説明

感光性組成物および加工基板の製造方法

【課題】低粘度で、耐熱性および力学的強度に優れた感光性組成物を提供する。
【解決手段】下記条件を満たす官能基Xを1個以上有する重合性モノマー(A)を0.01〜98質量%、下記条件を満たす官能基Yを1個以上有し、かつ、官能基Xを有さない重合性モノマー(B)を0.01〜98質量%、光重合開始剤を0.01〜15質量%含有することを特徴とする感光性組成物。官能基X:特定露光条件で露光した時の反応率が50%以上であり、露光後、さらに、200℃で30分間熱処理した後の反応率が80%以上である官能基である。官能基Y:特定露光条件で露光した時の反応率が50%未満であり、露光後、さらに、200℃で30分間熱処理した時の反応率が80%以上である官能基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターンが形成された加工基板を製造するための、感光性組成物に関する。さらに本発明は、前記加工基板を製造するための製造方法に関する。特に光ナノインプリント法を用いた加工基板を製造するための、感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント法は、凹凸のパターンを形成した金型原器(一般的にモールド、スタンパ、テンプレートと呼ばれる)を、レジストにプレスして力学的に変形させて微細パターンを精密に転写する技術である。モールドを一度作製すれば、ナノ構造が簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄・排出物が少ない加工技術であるため、近年さまざまな分野への応用が期待されている。
ナノインプリント法には、被加工材料として熱可塑性樹脂を用いる熱ナノインプリント(非特許文献1)と、光硬化性組成物を用いる光ナノインプリント(非特許文献2)の2通りが提案されている。
熱ナノインプリントの場合、ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することで微細構造を基板上の樹脂に転写する。特許文献1および特許文献2には、熱可塑性樹脂を用いて、ナノパターンを安価に形成するナノインプリントの方法が開示されている。
一方、光ナノインプリントの場合、液体状の光硬化性組成物に透明モールドを圧着させた状態で露光して光硬化性組成物を光硬化させた後、モールドを離型する。光ナノインプリント方式の場合、室温でのインプリントが可能であるという利点があるため、様々な方面への応用が期待されている。特許文献3および特許文献4には、熱可塑性樹脂を用いて、ナノパターンを安価に形成するナノインプリントの方法が開示されている。
【0003】
光ナノインプリントは、通常以下の方法で製造される。
(1)シリコーンウエハ、石英、ガラス、フィルムや他の材料、例えば、セラミック材料、金属または、ポリマー等の基板上に液体状の感光性組成物を数十nm〜数μm程度の膜厚で塗布する。
(2)この上に数十nm〜数十μmのパターンサイズの微細な凹凸を有するモールドを押しつけて加圧する。
(3)加圧した状態で光照射して感光性組成物を硬化させる。
(4)硬化した塗膜からモールドを離型し、基板上に形成されたレジストパターンを得る。
(5)レジストパターンが形成された基板を加熱処理して硬化反応を完了させる。
このような工程で製造される光ナノインプリントでは感光性組成物がモールドの精密な凹凸に追随してモールドの形状を正確に写し取ることが必要である。感光性組成物がモールドの凹凸に追随できないと得られたレジストパターンの形状がモールドの凹凸の形状と異なることになり具合が悪い。このためには感光性組成物の粘度が低いことが必要である。
一般に感光性組成物を構成するモノマーには1官能モノマー、2官能モノマー、3官能以上のモノマーがあるが、感光性組成物の粘度を低減させるために、1官能モノマーの比率を上げることが有効である。
ところが、1官能モノマーの比率の高い感光性組成物は、一般に硬化後の力学強度が小さいという問題がある。具体的には、例えば、硬化後の膜の表面に傷がつきやすい、外力により変形しやすい、という問題である。硬化膜の力学強度はナノプリントにおいては重要な特性である。
そこで、従来から、感光性組成物の低粘度化と硬化後の高い力学強度を両立させることが試みられている。例えば、ベンジルアクリレートのような粘度が低い1官能モノマーと多官能モノマーを併用して粘度と力学強度のバランスを取る方法、溶剤を添加して粘度を下げる方法、ポリマーを添加して硬化膜の力学強度を上げる方法などが採られてきた。しかし、これらの方法では感光性組成物の低粘度と硬化膜の力学強度の両方を満足することはできなかった。すなわち第一の方法は相反する粘度と力学のバランスを取るだけであり、第二の方法は形成されるモールドパターンの形状が悪化するという欠点がある。また、第三の方法は力学強度を上げることは可能であるが、感光性組成物の粘度が大きくなる。
さらに、感光性組成物の粘度を下げるために1官能モノマーの比率を上げると、熱処理で膜厚が減少するという問題がある。これは、1官能モノマーは架橋できる反応点が少ないため、露光後硬化物の網目構造に組み込まれていない分子が2官能モノマーや3官能以上のモノマーに比べて多いため、加熱時に揮散しやすく、この結果、この比率の高い感光性組成物では膜厚減少が大きくなると考えられる。
熱処理時にモノマーの揮発量が多いと、所望のモールドパターンが得られなくなる。
以上のように感光性組成物の低粘度化と硬化後の膜の力学強度、モノマーの揮散性の低減をすべて満足することはできなかった。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5772905号公報
【特許文献2】米国特許第5956216号公報
【特許文献3】米国特許第5259926号公報
【特許文献4】特表2005−527110号公報
【非特許文献1】S.Chou et al.:Appl.Phys.Lett.Vol.67,114,3314(1995)
【非特許文献2】M.Colbun et al,:Proc.SPIE,Vol.676,78(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低粘度で、耐熱性および力学的強度に優れた感光性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、下記手段により、上記課題を解決しうることを見出した。
(1)下記条件を満たす官能基Xを1個以上有する重合性モノマー(A)を0.01〜98質量%、下記条件を満たす官能基Yを1個以上有し、かつ、官能基Xを有さない重合性モノマー(B)を0.01〜98質量%、光重合開始剤を0.01〜15質量%含有することを特徴とする感光性組成物。
官能基X:下記露光条件で露光した時の反応率が50%以上であり、露光後、さらに、200℃で30分間熱処理した後の反応率が80%以上である官能基である。
官能基Y:下記露光条件で露光した時の反応率が50%未満であり、露光後、さらに、200℃で30分間熱処理した時の反応率が80%以上である官能基である。
露光条件:重合性官能基として、1種類の官能基のみを有する重合性モノマー100質量部に対して、光重合開始剤として2、2−ジメトキシ−1、2ジフェニルエタン−1−オンを5質量部添加した組成物をガラス基板上に乾燥膜厚が6μmになるように塗布した塗膜を窒素パージした状態で高圧水銀灯で100mJ/cm2の条件で露光する。
(2)重合性モノマー(A)が官能基Yを1個以上有する、(1)に記載の感光性組成物。
(3)重合性モノマー(A)の含量が10〜50質量%である、(1)または(2)に記載の感光性組成物。
(4)重合性モノマー(A)が有する官能基Xと官能基Yの数の和が2〜6の範囲であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の感光性組成物。
(5)重合性モノマー(A)が有する官能基Xの個数が1であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の感光性組成物。
(6)重合性モノマー(B)が有する官能基Yの数が2〜6であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の感光性組成物。
(7)前記重合性モノマー(B)が、官能基Yとして、エチレン性不飽和二重結合またはエチン性不飽和三重結合を有する官能基を有する、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の感光性組成物。
(8)前記重合性モノマー(B)が、官能基Yとして、エチレン性不飽和二重結合またはエチン性不飽和三重結合を有する官能基と、エチレン性不飽和二重結合およびエチン性不飽和三重結合を有さない官能基を有する、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の感光性組成物。
(9)前記重合性モノマー(B)が、官能基Yとして、エチレン性不飽和二重結合を有する官能基を有する、(7)または(8)に記載の感光性組成物。
(10)前記重合性モノマー(B)の分子量が、200以上である、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の感光性組成物。
(11)前記官能基Xが、(メタ)アクリル酸エステル基である、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の感光性組成物。
(12)前記官能基Yが、アリルエステル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、プロパルギルエーテル基、プロパルギルエステル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、ジシクロペンテニル基、スチリル基、エポキシ基、オキセタン基およびアルコキシリル基から選ばれる、(1)〜(11)のいずれか1項に記載の感光性組成物。
(13)前記官能基Yが、アリルエステル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、プロパギルエーテル基、プロパギルエステル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、ジシクロペンテニル基およびスチリル基から選ばれる、(1)〜(11)のいずれか1項に記載の感光性組成物。
(14)重量平均分子量が1000以上の高分子化合物の含有量が5質量%以下であることを特徴とする、(1)〜(13)のいずれか1項に記載の感光性組成物。
(15)非反応性有機溶剤の添加量が5質量%以下であることを特徴とする、(1)〜(14)のいずれか1項に記載の感光性組成物。
(16)(1)〜(15)のいずれか1項に記載の感光性組成物を硬化させてなる硬化物。
(17)(1)〜(15)のいずれか1項に記載の感光性組成物を用いることを特徴とする、加工基板の製造方法。
(18)下記〔工程1〕〜〔工程4〕を含む、加工基板の製造方法。
〔工程1〕基板と、所望のレジストパターンの反転パターンを表面に有するモールドとを組み合わせ て、前記基板の表面と前記モールドのパターン面との間に、(1)〜(15)のいずれか 1項に記載の感光性組成物を挟持させる工程
〔工程2〕露光により、前記感光性組成物中の重合性モノマーを重合させて基板上にレジストパター ンを形成させる工程
〔工程3〕モールドをレジストパターンが形成された基板から剥離する工程
〔工程4〕レジストパターンが形成された基板を100℃以上の温度で5分間以上熱処理する工程
(19)(18)に記載の加工基板の製造方法により得られる加工基板。
【0007】
本発明の組成物は、官能基Xを1個以上有する重合性モノマー(A)を0.01〜98質量%、官能基Yを1個以上有し、かつ、官能基Xを有さない重合性モノマー(B)を0.01〜98質量%、光重合開始剤を0.01〜15質量%含有することを特徴とする。
ここで、官能基Xは、所定の露光条件で露光した時の反応率が50%以上であり、好ましくは、60〜75%であり、露光後、さらに、200℃で30分間熱処理した後の反応率が80%以上である官能基である。
官能基Yは、所定の露光条件で露光した時の反応率が50%未満、好ましくは、40%以下であり、露光後、さらに、200℃で30分間熱処理した時の反応率が80%以上である官能基である。
露光条件:重合性官能基として、1種類の官能基のみを有する重合性モノマー100質量部に対して、光重合開始剤として2、2−ジメトキシ−1、2ジフェニルエタン−1−オンを5質量部添加した組成物をガラス基板上に乾燥膜厚が6μmになるように塗布した塗膜を窒素パージした状態で高圧水銀灯で100mJ/cm2の条件で露光する。ここで、重合性モノマーおよび重合開始剤を添加した組成物は、必要に応じて有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤を含んでいる場合、塗布後乾燥して有機溶剤を揮散させ、その後、露光する。
【0008】
重合性モノマー(A)
重合性モノマー(A)は、官能基Xを1個以上有する。官能基Xは、上記露光条件で露光した時の反応率が50%以上で、その後200℃で30分間熱処理した後の反応率が80%以上である官能基であり、該条件を満たし、かつ、エチレン性不飽和二重結合(以下、単に二重結合ということがある)を有する官能基であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル基であることがより好ましい。
官能基Xは、1分子中に、1種類のみ含まれていても、2種類以上含まれていてもよい。
1分子中の官能基Xの個数に制限はないが、通常2以下であり、好ましくは1である。官能基Xの個数が3以上になると、露光時の硬化収縮が大きくなる傾向にあり、基板のソリが発生しやすくなり、接着性が悪化しやすくなるといった問題が生じる場合がある。
【0009】
重合性モノマー(A)は、官能基X以外に官能基Yを有していることが好ましい。
官能基Yは、上記露光条件で露光した時の反応率が50%未満で、その後200℃で30分間熱処理した後の反応率が80%以上である官能基であることが好ましく、エチレン性不飽和二重結合またはエチン性不飽和三重結合を有する官能基であることがより好ましく、エチレン性不飽和二重結合を有する官能基であることがさらに好ましい。
官能基Yは、1分子中に、1種類のみ含まれていても、2種類以上含まれていてもよい。好ましくは、1〜8種類であり、より好ましくは、1〜5種類であり、さらに好ましくは、1または2種類である。
官能基Yの具体例としては、アリルエステル基、アリルエーテル基、プロパルギルエーテル基、プロパルギルエステル基、ビニルエーテル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、ジシクロペンテニル基、スチリル基、エポキシ基、オキセタン基、アルコキシリル基等が挙げられ、アリルエステル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、プロパギルエーテル基、プロパギルエステル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、ジシクロペンテニル基およびスチリル基が好ましく、アリルエステル基、アリルエーテル基がより好ましい。
官能基Yの個数の合計にも特に制限はないが、通常は1〜10、好ましくは2〜6である。官能基Yの個数が10を超えると感光性組成物の粘度が大きくなり過ぎるという問題が生じる場合がある。逆に0の場合、重合後のレジストパターンの強度や耐熱性に問題が生じる場合がある。
【0010】
本発明における重合性モノマー(A)が有する官能基Xと官能基Yの数の和は、2〜6の範囲であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。
【0011】
露光後および加熱後の官能基の反応率は以下の方法で測定する。
フーリエ変換型赤外分光装置(FT−IR)を用い官能基の吸収ピークの面積を求める。吸収ピークの位置は官能基の種類ごとに適切なものを選定する。たとえばC=C結合の反応率は、アクリロイル基のC=C−H伸縮に伴う810cm-1におけるピークを、エポキシ基の反応率はエポキシ環の環伸縮に伴う910cm-1のピーク強度を選択すればよい。
硬化前(モノマー液)のピーク強度を100、ベースラインを0として、測定値の強度から反応率を算出することができる。
【0012】
以下に、各種官能基の上記露光条件で露光した場合の反応率、および露光後さらに加熱した後の反応率を以下に示す。
【表1】

【0013】
本発明における重合性モノマー(A)の添加量は0.01〜98質量%であるが、10〜90質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。重合性モノマー(A)の添加量が少なすぎると、低粘度と高い力学強度の両立ができなくなる。逆に多すぎると、光重合開始剤などの他の構成成分の含量が少なくなりすぎて、硬化不良などの不都合を生じる。
【0014】
本発明における重合性モノマー(A)の分子量は、通常、150〜1000であり、200〜600であることが好ましい。分子量を150以上とすることにより、臭気を低下させることができ、1000以下とすることにより、感光性組成物の粘度を適当な粘度に保つことができ好ましい。
【0015】
以下に、本発明で用いることのできる重合性モノマー(A)の好ましい例を例示するが、本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。尚、( )内は(官能基Xの数/官能基Yの数)を示している。
【化1】

【0016】
重合性モノマー(B)
重合性モノマー(B)は、官能基Yを1個以上有し、かつ、官能基Xを有さない。ここで、官能基Yおよび官能基Xは、上記重合性モノマー(A)で述べた官能基Yおよび官能基Xと同義である。また、官能基Yの好ましい範囲も、上記重合性モノマー(A)で述べた官能基Yと同義である。
【0017】
本発明における重合性モノマー(B)の添加量は0.01〜98質量%であるが、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。重合性モノマー(B)の添加量が少なすぎると、低粘度と高い力学強度の両立ができなくなる。逆に多すぎると、光重合開始剤などの他の構成成分の含量が少なくなりすぎて、硬化不良などの不都合を生じる。
【0018】
本発明の1官能以上の重合性モノマー(B)の分子量は、通常、150〜1000であり、200〜600であることが好ましい。分子量を200以上とすることにより、臭気を低下させることができ、1000以下とすることにより、感光性組成物の粘度を適度に保つことができ好ましい。
【0019】
以下に本発明における重合性モノマー(B)の好ましい例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化2】

【0020】
本発明の組成物は、光重合開始剤を0.01〜15質量%含み、好ましくは、0.1〜15質量%、より好ましくは0.2〜12質量%である。2種類以上の開始剤を併用する場合はそれらの合計量が前記範囲となることが好ましい。
本発明に用いられる光重合開始剤は、公知の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤の例としては、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−メチル−1[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、1−[4−ベンゾイルフェニルスルファニル]フェニル)−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン、2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、ベンゾフェノン、4,4'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルスルフィド、4−フェニルベンゾフェノン、エチルミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、チオキサントンアンモニウム塩、ベンゾイン、4,4'−ジメトキシベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1,1−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンおよびジベンゾスベロン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイル ビフェニル、4−ベンゾイル ジフェニルエーテル、1,4−ベンゾイルベンゼン、ベンジル、10−ブチル−2−クロロアクリドン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン)、2−エチルアントラキノン、2,2−ビス(2−クロロフェニル)4,5,4',5'−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)1,2'−ビイミダゾール、2,2−ビス(o−クロロフェニル)4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、等を挙げることができる。
【0021】
本発明の感光性組成物は、前述の必須成分以外に必要に応じて界面活性剤、離型剤、有機溶剤、高分子、シランカップリング剤等の他の成分を含有していてもよい。
【0022】
界面活性剤
界面活性剤としては、公知の界面活性剤を用いることができるが、中でも、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素・シリコーン系界面活性剤が特に好ましい。
本発明で用いるフッ素系界面活性剤の例としては、商品名フロラードFC−430、FC−431(住友スリーエム社製)、商品名サーフロン「S−382」(旭硝子製)、EFTOP「EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100」(トーケムプロダクツ社製)、商品名PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA社)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18(いずれも(株)ネオス製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451(いずれもダイキン工業(株)製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、(いずれも大日本インキ化学工業社製)が挙げられ、シリコーン素系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂社製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業社製)、KP−341(信越化学工業製)が挙げられる。
また、フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも信越化学工業社製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも大日本インキ化学工業社製)が挙げられる。
界面活性剤は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。界面活性剤の添加量は0.001〜5質量%が好ましく、0.005〜3質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%より少ないと感光性組成物を基板に塗布する際の面状が不良になる場合があり、5質量%を超えると基板との接着性が悪化する場合がある。
【0023】
離型剤
離型剤は露光後、硬化したレジストパターンとモールドの剥離を容易にする目的で用いる添加剤で、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイル等を用いることができる。離型剤の添加量は0.001〜5質量%が好ましく、0.005〜3質量%がより好ましい。添加量を0.001質量%以上とすることにより、離型作用がより向上する傾向にあり、5質量%以下とすることにより、基板との接着性が向上する傾向にある。
【0024】
本発明の組成物には、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等の高分子を添加してもよい。これらの高分子の添加量に制限はないが、通常、10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下である。高分子の添加量が10質量%を超えると、感光性組成物の粘度が上昇してモールド形状に追随しなくなり、得られるレジストパターンの形状が悪化する場合がある。特に本発明では、分子量が1000以上の高分子の含有量が、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
有機溶剤
本発明の感光性組成物には必要に応じて非反応性有機溶剤を添加してもよい。好ましい非反応性有機溶剤としては例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルおよびシクロヘキサノール等を挙げることができる。
これらの非反応性有機溶剤は、それぞれ単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
非反応性有機溶剤の添加量は、通常、10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下である。非反応性有機溶剤の添加量を5質量%以下とすることにより、得られるレジストパターンの形状がより向上する傾向にあり好ましい。
【0026】
シランカップリング剤
本発明では必要に応じて、シランカップリング剤を用いてもよい。本発明で用いることができるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
シランカップリング剤の添加量は、0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。添加量を0.1質量%以上とすることにより、基板への接着性改良効果がより向上する傾向にあり、20質量%以下とすることにより、得られたレジストパターンの耐水性、耐熱性や強度がより向上する傾向にあり好ましい。
【0027】
感光性組成物の物理特性
本発明の感光性組成物の粘度は、通常、30mPa・a以下、好ましくは20mPa・a以下である。粘度が30mPa・aを超えると後述するレジストパターンの形成工程で、感光性組成物がモールドの微細な凹凸への追随性が悪化し、得られたレジストパターンの形状が不良になるという問題が生じる場合がある。
本発明の感光性組成物の表面張力は、通常、15〜35N/m、好ましくは18〜30N/mの範囲である。表面張力が35N/mを超えると、感光性組成物の基板への濡れが悪化する場合があり、15N/m未満の場合は添加する界面活性剤の量が多くなるため、基板への接着性が悪化する場合がある。
【0028】
レジストパターンが形成された加工基板の形成方法
まず、レジストパターンが形成された加工基板の形成方法について述べる。本発明の加工基板の製造方法は、下記に示す〔工程1〕〜〔工程4〕を含む。以下、これらの工程について詳細に説明する。
【0029】
〔工程1〕
基板と、所望のレジストパターンの反転パターンを表面に有するモールドとを組み合わせて、前記基板の表面と前記モールドのパターン面との間に、本発明の感光性組成物を挟持させる工程
【0030】
本発明で用いる基板は、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基板など特に制約されない。基板の形状は、板状でも良いし、ロール状でもよい。
【0031】
本発明の感光性組成物は、通常、10nm〜20μmの膜厚で塗布する。本発明の感光性組成物は、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法などにより、塗布することにより形成することができる。本発明の感光性組成物は、1層でもよいし、2層以上積層してもよい。2層以上積層する場合、1層ずつ逐次塗布してもよいし、2層以上を同時塗布してもよい。
【0032】
モールドが有する凹凸パターンのサイズは、特に定めるものではないが、例えば、10nm〜100μmのパターンサイズのものを用いることができる。
光ナノインプリントでは、モールドまたは基板の少なくとも一方は、光透過性の材料を選択する必要がある。光透過性のモールドの素材としてはガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜等を挙げることができる。透明基板を用いた場合で使われる非光透過型モールド材としてはセラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの基板等を挙げることができる。
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべき凹凸パターンを有する。モールドのパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じて形成することができる。
本発明のモールドは板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
本発明で用いられるモールドは、感光性組成物との剥離性を向上するために離型処理を行ってもよい。具体的にはシリコーン系やフッソ系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えばダイキン工業製:商品名 オプツールDSXや住友スリーエム製:商品名Novec EGC−1720等の市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0033】
モールドの押し付け圧力は、通常、1気圧〜10気圧の範囲である。押し付け圧力が10気圧を超えると、モールドや基板が変形してパターン精度が低下する傾向にある。逆にモールドの押し付け圧力が1気圧未満であるとモールドと基板が充分に密着せず、残膜が発生しやすい。
本発明ではモールドを基板に押し付ける前に系を減圧してもよい。減圧することによりモールドの凹凸部の空気を除去することができて、感光性組成物が凹凸部分に追随するため、得られるレジストパターンの形状が向上する。
さらに減圧にしてモールドを基板に押し付けた後、露光前に空気または空気以外の気体−例えば、窒素−により系の圧力を常圧に戻してもよい。
【0034】
〔工程2〕
露光により、前記感光性組成物中の重合性モノマーを重合させて基板上にレジストパターンを形成させる工程
通常は、加圧した状態で光照射して感光性組成物を硬化させる。
本発明の光硬化性組成物を硬化させる光としては特に限定されないが、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の波長領域の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いても良いし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でも良い。
光照射量は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、光硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて決定される。
また、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと光硬化性組成物の密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射しても良い。本発明において、好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲である。
【0035】
〔工程3〕モールドをレジストパターンが形成された基板から剥離する工程
〔工程4〕レジストパターンが形成された基板を100℃以上の温度で5分間以上熱処理する工程
本発明では、通常、基板からモールドを剥離した後、熱処理を行う。
加熱温度は、100〜220℃が好ましく、110〜200℃がより好ましい。加熱温度を100℃以上にすることにより、熱処理による膜強度がより向上する傾向にある。一方、加熱温度を220℃以下とすることにより、加熱中にレジストパターン成分の分解が生じ、膜質が弱くなることをより効果的に抑止することが可能である。本発明の熱処理を行う装置には特に制限はなく、公知の装置の中から目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ドライオーブン、ホットプレート、IRヒーターなどが挙げられる。また、ホットプレートを使用する場合には、加熱を均一に行う為に、パターンを形成した基材をプレートから浮かせて行うことが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0037】
<露光後の官能基の反応率評価方法>
重合性官能基として、測定対象となる官能基だけを有するモノマー100質量部に対して、光重合開始剤(2、2−ジメトキシ−1、2ジフェニルエタン−1−オン)を5質量部添加した塗布液を、ガラス基板上に乾燥膜厚が6μmになるように塗布した。
フーリエ変換型赤外分光装置(FT−IR)を用い、この塗膜の810cm-1の吸収ピークの面積(S1)を求めた。
ついで、この塗膜を窒素パージした状態で高圧水銀灯(ORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm2))を用いて、100mJ/cm2の条件で露光した。
露光後、同様にフーリエ変換型赤外分光装置を用い810cm-1の吸収ピークの面積(S2)を求めた。
下記の式を用いて反応率を計算した。なお、S1とS2を求める際にはフーリエ変換型赤外分光装置のチャートのベースラインは差し引いた。また、エポキシ基を有するモノマーの場合は810cm-1の代わりに910cm-1の吸収ピークを用いた。
露光後の反応率=S2/S1*100 (式2)
測定した反応率は、上記表1に示した。
【0038】
<加熱処理後の官能基の反応率評価方法>
露光後のモノマー反応率を求めた試料を200℃で30分間熱処理をした後、フーリエ変換型赤外分光装置を用い810cm-1の吸収ピークの面積(S3)を求めた。
露光後の場合と同様に下記の式を用いて反応率を計算した。なお、S3を求める際にもフーリエ変換型赤外分光装置のチャートのベースラインは差し引いた。
加熱処理後の反応率=S3/S1*100 (式3)
この場合も、エポキシ基を有するモノマーの場合は810cm-1の代わりに910cm-1の吸収ピークを用いた。
測定した反応率は、上記表1に示した。
【0039】
<粘度の評価方法>
感光性組成物の粘度測定は、東機産業(株)社製のRE−80L型回転粘度計を用い、25±0.2℃で行った。
測定時の回転速度は、0.5mPa・s以上5mPa・s未満の場合は100rpm、5mPa・s以上10mPa・s未満の場合は50rpm、10mPa・s以上は30mPa・s未満の場合は20rpm、30mPa・s以上60mPa・s未満の場合は10rpm、60mPa・s以上120mPa・s未満の場合は5rpm、120mPa・s以上の場合は1rpmもしくは0.5rpmである。
【0040】
<耐熱性の評価方法>
熱処理した試料の塗膜の一部を、カミソリを用いて除去し、塗膜厚みに相当する段差を作成した。この段差部分の厚み(D1)を表面粗さ形状測定機サーフコム1400D−12((株)東京精密製)を用いて測定した。測定倍率は20000倍である。
次いで、試料を200℃で30分間熱処理をした後、同様にして段差部分の厚み(D2)を測定した。
D1、D2から下記の式を用いて加熱時の膜厚減少率(耐熱性の指標)を計算した。
膜厚減少率=(1−D2/D1)*100 (式1)
【0041】
結果を、次のようにランク付けした。
5:膜厚減少率が2%未満
4:膜厚減少率が2%以上5%未満
3:膜厚減少率が5%以上10%未満
4:膜厚減少率が10%以上15%未満
5:膜厚減少率が15%以上
【0042】
<硬化膜の力学強度−鉛筆硬度>
以下の方法で、硬化後の膜強度の指標である鉛筆硬度を評価した。スピンコーターを用いて感光性組成物をガラス基板上に3μm厚みになるよう塗布した。ついで、これを1分間窒素置換した後、高圧水銀灯(ORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm2))を用いて、200mJ/cm2の条件で露光して硬化させた。さらに、硬化した試料を230℃で30分間熱処理した。
このようにして得られた試料の鉛筆硬度を新東科学(株)製連続加重引掻強度試験機「トライボギア Type18L」を用いて測定した。鉛筆は「三菱鉛筆 uni 引かき値試験用」、加重は500gである。その他はJIS K5600に記載された方法に準じて行った。
【0043】
実施例1
<感光性組成物の作成>
重合性モノマー(A)としてA−3を60.0質量部、1官能以上の重合性モノマー(B)としてB−5を40.0質量部、光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エトキシフェニル−ホスフィンオキシド(BASF社製 Lucirin TPO−L)2.0質量部、界面活性剤F780F(大日本インキ化学工業(株)製))0.01質量部、酸化防止剤IRGANOX 1035FF(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)1.0質量部、シランカップリング剤KBM5103(信越シリコーン(株)製)10.0質量部、変性シリコーンオイルX22−3710(信越シリコーン(株)製)0.25質量部を混合した。この混合物を室温で24時間攪拌して本発明の感光性組成物を得た。
この感光性組成物の粘度、膜強度、耐熱性を前述の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0044】
実施例2〜9、比較例1〜4
モノマーの種類と量を表2のように変更する以外は実施例1と同様にして実施例2〜9、比較例1〜4を実施した。結果を表2に示す。
【0045】
実施例10〜13
実施例1の感光性組成物にポリマーとして下記合成方法で合成したポリマーA(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物、分子量3万)または有機溶剤としてメチルエチルケトンを表2の添加量になるように添加した以外は実施例1と同様にして実施例10〜14を実施した。
【0046】
ポリマーAの合成方法
密閉可能な撹拌器つき反応容器中に1−メトキシ−2−プロパノール(ダイセル化学工業(株)製)14.0部を加え、反応容器内部の空気を窒素置換した。その後反応容器の温度を90℃に昇温した。続いて、ベンジルメタクリレート12.12部、メタクリル酸4.71部、アゾ系重合開始剤(和光純薬社製、V−601)1部、及び1−メトキシ−2−プロパノール8.57部からなる混合溶液を、反応容器中に2時間かけて滴下し、温度を90℃に保ったまま、更に4時間反応させた。反応終了後、反応容器の温度を25℃まで低下させて、ポリマーA溶液を得た。得られたポリマーA溶液を真空乾燥して、ポリマーAを得た。
結果を表2に示す。
【0047】
実施例14
実施例1で得られた組成物を用い、以下の工程でレジストパターンが形成された基板を作成した。
<レジストパターンが形成された基板の作成>
0.7mm厚さのガラス基板上であって、その表面に、膜厚4000オングストロームのアルミニウム(Al)被膜を形成したガラス基板上に、上記実施例1の組成物を、厚さが6.0μmになるようにスピンコートした。
スピンコートした基板をORC社製のナノインプリント装置にセットし、モールド加圧力0.8kNで基板の組成物を塗布した側に、モールドを押し付けた。モールドは10μmのライン/スペースパターンを有し、溝深さが5.0μm、溝長さ150μmのポリジメチルシロキサン製(東レ・ダウコーニング社製、SILPOT184を80℃、60分で硬化させたもの)である。
次いでナノインプリント装置の真空度を10Torrに減圧して、付属の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm2)でモールドの裏面から100mJ/cm2の条件で露光した。
露光後、モールドを基板から剥離した。
剥離した基板を200℃で30分間熱処理して、レジストパターンが形成された基板を得た。
得られたレジストパターンの形状を下記の方法で評価した。
<剥離後のパターン形状の評価方法>
露光後、モールドを剥離した後の試料のパターン形状を走査型電子顕微鏡により観察し、以下のように評価した。
5:レジストパターンの形状と元となるモールドの形状がほぼ同一である(レジストパターンの形状がモールドの形状の異なる部分は5%未満)
4:レジストパターンの形状が元のモールドの形状と異なる部分は全体の5%以上10%未満
3:レジストパターンの形状が元のモールドの形状と異なる部分は全体の10%以上20%未満
2:レジストパターンの形状が元のモールドの形状と異なる部分は全体の20%以上30%未満
1:レジストパターンの形状が元のモールドの形状と異なる部分は全体の30%以上
【0048】
実施例15〜21
実施例14で熱処理条件を表3のように変更する以外は実施例14と同様にして実施例15〜21を実施した。
【0049】
【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件を満たす官能基Xを1個以上有する重合性モノマー(A)を0.01〜98質量%、下記条件を満たす官能基Yを1個以上有し、かつ、官能基Xを有さない重合性モノマー(B)を0.01〜98質量%、光重合開始剤を0.01〜15質量%含有することを特徴とする感光性組成物。
官能基X:下記露光条件で露光した時の反応率が50%以上であり、露光後、さらに、200℃で30分間熱処理した後の反応率が80%以上である官能基である。
官能基Y:下記露光条件で露光した時の反応率が50%未満であり、露光後、さらに、200℃で30分間熱処理した時の反応率が80%以上である官能基である。
露光条件:重合性官能基として、1種類の官能基のみを有する重合性モノマー100質量部に対して、光重合開始剤として2、2−ジメトキシ−1、2ジフェニルエタン−1−オンを5質量部添加した組成物をガラス基板上に乾燥膜厚が6μmになるように塗布した塗膜を窒素パージした状態で高圧水銀灯で100mJ/cm2の条件で露光する。
【請求項2】
重合性モノマー(A)が官能基Yを1個以上有する、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
重合性モノマー(A)の含量が10〜50質量%である、請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
重合性モノマー(A)が有する官能基Xと官能基Yの数の和が2〜6の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項5】
重合性モノマー(A)が有する官能基Xの個数が1であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項6】
重合性モノマー(B)が有する官能基Yの数が2〜6であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項7】
前記重合性モノマー(B)が、官能基Yとして、エチレン性不飽和二重結合またはエチン性不飽和三重結合を有する官能基を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項8】
前記重合性モノマー(B)が、官能基Yとして、エチレン性不飽和二重結合またはエチン性不飽和三重結合を有する官能基と、エチレン性不飽和二重結合およびエチン性不飽和三重結合を有さない官能基を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項9】
前記重合性モノマー(B)が、官能基Yとして、エチレン性不飽和二重結合を有する官能基を有する、請求項7または8に記載の感光性組成物。
【請求項10】
前記重合性モノマー(B)の分子量が、200以上である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項11】
前記官能基Xが、(メタ)アクリル酸エステル基である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項12】
前記官能基Yが、アリルエステル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、プロパルギルエーテル基、プロパルギルエステル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、ジシクロペンテニル基、スチリル基、エポキシ基、オキセタン基およびアルコキシリル基から選ばれる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項13】
前記官能基Yが、アリルエステル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、プロパギルエーテル基、プロパギルエステル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、ジシクロペンテニル基およびスチリル基から選ばれる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項14】
重量平均分子量が1000以上の高分子化合物の含有量が5質量%以下であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項15】
非反応性有機溶剤の添加量が5質量%以下であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の感光性組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の感光性組成物を用いることを特徴とする、加工基板の製造方法。
【請求項18】
下記〔工程1〕〜〔工程4〕を含む、加工基板の製造方法。
〔工程1〕基板と、所望のレジストパターンの反転パターンを表面に有するモールドとを組み合わせ て、前記基板の表面と前記モールドのパターン面との間に、請求項1〜15のいずれか1 項に記載の感光性組成物を挟持させる工程
〔工程2〕露光により、前記感光性組成物中の重合性モノマーを重合させて基板上にレジストパター ンを形成させる工程
〔工程3〕モールドをレジストパターンが形成された基板から剥離する工程
〔工程4〕レジストパターンが形成された基板を100℃以上の温度で5分間以上熱処理する工程
【請求項19】
請求項18に記載の加工基板の製造方法により得られる加工基板。

【公開番号】特開2010−100785(P2010−100785A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275965(P2008−275965)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】