説明

情報通信装置、及び情報通信プログラム

【課題】異なる周波数での無線通信を、少ないリソースで行うことができる。
【解決手段】情報通信装置100は、他の情報通信装置401,501と無線通信を行う情報通信装置であって、異なる周波数帯の電波を利用して無線通信を行う複数の通信部201,202と、各々の前記通信部を機能させる複数のPHY処理部301,302と、前記複数のPHY処理部で共用するMAC処理部303と、何れかのPHY処理部301,302と前記MAC処理部303との双方を利用して無線通信をしているときに、他のPHY処理部と当該MAC処理部との双方を利用する無線通信を禁止するPHY制御部304と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信に用いられる情報通信装置、及び情報通信プログラムに関し、特に、複数の無線ネットワークに接続され、複数の無線ネットワーク間でデータを通信可能にすることで、複数の無線ネットワークを結合するために用いられる情報通信装置、及び情報通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信規約が異なる複数のネットワークをつなげるためのGW(Gateway)機能を持った無線通信機器を作る場合、従来の無線通信機器は、各ネットワークに対応した複数のネットワークシステムを持つ必要があった。ここでいう「ネットワークシステム」とは、少なくともPHY層の処理(以下、「PHY処理」と呼ぶ)、MAC層の処理(以下、「MAC処理」と呼ぶ)、NW層の処理(以下、「NW処理」と呼ぶ)からなる。そして、従来の無線通信機器は、複数のネットワークをNW層よりも上位層(上位レイヤ)でPROXY技術(非特許文献1参照)を利用して接続する。
【0003】
例えば、「HAN(Home Area Network)」と「SUN(Smart Utility Network)」とをつなげるためのGW(Gateway)機能を持った無線通信機器を作る場合を考える。ここで、HANは、家庭内の電機機器を連携させるためのネットワークである。一方、SUNは、配電設備が協調動作をすることによって地域全体(又はビル全体)の省エネを実現するためのネットワークである。
【0004】
現在、HANやSUN向けには様々なプロトコルが標準化され、各プロトコルに対応する形で様々なMAC処理、PHY処理等が規定されている。例えば、「IEEE802.15.4−2006」は、HAN向けの世界標準のプロトコルであり、その中でMAC処理及びPHY処理が規定されている。また、現在審議中の「IEEE802.15.4g」は、「IEEE802.15.4−2006」のSUN向け拡張のプロトコルであり、その中でMAC処理及びPHY処理が規定されることが予想される。
【0005】
また、SUNとHANとは求められる性能が違うため、使う無線帯域が違う場合が多い。例えば、SUNは遠距離通信が求められるため、障害物の影響が少ないサブギガヘルツ帯域(429MHz−950MHz)の周波数帯域を利用して通信を行う。一方、HANは通信距離よりも低コスト要求が強いため、HANの通信には2.4GHz帯域を利用して通信を行う。
【0006】
そのため、従来の無線通信機器は、図5に示すように、SUNの通信を行うためのネットワークシステム(「SUN PHY処理」、「SUN MAC処理」、「SUN NW処理」)とHANの通信を行うためのネットワークシステム(「HAN PHY処理」、「HAN MAC処理」、「HAN NW処理」)という2つのネットワークシステムを持つ必要があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“プロキシ”、[online]、ウィキペディア財団、[平成23年3月16日検索]、インターネット、<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%AD%E3%82%B7>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図5に示す従来の構成は、複数のネットワークで同様のNW処理を採用している場合でも、MAC処理(MAC処理部)及びPHY処理(PHY処理部)毎にNW処理を制御する必要がある。これにより、ネットワークの接続に際し、NW層よりも上位層(上位レイヤ)でPROXY技術を利用しなければならず、ネットワークの接続が煩雑になるという課題が発生する。これは、NW処理を制御するためのリソースを2重に持たなければならないという点でも無駄である。
【0009】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、異なる周波数での無線通信を、少ないリソースで行うことができる、情報通信装置、及び情報通信プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため発明者は、第2の無線ネットワークのプロトコルが、第1の無線ネットワークのプロトコルの機能拡張である等の理由から、PHY処理やMAC処理の設定用ソフトウェアインタフェースは異なるが、データ通信やコマンド通信を行うためのソフトウェアインタフェースが同様の場合、MAC層の処理を共用することができることとした。
【0011】
さらに、発明者は、第1のネットワークのNW層の処理と、第2のネットワークのNW層の処理とが同様の場合に、MAC層の処理を共用することで、プロトコルが異なる第1のネットワーク及び第2のネットワークを「ネットワークセグメントが違うだけの2つのネットワーク」としてNW層で扱うことができ、その為、第1のネットワークと第2のネットワークとの接続に、PROXY技術を必要としない接続が非常に容易なネットワーク接続方式とした。
【0012】
具体的に、本発明に係る情報通信装置は、他の情報通信装置と無線通信を行う情報通信装置であって、異なる周波数帯の電波を利用して無線通信を行う複数の通信部と、各々の前記通信部を機能させる複数のPHY処理部と、前記複数のPHY処理部で共用するMAC処理部と、何れかのPHY処理部と前記MAC処理部との双方を利用して無線通信をしているときに、他のPHY処理部と当該MAC処理部との双方を利用する無線通信を禁止するPHY制御部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る情報通信プログラムは、異なる周波数帯の電波を利用して無線通信を行う複数の通信部を備える情報通信装置のコンピュータに実行させる情報通信プログラムであって、各々の前記通信部を機能させる複数のPHY処理プログラムと、前記複数のPHY処理部で共用するMAC処理プログラムと、何れかのPHY処理プログラムと前記MAC処理プログラムとの双方を利用して無線通信をしているときに、他のPHY処理プログラムと当該MAC処理プログラムとの双方を利用する無線通信を禁止するPHY制御プログラムと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、異なる周波数帯での無線通信を、少ないリソースで行うことができる。また、PROXY技術を利用しないので、ネットワーク接続が容易になる。また、NW処理を制御するためのリソースを2重に持たなくてよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の概要を説明するための図である。
【図2】実施形態に係る情報通信装置の構成図である。
【図3】実施形態に係る情報通信装置の動作(データ送信)を説明するためのフローチャートである。
【図4】実施形態に係る情報通信装置の動作(データ受信)を説明するためのフローチャートである。
【図5】従来技術の概要を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態]
図1は、実施形態の概要を説明するための図である。図1では、SUNとHANとの両方のネットワークに接続され、両ネットワーク間でデータを通信可能にすることで両ネットワークを結合するために用いられる情報通信装置を想定している。
【0017】
実施形態では、SUNのプロトコルとして「IEEE802.15.4g」を、HANのプロトコルとして「IEEE802.15.4−2006」を採用する場合を考える。「IEEE802.15.4g」のPHY層の処理は、「IEEE802.15.4−2006」のPHY層の処理の機能拡張であるから、PHY処理やMAC処理の設定用ソフトウェアインタフェースは異なるが、データ通信やコマンド通信を行うためのソフトウェアインタフェースが同様なので、図1に示すように情報通信装置内のMAC層の処理を共用することができる。
【0018】
さらに、SUNのNW層の処理とHANのNW層の処理とが同じ場合にMAC層の処理を共用することで、情報通信装置は、SUN及びHANを「ネットワークセグメントが違うだけの2つのネットワーク」としてNW層で扱うことができる。
【0019】
≪情報通信装置の構成≫
図2は、実施形態に係る情報通信装置100の構成図である。情報通信装置100は、通信部201,202、及び制御部300を備えて構成される。以下では、情報通信装置100の各構成を説明する。
【0020】
<通信部>
通信部201,202は、RF器、変調器、復調器、周波数変換器等で構成される。
通信部201は、SUN400に所属する(SUN400を形成する)他の情報通信装置としての通信ノード401が無線通信で利用する周波数帯(429MHz−950MHz)の電波に対応したアンテナ203に接続される。一方、通信部202は、HAN500に所属する(HAN500を形成する)他の情報通信装置としての通信ノード501が無線通信で利用する周波数帯(2.4GHz)の電波に対応したアンテナ204に接続される。
【0021】
通信部201,202は、アンテナ203,204から電波を送信する場合に、制御部300から受け渡される電気信号と自ら作成した搬送波とを合成し、情報を乗せた高周波信号を作り出し、作り出した高周波信号を所定の周波数に周波数変換し、アンテナ203,204を介して電波を送信する。また、通信部201,202は、アンテナ203,204が電波を受信した場合に、電波から情報を取り出し、もとの電気信号に戻し、当該電気信号を制御部300に受け渡す。なお、通信部201,202は、必要に応じて、CPU(Central Processing Unit)コアを備え、PHY処理部の機能を有していることがある。
【0022】
<制御部>
制御部300は、LSI(Large Scale Integration)等で構成される。制御部300は、CPUが図示しない記憶部に格納される図示しない情報通信プログラムを展開し、実行することによりMAC処理部303、SUN−PHY処理部301、HAN−PHY処理部302、PHY制御部304、及びNW処理部305の各機能を実現する。
【0023】
(SUN−PHY処理部)
SUN−PHY処理部301は、MAC処理部303とPHY制御部304とに接続される。SUN−PHY処理部301は、MAC処理部303と協調動作してSUN400の通信を行う機能と、PHY制御部304からの指令(指示)によりMAC処理部303との情報のやり取りを中止、再開する機能を持つ。
【0024】
例えば、SUN−PHY処理部301は、MAC処理部303との間でデータの授受を行うことが許容されているか否かを示すフラグを備え、PHY制御部304からMAC処理部303との情報のやり取りを中止する指示を受けたらフラグに「1」(中止)を設定し、PHY制御部304からMAC処理部303との情報のやり取りを再開する指示を受けたらフラグに「0」(再開)を設定する。
【0025】
そして、SUN−PHY処理部301は、SUN400に所属する通信ノード401と無線通信によるデータの送受信を行うときに、MAC処理部303との間でデータの授受を行うことが許容されているか否かを示すフラグを参照し、フラグに「0」(再開)が設定されていれば、MAC処理部303との間でデータの授受を行う。一方、フラグに「1」(中止)が設定されていれば、通信部201を制御して受信したデータを破棄し、MAC処理部303との間でデータの授受を行わない。
【0026】
(HAN−PHY処理部)
HAN−PHY処理部302は、MAC処理部303とPHY制御部304とに接続される。HAN−PHY処理部302は、MAC処理部303と協調動作してHAN500の通信を行う機能と、PHY制御部304からの指令によりMAC処理部303との情報のやり取りを中止し、再開する機能を持つ。
【0027】
例えば、HAN−PHY処理部302は、MAC処理部303との間でデータの授受を行うことが許容されているか否かを示すフラグを備え、PHY制御部304からMAC処理部303との情報のやり取りを中止する指示を受けたらフラグに「1」(中止)を設定し、PHY制御部304からMAC処理部303との情報のやり取りを再開する指示を受けたらフラグに「0」(再開)を設定する。
【0028】
そして、HAN−PHY処理部302は、HAN500に所属する通信ノード501と無線通信によるデータの送受信を行うときに、MAC処理部303との間でデータの授受を行うことが許容されているか否かを示すフラグを参照し、フラグに「0」(再開)が設定されていれば、MAC処理部303との間でデータの授受を行う。一方、フラグに「1」(中止)が設定されていれば、通信部202を制御して受信したデータを破棄し、MAC処理部303との間でデータの授受を行わない。
【0029】
(MAC処理部)
MAC処理部303は、SUN−PHY処理部301とHAN−PHY処理部302とPHY制御部304とに接続される。MAC処理部303は、SUN−PHY処理部301やHAN−PHY処理部302を利用してMAC通信制御を行う機能と、PHY制御部304へどちらのPHY処理部を利用して通信を行っているのかを知らせる機能を持つ。
【0030】
例えば、MAC処理部303は、SUN400に所属する通信ノード401と無線通信によるデータの送受信を行うために、SUN−PHY処理部301と協調動作して通信を行っている場合にその旨をPHY制御部304へ通知し、一方、HAN500に所属する通信ノード501と無線通信によるデータの送受信を行うために、HAN−PHY処理部302と協調動作して通信を行っている場合にその旨をPHY制御部304へ通知する。
【0031】
なお、PHY制御部304へ通知するタイミングは、(1)通信ノード401,501からのデータ受信時、(2)省電力を実現するために通信部201,202を間欠動作させる場合において、通信部201,202の電源をONにしたタイミング等が考えられる。
【0032】
また、MAC処理部303は、SUN−PHY処理部301と協調動作して行った通信が終了した場合にその旨をPHY制御部304へ通知し、一方、HAN−PHY処理部302と協調動作して行った通信が終了した場合にその旨をPHY制御部304へ通知する。
【0033】
(PHY制御部)
PHY制御部304は、MAC処理部303とSUN−PHY処理部301とHAN−PHY処理部302とに接続される。MAC処理部303からの協調動作しているPHY処理部の情報を元に、SUN−PHY処理部301又はHAN−PHY処理部302とMAC処理部303との間の通信を中止させたり、再開させたりする機能を持つ。また、PHY制御部304は、上位レイヤであるNW層の処理を担当するNW処理部305とも接続され、MAC処理部303を利用して通信を行うときに両PHY処理部の切り替えを行う機能を持つ。
【0034】
例えば、PHY制御部304は、MAC処理部303からSUN−PHY処理部301と協調動作して通信を行っている旨の連絡を受信した場合に、HAN−PHY処理部302に対して、MAC処理部303との情報のやり取りを中止,停止,禁止等する指示を送信する。一方、PHY制御部304は、PHY制御部304からHAN−PHY処理部302と協調動作して通信を行っている旨の連絡を受信した場合に、SUN−PHY処理部301に対して、MAC処理部303との情報のやり取りを中止,停止,禁止等する指示を送信する。
【0035】
また、PHY制御部304は、MAC処理部303からSUN−PHY処理部301と協調動作して行った通信が終了した旨の連絡を受信した場合に、HAN−PHY処理部302に対して、MAC処理部303との情報のやり取りの中止を解除(情報のやり取りを再開)することを許容する指示を送信する。一方、PHY制御部304は、MAC処理部303からHAN−PHY処理部302と協調動作して行った通信が終了した旨の連絡を受信した場合に、SUN−PHY処理部301に対して、MAC処理部303との情報のやり取りの中止を解除(情報のやり取りを再開)することを許容する指示を送信する。
【0036】
また、PHY制御部304は、実際はプロトコルが異なるSUN400及びHAN500をネットワークセグメントが違うだけの2つのネットワークであるとして、SUN−PHY302、HAN−PHY303毎にNW層のセグメントを変更して管理し、NW処理部305とMAC処理部303とのデータの受け渡しを行う。この際に、PHY制御部304は、NW処理部305から受け取ったデータの内容からデータの送信先を確認し、送信先以外のPHY処理部とMAC処理部303とが処理を行っているか否かを判定する。そして、送信先以外のPHY処理部とMAC処理部303とが処理を行っている場合に、上位レイヤであるNW処理部305に対して通信ができない旨を通知する。
【0037】
(NW処理部)
NW処理部305は、PHY制御部304とアプリケーション層の図示しない処理部とデータ通信が可能であり、NW層の処理を行うNW通信機能を備える。ここで、NW処理部305は、SUN400及びHAN500をネットワークセグメントが違うだけの2つのネットワークであるとして処理を行う。
以上で、情報通信装置100の構成の説明を終了する。
【0038】
≪情報通信装置の動作≫
図3は、実施形態に係る情報通信装置100の他の情報通信装置に対するデータ送信時のフローチャートである。図4は、実施形態に係る情報通信装置100の他の情報通信装置からのデータ受信時のフローチャートである。以下では、送信時と受信時を場合分けして説明する。
【0039】
<データ送信時>
図3を参照して、データ送信時における情報通信装置100の動作を説明する。
最初に、情報通信装置100のアプリケーション層の図示しない処理部は、SUN400に所属する通信ノード401、又はHAN500に所属する通信ノード501に対して送信するデータを作成する(ステップS110)。次に、NW処理部305は、データをアプリケーション層の図示しない処理部より受け取り、PHY制御部304に受け渡す。
【0040】
次に、情報通信装置100のPHY制御部304は、NW処理部305から受け取ったデータの内容からデータの送信先を確認し、データ送信で利用するPHY処理部がMAC処理部303との間でデータの授受を行うことが中止されているか否かを判定する(ステップS120)。データ送信で利用するPHY処理部がMAC処理部303との間でデータの授受を行うことが中止されている場合(ステップS120“Yes”)に、処理はステップS130に進む。一方、データ送信で利用するPHY処理部がMAC処理部303との間でデータの授受を行うことが中止されていない場合(ステップS120“No”)に、処理はステップS140に進む。
【0041】
ステップS120の処理をより具体的に説明すると、SUN−PHY処理部301とMAC処理部303とが処理を行っている場合に、NW処理部305からHAN−PHY処理部302を利用するデータを受信したら、PHY制御部304は、データ送信で利用するPHY処理部(HAN−PHY処理部302)がMAC処理部303との間でデータの授受を行うことが中止されていると判定する(ステップS120“Yes”)。SUN−PHY処理部301とMAC処理部303とが処理を行っている場合に、NW処理部305からSUN−PHY処理部301を利用するデータを受信したら、PHY制御部304は、データ送信で利用するPHY処理部(SUN−PHY処理部301)がMAC処理部303との間でデータの授受を行うことが中止されていないと判定する(ステップS120“No”)。
【0042】
一方、HAN−PHY処理部302とMAC処理部303とが処理を行っている場合に、NW処理部305からSUN−PHY処理部301を利用するデータを受信したら、PHY制御部304は、データ送信で利用するPHY処理部(SUN−PHY処理部301)がMAC処理部303との間でデータの授受を行うことが中止されていると判定する(ステップS120“Yes”)。HAN−PHY処理部302とMAC処理部303とが処理を行っている場合に、NW処理部305からHAN−PHY処理部302を利用するデータを受信したら、PHY制御部304は、データ送信で利用するPHY処理部(HAN−PHY処理部302)がMAC処理部303との間でデータの授受を行うことが中止されていないと判定する(ステップS120“No”)。
【0043】
ステップS120“Yes”の場合、PHY制御部304は、上位レイヤであるNW処理部305に対して通信ができない旨を通知する(ステップS130)。
ステップS120“No”の場合、PHY制御部304は、データ送信で利用するPHY処理部以外のPHY処理部に対してMAC処理部303との間の情報のやり取りを停止するように指示を送信する(ステップS140)。
【0044】
次に、PHY制御部304は、NW処理部305から受け取ったデータをMAC処理部303に渡す(ステップS150)。MAC処理部303は、MAC層の処理を行った後にデータを送信先のPHY処理部に渡し、PHY処理部は、通信部201,202を制御してデータを電波としてSUN400に所属する通信ノード401、又はHAN400に所属する通信ノード501にデータを送信する。
【0045】
次に、MAC処理部303は、データの送信が終了したら、その旨をPHY制御部304に通知し、PHY制御部304は、データ送信で利用するPHY処理部以外のPHY処理部に対してMAC処理部303との間の情報のやり取りの停止を解除するように指示を送信する(ステップS160)。
以上で、データ送信時における情報通信装置100の動作の説明を終了する。
【0046】
<データ受信時>
図4を参照して、データ受信時における情報通信装置100の動作を説明する。
最初に、情報通信装置100は、SUN400に所属する通信ノード401、又はHAN500に所属する通信ノード501から発信される電波(データ)をアンテナ203,204を用いて受信する(ステップS210)。次に、情報通信装置100の通信部201,202は、受信した電波から情報を取り出し、SUN−PHY処理部301、又はHAN−PHY処理部302に情報を電気信号のデータとして受け渡す。
【0047】
次に、情報通信装置100のSUN−PHY処理部301、又はHAN−PHY処理部302は、自身がMAC処理部303との間でデータの授受を行うことが中止されているか否かを判定する(ステップS220)。自身がMAC処理部303との間でデータの授受を行うことが中止されている場合(ステップS220“Yes”)に、処理はステップS230に進む。一方、自身がMAC処理部303との間でデータの授受を行うことが中止されていない場合(ステップS220“No”)に、処理はステップS240に進む。
【0048】
ステップS220の処理をより具体的に説明すると、SUN−PHY処理部301とMAC処理部303とが処理を行っている場合に、HAN500に所属する通信ノード501からデータを受信したら、HAN−PHY部303は、自身がMAC処理部303との間でデータの授受を行うことが中止されていると判定する(ステップS220“Yes”)。SUN−PHY処理部301とMAC処理部303とが処理を行っている場合に、SUN400に所属する通信ノード401からデータを受信したら、SUN−PHY部302は、自身がMAC処理部303との間でデータの授受を行うことが中止されていないと判定する(ステップS220“No”)。
【0049】
一方、HAN−PHY処理部302とMAC処理部303とが処理を行っている場合に、SUN400に所属する通信ノード401からデータを受信したら、SUN−PHY部302は、自身がMAC処理部303との間でデータの授受を行うことが中止されていると判定する(ステップS220“Yes”)。HAN−PHY処理部302とMAC処理部303とが処理を行っている場合に、HAN500に所属する通信ノード501からデータを受信したら、HAN−PHY部303は、自身がMAC処理部303との間でデータの授受を行うことが中止されていないと判定する(ステップS220“No”)。
【0050】
ステップS220“Yes”の場合、SUN−PHY処理部301、又はHAN−PHY処理部302は、受信したデータを破棄する(ステップS230)。
ステップS220“No”の場合、SUN−PHY処理部301、又はHAN−PHY処理部302は、通信部201,202が受信したデータをMAC処理部303に渡す(ステップS240)。
【0051】
次に、MAC処理部303は、データを受信したPHY処理部をPHY制御部304に通知し、PHY制御部304は、MAC処理部303から通知されたPHY処理部以外のPHY処理部に対してMAC処理部303との間の情報のやり取りを停止するように指示を送信する(ステップS250)。そして、MAC処理部303は、MAC層の処理を行った後にデータをNW処理部305に渡す。
【0052】
次に、MAC処理部303は、データの受信が終了したら、その旨をPHY制御部304に通知し、PHY制御部304は、データを受信したPHY処理部以外のPHY処理部に対してMAC処理部との間の情報のやり取りの停止を解除するように指示を送信する(ステップS260)。
以上で、データ受信時における情報通信装置100の動作の説明を終了する。
【0053】
以上のように、実施形態に係る情報通信装置100は、2つあるうちの片方のPHY部(SUN−PHY処理部301又はHAN−PHY処理部302)とMAC処理部303が動作している間は、もう一方のPHY処理部とMAC処理部303との間の通信が停止しているので、MAC処理部303を2つのPHY処理部で共用できる。このように、MAC層の処理を共用することで、情報通信装置100の実装コストを下げることができる。
【0054】
また、実施形態に係る情報通信装置100は、SUN400のNW層の処理とHAN500のNW層の処理とが同じ場合にMAC処理部303を2つのPHY処理部で共用することで、上位レイヤからは複数のPHY処理部を利用した通信を、1つのMACインタフェースを介して透過的に利用することができる。この際、例えばPHY処理部毎にNW層のセグメントを変更しておけば、2つの異なるPHY処理部を利用したネットワークを、上位レイヤからはセグメントが違うだけの単一ネットワークとして扱うことができる。これにより、SUN400とHAN500との接続にPROXY技術を使う必要がなく、ネットワークの接続が非常に容易になる。
【0055】
なお、家全体のエネルギ管理のためのネットワークであるSUN400と、家庭内の電気機器を連携して省電力動作させるためのネットワークであるHAN500との間でデータのやり取りをして互いに協調動作することは、機器を省電力動作する上で非常に有用である。
【0056】
具体的には、SUN400で家単位の消費電力を最適化して、何軒かの家の合計の最大消費電力を低く抑えることができる。例えば、家Aと家Bがあるとする。家Aも家Bも消費電力が多い場合は100Wの電力を使い、少ない場合は10Wの電力も使わないとする。この場合、家A,Bに電力を供給することを考えると、最適化処理をしないと200Wの消費電力に対応できるよう電力供給をする必要がある。ここで、家Aの消費電力が多い時にはもう一方の家Bの消費電力を少なく抑えるよう最適化制御できたとすると、電力の供給側は110Wの電力供給ができればよいことになる。
そこで、SUN400での協調動作の結果、家庭内の電力消費を少なく抑えるためにHAN500を利用して家庭内機器の消費電力を抑えるようにする。
【0057】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲で実施することができる。実施形態の変形例を以下に示す。
【0058】
≪変形例1≫
実施形態では、SUN400のSUN−PHY処理部301と、HAN500のHAN−PHY処理部302でMAC処理部303を共用したが、SUN400やHAN500以外のPHY処理部を利用しても、データ通信やコマンド通信を行うためのソフトウェアインタフェースが同様の場合には、MAC層の処理を共用することができる。また、1つのネットワークにおいて、PHY処理部を複数に分割し、これら複数のPHY処理部でMAC層の処理を共用するようにしてもよい。
【0059】
例えば、IP−NET(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、PhyNetで構築されるネットワーク、ならびに携帯電話網、PHS網等のネットワーク間でMAC層の処理を共用するようにしてもよい。
【0060】
≪変形例2≫
実施形態では、2つあるPHY処理部(SUN−PHY処理部301、HAN−PHY処理部302)のうち、MAC処理部303が片方を利用しているときには、もう片方の通信を遮断するようにしていた。しかしながら、MAC処理部303が片方のPHY処理部を利用しているときには、もう片方のPHY処理部に対応する通信部201,202の電源をOFFするようにしてもよい。
こうすることで、実施形態と同等の効果が得られると共に、情報通信装置100の省電力効果が期待できる。
【0061】
≪変形例3≫
実施形態では、2つあるPHY処理部(SUN−PHY処理部301、HAN−PHY処理部302)のうち、MAC処理部303との通信が禁止されているPHY処理部への受信データがあった場合、PHY処理部(SUN−PHY処理部301、HAN−PHY処理部302)は単に受信データを破棄していた。しかしながら、情報通信装置100内部に図示しない記憶部を備え、受信データを破棄せずに記憶部にキャッシュしておき、通信の中止が解除された時点でMAC処理部303へ開示するようにしてもよい。
【0062】
≪変形例4≫
実施形態では、2つあるPHY処理部(SUN−PHY処理部301、HAN−PHY処理部302)のうち、MAC処理部303が片方を利用しているときには、もう片方の通信を遮断するようにしていたが、MAC処理部303と通信が禁止されているPHY処理部は、MAC処理部303との通信が禁止されている期間、同じPHY処理部を利用している周囲の他の情報通信装置に対して、自身宛のデータを発信しないよう知らせてもよい。
【0063】
MAC処理部303と通信が禁止されているPHY処理部が、周囲の他の情報通信装置に対して、自身宛のデータを発信しないよう知らせる方式としては、例えば、以下のものが考えられる。
(1)MAC処理部303と通信が禁止されているPHY処理部は、周囲の他の情報通信装置に対して、キャリアセンスが可能な信号を送信する。これにより、周囲の他の情報通信装置が情報通信装置100に対してデータを送信しようとしてもCSMAでデータ送信は失敗する。
【0064】
(2)MAC処理部303と通信が禁止されているPHY処理部は、周囲の他の情報通信装置に対して、データ送信禁止を知らせるコマンドを送信する。これにより、周囲の他の情報通信装置が情報通信装置100に対してデータを送信しないように制御することができる。
(3)MAC処理部303と通信が禁止されているPHY処理部は、周囲の他の情報通信装置に対して、一定期間受信動作をしない(「スリープ状態になった」)というコマンドを送信する。このコマンドは、例えば、IEEE802.15.4eで規定されているCSLのスリープ期間を知らせる仕組みを利用して送信する。これにより、周囲の他の情報通信装置が情報通信装置100に対してデータを送信しないように制御することができる。
【符号の説明】
【0065】
100 情報通信装置
201,202 通信部
203,204 アンテナ
300 制御部
301 SUN−PHY処理部(PHY処理部)
302 HAN−PHY処理部(PHY処理部)
303 MAC処理部
304 PHY制御部
305 NW処理部
400 SUN
401 (SUNに所属する)通信ノード(他の情報通信装置)
500 HAN
501 (HANに所属する)通信ノード(他の情報通信装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の情報通信装置と無線通信を行う情報通信装置であって、
異なる周波数帯の電波を利用して無線通信を行う複数の通信部と、
各々の前記通信部を機能させる複数のPHY処理部と、
前記複数のPHY処理部で共用するMAC処理部と、
何れかのPHY処理部と前記MAC処理部との双方を利用して無線通信をしているときに、他のPHY処理部と当該MAC処理部との双方を利用する無線通信を禁止するPHY制御部と、
を備えることを特徴とする情報通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報通信装置において、
前記PHY制御部は、
何れかのPHY処理部と前記MAC処理部とを利用して無線通信をしているときに、他のPHY処理部に対応する通信部の電源をOFFにする、
ことを特徴とする情報通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の情報通信装置において、
前記他のPHY処理部が出力した受信情報を保存しておく記憶部をさらに備え、
前記MAC処理部は、
前記他のPHY処理部との間の通信が可能になったら、前記記憶部に保存してある受信情報を用いて処理を行う、
ことを特徴とする情報通信装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の情報通信装置において、
前記他のPHY制御部は、
当該他のPHY処理部に対応する前記通信部と通信ができる範囲に存在する前記他の情報通信装置が自分宛のデータ送信を停止させるようにする、
ことを特徴とする情報通信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報通信装置において、
前記他のPHY制御部は、
当該他のPHY処理部と同様のPHY処理部を持つ前記他の情報通信装置がキャリアセンス可能な信号の送信を前記通信部に行わせる、
ことを特徴とする情報通信装置。
【請求項6】
請求項4に記載の情報通信装置において、
前記他のPHY制御部は、
当該他のPHY処理部と同様のPHY処理部を持つ前記他の情報通信装置に対してデータ送信禁止コマンドを前記通信部に送信させる、
ことを特徴とする情報通信装置。
【請求項7】
請求項4に記載の情報通信装置において、
前記他のPHY制御部は、
当該他のPHY処理部と同様のPHY処理部を持つ前記他の情報通信装置に対して一定期間スリープすることを報知する報知コマンドを前記通信部に送信させる、
ことを特徴とする情報通信装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の情報通信装置において、
前記MAC処理部は、
IEEE802.15.4で規定される処理を行う、
ことを特徴とする情報通信装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の情報通信装置において、
前記PHY処理部は、
IEEE802.15.4で規定される処理を行う、
ことを特徴とする情報通信装置。
【請求項10】
他の情報通信装置と無線通信を行う情報通信装置であって、
互いに独立して機能する複数のPHY処理部と、
前記複数のPHY処理部で共用するMAC処理部と、
何れかのPHY処理部と前記MAC処理部との双方を利用して無線通信をしているときに、他のPHY処理部と当該MAC処理部との双方を利用する無線通信を禁止するPHY制御部と、
を備えることを特徴とする情報通信装置。
【請求項11】
請求項10に記載の情報通信装置において、
前記PHY処理部は、無線通信を行う周波数帯毎に独立して機能することを特徴とする情報通信装置。
【請求項12】
請求項10に記載の情報通信装置において、
前記PHY処理部は、特定の周波数帯の電波を利用した特定のネットワークのセグメント毎に独立して機能することを特徴とする情報通信装置。
【請求項13】
異なる周波数帯の電波を利用して無線通信を行う複数の通信部を備える情報通信装置のコンピュータに実行させる情報通信プログラムであって、
各々の前記通信部を機能させる複数のPHY処理プログラムと、
前記複数のPHY処理部で共用するMAC処理プログラムと、
何れかのPHY処理プログラムと前記MAC処理プログラムとの双方を利用して無線通信をしているときに、他のPHY処理プログラムと当該MAC処理プログラムとの双方を利用する無線通信を禁止するPHY制御プログラムと、
を備えることを特徴とする情報通信プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−209717(P2012−209717A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73218(P2011−73218)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】