説明

情報処理装置

【課題】 情報処理装置の本体部への電源供給のオン/オフにかかわらず情報処理装置に内蔵された無線通信部を常時着信情報が受信可能な状態にすることにより、紛失や盗難にあった際に外部からの情報処理装置の制御を可能にする。
【解決手段】 持ち運び可能な携帯型の情報処理装置30は、メインスイッチの操作によって電源供給がオン/オフされる本体部300と、無線公衆通信回線を介して情報を着信可能な無線通信部326とを備える。無線通信部326は、本体部300への電源供給のオン/オフにかかわらず無線公衆通信回線を介して着信可能な状態に維持されている。無線通信部326で受信した着信情報に遠隔制御情報が含まれているとき、本体部300の機能の使用を規制するように制御する本体機能制御部328を更に備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持ち運び可能な携帯型の情報処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の情報処理装置に、公衆無線通信サービス(携帯電話・PHSなど)にアクセスする機能を具備する場合には、情報処理装置の機能拡張用スロットにカード型の通信機を装着する方法が主であった。しかし近年では、情報処理装置の内部に、公衆無線通信サービス(携帯電話・PHSなど)にアクセスするための通信機を実装した製品が現れるようになった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来の公衆無線通信へアクセスするための通信機を内蔵した情報処理装置においては、通信機能の電源は情報処理装置本体の電源と連動してオン/オフ状態が遷移するため、常時オンにはなっておらず、また外部から情報を受信可能な待ち受け状態になる機能を持っていない場合も多いため、常時外部からの着信情報を受信可能な状態にはなっていない。
持ち運び可能な情報処理装置は、その性格から、運搬中に紛失したり盗難にあったりする場合があるが、その際に、公衆無線を経由して外部からこの情報処理装置に何らかの制御を加えたいと考えても、常時外部からの着信情報を受信可能な状態になっていないため、それが不可能であった。
【0004】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、情報処理装置の本体部への電源供給のオン/オフにかかわらず情報処理装置に内蔵された無線通信部を常時着信情報が受信可能な状態にすることにより、紛失や盗難にあった際に外部からの情報処理装置の制御を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、持ち運び可能な携帯型の情報処理装置であって、メインスイッチの操作によって電源供給がオン/オフされる本体部と、無線公衆通信回線を介して情報を着信可能な無線通信部と、を備え、前記無線通信部は、前記本体部への電源供給のオン/オフにかかわらず前記無線公衆通信回線を介して着信可能な状態に維持されていることを特徴とするものである。
この情報処理装置では、メインスイッチの操作による本体部への電源供給のオン/オフにかかわらず、無線通信部が無線公衆通信回線を介して着信可能な状態に維持されるので、通信ネットワーク上の管理システムや他の通信端末などから、本体部の機能を遠隔的に制御するための遠隔制御情報を着信できる。
【0006】
また、請求項2の発明は、請求項1の情報処理装置において、前記無線通信部で受信した着信情報に遠隔制御情報が含まれているとき、前記本体部の機能の使用を規制するように制御する本体機能制御部を更に備えたことを特徴とするものである。この情報処理装置では、通信ネットワーク上の管理システムや利用者の他の通信端末などから遠隔制御情報を着信することにより、本体部の機能の使用を規制するように遠隔的に制御できる。
【0007】
また、請求項3の発明は、請求項2の情報処理装置において、前記本体機能制御部は、前記遠隔制御情報に基づいて、前記本体部に保存されているデータを読み出し不能にすることを特徴とするものである。この情報処理装置では、通信ネットワーク上の管理システムや利用者の他の通信端末などから、本体部に保存されているデータが読み出されないように遠隔的に制御できる。
【0008】
また、請求項4の発明は、請求項2の情報処理装置において、前記本体機能制御部は、前記着信情報に前記遠隔制御情報が含まれているとき、動作中の前記本体部に対して割り込み信号を送出することにより該本体部を機能使用が規制された機能ロック状態に遷移させることを特徴とするものである。この情報処理装置では、本体部が動作中に遠隔制御情報を着信すると、本体機能制御部から本体部に送出した割り込み信号により本体部を機能ロック状態に遷移させ、本体部の機能使用を即座に規制することができる。
【0009】
また、請求項5の発明は、請求項2の情報処理装置において、前記本体機能制御部は、前記本体部への電源供給がオフになっている状態又は前記本体部のスタンバイ状態で受信した着信情報に前記遠隔制御情報が含まれているとき、その着信があった旨を示す情報を保持し、前記本体部は、前記メインスイッチのオン時、基本ソフトウェアの立ち上げ時又はスタンバイ状態から復帰時に、前記遠隔制御情報の着信があったか否かを前記本体機能制御部に問い合わせ、前記遠隔制御情報を着信していた場合には機能ロック状態に遷移することを特徴とするものである。この情報処理装置では、本体部への電源供給がオフになっている状態又は本体部のスタンバイ状態で受信した着信情報に遠隔制御情報が含まれているときは、その着信があった旨を示す情報を一旦保持する。その後、本体部のメインスイッチのオン時、基本ソフトウェアの立ち上げ時又はスタンバイ状態から復帰時に、遠隔制御情報の着信があったか否かを本体部から本体機能制御部に問い合わせる。ここで、遠隔制御情報の着信があった旨の情報を受けた場合は、本体部が機能ロック状態に遷移する。このように本体部への電源供給がオフになっている状態又は本体部のスタンバイ状態で受信した着信情報に遠隔制御情報が含まれている場合に、本体部を確実に機能ロック状態にすることができる。
【0010】
また、請求項6の発明は、請求項1の情報処理装置において、前記無線通信部で遠隔制御情報を着信したとき、無線公衆通信回線を介して管理システムに、前記本体部に保存されているデータを読み出して送信するように制御する本体機能制御部を更に備えたことを特徴とするものである。この情報処理装置では、遠隔制御情報を着信したときに、本体部に保存されているデータを読み出して管理システムに送信するので、当該データの紛失を防止できる。なお、情報処理装置から管理システムへのデータの送信後、情報処理装置内の当該データは削除してもよい。
【0011】
また、請求項7の発明は、請求項1の情報処理装置において、当該情報処理装置の現在位置の情報を取得する位置情報取得部と、前記無線通信部で受信した着信情報に遠隔制御情報が含まれているとき、前記位置情報取得部を起動し、無線公衆通信回線を介して管理システムに、前記位置情報取得部で取得した現在位置の情報を送信するように制御する本体機能制御部と、を更に備えたことを特徴とするものである。この情報処理装置では、遠隔制御情報を着信したときに、その情報処理装置の現在位置の情報を管理システムに送信するので、紛失や盗難にあった情報処理装置の捜索が容易になる。
【0012】
また、請求項8の発明は、請求項2乃至7のいずれかの情報処理装置において、前記本体部に対する第1の電源供給部と前記無線通信部および本体機能制御部に常時電源を供給する第2の電源供給部と、を更に備えたことを特徴とするものである。この情報処理装置では、第1の電源供給部を介した本体部への電源供給のオン/オフにかかわらず、第2の電源供給部から無線通信部および本体機能制御部に常時電源が供給され、無線通信部が無線公衆通信回線を介して着信可能な状態に維持されるとともに、本体機能制御部が着信した遠隔制御情報に従って本体部を制御できる状態に維持される。
【0013】
また、請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれかの情報処理装置において、前記無線通信部を含む通信モジュールを備えたことを特徴とするものである。この情報処理装置では、上記通信モジュールを組み込むことにより、前記無線通信部の機能を持たせることができる。なお、前記通信モジュールは、前記本体機能制御部を更に含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、紛失や盗難にあったときに本体部への電源供給のオン/オフにかかわらず、通信ネットワーク上の管理システムや他の通信端末などから、本体部の機能を遠隔的に制御するための遠隔制御情報を着信し、本体部の使用可否を遠隔制御でき、また、その情報処理装置にしか保存されていないデータを外部から読み出すことができ、また、外部からの位置測定機能を用いてその情報処理装置を探索することができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における携帯電話通信モジュールを組み込んだ携帯型の移動情報端末としてのコンピュータ装置(ノート型パソコンやPDAなどを指すが、以下総称して「携帯パソコン」という。)の遠隔制御が可能な通信システムの概略構成一例を示す説明図である。本実施形態の通信システムは、通信ネットワークとしての携帯電話通信網10に設けられた管理システム20を有する。管理システム20は、携帯電話通信網10の無線公衆通信回線を構成する基地局11を介して携帯パソコン30内に組み込まれている通信モジュールと通信することができる。携帯パソコン30の本体部の機能を遠隔制御する場合、例えば、管理システム20から携帯パソコン30の通信モジュールに対して遠隔制御情報が送信される。
【0016】
図2は、本実施形態の携帯パソコン30の概略構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の携帯パソコン30は、本体部300と外部通信部320と電源部340とを備えている。本体部300は、キーボードやマウス等の入力装置302と、液晶ディスプレイ等の表示装置304と、RAM,ROM等のメモリやハードディスク等の記憶装置306と、CPU等の中央処理装置308とを備えている。
【0017】
外部通信部320は、アンテナ322と通信モジュール324と本体機能制御部328とを備えている。通信モジュール324は、携帯電話通信網10の無線公衆通信回線を介して情報を着信可能な無線通信部326を備えている。無線通信部326は、携帯電話通信網10の基地局11との間で所定の通信方式によって無線通信を行うことができる。本体機能制御部328は、無線通信部326で受信した音声呼やメール等の着信情報に遠隔制御情報が含まれていたときや、遠隔制御情報そのものを着信したときに、本体部300の機能の使用を規制するように制御する。通信モジュール324と本体機能制御部328とは、PCI(Peripheral Component Interconnect)バスやUSB(Universal Serial Bus)等の通信インターフェースにより相互に通信することができる。外部通信部320には、後述のように位置情報取得部330を設けてもよい。位置情報取得部330は、例えば図示のように通信モジュール324内に組み込んでもよい。
【0018】
電源部340は、第1の電源供給部としての本体用電源供給装置342と、第2の電源供給部としての常時電源供給装置344と、バッテリー346とを備えている。本体用電源供給装置342は、バッテリー346からの出力を中央処理装置308等の各種装置を有する本体部300に供給する。本体部300への電源供給は、本体用電源供給装置342におけるメインスイッチ343の操作によって電源供給がオン/オフされる。常時電源供給装置344は、本体用電源供給装置342とは独立に設けられ、バッテリー346からの出力を外部通信部320の通信モジュール324に常時供給する。この常時電源供給装置344により、無線通信部326を含む通信モジュール324は、本体部300への電源供給のオン/オフにかかわらず、携帯電話通信網10の無線公衆通信回線を介して各種情報を着信可能な状態に維持される。
【0019】
上記本体機能制御部328は、例えば、無線通信部326で受信した遠隔制御情報に基づいて、本体部300の記憶装置306に保存されているデータの読み出しができないように制御する。また、本体機能制御部328は、無線通信部326で受信した着信情報に遠隔制御情報が含まれているときや、遠隔制御情報そのものを着信したときに、動作中の本体部300に対して割り込み信号を送出することにより本体部300の機能の使用が規制された機能ロック状態に遷移させるように構成してもよい。
【0020】
また、上記本体機能制御部328は、本体部300への電源供給がオフになっている状態又は本体部300のスタンバイ状態で無線通信部326受信した着信情報に遠隔制御情報が含まれているときや、遠隔制御情報そのものを着信したときに、その着信があった旨を示す情報を保持するように構成してもよい。この場合、本体部300は、メインスイッチ343のオン時、中央処理装置308における基本ソフトウェアの立ち上げ時、又はスタンバイ状態から復帰時に、遠隔制御情報の着信があったか否かを本体機能制御部328に問い合わせ、遠隔制御情報を着信していた場合には機能ロック状態に遷移する。
【0021】
また、上記本体機能制御部328は、無線通信部326で受信した着信情報に遠隔制御情報が含まれているときや、遠隔制御情報そのものを着信したときに、携帯電話通信網10の無線公衆通信回線を介して管理システム20に、本体部300の記憶装置306に保存されているデータを読み出して送信するように制御してもよい。
【0022】
また、上記本体機能制御部328は、無線通信部326で受信した着信情報に遠隔制御情報が含まれているときや、遠隔制御情報そのものを着信したときに、位置情報取得部330を起動し、携帯電話通信網10の無線公衆通信回線を介して管理システム20に、位置情報取得部330で取得した当該携帯パソコン30の現在位置の情報を送信するように制御してもよい。外部から着信した遠隔制御情報に基づいて位置情報取得部330を起動し現在位置を取得する方式としては各種方式を採用することができ、特定の方式に限定されるものではない。例えば、位置情報取得部330は、GPS(Global Positioning System)の複数の衛星から信号を受信し現在位置としてGPS位置情報(緯度、経度)を計算するGPS受信モジュールを用いて構成することができる。また、位置情報取得部330は、第3者測位サーバを経由して接続したアシストGPS(AGPS)のシステムからGPS位置情報を取得するように構成してもよい。
【0023】
図3は、盗難や紛失にあった携帯パソコン30の本体機能を使用不可にする遠隔ロック設定を行うように制御する手順の一例を示すシーケンス図である。この例は、携帯パソコン30の本体部300が電源ONで立ち上がっている場合を示している。携帯パソコン30の盗難や紛失が発覚したとき、携帯パソコン30の利用者は、管理システム20を運営している管理者に対し、携帯パソコン30の盗難又は紛失があった旨及び携帯パソコン30の本体部300を使用不可にする遠隔ロックの指示を何らかの方法で連絡する。管理システム20は、事前に登録されている複数の携帯パソコンやPDA等の情報処理装置について本体ロックの遠隔制御を行うことができる。管理システム20は、利用者から携帯パソコン30の盗難や紛失の通報を受けたとき、その利用者の携帯パソコン30の外部通信部(通信モジュール)320に向けて遠隔ロックを指示する遠隔ロック指示(遠隔制御情報)を送信する。携帯パソコン30の外部通信部(通信モジュール)320は、遠隔ロック設定を受け付けた後、管理システム20に対して遠隔ロック確認の応答を行う。次に、外部通信部(通信モジュール)320の本体機能制御部238は、動作中の本体部300の中央演算処理装置308に対して遠隔ロックを指示する割り込み信号を送出する。この遠隔ロック指示(割り込み信号)により、本体部300をロックする遠隔ロック設定がなされ、各種機能の使用が規制された機能ロック状態に本体部300を遷移させることができる。本体部300の中央演算処理装置308は、遠隔ロック設定の処理が終わると、外部通信部(通信モジュール)320に遠隔ロック確認の応答を行う。以上により、メインスイッチ343の操作による本体部300への電源供給のオン/オフにかかわらず、通信ネットワーク上の管理システム20や他の通信端末などから、本体部300の機能を遠隔的に制御するための遠隔制御情報を着信することができる。そして、この遠隔制御情報の着信により、携帯パソコン30の本体部300の機能(例えばデータ読み出し機能)の使用を規制するように遠隔的に制御できる。特に、本例では、本体部300が動作中に遠隔制御情報を着信すると、本体機能制御部238から本体部300に送出した遠隔ロック指示(割り込み信号)により本体部300を機能ロック状態に遷移させ、本体部300の機能使用を即座に規制することができる。
【0024】
図4は、盗難や紛失にあった携帯パソコン30の本体機能を使用不可にする遠隔ロック設定を行うように制御する手順の他の例を示すシーケンス図である。この例は、携帯パソコン30の本体部300が電源OFFで立ち上がっていない場合を示している。管理システム20は、図3の場合と同様に、利用者から携帯パソコン30の盗難や紛失の通報を受けると、その利用者の携帯パソコン30の外部通信部(通信モジュール)320に向けて遠隔ロックを指示する遠隔ロック指示(遠隔制御情報)を送信する。携帯パソコン30の外部通信部(通信モジュール)320の本体機能制御部328は、遠隔ロック指示を受け付けた後、本体部300が電源OFFの状態又は休止中の状態(スタンバイ状態)であることを検知すると、遠隔ロック設定の情報を一旦保持する。その後、利用者が携帯パソコン30を操作して本体部300のメインスイッチ343をONすると、本体部300の電源がONになり、基本ソフトウェアであるOS(Operating System)の立ち上げが実行される。本体部300の休止状態(スタンバイ状態)になっていた場合は、その休止状態(スタンバイ状態)から復帰する処理が実行される。本体部300は、メインスイッチ343のオン時、基本ソフトウェア(OS)の立ち上げ時又はスタンバイ状態から復帰時に、前記遠隔制御情報の着信があったか否か、すなわち前記遠隔ロック設定の情報が保持されているか否かを、本体機能制御部328に問い合わせる「遠隔ロック問い合わせ」を実行する。ここで、前記遠隔制御情報を着信していた場合(前記遠隔ロック設定の情報が保持されている場合)には、本体部300は、機能使用が規制された機能ロック状態に遷移する。本体部300の中央演算処理装置308は、遠隔ロック設定の処理が終わったとき、外部通信部(通信モジュール)320に遠隔ロック確認の応答を行うようにしてもよい。以上により、メインスイッチ343の操作による本体部300への電源供給のオン/オフにかかわらず、通信ネットワーク上の管理システム20や他の通信端末などから、本体部300の機能を遠隔的に制御するための遠隔制御情報を着信できる。そして、この遠隔制御情報を着信することにより、携帯パソコン30の本体部300の機能(例えばデータ読み出し機能)の使用を規制するように遠隔的に制御できる。特に、本例では、本体部300への電源供給がオフになっている状態又は本体部300のスタンバイ状態で上記遠隔制御情報の着信があった場合に、本体部300を確実に機能ロック状態にすることができる。
【0025】
上記管理システム20から携帯パソコン30を遠隔ロックする方式としては、各種方式を採用することができる。例えば、OMA(Open Mobile Alliance)デバイス管理(Device Management)に準拠したプロトコルを用いて遠隔ロックを行う方式を採用することができる。OMA(Open Mobile Alliance)は、携帯電話機によるアプリケーション/サービスに関する標準化団体であり、そのOMAのデバイス管理(Device Management)とは、携帯電話機に関する各種設定情報の変更やソフトウェアの更新をネットワーク経由で行うためのプロトコルである。
【0026】
図5は、OMAデバイス管理(Device Management)に準拠したプロトコルを用いて遠隔ロックを行うときの手順の一例を示すシーケンス図である。この手順で遠隔ロックを行う場合は、携帯電話通信網10に接続されたとSMSC(Short Message Service Center)呼ばれるメッセージサーバ21と、デバイス管理サーバ22とを利用する。メッセージサーバ21は、携帯電話機や通信モジュールの端末識別情報としての電話番号を宛先として送信される所定のサイズのメッセージを処理する。図5において、メッセージサーバ21は、管理システム20から携帯パソコン30の通信モジュールの電話番号を指定した遠隔ロック指示を受信すると、その携帯パソコン30の外部通信部(通信モジュール)320に対してSMS(Short Message Service)からなる「Phone Security Notification」を送信する。これにより、携帯パソコン30の外部通信部(通信モジュール)320とデバイス管理サーバ22との間でデバイス管理(DM)セッションが開始され、携帯パソコン30の本体部300をロックするための情報が送受信される((2)〜(5))。携帯パソコン30でロック処理が実行されると、当該携帯パソコン30の通信モジュールに対応するデバイス情報中のロック設定情報の記述が書き換えられ、携帯パソコン30の外部通信部(通信モジュール)320とデバイス管理サーバ22との間のデバイス管理(DM)セッションが終了する((6)〜(7))。
【0027】
なお、管理システム20から携帯パソコン30を遠隔ロックする方式としては、また、上記OMAデバイス管理に準拠したプロトコルを用い方式のほか、携帯パソコン30の外部通信部(通信モジュール)320に送信されるSMS(Short Message Service)上に通信事業者独自形式の情報を添付する方式を採用してもよい。また、音声通信を利用する方式としては、音声着信の呼び出しと途中放棄とを特定のパターンで繰り返す方式を採用することもできる。
【0028】
図6は、盗難や紛失にあった携帯パソコン30に保存されているファイル(データ)を外部から読み出すときの手順の一例を示すシーケンス図である。管理システム20は、利用者から携帯パソコン30の盗難や紛失の通報を受けると、その利用者の携帯パソコン30の外部通信部(通信モジュール)320に向けてファイルの読み出しを指示するファイル読み出し指示(遠隔制御情報)を送信する。このファイル読み出し指示(遠隔制御情報)の送信の方式としては、例えばSMS上に通信事業者が独自に定義した仕様のメッセージを付加する方式を採用することができる。携帯パソコン30の外部通信部(通信モジュール)320の本体機能制御部328は、ファイル読み出し指示を受け付けると、通信事業者が独自に定義した仕様のメッセージからなるファイル読み出し指示を、起動中の本体部300に送信する。ファイル読み出し指示を受信した本体部300は、ファイル読み出し機能の立ち上げが実行される。このファイル読み出し機能は、OS全体が立ち上がった状態で実行される所定のプログラムで実現されるものでもいいし、ファイル読み出し専用のプロセッサで処理することにより実現されるものでもよい。上記ファイル読み出し機能が立ち上がると、携帯パソコン30の外部通信部(通信モジュール)320を介して本体部300と外部の管理システム20との間に、所定の通信セッション例えばTCP/IPセッションが起動される。このTCP/IPセッションの起動の後、管理システム20は、携帯パソコン30の本体部300に保存されているファイル一覧を取得する。管理システム20は、取得したファイル一覧から読み出し対象のファイルを指定し、所定のファイル転送プロトコル(例えばFTP)によってファイルの読み出し及び転送を実行する。携帯パソコン30の本体部300から所定のファイルの読み出しと管理システム20への転送が完了したら、本体部300と管理システム20との間の通信セッションが終了する。以上により、盗難や紛失にあった携帯パソコン30に保存されているファイル(データ)を外部から読み出して転送させることにより、ファイル(データ)の紛失を防止できる。なお、携帯パソコン30の本体部300から管理システム20へのファイル(データ)の送信後、管理システム20から携帯パソコン30に所定のメッセージコマンドを送信することにより、本体部300内の当該ファイル(データ)は悪用されないように削除してもよい。
【0029】
図7は、盗難や紛失にあった携帯パソコン30の外部通信部(通信モジュール)320の位置情報取得部330を外部から遠隔的に起動する場合の手順の一例を示すシーケンス図である。この例は、3GPP(3rd Generation Partnership Project)と呼ばれる第3世代移動体通信システムの標準化プロジェクトの技術仕様TS23.171に規定されているMT−LR(Mobile Terminating Location Request)による手順を示している。この手順で位置情報取得部330を外部から遠隔的に起動する場合は、携帯電話通信網10に設けられた、GMLC(Gateway Mobile Location Center)23と、HLR24と、3G−VMSC(3G-Visitor Mobile services Switching Center)25と、SRNC(Serving Radio Network Controller)26とを用いる。
【0030】
図7において、管理システム20は、利用者から携帯パソコン30の盗難や紛失の通報を受けると、その携帯パソコン30の通信モジュール324のMSISDN(Mobile Subscriber ISDN Number:電話番号)を付加して位置サービス要求(LCS Service Request)をGMLC23に送信する。GMLC23は、必要に応じてHLR24に問い合わせることにより通信モジュール324に対応するIMSI(International Mobile Subscriber Identity:加入者識別子)及び現在の3G−VMSC25のアドレスを取得する。次に、GMLC23は、HLR24でアドレスが特定された3G−VMSC25に対し、要求する位置情報のタイプ、通信モジュール324のIMSI、位置情報サービスの品質などを含む加入者位置情報要求を送信する。3G−VMSC25は、必要に応じて、通信モジュール324の呼び出し、認証、暗号処理などを実行したり、通信モジュール324に対する位置情報遠隔取得の通知を行ったりする。次に、3G−VMSC25は、SRNC26に対して、要求する位置情報のタイプ、位置情報サービスの品質などを含む加入者位置情報要求を送信する。SRNC26は、要求されたタイプの位置情報を取得するためのメッセージ通信を通信モジュール324との間で行うことにより、通信モジュール324の位置情報取得部330の位置測定機能を起動し、その測定結果を受信する。SRNC26は、通信モジュール324から取得した現在位置の位置情報を、3G−VMSC25を介してGMLC23に送信する。管理システム20は、位置サービス応答(LCS Service Response)として、通信モジュール324の現在位置の位置情報をGMLC23から受信することができる。以上により、携帯パソコン30の通信モジュール324がSRNC26等を介して遠隔制御情報を着信したときに、その携帯パソコン30の現在位置の情報を管理システム20に送信するので、紛失や盗難にあった携帯パソコン30の捜索が容易になる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内において、開示した実施形態に種々の変更を加えることができる。
【0032】
例えば、本発明は、持ち運び可能な携帯型の情報処理装置がノート型パソコンやPDA(Personal Digital Assistants)等の携帯情報端末である場合にも適用できる。また、この情報処理装置が搭載する通信装置がアクセスする公衆無線通信の方式としては、PDC(Personal Digital Cellular)方式、GSM(Global System for Mobile Communication)方式、TIA(Telecommunications Industry Association)方式等の携帯電話機、IMT(International Mobile Telecommunications)−2000で標準化された携帯電話機、TD−SCDMA(Time Division Synchronous Code Division Multiple Access)方式の一つであるTD−SCDMA(MC:Multi Carrier)方式の携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)、が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態における携帯電話通信モジュールを組み込んだ携帯パソコンの遠隔制御が可能な通信システムの概略構成一例を示す説明図。
【図2】携帯パソコンの概略構成の一例を示すブロック図。
【図3】携帯パソコンの本体機能を使用不可にする遠隔ロック設定を行うように制御する手順の一例を示すシーケンス図。
【図4】携帯パソコンの本体機能を使用不可にする遠隔ロック設定を行うように制御する手順の他の例を示すシーケンス図。
【図5】OMAデバイス管理(Device Management)に準拠したプロトコルを用いて遠隔ロックを行うときの手順の一例を示すシーケンス図。
【図6】携帯パソコンに保存されているファイル(データ)を外部から読み出すときの手順の一例を示すシーケンス図。
【図7】携帯パソコンの外部通信部(通信モジュール)の位置情報取得部を外部から遠隔的に起動する場合の手順の一例を示すシーケンス図。
【符号の説明】
【0034】
10 携帯電話通信網
11 基地局
20 管理システム
30 携帯パソコン
300 本体部
320 外部通信部
322 アンテナ
324 通信モジュール
326 無線通信部
328 本体機能制御部
330 位置情報取得部
340 電源部
342 本体用電源供給装置
343 メインスイッチ
344 常時電源供給装置
346 バッテリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
持ち運び可能な携帯型の情報処理装置であって、
メインスイッチの操作によって電源供給がオン/オフされる本体部と、
無線公衆通信回線を介して情報を着信可能な無線通信部と、を備え、
前記無線通信部は、前記本体部への電源供給のオン/オフにかかわらず前記無線公衆通信回線を介して着信可能な状態に維持されていることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1の情報処理装置において、
前記無線通信部で受信した着信情報に遠隔制御情報が含まれているとき、前記本体部の機能の使用を規制するように制御する本体機能制御部を更に備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項2の情報処理装置において、
前記本体機能制御部は、前記遠隔制御情報に基づいて、前記本体部に保存されているデータを読み出し不能にすることを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項2の情報処理装置において、
前記本体機能制御部は、前記着信情報に前記遠隔制御情報が含まれているとき、動作中の前記本体部に対して割り込み信号を送出することにより該本体部を機能使用が規制された機能ロック状態に遷移させることを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項2の情報処理装置において、
前記本体機能制御部は、前記本体部への電源供給がオフになっている状態又は前記本体部のスタンバイ状態で受信した着信情報に前記遠隔制御情報が含まれているとき、その着信があった旨を示す情報を保持し、
前記本体部は、前記メインスイッチのオン時、基本ソフトウェアの立ち上げ時又はスタンバイ状態から復帰時に、前記遠隔制御情報の着信があったか否かを前記本体機能制御部に問い合わせ、前記遠隔制御情報を着信していた場合には機能ロック状態に遷移することを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
請求項1の情報処理装置において、
前記無線通信部で受信した着信情報に遠隔制御情報が含まれているとき、無線公衆通信回線を介して管理システムに、前記本体部に保存されているデータを読み出して送信するように制御する本体機能制御部を更に備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
請求項1の情報処理装置において、
当該情報処理装置の現在位置の情報を取得する位置情報取得部と、
前記無線通信部で受信した着信情報に遠隔制御情報が含まれているとき、前記位置情報取得部を起動し、無線公衆通信回線を介して管理システムに、前記位置情報取得部で取得した現在位置の情報を送信するように制御する本体機能制御部と、を更に備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれかの情報処理装置において、
前記本体部に対する第1の電源供給部と、前記無線通信部および本体機能制御部に常時電源を供給する第2の電源供給部と、を更に備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの情報処理装置において、
前記無線通信部を含む通信モジュールを備えたことを特徴とする情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−167381(P2008−167381A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−596(P2007−596)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(501440684)ソフトバンクモバイル株式会社 (654)
【Fターム(参考)】