説明

感光性樹脂組成物及び感光性エレメント

【課題】 密着性及び解像度が良好であるとともに、エッチング及びめっきの各工程において十分な耐久性を有し、特にめっき工程において優れた耐性を示し、また屈曲性(レジストの柔軟性)にも優れており、プリント配線板の薄板化に十分に対応できる感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)バインダポリマーと、(B)分子中にエチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖の双方を有するビスフェノールF型(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含む光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及び感光性エレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板の製造及び金属の精密加工分野等において、エッチング、めっき等に用いられるレジスト材料としては、支持フィルム(支持体)及び感光性樹脂組成物層が積層された感光性エレメントが広く用いられている。感光性エレメントは、支持フィルム上に感光性樹脂組成物層を形成した後、保護フィルムを積層した形態が一般的である。
【0003】
感光性エレメントの使用方法としては、以下の方法が一般的である。まず、保護フィルムを剥離した後、感光性樹脂組成物層が基材(銅基板等)に直接触れるように圧着(ラミネート)する。次に、光透過性の支持フィルム上に、パターニングされたフォトツールを密着させ、活性光線(紫外線を用いることが多い)を照射(露光)して露光部を光硬化させる。次いで、支持フィルムを剥離し、現像液を噴霧して不要部分の未露光部を除去することでレジストパターンを形成(現像)する。このとき、現像液としては、通常ある程度感光性樹脂組成物層を溶解する能力を有するものであれば使用可能であり、現像時には、現像液中に感光性樹脂組成物が溶解又は分散させられる。なお、現像は、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等の現像液を使用するアルカリ現像型が主流になっている。
【0004】
近年のプリント配線板の高密度化に伴い、基材(銅基板等)とパターン形成された感光性樹脂組成物層との接触面積が小さくなりつつある。そのため、感光性樹脂組成物層には、現像、エッチング又はめっき処理工程で優れた機械強度、耐薬品性、柔軟性等が要求されると共に、基材と感光性樹脂組成物層との間の密着力及び感光性樹脂組成物層の解像度が要求される。
【0005】
感光性樹脂組成物層の解像度を向上させるためには、感光性樹脂組成物層の薄膜化が有効である。しかしながら、プリント配線板形成時にある程度の回路厚(銅厚等)が必要な場合、エッチング工法では、エッチング時のサイドエッチングの影響があるため、細線部のレジストラインが欠落しやすく、プリント配線板の高密度化(回路厚と回路幅との両立)には限界がある。また、めっき工法では、感光性樹脂組成物層を薄膜にすると必要とする回路厚(銅厚)を得ることが困難であるため、プリント配線板の高密度化には限界がある。
【0006】
近年、感光性樹脂組成物層の薄膜化をせず高解像度化を達成するために様々な試みがなされている。例えば、露光前に支持フィルムを剥離して感光性樹脂組成物層の上に直接フォトツールを密着させる方法である。通常、感光性樹脂組成物層は基材に密着するようにある程度の粘着性を保持しており、この方法を適用すると、フォトツールと感光性樹脂組成物層とが密着してしまい、フォトツールを剥がしにくく作業性が低下したり、感光性樹脂組成物によりフォトツールが汚染されたり、酸素阻害の影響により感度が低下したりする等の問題が生じる。
【0007】
そこで、この方法を改良する試みとして、感光性樹脂組成物層を2層以上とし、フォトツールと直接接触する層を非粘着性樹脂層とすることが行なわれている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかし、この方法は、感光性樹脂組成物層を多層化するために塗工するのに手間がかかるうえ、感度低下に対しては効果のないものである。
【0008】
また、プリント配線板の高密度化を達成するために、製造方法としてセミアディティブ工法が注目されている。本工法では、基材上への無電解めっき等による極薄膜導体層の形成、レジストパターンの形成、めっき、レジストの剥離及びクイックエッチング(不必要な極薄膜導体層除去)を順次行うことによりプリント配線板を形成する。この工法の利点としては、サイドエッチングの影響がほとんどないため良好な回路を得ることができ、プリント配線板の高密度化が可能であることが挙げられる。
【0009】
【特許文献1】特開平1−221735号公報
【特許文献2】特開平2−230149号公報
【特許文献3】特開平11−327137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在広く用いられている感光性エレメントの感光性樹脂組成物層は、(1)少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有し、光重合開始剤によって重合体を形成できる不飽和化合物、(2)結合剤としての熱可塑性有機重合体、(3)光重合開始剤および(4)その他の添加剤により構成されている。
【0011】
上記不飽和化合物としては、脂肪族系多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルが最も一般的であり、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等が知られている。また、芳香族系2価アルコールとして、ビスフェノールAにポリエチレングリコール又は/及びポリプロピレングリコールを付加させて(メタ)アクリル酸エステルとして用いる例が知られている。
【0012】
しかし、前者の脂肪族エステルに於いては十分な耐めっき性が得られないという問題がある。また、後者のビスフェノールA系モノマーを用いた場合、良好な耐めっき性が得られやすいものの、側鎖を長くすると耐めっき性が低下したり、他の材料との相溶性が損なわれるといった問題がある。
【0013】
さらに、アルカリ現像可能な感光性エレメントに於いては、近年ますますファインパターン化が進んでおり、特にめっき工程に於いて十分な耐性を有するとともに、剥離工程に於いては速やかに剥離され、剥離液中で難溶性であるという特性を同時に満足する性能が求められている。また、プリント配線板の薄板化に伴い、各工程で基板がたわむことでレジストが基板から剥離し、歩留りが低下するため、レジストの柔軟性が求められている。
【0014】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、密着性及び解像度が良好であるとともに、エッチング及びめっきの各工程において十分な耐久性を有し、特にめっき工程において優れた耐性を示し、また屈曲性(レジストの柔軟性)にも優れており、プリント配線板の薄板化に十分に対応できる感光性樹脂組成物及び感光性エレメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)バインダポリマーと、(B)分子中にエチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖の双方を有するビスフェノールF型(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含む光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物を提供する。
【0016】
かかる感光性樹脂組成物によれば、(B)光重合性化合物として、分子中にエチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖の双方を有するビスフェノールF型(メタ)アクリル酸エステルモノマーを用いることにより、良好な密着性及び良好な解像度が得られるとともに、エッチング及びめっきの各工程、特にめっき工程において優れた耐性を示し且つ優れた屈曲性を有するレジストを形成することができ、プリント配線板の薄板化に十分に対応することが可能となる。
【0017】
また、本発明の感光性樹脂組成物において、上記ビスフェノールF型(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、下記一般式(I)で表されるものであることが好ましい。
【化1】



[式(I)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、A及びBは互いに相違して−CH(CH)CH−又は−CHCH−を示し、m1及びm2はそれぞれm1+m2が2〜20となるように選ばれる1以上の整数を示し、n1及びn2はそれぞれn1+n2が2〜20となるように選ばれる1以上の整数を示す。なお、式(I)中、−A−O−と−B−O−とはブロック共重合していてもランダム共重合していてもよい。]
【0018】
かかる感光性樹脂組成物によれば、エッチング及びめっきの各工程においてより優れた耐性を示すとともに、より優れた屈曲性を有するレジストを形成することが可能となる。
【0019】
本発明はまた、支持体と、該支持体上に形成された上記本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメントを提供する。
【0020】
かかる感光性エレメントによれば、感光性樹脂組成物層が、上記本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成された層であるため、良好な解像度及び良好な密着性を得ることができるとともに、エッチング及びめっきの各工程、特にめっき工程において優れた耐性を示し且つ優れた屈曲性を有するレジストを形成することができ、プリント配線板の薄板化に十分に対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、密着性及び解像度が良好であるとともに、エッチング及びめっきの各工程において十分な耐久性を有し、特にめっき工程において優れた耐性を示し、また屈曲性(レジストの柔軟性)にも優れており、プリント配線板の薄板化に十分に対応できる感光性樹脂組成物及び感光性エレメントを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、本発明における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0023】
(感光性樹脂組成物)
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)バインダポリマーと、(B)分子中にエチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖の双方を有するビスフェノールF型(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含む光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有するものである。なお、本明細書においては、場合により、上記(A)バインダーポリマーを「(A)成分」、上記(B)光重合性化合物を「(B)成分」、上記(C)光重合開始剤を「(C)成分」という。以下、各成分について詳細に説明する。
【0024】
本発明に用いる(A)バインダーポリマーは、分子内にカルボキシル基を有するものであることが好ましい。(A)バインダーポリマー中のカルボキシル基は、アルカリ水溶液に対する現像性や剥離性を十分に得るために有効である。(A)バインダーポリマー中に含まれるカルボキシル基の量は、酸価で100〜600mgKOH/gであることが好ましく、300〜400mgKOH/gであることがより好ましい。この酸当量(酸価)が100mgKOH/g未満では、塗工溶媒または他の組成物、例えばモノマーとの相溶性が低下する傾向があり、600mgKOH/gを超えると、現像性や剥離性が低下する傾向がある。ここで、上記バインダーポリマーの酸価は、バインダーポリマーをトルエン/メチルアルコール混合溶媒(容量比:7/3)に溶解し、指示薬(フェノールフタレイン/メタノール(質量比:1/100))を加え、0.1N−水酸化カリウムアルコール溶液で滴定し、無色から微紅色に変わる時を終点として測定した。なお、酸当量の算出の際には、上記混合溶媒単独でも同様に滴定して、その滴定値をブランクとして差し引いて算出する。
【0025】
(A)バインダーポリマーの重量平均分子量は2万〜50万であることが好ましく、5万〜20万であることがより好ましい。重量平均分子量が50万を超えると、現像性が低下する傾向があり、2万未満では、感光性エレメントを形成する場合に感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層の厚みを均一に維持する事が困難になる傾向がある。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定し、標準ポリスチレン換算した値を使用したものである。
【0026】
(A)バインダーポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ現像性の見地からは、アクリル系樹脂が好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
(A)バインダーポリマーは、例えば、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2、2、2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2、2、3、3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0028】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、これらの構造異性体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
(A)バインダーポリマーは、アルカリ現像性の見地から、カルボキシル基を含有させることが好ましく、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体とをラジカル重合させることにより製造することができる。上記カルボキシル基を有する重合性単量体としては、メタクリル酸が好ましい。また、(A)バインダーポリマーは、密着性及び耐薬品性(耐めっき性)の見地から、スチレン又はスチレン誘導体を重合性単量体として含有させることが好ましい。
【0030】
上記スチレン又はスチレン誘導体を共重合成分として、密着性及び剥離特性を共に良好にするには、スチレン及び/又はスチレン誘導体を全共重合成分基準で3〜30質量%含むことが好ましく、4〜28質量%含むことがより好ましく、5〜27質量%含むことが特に好ましい。この含有量が3質量%未満では密着性が劣る傾向があり、30質量%を超えると剥離片が大きくなり、剥離時間が長くなる傾向がある。また、必要に応じて(A)バインダーポリマーは感光性基を有していてもよい。
【0031】
これらのバインダーポリマーは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。2種類以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーとしては、例えば、異なる共重合成分からなる2種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の2種類以上のバインダーポリマーなどが挙げられる。また、特開平11−327137号公報に記載のマルチモード分子量分布を有するポリマーを使用することもできる。
【0032】
本発明の感光性樹脂組成物において、(A)バインダーポリマーの含有量は、感光性樹脂組成物中の固形分全量を基準として5〜93質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。(A)バインダーポリマーの含有量が5質量%未満であると、硬化膜が脆くなる傾向があり、93質量%を超えると、光感度及び解像度が不十分となる傾向がある。
【0033】
(B)光重合性化合物は、分子中にエチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖の双方を有するビスフェノールF型(メタ)アクリル酸エステルモノマーを少なくとも含んでいる。ここで、上記分子中にエチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖の双方を有するビスフェノールF型(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、上記一般式(I)で表される化合物が好ましく用いられる。本発明の感光性樹脂組成物及び感光性エレメントにおいて、特に、上記一般式(I)で示される化合物を光重合可能な不飽和物として用いると、硬化後のレジストが、特にめっき工程において十分な耐性を示すとともに、剥離工程において良好な剥離性を示す。また、硬化膜の柔軟性が特に優れているという特性を示す。
【0034】
なお、本発明に用いる上記一般式(I)で示される光重合可能な不飽和化合物において、エチレングリコール鎖のみを有する場合、剥離性をよくするために側鎖を長くすると、親水性が増して膨潤が起こりやすくなり、耐めっき性が損なわれることとなる。また、プロピレングリコール鎖のみを有する場合は、同様に剥離性をよくするために側鎖を長くすると、バインダーポリマーとの相溶性が悪くなり、均一な組成物とならず、相分離を起こしてしまう。
【0035】
また、上記一般式(I)中、m1+m2の値及びn1+n2の値は、いずれも2〜20の範囲内であるが、6〜14の範囲内であることが好ましく、8〜12の範囲内であることがより好ましい。m1+m2の値又はn1+n2の値が2未満であると、硬化膜が収縮しやすくなる傾向があり、20を超えると、耐めっき性が劣る傾向がある。
【0036】
本発明の感光性樹脂組成物において、上記分子中にエチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖の双方を有するビスフェノールF型(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量は、感光性樹脂組成物中の固形分全量を基準として5〜93質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。上記ビスフェノールF型(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量が93質量%を超えると、フィルムの形成性やタック性が悪化する傾向があり、5質量%未満では、露光によって十分な硬化画像が形成されず、レジストとしての特性、例えば、テンティング、エッチング、及び各種めっき工程に対する耐性が低下する傾向がある。
【0037】
また、本発明の感光性樹脂組成物においては、(B)光重合性化合物として、上記ビスフェノールF型(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外の他の光重合可能な不飽和化合物を1種類以上同時に使用してもよい。同時に用いられる他の光重合可能な不飽和化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物等、ノニルフェノキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレンオキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレート等のノニルフェノキシポリアルキレンオキシ(メタ)アクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0038】
更に、本発明の感光性樹脂組成物には、上述した光重合性化合物以外の他の光重合性化合物を含有させることができ、例えば、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー等が挙げられる。
【0039】
(C)光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)等のN,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、アルキルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物などが挙げられる。また、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は同一で対象な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、密着性及び感度の見地からは、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体がより好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0040】
本発明の感光性樹脂組成物において、(C)光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の固形分全量を基準として0.01〜30質量%であることが好ましく、0.2〜10質量%であることがより好ましい。(C)光重合開始剤の含有量が0.01質量%未満では、光感度が不充分となる傾向があり、30質量%を超えると、露光の際に組成物の表面での吸収が増大して内部の光硬化が不充分となる傾向がある。
【0041】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、分子内に少なくとも1つのカチオン重合可能な環状エーテル基を有する光重合性化合物(オキセタン化合物等)、カチオン重合開始剤、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などを、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して各々0.01〜20質量部程度含有させることができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0042】
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して固形分30〜60質量%程度の溶液として塗布することができる。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物は、特に制限はないが、銅、銅系合金、鉄、鉄系合金等の金属面上に、液状レジストとして塗布して乾燥後、必要に応じて保護フィルムを被覆して用いるか、感光性エレメントの形態で用いられることが好ましい。
【0044】
(感光性エレメント)
本発明の感光性エレメントは、支持体と、該支持体上に形成された上記本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備えるものである。感光性樹脂組成物層は、上記本発明の感光性樹脂組成物を支持体上に塗布及び乾燥することで形成することができる。また、本発明の感光性エレメントは、感光性樹脂組成物層の支持体と反対側の面に接するように積層された保護フィルムを更に備えることが好ましい。
【0045】
図1は、本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すように、感光性エレメント1は、支持体10と、この支持体10上に設けられた感光性樹脂組成物層20と、感光性樹脂組成物層20上に設けられた保護フィルム30とを備えている。ここで、感光性樹脂組成物層20は、上述した本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成された層である。
【0046】
感光性樹脂組成物層20の厚みは、用途により異なるが、乾燥後の厚みで1〜100μm程度であることが好ましい。
【0047】
支持体10としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の重合体フィルムなどが挙げられる。支持体10の厚みは、1〜100μmであることが好ましい。
【0048】
保護フィルム30としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の支持体10と同様の重合体フィルムを用いることができる。保護フィルム30の厚みは、1〜100μmであることが好ましい。また、保護フィルム30としては、感光性樹脂組成物層20と支持体10との間の接着力よりも、感光性樹脂組成物層20と保護フィルム30との間の接着力の方が小さくなるものであることが好ましい。また、保護フィルム30としては、低フィッシュアイのフィルムが好ましい。
【0049】
感光性エレメント1は、例えば、支持体10上に、上述の感光性樹脂組成物を所定の溶剤に溶解して得られる塗布液を塗布した後、乾燥して溶剤を除去することにより感光性樹脂組成物層20を形成し、次いで、感光性樹脂組成物層20上に保護フィルム30を積層することにより製造することができる。
【0050】
上記塗布液の塗布は、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の公知の方法で行うことができる。また、乾燥は、70〜150℃、5〜30分間程度で行うことができる。また、感光性樹脂組成物層20中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、2質量%以下とすることが好ましい。
【0051】
また、感光性エレメント1は、感光性樹脂組成物層20、支持体10及び保護フィルム30の他に、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層や保護層を有していてもよい。
【0052】
なお、本発明の感光性エレメントは、必ずしも上述した保護フィルム30を有していなくてもよく、支持体10と感光性樹脂組成物層20との2層構造であってもよい。
【0053】
本発明の感光性エレメントは、貯蔵の際には、例えば、そのまま平板状の形態で、又は、感光性樹脂組成物層上に保護フィルムを積層して円筒状の巻芯にロール状に巻きとった形態で貯蔵される。なお、この際、支持体が1番外側になるように巻き取られることが好ましい。
【0054】
上記ロール状の感光性エレメントロールの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、梱包方法として、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。
【0055】
上記巻芯の材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックなどが挙げられる。
【0056】
(レジストパターンの形成方法)
上記本発明の感光性エレメントを用いてレジストパターンを形成する場合、上記本発明の感光性エレメントを、回路形成用基板上に上記感光性樹脂組成物層が密着するようにして積層し、上記感光性樹脂組成物層に活性光線を画像状に照射して露光部を光硬化せしめ、次いで、未露光部を現像により除去することで、レジストパターンを形成することができる。
【0057】
上記本発明の感光性エレメントを用いてレジストパターンを製造するに際し、回路形成用基板上への感光性樹脂組成物層の積層方法としては、感光性樹脂組成物層上に上記の保護フィルムが存在している場合には、保護フィルムを除去した後、感光性樹脂組成物層を加熱しながら回路形成用基板に圧着することにより積層する方法などが挙げられる。積層は、密着性及び追従性の見地から、減圧下で行うことが好ましい。感光性樹脂組成物層が積層される基板の表面は、通常金属面であるが、特に制限はない。また、積層の際、感光性樹脂組成物層の加熱温度は70〜130℃とすることが好ましく、圧着圧力は、0.1〜1.0MPa程度(1〜10kgf/cm程度)とすることが好ましいが、これらの条件には特に制限はない。
【0058】
このようにして基板上への積層が完了した感光性樹脂組成物層には、ネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線が画像状に照射される。これにより、感光性樹脂組成物層の露光部を光硬化せしめる。この際、感光性樹脂組成物層上に存在する重合体フィルム(支持体)が活性光線に対して透明である場合には、そのまま支持体を通して活性光線を照射してもよく、一方、支持体が活性光線に対して不透明(遮光性を示す)の場合には、支持体を除去する必要がある。
【0059】
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光を有効に放射するものが用いられる。また、レーザー直接描画露光法等も用いることができる。
【0060】
次いで、露光後、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合には、支持体を除去した後、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の現像液によるウエット現像、ドライ現像等で未露光部の感光性樹脂組成物層を除去して現像し、レジストパターンを製造することができる。ウエット現像の場合は、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、例えば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像する。
【0061】
上記アルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液等が挙げられる。
【0062】
上記アルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を混入させてもよい。
【0063】
現像後の処理として、必要に応じて60〜250℃程度の加熱又は0.2〜10J/cm程度の露光を行うことによりレジストパターンをさらに硬化して用いてもよい。
【0064】
現像後に行われる金属面のエッチングには、例えば、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液等を用いることができる。
【0065】
(プリント配線板の製造方法)
本発明の感光性エレメントを用いてプリント配線板を製造する場合、上記本発明のレジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された回路形成用基板を、エッチング又はめっきすることによりプリント配線板を製造することができる。
【0066】
本発明の感光性エレメントを用いてプリント配線板を製造する場合、現像されたレジストパターンをマスクとして、回路形成用基板の表面を、エッチング、めっき等の公知の方法で処理する。上記めっき法としては、例えば、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっきなどがある。
【0067】
次いで、エッチング又はめっき終了後、レジストパターンは、例えば、現像に用いたアルカリ性水溶液よりさらに強アルカリ性の水溶液で剥離することができる。この強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1〜10質量%水酸化カリウム水溶液等が用いられる。剥離方式としては、例えば、浸漬方式、スプレー方式等が挙げられる。また、レジストパターンが形成されたプリント配線板は、多層プリント配線板でもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の好適な実施例について更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
(実施例1、2及び比較例1〜4)
表1に示す各成分を同表に示す配合量で混合し、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
【0070】
【表1】



【0071】
表1中の(B)成分として用いられる化合物の構造式は、下記一般式(II)及び下記一般式(III)で表される。また、表2に、実施例1、2及び比較例1〜4で(B)成分として用いる化合物を示した。
【0072】
【表2】



【0073】
【化2】



【0074】
【化3】



【0075】
次いで、得られた感光性樹脂組成物の溶液を、支持体としての16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)に均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥させて感光性樹脂組成物層を形成した。その後、感光性樹脂組成物層上に、ポリエチレン製の保護フィルム(フィルム長手方向の引張強さ:16MPa、フィルム幅方向の引張強さ:12MPa、商品名:NF−15、タマポリ(株)製)を積層し、実施例1、2及び比較例1〜4の感光性エレメントを得た。なお、感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、いずれも25μmであった。
【0076】
(積層板の作製)
銅箔(厚み12μm)を両面に積層したガラスエポキシ材である銅張り積層板(日立化成工業(株)製、商品名:MCL−E679)の銅表面を、#600相当のブラシを持つ研磨機(三啓(株)製)を用いて研磨し、水洗後、空気流で乾燥し、得られた銅張り積層板を80℃に加温し、その銅表面上に実施例1、2及び比較例1〜4の感光性エレメントの感光性樹脂組成物層及び支持体を、感光性樹脂組成物層を銅張り積層板側に向けて、保護フィルムを剥がしながら120℃のヒートロールを用い3m/分の速度でラミネートした。この感光性樹脂組成物層及び支持体が積層された銅張り積層板を、最少現像時間、光感度、密着性、解像度、細線めっき剥離性及びエッチング耐性を評価するための試験片とした。
【0077】
(最小現像時間の評価)
まずはじめに、試験片から支持体としてのポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、30℃で1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、未露光部の感光性樹脂組成物層が完全に除去できる最小の時間(最小現像時間、単位:秒)を評価した。
【0078】
(光感度の評価)
次に、光感度を以下の手順で評価した。まず、高圧水銀灯ランプを有する露光機(オーク(株)製、商品名:EXM−1201)を用いて、ネガとしてストーファー21段ステップタブレットを試験片の上に置いて、60mJ/cmで露光した。
【0079】
その後、支持体であるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、30℃で1質量%炭酸ナトリウム水溶液を最小現像時間の2倍の時間スプレーし、未露光部分を除去した後、銅張り積層板上に形成された光硬化膜のステップタブレットの段数を測定することにより、感光性樹脂組成物の光感度を評価した。その結果を表3に示した。光感度は、ステップタブレットの段数で示され、このステップタブレットの段数が高いほど、光感度が高いことを示す。
【0080】
(密着性の評価)
密着性は以下の手順で評価した。まず、試験片に、ストーファーの21段ステップタブレットを有するフォトツールと密着性評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が10/400〜50/400(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールとを支持体に密着させ、ストーファーの21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が7.0となるエネルギー量で露光を行った。その後、支持体を剥離し、30℃で1質量%炭酸ナトリウム水溶液を最少現像時間の2倍の時間でスプレーして現像処理を行った。ここで、密着性は、現像後に剥離せずに密着しているライン幅の最も小さい値により評価した。密着性の評価は数値が小さいほど良好な値である。その結果を表3に示した。
【0081】
(解像度の評価)
解像度は以下の手順で評価した。まず、試験片に、ストーファーの21段ステップタブレットを有するフォトツールと解像度評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が10/10〜50/50(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールとを支持体に密着させ、ストーファーの21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が7.0となるエネルギー量で露光を行った。その後、支持体を剥離し、30℃で1質量%炭酸ナトリウム水溶液を最少現像時間の2倍の時間でスプレーして現像処理を行った。ここで、解像度は、現像処理によって未露光部をきれいに除去することができたライン幅間のスペース幅の最も小さい値により評価した。解像度の評価は数値が小さいほど良好な値である。その結果を表3に示した。
【0082】
(細線めっき剥離性の評価)
細線めっき剥離性を以下の手順で評価した。まず、試験片に対し、上記現像性の評価試験と同様の手順で露光及び現像を行った。その後、脱脂浴(商品名:PC−455、25質量%、メルテックス社製)に5分間浸漬し、水洗した。次いで、ソフトエッチング浴(過硫酸アンモニウム150g/リットル)に2分間浸漬し、水洗した。更に、10質量%硫酸浴に1分間浸漬するという順に前処理を行い、硫酸銅めっき浴(硫酸銅5水和物60g/リットル、硫酸98ミリリットル/リットル、塩化ナトリウム100mg/リットル、ベーシックレベラーカパラシド(アトテックジャパン社製)20ミリリットル/リットル、光沢剤カパラシドユニバーサル(アトテックジャパン社製)3ミリリットル/リットル)に入れ、硫酸銅めっきを室温下、2A/dmで35分間行った。次いで、3質量%水酸化ナトリウム水溶液を2分間スプレーし、完全にレジストが除去されているめっきライン幅間のスペース幅の最も小さい値により、細線めっき剥離性を評価した。細線めっき剥離性の評価は、数値が小さいほど良好な値であり、めっき工程における耐性、及び剥離性が優れていることを示す。その結果を表3に示した。
【0083】
(屈曲性の評価)
屈曲性を以下の手順で評価した。まず、FPC基板(商品名:F−30VC1、基板厚:25μm、銅厚:18μm、ニッカン工業(株)製)を80℃に加温し、その銅表面上に実施例1、2及び比較例1〜4の感光性エレメントの感光性樹脂組成物層及び支持体を、感光性樹脂組成物層を銅張り積層板側に向けて、保護フィルムを剥がしながら120℃のヒートロールを用い3m/分の速度でラミネートした。この感光性樹脂組成物層及び支持体が積層されたFPC基板を、屈曲性を評価するための試験片とした。
【0084】
上記試験片に、ストーファーの21段ステップタブレットを有するフォトツールを密着させ、現像後の残存ステップ段数が7.0となるエネルギー量で露光を行い、感光性樹脂組成物層を光硬化させた。その後、支持体を剥離し、FPC基板上にレジストが積層された屈曲性評価用基板を得た。屈曲性は、マンドレル試験により評価を行い、屈曲性評価用基板を幅2cm、長さ10cmの短冊状に切断し、円筒状の棒に180°で5往復擦りあわせた。その後、FPC基板とレジストとの間に剥がれのない円筒の直径を求めた。その結果を表3に示した。円筒の直径が小さいほど、屈曲性に優れる。
【0085】
(エッチング耐性の評価)
上記密着性の評価と同様の手順で試験片に対して露光及び現像を行い、レジストパターンを形成した。このレジストパターンが形成された基板を、塩化第2鉄エッチング液(塩化第二鉄液 ボーメ47、鶴見曹達(株)製)に50℃で5分間浸漬後、水洗し、レジストパターンのよれの有無を光学顕微鏡にて観察し、以下の評価基準に基づいてエッチング耐性を評価した。その結果を表3に示した。
A:よれがない、
B:よれが若干あり、
C:よれが多数あり。
【0086】
【表3】



【0087】
表3に示した結果から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物及び感光性エレメントは、密着性及び解像度が良好であるとともに、形成したレジストはエッチング及びめっきの各工程において十分な耐久性を有し、特にめっき工程において優れた耐性を示し、剥離性も良好であることが確認された。また、形成したレジストは屈曲性(レジストの柔軟性)にも優れており、プリント配線板の薄板化に十分対応できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0089】
1…感光性エレメント、10…支持体、20…感光性樹脂組成物層、30…保護フィル
ム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダポリマーと、(B)分子中にエチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖の双方を有するビスフェノールF型(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含む光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ビスフェノールF型(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、下記一般式(I)で表されるものである、請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【化1】



[式(I)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、A及びBは互いに相違して−CH(CH)CH−又は−CHCH−を示し、m1及びm2はそれぞれm1+m2が2〜20となるように選ばれる1以上の整数を示し、n1及びn2はそれぞれn1+n2が2〜20となるように選ばれる1以上の整数を示す。なお、式(I)中、−A−O−と−B−O−とはブロック共重合していてもランダム共重合していてもよい。]
【請求項3】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメント。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−298972(P2007−298972A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96706(P2007−96706)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】