信号を2値化する2値化手段と、前記2値化手段により得られる2値化結果を復号する復号手段として機能させるためのプログラムである。
【0014】
本発明の一側面においては、記録媒体の所定の領域に記録されている管理情報の再生信号が取得され、得られた管理情報の再生信号を微分して得られる微分信号を用いて再生信号が2値化され、復号される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、記録媒体への情報の読み出しを行うことができる。特に、再生信号に対するデコード処理能力の、外乱に対する耐性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明を適用した光ディスクドライブの主な構成例を示すブロック図である。
【0017】
図1に示される光ディスクドライブ100は、所定の位置に装着された光ディスク131に対して、レーザ光を照射することにより情報の読み出しや書き込みを行う装置である。光ディスク131は、少なくとも読み出し可能な円盤状の光ディスクである。もちろん、書き込み(追記または書き換え)可能な光ディスクであってもよい。光ディスク131の例として、例えば、CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory)、CD-R(Compact Disc - Recordable)、CD-RW(Compact Disc - Rewritable)がある。また、例えば、DVD-ROM(Digital Versatile Disc - Read Only Memory)、DVD±R(Digital Versatile Disc ± Recordable)、または、DVD±RW(Digital Versatile Disc ± Rewritable)がある。さらに、例えば、DVD-RAM(Digital Versatile Disc - Random Access Memory)、BD-ROM(Blu-ray Disc - Read Only Memory)、BD-R(Blu-ray Disc - Recordable)、または、BD-RE(Blu-ray Disc - Rewritable)がある。光ディスクドライブ100が対応しているのであれば、これらの規格以外の光ディスク(記録媒体)であってももちろんよい。
【0018】
図1に示されるように、光ディスクドライブ100は、SP111、OP112、MTX113、RCH114、BCA115、DSP116、ODC117、RAM118、CPU119、APC120、およびバス121を有する。
【0019】
SP(Spindle Motor)111は、光ディスク131を回転させるサーボモータである。回転数の維持等の制御はDSP116が行っている。OP(Optical Unit)112は、光ディスク131に対してレーザ光を照射してその戻り光を受光して、光ディスク131に記録されている情報を読み取る。MTX(Matrix Amp)113は、OP112が、光ディスク131から情報を正しく読み取ることができるように光ディスクとOPの距離などの信号位置を制御する。より具体的には、MTX113を経たFcs,TrkなどのServo演算信号が、DSP116により制御される。RCH(Read Channel)114は、OP112により読み取られたリード信号を2値化し、その信号をODC117に供給する。BCA(Burst Cutting Area)115は、OP112において読み出されたBCAの信号を波形整形し、2値化してODC117に供給する。
【0020】
DSP(Digital Signal Processor)116は、SP111の回転数の維持等の制御や、Servo演算信号の制御などを行う。ODC(Optical Disc Controller)117は、リード信号の17ppのデコード、ECC(Error Correcting Code)のデコード等を行い、その結果を、ホストに対するインタフェース(ホストI/F)となるバス121を介して光ディスクドライブ100の外部のホスト(図示せず)に出力する。また、ODC117は、RCH114において2値化されたリード信号のデコードのほか、光ディスク131の物理アドレスの読み出しや、外部ホストとの通信、および、書き込みデータのエンコード等も行う。さらに、ODC117は、BCA115より供給される、2値化されたBCAの信号のデコードも行う。
【0021】
RAM(Random Access Memory)118はデータの一時的バッファとして使われる。CPU(Central Processing Unit)119は、DSP116やODC117などを管理している。APC(Auto Power Control)120はOP112のレーザ光のパワーを一定に保つ制御をする。
【0022】
光ディスクドライブ100は、BCA115において、BCAの信号に対して微分器を用いた波形整形を行う。これによりODC117における2値化の精度を向上させることができる。
【0023】
なお、図1において、ブロックとブロックを結ぶ矢印は、基本的にブロック間のデータの授受の関係(方向)を示している。複数の矢印が合流したり分離したりするように示されているが、各矢印のデータ伝送は実際には互いに独立している。つまり、複数のバスが束ねられている様子を示している。
【0024】
例えば、RCH114からODC117に向かう矢印とBCA115からODC117に向かう矢印は途中で合流するように示されているが、これはRCH114から伝送されるデータとBCA115から伝送されるデータが途中で合成されることを示すものではない。実際には、RCH114からODC117に供給されるデータと、BCA115からODC117に供給されるデータは互いに独立してODC117に供給される。もちろん、各データが互いに独立に伝送されるのであれば、物理的に1本のバスとなるようにしてもよい(互いに異なるデータを伝送する複数のデータ伝送によりバスを共有することは可能である)。
【0025】
図2は、光ディスク131の記録面上におけるBCAの位置を模式的に示す図である。BCAは、メディア識別用の管理情報(例えば固有な番号)が記録された領域であり、その固有な番号がバーコード状のパターンで表わされている。図2に示されるように、BCAは、例えば、光ディスク131の情報が格納される記録面の内周側に形成される。通常の場合、光ディスク131の記録面の、記録対象の情報が記録される領域よりも内周側にBCA140が形成される。つまり、BCA140は、通常の記憶領域とは異なる領域に形成される。
【0026】
BCA140は、何も記録されていない領域であるミラーエリア(Mirror Area)141と、BCAコード(BCA-code)142が記録されている領域よりなる。BCAコード142は、4つのデータユニットからなり、それそれ16Byteのインフォメーションバイト(Information Byte)とパーティバイト(Party Byte)から構成されている。ミラーエリア141を先頭にすると、BCAコード142は、SB(Sync Bytes)+BCA-Pre amble部より開始される(このパターンがBCAの始まりを示している)。そのパターンに続いて、最初のデータユニットが形成される。1つのデータユニットは4つのSB+Dataと4つのSB+Parityからなる。このデータユニットは、図3の表に示されるようなデータ構造を有する。実際にはデータ部(Data)とパリティ部(Parity)は図4の表に示される変調規則(Modulation rule)に従ったBit列になっている。ちなみにSBはやや特殊な28ビット列で図5の表に示される構成を有する。この図5に示されるSync Body部の構造は上述した変調規則を逸脱している。
【0027】
多くのドライブは、ディスクが挿入されると、起動処理として、最初にこのBCAの情報を読み出す。したがって、このBCAの情報が正しく読み出せないと、再読み込み等により処理時間が増大したり、場合によっては起動処理に失敗したりする。起動処理に失敗すると、ドライブはホストからのリードやライトの指示を受け付け可能な状態にならず、ディスクへのアクセスができなくなる。
【0028】
このBCAの領域においても、他の領域と同様に、記録面にレーザ光が照射されることにより情報が読み出される。したがって、記録面のBCA領域上に指紋や汚れが付着したり、傷等が形成されたりすると、リードした信号の波形が本来の波形より大きく変形する恐れがある。ドライブは、リードした信号波形を2値化し、デコードしてBCAに記録されている情報を読み出すが、リードした信号の波形が変形することにより、2値化で誤った判定をしてしまい、BCAの情報を正しく読み出せず、起動処理の時間が増大したり、起動処理が失敗したりする恐れがある。
【0029】
そこでBCA115は、リードした信号を微分し、その微分波形を用いて2値化する。つまり、光ディスクドライブ100の例の場合、最初のステップにおいて、OP112がBCAの再生信号を取得し、次のステップにおいて、BCA115がその再生信号を微分してから2値化して2値化データを生成し、さらに次のステップでODC117がその2値化データを復号する。これにより、BCA115は、BCAの情報をより正確に読み出すことができるようにする。すなわち、指紋、汚れ、傷等の外的要因に対する耐性を向上させる。
【0030】
図6は、BCA115の詳細な構成例を示すブロック図である。図6に示されるように、BCA115は、微分器(Dif)201、ローパスフィルタ(LPF)202、ピークホールド(PH)203、ボトムホールド(BH)204、加算器205、スライスレベル生成器(Slice Gen)206、加算器207、および比較器(CMP)208を有する。
【0031】
微分器201は、OP112においてリードされたBCAの信号(再生信号)を微分する。微分器201は、その再生信号の微分値(微分信号)を、ローパルフィルタ202に供給する。なお、微分器201による微分のカットオフ周波数は、初期値設定時に光ディスク131の回転数に応じた適切な値に設定される。
【0032】
ローパスフィルタ202は、微分器201より供給された微分信号の低周波成分を抽出し、その低周波成分をピークホールド203、ボトムホールド204、および比較器208に供給する。ピークホールド203は、所定の期間毎にローパスフィルタ202の出力のピーク値(最高値)を検出し、そのピーク値を加算器205に供給する。ボトムホールド204は、所定の期間毎にローパスフィルタ202の出力のボトム値(最低値)を検出し、そのボトム値を加算器205および加算器207に供給する。
【0033】
加算器205は、ピークホールド203の出力からボトムホールド204の出力を減算し、その差分値をスライスレベル生成器206に供給する。スライスレベル生成器206は、供給されたピーク値とボトム値の差分値から2値化するためのスライスレベルを生成する。このスライスレベルは、ピーク値とボトム値の差分値、すなわちBCA波形の振幅を所定の比率で上側(値「1」)と下側(値「0」)に区分する閾値である。つまり、信号値がこのスライスレベルより大きい場合、その信号の値は「1」と判定される。逆に信号値がこのスライスレベルより小さい場合、その信号の値は「0」と判定される。
【0034】
スライスレベル生成器206は、ピーク値とボトム値の差分値よりこのような閾値を求めると、その閾値を加算器207に供給する。この時点で、スライスレベルはボトム値を基準とする値となっており、絶対値が本来の値からずれているため、このまま、ローパスフィルタ202の出力を2値化する閾値として使用することはできない。加算器207は、スライスレベル生成器206より供給される値(スライスレベル)に、ボトムホールド204より供給されたボトム値を加算することにより、スライスレベルの絶対値を調整する。加算器207は、その絶対値が調整されたスライスレベルを比較器208に供給する。比較器208は、ローパスフィルタ202の出力をこのスライスレベルと比較することにより(スライスレベルを閾値として)、ローパスフィルタ202の出力を2値化する。つまり、比較器208は、この比較結果を2値で表わし、その比較結果をODC117に出力する。
【0035】
なお、微分信号を2値化する方法は任意である。つまり、ローパスフィルタ202乃至比較器208の構成は一例であり、微分信号を2値化することができるのであれば、上述した以外の構成であってもよい。
【0036】
以上のような構成のBCA115による2値化処理の流れの例を図7のフローチャートを参照して説明する。
【0037】
2値化処理が開始されると、微分器201は、ステップS101において、供給される再生信号(リードされたBCAの信号)を微分する。ステップS102において、ローパスフィルタ202は、ステップS101において再生信号が微分された信号(微分信号)の低域成分を抽出する。ステップS103において、ピークホールド203は、再生信号(実際には、ステップS102の処理により抽出された微分信号の低域成分)のピーク値を保持する。ステップS104において、ボトムホールド204は、再生信号(実際には、ステップS102の処理により抽出された微分信号の低域成分)のボトム値を保持する。加算器205は、このピーク値とボトム値の差分値を算出する。
【0038】
ステップS105において、スライスレベル生成器206は、ステップS103の処理において保持されたピーク値と、ステップS104の処理により保持されたボトム値の差分値を用いてスライスレベルを生成する。このスライスレベルは、上述したように加算器207において絶対値が調整される。
【0039】
ステップS106において、比較器208は、ステップS105の処理により生成されたスライスレベルに基づいて再生信号(実際には、ステップS102の処理により抽出された微分信号の低域成分)を2値化する。ここでは立下りをトリガにして信号を得る。
【0040】
2値化が終了すると、BCA115は、2値化処理を終了する。
【0041】
なお、微分信号を2値化する方法は任意である。すなわち、ステップS102乃至ステップS106の各処理は一例であり、上述した以外の方法で2値化するようにしてもよい。
【0042】
以上の2値化処理について具体的な例について説明する。
【0043】
例えば、BCAの再生信号の理想波形が図8に示されるような波形であり、この波形が、指紋等の付着により図9に示されるように波形の一部が変形する(ピーク値が下がる)とする。この再生信号の波形のピーク値とボトム値からスライスレベルを求めると、図9の点線に示されるようになる。
【0044】
このとき、指紋等により波形が潰れた部分はピーク値とボトム値の差が小さいので、適正なスライスレベルを得るのが困難になる恐れがある。つまり、この場合だと適正なスライスレベルを得るためにピークホールドのDroop時定数を指紋の乱れに合わせる必要がある。もしDroopが遅すぎるとBCAの振幅が大きく判断され、スライスレベルが不適となり誤った2値化が行われてしまう恐れがある。
【0045】
また、仮に適正なスライスレベルを得ることができたとしても、指紋等により波形が潰れた部分はスライスレベルと、ピーク値またはボトム値との差も小さくなるので、比較マージンが狭くなり、2値化の際に誤判定が起きやすくなってしまう。
【0046】
そこで上述したように、再生信号を微分するようにする。再生信号を微分することにより、不要な低域成分が除去(または抑制)されるようになる。したがって、この微分信号においては、図8に示されるような本来の値の変化、すなわち、ピーク値からボトム値(またはその逆)の変化のみが大きく検出され、図9に示されるような指紋等による大きなうねり(低周波な変化)は、除去(または低減)される。
【0047】
したがって、この微分信号の波形は、例えば図10に示されるような波形となる。つまり、指紋等の外的要因(外乱)の影響を少なくすることができ、安定した波形を得ることができる。このようにすることにより、BCA115は、適正なスライスレベルの生成が容易になるだけでなく、指紋等が付着した部分もピーク値とボトム値の差を大きく保つことができるので、十分な比較マージンの確保も容易になる。
【0048】
ただし、この時はピークホールド203のDroop時定数はBCA信号間に追従しないように遅めのDroopに設定しておくのが望ましい。また、この微分のカットオフ周波数は、どのような値であってもよいが、初期値設定時に光ディスク131の回転数に応じた適切な値に設定されるようにするのが望ましい。
【0049】
実際に、記録面に指紋が付着した場合のBCAの2値化結果を図11および図12に示す。図11は、再生信号を微分せずに2値化した場合の2値化結果を示しており、図12は、再生信号を微分して2値化した場合の2値化結果を示している。
【0050】
図11および図12において、上の段の波形は、生のBCA波形、すなわち、リードされたBCAの再生信号の波形を示している。中段の波形は、ローパスフィルタの出力波形を示している。下の段の波形は、ローパスフィルタの出力と、そのローパスフィルタの出力に基づいて生成されたスライスレベルの比較結果、すなわち2値化結果の波形を示している。
【0051】
図11および図12に示されるように、再生信号の波形(生のBCA波形)は、指紋の影響を受け、大きなうねりを伴っている。再生信号を微分しない場合、図11に示されるように、そのうねりはローパスフィルタの出力にも反映し、その結果、2値化結果の丸で囲まれた部分において、誤検出が発生している。
【0052】
これに対して、再生信号を微分する場合、図12に示されるように、ローパスフィルタの出力において、そのうねりが除去(低減)されており、2値化結果の丸で囲まれた部分においても検出結果は正常である。
【0053】
以上のように、再生信号を微分してから2値化を行うことにより、BCA115は、指紋、汚れ、または傷等の外乱の影響を低減させ、2値化の外乱に対する耐性を向上させることができる。換言すれば、微分後の波形の振幅はおおむね安定しているので、ピークホールド等の設定マージンを広くすることができ、設定が容易になる。
【0054】
以上のように求められた2値化結果は、ODC117においてデコード(復号)される。このODC117によるBCAデコード処理の流れの例を図13のフローチャートを参照して説明する。なお、デコードには、時系列にデコードする方法と、一度2値化データを必要バイト数分だけメモリにいれて、後にデコードする方法がある。どちらの方法も適用可能であるが、ここでは後からデコードする方法について述べる。
【0055】
ミラーエリア141をトリガとして、BCAデコード処理が開始されると、ODC117は、ステップS201において、必要なビット数のデータをメモリに格納する。
【0056】
ODC117は、ステップS202において、メモリにストアされたデータ内から処理対象とするSBを検索し、ステップS203において、処理対象SBから次のSBまでのデータビットを所定の方法で復号し、ステップS204において、データユニット毎にテーブルを再構築する。SB内の構成は、図3に示されるようにある程度既知であるので、ODC117は、検索した処理対象SBとその次のSBとの間にあるデータ部を復号してメモリ内で再配置し、図3の表のSBを取り除いた形で1データユニットになるようにする。
【0057】
再構築が完了すると、ODC117は、ステップS205において、ECCのエラー訂正を行い、ステップS206において必要なデータ部を抽出する。ステップS206の処理を終了すると、ODC117は、BCAデコード処理を終了する。
【0058】
以上のデコード処理を順次繰り返すことにより、BCAのデータを復号することができる。上述したように、BCA115がBCAの再生信号をより正確に2値化することができるので、ODC117は、より正確にBCAのデータを復号することができる。
【0059】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。この場合、例えば、図14に示されるようなパーソナルコンピュータとして構成されるようにしてもよい。
【0060】
図14において、パーソナルコンピュータ400のCPU401は、ROM402に記憶されているプログラム、または記憶部413からRAM403にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM403にはまた、CPU401が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0061】
CPU401、ROM402、およびRAM403は、バス404を介して相互に接続されている。このバス404にはまた、入出力インタフェース410も接続されている。
【0062】
入出力インタフェース410には、キーボード、マウスなどよりなる入力部411、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)などよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部412、ハードディスクなどより構成される記憶部413、モデムなどより構成される通信部414が接続されている。通信部414は、インターネットを含むネットワークを介しての通信処理を行う。
【0063】
入出力インタフェース410にはまた、必要に応じてドライブ415が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア421が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部413にインストールされる。
【0064】
上述した一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0065】
この記録媒体は、例えば、図14に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを配信するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア421により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに配信される、プログラムが記録されているROM402や、記憶部413に含まれるハードディスクなどで構成される。
【0066】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0067】
なお、以上において、1つの装置として説明した構成を分割し、複数の装置として構成するようにしてもよい。逆に、以上において複数の装置として説明した構成をまとめて1つの装置として構成されるようにしてもよい。また、各装置の構成に上述した以外の構成を付加するようにしてももちろんよい。さらに、システム全体としての構成や動作が実質的に同じであれば、ある装置の構成の一部を他の装置の構成に含めるようにしてもよい。つまり、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明を適用した光ディスクドライブの構成例を示すブロック図である。
【図2】光ディスクのBCAの構成例を示す模式図である。
【図3】BCAのデータ構造の例を示す図である。
【図4】BCAの変調規則の例を示す図である。
【図5】BCAのSBのパターンの例を示す図である。
【図6】図1のBCAの詳細な構成例を示すブロック図である。
【図7】2値化処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図8】BCAの再生波形の例を示す模式図である。
【図9】BCAの再生波形の他の例を示す模式図である。
【図10】微分されたBCAの再生波形の例を示す模式図である。
【図11】微分器を用いない場合の2値化結果の例を示す図である。
【図12】微分器を用いた場合の2値化結果の例を示す図である。
【図13】BCAデコード処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図14】本発明を適用したパーソナルコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0069】
100 光ディスクドライブ, 111 SP, 112 OP, 113 MTX, 114 RCH, 115 BCA, 116 DSP, 117 ODC, 118 RAM, 119 CPU, 120 APC, 121 バス, 140 BCA, 201 微分器, 202 ローパスフィルタ, 203 ピークホールド, 204 ボトムホールド, 205 加算器, 206 スライスレベル生成器, 207 加算器, 208 比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の所定の領域に記録されている管理情報の再生信号を取得する取得手段と、
前記取得手段により得られた前記管理情報の再生信号を微分して得られる微分信号を用いて前記再生信号を2値化する2値化手段と、
前記2値化手段により得られる2値化結果を復号する復号手段と
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記管理情報は、前記記録媒体の識別情報である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記所定の領域は、前記記録媒体の、通常の記録領域とは異なる領域に形成される
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記2値化手段は、
前記管理情報の前記再生信号を微分する微分手段と、
前記微分手段により前記再生信号が微分されて得られる微分信号の低域成分を抽出する低域抽出手段と、
前記低域抽出手段により抽出された前記低域成分のピーク値を検出するピーク値検出手段と、
前記低域抽出手段により抽出された前記低域成分のボトム値を検出するボトム値検出手段と、
前記ピーク値検出手段により検出されたピーク値と、前記ボトム値検出手段により検出された前記ボトム値より、2値化の際に閾値として利用されるスライスレベルを生成するスライスレベル生成手段と、
前記スライスレベル生成手段により生成された前記スライスレベルを用いて、前記低域成分を2値化する低域成分2値化手段と
を備える請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記微分手段による前記微分のカットオフ周波数は、円盤状の前記記録媒体の回転数に応じて決定される
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記スライスレベル生成手段は、前記スライスレベルを、前記ボトム値から前記ピーク値までの範囲を所定の比率で分割する閾値として生成する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置の情報処理方法において、
前記情報処理装置は、
取得手段と、
2値化手段と、
復号手段と
を備え、
前記取得手段は、記録媒体の所定の領域に記録されている管理情報の再生信号を取得し、
前記2値化手段は、前記取得手段により得られた前記管理情報の再生信号を微分して得られる微分信号を用いて前記再生信号を2値化し、
前記復号手段は、前記2値化手段により得られる2値化結果を復号する
情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、
記録媒体の所定の領域に記録されている管理情報の再生信号を取得する取得手段と、
前記取得手段により得られた前記管理情報の再生信号を微分して得られる微分信号を用いて前記再生信号を2値化する2値化手段と、
前記2値化手段により得られる2値化結果を復号する復号手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−27172(P2010−27172A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189620(P2008−189620)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】