説明

情報記録/再生方法及び光ディスク装置

【課題】様々な記録密度の情報を有する光ディスクに対して、安定的にサーボ動作を行うことができる光ディスク装置を提供する。
【解決手段】情報記録/再生方法は、第1の記録密度を有する第1のデータ列を記録する領域と、前記第1の記録密度よりも高い第2の記録密度を有する第2のデータ列を記録する領域とを有する光ディスクで情報を記録/再生する。第1のデータ列へのサーボ引き込みを行う際に、第2のデータ列を記録/再生する線速度に対応して設定された第1のデータ列基準線速度V1よりも低い線速度V2を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録/再生方法及び光ディスクに関し、更に詳しくは、光ディスクに情報を記録する記録方法、光ディスクから情報を再生する再生方法、及び、光ディスクで情報の記録及び再生を行う記録・再生方法(以下、これらを総称して記録/再生方法と呼ぶ)、及び、該情報記録/再生方法を使用する光ディスク装置(情報記録/再生装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置には、光ヘッドを用いて、光ディスクに情報を記録する記録装置、光ディスクから情報を読み出す再生装置、及び、光ディスク上で情報を記録及び再生する記録・再生装置が含まれる。光ディスクは、一般に透明な基板上に情報記録面を形成し、その情報記録面上に記録データを螺旋状に形成していく。したがって、光ディスク装置は、光ヘッドから照射される光ビームスポットを情報記録面上に正しく位置制御する必要があり、そのために制御機構(サーボコントローラ)を備えている。
【0003】
光ディスク装置で使用される光スポットの位置制御の種類には、焦点方向の位置制御を行うフォーカス制御(フォーカスサーボ)と、半径方向の位置制御を行うトラック制御(トラックサーボ)とがある。まず、フォーカスサーボにより、光ビームスポットを情報記録面上に位置制御する。その後、再生専用光ディスクからの情報読出しでは、トラックサーボにより、その光ビームスポットを、螺旋状に形成された記録データの中心に位置制御する。また、記録型の光ディスクで情報を記録/再生する際には、光ビームスポットを螺旋状に走査させるために予め設けられた案内溝の中心を光ビームスポットが走査するように、トラックサーボを作動させる。これらの動作により、光ディスク装置は、記録データを走査方向に沿って正しく情報を記録/再生することができる。
【0004】
フォーカスサーボまたはトラックサーボの圧縮率特性は、圧縮率ゲイン特性によって規定される。サーボのオープンループ特性を表す関数をH(ω)とすると、1+H(ω)がサーボによる誤差の圧縮率に相当する特性となる。現在使用されている光ディスクとして、多くのDVD規格が存在するが、そのDVD規格でも1+H(ω)で圧縮率ゲイン特性を規定している。図2にその例を示す。1+H(ω)が0dBになる周波数はカットオフ周波数と呼ばれ、それ以上の周波数の外乱は圧縮することができなくなる。通常は、このカットオフ周波数は数kHz程度である。
【0005】
一般的に、光ディスクには、ユーザ用のデータ(ユーザデータ)の他に、様々な用途のデータが記録されていたり、記録できたりする。このため、光ディスクには、ドライブ用の情報を記録してあるシステムリードイン領域、ユーザデータを記録するデータ領域、ディスク識別のための刻印に相当するBCA(バーストカッティングエリア)領域などが設けられている。
【0006】
システムリードイン領域とデータ領域とは、記録されるデータの記録密度が相互に同じ
とは限らないが、何れもサーボのカットオフ周波数に比べ、非常に高い周波数であることが多い。また、これら領域に記録する際には、記録されるデータを変調することによって、数kHz程度の信号成分を低減するという方法がとられることも多い。これは、サーボ用の信号に記録信号成分が漏れ込み、サーボが不安定になることを防ぐためである。一方、ディスク識別の刻印に相当するBCA領域は、記録されるデータの記録密度がデータ領域などに比べ非常に低く、低周波成分が残っている。
【0007】
BCA領域は、現行のDVDではオプション扱い(必ずしも形成しなくても良い)となっているが、次世代DVD(HD DVD)では必ず形成しなくてはならない領域になるなど、BCA領域を形成した光ディスクが増えてきている。HD DVDでは、BCA領域にディスク種別データを形成しており、BCA領域のデータを読めば、そのディスクがROMなのか、R(ライトワンス)なのか、RW(リライタブル)なのかが判別できる。BCA領域には、幅広の比較的低い密度のデータが記録されているため、BCA領域ではトラックサーボを投入しなくても、フォーカスサーボ投入を行っただけでデータを読むことができ、サーボ調整を行う前にディスク種別の判別を行うのに便利である。サーボ調整はディスク種別によって異なるからである。
【0008】
しかしながら、前述したように、BCA領域のデータには数kHzの信号成分が残っており、光ヘッドやBCA領域の形成具合によっては、そのデータ信号がサーボ信号に漏れ込んでくることがわかった。その結果、BCA信号による外乱で最初のサーボ投入に失敗してしまい、光ディスクを傷つけるなどの被害が出るケースが発生している。
【0009】
フォーカスサーボ及びトラックサーボによる制御技術は、例えば、特許文献1及び2に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−248949号公報
【特許文献2】特開2004−234712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明の目的は、様々な記録密度の情報を有する光ディスクに対して、安定的にサーボ動作を行うことができる光ディスク装置、特に、BCA領域に対して安定的にサーボ投入できるため、光ディスクの損傷を抑え信頼性が高い記録/再生を行うことができる光ディスク装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、第1の記録密度を有する第1のデータ列を記録する領域と、前記第1の記録密度よりも高い第2の記録密度を有する第2のデータ列を記録する領域とを有する光ディスクで情報を記録/再生する方法において、
前記第1のデータ列へのサーボ引き込みを行う際に、前記第2のデータ列を記録/再生する線速度に対応して設定された前記第1のデータ列基準線速度V1よりも低い線速度V2を使用することを特徴とする情報記録/再生方法を提供する。
【0013】
本発明は、更に、光ディスクを回転駆動する駆動装置と、光ディスクに光を照射する光学ピックアップと、該光学ピックアップから照射される光スポットを制御するサーボ機構とを備え、第1の記録密度を有する第1のデータ列を記録する領域と、前記第1の記録密度よりも高い第2の記録密度を有する第2のデータ列を記録する領域とを有する光ディスクで情報を記録/再生する光ディスク装置において、
前記第1のデータ列へのサーボ引き込みを行う際に、前記第2のデータ列を記録/再生する線速度に対応して設定された前記第1のデータ列の基準線速度V1よりも低い線速度V2で光ディスクを回転させるように、前記駆動装置の回転速度を制御する速度制御手段を備えることを特徴とする光ディスク装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の情報記録/再生方法及び光ディスク装置では、記録密度が低い第1のデータ列のデータにサーボ引き込みを行う際に、圧縮率ゲイン特性のゲインを適切に選定することで、第1のデータ列に存在する低い周波数成分のデータ信号がサーボ信号に漏れ込んでサーボ発振を引き起こす事態を防止できるので、第1のデータ列付近でのサーボコントロールを安定させることができ、ディスクの損傷などを防止できる。
【0015】
ここで、光ディスク装置としては、光ディスクに情報を記録する記録装置、光ディスクから情報を読み出す再生装置、及び、情報を記録及び再生する記録・再生装置が含まれる。
【0016】
本発明の情報記録/再生方法の好ましい態様では、前記第1のデータ列を前記基準線速度V1で再生すると前記第1のデータ列の最短マークエッジ間隔が4.63μsであるときに、前記線速度V2を4.5m/s以下とする。また、前記第1のデータ列の最短マークエッジ間隔が6.79μs以上になるように、前記線速度V2を選定することとしてもよい。
【0017】
更に、本発明の情報記録/再生装置では、前記基準線速度V1で再生するときに使用する基準クロックの周波数をCL1とすると、前記線速度V2を採用して前記第1のデータ列を再生する際のクロックの周波数CL2を、
CL2=CL1×(V2/V1)
とすることも好ましい態様である。この場合、第1のデータ列のデータを再生する際に、
基準線速度V1を採用せず遅い線速度V2のままで、データを再生可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置のブロック図である。
【図2】実施形態の光ディスク装置で使用する圧縮率ゲイン特性の一例である。
【図3】実施形態の光ディスク装置で使用する圧縮率ゲイン特性の一例である。
【図4】実施形態の光ディスク装置で再生するBCA信号の一例である。
【図5】サーボ安定性と線速度の関係を示す実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の理解を容易にするために、本発明の原理について説明する。この説明では、図2に示すようなフォーカス圧縮率ゲイン特性を持つ光ディスク装置を使用して、BCA領域にフォーカスサーボを投入することとする。
【0020】
フォーカスサーボ特性及びトラックサーボ特性は、基本的には、ドライブ用の情報を記録してあるシステムリードイン領域、および、ユーザデータを記録するデータ領域の記録/再生を保証するように設計される。これは、光ディスクがユーザデータを保存するメディアであることを考えれば、当然のことである。データを記録/再生する立場から考えると、カットオフ周波数は高い方が好ましい。なぜならば、カットオフ周波数以上の外乱は抑えることができず、記録/再生特性に影響を与える可能性があるからである。現在、カットオフ周波数を決めているのは、光ヘッドのアクチュエータと呼ばれる対物レンズを動かす制御機構の特性であり、その特性を考慮すると、数kHzのカットオフ周波数が一般的である。数kHzのカットオフ周波数の光ヘッドでは、DVDやHD DVDで使用されているデータ変調方式を用いれば、データ信号のサーボ信号への漏れ込みは、殆ど気にしなくて良い。
【0021】
一方、BCA領域の場合には、記録密度が低いので、数kHzの信号成分が残っている可能性がある。実際、本発明者らがBCA領域でフォーカスサーボ投入を行った際に、多くのディスクでサーボが発振し、安定にフォーカスサーボを投入することができない事例があった。
【0022】
サーボコントロールが不安定になる要因は、図2のような圧縮率ゲイン特性において、
ゲインが0dB以下になる周波数領域が存在することに起因している。この周波数領域に、データ信号の漏れ込みなどの外乱が発生すると、外乱が増幅され、サーボ発振に至る。圧縮率ゲイン特性のゲインが0dB以下ということは、信号を増幅することを意味するからである。したがって、BCA領域でサーボ投入する際に発振することが多い理由は、BCA領域では、カットオフ周波数周辺のゲインが0dB以下になる周波数領域にデータ信号の漏れ込みが多いからであると考えられる。
【0023】
そこで、本発明者らは、図2の圧縮率ゲイン特性を、図3に示す圧縮率ゲイン特性に変更し、BCA領域にてフォーカスサーボ投入を行った。図3の圧縮率ゲイン特性は、図2のオープンループ特性を表すH(ω)に、或る定数α(1未満)をかけたものと同じであり、数式で記述すれば1+α・H(ω)となる。図3の例では、αとして0.0178を使用した。図3の圧縮率ゲイン特性では、図2とは異なり、ゲインが0dB以下になる周波数が存在しない。このため、BCA領域においても、外乱を増幅することはなくなり、フォーカスサーボの投入に問題はなくなると考えられる。実際に本発明者らが実験を行ったところ、図3の圧縮率ゲイン特性を採用すると、BCA領域におけるサーボ投入に問題はなくなった。
【0024】
しかしながら、図3の圧縮率ゲイン特性では、ドライブ用の情報を記録してあるシステムリードイン領域、および、ユーザデータを記録するデータ領域の記録/再生には最適ではない。前述したように、これらの領域に関しては、できるだけカットオフ周波数を高くした方が良く、図3の圧縮率ゲイン特性よりも図2の圧縮率ゲイン特性の方が有利だからである。
【0025】
そこで、本発明の実施形態の記録/再生方法では以下の構成を採用する上記のように、BCA領域では周波数が数kHzの領域で外乱が発生する。外乱がこの付近にのみ発生しているのであれば、外乱の周波数を変えてやることで、外乱を圧縮することができる。つまり、BCA領域のデータを再生する際に、データ領域のデータ記録/再生に対応して設定されたBCA領域のデータ再生の基準線速度をV1とすると、実際にBCA領域のデータを読み出す線速度を、この基準線速度V1よりも低い線速度V2にする。これにより、データ再生により発生する外乱の周波数が低周波側にシフトし、圧縮率の高い圧縮率ゲイン特性を利用できる。ここで、使用する用語「線速度」とは、光ビームとディスク上のデータ列との相対速度を意味しており、線速度が速ければ、ディスクはそれだけ高回転している状態になり、また、データの読み出し速度が速くなる。
【0026】
HD DVDの例では、ディスクの半径22.4mmから23.0mmの範囲にBCA領域が配置され、そのデータを再生するのには、46.0Hzのディスク回転数を使用することになっている。これは、基準線速度でおよそ6.6m/sである。
【0027】
図2の圧縮率ゲイン特性を使用して、HD DVDのBCA領域にフォーカス引き込みを行った場合のフォーカス投入の失敗率(%)と線速度の関係を実験的に調べた。その結果を図5に示す。4.5m/s以下に線速度を落とすと、フォーカス投入の失敗率が0になっていることがわかる。圧縮率ゲイン特性を変えずにフォーカス投入失敗を避けるには、HD DVDの場合には、4.5m/s以下が望ましい。ただし、BCA領域の作成形態によっては、ビームスポットの熱でデータが壊れてしまう場合があり、そのような場合は、1m/s以上の線速度にしておく方が望ましい。
【0028】
HD DVDのBCA領域を基準線速度で再生した場合には、最短マークエッジ間隔が4.63μsであるので、図5に示した実験結果は、BCA領域を再生したときの最短マークエッジ間隔を、4.63×6.6/4.5=6.79μs以上になる線速度で再生するのが望ましいと言い換えることもできる。
【0029】
上記のように、基準線速度とは異なる線速度でサーボ投入を行った場合には、その領域に記録されたデータを読み込むには、その後に基準線速度まで線速度を上げなければならない。これは引き込んだもののまたサーボが外れる原因にもなり、あまり好ましくない。線速度を基準線速度にしないとデータが読めない理由は、データ読み込みのタイミングの基準であるクロックの周波数が、通常の場合には固定だからである。そこで、本発明者らは、以下に述べるように、線速度を変更した場合でも、基準線速度まで線速度を戻す必要がなく、その領域に記録されたデータを読み込む方法を採用することとした。
【0030】
ここで、線速度を変更した場合には、線速度の変更分だけクロックを変更してやれば、
データのタイミングの基準がデータに合致する。つまり、基準線速度V1で再生する際に使用する基準クロックの周波数をCL1とした場合に、サーボ投入時に使用した線速度V2におけるデータ再生用のクロックの周波数をCL2とし、式
CL2=CL1×(V2/V1)
で表されるクロック周波数CL2を使用する。これによって、線速度を落としてサーボ引き込みを行った場合にも、そのまま線速度を変更することなく、その領域のデータを再生することができる。
【0031】
次に、本発明の一実施形態に係る光ディスク装置を説明する。図1に本実施形態に係る情報記録・再生装置をブロック図で示す。この情報記録・再生装置は、光ディスク10を駆動するスピンドル駆動系11、光ディスク10に光を照射し、それを検出する光ヘッド12、入力信号にフィルタリング等の処理を行うRF回路部13、入力信号を復調する復調器14、装置全体を統括するシステムコントローラ15、記録すべき信号を変調する変調器16、レーザダイオード(LD)17、LDを駆動するLD駆動系18、サーボ信号をコントロールするサーボコントローラ19、光ヘッド12から得られた信号をサーボコントローラ19に入力する前にサーボ機構のオープンループ特性を調整するサーボ特性調整機構20、及び、LD17からの光を対物レンズ21に反射させるとともに光ディスク10からの反射光を光検出器22に向けて通過させるビームスプリッタ23から構成される。
【0032】
上記実施形態の光ディスク装置は、サーボコントローラ19のオープンループ特性を調整するサーボ特性調整機構20を有する。サーボ特性調整機構20は、システムコントローラ15からの命令により、サーボコントローラ19のサーボ特性を調整、変更する。
【0033】
本実施形態では、光ヘッド12として、LD波長が405 nm、NA(開口数)が0.65のものを用意した。また、光ディスク10としては、厚さが0.6mmのポリカーボネイトからなり、直径が12cmである円板状の透明な基板に、プリグルーブと呼ばれる案内溝を形成したものを用意した。記録及び再生時には、光ディスク装置の光ヘッド12がこの案内溝に沿って走査するようになっている。この基板上には、ZnS−SiO2からなる誘電体膜、AgInSbTeからなる相変化記録膜、ZnS−SiO2からなる誘電体膜、AlTiからなる反射膜がこの順に積層されている。
【0034】
誘電体膜は、相変化記録膜を保護すると共に、レーザ光の干渉条件を制御し、より大きな信号を得るためのものである。相変化記録膜の相状態は、初期状態においては結晶状態となっており、記録用のレーザ光が照射されて非晶質状態となることにより、情報を記録する。なお、反射膜上に紫外線硬化樹脂等からなる保護膜を設けてもよい。
【0035】
ユーザが使用するデータ領域のフォーマットとしては、ビットピッチが0.13μm、トラックピッチが0.34μmのランド・グルーブフォーマットを使用した。ランド・グルーブフォーマットとは、案内溝の入射光側からみて丘(グルーブ)と溝(ランド)の両方の部分に記録を行うフォーマットのことを言う。また、ディスクの内周側には、図4に示すような信号が記録されたBCA領域を形成した。図に示したマークとスペースの時間間隔は、回転数が2760rpmのときのものである。IBH、IBLは、それぞれBCAシグナルのハイレベル、ローレベルを意味する。ローレベルの時間は1.56μsのみで、立下りエッジの時間間隔は、4.63μs×n(n=1,2,3,4)の4種類である。
【0036】
上記実施形態例に係る情報記録・再生装置では、データ領域を記録/再生する場合に、サーボ特性調整機構20の調整により、図2に示すフォーカスサーボ特性を示すサーボコントロールを用いる。BCA領域を再生する場合には、サーボ特性調整機構20の調整により、図3に示すフォーカスサーボ特性を示すサーボコントロールを用いる。使用した線速度は、BCA領域が6.6m/s、データ領域が5.6m/sである。
【実施例】
【0037】
以下のように、まず、比較例1の光ディスク装置を使用し、比較例1の記録/再生方法を使用して記録・再生を行った。その記録・再生にあたり、BCA領域、及び、データ領域に交互に光ヘッドを移動させ、100回ずつフォーカスサーボの投入を行った。表1に、その際のフォーカスサーボ投入失敗回数を示す。
【表1】

【0038】
上記のように、比較例1の記録・再生方法では、BCA領域及びデータ領域の双方でフォーカスサーボ投入に失敗することはなかった。
【0039】
比較例2として、従来の記録/再生方法で上記と同様の実験を行った。この従来の方法では、BCA領域及びデータ領域の双方で、図2のフォーカスサーボ特性を持つサーボ機構を用いた。表2に、その結果を示す。
【表2】

【0040】
表2から、従来方法では、BCA領域でのフォーカスサーボ投入失敗回数が圧倒的に多いことがわかる。つまり、上記比較例1の情報記録・再生装置を使用することにより、安定したサーボ動作が光ディスクすべての領域で可能となり、信頼性の高い情報記録・再生装置を実現できることがわかる。
【0041】
本発明の実施例1の光ディスク装置及び光ディスクを用いて、上記比較例と同様に、記録/再生方を行う際にサーボ制御を行った。BCA領域及びデータ領域の双方に交互に光ヘッドを移動させ、100回ずつフォーカスサーボの投入を行った。BCA領域の場合には、線速度を4.5m/sにし、データ領域の場合は線速度を5.6m/sとした。線速度はシステムコントローラからスピンドル駆動系に送られる命令によって制御された。表3は、その際のフォーカスサーボ投入失敗回数を示す。
【表3】

【0042】
本実施形態の情報記録/再生方法では、BCA領域及びデータ領域の双方で、フォーカスサーボ投入に1度も失敗することはなかった。
【0043】
実施例2として、実施例1で、BCA領域にフォーカスサーボを投入した後に、BCA領域のデータを、クロックを変更する方法を用いて読み出す実験を行った。光ディスクのBCA領域では、基準クロックを64.8MHz、基準線速度を6.6m/sとしたときに、BCA領域が読めるように設計してある。このため、本実施例では、 64.8×4.5/6.6=44.2MHzのクロックを用い、線速度4.5m/sのままでBCA領域のデータを再生した。その結果、間違いなしにデータを読み取ることに成功した。一般的に、BCA領域では、データ領域とは異なり、フォーカスサーボだけを動作させ、トラックサーボは動作させない。
【0044】
比較例3として、フォーカスサーボを投入後に、線速度を6.6m/sまで戻したところ、フォーカスサーボが外れてしまい、良好なデータ読み出しができなかった。
【0045】
上記実施形態では、フォーカスサーボ特性のみを切り替える例を挙げたが、トラックサーボも同様に切り替えてもよい。また、実施例では、光ディスクとして書き換え型の相変化型ディスクを使用したが、再生専用のROM、1回記録用のRなどの光ディスクでも同様に本願発明の適用が可能である。更に、上記実施形態では、光ディスク装置として、情報記録・再生装置の例を挙げたが、情報記録装置、及び、情報再生装置にも適用可能である。更に、波長405nm、NA0.6に限定されることなく、所望の波長及びNAを有する光ヘッドに適用可能である。
【0046】
以上、本発明をその好適な実施態様に基づいて説明したが、本発明の光ディスク装置及び情報記録/再生方法は、上記実施態様の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施態様の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。また、本発明の好適な態様として記載した各構成や実施形態で記載した各構成については、本発明の必須の構成と共に用いることが好ましいが、単独であっても有益な効果を奏する構成については、必ずしも本発明の必須の構成として説明した全ての構成と共に用いる必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の光デスク装置は、高密度光ディスクのための情報再生装置、情報記録装置、及び、情報記録・再生装置として利用可能である。また、本発明の情報記録/再生方法は、これら光ディスク装置で利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
10:光ディスク
11:スピンドル駆動系
12:光ヘッド
13:RF回路部
14:復調器
15:システムコントローラ
16:変調器
17:レーザダイオード(LD)
18:LD駆動系
19:サーボコントローラ
20:サーボ特性調整機構
21:対物レンズ
22:光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の記録密度を有する第1のデータ列を記録する領域と、前記第1の記録密度よりも高い第2の記録密度を有する第2のデータ列を記録する領域とを有する光ディスクで情報を記録/再生する方法において、
前記第1のデータ列へのサーボ引き込みを行う際に、前記第2のデータ列を記録/再生する線速度に対応して設定された前記第1のデータ列の基準線速度V1よりも低い線速度V2を使用することを特徴とする情報記録/再生方法。
【請求項2】
前記第1のデータ列を前記基準線速度V1で再生すると前記第1のデータ列の最短マークエッジ間隔が4.63μsであるときに、前記線速度V2を4.5m/s以下とする、請求項1に記載の情報記録/再生方法。
【請求項3】
前記第1のデータ列の最短マークエッジ間隔が6.79μs以上になるように、前記線速度V2を選定する、請求項1に記載の情報記録/再生方法。
【請求項4】
前記基準線速度V1で再生するときに使用する基準クロックの周波数をCL1とすると、前記線速度V2を採用して前記第1のデータ列を再生する際のクロックの周波数CL2を、
CL2=CL1×(V2/V1)
とする、請求項1〜3の何れか一に記載の情報記録/再生方法。
【請求項5】
光ディスクを回転駆動する駆動装置と、光ディスクに光を照射する光学ピックアップと、該光学ピックアップから照射される光スポットを制御するサーボ機構とを備え、第1の記録密度を有する第1のデータ列を記録する領域と、前記第1の記録密度よりも高い第2の記録密度を有する第2のデータ列を記録する領域とを有する光ディスクで情報を記録/再生する光ディスク装置において、
前記第1のデータ列へのサーボ引き込みを行う際に、前記第2のデータ列を記録/再生する線速度に対応して設定された前記第1のデータ列の基準線速度V1よりも低い線速度V2で光ディスクを回転させるように、前記駆動装置の回転速度を制御する速度制御手段を備えることを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−170088(P2009−170088A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62251(P2009−62251)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【分割の表示】特願2005−115607(P2005−115607)の分割
【原出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】