説明

感光性樹脂組成物、そのドライフィルム及びそれらを用いたプリント配線板

【課題】ノンハロゲン組成で環境負荷が少なく、難燃性で低反り、折り曲げ性、はんだ耐熱性、金めっき耐性等の諸特性に優れるアルカリ現像可能なプリント配線板用感光性樹脂組成物、そのドライフィルム、並びにこれらによりソルダーレジスト等の難燃性の硬化皮膜が形成されてなるプリント配線板を提供する。
【解決手段】感光性樹脂組成物は、ビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂、光重合開始剤、水酸化アルミニウム及び/又はリン含有化合物を含有する。前記各成分の他にさらに分子中に複数の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分を含有することにより、光硬化性熱硬化性樹脂組成物とすることができ、さらに着色剤を含有することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノンハロゲン組成で環境負荷が少なく、難燃性で低反り、折り曲げ性に優れたソルダーレジストを形成できる感光性樹脂組成物に関する。本発明はまた、かかる感光性樹脂組成物を用いたドライフィルム及び難燃性のプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板及びフレキシブル配線板(以下、FPCと略称する)は、電子機器に搭載されるため難燃性が要求され、これらの一部であるソルダーレジストにも難燃性が要求されている。この中でも、FPCは、通常、ポリイミド基板であり、ガラスエポキシ基板のプリント配線板とは異なり薄膜である。しかしながら、塗布されるべきソルダーレジストは、プリント配線板もFPCも同じ膜厚であるため、薄膜のFPCの場合、相対的にソルダーレジストへの難燃化の負担が大きくなる。
【0003】
そのため、従来からソルダーレジストの難燃化について種々の提案がなされている。例えば、特開2007−10794号公報(特許文献1)には、(a)バインダポリマー、(b)ブロモフェニル基等のハロゲン化芳香環と、(メタ)アクリロイル基等の重合可能なエチレン性不飽和結合とを分子中に有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤、(d)ブロックイソシアネート化合物、及び(e)分子中にリン原子を有するリン含有化合物を含有するFPC用の難燃性の感光性樹脂組成物が提案されている。しかしながら、ハロゲン化芳香環と重合可能な不飽和二重結合を有する化合物のような、ハロゲン化合物の使用は環境負荷の観点から好ましくない。
【0004】
さらに、FPCに代表される薄膜のプリント基板は、ソルダーレジストの光硬化もしくは熱硬化の際に、硬化収縮による反りが問題視されている。
一方、ハロゲンフリーで難燃性のソルダーレジストとしては、例えば、特開2007−41107号公報(特許文献2)には、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との反応生成物に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ水溶液可溶性樹脂、硬化剤としてのビフェニルノボラック型エポキシ樹脂及び光重合開始剤を含有するアルカリ水溶液可溶性感光性樹脂組成物が提案されているが、低反り及び屈曲性に関しては充分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−10794号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2007−41107号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、ノンハロゲン組成で環境負荷が少なく、難燃性で低反り、折り曲げ性に優れ、プリント配線板、特にTAB(テープ・オートメーテッド・ポンディング)、COF(チップ・オン・フィルム)などに代表されるフレキシブル配線板(FPC)用のソルダーレジストとして最適であり、また、はんだ耐熱性、金めっき耐性等の諸特性にも優れるアルカリ現像可能なプリント配線板用感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
さらに本発明の目的は、かかる感光性樹脂組成物を用いることによって、低反りで難燃性や折り曲げ性等の諸特性に優れたドライフィルム及びこのような優れた特性の難燃性皮膜を有するプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明によれば、ビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂、光重合開始剤、及び水酸化アルミニウム及び/又はリン含有化合物を含有することを特徴とするアルカリ現像可能なプリント配線板用感光性樹脂組成物が提供される。
【0008】
好適な態様においては、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂は、ビフェニルノボラック構造を有するエポキシ樹脂に一塩基酸を反応させて得られるジオール化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物と、ジイソシアネート化合物とを反応させることにより得られるカルボキシル基含有ウレタン樹脂である。また、前記光重合開始剤は、オキシムエステル化合物を含むことが好ましい。別の好適な態様においては、前記各成分の他にさらに熱硬化性成分を含有することにより、光硬化性熱硬化性樹脂組成物とすることができる。他の好適な態様においては、さらに着色剤を含有する。このような感光性樹脂組成物は、プリント配線板のソルダーレジスト形成に好適に用いることができる。
【0009】
また、本発明によれば、前記感光性樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥して得られるドライフィルムが提供される。さらに本発明によれば、前記感光性樹脂組成物を基材上に塗布して形成した塗膜、又は前記感光性樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥して得られるドライフィルムを基材上にラミネートし形成した塗膜を、パターン状に光硬化させて得られる硬化皮膜を有するプリント配線板も提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物は、ビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂、光重合開始剤、水酸化アルミニウム及び/又はリン含有化合物を含有することにより、ノンハロゲン組成で環境負荷が少なく、難燃性で低反り、折り曲げ性に優れると共に、はんだ耐熱性、金めっき耐性等の諸特性にも優れた皮膜を形成することができる。従って、本発明の感光性樹脂組成物を用いることによって、低反りで難燃性や折り曲げ性等の諸特性に優れたドライフィルム及びこのような優れた特性の難燃性のソルダーレジスト皮膜を有するプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、前記した課題を達成すべく鋭意研究した結果、ビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂、光重合開始剤、水酸化アルミニウム及び/又はリン含有化合物を含有する感光性樹脂組成物は、低そりで且つ折り曲げ性に優れ、更には難燃性にも著しい効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。これらの諸特性を全て達成することは、従来技術の問題点から見て驚くべき効果であった。
以下、本発明の感光性樹脂組成物の各構成成分について詳しく説明する。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物に含まれるビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂としては、下式(I)の構造を有するビフェニルノボラック構造を有するエポキシ樹脂に一塩基酸を反応させて得られるジオール化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物と、ジイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる樹脂を好適に用いることができる。
【化1】

(式中、nは平均値を表し、1.01〜5である)
上記ビフェニルノボラック構造を有するエポキシ樹脂は、NC−3000(日本化薬(株)製)として市販されている。
【0013】
前記一塩基酸としては、特に制限はないが、得られるカルボキシル基含有ウレタン樹脂に感光性基(アクリロイル基もしくはメタクリロイル基)を導入して光硬化性を付与できる点から、不飽和モノカルボン酸、特に(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、β−アクリロキシプロピオン酸、1個のヒドロキシル基と1個の(メタ)アクリロイル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと二塩基酸無水物との反応物、1個のヒドロキシル基と複数の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと二塩基酸無水物との反応物、これらの一塩基酸のカプロラクトン変性物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも好ましいものは、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリロイル基を有するものである。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0014】
前記ビフェニルノボラック構造を有するエポキシ樹脂と一塩基酸の反応には、エポキシ基とカルボキシル基の反応の従来公知の方法を採用することができる。例えば、後述するような有機溶剤の存在下又は非存在下で、ハイドロキノンや酸素等の重合禁止剤の存在下、通常、約50〜150℃で反応を行う。このとき必要に応じて、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物等を触媒として添加してもよい。
また、上記反応における各成分の割合(原料の仕込み割合)は、ビフェニルノボラック構造を有するエポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、一塩基酸の酸基が1.0〜1.2当量となる割合が好ましい。
【0015】
上記のようにビフェニルノボラック構造を有するエポキシ樹脂に一塩基酸を反応させて得られるジオール化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物と、ジイソシアネート化合物とを反応させることにより、本発明のビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂が得られる。このウレタン化反応には、従来公知の方法を採用できる。反応は、室温〜100℃で撹拌・混合することにより無触媒で進行するが、反応速度を高めるために例えば約70〜100℃に加熱することが好ましい。また、上記反応における各成分の割合(原料の仕込み割合)は、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基1当量に対して、ジオール化合物(ビフェニルノボラック構造を有するエポキシ樹脂に一塩基酸を反応させて得られるジオール化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物)の合計水酸基が1.0〜2.5当量となる割合が好ましい。ビフェニルノボラック構造を有するエポキシ樹脂に一塩基酸を反応させて得られるジオール化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物の水酸基当量比は、2:8〜8:2となる割合が好ましい。
【0016】
前記ビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成に用いられるカルボキシル基含有ジオール化合物としては、特に制限は無く、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸や、3官能以上のポリオール化合物と多塩基酸無水物との反応生成物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、あるいは2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
前記ビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成に用いられるジイソシアネート化合物としては、公知慣用の芳香族あるいは脂肪族ジイソシアネート化合物を使用することができる。それらの中でも、ホスゲン法を用いて合成されていないジイソシアネート化合物が、得られる樹脂のハロゲン量を低減化するために好ましい。さらには、得られるビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂の柔軟性向上等の観点から、脂肪族イソシアネートが更に好ましい。具体例としては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いてもよい。上記ジイソシアネート化合物の中でも、柔軟性の点から、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを使用することが特に好ましい。
【0018】
前記ビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、熱硬化の際の架橋点となる。また、感光性組成物とした際にはアルカリ水溶液による現像が可能になる。
【0019】
また、前記ビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂の酸価は、30〜200mgKOH/gの範囲が望ましく、より好ましくは40〜120mgKOH/gの範囲である。アルカリ現像性の観点では、カルボキシル基含有ウレタン樹脂の酸価が30mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、200mgKOH/gを超えると、現像液による露光部の溶解が進むために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となるので好ましくない。
【0020】
また、前記ビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000、さらには5,000〜100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000未満であると、耐熱性が不十分である。一方、重量平均分子量が150,000を超えると貯蔵安定性が劣ることがある。
【0021】
このようなビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂の配合量は、全組成物中に、5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%である。上記範囲より少ない場合、塗膜強度が低下したりするので好ましくない。一方、上記範囲より多い場合、粘性が高くなったり、塗布性等が低下するので好ましくない。
【0022】
前記光重合開始剤としては、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される1種以上の光重合開始剤を使用することができる。
【0023】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、市販品として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のCGI−325、イルガキュアー OXE01、イルガキュアー OXE02、アデカ社製N−1919、アデカアークルズNCI−831などが挙げられる。また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができ、具体的には、下記一般式で表されるカルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
【化2】

(式中、Xは、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、Y、Zはそれぞれ、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arは、炭素数1〜10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、チオフェン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5−ピロール−ジイル、4,4’−スチルベン−ジイル、4,2’−スチレン−ジイルを表し、nは0又は1の整数である。)
【0024】
特に前記式中、X、Yが、それぞれ、メチル基又はエチル基であり、Zはメチル又はフェニルであり、nは0であり、Arは、フェニレン、ナフチレン、チオフェン又はチエニレンであることが好ましい。
【0025】
このようなオキシムエステル系光重合開始剤の配合量は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部とすることが好ましい。0.01質量部未満であると、銅上での光硬化性が不足し、塗膜が剥離するとともに、耐薬品性などの塗膜特性が低下する。一方、5質量部を超えると、ソルダーレジスト塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。より好ましくは、0.5〜3質量部である。
【0026】
α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379などが挙げられる。
【0027】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASF社製のルシリンTPO、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー819などが挙げられる。
【0028】
これらα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の配合量は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂100質量部に対して、0.01〜15質量部であることが好ましい。0.01質量部未満であると、同様に銅上での光硬化性が不足し、塗膜が剥離するとともに、耐薬品性などの塗膜特性が低下する。一方、15質量部を超えると、アウトガスの低減効果が得られず、さらにソルダーレジスト塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。より好ましくは0.5〜10質量部である。
【0029】
その他、本発明の感光性樹脂組成物に好適に用いることができる光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、及びキサントン化合物などを挙げることができる。
【0030】
ベンゾイン化合物としては、具体的には、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0031】
アセトフェノン化合物としては、具体的には、例えばアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。
【0032】
アントラキノン化合物としては、具体的には、例えば2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなどが挙げられる。
【0033】
チオキサントン化合物としては、具体的には、例えば2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0034】
ケタール化合物としては、具体的には、例えばアセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
【0035】
ベンゾフェノン化合物としては、具体的には、例えばベンゾフェノン、4−ベンゾイルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−エチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−プロピルジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
【0036】
3級アミン化合物としては、具体的には、例えばエタノールアミン化合物、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物、例えば、市販品では、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達(株)製ニッソキュアーMABP)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学(株)製EAB)などのジアルキルアミノベンゾフェノン、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(7−(ジエチルアミノ)−4−メチルクマリン)などのジアルキルアミノ基含有クマリン化合物、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬(株)製カヤキュアーEPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure DMB)、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル(日本化薬(株)製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学(株)製EAB)などが挙げられる。
【0037】
これらのうち、チオキサントン化合物及び3級アミン化合物が好ましい。特に、チオキサントン化合物が含まれることが、深部硬化性の面から好ましい。中でも、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン化合物を含むことが好ましい。
【0038】
このようなチオキサントン化合物の配合量としては、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましい。チオキサントン化合物の配合量が20質量部を超えると、厚膜硬化性が低下するとともに、製品のコストアップに繋がる。より好ましくは10質量部以下である。
【0039】
また、3級アミン化合物としては、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物が好ましく、中でも、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、最大吸収波長が350〜450nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物及びケトクマリン類が特に好ましい。
【0040】
ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物としては、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンが、毒性も低く好ましい。ジアルキルアミノ基含有クマリン化合物は、最大吸収波長が350〜410nmと紫外線領域にあるため、着色が少なく、無色透明な感光性組成物はもとより、着色顔料を用い、着色顔料自体の色を反映した着色ソルダーレジスト膜を提供することが可能となる。特に、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンが、波長400〜410nmのレーザー光に対して優れた増感効果を示すことから好ましい。
【0041】
このような3級アミン化合物の配合量としては、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。3級アミン化合物の配合量が0.1質量部未満であると、十分な増感効果を得ることができない傾向にある。一方、20質量部を超えると、3級アミン化合物による乾燥ソルダーレジスト塗膜の表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。より好ましくは0.1〜10質量部である。
【0042】
これらの光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
このような光重合開始剤、光開始助剤、及び増感剤の総量は、前記ビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂100質量部に対して35質量部以下であることが好ましい。35質量部を超えると、これらの光吸収により深部硬化性が低下する傾向にある。
【0043】
特に本発明の感光性樹脂組成物は、オキシムエステル系光重合開始剤を用いることが好ましい。その効果は、少量でも十分な感度を得ることができるだけでなく、熱硬化時及び実装の際の後熱工程での光重合開始剤の揮発が少ないため、硬化塗膜の収縮を抑えることができるので、反りを大幅に低減化することが可能となる。
また、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の使用は、光反応時の深部硬化性を向上させ、更に光照射により開裂した開始剤由来リン含有化合物成分が硬化物ネットワークに組み込まれることにより、硬化塗膜中のリン濃度を効果的に高めることができ、更なる難燃性の向上を可能とする。
【0044】
なお、前記したような光重合開始剤、光開始助剤、及び増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として働くことがある。しかしながら、これらは組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、レジストのライン形状及び開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の加工精度を向上させることができる。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物では、オキシムエステル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤のどちらを用いても効果的であるが、上記のようなレジストのライン形状及び開口のバランス、加工精度の向上、更には低そり性、折り曲げ性、難燃性の向上等の点からは、オキシムエステル系光重合開始剤とアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の併用が更に好適である。
【0046】
前記水酸化アルミニウムとしては、汎用公知のものが使用でき、例えば昭和電工(株)製ハイジライトシリーズ、HW、H21、H31、H32、H42M、H43Mなどが使用できる。尚、水酸化アルミニウムの粒径が細かい方が耐折れ性に効果的であるので、予め溶剤や樹脂と一緒にビーズミル等で一次粒経まで分散加工し、フィルタリング等で3μm以上、より好ましくは1μm以上のものをろ過選別して使用したほうが、得られる硬化皮膜の難燃性、折り曲げ性の観点から好ましい。
【0047】
これら水酸化アルミニウムの配合量は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂100質量部に対して、0〜300質量部の範囲が望ましく、好ましくは0〜200質量部、より好ましくは0〜150質量部、さらに好ましくは10〜120質量部である。300質量部を超えると十分な折り曲げ性を得ることができない。
【0048】
本発明の感光性樹脂組成物は、リン含有化合物を含むことが好ましい。リン含有化合物としては、有機リン系難燃剤として慣用公知のものが良く、リン酸エステル及び縮合リン酸エステル、環状フォスファゼン化合物、フォスファゼンオリゴマーもしくは下記一般式(II)で表される化合物がある。
【化3】

式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子以外の置換基を示す。
【0049】
上記一般式(II)で表されるリン含有化合物の市販品としては、HCA、SANKO−220、M−ESTER、HCA−HQ(いずれも三光(株)の商品名)等がある。
【0050】
本発明において用いられる特に好ましいリン含有化合物としては、反応性基としてアクリレート基を有するものや、フェノール性水酸基を有するもの、オリゴマーもしくはポリマー、フォスファゼンオリゴマー、フォスフィン酸塩等が挙げられる。
【0051】
リン元素含有(メタ)アクリレートは、リン元素を有しており、且つ、分子中に複数の(メタ)アクリロイル基を有する化合物がよく、具体的には、前記一般式(II)におけるRとRが水素原子であり、Rが(メタ)アクリレート誘導体である化合物が挙げられる。一般に9,10−ジヒドロー9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイドと公知慣用の多官能(メタ)アクリレートモノマーとのマイケル付加反応により合成することができる。
【0052】
上記公知慣用の(メタ)アクリレートモノマーとしては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物もしくはカプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;及び上記ポリアルコール類のウレタンアクリレート類、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。
【0053】
フェノール性水酸基を有するリン含有化合物は、疎水性、耐熱性が高く、加水分解による電気特性の低下が無く、はんだ耐熱性が高い。また、好適な組み合わせとして、熱硬化性樹脂のうちエポキシ樹脂を用いた場合、エポキシ基と反応しネットワークに取り込まれるので硬化後にブリードアウトすることが無いという利点が得られる。市販品としては、三光(株)製HCA−HQなどがある。
【0054】
オリゴマーもしくはポリマーであるリン含有化合物は、アルキル鎖の影響により折り曲げ性の低下が少なく、また分子量が大きいため硬化後のブリードアウトが無いという利点が得られる。市販品としては、三光(株)製M−Ester−HP、東洋紡(株)製リン含有バイロン337などがある。
【0055】
フォスファゼンオリゴマーとしては、フェノキシフォスファゼン化合物が有効であり、置換もしくは無置換フェノキシフォスファゼンオリゴマー又は3量体、4量体、5量体の環状物があり、液状や固体粉末のものがあるが、いずれも好適に使用することができる。市販品としては、(株)伏見製薬所製FP−100、FP−300、FP−390などがある。この中でも、アルキル基もしくは水酸基やシアノ基などの極性基で置換されたフェノキシフォスファゼンオリゴマーが、カルボキシル基含有樹脂への溶解性が高く、多量に添加しても再結晶などの不具合がないため好ましい。
【0056】
また、フォスフィン酸塩を用いることにより、硬化塗膜柔軟性を損なわず難燃性を向上させることができる。このような耐熱性に優れるフォスフィン酸塩を用いることで実装時の熱プレスにおいて難燃剤のブリードアウトを抑えることができる。市販品としては、クラリアント社製のEXOLIT OP 930、EXOLIT OP 935などが挙げられる。
【0057】
これら難燃剤としてのリン含有化合物の配合量は、前記ビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂100質量部に対して、0〜200質量部の範囲が望ましく、特に好ましくは0〜100質量部、さらに好ましくは10〜80質量部である。これ以上多量に配合すると、得られる硬化皮膜の折り曲げ特性等が悪くなるので好ましくない。
【0058】
さらに本発明の感光性樹脂組成物には、耐熱性を付与するために、熱硬化性成分を加えることができる。本発明に用いられる熱硬化性成分としては、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用の熱硬化性樹脂が使用できる。これらの中でも好ましい熱硬化成分は、1分子中に複数の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略称する)を有する熱硬化性成分である。これら環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、市販されている種類が多く、その構造によって多様な特性を付与することができる。
【0059】
このような分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4又は5員環の環状エーテル基、又は環状チオエーテル基のいずれか一方又は2種類の基を複数有する化合物であり、例えば、分子中に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子中に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子中に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0060】
前記多官能エポキシ化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、大日本インキ化学工業社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社のアラルダイド6071、アラルダイド6084、アラルダイドGY250、アラルダイドGY260、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjERYL903、大日本インキ化学工業社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド8011、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドECN1235、アラルダイドECN1273、アラルダイドECN1299、アラルダイドXPY307、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、NC−3000H、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン社製jER807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjER604、東都化成社製のエポトートYH−434、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドMY720、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY−350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、旭電化工業社製EPX−30、大日本インキ化学工業社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjERYL−931、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドPT810、日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鐵化学社製ESN−190、ESN−360、大日本インキ化学工業社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、EXA−4816、EXA−4822、EXA−4850シリーズの柔軟強靭エポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物が好ましい。
【0061】
前記多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0062】
前記分子中に複数の環状チオエーテル基を有するエピスルフィド樹脂としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のYL7000(ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂)や、東都化成(株)製YSLV−120TEなどが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0063】
前記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂のカルボキシル基1当量に対して、好ましくは0.6〜2.5当量、より好ましくは、0.8〜2.0当量となる範囲である。分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量が0.6未満である場合、ソルダーレジスト膜にカルボキシル基が残り、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが低下するので、好ましくない。一方、2.5当量を超える場合、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することにより、塗膜の強度などが低下するので、好ましくない。
【0064】
また、好適に用いることができる他の熱硬化性成分としては、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体などのアミノ樹脂が挙げられる。例えばメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物及びメチロール尿素化合物などがある。さらに、アルコキシメチル化メラミン化合物、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン化合物、アルコキシメチル化グリコールウリル化合物及びアルコキシメチル化尿素化合物は、それぞれのメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物及びメチロール尿素化合物のメチロール基をアルコキシメチル基に変換することにより得られる。このアルコキシメチル基の種類については特に限定されるものではなく、例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等とすることができる。特に人体や環境に優しいホルマリン濃度が0.2%以下のメラミン誘導体が好ましい。
【0065】
これらの市販品としては、例えばサイメル300、同301、同303、同370、同325、同327、同701、同266、同267、同238、同1141、同272、同202、同1156、同1158、同1123、同1170、同1174、同UFR65、同300(以上、三井サイアナミッド(株)製)、ニカラックMx−750、同Mx−032、同Mx−270、同Mx−280、同Mx−290、同Mx−706、同Mx−708、同Mx−40、同Mx−31、同Ms−11、同Mw−30、同Mw−30HM、同Mw−390、同Mw−100LM、同Mw−750LM、(以上、(株)三和ケミカル製)等を挙げることができる。
上記熱硬化性成分は単独で又は2種以上を併用することができる。
【0066】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、組成物の硬化性及び得られる硬化膜の強靭性を向上させるために1分子中に複数のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物を加えることができる。このような1分子中に複数のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物は、1分子中に複数のイソシアネート基を有する化合物、すなわちポリイソシアネート化合物、又は1分子中に複数のブロック化イソシアネート基を有する化合物、すなわちブロックイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0067】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが用いられる。芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート及び2,4−トリレンダイマーが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及びイソホロンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートの具体例としてはビシクロヘプタントリイソシアネートが挙げられる。並びに先に挙げられたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体が挙げられる。
【0068】
ブロックイソシアネート化合物に含まれるブロック化イソシアネート基は、イソシアネート基がブロック剤との反応により保護されて一時的に不活性化された基である。所定温度に加熱されたときにそのブロック剤が解離してイソシアネート基が生成する。
【0069】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いられる。ブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型等が挙げられる。このイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが用いられる。芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、先に例示したような化合物が挙げられる。
【0070】
イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノール及びエチルフェノール等のフェノール系ブロック剤;ε−カプロラクタム、δ−パレロラクタム、γ−ブチロラクタム及びβ−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンなどの活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルエーテル、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチル及び乳酸エチル等のアルコール系ブロック剤;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミド及びマレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;キシリジン、アニリン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;メチレンイミン及びプロピレンイミン等のイミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0071】
ブロックイソシアネート化合物は市販のものであってもよく、例えば、スミジュールBL−3175、BL−4165、BL−1100、BL−1265、デスモジュールTPLS−2957、TPLS−2062、TPLS−2078、TPLS−2117、デスモサーム2170、デスモサーム2265(以上、住友バイエルウレタン社製、商品名)、コロネート2512、コロネート2513、コロネート2520(以上、日本ポリウレタン工業社製、商品名)、B−830、B−815、B−846、B−870、B−874、B−882(以上、三井武田ケミカル社製、商品名)、TPA−B80E、17B−60PX、E402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。なお、スミジュールBL−3175、BL−4265はブロック剤としてメチルエチルオキシムを用いて得られるものである。
【0072】
上記の1分子中に複数のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような1分子中に複数のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物の配合量は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂100質量部に対して、1〜100質量部、より好ましくは、2〜70質量部の割合が適当である。前記配合量が、1質量部未満の場合、十分な塗膜の強靭性が得られず、好ましくない。一方、100質量部を超えた場合、保存安定性が低下するので好ましくない。
【0073】
本発明の感光性樹脂組成物には、水酸基やカルボキシル基とイソシアネート基との硬化反応を促進させるためにウレタン化触媒を加えることができる。ウレタン化触媒としては、錫系触媒、金属塩化物、金属アセチルアセトネート塩、金属硫酸塩、アミン化合物、又は/及びアミン塩よりなる群から選択される1種以上のウレタン化触媒を使用することが好ましい。
【0074】
前記錫系触媒としては、例えばスタナスオクトエート、ジブチルすずジラウレートなどの有機すず化合物、無機すず化合物などが挙げられる。
【0075】
前記金属塩化物としては、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、Cu又はAlからなる金属の塩化物で、例えば、塩化第二コバルト、塩化第一ニッケル、塩化第二鉄などが挙げられる。
【0076】
前記金属アセチルアセトネート塩としては、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、Cu又はAlからなる金属のアセチルアセトネート塩であり、例えば、コバルトアセチルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネートなどが挙げられる。
【0077】
前記金属硫酸塩としては、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、Cu又はAlからなる金属の硫酸塩で、例えば、硫酸銅などが挙げられる。
【0078】
前記アミン化合物としては、例えば、従来公知のトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、N,N−ジメチルエタノールアミン、ジモルホリノジエチルエーテル、N−メチルイミダゾール、ジメチルアミノピリジン、トリアジン、N’−(2−ヒドロキシエチル)−N,N,N’−トリメチルービス(2−アミノエチル)エーテル、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N’,N”,N”−テトラメチルジエチレントリアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N’,N”,N”−テトラメチルジエチレントリアミン、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、2−アミノキヌクリジン、3−アミノキヌクリジン、4−アミノキヌクリジン、2−キヌクリジオール、3−キヌクリジノール、4−キヌクリジノール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)イミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、メラミン又は/及びベンゾグアナミンなどが挙げられる。
【0079】
前記アミン塩としては、例えば、DBU(1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7)の有機酸塩系のアミン塩などが挙げられる。
【0080】
前記ウレタン化触媒の配合量は、通常の量的割合で充分であり、例えば前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10.0質量部である。
【0081】
前記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を使用する場合、熱硬化触媒を含有することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業(株)製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT(登録商標)3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を前記熱硬化触媒と併用する。
【0082】
これら熱硬化触媒の配合量は、通常の量的割合で充分であり、例えば前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂又は分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
【0083】
本発明の感光性樹脂組成物は、着色剤を配合することができる。着色剤としては、赤、青、緑、黄などの慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyers and Colourists)発行)番号が付されているものを挙げることができる。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しないことが好ましい。
【0084】
赤色着色剤:
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがあり、具体的には以下のものが挙げられる。
モノアゾ系:Pigment Red 1, 2, 3, 4, 5, 6, 8, 9, 12, 14, 15, 16, 17, 21, 22, 23, 31, 32, 112, 114, 146, 147, 151, 170, 184, 187, 188, 193, 210, 245, 253, 258, 266, 267, 268, 269。
ジスアゾ系:Pigment Red 37, 38, 41。
モノアゾレーキ系:Pigment Red 48:1, 48:2, 48:3, 48:4, 49:1, 49:2, 50:1, 52:1, 52:2, 53:1, 53:2, 57:1, 58:4, 63:1, 63:2, 64:1,68。
ベンズイミダゾロン系:Pigment Red 171、Pigment Red 175、Pigment Red 176、Pigment Red 185、Pigment Red 208。
ぺリレン系:Solvent Red 135、Solvent Red 179、Pigment Red 123、Pigment Red 149、Pigment Red 166、Pigment Red 178、Pigment Red 179、Pigment Red 190、Pigment Red 194、Pigment Red 224。
ジケトピロロピロール系:Pigment Red 254、Pigment Red 255、Pigment Red 264、Pigment Red 270、Pigment Red 272。
縮合アゾ系:Pigment Red 220、Pigment Red 144、Pigment Red 166、Pigment Red 214、Pigment Red 220、Pigment Red 221、Pigment Red 242。
アンスラキノン系:Pigment Red 168、Pigment Red 177、Pigment Red 216、Solvent Red 149、Solvent Red 150、Solvent Red 52、Solvent Red 207。
キナクリドン系:Pigment Red 122、Pigment Red 202、Pigment Red 206、Pigment Red 207、Pigment Red 209。
【0085】
青色着色剤:
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には:Pigment Blue 15、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:6、Pigment Blue 16、Pigment Blue 60。
染料系としては、Solvent Blue 35、Solvent Blue 63、Solvent Blue 68、Solvent Blue 70、Solvent Blue 83、Solvent Blue 87、Solvent Blue 94、Solvent Blue 97、Solvent Blue 122、Solvent Blue 136、Solvent Blue 67、Solvent Blue 70等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0086】
緑色着色剤:
緑色着色剤としては、同様にフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系があり、具体的にはPigment Green 7、Pigment Green 36、Solvent Green 3、Solvent Green 5、Solvent Green 20、Solvent Green 28等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0087】
黄色着色剤:
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等があり、具体的には以下のものが挙げられる。
アントラキノン系:Solvent Yellow 163、Pigment Yellow 24、Pigment Yellow 108、Pigment Yellow 193、Pigment Yellow 147、Pigment Yellow 199、Pigment Yellow 202。
イソインドリノン系:Pigment Yellow 110、Pigment Yellow 109、Pigment Yellow 139、Pigment Yellow 179、Pigment Yellow 185。
縮合アゾ系:Pigment Yellow 93、Pigment Yellow 94、Pigment Yellow 95、Pigment Yellow 128、Pigment Yellow 155、Pigment Yellow 166、Pigment Yellow 180。
ベンズイミダゾロン系:Pigment Yellow 120、Pigment Yellow 151、Pigment Yellow 154、Pigment Yellow 156、Pigment Yellow 175、Pigment Yellow 181。
モノアゾ系:Pigment Yellow 1, 2, 3, 4, 5, 6, 9, 10, 12, 61, 62, 62:1, 65, 73, 74, 75, 97, 100, 104, 105, 111, 116, 167, 168, 169, 182, 183。
ジスアゾ系:Pigment Yellow 12, 13, 14, 16, 17, 55, 63, 81, 83, 87, 126, 127, 152, 170, 172, 174, 176, 188, 198。
【0088】
その他、色調を調整する目的で紫、オレンジ、茶色、黒などの着色剤を加えてもよい。
具体的に例示すれば、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet 13、36、C.I.ピグメントオレンジ1、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ14、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ46、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ63、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7等がある。
【0089】
前記したような着色剤の配合割合は、特に制限はないが、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂100質量部に対して、好ましくは0〜10質量部、特に好ましくは0.1〜5質量部の割合で充分である。
【0090】
本発明の感光性樹脂組成物は、分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する感光性化合物を用いることができる。これは、活性エネルギー線照射により、光硬化して、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂を、アルカリ水溶液に不溶化、又は不溶化を助けるものである。このような化合物としては、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが使用でき、具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε−カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;上記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。
【0091】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などが、挙げられる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0092】
特に本発明では、多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε−カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類や、フェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類、更には(メタ)アクリレート含有ウレタンオリゴマー類が低そり性、折り曲げ性の観点から好適に用いることができる。
【0093】
このような分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物の配合量は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂100質量部に対して、5〜100質量部、より好ましくは、5〜70質量部の割合である。前記配合量が、5質量部未満の場合、光硬化性が低下し、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像により、パターン形成が困難となるので、好ましくない。一方、100質量部を超えた場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が低下して、塗膜が脆くなるので、好ましくない。
【0094】
本発明の感光性樹脂組成物は、その塗膜の物理的強度等を上げるために、必要に応じて、フィラーを配合することができる。このようなフィラーとしては、公知慣用の無機又は有機フィラーが使用できるが、特に硫酸バリウム、球状シリカ及びタルクが好ましく用いられる。さらに、白色の外観や難燃性を得るために酸化チタンや金属酸化物などの金属水酸化物を体質顔料フィラーとしても使用することができる。これらフィラーの配合量は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂100質量部に対して、好ましくは300質量部以下、より好ましくは0.1〜200質量部、特に好ましくは、1〜100質量部である。フィラーの配合量が、300質量部を超えた場合、組成物の粘度が高くなり、印刷性が低下したり、硬化物が脆くなるので好ましくない。
【0095】
さらに本発明の感光性樹脂組成物は、指触乾燥性の改善、ハンドリング性の改善などを目的に、バインダーポリマーを使用することができる。例えばポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリエステルウレタン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリエステルアミド系ポリマー、アクリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリ乳酸系ポリマー、フェノキシ系ポリマー等を用いることができる。これらのバインダーポリマーは、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
【0096】
さらに本発明の感光性樹脂組成物は、柔軟性の付与、硬化物の脆さを改善することなどを目的にエラストマーを使用することができる。例えばポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステルウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステルアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマーを用いることができる。また、種々の骨格を有するエポキシ樹脂の一部又は全部のエポキシ基を両末端カルボン酸変性型ブタジエン−アクリロニトリルゴムで変性した樹脂なども使用できる。更にはエポキシ含有ポリブタジエン系エラストマー、アクリル含有ポリブタジエン系エラストマー、水酸基含有ポリブタジエン系エラストマー、水酸基含有イソプレン系エラストマー等も使用することができる。これらのエラストマーは、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
【0097】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成や組成物の調製のため、又は基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0098】
一般に、高分子材料の多くは、一度酸化が始まると、次々と連鎖的に酸化劣化が起き、高分子素材の機能低下をもたらすことから、本発明の感光性樹脂組成物には、酸化を防ぐために、発生したラジカルを無効化するようなラジカル捕捉剤又は/及び発生した過酸化物を無害な物質に分解して新たなラジカルが発生しないようにする過酸化物分解剤などの酸化防止剤を添加することができる。特に本発明に用いられるブタジエン系エラストマーを使用する組成物に、酸化防止剤を使用すると、PCT耐性が向上し、HAST時の剥がれや変色が少なくなり、効果的である。
【0099】
ラジカル捕捉剤として働く酸化防止剤としては、具体的な化合物としては、ヒドロキノン、4−t−ブチルカテコール、2−t−ブチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン等のフェノール系、メタキノン、ベンゾキノン等のキノン系化合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、フェノチアジン等のアミン系化合物等などが挙げられる。
【0100】
ラジカル捕捉剤は市販のものであってもよく、例えば、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−330、アデカスタブAO−20、アデカスタブLA−77、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−68、アデカスタブLA−87(以上、旭電化(株)製、商品名)、IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1135、TINUVIN 111FDL、TINUVIN 123、TINUVIN 144、TINUVIN 152、TINUVIN 292、TINUVIN 5100(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)などが挙げられる。
【0101】
過酸化物分解剤として働く酸化防止剤としては、具体的な化合物としてトリフェニルフォスファイト等のリン系化合物、ペンタエリスリトールテトララウリルチオプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート等の硫黄系化合物などが挙げられる。
【0102】
過酸化物分解剤は市販のものであってもよく、例えば、アデカスタブTPP(旭電化(株)製、商品名)、マークAO−412S(アデカ・アーガス化学(株)製、商品名)、スミライザーTPS(住友化学(株)製、商品名)などが挙げられる。
上記の酸化防止剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0103】
また一般に、高分子材料は光を吸収し、それにより分解・劣化を起こすことから、本発明の感光性樹脂組成物には、紫外線に対する安定化対策を行うために、上記酸化防止剤の他に、紫外線吸収剤を使用することができる。
【0104】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、シンナメート誘導体、アントラニレート誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体などが挙げられる。ベンゾフェノン誘導体の具体的な例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン及び2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。ベンゾエート誘導体の具体的な例としては、2−エチルヘキシルサリチレート、フェニルサリチレート、p−t−ブチルフェニルサリチレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート及びヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール誘導体の具体的な例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)べンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。トリアジン誘導体の具体的な例としては、ヒドロキシフェニルトリアジン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどが挙げられる。
【0105】
紫外線吸収剤としては市販のものであってもよく、例えば、TINUVIN PS、TINUVIN 99−2、TINUVIN 109、TINUVIN 384−2、TINUVIN 900、TINUVIN 928、TINUVIN 1130、TINUVIN 400、TINUVIN 405、TINUVIN 460、TINUVIN 479(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)などが挙げられる。
【0106】
上記の紫外線吸収剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、前記酸化防止剤と併用することで本発明の感光性樹脂組成物より得られる成形物の安定化が図れる。
【0107】
本発明の感光性樹脂組成物には、感度を向上するために連鎖移動剤として公知慣用のNフェニルグリシン類、フェノキシ酢酸類、チオフェノキシ酢酸類、メルカプトチアゾール等を用いることができる。連鎖移動剤の具体例を挙げると、例えば、メルカプト琥珀酸、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メチオニン、システイン、チオサリチル酸及びその誘導体等のカルボキシル基を有する連鎖移動剤;メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプトプロパンジオール、メルカプトブタンジオール、ヒドロキシベンゼンチオール及びその誘導体等の水酸基を有する連鎖移動剤;1−ブタンチオール、ブチル−3−メルカプトプロピオネート、メチル−3−メルカプトプロピオネート、2,2−(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エタンチオール、4−メチルベンゼンチオール、ドデシルメルカプタン、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、1−オクタンチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、チオグリセロール、4,4−チオビスベンゼンチオール等である。
【0108】
また、多官能性メルカプタン系化合物を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサン−1,6−ジチオール、デカン−1,10−ジチオール、ジメルカプトジエチルエーテル、ジメルカプトジエチルスルフィド等の脂肪族チオール類、キシリレンジメルカプタン、4,4′−ジメルカプトジフェニルスルフィド、1,4−ベンゼンジチオール等の芳香族チオール類;エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、ポリエチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、プロピレングリコールビス(メルカプトアセテート)、グリセリントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(メルカプトアセテート)等の多価アルコールのポリ(メルカプトアセテート)類;エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ポリエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、グリセリントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)等の多価アルコールのポリ(3−メルカプトプロピオネート)類;1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリリトールテトラキス(3−メルタプトブチレート)等のポリ(メルカプトブチレート)類を用いることができる。
【0109】
これらの市販品としては、例えばBMPA、MPM、EHMP、NOMP、MBMP、STMP、TMMP、PEMP、DPMP、及びTEMPIC(以上、堺化学工業(株)製)、カレンズMT−PE1、カレンズMT−BD1、及びカレンズ−NR1(以上、昭和電工(株)製)等を挙げることができる。
【0110】
さらに、連鎖移動剤として働くメルカプト基を有する複素環化合物として、例えば、メルカプト−4−ブチロラクトン(別名:2−メルカプト−4−ブタノリド)、2−メルカプト−4−メチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−エチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、2−メルカプト−5−バレロラクトン、2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルチオ−チアジアゾール、2−メルカプト−6−ヘキサノラクタム、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン(三協化成(株)製:商品名 ジスネットF)、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン(三協化成(株)製:商品名 ジスネットDB)、及び2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン(三協化成(株)製:商品名 ジスネットAF)等が挙げられる。
【0111】
特に、感光性樹脂組成物の現像性を損なうことがない連鎖移動剤であるメルカプト基を有する複素環化合物として、メルカプトベンゾチアゾール、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾールが好ましい。これらの連鎖移動剤は、単独又は2種以上を併用することができる。
【0112】
本発明の感光性樹脂組成物には、層間の密着性、又は感光性樹脂層と基材との密着性を向上させるために密着促進剤を用いることができる。具体的に例を挙げると例えば、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール(商品名:川口化学工業(株)製アクセルM)、3−モルホリノメチル−1−フェニル−トリアゾール−2−チオン、5−アミノ−3−モルホリノメチル−チアゾール−2−チオン、2−メルカプト−5−メチルチオ−チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、アミノ基含有ベンゾトリアゾール、シランカップリング剤などがある。
【0113】
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイトなどのチキソ化剤を添加することができる。チキソ化剤としての経時安定性は有機ベントナイト、ハイドロタルサイトが好ましく、特にハイドロタルサイトは電気特性に優れている。また、熱重合禁止剤や、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、防錆剤、更にはビスフェノール系、トリアジンチオール系などの銅害防止剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0114】
前記熱重合禁止剤は、前記重合性化合物の熱的な重合又は経時的な重合を防止するために用いることができる。熱重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、アルキル又はアリール置換ハイドロキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−メトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、塩化第一銅、フェノチアジン、クロラニル、ナフチルアミン、β−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−4−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ピリジン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ピクリン酸、4−トルイジン、メチレンブルー、銅と有機キレート剤反応物、サリチル酸メチル、及びフェノチアジン、ニトロソ化合物、ニトロソ化合物とAlとのキレートなどが挙げられる。
【0115】
本発明の感光性樹脂組成物は、例えば前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。その後、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、もしくはレーザーダイレクト露光機により直接パターン露光し、未露光部をアルカリ水溶液(例えば0.3〜3%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。さらに、熱硬化性成分を含有している組成物の場合、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂のカルボキシル基と、分子中に複数の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分が反応し、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。尚、熱硬化性成分を含有していない場合でも、熱処理することにより、露光時に未反応の状態で残った光硬化性成分のエチレン性不飽和結合が熱ラジカル重合し、塗膜特性が向上するため、目的・用途により、熱処理(熱硬化)してもよい。
【0116】
上記基材としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布−エポキシ樹脂、ガラス−ポリイミド、ガラス布/不繊布−エポキシ樹脂、ガラス布/紙−エポキシ樹脂、合成繊維−エポキシ樹脂、フッ素樹脂・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等の複合材を用いた全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を用いることができる。
【0117】
本発明の感光性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法及びノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0118】
以下のように本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、揮発乾燥した後、得られた塗膜に対し、露光(活性エネルギー線の照射)を行う。塗膜は、露光部(活性エネルギー線により照射された部分)が硬化する。
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)、メタルハライドランプを搭載した露光機、(超)高圧水銀ランプを搭載した露光機、水銀ショートアークランプを搭載した露光機、もしくは(超)高圧水銀ランプなどの紫外線ランプを使用した直接描画装置を用いることができる。活性エネルギー線としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。また、その露光量は膜厚等によって異なるが、一般には5〜300mJ/cm、好ましくは5〜200mJ/cmである。上記直接描画装置としては、例えば日本オルボテック社製、ペンタックス社製等のものを使用することができ、最大波長が350〜410nmのレーザー光を発振する装置であればいずれの装置を用いてもよい。
【0119】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【0120】
本発明の感光性樹脂組成物は、液状で直接基材に塗布する方法以外にも、予めポリエチレンテレフタレート等のフィルムにソルダーレジストを塗布乾燥して形成したソルダーレジスト層を有するドライフィルムの形態で使用することもできる。本発明の感光性樹脂組成物をドライフィルムとして使用する場合を以下に示す。
【0121】
ドライフィルムは、キャリアフィルムと、ソルダーレジスト層と、必要に応じて用いられる剥離可能なカバーフィルムとが、この順序に積層された構造を有するものである。ソルダーレジスト層は、アルカリ現像性の感光性樹脂組成物をキャリアフィルム又はカバーフィルムに塗布乾燥して得られる層である。キャリアフィルムにソルダーレジスト層を形成した後に、カバーフィルムをその上に積層するか、カバーフィルムにソルダーレジスト層を形成し、この積層体をキャリアフィルムに積層すればドライフィルムが得られる。
【0122】
キャリアフィルムとしては、2〜150μmの厚みのポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。
【0123】
ソルダーレジスト層は、アルカリ現像性感光性樹脂組成物をブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等でキャリアフィルム又はカバーフィルムに10〜150μmの厚さで均一に塗布し乾燥して形成される。
【0124】
カバーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、ソルダーレジスト層との接着力が、キャリアフィルムよりも小さいものが良い。
【0125】
ドライフィルムを用いてプリント配線板上に保護膜(永久保護膜)を作製するには、カバーフィルムを剥がし、ソルダーレジスト層と回路形成された基材を重ね、ラミネーター等を用いて張り合わせ、回路形成された基材上にソルダーレジスト層を形成する。形成されたソルダーレジスト層に対し、前記と同様に露光、現像、加熱硬化すれば、硬化塗膜を形成することができる。キャリアフィルムは、露光前又は露光後のいずれかに剥離すればよい。
【実施例】
【0126】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。尚、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0127】
合成例1
攪拌装置、還流管をつけたフラスコ中に、1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ樹脂として、日本化薬(株)製 NC−3000(エポキシ当量255g/eq.)を300.0g、分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸としてアクリル酸を84.7g、熱重合禁止剤として2,6ージターシャリーブチルー4ーメチルフェノールを1.8g、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを1.8g、反応溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)207.2gを仕込み、反応温度98℃にて反応液酸価が1mgKOH/g以下になるまで反応させ、水酸基含有エポキシカルボキシレート化合物を得た。
次いで、得られた水酸基含有エポキシカルボキシレート化合物含有の反応液335.5g、カルボキシル基含有ジオール化合物としてジメチロールブタン酸60.7g、脂肪族系ジイソシアネート化合物として2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート104.1g、反応溶剤としてPGMEA 88.7gを仕込み、反応温度80℃で反応させ、NCO含有量が0.1%以下となったところを反応の終点とし、ビフェニル骨格を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂を得た(以下、ワニス1という)。固形分65%樹脂としての酸価は60mgKOH/gであった。
【0128】
ワニス2:
比較例1に用いたカルボキシル基含有樹脂は、感光性基含有でビスフェノールF構造の多官能エポキシを使用したカルボキシル基含有感光性樹脂であり、日本化薬(株)製ZFR−1124(固形分63%、樹脂としての酸価は102mgKOH/g)である。
【0129】
ワニス3:
比較例2に用いたカルボキシル基含有樹脂は、感光性基含有でビスフェノール構造の多官能エポキシを使用した感光性カルボキシル基含有樹脂であり、日本化薬(株)製ZCR−1601(固形分65%、樹脂としての酸価は98mgKOH/g)である。
【0130】
ワニス4:
比較例3に用いたカルボキシル基含有樹脂は、感光性基含有でウレタン構造を持つ感光性カルボキシル基含有樹脂であり、共栄社化学(株)製P7B−53(固形分53%、樹脂としての酸価は49mgKOH/g)である。
【0131】
水酸化アルミニウムスラリーの調製:
水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製ハイジライト42M)700gと、溶剤としてカルビトーアセテート295g、湿潤分散剤5gを混合攪拌し、ビーズミルにて0.5μmのジルコニアビーズを用い分散処理を行った。これを3回繰り返して3μmのフィルターを通した水酸化アルミニウムスラリーを作製した。
【0132】
シリカスラリーの調製:
真球状シリカ(アドマテック社製SO−E2)700g、溶剤としてカルビトールアセテート295g、シランカップリング剤としてビニルシランカップリング剤5gを混合攪拌したものを、上記と同じくビーズミルで分散処理を行った。これを3回繰り返して3μmフィルターでろ過したシリカスラリーを作製した。
【0133】
実施例1〜14、比較例1〜3
上記合成例の樹脂溶液を用い、表1及び表2に示す種々の成分とともに表1及び表2に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、ソルダーレジスト用感光性樹脂組成物を調製した。ここで、得られた感光性樹脂組成物の分散度をエリクセン社製グラインドメータによる粒度測定にて評価したところ、15μm以下であった。
【0134】
【表1】

【0135】
【表2】

【0136】
最適露光量:
上記実施例1〜14及び比較例1〜3の感光性樹脂組成物を、銅厚18μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスクリーン印刷法により全面に塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させた。乾燥後、メタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW−680−GW20)を用いてステップタブレット(Kodak No.2)を介して露光し、現像(30℃、0.2MPa、1wt%NaCO水溶液)を60秒で行った際残存するステップタブレットのパターンが6段の時を最適露光量とした。
【0137】
特性評価:
上記実施例1〜14及び比較例1〜3の各組成物を、回路パターン形成されたポリイミドフィルム基板上、又はカプトン100H(東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム、厚さ25μm)上にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で30分乾燥し、室温まで放冷した。得られた基板にメタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW−680−GW20)を用いて最適露光量でソルダーレジストパターンを露光し、30℃の1wt%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行い、レジストパターンを得た。この基板を、150℃で60分加熱して硬化した。得られたプリント基板(評価基板)に対して以下のように特性を評価した。
【0138】
<はんだ耐熱性>
回路パターン形成されたポリイミドフィルム基板上に作製した特性評価基板にロジン系フラックスを塗布し、予め260℃に設定したはんだ槽に浸漬し、変性アルコールでフラックスを洗浄した後、目視によるレジスト層の膨れ・剥がれについて評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:10秒間浸漬を1回で剥がれが認められない。
△:5秒間浸漬を1回で剥がれが認められない。
×:5秒間浸漬を1回でレジスト層に膨れ、剥がれがある。
【0139】
<耐無電解金めっき性>
市販品の無電解ニッケルめっき浴及び無電解金めっき浴を用いて、ニッケル3μm、金0.03μmの条件でめっきを行い、テープピーリングにより、レジスト層の剥がれの有無やめっきのしみ込みの有無を評価した後、テープピーリングによりレジスト層の剥がれの有無を評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:染み込み、剥がれが見られない。
△:めっき後に少し染み込みが確認されるが、テープピール後は剥がれない。
×:めっき後に剥がれが有る。
【0140】
<低反り性>
カプトン100H上に作製した硬化被膜を50×50mmに切り出し、4角の反りを測定して平均値を求め、以下の基準で評価した。
○:反りが0〜3mm未満であるもの。
△:反りが3mm以上、7mm未満であるもの。
×:反りが7mm以上であるもの。
【0141】
<折り曲げ性>
カプトン100H上に作製した硬化被膜を用いてはぜ折りを行い、クラックの入る手前の回数を記録した。
【0142】
<難燃性>
各実施例及び比較例の組成物を、25μm厚のポリイミドフィルム(カプトン100H)及び12.5μm厚のポリイミドフィルム(カプトン50H)にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で20分乾燥して室温まで放冷した。さらに裏面を同様にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で20分乾燥して室温まで放冷し、両面塗布基板を得た。得られた両面塗布基板にメタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW−680−GW20)を用いて最適露光量でソルダーレジストを全面露光し、30℃の1wt%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行い、次いで150℃で60分間熱硬化を行い、評価サンプルとした。この難燃性評価用サンプルついて、UL94規格に準拠した薄材垂直燃焼試験を行った。評価はUL94規格に基づいて、VTM−0又はVTM−1と表した。
【0143】
前記各評価試験の結果を表3、4にまとめて示す。
【表3】

【0144】
【表4】

【0145】
表3に示す結果から、実施例1〜14はフレキシブル配線板用ソルダーレジストに十分な低反り性、折り曲げ性を有し、且つ、優れた難燃性も兼ね備えていることが分かる。一方、表4に示されるように、比較例は低反り性、折り曲げ性と難燃性のバランスを達成するのが非常に困難なことを示している。
従って、本発明によれば、低そり性、折り曲げ性、難燃性の全てを兼ね備えた感光性樹脂組成物が得られることがわかる。
【0146】
実施例15〜28
前記実施例1〜14のシリコーン系消泡剤を除いた組成物をメチルエチルケトンで希釈し、PETフィルム上に塗布して80℃で30分乾燥し、厚さ20μmの感光性樹脂組成物層を形成した。さらにその上にカバーフィルムを貼り合わせてドライフィルムを作製し、それぞれ実施例15〜28とした。得られたドライフィルムからカバーフィルムを剥がし、パターン形成された銅箔基板に、フィルムを熱ラミネートし、次いで、前記実施例の塗膜特性評価に用いた基板と同様の条件で露光した。露光後、キャリアフィルムを剥がし、30℃の1wt%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行い、レジストパターンを得た。この基板を150℃で60分加熱して硬化し、得られた硬化皮膜を有する試験基板について、前述した試験方法及び評価方法にて、各特性の評価試験を行った。その結果を表5に示す。
【0147】
【表5】

【0148】
前記表3及び表5に示す結果から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物は低そり性とトレードオフの関係にあるはんだ耐熱性、耐無電解金めっき性を両立させるだけでなく、優れた折り曲げ性、さらには難燃性をも達成することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフェニルノボラック構造を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂、
光重合開始剤、
水酸化アルミニウム及び/又はリン含有化合物
を含有することを特徴とするアルカリ現像可能なプリント配線板用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂が、ビフェニルノボラック構造を有するエポキシ樹脂に一塩基酸を反応させて得られるジオール化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物と、ジイソシアネート化合物とを反応させることにより得られるカルボキシル基含有ウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤が、オキシムエステル化合物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに熱硬化性成分を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥して得られるドライフィルム。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を基材上に塗布して形成した塗膜、又は前記感光性樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥して得られるドライフィルムを基材上にラミネートし形成した塗膜を、パターン状に光硬化させて得られる硬化皮膜を有するプリント配線板。

【公開番号】特開2011−123420(P2011−123420A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282954(P2009−282954)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】