説明

情報記憶媒体及び情報記録方法並びに情報再生方法

【課題】この発明の目的は、記録可能ディスクを再生専用機で再生できるように記録可能ディスクにも関わらず再生専用ディスクとして認識させること。
【解決手段】リードイン領域記憶される物理フォーマット情報はブックタイプに拠らない共通の第1の情報と、ブックタイプに固有の第2の情報と、第2の情報毎に固有の第3の情報とを具備し、第1の情報はブックタイプとバージョン番号とを示すバイト情報を具備し、第2の情報はリビジョン番号のメジャー桁とディスクインジケータとを示すバイト情報を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報記憶媒体及び情報記録方法並びに情報再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を用いて情報の記録と再生が可能な情報記憶媒体すなわち光ディスクが実用化されて久しい。例えば、直径が12cmのDVD規格の光ディスクには、標準的な画質の映像が、数時間記録可能である。また、再生専用の光ディスクにおいては、映像ソフトやコンテンツが、プレス加工あるいは成型加工により短時間で収録可能である。なお、情報の書き込み(追記)あるいは消去(書き換え)が可能なタイプの光ディスクには、ランドプリピットとグルーブトラック(プリグルーブ)が形成されている。
【0003】
特許文献1には、プリグルーブとランドプリピットが存在する情報記憶媒体に対して新たな記録マークを記録する場合に、a)ランドプリピットに記録されたアドレス情報からの再生信頼性を確保するためにランドプリピットからは大きな検出信号が得られること、b)記録マーク形成時の高いトラッキング安定性を確保するために、プリグルーブからの大きなトラックずれ検出信号を得ること、が示されている。
【0004】
従来、DVD規格の光ディスクにおいては、リードイン領域内の物理フォーマット情報ゾーンのバイト位置BP0の上位4ビットに記録されるブックタイプ(Book Type)を用いて、ディスクの識別を行っていた。ブックタイプはDVDフォーラムの規格書毎に割当てられた予め決められたコードを示す。なお、バイト位置BP0の下位4ビットにはパートバージョン(Part Version)が記録される。パートバージョンはバージョン番号の桁そのものを表すのではなく、DVDフォーラムの規格書のバージョン毎に割当てられた予め決められたコードを示す。例えば、0000bがバージョン0.9(テスト用)に、0001bがバージョン1.0xに、0100bがバージョン1.9(テスト用)に、0101bがバージョン2.0xに、0110bがバージョン2.1xに割り当てられ、他はリザーブされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−266362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リードイン領域内の物理フォーマット情報ゾーンには記録する時の記録条件(ライトストラテジ情報)も記録される。例えば、情報記録媒体の種別毎に記録・再生光の波長が異なる場合があり、ライトストラテジ情報も情報記録媒体の種別毎に異なる場合がある。種別毎に異なるライトストラテジ情報をそれぞれ専用の記録エリアを用意すると、リードイン領域の利用効率が低下する。
【0007】
この発明の目的は、リードイン領域を有効利用することができる情報記憶媒体及びその記憶媒体に情報を記録する方法並びにその記憶媒体から情報を再生する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、リードイン領域と、前記リードイン領域の外側に配置される第1のデータ領域を有する第1層と、第2のデータ領域と、前記第2のデータ領域の内側に配置されるリードアウト領域とを有する第2層と、を具備し、前記第1層の前記リードイン領域と前記第2層の前記リードアウト領域の半径方向寸法が重なり、前記第1層の前記リードイン領域は、記録マークの極性情報を格納する領域と、媒体の種別毎のライトストラテジ情報を格納する領域とを有し、前記ライトストラテジ情報はピークパワーと複数のバイアスパワーを含むことを特徴とする情報記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0009】
この発明の情報記憶媒体によれば、情報記憶媒体の種別毎に異なるライトストラテジ情報を同じ領域内に記録可能であり、リードイン領域を有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】追記形情報記憶媒体の構造の一例を説明する概略図。
【図2】図1の追記形情報記憶媒体とは異なる情報記憶媒体の断面構造の一例を説明する概略図。
【図3】本発明の実施例で使用される基本原理を説明する概略図。
【図4】波長650nmの光をNA=0.6の対物レンズで集光させた場合のグルーブ深さとPush-Pull信号振幅との関係を説明するグラフ。
【図5】波長405nmの光をNA=0.65の対物レンズで集光させた場合のグルーブ深さとPush-Pull信号振幅との関係を説明するグラフ。
【図6】波長650nmの光をNA=0.6の対物レンズで集光させた場合にPush-Pull信号振幅を小さくでき、波長405nmの光を集光させた場合にPush-Pull信号振幅を大きくできる条件を満たすプリグルーブ深さ範囲を示すグラフ(波長650nmの光によるPush-Pull信号振幅を所定の大きさに設定した状態で、波長405nmの光を異なるNAの対物レンズで集光させた場合のPush-Pull信号振幅とグルーブの深さの関係を説明するグラフ)。
【図7】L→H型有機色素記録材料の光吸収スペクトル特性の一例を示すグラフ。
【図8】L→H型有機色素記録材料の屈折率特性の一例を示すグラフ。
【図9】H→L型有機色素記録材料の光吸収スペクトル特性の一例を示すグラフ。
【図10】図1及び図2の追記形情報記憶媒体のランドプリピットの構造を説明する概略図。
【図11】図2の追記形情報記憶媒体の記録領域の構造を説明する概略図。
【図12】図2の追記形情報記憶媒体の記録領域のデータ構造を説明する概略図。
【図13】図12に示したデータ構造の物理フォーマット情報とR物理フォーマット情報を説明する概略図。
【図14】現行の映像情報配信システムを説明する概略図。
【図15】本発明の情報記憶媒体を用いることで達成される映像情報配信システムの一例を説明する概略図。
【図16】本発明の情報記憶媒体を用いることで達成される映像情報配信システムの一例を説明する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、現行の追記形情報記憶媒体(現行のDVD−Rディスク)の断面構造を示している。
【0013】
現行のDVD−Rディスクは透明基板101、記録層103、光反射層102を有する。記録層103は有機色素系材料がスピナコーティング等により形成されている場合が多く、光反射率を上げるために、記録層103に隣接してAlやAu等の無機物(金属の場合が多い)から成る光反射層102が形成されている。光反射層102の表面は、記録層103側でのプリグルーブ107やランドプリピット108部の凹凸形状を反映して段差dcが生じている。
【0014】
現行の書替え形情報記憶媒体(現行のDVD−RWディスク)においても、透明基板101は、図1に示したDVD−Rディスクに類似した構造でプリグルーブ107やランドプリピット108が形成されている。しかし、記録層103には、相変化形記録材料が用いられ、記録層の相変化による記録マークを形成することが、現行のDVD−Rディスクと異なる。
【0015】
そのため、DVD−RディスクとDVD−RWディスクでは、記録層103の材料が異なるだけでなく、記録層103の内部が、それぞれ材質の異なる複数層(記録層を挟んだ上部保護層や下部保護層、下地層等による積層構造)である。
【0016】
本実施例における情報記憶媒体内の微細構造を、図2及び図10(b)に示す。なお、図2では、図10(b)に示したランドプリピット108の記載を省略してある。
【0017】
本実施例における追記形情報記憶媒体内の記録層103の材料としては、後述する有機色素系材料が使用されている。また、記録層103に隣接して、AgまたはAg合金等の無機物から成る光記録層102が形成されている。なお、図2に示す情報記憶媒体では、光反射層102の反対側の界面には、図1と同様に凹凸形状が存在するが、光反射層102の厚みが充分厚いので、光反射層102の中央で切断した図面を示し、反対側の界面での凹凸形状の記載を省いた。
【0018】
記録層103と光反射層102との界面では、プリグルーブ107やランドプリピット108部に段差がHrの凹凸形状になっている。
【0019】
以降の説明では、本実施例における追記形情報記憶媒体内の記録層103として有機色素系材料を使用する実施例について説明するが、本発明はそれに限らず記録層103の材料として無機物を使用しても良い。
【0020】
記録層103の材料として無機物を使用する例として、カルコゲナイド系等の相変化形(相変化を利用して記録マーク105を形成する)記録材料を使用してもよいし、Te−C等の直接穴を開けて記録マーク105を形成するタイプ、あるいは異なる種類の無機層を複数層積層し、熱による拡散により記録マーク105内で混合物もしくは化合物を形成させてもよい。
【0021】
図2に示した断面構造を有した本実施例における情報記憶媒体の場合には、Push-Pull法を用いたトラックずれ検出信号やランドプリピット108からの検出信号は、段差Hrを有する記録層103と光反射層102との間の界面で反射した光の回折/干渉により得られる。
【0022】
次に本発明の基本的な原理について説明する。
【0023】
本発明の実施例は記録光と再生光との使用波長を変える記録/再生装置を提供すると共に、波長の異なった記録光と再生光に対して良好な記録特性と再生特性を保証する情報記憶媒体を提供することに大きな特徴がある。
【0024】
またさらに、記録光に対してトラックずれ検出信号とランドプリピット検出信号が得られると同時に再生光に対してはプリグルーブやプリピットからの影響がほとんど出ないようなプリグルーブ形状と寸法およびランドプリピット形状と寸法に設定することに次なる特徴がある。
【0025】
現行のDVD−RディスクやDVD−RWディスクでは再生光の波長として650±5nmを前提としている。
【0026】
本実施例における情報記憶媒体では、現行のDVD−RディスクやDVD−RWディスクとの間の再生互換性を確保するため、波長が650±5nmの光で再生可能とする。
【0027】
記録光に対してトラックずれ検出信号とランドプリピット検出信号が得られると同時に再生光(650±5nmの光)に対してはプリグルーブやプリピットからの影響がほとんど出ないようなプリグルーブ寸法及びランドプリピット寸法と記録光の波長との関係について図3を用いて説明する。
【0028】
前述したように、Push-Pull法を用いたトラックずれ検出信号やランドプリピット108からの検出信号は記録層103と光反射層102との間の界面(図2参照)で反射した光の回折/干渉により得られる。
【0029】
段差がHrであるプリグルーブ107またはランドプリピット108とランド109の両方にそれぞれ波長の異なる入射光114が照射された場合を説明する。
【0030】
図3(a)は波長が650nmの再生光が照射された場合を表し、プリグルーブ107またはランドプリピット108とランド109に対して垂直に反射される反射光115が段差Hrにより受ける位相差をε650で表す。
【0031】
図3(b)は再生光とは異なる波長λwの記録光が照射された場合を示している。記録光による反射光115が段差Hrにより受ける位相差をελwとする。
【0032】
段差量Hrが等しい場合には、λw<650nmにおいて、ε650<ελwの関係が成り立つ。図3(c)はどう見ても図には見えません(文章です)ので、図示できません。
【0033】
ε650<πであり、ελw<πの場合には、位相差εが大きい方が反射光115間の干渉量が大きく、大きなトラックずれ検出信号とランドプリピット検出信号が得られる。
【0034】
一方、位相差εが小さい方が反射光115間の干渉が小さく、プリグルーブやプリピットからの悪影響(先行技術の問題点で示したようなランドプリピットからのクロストーク信号やプリグルーブからのDCレベル低下による記録マークからの再生信号特性劣化)が出辛い(再生信号の特性劣化が少ない)。
【0035】
そのため、本実施例では再生光の波長(650±5nm)に対して記録光の波長λwを短くして(λw < 650nm)、記録光に対してトラックずれ検出信号とランドプリピット検出信号が得られると同時に再生光に対してはプリグルーブやプリピットからの影響がほとんど出ないようにしたことに大きな特徴がある。
【0036】
記録光に使用される波長λwの値は650nmより短ければ任意の値を取ることが可能である。
【0037】
しかしHD DVDやBD(Blu Ray Disc)で405nmの半導体レーザ光源が使用されているので、同様に405nmの光源を使用することで記録用光学ヘッドを安価に作成できる。
【0038】
次に記録装置内に搭載される光学ヘッドについて説明する。
【0039】
記録層103に集光する集光スポットは図1のプリグルーブ107上をトレース(トラッキング)する。
【0040】
従って集光スポットサイズが極端に小さく無い場合、すなわち一定以上の大きさを有する場合には、プリグルーブ107の中心からランドプリピット108の中心までの距離Llcの集光スポットサイズに対する比率が大きい方がランドプリピット108からの検出信号が大きく取れる。
【0041】
また現行のDVD−RディスクやDVD−RWディスクでの再生用光学ヘッドでは使用する対物レンズの開口数NA(Numerical Aperture)を、0.60±0.01に規定している。
【0042】
記録層103に集光する集光スポットのサイズは光の波長をλとした時、λ/NAに比例することが知られている。
【0043】
従って本実施例では記録装置内に搭載される光学ヘッド内の対物レンズNA値を現行の再生用光学ヘッドよりも大きくすることで記録層103に集光する集光スポットのサイズを小さくしてランドプリピット検出信号を大きくする。
【0044】
記録装置内に搭載される光学ヘッド内の対物レンズNA値としては再生用光学ヘッドの対物レンズNA値である0.6より大きいことが要求されるが、0.65以上であることが望ましい。
【0045】
さらに、NA=0.70以上あるいはNA=0.83以上にすることでより大きなランドプリピット検出信号が得られる。
【0046】
上記では説明をし易くするために記録装置と再生装置を区別して説明したが、本実施例ではそれに限らず同一装置内で記録用光学ヘッドと再生用光学ヘッドとを用意してもよいし、同一装置内の同一光学ヘッド内に記録用の405nm光源とNA0.65の記録用対物レンズそして再生用650nm光源とNA0.60の再生用対物レンズを持たせても良い。
【0047】
さらにそれに限らずNA0.65の対物レンズのみを使用し、再生時にはNAが0.60になるように送光系に脱着可能なアパーチャ(開口制限用シャッタ)を配置しても良い。
【0048】
本実施例では再生装置内での再生用光学ヘッドを現行のDVDプレーヤに合わせて(互換性確保を目指して)波長650nm、NA0.60にする代わりに記録装置内での記録用光学ヘッドの光源波長を650nmよりも短く(望ましくは405nm)し、さらに記録用光学ヘッドに使用される対物レンズのNA値を0.60よりも大きく(望ましくはNA0.65以上)することで再生時よりも記録時の(Push-Pullによる)トラックずれ検出信号量とランドプリピット検出信号量を増大させている。
【0049】
このように記録時のトラックずれ検出信号量とランドプリピット検出信号量を相対的に増大させることで、再生時のランドプリピット検出信号の影響を軽減すると共に再生時のトラックずれ検出信号量を低下させてプリグルーブ107からのDCレベル低下を防止し、再生時の記録マークからの再生特性の信頼性低下を防止することが可能となる。
【0050】
そのために本実施例では記録光と再生光間の波長の違いを利用し、プリグルーブ107の形状及び寸法とランドプリピット108の形状及び寸法範囲を規定したことに技術的な特徴がある。
【0051】
図2で説明したように、記録層103と光反射層102との間の界面で反射する光(この場合には再生光)によりランドプリピット検出信号量とトラックずれ検出信号量が決定される。
【0052】
650±5nmの再生光における記録層103内での屈折率をn650とすると、ランドプリピットの深さ(段差)と等しいプリグルーブの深さ(段差)Hrが650/(8・n650)nmの時が最もランドプリピット検出信号とトラックずれ検出信号が大きく検出される。
【0053】
従って再生時にその影響を受けない条件としては本実施例ではプリグルーブの深さ(段差)およびランドプリピットの深さ(段差)Hrがその半分の650/(16・n650)nm以下に設定する。
【0054】
またより影響を受けない条件ではさらにその半分の650/(32・n650)nm以下に設定することが望ましい。
【0055】
記録層103と光反射層102との間の界面でのプリグルーブの深さ(段差)Hrについてより詳細に検討を行う。
【0056】
図3(a)及び図3(b)で示した反射光115は対物レンズ通過後、情報記憶媒体の半径方向に配列された2分割検出器で光量検出される。
【0057】
この光検出器内の各検出セルで検出された信号量をI1とI2で表す。
【0058】
現行のDVD−R規格では、このトラックずれ検出信号の範囲として、
0.22<|I1−I2|ac/|I1+I2|dc<0.44 (1)
と規定している。
【0059】
従って再生時のトラックずれ検出信号の影響を軽減し、プリグルーブ107からのDCレベル低下を防止する条件として本実施例では再生時の検出信号特性範囲として、
|I1−I2|ac/|I1+I2|dc<0.22 (2)
とする。
【0060】
上記(2)式は最低条件であり、マージンを見越して、より再生時のトラックずれ検出信号の影響を軽減し、プリグルーブ107からのDCレベル低下を防止できる条件としては、(2)式の条件を半分に狭めた
|I1−I2|ac/|I1+I2|dc<0.11 (3)
が望ましい。
【0061】
また現行のDVD−R規格では、ランドプリピット検出信号の範囲として
0.18<|I1−I2|o−p/|I1+I2|dc<0.28 (4)
と規定しているので、再生時のランドプリピットからのクロストークの影響を軽減する条件として、本実施例では、再生時の検出信号特性範囲として
|I1−I2|o−p/|I1+I2|dc<0.18 (5)
とする。
【0062】
同様に、マージンを見越した条件としては、(5)式の条件を半分に狭めた
|I1−I2|o−p/|I1+I2|dc<0.09 (6)
が一層望ましい。
【0063】
上記の式において、集光スポットがプリグルーブ107とランド109を複数回跨った時に2個の検出セルで得られる信号の和であるI1+I2に対する直流成分を|I1+I2|dcと定義し、2個の検出セルで得られる信号の差分振幅(交流成分)を|I1−I2|acと定義する。
【0064】
上記(2)式を満足するための記録層103と光反射層102との間の界面でのプリグルーブの深さ(段差)Hrについてシミュレーションを行った。
【0065】
シミュレーション条件としてトラックピッチPtc(図1参照)は現行DVD−Rと同様の0.74μmに固定した。
【0066】
記録層103と光反射層102との間の界面でのプリグルーブ断面形状は図1と同様に台形を仮定し、プリグルーブ107の左右斜面の傾斜角を50度(垂直壁面の場合には90度とした場合)に設定し斜面の中央での幅をランド幅とグルーブ幅と定義する。
【0067】
波長650nmの再生光をNA0.60の対物レンズで集光させた場合のプリグルーブ深さHrとPush-Pull信号振幅との間の関係を示すシミュレーション結果を図4に示す。なお、図4において、曲線Aは、グルーブ深さが10nmの例を、曲線Bは、グルーブ深さが20nmの例を、曲線Cは、グルーブ深さが30nmの例を、曲線Dは、グルーブ深さが40nmの例を、曲線Eは、グルーブ深さが50nmの例を、曲線Fは、グルーブ深さが60nmの例を、曲線Gは、グルーブ深さが70nmの例を、それぞれ示している。
【0068】
図4における縦軸の値は、(1)式に示す
|I1−I2|ac/|I1+I2|dc (7)
を表す。
【0069】
図4は、パラメータをプリグルーブ深さHrとし、台形斜面の中央でのランド幅とグルーブ幅の比率を変えた時の(7)式の値を計算している。対物レンズに入射する入射光のビーム充填率を示すA/W値(A:対物レンズの直径、W:入射光強度分布における中心強度に対するe−2幅の直径)は、円周方向で0.3058、半径方向で、0.1513とした。
【0070】
同じ条件で、波長405nmの記録光をNA0.65の対物レンズで集光させた場合のシミュレーション結果を図5に示す。なお、図5において、各曲線のa〜gは、グルーブ深さを示し、それぞれは、図4の大文字と対応されている。
【0071】
図5の例では、A/W値は、円周方向で、0.3331、半径方向で、0.3331である。
【0072】
図4に比べて図5の方が遙かに大きなPush-Pull信号振幅が得られていることが分かる。
【0073】
図6は、図4の計算結果と図5の計算結果を、横軸をグルーブ深さとして重ねて示している。
【0074】
上記(1)式の範囲が、図6の領域“H”で示した“DVD−R規格上で規定されるPush-Pull信号の振幅範囲条件”になる。
【0075】
上記(2)式を満足する条件として記録層103と光反射層102との間の界面でのプリグルーブの深さ(段差)Hrを20nm以下にすれば良いことが分かる。
【0076】
また図6からこの条件下でもNA0.65の対物レンズを通過した波長405nmの記録光で充分大きなPush-Pull信号振幅が得られることが分かる。
【0077】
なお、図6から、上記(3)式を満足する条件として、記録層103と光反射層102との間の界面でのプリグルーブの深さ(段差)Hrを10nm以下にすれば良いことがわかる。
【0078】
NA0.65で405nmの記録光を照射した場合には、プリグルーブの深さ(段差)Hrに対して、
60nm≦Hr≦100nm (8)
の範囲であれば、(1)式の条件を満足していることを図6は示している。
【0079】
従って本実施例においてプリグルーブの深さ(段差)の範囲を(8)式の範囲内に設定している。
【0080】
図2に示した構造を有し、波長405nmの記録光で記録可能であると共に波長650nmの再生光で記録マーク105からの充分大きな再生信号振幅が得られる記録層103に関する本実施例の説明を行う。
【0081】
再生専用である現行のDVD−ROMディスクの規格上では、
650nmの再生光での反射率が円偏光入射時には、
単層で45〜85%、
多層で18〜30% (9)
650nmの再生光での反射率が非円偏光(直線偏光)入射時には、
単層で60〜85%、
多層で18〜30% (10)
の範囲内になることを規定している。
【0082】
従って本実施例の情報記憶媒体に対しても650nmの再生光に対する反射率が45〜85%(多層の場合には18〜30%)の範囲内に入るように記録膜設計を行っている。
【0083】
具体的には本実施例では上記大きな光反射率を得るために図2に示した光反射層102の材料としてAgBiを使用したことに特徴がある。
【0084】
本発明はそれに限らず光反射層102の材料として銀合金または銀単体を使用しても良い。
【0085】
また、現行のDVD−ROMディスクの規格上での記録マーク105からの再生信号の変調度に関しては、
“0レベル”から見た場合の最も再生信号が大きく出る時の値I14Hと、
最も再生信号が小さくなるところでの値I14Lに対し、
(I14H−I14L)/I14H≧0.60 (11)
を満足するように規定しているので、本実施例でも上記(9)式〜(11)式を満足するように、記録膜特性を工夫している。
【0086】
本実施例での記録層103で使用される有機色素記録材料の光吸収スペクトルを図7に示す。なお、図7において、曲線Iは、記録前の有機色素材料の吸収(吸光度)を、曲線J(点線)は、記録後の有機色素材料の吸収(吸光度)を、それぞれ示している。
【0087】
本実施例では405nm記録光で記録される有機記録材料と記録マーク105のところで650nm再生光により光反射量が変化する有機記録材料を混合した(組み合わせた)ことに大きな特徴がある。
【0088】
本実施例で使用され、405nm記録光で記録される有機記録材料としては、本件出願人による特許願2005−024303で示したL→H形(記録された部分(記録マーク)内で非記録部分より反射率が上がる)記録材料を使用している。
【0089】
特許願2005−024303で説明したように、405nm記録光で記録される有機記録材料の最大吸収波長λmax writeの値を記録光の波長である405nmよりも大きな値に設定することで、再生時の劣化防止や長期保存安定性を確保していることに特徴がある。
【0090】
図7で示すように本実施例で使用される記録材料は405nmの波長光に対して記録前に比べて記録後の吸光度が低下する。
【0091】
405nmの光は図2において透明基板101側から入射し、記録層103を経て光反射層102で反射後に再度記録層103を経て戻ってくる。
【0092】
この光路途中で記録マーク105内での光吸収が低下するため戻ってくる反射光量が他の部分(反射光量がL:Low)より増加(反射光量がH:High)する。
【0093】
この時、記録マーク105の中では穴が開くのでは無く、特許願2005−024303で記述したように分子配列変化または微小な分子構造変化により分子内の電子軌道変化が生じて光学特性が変化している。
【0094】
本実施例における具体的な有機記録材料は、中心金属としてCo(コバルト)を用いたアゾCo錯体アニオン(アゾ金属錯体の一種)に、高感度化を目指して金属錯体になっていないアゾ色素を10%添加した材料にヘミシアニンカチオンを組み合わせた。
【0095】
本実施例ではそれに限らず、アゾCo錯体アニオンに対してアゾ色素を10%添加した材料に、モノメチンシアニンカチオンを組み合わせた材料でも良い。
【0096】
さらに他の応用例としては、アゾCo錯体アニオンに対してアゾ色素を10%添加した材料にスチリルカチオンを組み合わせても良く、他には中心金属として銅Cuを使用したアゾCu錯体単体または中心金属としてニッケルNiを使用したアゾNi錯体単体を使用しても良い。
【0097】
また650nm再生光により光反射量が変化する有機記録材料として本件出願人による特許願2005−116466で説明された材料を使用しても良い。
【0098】
さらに本実施例では650nm再生光により光反射量が変化する有機記録材料の分子レベルでの熱構造変化温度または分解温度を405nm記録光で記録される有機記録材料に合わせることで記録/再生特性を安定化させたことに特徴がある。
【0099】
記録マーク105形成時に405nm記録光で記録される有機記録材料の温度が上昇し分子配列変化または微小な分子構造変化が起きるが、この時の温度上昇に対応して650nm再生光により光反射量が変化する有機記録材料内でも分子配列変化または微小な分子構造変化が生じることで650nm再生光に対しても記録マーク105内での光反射量が変化する原理を発生させる。
【0100】
具体的には前述した405nm記録光で記録される有機記録材料の分解温度が摂氏230〜250度なので、650nm再生光により光反射量が変化する有機記録材料もそれに合わせている。
【0101】
650nm再生光により光反射量が変化する有機記録材料として具体的には本実施例ではペンタメチンシアニンカチオンにアゾCo錯体アニオンを組み合わせている。
【0102】
またそれに限らずアゾCu錯体単体でも良い。
【0103】
上述した記録材料を使用した場合には650nm波長光に対しても記録前に比べて記録後で吸光度が低下するL→H形記録材料になっている。
【0104】
また図7に示すように650nm再生光により光反射量が変化する有機記録材料の最大吸収波長λmax readの値を、再生光波長である650nmよりも長波長側に設定することでL→H形記録特性での記録マーク105からの再生信号振幅の増大化を図っていることに特徴がある。
【0105】
現行DVD−ROMディスクでは、記録ピットの部分で光反射量が低下するので(H→L形)、互換性を取るためには、記録マーク105形成後に、ファイナライズ処理として本実施例ではランド109上での記録処理を行う。
【0106】
またそれに限らず、情報記憶媒体作成直後に工場内で出荷前の特性検査の一環として、ランド109上の記録を行っても良い。
【0107】
本実施例では405nm記録光で記録される有機記録材料よりも650nm再生光により光反射量が変化する有機記録材料の混合比(重量比率)を大きくすることで650nm再生光による記録マーク105からの再生信号振幅を大きく取れるようにしたことに技術的特徴がある。
【0108】
本実施例では最低でも405nm記録光で記録される有機記録材料よりも650nm再生光により光反射量が変化する有機記録材料の混合比(重量比率)を大きくしているが、
[650nm再生光により光反射量が変化する有機記録材料の混合比]:[405nm記録光で記録される有機記録材料の混合比]
の値が7:3の時が最も良好な記録/再生特性が得られている。
【0109】
また本実施例ではそれに限らず上記の値を9:1にしても良い。
【0110】
図7に示した光吸収スペクトルを有するL→H形有機色素材料の屈折率特性を図8に示す。なお、図8において、曲線Kは、記録前の有機色素材料の屈折率を、曲線L(点線)は、記録後の有機色素材料の屈折率を、それぞれ示している。
【0111】
650nm波長光に対して記録前と記録後で屈折率が変化していることが分かる。
【0112】
(11)式に示すような大きな再生信号変調度を得るため、本実施例では図7に示す吸光度変化だけで無く屈折率変化を利用した干渉現象も利用している。
【0113】
図2において650nmの再生光を光反射層102と記録層103の界面だけで無く、記録層103と透明基板101との間の界面でも反射させると共に両者の反射光間の位相を大きくずらすことで互いに干渉させてトータルの反射光量を低下させる。
【0114】
記録マーク105の中では図8に示すように屈折率が低下するために反射光間の位相のずれ量が減少する結果、トータルの反射光量を増大させる。
【0115】
本実施例では上記効果を発揮するためにプリグルーブ107内での記録層103の厚みDgを最適化させている。
【0116】
条件を変えて実験した結果、プリグルーブ107内での記録層103の厚みDgは60nmが最も記録マーク105からの検出信号振幅が大きく取れ、30〜90nmの範囲が適性であることが分かった。
【0117】
本実施例では上記記録層103材料に合わせてプリグルーブ107やランドプリピット108の形状や寸法を最適化していることに技術的な特徴がある。
【0118】
本実施例ではスピナコーティングにより記録層103を形成するため、図2に示すようにランド109内での記録層103の厚さDlがプリグルーブ107内での記録層103の厚さDgより薄くなっている。
【0119】
従って(8)式の条件と上述したDgの範囲の両方を満足するための透明基板101上でのプリグルーブ107の深さ(段差)Hgは20〜33nmの範囲内に設定している。
【0120】
実験結果によると透明基板101上でのプリグルーブ107の深さ(段差)Hgを15nm以下にすると記録層103の厚みDgを大きく取れず、記録マーク105からの再生信号振幅が小さくなることが分かった。
【0121】
また、先行技術の問題点で指摘したように再生時のプリグルーブ107からのDCレベルが低下すると記録マークからの再生信号振幅が低下すると言う問題が生じていた。
【0122】
上記問題を解決するため、本実施例ではプリグルーブ107の幅Wgcを250〜380に設定している。
【0123】
本実施例では図示して無いがプリグルーブ107をウォブルさせて回転同期や信号同期を取り易くしている。
【0124】
このウォブル振幅値も大き過ぎると記録マーク105からの再生信号特性に悪影響を与える。
【0125】
本実施例では、ウォブル振幅を15nmp−p以下(5nmp−pが最も適性)に設定し、記録マーク105からの再生信号特性を良好に保っている(再生信号の特性を安定化している)。
【0126】
また、先行技術の問題点で指摘したようにランドプリピット108からのクロストーク信号混入が記録マーク105からの再生信号特性に悪影響を及ぼす。
【0127】
従って、本実施例ではランドプリピット108からのクロストーク信号混入を低減するためのランドプリピット108の形状と寸法に対する技術的な工夫を行っている。
【0128】
図1及び図10(a)に示すように、現行のDVDディスクでは、ランドプリピット108が凹凸のピット形状で形成されていた。
【0129】
この場合にはピットの境界部での信号変化(揺り戻しを含む)が大きいため、クロストークの影響が大きかった。
【0130】
それに対して本実施例では図10(b)に示すようにプリグルーブ107の一部を蛇行させてランドプリピット108を形成させる。
【0131】
その結果、ランドプリピット108前後での信号変化量を適性に制御させて記録マーク105からの再生信号特性を良好に保つことが可能となる。
【0132】
本実施例ではランドプリピット108でのプリグルーブ107の蛇行長さLpcを400nm、蛇行振幅Wpcを300nmにしている。
【0133】
本発明における記録層103に使用される有機系記録材料の他の実施例を用いた場合の光吸収スペクトルを図9に示す。なお、図9において、曲線Mは、記録前の有機色素材料の吸収(吸光度)を、曲線N(点線)は、記録後の有機色素材料の吸収(吸光度)を、それぞれ示している。
【0134】
405nm記録光で記録される有機記録材料としては前述したH→L形記録材料を使用し、650nm再生光により光反射量が変化する有機記録材料として記録場所で黒化する感熱色素材料を使用している。
【0135】
前記感熱色素材料を使用することで650nm再生光の波長で記録後には吸光度が大幅に増加し、再生光の反射光量を低下させるH→L形の記録材料になっている。
【0136】
図9に示す他の実施例では記録後における650nm再生光により光反射量が変化する有機記録材料の最大吸収波長λmax readの値を再生光波長である650nmよりも小さく設定することで、記録前後の吸光度変化量を増大させ(11)式の条件を満足させている特徴がある。
【0137】
本発明における情報記憶媒体は図15に示すように映像情報のネットワーク配信に利用される。映像情報配信システムは暗号鍵発行会社2、小売店5、エンドユーザ6、DVDライセンス会社7、エージェント会社8、情報記憶媒体の製造会社9、特定情報の制作会社54からなる。小売店5は情報記録装置55を有する。
【0138】
特定情報の制作会社(コンテンツプロバイダ)54からネットワークを経由して転送された暗号化された特定情報42(映像コンテンツ11)は、小売店(service anchor)5内での情報(複製)記録装置55内で405nm記録光を用いて情報記憶媒体10内に記録される。
【0139】
このように記録された情報記憶媒体10がエンドユーザ6に販売され、エンドユーザ6は、650nmの再生光を用いて特定情報42(映像コンテンツ11)を再生する。
【0140】
本発明では、情報記憶媒体の使用方法として下記の2方法を想定する。
【0141】
一方の方法は、図15に示すように特定情報の制作会社54から暗号化された特定情報45(映像コンテンツ11)を小売店5に対してネットワーク配信し、小売店5内で情報記憶媒体10に記録する方法でMOD(Manufacturing On Demand)と呼ぶ。
【0142】
また、他方の方法は、特定情報の制作会社54から直接エンドユーザ6にネットワーク配信し、エンドユーザ6が所有している記録装置内で405nm記録光を用いて情報記憶媒体10に記録する方法で、EST(Electric Sell Through)と呼ぶ。
【0143】
本実施例の情報記憶媒体におけるマクロ的な構造を図11に示す。 本実施例においてリードイン領域LDI内は情報記憶媒体形成後に405nm記録光により記録マーク105を形成することで情報の記録を行う。
【0144】
図12は本実施例の情報記憶媒体のデータ構造を示す図である。図12(a)に示すように、内周側からディスクテストゾーンDKTZ(図示せず)、バーストカッティング領域BCA(図示せず)、リードイン領域LDI、データ領域DTA、リードアウト領域(図示せず)が配置された構造になっている。リードイン領域LDI内は従来の再生専用形及び書替え型情報記憶媒体ではエンボス(プリピット)の形で、従来の追記型情報媒体ではエンボスあるいはプリレコード(工場内での記録)の形で記録されているのに対し、本実施例の追記形および書替え形情報記憶媒体ではリードイン領域LDI内は記録マーク形成による新規情報の追記(書替え形では書替え)が可能な領域となっている。
【0145】
リードイン領域LDIは内周側からイニシャルゾーンINZ、バッファゾーン1 BFZ1、リファレンスコードゾーンRCZ、制御データゾーンCDZ、バッファゾーン2 BFZ2を含む。
【0146】
イニシャルゾーンINZはリードインLDIの開始位置を示している。イニシャルゾーンINZ内に記録されている意味を持った情報としては、物理セクタ番号が離散的に配置されている。1個の物理セクタ内にはデータID、IED(ID Error Detection code)、ユーザ情報を記録するメインデータ、EDC(Error Detection Code)から構成されるデータフレーム構造の情報が記録されるが、イニシャルゾーンINZ内にも上記のデータフレーム構造の情報が記録される。しかしイニシャルゾーンINZ内ではユーザ情報を記録するメインデータの情報を全て“00h”に設定するため、イニシャルゾーンINZ内での意味の有る情報は前述したデータID情報のみとなる。この中に記録されている物理セクタ番号の情報から現在位置を知る事ができる。すなわち、情報記憶媒体からの情報再生を開始する時にイニシャルゾーンINZ内の情報から再生開始した場合には、まずデータID情報の中に記録されている物理セクタ番号または論理セクタ番号の情報を抽出して情報記憶媒体内の現在位置を確認しつつ制御データゾーンCDZへ移動する。
【0147】
バッファゾーン1 BFZ1は30ECCブロック、バッファゾーン2 BFZ2は32ECCブロックから構成されている。バッファゾーン1 BFZ1及びバッファゾーン2 BFZ2内もイニシャルゾーンINZと同様にメインデータの情報を全て“00h”に設定している。
【0148】
バッファゾーン1の前には、参照コード記録ゾーン RCZがあり、2ECCブロックから構成されている。ここには、再生装置の再生回路調整用に用いられる領域で、特殊な信号パターンが記録されている。
【0149】
ディスクテストゾーンDKTZは情報記憶媒体の製造メーカーが品質テスト(評価)を行うために設けられた領域である。
【0150】
ドライブテストゾーンDRTZは情報記録再生装置が情報記憶媒体への情報を記録する前に試し書きするための領域として確保されている。情報記録再生装置は予めこの領域内で試し書きを行い、最適な記録条件(ライトストラテジ)を割り出した後、その最適記録条件でデータ領域DTA内に情報を記録する事が出来る。
【0151】
図12(c)に示すように、媒体関連情報DMIは媒体メーカ情報252、その他情報253を含む。
【0152】
この情報ゾーンの配置は、従来の再生専用型とまったく同じ配置であり、これによって、従来の再生専用機器での再生互換性が向上する。
【0153】
従来の追記型ディスクであるDVD−Rや、書替え型ディスクであるDVD−RWでは、イニシャルゾーンの後ろがバッファーゾーンと、制御データゾーンCDZとよく似た内容のR物理情報ゾーンPIZになっているほか、バッファーゾーン2の代わりに、特別なボーダーゾーンという、情報エリアになっているという違いがある。
【0154】
物理フォーマット情報PFIは2048バイトの情報であり、記録場所(先頭からの相対的なバイト位置)により記録される情報の種類が規定されている。すなわち、バイト位置BP0〜BP31はDVDファミリー内の共通情報261を、バイト位置BP32〜BP2047は規格毎の固有情報を格納する。バイト位置BP32〜BP511は規格毎固有領域であり、バイト位置BP511に媒体識別情報(Disc Identifier)262を格納する。バイト位置BP512〜BP2047はバイト位置511毎の固有領域であり、各規格書のタイプとバージョンの固有情報263と、ライトストラテジ情報264を格納する。
【0155】
このように情報内容により物理フォーマット情報内の情報配置位置を共通化する事で媒体の種類に依らず記録されている情報の場所が共通化されているので、情報再生装置あるいは情報記録再生装置の再生処理の共通化と簡素化が図れる。
【0156】
図12(d)に示すように、DVDファミリー内の共通情報261はバイト位置BP0〜BP16に再生専用形、書替え形、追記形の全てに共通に記録してある情報267を、バイト位置BP17〜BP31に書替え形と追記形に共通に記録してある(再生専用形では記録していない)情報268を記録する。
【0157】
図13は図12に示した物理フォーマット情報PFIの具体的な情報内容と物理フォーマット情報PFI内情報の媒体種類(再生専用形か書替え形か追記形か)による比較を示す。
【0158】
DVDファミリー内の共通情報261内の再生専用形、書替え形、追記形の全てに共通に記録して有る情報267としてはバイト位置BP0〜BP16までに順次に規格書のタイプ(再生専用/書替え/追記)情報(上位4ビット)とバージョン番号情報(下位4ビット)、媒体サイズ(直径)と最大可能データ転送レート情報、媒体構造(単層か2層か、エンボスピット/追記領域/書き替え領域の有無)、記録密度(線密度とトラック密度)情報、データ領域DTAの配置場所情報、バーストカッティング領域BCAの有無情報(本実施形態は全て有り)が記録されている。
【0159】
ブックタイプはDVDフォーラムの規格書毎に割当てられ、例えば、0000bが再生専用(ROM)規格とCSS(Content Scramble System)管理記録ディスクの追記規格に、0001bが書替え(RAM)規格に、0010bが追記(R)規格に、0011bが再記録(RW)規格に割り当てられ、他はリザーブされる。バイト位置BP0の下位4ビットにはDVDフォーラムの規格書のバージョン毎に割当てられ予め決められたコードを示すパートバージョンが記憶される。
【0160】
DVDファミリー内の共通情報261で有り、従来の書替え形と追記形に共通に記録して有る情報268として、17バイト目から27バイト目まで順次最高記録速度を規定したリビジョン番号情報、最高記録速度を規定したリビジョン番号情報、リビジョン番号テーブル(応用リビジョン番号)、クラス状態情報、拡張された(パート)バージョン情報が記録されている。バイト位置BP28〜BP31まではリザーブ領域とされる。
【0161】
本実施例のディスクは、再生装置に対して再生専用型ディスクと認識されるため、実際には追記型あるいは書替え型であっても、バイト位置BP0の上位4ビットは0000bと再生専用(ROM)規格を表す値が記録され、以下バイト位置BP16まで、再生専用ディスクと同様の値が記録され、バイト位置BP17〜BP31は、再生専用型と同じく、リザーブ領域とされる。
次に、各規格書のタイプ毎の固有情報と、固有情報のバイト位置BP511の識別情報(Disc Identifierあるいはpage descriptor)262の値毎に固有に設定できる情報内容263の意味について説明する。バイト位置BP32〜BP511までの各規格書のタイプ毎の固有情報はバイト位置BP0に記録されている規格書のタイプとバージョン番号情報によって定義が定められる。バイト位置BP511の識別情報(Disc Identifier)262の値毎に固有に設定できるバイト位置BP512〜BP2047までの情報内容263はタイプが異なる書替え形情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体との違いのみならず同じ種類の媒体においても識別情報(Disc Identifier)262の値が異なると各バイト位置での記録情報内容の意味が異なる事を許容する。従来の再生専用ディスクにおいてはバイト位置BP511〜BP2047まではリザーブ領域であったため、これらの領域は従来機器は無視する設計になっているため、記録済みのディスクを従来の機器で再生する場合に障害とならない。
【0162】
バイト位置BP511に識別情報(Disc Identifier)262が格納され、バイト位置BP32〜BP510まではリザーブ領域である。識別情報(Disc Identifier)262は上位4ビットがディスクインジケータ(Disc Indicator)、下位4ビットがリビジョン番号のメジャー桁を格納する。ディスクインジケータ(Disc Indicator)は0100bが本発明の一実施例であるCSS管理記録ディスクのDVD−Rディスクに割当てられ、他はリザーブされている。リビジョン番号のメジャー桁はランドプリピット(LPP)に記録されているリビジョン番号の上記桁のデータがコピーされ、0001bがリビジョン1.xに割り当てられ、他はリザーブされている。リビジョン番号のメジャー桁はリビジョン番号x.yの桁xのバイナリ表記であるので、リビジョン番号のメジャー桁が瞬時に判別できるとともに、メジャー桁が変更になっても対応機器は記録することが出来るし、非対応機器は明確に対応していないこと判断できる。例えば、物理フォーマットを変更してリビジョン番号が2.0となった場合、0010bとなる。これらにより、記録装置または再生装置のディスク判別が高速かつ容易に行え、記録/再生処理の簡素化と安定化を保証できる。
【0163】
識別情報262の値毎に固有に設定できる情報内容263としては405nm記録光を用いて情報記憶媒体に記録する時の各種の記録条件(ライトストラテジ)情報264に先立つ位置に媒体製造メーカー名情報、媒体製造メーカーからの付加情報、記録マークの極性(“H→L”か“L→H”かの識別)情報、記録時もしくは再生時の線速度情報、円周方向に沿った光学系のリムインテンシティ値、半径方向に沿った光学系のリムインテンシティ値、再生時の推奨レーザパワー(記録面上の光量値)がバイト位置BP512〜BP579に記録される。
【0164】
バイト位置BP575の記録マークの極性(“H→L”か“L→H”かの識別)情報(Mark Polarity Descriptor)を持たせた所に本実施形態の特徴が有る。従来の書替え形あるいは追記形DVDディスクでは未記録状態(反射レベルが相対的に高い:High)に対して記録マーク内の光反射量が低下(Low)する“H→L”(High to Low)記録膜しか認めていなかった。それに対して“高速記録対応”や“低価格化”あるいは物理的な性能として“クロスイレーズの減少”や“書き替え回数上限値の増加”などの要求が媒体に対して出されると、従来の“H→L”記録膜だけでは対応し切れないと言う問題が生じる。これに対して、本実施形態では“H→L”記録膜だけで無く、記録マーク内で光反射量が増加する“L→H”記録膜の使用まで許容するため、従来の“H→L”だけで無く“L→H”記録膜も規格内に組み込み、記録膜の選択範囲を広げることで高速記録可能や低価格媒体を供給できると言う効果が生じる。
【0165】
バイト位置BP577、BP578に円周方向に沿った光学系のリムインテンシティ値と半径方向に沿った光学系のリムインテンシティ値の情報が配置されている所に本実施形態の特徴が有る。これらの情報は後ろ側に配置される記録条件を割り出す時に使用した光学ヘッドの光学系の条件情報を意味している。リムインテンシティとは情報記憶媒体の記録面上に集光する前に対物レンズに入射する入射光の分布状況を意味し、
『入射光強度分布の中心強度を“1”とした時の対物レンズ周辺位置(瞳面外周位置)での強度値』
で定義される。対物レンズへの入射光強度分布は点対称ではなく、楕円分布をし、情報記憶媒体の半径方向と円周方向でリムインテンシティ値が異なるので2通りの値が記録される。リムインテンシティ値が大きいほど情報記憶媒体の記録面上での集光スポットサイズが小さくなるので、このリムインテンシティ値により最適な記録パワー条件が大きく変わる。情報記録再生装置は自分が持っている光学ヘッドのリムインテンシティ値情報を事前に知っているので、まず情報記憶媒体内に記録されている円周方向と半径方向に沿った光学系のリムインテンシティ値を読み取り、自分が持っている光学ヘッドの値と比較する。比較した結果に大きな違いが無ければ後ろ側に記録されている記録条件を適用できるが、比較した結果で大きな食い違いが有れば後ろ側に記録されている記録条件を無視し、図12に示したドライブテストゾーンDRTZを利用して記録再生装置自ら試し書きをしながら最適な記録条件の割り出しを始める必要が有る。
【0166】
このように後ろ側に記録されている記録条件を利用するか、その情報を無視して自ら試し書きをしながら最適な記録条件の割り出しを始めるかの判断を早急に行う必要が有る。表8に示すように推奨される記録条件が記録されている位置に対する先行位置にその条件を割り出した光学系の条件情報を配置する事で、まず始めにそのリムインテンシティ情報を読み取る事が出来、後に配置される記録条件の適合可否を高速に判定出来ると言う効果が有る。
【0167】
さらに、識別情報262の値毎に固有に設定できる情報内容263は記録条件(ライトストラテジ)情報264として、バイト位置BP601〜BP608に、ピークパワー、バイアスパワー1、バイアスパワー2、バイアスパワー3等が記憶されている。
【0168】
ところで、従来は、大きく規格の内容が変更になった時にバージョンを変更させる規格書(バージョンブック)と記録速度など小変更に対応してリビジョンを変更して発行するリビジョンブックに分け、記録速度が向上する毎にリビジョンのみを更新したリビジョンブックのみを発行できるようにしている。従来は、バイト位置BP0に、追記型や書替え型ディスク表す値と、そのバージョン番号が記録されるとともに、前述のようにバイト位置17から28においても、関係するリビジョンブックのリビジョン番号を記録されていた。これによって、再生、および記録機器は違うバージョンブック、リビジョンブックでも混乱なく扱うことができた。
【0169】
ところが本ディスクでは、追記型あるいは書替え型にもかかわらず、バイト位置BP0が再生専用ディスクであるDVD−ROMを示す値が記録されている。 またバイト位置31までも再生専用ディスクのそれと同じ内容になっている。したがって、バイト位置BP32以降のDVD−ROMではリザーブしている場所に新しいディスクの識別情報を設ける必要がある。また、記録時に必要な物理パラメータ(ライトストラテジの値)や、このディスクに固有な各種情報を記録する必要もある。そのため、前述の実施例では、識別情報262や、情報内容263をバイト位置511以降に記録しているしかしながら、バイト位置BP32移行の領域はブックタイプとそのブックのパートバージョン毎に定義される固有の領域であること、また、今後他の用途に使う可能性に備えて、リザーブ領域を確保することが望ましい。したがって、リザーブ領域を単純に新用途に使ってしまうと、他の用途に使えなくなってしまうため、避ける必要がある。そのため、記録ディスクであることを示す識別子(ディスクインジケータ)として、4ビットの情報を定義する。また、そのディスクの記録規格の版を示す情報として、8ビットのリビジョン番号を定義する。リビジョン番号はメジャー桁(上位4ビット)と、マイナー桁(下位4ビット)に分けて使う。上位4ビットは、互換性がなくなる変更を行う場合に変更する。下位4ビットは、互換性はあるものの、あらたな機能が追加された場合に変更する。
【0170】
このようにした上で、識別子(ディスクインジケータ)4ビットと、リビジョン番号の上位4ビットの合計1バイトを識別情報(Disc identifier)262として、例えばバイト位置B511に記録し、この情報の値毎にバイト位置BP512〜BP2047が定義される。こうすることによって、識別子(Disc indicator)あるいはリビジョン番号のメジャー桁が変更された場合に、バイト位置BP511〜BP2048の情報内容263を新たに定義することができる。
【0171】
識別情報(Disc identifier)262の値毎の固有領域263の定義は任意であり、一例としてランドプリピットに記録されている情報のコピーや、ライトストラテジ情報を記録する。ランドプリピットの情報は、一般に制御データゾーンの情報に比べて読みにくかったり、記録後に信号品質が落ちたり、記録用の光ヘッドでなければ読めないという特性がある。したがって、ここにランドプリピットの情報のコピーを記録することによって、ランドプリピットに記録されているディスクメーカーや、ディスクメーカーのつけたディスク型番の識別情報を、記録後でも安定して読めることができるようになる。これによって、例えば、品質問題が発生したときの原因究明が容易になる。
【0172】
また、DVD−ROMにおいては、この識別情報262の値はゼロであるため、将来未知の用途で、領域が必要になった場合にも、バイト位置BP512〜BP2047が利用できる。未記録ディスクの新しい仕様ができた場合は、識別情報262の下位4ビットであるリビジョン番号のメジャー桁を変更することで対処できる。
【0173】
また、まったく別の用途にバイト位置BP512〜BP2047を使いたい場合には、識別情報262の上位4ビットであるディスクインジケータを変更することで対処できる。
【0174】
ディスクインジケータとリビジョン番号のメジャー桁が同じバイト位置にあるため、記録再生装置が識別するのも簡単になり、判断のミスが発生しにくくなるメリットもある。
【0175】
なお、リビジョン番号の下位4ビットであるマイナー桁は、バイト位置BP512〜BP2047内に記録すればよい。なぜならば、この下位4ビットは、既存の定義を変更する必要がない場合に変更される桁であるため、識別情報(Disc Identifier)262の中に入れる必要がなく、また、識別情報(Disc Identifier)262のリビジョン番号のメジャー桁毎に独自に設定される値であるため、領域263の外に設定する必要はないからである。こうすることによって、既存の定義を変更しない互換性を失わない小変更、例えば従来の機能はそのままで、新たな機能が追加された場合は、リビジョン番号のマイナー桁を変更することによって識別させることができる。
【0176】
また、ESTや、MODの区別は、未記録ディスクの物理特性が同じであれば、識別情報(Disc Identifier)262で識別する必要はなく、必要があれば、領域263内に、判別可能な情報を設ければよい。
【0177】
図15または図16に示すように、情報記憶媒体の製造会社9からブランク状態の情報記憶媒体10が販売される。
【0178】
本実施例においてはMODとして使用される場合にはブランク状態の情報記憶媒体10内には図12に示すリードインLDI内の情報(制御データゾーンCDZ内の物理フォーマット情報PFIを含む)が未記録な状態で情報記憶媒体の製造会社9から小売店5に販売される。
【0179】
この方法では情報記憶媒体の製造会社9内では情報記憶媒体10内にリードインLDI内の情報(制御データゾーンCDZ内の物理フォーマット情報PFIを含む)を記録するコストが掛からないので、小売店5に対して安価にブランク状態20の情報記憶媒体10を売ることができる。
【0180】
MODの場合には405nm記録光を用いて記録する時の記録条件(ライトストラテジ)はランドプリピット108内に予め記録されている。
【0181】
MODの場合にはランドプリピット108に予め記録された情報に対する再生性能の優れた情報(複製)記録装置55を使用しているため、ランドプリピット108からの情報再生安定性が確保されている。 それに比べてESTで使用される場合にはリードインが情報記憶媒体の製造会社9内で記録されるため、エンドユーザ6が所有する記録装置では、リードインLDIに存在するランドプリピット108からの情報再生安定性が保証できない。
【0182】
そのため本実施例ではブランク状態20の情報記憶媒体10として405nm記録光を用いて記録する時の記録条件(ライトストラテジ)が記載された物理フォーマット情報PFIを含む制御データゾーンCDZ(とそれを包括するリードイン領域LDI)の情報を記録して販売する。
【0183】
405nm記録光を用いて記録された情報(記録マーク105)からの再生信頼性が高いので、本実施例によればESTで使用する時の記録条件(ライトストラテジ)情報の獲得信頼性が大幅に向上する。
【0184】
あるいは、DVD−ROMとして新規なコピープロテクションのための、鍵情報を記録する必要が生じた場合、PGDとして、まったく未定義の値を使えば領域264に、鍵情報を記録できる。
【0185】
図13に示すように識別情報の値毎に固有に設定できる情報内容264の領域内のバイト位置BP601以降に405nm記録光を用いて記録する時の記録条件(ライトストラテジ)が記録可能になっている。
【0186】
現行の追記形のDVD−Rディスクではここの領域内に650nm波長光で記録する時の記録条件(ライトストラテジ)を記録可能にすることで、情報記憶媒体の種別毎に異なる記録条件(ライトストラテジ)を同じ領域内に記録可能となり物理フォーマット情報PFI内の領域内の有効利用をすることが可能となる。
【0187】
現行のDVD−Videoディスクに記録される情報内容とその作成場所について、図14を用いて説明する。
【0188】
現行のDVD−Videoディスクでは映像情報の不正コピーを防止する機能として、CSS(Content Scramble System)方式を用いた暗号化処理がなされている。
【0189】
コンテンツ制作会社(スタジオ)1が作成した映像コンテンツ11は、テープを媒体として、あるいはネットワーク転送により、ディスク複製会社(レプリケータ)4に配信される。
【0190】
映像コンテンツ11に対する不正コピーを防止する場合には、この配信された映像コンテンツ11そのものがDVDビデオディスク3内に記録するのでは無く、映像コンテンツ11をタイトル鍵12により暗号化した暗号化された映像コンテンツ14がDVDビデオディスク3の中に記録される。
【0191】
この暗号化処理は、ディスク複製会社(レプリケータ)4内に存在する映像コンテンツ暗号器22内で行われると共に、暗号化に使用されるタイトル鍵12もディスク複製会社(レプリケータ)4内に存在するタイトル鍵生成部21内で発行される。
【0192】
またディスク複製会社(レプリケータ)4は有料で(鍵代金17を支払って)暗号鍵発行会社であるCSSエンティティー2からディスク鍵情報15と暗号化されたディスク鍵群16の情報をもらい、この暗号化されたディスク鍵群16の情報をDVDビデオディスク3内に記録する。
【0193】
さらにCSSエンティティー2からもらったディスク鍵15の情報を利用してタイトル鍵12を暗号化し、暗号化されたタイトル鍵13も同じくDVDビデオディスク3内に記録する。
【0194】
現行におけるDVD−Videoディスクでは暗号化されたディスク鍵群16をリードイン領域内(図11におけるリードイン領域LDI内の図12(a)に示した制御データーゾーンCDZ内)に記録すると共に、暗号化されたタイトル鍵13に関する情報はDVDビデオディスク3の基本記録単位である物理セクター内の特定場所内に分散配置記録される。
【0195】
またディスク複製会社(レプリケータ)4はDVDビデオディスク3を製造する毎にDVDライセンス会社7に対してDVDライセンス料19を支払い、DVDビデオディスク製造許諾権18を得ている。
【0196】
このように暗号化されたディスク鍵群16と暗号化されたタイトル鍵13、暗号化された映像コンテンツ14が記録されているDVDビデオディスク3をエンドユーザ6は購入代金35を払って購入する。
【0197】
エンドユーザ6が所有している再生装置であるDVDプレーヤでは図示して無いが、マスタ鍵を使ってディスク鍵の暗号解読を行い、解読されたディスク鍵を利用して生成(暗号解読)されたタイトル鍵12を利用して暗号化された映像コンテンツ14を非暗号状態の映像コンテンツ11に戻して再生表示する。
【0198】
現行のDVDビデオディスク3では上記暗号化されたディスク鍵群16と暗号化されたタイトル鍵13、暗号化された映像コンテンツ14が微細な凹凸形状を有するピットとして記録されているのに対し、本実施例では波長λwの記録光により形成された記録マーク105の形で情報記憶媒体10内に記録されると共に映像コンテンツ11に関係する情報である暗号化された特定情報45(暗号化された映像コンテンツ14)とCSS方式に関係する暗号化関連情報がネットワーク配信されることに大きな特徴がある。
【0199】
現行の追記形情報記憶媒体であるDVD−Rディスクでは不正コピー防止のための暗号化方式としてCPRM(Content Protection for Recordable Media)を使用するのに対して本実施例に示した情報記憶媒体10に対しては図14に示したCSSに関連した情報を記録することに情報記憶媒体としての大きな特徴がある。
【0200】
すなわち、波長λwの記録光により情報が記録された後の本実施例に対応した情報記憶媒体は、凹凸形状を有するピットでは無く記録マーク105が形成されているにも関わらず、あたかも図14により作成したDVD−Videoディスクであるかのように、DVDプレーヤ(再生装置)に認識させて再生を可能にする。
【0201】
従って波長λwの記録光により情報が記録された後の本実施例に対応した情報記憶媒体は上記CSSに関連した情報である暗号化されたディスク鍵群16(図12に示すリードイン領域LDI内の制御データゾーンCDZ内に記録される)と暗号化されたタイトル鍵13、暗号化された映像コンテンツ14が記録されている。
【0202】
また既存のDVDプレーヤ(再生装置)に対して再生専用のDVD−Videoディスクであるかの様に認識させるため、図12に示す制御データゾーンCDZ内の物理フォーマット情報PFI内で“再生専用媒体(DVD−ROMディスク)”であると明示することにも本実施例の特徴がある。
【0203】
これにより、DVDプレーヤ(再生装置)に一切の負担をかけることなく、安定に本発明実施例で示した情報記憶媒体10内に記録された情報を再生させることが可能となる。
【0204】
具体的には本実施例においては図13のバイト位置BP0に記録される“規格書のタイプ情報とバージョン番号情報”で規格書タイプを“0000b”と設定してDVD−ROM規格書と指定する。
【0205】
規格書タイプをこのように指定したとしても、図13に示したバイト位置511の識別情報262を使うことで本実施例の情報記憶媒体か本物のDVD−ROMディスクかの識別は可能である。
【0206】
さらに、図13のバイト位置BP2に記録される媒体構造の中でエンボスピットと追記領域や書き替え領域の有無を指定することになっているが、本実施例では“b2,b1,b0”の値を“001”としてあたかもエンボスピットのみの構造であるようにDVDプレーヤ(再生装置)に対して明示する。
【0207】
前記媒体構造の情報において、
b2=0bの場合には対応する情報記憶媒体内に書き替え可能なユーザ領域を持たないことを示し、
b2=1bの場合には対応する情報記憶媒体内に書き替え可能なユーザ領域を持つことを示す。
【0208】
また、
b1=0bの場合には対応する情報記憶媒体内に追記可能なユーザ領域を持たないことを示し、
b1=1bの場合には対応する情報記憶媒体内に追記可能なユーザ領域を持つことを示す。
【0209】
さらに、
b0=0bの場合には対応する情報記憶媒体内にエンボスピットが形成されているユーザ領域を持たず、
b0=1bの場合には対応する情報記憶媒体内にエンボスピットが形成されているユーザ領域を持つ
ことを意味する。
【0210】
上述したMOD方法に使用される情報記憶媒体10は図15または図16に示すように小売店5内に設置された情報(複製)記録装置55により暗号化されたディスク鍵群16と暗号化されたタイトル鍵13、暗号化された映像コンテンツ14が記録され、EST方法に使用される情報記憶媒体は情報記憶媒体の製造会社9が暗号化されたディスク鍵群16を記録し、エンドユーザ6が所有している記録装置により暗号化されたタイトル鍵13、暗号化された映像コンテンツ14が記録される。
【0211】
いずれにしても、本実施例においては、CSS関連情報と映像コンテンツ14等の特定情報に関連する情報がネットワーク経由で記録装置に対して配信される。
【0212】
このようにネットワーク経由で配信される途中で映像コンテンツ14等の特定情報が不正コピーされたり、CSSに関連した各種鍵情報が盗まれることで情報記憶媒体10内に記録された暗号化された特定情報42(暗号化された映像コンテンツ14)の暗号解読が不正になされて不正コピーされる危険性が高くなる。
【0213】
この問題を解消するために本実施例では映像コンテンツ14等の特定情報とCSSに関連した各種鍵情報いずれに対しても暗号化後の情報をネットワーク経由で配信させることに本実施例の大きな特徴がある。
【0214】
それにより仮にネットワーク経由で情報が漏れたとしても、漏れた情報は非暗号化状態の(プレーンな)情報では無く必ず暗号化された情報なために再利用が不可能であり不正コピーが防止されると言う効果が生まれる。
【0215】
上記の本実施例における特徴に関する詳細な説明を図15を用いて行う。
【0216】
前述したようにMOD方法に使用される情報記憶媒体10は小売店5内に設置された情報(複製)記録装置55内で記録波長λw(≠650nm)の光で記録される。
【0217】
この情報(複製)記録装置55内には通信鍵記憶部52とマスタ鍵記憶部27が存在する。
【0218】
図15では両者が異なるように記述されているが、それに限らず通信鍵記憶部52とマスタ鍵記憶部27が1個のメモリ内で兼用されていても良い。
【0219】
小売店5は、映像コンテンツ11等の特定情報の制作会社(コンテンツプロバイダ)54に対して通信鍵代金49を支払って、通信鍵44を購入する。
【0220】
この特定情報の制作会社(コンテンツプロバイダ)54はこの通信鍵を利用して映像コンテンツ11等の特定情報を暗号化し、通信鍵で暗号化された特定情報45をネットワーク経由で小売店5に対して配信する。
【0221】
また小売店5ではこの特定情報を暗号化して記録した情報記憶媒体10をエンドユーザ6に売ると、その売り上げに応じた複製許可代金47を特定情報の制作会社(コンテンツプロバイダ)54に対して支払う。
【0222】
特定情報の制作会社(コンテンツプロバイダ)54から配信された通信鍵で暗号化された特定情報45は既に配信された通信鍵44の情報を利用し、特定情報に対する復号器51内で一度は暗号解読される。
【0223】
その直後にタイトル鍵12で暗号化し、タイトル鍵で暗号化された特定情報42の形で情報記憶媒体10内に記録される。
【0224】
図14に示した現行の例では暗号鍵発行会社(CSSエンティティー)2とディスク複製会社(レプリケータ)4との間で、ディスク鍵15が転送されるが、この経路は充分にセキュリティ対策が施された環境下で転送される。それに比べ、図15に示したシステム上でのネットワーク経路は、セキュリティ対策が甘く、この経路途中でディスク鍵15が外部に漏れる危険性がある。
【0225】
そのため、図15に示した実施例では、プレーンな(非暗号化)状態のディスク鍵15の代わりに、暗号化されたタイトル鍵13がネットワークを経由して小売店5へ転送される。
【0226】
それを可能にするために、本実施例では暗号鍵発行会社(CSSエンティティー)2と小売店5との間にエージェント会社8を配置している。
【0227】
このエージェント会社8ではタイトル鍵生成部21によりタイトル毎のタイトル鍵12を発行する。
【0228】
次に充分にセキュリティ対策が施された環境下で暗号鍵発行会社(CSSエンティティー)2から転送されたディスク鍵15を用いて暗号化されたタイトル鍵13をタイトル鍵の暗号器23内で発生させて小売店5へ向けてネットワーク配信する。
【0229】
小売店5内の情報(複製)記録装置55内ではこのネットワーク配信された暗号化されたタイトル鍵13を情報記憶媒体10内にそのまま記録する。
【0230】
小売店5では情報記憶媒体10内に記録したタイトル鍵13の記録回数に応じてエージェント会社8に対して鍵代金とDVDライセンス料33を支払う。
【0231】
エージェント会社8ではこれにより集まったDVDライセンス料33をまとめてDVDライセンス会社7に支払う。
【0232】
またDVDライセンス会社7はブランク状態20の情報記憶媒体10を製造する情報記憶媒体の製造会社9に対してDVDライセンス料32を徴収する代わりに情報記憶媒体の製造許諾権31を与える。
【0233】
図15に示したエージェント会社8は図14に示したディスク複製会社(レプリケータ)4と同様に暗号鍵発行会社(CSSエンティティ)2からディスク鍵15と共に暗号化されたディスク鍵群16を受け取るが、エージェント会社8は小売店に対して暗号化されたディスク鍵群16をそのままネットワーク配信する。
【0234】
このように小売店5に対してネットワーク配信される情報は“通信鍵で暗号化された特定情報45”と“暗号化されたディスク鍵群16”、“暗号化されたタイトル鍵”と言う全て暗号化された情報なため、ネットワーク経路途中で情報が漏れたとしても不正コピーを防止することが可能となる。
【0235】
図15ではMOD方法に使用される情報記憶媒体10に対する説明を行っているが、本発明はそれに限らずEST方法に使用される情報記憶媒体10に対しても適応が可能である。
【0236】
ESTの場合にはネットワーク経由での配信先がエンドユーザ6となるが、この場合でも “通信鍵で暗号化された特定情報45”と“暗号化されたディスク鍵群16”、“暗号化されたタイトル鍵”と言う全て暗号化された情報が通信されるため、不正コピーを防止できる。
【0237】
さらにMODとESTのいずれの場合でもネットワーク配信されるCSSに関連した情報が“暗号化されたディスク鍵群16”と“暗号化されたタイトル鍵”と言う情報記憶媒体10内に記録される情報と一致しているため、情報(複製)記録装置55内の記録前段階処理が大幅に簡素化されて情報(複製)記録装置55の低価格化と処理の信頼性向上が実現できる。
【0238】
また情報(複製)記録装置55内のディスク鍵の復号器28内ではマスタ鍵記憶部27から転送されるマスタ鍵40を利用し、エージェント会社8からネットワーク配信された暗号化されたディスク鍵群16の暗号解読を行う。
【0239】
ここで得られたディスク鍵15を利用してタイトル鍵の復号器29内では同じくエージェント会社8からネットワーク配信された暗号化されたタイトル鍵13の暗号解読を行ってタイトル鍵12を生成し、このタイトル鍵12を用いて特定情報に対する暗号器41内で特定情報43の暗号化を行って情報記憶媒体10へ記録する。
【0240】
本発明の他の実施例(応用例)を図16に示す。
【0241】
図16においても情報(複製)記録装置60に対してネットワーク配信されるCSS関連情報は“暗号化されたディスク鍵群16”と“暗号化されたタイトル鍵”と言う暗号化された情報記憶媒体10に記録される情報であることは、図15に示した実施例と一致している。
【0242】
しかし図16の応用例では映像コンテンツ11をネットワーク配信される代わりに通常のDVD−Videoディスク3を配送36していることが異なる。
【0243】
図16に示した実施例では情報(複製)記録装置60内部でこのDVD−Videoディスク3内に記録されている暗号化された映像コンテンツ14の暗号解読(復号化)を行うと共にこの暗号解読後の映像コンテンツ14を再度暗号化して本発明の情報記憶媒体10に記録する。
【0244】
以上説明したように、この発明の情報記憶媒体によれば、記録マークに対する記録光と再生光とで使用波長を変え、さらに記録光に対してトラックずれ検出信号とランドプリピット検出信号が得られると同時に再生光に対してはプリグルーブやプリピットからの影響がほとんど出ないようなプリグルーブ形状と寸法およびランドプリピット形状と寸法に設定することで、より一層の記録処理と再生処理の安定化を図れる。
【0245】
なお、この発明は上述のいずれかの実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記のいずれかの実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0246】
また、上述の説明は個々の実施例それぞれについて行ったが、複数の実施例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0247】
101…透明基板、102…光反射層、103…記録層、105…記録マーク、107…プリグルーブ、108…ランドプリピット、109…ランド、262…識別情報、264…識別情報262毎に固有に設定できる情報内容。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードイン領域と、前記リードイン領域の外側に配置される第1のデータ領域を有する第1層と、
第2のデータ領域と、前記第2のデータ領域の内側に配置されるリードアウト領域とを有する第2層と、を具備し、
前記第1層の前記リードイン領域と前記第2層の前記リードアウト領域の半径方向寸法が重なり、
前記第1層の前記リードイン領域は、記録マークの極性情報を格納する領域と、媒体の種別毎のライトストラテジ情報を格納する領域とを有し、
前記ライトストラテジ情報はピークパワーと複数のバイアスパワーを含むことを特徴とする情報記憶媒体。
【請求項2】
リードイン領域と、前記リードイン領域の外側に配置される第1のデータ領域を有する第1層と、
第2のデータ領域と、前記第2のデータ領域の内側に配置されるリードアウト領域とを有する第2層と、を具備し、
前記第1層の前記リードイン領域と前記第2層の前記リードアウト領域の半径方向寸法が重なり、
前記第1層の前記リードイン領域は、記録マークの極性情報を格納する領域と、媒体の種別毎のライトストラテジ情報を格納する領域とを有し、
前記ライトストラテジ情報はピークパワーと複数のバイアスパワーを含むことを特徴とする情報記憶媒体に情報を記録する情報記録方法であって、
前記情報記憶媒体に光を照射し、情報を記録する情報記録方法。
【請求項3】
リードイン領域と、前記リードイン領域の外側に配置される第1のデータ領域を有する第1層と、
第2のデータ領域と、前記第2のデータ領域の内側に配置されるリードアウト領域とを有する第2層と、を具備し、
前記第1層の前記リードイン領域と前記第2層の前記リードアウト領域の半径方向寸法が重なり、
前記第1層の前記リードイン領域は、記録マークの極性情報を格納する領域と、媒体の種別毎のライトストラテジ情報を格納する領域とを有し、
前記ライトストラテジ情報はピークパワーと複数のバイアスパワーを含むことを特徴とする情報記憶媒体から情報を再生する情報再生方法であって、
前記情報記憶媒体に光を照射し、情報を再生する情報再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−138619(P2011−138619A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87711(P2011−87711)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【分割の表示】特願2007−20020(P2007−20020)の分割
【原出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】