説明

感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物層、及びこれを用いたフォトレジストフィルム

【課題】レジスト膜厚が薄くても、可とう性及びテント膜強度信頼性に優れるうえ、解像度に優れた感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物層、及びフォトレジストフィルムを提供する。
【解決手段】
バインダーポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、光重合開始剤(C)及び一般式(1)で示される化合物(D)を含有してなる感光性樹脂組成物。
【化1】


ここで、m、nはそれぞれ0又は1であり、共に0にはならない。X、Yは炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基のいずれかで、同一であっても異なっていてもよく、また、X、Yのどちらか一方を介して2量体を形成していてもよい。Rは炭素数1〜12のアルキル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造や金属の精密加工等に用いられるエッチングレジスト又はめっきレジストとして有用な感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物層、及びこれを用いたフォトレジストフィルムに関するものであり、更に詳しくは、感光性樹脂組成物層の厚みが薄くても可とう性及びテント膜強度信頼性に優れるうえ、解像度に優れた感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物層、及びこれを用いたフォトレジストフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルム等のベースフィルム上に感光性樹脂組成物を層状に塗布乾燥成層し、その上からポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリビニルアルコールフィルム等の保護フィルムを積層した3層ラミネートフィルムは、一般にフォトレジストフィルムと称され、プリント配線板の製造用、金属の精密加工用等に広く利用されている。
その使用にあたっては、まずフォトレジストフィルムからベースフィルムまたは保護フィルムのうち接着力の小さいほうのフィルムを剥離除去して感光性樹脂組成物層の側を銅張基板の銅面等のパターンを形成させたい基材表面に貼り付けた後、パターンマスクを他方のフィルム上に当接させた状態で露光し(当該他方のフィルムを剥離除去してから露光する場合もある)、ついでその他方のフィルムを剥離除去して現像に供する。露光後の現像方式としては、溶剤現像型のものと希アルカリ現像型のものとがある。現像後は、エッチング処理又はめっき処理を施した後、硬化レジストの剥離除去を行い基材表面にパターンが形成される。
【0003】
近年、このようなフォトレジストフィルムに用いられる感光性樹脂組成物としては、プリント配線板の高密度等に伴い、解像度及び密着性に優れたものが求められており、例えば、(A)(メタ)アクリル酸 10〜15重量%及び炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル85〜90重量%を共重合成分として共重合して得られる重量平均分子量(Mw)が30,000〜70,000、重量平均分子量/数平均分子量の値(分散度)が2.0〜3.0のフィルム性付与ポリマー50〜70重量部、(B)エチレン性不飽和化合物30〜50重量部、(C)光重合開始剤0.5〜10重量部、(D)可塑剤1.0〜10重量部及び(E)顔料又は染料0.01〜3.0重量部を含有してなる感光性樹脂組成物(例えば、特許文献1参照。)や、第一の感光性樹脂組成物層及び第二の感光性樹脂組成物層を有してなり、第一の感光性樹脂組成物層及び第二の感光性樹脂組成物層が、(A)バインダーポリマー、(B)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー及び(C)光重合開始剤を含有してなる組成物であり、かつ、第二の感光性樹脂組成物層の厚みが1〜5μmであり、かつ365nmにおける吸光度が0.4〜1.5である感光性樹脂組成物層(例えば、特許文献2参照。)等が提案されている。
【特許文献1】特開平11−84652号公報
【特許文献2】特開2000−275861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1及び2の開示技術では、解像度や密着性はある程度良好であるもののまだまだ満足のいくものではなく、またフォトレジストフィルムとしての可とう性及びテント膜強度信頼性についても改良の余地があった。
即ち、上記エッチング処理又はめっき処理に当たっては、作業性やコスト面でエッチング処理のほうが有利であり、また、エッチング処理に際しては、エッチファクターがよくなることから、レジスト膜厚が薄いほどよいとされるが、レジスト膜厚が薄くなるとテント膜強度信頼性の低下が生じたり、現像時間が速くなり、機械の振動が大きくなることからレジストパターンが振動を拾いやすく、レジストパターンが割れるという問題が生じやすくなり、また、レジスト膜厚が20μm厚程度より薄くなると、基板からの乱反射により解像度が低下してしまうという傾向があり、可とう性、テント膜強度信頼性、解像度の点で更なる改良が求められている。
【0005】
そこで、本発明ではこのような背景下において、感光性樹脂組成物層の厚みが薄くても可とう性及びテント膜強度信頼性に優れるうえ、解像度に優れた感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物層、及びこれを用いたフォトレジストフィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかるに、本発明者等はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、バインダーポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、光重合開始剤(C)及び一般式(1)で示される化合物(D)を含有してなる感光性樹脂組成物が上記目的に合致することを見出し、本発明を完成するに至った。
【化1】

ここで、m、nはそれぞれ0又は1であり、共に0にはならない。X、Yは炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基のいずれかで、同一であっても異なっていてもよく、また、X、Yのどちらか一方を介して2量体を形成していてもよい。Rは炭素数1〜12のアルキル基である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の感光性樹脂組成物はバインダーポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、光重合開始剤(C)及び一般式(1)で示される化合物(D)を含有してなるため、感光性樹脂組成物層の厚みが薄くても可とう性及びテント膜強度信頼性に優れるうえ、解像度に優れた効果を有するものであり、特にエッチング用途に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いるバインダーポリマー(A)としては、特に限定されないが、カルボキシル基含有のアクリル系樹脂が好適に用いられ、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、エチレン性不飽和カルボン酸と、必要に応じて他の共重合可能なモノマーを共重合したアクリル系共重合体が用いられる。アセトアセチル基含有アクリル系共重合体を用いることもできる。
【0009】
ここで、(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリジシル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0010】
本発明では特に、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合成分全体に対して1〜35重量%、好ましくは5〜35重量%、更に好ましくは5〜30重量%含有することが可とう性の点で好ましく、かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2―メチルエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート等があげられる。
【0011】
エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸が好適に用いられ、その他、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等のジカルボン酸、あるいはそれらの無水物やハーフエステルも用いることができる。これらの中では、アクリル酸とメタクリル酸が特に好ましい。
かかるエチレン性不飽和カルボン酸は、共重合成分全体に対して16〜30重量%含有することが剥離性の点で好ましく、特には17〜29重量%、更には19〜27重量%が好ましい。
また、他の共重合可能モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、アルキルビニルエーテル等が例示できる。
【0012】
かくして得られるバイダーポリマー(A)のガラス転移温度(Tg)としては、30〜100℃であることが好ましく、特には30〜90℃、更には30〜80℃であることが好ましい。かかるガラス転移温度(Tg)が30℃未満では感光性フィルムをロール状態で保存する場合に、ロールの端面から感光性樹脂がしみ出す現象(コールドフロー)が起こるおそれがあり、100℃を超えるとレジストの凹凸追従性が低下するおそれがある。
【0013】
また、バインダーポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)としては40,000〜100,000であることが好ましく、特には40,000〜90,000、更には40,000〜80,000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が40,000未満では、ラミネート性の低下やラミネート時のカット屑が発生するなどフィルム付与性が低下するおそれがあり、逆に100,000を超えると解像度が低下するおそれがある。
【0014】
更に、バインダーポリマー(A)の酸価としては100〜200mgKOH/gであることが好ましく、特には110〜190mgKOH/g、更には120〜180mgKOH/gであることが好ましい。かかる酸価が100mgKOH/g未満では解像力が低下するおそれがあり、酸価が200mgKOH/gを超えると硬化レジストの耐現像液性が低下し、細線密着性の低下を招くおそれがある。
【0015】
次に、エチレン性不飽和化合物(B)としては、特に限定されないが、中でも重合性不飽和基を2個以上有するものが好ましく、例えば、2官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−{(メタ)アクリロキシポリエトキシ}フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−{(メタ)アクリロキシポリプロポキシ}フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−{(メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ}フェニル〕プロパン、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、又、3官能以上のモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパンが、可とう性の点で好ましい。
【0016】
これらの2官能以上のモノマーは2種類以上使用することも可能であると共に、下記の単官能モノマーを適当量併用することもできる。
単官能モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート等が挙げられる。中でも、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレートが剥離性、可とう性の点で好ましい。
【0017】
エチレン性不飽和化合物(B)の含有割合は、バインダーポリマー(A)と該エチレン性不飽和化合物(B)の合計100重量部に対して、5〜90重量部が好ましく、特に好ましくは20〜80重量部、更に好ましくは40〜60重量部である。5重量部未満では、硬化不良、可撓性の低下、現像速度の遅延を招き、90重量部を超えると粘着性の増大、コールドフロー、硬化レジストの剥離速度の低下を招くこととなり好ましくない。
【0018】
本発明で用いる光重合開始剤(C)としては、特に限定されず、公知の光重合開始剤を用いることができ、例えば、P,P′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、P,P′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、P,P′−ビス(ジブチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、ベンジルジフェニルジスルフィド、ベンジルジメチルケタール、ジベンジル、ジアセチル、アントラキノン、ナフトキノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、ジクロロアセトフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、フェニルグリオキシレート、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、ジベンゾスパロン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、トリブロモフェニルスルホン、トリブロモメチルフェニルスルホン、更には2,4,6−[トリス(トリクロロメチル)]−1,3,5−トリアジン、2,4−[ビス(トリクロロメチル)]−6−(4′−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−[ビス(トリクロロメチル)]−6−(4′−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−[ビス(トリクロロメチル)]−6−(ピペロニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−[ビス(トリクロロメチル)]−6−(4′−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン誘導体、アクリジン及び9−フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−フルオロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メトキシフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(p−メトキシフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,4,2′,4′−ビス[ビ(p−メトキシフェニル)]−5,5′−ジフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5,4′,5′−ジフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(p−メチルチオフェニル)−4,5,4′,5′−ジフェニル−1,1′−ビイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)−1,1′−ビイミダゾール、1,2′−、1,4′−、2,4′−で共有結合している互変異性体等のヘキサアリールビイミダゾール誘導体、トリフェニルフォスフィン、2−ベンゾイル−2−ジメチルアミノ−1−[4−モルフォリノフェニル]−ブタン等である。
【0019】
かかる光重合開始剤(C)の含有量としては、上記バインダーポリマー(A)及びエチレン性不飽和化合物(B)の合計100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜8重量部、特に好ましくは1〜6重量部である。かかる含有量が0.01重量部未満では感度が著しく低下して良好な作業性が得られず、逆に10重量部を超えるとフォトレジストフィルムとしたときの保存安定性が低下して好ましくない。
【0020】
本発明で用いられる一般式(1)で示される化合物(D)としては一般式(1)で示される化合物であれば特に限定されないが、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−n−プロピル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−i−プロピル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3,6−ジ−t−ブチルフェノール)等が挙げられ、中でも4,4’チオビス(3−メチル6−t−ブチルフェノール)が解像度の点で好適に用いられる。
【0021】
かかる化合物(D)の含有量としては、上記バインダーポリマー(A)及びエチレン性不飽和化合物(B)の合計100重量部に対して、0.001〜0.5重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.001〜0.4重量部、特に好ましくは0.001〜0.3重量部である。かかる含有量が0.001重量部未満では基板からの乱反射による解像度低下を抑えられず、逆に0.5重量部を超えると感度が低下して好ましくない。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物には、その他、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、マラカイトグリーンレイク、ブリリアントグリーン、パテントブルー、メチルバイオレット、ビクトリアブルー、ローズアニリン、パラフクシン、エチレンバイオレット、オイルブルー#603、オイルブルー#613等の着色染料、密着性付与剤、酸化防止剤、熱重合禁止剤、溶剤、表面張力改質材、安定剤、連鎖移動剤、消泡剤、難燃剤、可塑剤等の添加剤を適宜添加することができる。
【0023】
かくして得られる感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂組成物層を形成するが、普通、積層構造のフォトレジストフィルムとして用いられる。該フィルムは、支持体フィルム、感光性樹脂組成物層及び保護フィルムを順次積層したものである。
【0024】
本発明に用いられる支持体フィルムは、感光性樹脂組成物層を形成する際の耐熱性及び耐溶剤性を有するものが用いられ、前記支持体フィルムの具体例としては、例えば、通常、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム、アルミニウム箔等が挙げられるが、本発明では特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。尚、前記支持体フィルムの厚さは、該フィルムの材質によって異なるので一概には決定することができず、通常該フィルムの機械的強度等に応じて適宜調整されるが、通常は3〜50μm程度である。
又、本発明においては、かかる支持フィルムのヘイズが2.0以下であるフィルムを用いることが現像後のパターン品位の点で好ましい。
【0025】
前記感光性樹脂組成物層の厚さは、5〜20μmであることが好ましく、特に好ましくは7〜18μm、更に好ましくは10〜15μmである。5μm未満では塗工、乾燥する際に、被膜が不均一になったり、ピンホールが生じやすくなり、また20μmより厚い場合には、解像度、密着性の低下が起こったり、エッチング工程でより多くの時間を必要とする。
【0026】
また、前記感光性樹脂組成物層は、波長365nmにおける吸光度が0.3〜0.7であることが好ましく、特には0.3〜0.65、更には0.3〜0.6であることが好ましい。吸光度が0.3未満であると露光時に基板表面からの光乱反射による解像度の低下が起こるおそれがあり、0.7を越えると露光現像工程において感光性樹脂組成物層の底部の硬化度が低下し、密着性が低下するおそれがある。この感光性樹脂組成物層の波長365nmにおける吸光度を0.3〜0.7とするに当たっては光重合開始剤、紫外線吸収剤、染料の種類、濃度を適切に選択する等の方法があり、特に好ましくは光重合開始剤の濃度を調節する方法である。
【0027】
本発明に用いられる保護フィルムは、フォトレジストフィルムをロール状にして用いる場合に、粘着性を有する感光性樹脂層が支持体フィルムに転着したり、感光性樹脂層に埃などが付着するのを防止する目的で感光性樹脂層に積層して用いられる。かかる保護フィルムとしては、例えばポリエステルフィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、テフロンフィルム等が挙げられるが、本発明では、特にポリエチレンフィルムが好ましい。尚、該保護フィルムの厚さについては特に限定はなく、通常10〜50μm、なかんずく10〜30μmであればよい。
又、本発明においては、保護フィルムの感光性樹脂組成物層側表面の最大粗さ(Rz、JIS B 0601−2001)が0.2μm以下であり、かつ長径80μm以上のフィッシュアイの含有量が8個/m以下であるフィルムを用いることが感光性樹脂組成物層と基材界面とに空隙を生じさせない点で好ましい。
【0028】
上記の感光性樹脂組成物を支持体フィルム面に塗工した後、必要に応じてその塗工面の上から保護フィルムを被覆してフォトレジストフィルムとする。
支持体フィルムと感光性樹脂組成物層との接着力及び保護フィルムと感光性樹脂組成物層との接着力を比較し、接着力の低い方のフィルムを剥離してから感光性樹脂組成物層の側を銅張基板の銅面等の金属面に貼り付ける。
【0029】
基板上にレジスト画像を形成させるにはフォトレジストフィルム表面のフィルム上にパターンマスクを密着させて露光する。感光性樹脂組成物が粘着性を有しないときは、前記のフィルムを剥離してからパターンマスクを感光性樹脂組成物層に直接接触させて露光することもできる。尚、金属面に直接塗工した場合は、その塗工面に直接またはポリエステルフィルム等を介してパターンマスクを接触させ、露光に供する。
【0030】
露光は通常紫外線照射により行い、その際の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ショートアーク灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ等が用いられる。紫外線照射後は、必要に応じ加熱を行って、硬化の完全を図ることもできる。
【0031】
露光後は、レジスト上のフィルムを剥離除去してから現像を行う。本発明の感光性樹脂組成物は希アルカリ現像型であるので、露光後の現像は、炭酸ソーダ、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等のアルカリ0.3〜2重量%程度の希薄水溶液を用いて行う。該アルカリ水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0032】
エッチングは、通常塩化第二銅−塩酸水溶液や塩化第二鉄−塩酸水溶液等の酸性エッチング液を用いて常法に従ってエッチングを行う。稀にアンモニア系のアルカリエッチング液も用いられる。めっき法は、脱脂剤、ソフトエッチング剤等のめっき前処理剤を用いて前処理を行った後、めっき液を用いてめっきを行う。めっき液としては銅めっき液、ニッケルめっき液、鉄めっき液、銀めっき液、金めっき液、スズめっき液、コバルトめっき液、亜鉛めっき液、ニッケル−コバルトめっき液、はんだめっき液等が挙げられる。
【0033】
エッチング工程又はめっき工程の後、残っている硬化レジストの剥離を行う。硬化レジストの剥離除去は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の0.5〜5重量%程度の濃度のアルカリ水溶液からなるアルカリ剥離液、または3〜15重量%水溶液の有機アミン系剥離液(特にモノエタノールアミンを主成分とする)を用いて行う。
【0034】
本発明の感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物層、及びこれらを用いたフォトレジストフィルムは、印刷配線板の製造、金属の精密加工、リードフレーム製造、半導体パッケージ等に用いられるエッチングレジスト又はめっきレジストとして非常に有用であり、バインダーポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、光重合開始剤(C)及び一般式(1)で示される化合物(D)を含有してなることを特徴とするため、感光性樹脂組成物層の厚みが薄くても可とう性及びテント膜強度信頼性に優れるうえ、解像度に優れた効果を示すものであり、とりわけエッチング用途に有用である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「%」、「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0036】
以下のとおり、バインダーポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、光重合開始剤(C)、化合物(D)およびその他添加剤を用意した。
[バインダーポリマー(A−1)の調製]
メチルメタクリレート55部、2−エチルへキシルアクリレート15部、メタクリル酸20部、n−ブチルアクリレート10部、溶剤150部(メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール=120部/30部)の混合液を8時間重合して、バインダーポリマー(A−1)を得た。得られたバインダーポリマー(A−1)の重量平均分子量(Mw)は70,000、酸価は130mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は51℃であった。
[バインダーポリマー(A−2)の調製]
メチルメタクリレート45部、2−エチルへキシルアクリレート20部、メタクリル酸25部、n−ブチルアクリレート10部、溶剤150部(メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール=120部/30部)の混合液を8時間重合して、バインダーポリマー(A−1)を得た。得られたバインダーポリマー(A−2)の重量平均分子量(Mw)は50,000、酸価は163mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は42℃であった。
【0037】
[エチレン性不飽和化合物(B)]
(B−1)2,2−ビス{4−{メタクリロキシポリエトキシ}フェニル}プロパン 30部
(エチレンオキサイドの繰り返し単位数=10)
(B−2)2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレー 10部
【0038】
[光重合開始剤(C)]
(C−1)ヘキサアリールビイミダゾール 3部
(C−2)4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン 0.2部
【0039】
[化合物(D)]
4,4’−チオビス(3-メチル−6-t-ブチルフェノール)0.1部
【0040】
[その他添加剤]
・ロイコクリスタルバイオレット(LCV) 0.5部
・マラカイトグリーン(MG) 0.05部
【0041】
実施例1〜2、比較例1〜2
表1に示す如き組成により感光性樹脂組成物を調製した。
【0042】
【表1】

注)表中の数値は、固形分としての配合量(部)である。
【0043】
[フォトレジストフィルムの作製]
上記感光性樹脂組成物を、アプリケーターを用いて厚さ16μmのポリエステルフィルム上に乾燥後塗工膜厚が10μmになるよう塗工し、60℃、90℃のオーブンでそれぞれ2分間乾燥して、更に、その上に厚さ23μmのポリエチレンフィルムで被覆しフォトレジストフィルムを得た。
【0044】
上記で得られたフォトレジストフィルムについて、以下の項目を下記の如く評価した。
【0045】
[感度]
上記フォトレジストフィルムを銅張基板上にラミネートロール温度100℃、同ロール圧0.3MPa、ラミネート速度1.5m/minにてラミネートした後、光透過量が段階的に少なくなるように作られたネガフィルム(ストーファー21段ステップタブレット)を用いて、オーク製作所社製の露光機「EXM−1201」(平行光源)にて、5kw超高圧水銀灯で20mj毎に露光した。露光後、15分経過してからポリエステルフィルムを剥離し、30℃で1%炭酸ナトリウム水溶液をブレークポイント(未露光部分の完全溶解する時間)の2倍の現像時間でスプレーすることにより未露光部分を溶解除去して硬化樹脂画像を得た。各現像量と現像後に残った段数より、ストーファー21段ステップタブレットにて5段を与えるに足る露光量(mj/cm)を調べた。
【0046】
[可とう性]
上記フォトレジストフィルムを、20mm×200mmに切り出し、ストーファー21段ステップタブレットの5段相当量の露光量で露光し、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルムを剥がし、硬化レジストを180度に完全に折り曲げる操作(折り曲げ半径0φ、4kgf)を23℃、50%RHの環境下で繰り返し行い、下記の如く評価した。
◎・・・10回以上折り曲げても割れない。
○・・・6〜9回折り曲げて割れる。
△・・・2〜5回折り曲げて割れる。
×・・・1回折り曲げて割れる。
【0047】
[解像度]
上記ストーファー21段ステップタブレットの5段相当量の露光量にて、別途、L(ライン幅)/S(スペース幅)において、L=400μmで、Sが6、8、10、12、14、16、18、20、22、25、30、35、40、45、50μmのパターンマスクを真空密着させて、露光を行い、1%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて、スプレー圧0.15MPaで最小現像時間の2倍で現像した際に、解像する最小スリット幅(μm)を測定した。
【0048】
[テント膜強度信頼性]
上記フォトレジストフィルムを0.4φの孔が開いた銅張基板上にラミネートした後、上記と同様に露光を行った。その後、1%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて、最小現像時間の4倍、0.3MPaで現像を行い、0.4φの孔の上に形成された膜の破れ数を数えた。破れ率(%)は(破れた数/全穴数)×100の計算式により求めた。
◎・・・0%
○・・・1〜20%
△・・・21〜40%
×・・・41%以上
実施例及び比較例の評価結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の感光性樹脂組成物はバインダーポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、光重合開始剤(C)及び一般式(1)で示される化合物(D)を含有してなるため、感光性樹脂組成物層の厚みが薄くても可とう性及びテント膜強度信頼性に優れるうえ、解像度に優れた効果を有するものであり、特にエッチング用途に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、光重合開始剤(C)及び一般式(1)で示される化合物(D)を含有してなることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】

ここで、m、nはそれぞれ0又は1であり、共に0にはならない。X、Yは炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基のいずれかで、同一であっても異なっていてもよく、また、X、Yのどちらか一方を介して2量体を形成していてもよい。Rは炭素数1〜12のアルキル基である。
【請求項2】
バインダーポリマー(A)のガラス転移温度(Tg)が30〜100℃であることを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
バインダーポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)が40,000〜100,000であることを特徴とする請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
バインダーポリマー(A)がホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合成分として、共重合成分全体に対して1〜35重量%含有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
一般式(1)で示される化合物(D)をバインダーポリマー(A)とエチレン性不飽和化合物(B)の合計100重量部に対して0.001〜0.5重量部含有することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層であって、波長365nmでの吸光度が0.3〜0.7であることを特徴とする感光性樹脂組成物層。
【請求項7】
感光性樹脂組成物層の厚みが5〜20μmであることを特徴とする請求項6記載の感光性樹脂組成物層。
【請求項8】
請求項1〜5いずれか記載の感光性樹脂組成物を支持体上に塗布、乾燥してなることを特徴とするフォトレジストフィルム。
【請求項9】
更に、感光性樹脂組成物側に保護フィルムを設けてなることを特徴とする請求項8記載のフォトレジストフィルム。

【公開番号】特開2006−178082(P2006−178082A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369709(P2004−369709)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(597175673)ニチゴー・モートン株式会社 (22)
【Fターム(参考)】