説明

感受性要素を封入するための層状要素

空気及び/又は湿分に対して感受性である要素(12)、特に、光電池セル又は有機発光ダイオードなどの放射線を収集し又は放出する要素を封入するためのこの層状要素(11)はポリマー層(1)及びそのポリマー層の少なくとも1つの面(1A)に対するバリア層(2)を含む。バリア層(2)は湿分蒸気輸送速度が10-2g/m2/日未満であり、かつ、交互により低密度とより高密度とを有する少なくとも2層の水素化窒化ケイ素薄膜層の多層(21,22,23,24)からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気及び/又は湿分に感受性である要素、特に、光電池セル又は有機発光ダイオードなどの放射線を収集し又は放出する要素を封入するための層状要素に関する。本発明は、また、このような層状要素を含む放射線収集又は放射線放出デバイスに関し、また、このような層状要素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線収集デバイスは、通常、放射線からのエネルギーを収集し、それを電気エネルギーに変換するのに適切な少なくとも1つの光電池セルを含む光電池モジュールである。放射線放出デバイスは、通常、電気エネルギーを放射線に変換するのに適切な少なくとも1つの有機発光ダイオード又はOLEDを含むOLEDデバイスである。
【0003】
既知の様式において、放射線を収集し又は放出するデバイスのエネルギー変換要素、すなわち、光電池モジュールの場合の光電池セル又はOLEDデバイスの場合のOLED構造は、エネルギー変換を提供するのに適切な材料、及び、この材料の両側上にある2つの導電性接触を含む。しかしながら、製造技術に関係なく、このようなエネルギー変換要素は環境条件の効果下、特に、空気又は湿分への暴露の効果下に劣化を受けやすい。たとえば、OLED構造又は有機光電池セルでは、前方電極及び有機材料は特に環境条件に感受性である。無機アブゾーバー層を含む薄膜光電池セルでは、透明導電性酸化物(又はTCO)層をベースとし又は透明導電性コーティング(又はTCC)をベースとして形成されたセルの前方電極も環境条件に非常に感受性である。
【0004】
空気又は湿分への暴露による劣化に対して、放射線を収集し又は放出するデバイスのエネルギー変換要素を保護するために、エネルギー変換要素が封入されそして前方基材及び場合により後方基材、又は支持機能を有する基材と組み合わされている、積層構造を有するデバイスを製造することが知られている。
【0005】
デバイスの用途により、前方及び後方基材は特に透明ガラスからなり又は透明熱可塑性ポリマーからなり、たとえば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート又はフルオロポリマーから作られている。黄銅鉱化合物をベースとするアブゾーバー層、特に、銅、インジウム及びセレンを含むアブゾーバー層(CISアブゾーバー層としても知られる)、場合によりガリウム(CIGSアブゾーバー層)、アルミニウム又は硫黄が添加されたアブゾーバー層を含む光電池セルの場合には、ポリマーラミネーションインターレイヤを前方電極及び前方基材の間に配置し、それにより、その組み立て、特にラミネーションによる組み立ての間にモジュールの良好な結合を保証する。しかしながら、放射線収集もしくは放射線放出デバイスが空気及び/又は湿分に感受性であるエネルギー変換要素に対して配置されたポリマーラミネーションインターレイヤ又はポリマー基材を含む場合には、デバイスは高度の劣化を示すことが観測されていた。これは、湿分を保存する傾向があるラミネーションインターレイヤの存在、又は、高い透過性を有するポリマー基材の存在が、水蒸気又は酸素などの汚染物が感受性要素に移行するのを促進し、そしてそれゆえ、この要素の特性を損なわせるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、放射線を収集し又は放出するデバイス中に組み込まれたときに、空気及び/又は湿分に感受性であるデバイスのエネルギー変換要素の有効かつ非常に長期の保護を提供することにより、このデバイスに改良された耐性、特に、空気及び湿分に対する耐性を付与する層状要素を提案することによりこれらの欠点を特に改善しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的で、本発明の1つの主題は空気及び/又は湿分に感受性である要素、特に、光電池セル又は有機発光ダイオードなどの放射線を収集し又は放出する要素を封入するための層状要素であって、その層状要素はポリマー層及びそのポリマー層の少なくとも1つの面に対するバリア層を含み、バリア層又は各バリア層は湿分蒸気輸送速度が10-2g/m2/日未満であり、かつ、交互により低密度とより高密度とを有する少なくとも2層の水素化窒化ケイ素薄膜層の多層からなることを特徴とする、層状要素である。
【0008】
本発明の意味の範囲で、表現「薄膜層」は1μm未満の厚さの層を意味するものと理解される。さらに、本明細書中に使用されるときに、感受性要素の封入とは感受性要素が環境条件に暴露されていないように感受性要素の少なくとも一部をカバーすることを示す。さらに、本発明の関係で、「層状要素」は互いの上での要素の構成層の堆積順序の先入観なく、互いに対して配置された層のアセンブリである。
【0009】
本発明に係る層状要素の他の有利な特徴によると、単独で又はすべての技術的に可能な組み合わせにより、
−バリア層又は各バリア層は、構成多層の順次薄膜層の各対の第一の層及び第二の層の界面において、第一の層の密度と第二の層の密度との間の密度勾配を有する結合ゾーンを含む。
−バリア層又は各バリア層の構成多層の順次薄膜層の各対のより高密度の層の密度とより低密度の層の密度との差異はより低密度の層の密度の10%以上である。
−層状要素は感受性要素と面することが意図されたポリマー層の面に対するバリア層、及び/又は、感受性要素とは反対側に面することが意図されたポリマー層の面に対するバリア層を含む。
−ポリマー層は熱可塑性ポリマーから作られた基材であり、該基材はその少なくとも1つの面の上にバリア層を含む。
−ポリマー層はラミネーションインターレイヤであり、該ラミネーションインターレイヤはその少なくとも1つの面の上にバリア層を含む。
−ポリマー層及びバリア層又は各バリア層は透明であり、バリア層又は各バリア層の各薄膜層の幾何厚さは、反射防止効果により、層状要素をとおって感受性要素に向かう又は感受性要素から層状要素をとおる放射線の透過率を最大化するように調節されている。
−バリア層又は各バリア層の構成多層は550nmでの屈折率が1.8〜1.9である水素化窒化ケイ素薄膜層からなる重ね合わせ層及び550nmでの屈折率が1.7〜1.8である水素化窒化ケイ素薄膜層からなる重ね合わせ層を少なくとも含む。
【0010】
本発明の意味の範囲で、層状要素が放射線を収集し又は放出するデバイスの前面に組み込まれることが意図されるときには、層がデバイスの放射線収集もしくは放射線放出要素のために使用される又は該要素により放出される波長範囲で少なくとも透明である場合には、その層は透明であると考えられる。たとえば、多結晶シリコンをベースとする光電池セルを含む光電池モジュールの場合に、各透明層は、有利には、このタイプのセルでの使用の波長である400nm〜1200nmの波長範囲で透明である。
【0011】
本発明の別の主題は、空気及び/又は湿分に感受性である要素、及び、その感受性要素の前方及び/又は後方封入要素としての役割を果たす上記のとおりの層状要素を含むデバイスである。
【0012】
有利には、デバイスは放射線を収集し又は放出するデバイスであり、感受性要素は放射線を収集し又は放出する要素であり、その要素はポリマー層及びバリア層又は各バリア層を通過する放射線を収集することができ、又は、ポリマー層及びバリア層又は各バリア層を通して放射線を放出することができるような層状要素に対して配置される。
【0013】
特に、放射線を収集し又は放出する要素は光電池セル又は有機発光ダイオードであることができる。
【0014】
本発明の別の主題は、バリア層又は各バリア層の構成多層の少なくとも幾つかの薄膜層はプラズマ増強化学蒸着(PECVD)、スパッタリング又はそれらの組み合わせにより堆積される、上記の層状要素の製造方法である。
【0015】
特に、バリア層又は各バリア層の構成多層の少なくとも幾つかの薄膜層を、プラズマ増強化学蒸着(PECVD)によって、堆積の間に、堆積チャンバー中の圧力、出力、前駆体の相対割合又はそれらの組み合わせを変化させることにより堆積することが可能である。
【0016】
バリア層又は各バリア層の構成多層の少なくとも幾つかの薄膜層を、スパッタリング、特にマグネトロンスパッタリングによって、堆積の間に、堆積チャンバー中の圧力、出力又はそれらの組み合わせを変化させることにより堆積することも可能である。
【0017】
有利には、バリア層又は各バリア層の構成多層の薄膜層が熱可塑性ポリマー基材の1つの面の上に堆積される場合に、堆積の前に、基材のこの面をプラズマの手段、たとえば、O2又はH2プラズマにより活性化させる。
【0018】
本発明の特徴及び利点は、例示としてのみ与えられそして添付の図面が参照される、本発明に係る層状要素の4つの例示の実施形態の下記の説明において明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の第一の例示の実施形態に従う層状要素を含む光電池ソーラーモジュールの模式断面図である。
【図2】図2は図1の層状要素を含むOLEDデバイスについての図1と同様のセクションである。
【図3】図3は図1及び2の層状要素の拡大図である。
【図4】図4は本発明の第二の例示の実施形態に従う層状要素についての図3と同様の図である。
【図5】図5は本発明の第三の例示の実施形態に従う層状要素についての図3と同様の図である。
【図6】図6は本発明の第四の例示の実施形態に従う層状要素を含む光電池ソーラーモジュールについての図1と同様のセクションである。
【図7】図7は図6の層状要素の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本記載の全体において、屈折率の数値はDIN 67507標準下にイルミナントD65下に550nmで与えられる。
【0021】
図1に示す光電池ソーラーモジュール50は薄膜光電池モジュールであり、前方基材1及び支持機能を有する後方基材8を含み、それらの間に、層2、4、5、6、7からなる多層が配置されている。太陽放射線がモジュール50上に入射する面に配置されることが意図された前方基材1は透明熱可塑性ポリマーからなり、特に、この例では、ポリエチレンテレフタレート(PET)から作られており、そして幾何厚さが200μmである。
【0022】
後方基材8は任意の適切な透明もしくは不透明材料からなり、そしてモジュール50の内側に対面する面上に、すなわち、太陽放射線がモジュール上に入射する面上に、モジュール50の光電池セル12の後方電極を形成する導電層7を含む。例として、層7はモリブデンをベースとする。
【0023】
後方電極を形成する層7は、従来のとおり、太陽エネルギーの電気エネルギーへの変換を確保するのに適切である黄銅鉱化合物、特にCIS又はCIGSアブゾーバー層6を上に配置している。アブソーバー層6は、図示していないが、それ自体の上に硫化カドミウム(CdS)層を、場合により、ドープされていない生来のZnO層(これも図示していない)と組み合わせて有し、その次に、セル12の前方電極を形成する導電層5を有する。モジュール50の光電池セル12は、このようにして、層5,6及び7の積層体により形成される。
【0024】
ポリマーラミネーションインターレイヤ4は前方電極を形成する層5と前方基材1との間に配置され、それにより、モジュール50の機能層が前方基材1と後方基材8との間に保持されるようにする。ラミネーションインターレイヤ4は熱硬化性ポリマー層であり、すなわち、この例では、エチレン酢酸ビニル(EVA)の層である。変型として、ラミネーションインターレイヤ4はポリビニルブチラール(PVB)からなっても又は適切な特性を有する任意の他の材料からなってもよい。
【0025】
セル12の前方電極を形成する層5はアルミニウムでドープされた酸化亜鉛(AZO)をベースとする層である。変型として、そして限定しない例として、層5はホウ素でドープされた酸化亜鉛をベースとする層、別のドープされた透明導電性酸化物(TCO)をベースとする層、又は、銀をベースとする多層などの透明導電性コーティング(TCC)であってよい。すべてのこれらの場合に、前方電極を形成する層5は感受性層であり、その特性は空気又は湿分への暴露効果下に劣化を受けやすい。
【0026】
外部環境条件に対して層5を保護する観点で、モジュール50はバリア層2を含み、それはラミネーションインターレイヤ4とPET前方基材1との間に挿入される。上置される基材1及びバリア層2を含み、モジュールの内側に対面することが意図された基材1の面1Aに対してバリア層2が配置されているアセンブリは層状要素11を形成している。
【0027】
この実施形態において、バリア層2は交互により低い密度及びより高い密度を有しかつ交互により低い屈折率及びより高い屈折率を有する水素化窒化ケイ素の4層の透明薄膜層21,22,23,24の多層積層体からなる。
【0028】
より高い密度の層21及び23の密度d21=d23と、より低い密度の層22及び24の密度d22=d24との差異は、より低い密度の層22及び24の密度d22=d24の約10%である。層21〜24は同一の化学的種類SiNxyであるから、密度のこの差異は、より高い密度の層とより低い密度の層との間で、化学量論比を変化させること、すなわち、x及び/又はyの値を変化させることにより得られる。
【0029】
より低い密度の層22及び24の存在により、より高い密度の層21及び23での応力を緩和することができ、それにより、バリア層2の内部での欠陥の形成を制限する。実際に、高密度では、層の内部での機械応力がしばしば高くなり、そのことはクラックの出現の原因となることがあり、クラックは水蒸気又は酸素などの汚染物の拡散のための恵まれた経路である。
【0030】
特に、厚さをとおして密度が変化している層はクラックを発生しにくく、結果として、同一又はより高い平均密度を有するが、均一の密度である同一の厚さの層よりも、水蒸気及び酸素などの汚染物の移行に対する保護の点でより有効である。この理由は、異なる密度の順次の領域はクラックの伝播を阻害することによる。拡散経路、そして結果として拡散時間は、このため、かなり長くなる。
【0031】
さらに、図3に示すとおりに、バリア層2の各対の順次薄膜層では、バリア層は2つの順次の薄膜層の界面において、10nm〜30nm、好ましくは10nm〜20nmの幾何厚さを有する結合ゾーン20を含み、その結合ゾーンは対の層の第一の層の密度と第二の層の密度との間の密度勾配を有する。換言すれば、各結合ゾーン20は、より低密度の層22又は24からより高い密度の層21又は23で、より低い密度d22=d24とより高い密度d21=d23の間の密度勾配を有する。結合ゾーン20のために、バリア層2の構成多層の様々な順次薄膜層の間で密度に関する滑らかな遷移がある。特に、バリア層2の密度の変化は連続的な周期変動であると考えることができる。バリア層中の密度のこの連続変動はデラミネーションなどの機械的問題を制限する。このデラミネーションはバリア層の構成多層の順次層の界面において、密度の不連続又は突然の変化の存在下に起こることがある。
【0032】
有利には、バリア層2は層5を保護することができるだけでなく、光電池セル12への放射線の良好な透過を保証することができる。詳細には、光学的な観点から、バリア層2はPETから作られた基材1とEVAから作られたラミネーションインターレイヤ4との界面において、反射防止コーティングとして作用するように最適化されうる。モジュール50上への入射線の損失は、基材1の構成材料とラミネーションインターレイヤ4の構成材料の間の屈折率の差異のために、反射によってこの界面で生じる。しかしながら、薄膜層21〜24が交互により低い屈折率及びより高い屈折率n21、n22、n23、n24であるために、また、これらの層の適切な幾何厚さe21、e22、e23、e24では、バリア層2は干渉フィルタを構成することができ、基材1とラミネーションインターレイヤ4との間の界面に反射防止機能を提供することができる。バリア層2の構成多層の層の幾何厚さのこれらの適切な値は特に最適化ソフトウエアを用いて選択されうる。
【0033】
たとえば、光学的な観点から最適化されたバリア層2の多層は、順次に、PET基材1の面1AからEVAラミネーションインターレイヤ4までで、下記の層を含む。
−約1.9の屈折率n21及び1〜20nm、好ましくは5〜15nmの幾何厚さe21を有する比較的に高い密度d21の水素化窒化ケイ素第一層21、
−約1.7の屈折率n22及び25〜45nm、好ましくは30〜40nmの幾何厚さe22を有する比較的に低い密度d22の水素化窒化ケイ素第二層22、
−約1.9の屈折率n23=n21及び55〜75nm、好ましくは60〜70nmの幾何厚さe23を有する比較的に高い密度d23=d21の水素化窒化ケイ素第三層23、
−約1.7の屈折率n24=n22及び65〜85nm、好ましくは75〜85nmの幾何厚さe24を有する比較的に低い密度d24=d22の水素化窒化ケイ素第四層24。
【0034】
この特定の4層多層は光学的な観点から最適化された多層であり、それは最小の合計幾何厚さを有し、個々の薄膜層が異なる厚さであり、多層の合計幾何厚さが上記の多層の幾何厚さより大きい、光学的な観点から最適化された他の4層多層も可能であることが理解される。
【0035】
湿分バリアとしての上記の最適化されたバリア層2の性能の評価により、層2の湿分蒸気輸送速度(又はMVTR)の値は10-2g/m2/日未満である。このように、4層バリア層2はモジュール50の下層の湿分に対する有効な保護を提供し、特に、バリア層2の合計幾何厚さと同一の幾何厚さを有し、層の全厚にわたって一定の化学量論比を有する水素化窒化ケイ素SiNxyからなる単層バリア層よりも有効である。このことは、バリア層2の厚さ方向に交互の密度を有する順次の層21〜24が層2内でのクラックの伝播を阻害するからである。水蒸気及び酸素などの汚染物の拡散経路及び拡散時間は、このため、かなり長くなる。
【0036】
さらに、層状要素11を形成するように面1A上にバリア層2を備えた基材1と、ラミネーションインターレイヤ4との間の界面での太陽放射線の反射率は、バリア層2の非存在下でPET基材とラミネーションインターレイヤ4との界面で生じるであろう反射率よりも低い。このことは、本発明に係る層状要素をとおる太陽放射線のアブソーバー層6への透過率を改良し、それゆえ、バリア層2の非存在下に得られる効率に対してモジュール50の光効率を増加させる。
【0037】
図2は図1及び3に示す層状要素11が有機発光ダイオード又はOLEDデバイス60に装備される場合を示している。既知の様式で、OLEDデバイス60は層状要素11を形成する基材1及びバリア層2、透明第一電極15、有機発光層の多層16及び第二電極17を含む。基材1はデバイス60の前方基材であり、放射線がデバイスから取り出される側に配置されており、バリア層2はデバイスの内側に面している。
【0038】
第一電極15は透明導電性コーティングを含み、たとえば、スズでドープされた酸化インジウム(ITO)をベースとするか、又は、銀をベースとする多層である。有機層16の多層積層体16は電子注入層とホール注入層との間に挿入された電子輸送層とホール輸送層との間に挿入された中央発光層を含む。第二電極17は導電性材料から作られており、特に、銀又はアルミニウムタイプの金属材料から作られている。モジュール50に関して、バリア層2は、下層感受性層15、16及び17への汚染物の移行を防止することにより、これらの層の有効な保護、及び、発光層16の多層積層体からデバイス60の外側への最適な放射線透過率の両方を与える。
【0039】
図4に示す第二の実施形態において、第一の実施形態の要素と類似の要素は100だけ増加した同一の参照番号を有する。この第二の実施形態に従う層状要素111は放射線を収集し又は放出するデバイス、たとえば、光電池モジュール又はOLEDデバイスに装備することが意図されている。層状要素111は幾何厚さが200μmであるPETから作られた基材101、及び、放射線を収集し又は放出する要素とは反対方向に向けられることが意図された基材の面101Bの上のバリア層103を含む。このように、層状要素111は、放射線を収集し又は放出する要素とは反対方向に向けられることが意図された基材の面上にバリア層が配置され、放射線を収集し又は放出する要素に対面することが意図された基材の面上でない点で第一の実施形態の層状要素11とは区別される。さらに、バリア層103は2層であって、4層でない多層であり、その多層は交互により低い密度及びより高い密度を有しかつ交互により低い屈折率及びより高い屈折率を有する水素化窒化ケイ素の2層透明薄膜層131,132を含む。
【0040】
第一の実施形態と同様にして、より高い密度の層131の密度d131と、より低い密度の層132の密度d132との差異は、より低い密度の層132の密度d132の約10%であり、この密度の差異は同一の化学種SiNxyの2つの層131及び132の化学量論比を変更することにより得ることができる。さらに、バリア層103は、2つの構成薄膜層の界面において、幾何厚さが10nm〜30nmであり、好ましくは10〜20nmである結合ゾーン130を含み、その結合ゾーンは層131から層132まで、層131の密度d131及び層132の密度d132の密度勾配を有する。
【0041】
有利には、バリア層103の多層は層131及び132の適切な幾何厚さe131,e132、屈折率n131,n132を有するようにも設計され、それにより、バリア層103はPET基材101と空気との界面において反射防止機能を提供する。この界面でのバリア層103の存在は、層状要素をとおって、層状要素が組み込まれるデバイスのエネルギー変換要素に向かい、又は、エネルギー変換要素から層状要素をとおる放射線の透過率を最大化するのにさらにより有効であり、基材101の構成材料と空気との間の屈折率の大きな差異のために、この界面での反射率は高い。
【0042】
たとえば、光学的な観点から最適化された、すなわち、最小の合計幾何厚さを有しながら基材101と空気との界面での最大反射防止効果を得ることを可能にするバリア層103の2層多層は、順次に、基材101の面101Bから下記の層を含む。
−約1.9の屈折率n131及び50〜70nm、好ましくは60〜70nmの幾何厚さe131を有する比較的に高い密度d131の水素化窒化ケイ素第一層131、
−約1.7の屈折率n132及び60〜80nm、好ましくは70〜80nmの幾何厚さe132を有する比較的に低い密度d132の水素化窒化ケイ素第二層132。
【0043】
第一の実施形態と同様に、この2層バリア層103は、放射性収集デバイス又は放射線放出デバイスの感受性下層の汚染物に対する有効な保護を提供し、層103の湿分蒸気輸送速度は10-2g/m2/日未満であり、バリア層103の合計幾何厚さと同一の幾何厚さである層の全厚にわたって一定の化学量論比を有する水素化窒化ケイ素SiNxyからなる単層バリア層よりも特に有効である。さらに、バリア層103により、バリア層がなくPET基材と空気との界面で起こる太陽放射の反射率と比較して、前方基材と空気との間の界面での太陽放射の反射率の低減を達成することができる。反射率の点で利得は約3%である。このように、本発明に従う層状要素111を組み入れることにより放射線収集デバイス又は放射線放出デバイスのエネルギー変換要素を改良することができる。
【0044】
図5に示す第三の実施形態において、第一の実施形態と類似の要素は同一の参照番号に200を足した参照番号を有する。この第三の実施形態に従う層状要素211は放射線を収集し又は放出するデバイス、たとえば、光電池モジュール又はOLEDデバイスに装備することが意図されている。層状要素211は幾何厚さが200μmであるPETから作られた基材201を含み、そしてそれが、放射線を収集し又は放出する要素に面することが意図された基材201の面201A上、及び、放射線を収集し又は放出する要素とは反対側に面することが意図された基材201の面201B上にそれぞれ堆積された2つの2層バリア層202及び203を含む点で先行の実施形態の層状要素11及び111とは区別される。
【0045】
2つのバリア層202及び203の各々は交互により低い密度及びより高い密度を有しかつ交互により低い屈折率及びより高い屈折率である水素化窒化ケイ素の2層透明薄膜層221,222又は231,232の多層積層体である。上記と同様に、より高い密度の層の密度と、より低い密度の層の密度との差異は、より低い密度の層の密度の約10%であり、この密度の差異は、バリア層202及び203の各々で、バリアの2つの構成層の化学量論比を変更することにより得ることができる。さらに、2つのバリア層202及び203の各々は、2つの構成薄膜層の界面において、幾何厚さが10nm〜30nmであり、好ましくは10〜20nmである結合ゾーン220又は230を含み、その結合ゾーンはバリア層の第一の層の密度及び第二の層の密度の間で密度勾配を有する。
【0046】
下記に与える2層多層の例は多層のバリア層202及び203であり、それにより、2つのバリア層の合計幾何厚さの値が最小でありながら、バリア層202では基材201とEVAラミネーションインターレイヤとの界面、バリア層203では基材201と空気との界面で最大の反射防止効果を得ることができる。
【0047】
基材201の面201A上で堆積されたバリア層202では、最小の幾何厚さの最適化された多層は、順次に、基材201の面201Aから下記の層を含む。
−約1.9の屈折率n221及び1〜20nm、好ましくは5〜15nmの幾何厚さe221を有する比較的に高い密度d221の水素化窒化ケイ素第一層221、及び、
−約1.7の屈折率n222及び100〜130nm、好ましくは110〜125nmの幾何厚さe222を有する比較的に低い密度d222の水素化窒化ケイ素第二層222。
【0048】
基材201の面201B上で堆積されたバリア層203では、最適化された多層は、順次に、基材201の面201Bから下記の層を含む。
−約1.9の屈折率n231及び60〜80nm、好ましくは60〜70nmの幾何厚さe231を有する比較的に高い密度d231の水素化窒化ケイ素第一層231、及び、
−約1.7の屈折率n232及び60〜90nm、好ましくは70〜80nmの幾何厚さe232を有する比較的に低い密度d232の水素化窒化ケイ素第二層232。
【0049】
2つのバリア層を有する層状要素211は感受性下層の汚染物に対する有効な保護を提供し、層状要素と空気との界面、及び、層状要素と層状要素が組み込まれるデバイスの下層との界面での太陽放射の反射率を最小化する。特に、各層202,203は湿分蒸気輸送速度が10-2g/m2/日未満である。
【0050】
図6及び7に示す第四の実施形態において、第一の実施形態と類似の要素は同一の参照番号に300を足した参照番号を有する。図6に示す光電池ソーラーモジュール350は、ガラス又は透明熱可塑性ポリマーのいずれかからなる基材301を含む。モジュール350は、また、モジュール350の内側に対面する面を有する後方基材308、モジュールの光電池セル312の後方電極を形成する導電層307も含む。層307は太陽エネルギーの電気エネルギーへの変換を確保するのに適切である黄銅鉱化合物、特にCIS又はCIGSアブゾーバー材料の層306を上に配置している。第一の実施形態と同様に、アブソーバー層306は、それ自体の上に、アルミニウムでドープされた酸化亜鉛(AZO)をベースとする湿分感受性導電層305を上に配置しており、それがセル312の前方電極を形成する。モジュール350の光電池セル312は、このようにして、層305,306及び307の多層積層体により形成される。
【0051】
モジュール350の機能層が前方基材301と後方基材308との間に保持されることを確保するために、EVAから作られたポリマーラミネーションインターレイヤ304はAZO層305の上方に、前方基材301に対して配置される。変型として、ラミネーションインターレイヤ304はPVBからなっても又は適切な特性を有する任意の他の材料からなってもよい。湿分感受性層であるAZO層305を、ラミネーションインターレイヤ304中に保存されうる湿分に対して保護するために、モジュール350は層304と層305との間に挿入されたバリア層302を含む。上置されたラミネーションインターレイヤ304及びバリア層302は層状要素311を形成し、ここで、バリア層302はモジュールの内側に面することが意図された層304の面304Aに対して配置される。第一の実施形態と同様に、バリア層302は交互により低い密度及びより高い密度を有しかつ交互により低い屈折率及びより高い屈折率を有する4層の透明薄膜層321,322,323,324からなる多層からなり、ここで、多層302の各薄膜層の幾何厚さは光学的な観点から最適化されており、それにより、EVAラミネーションインターレイヤ304と前方電極を形成するAZO層305との界面で反射防止効果を達成する。
【0052】
バリア層302により、この第四の実施形態において得ることができる反射率の低下は、ラミネーションインターレイヤとAZOとの間の屈折率の差異が大きいことから特に高い。上記のように、バリア層302のより高い密度の層の密度とより低い密度の層の密度との差異はより低い密度の層の密度の約10%である。さらに、バリア層302の順次の薄膜層の各対で、バリア層は2つの順次の層の間の界面に、幾何厚さが10nm〜30nmであり、好ましくは10nm〜20nmである結合ゾーン320を含み、その結合ゾーンは対の層の第一の層の密度と第二の層の密度の間の密度勾配を有する。
【0053】
たとえば、光学的な観点から最適化された、すなわち、最小の合計幾何厚さを有しながら、EVA層304とAZO層305との界面で最大の反射防止効果を達成することができるバリア層302の4層多層は、順次に、ラミネーションインターレイヤ304の面304AからAZO層305までに、下記の層を含む。
−約1.7の屈折率n131及び25〜60nm、好ましくは35〜50nmの幾何厚さe321を有する比較的に低い密度d321の水素化窒化ケイ素第一層321、
−約1.9の屈折率n322及び100〜150nm、好ましくは115〜140nmの幾何厚さe322を有する比較的に高い密度d322の水素化窒化ケイ素第二層322、
−約1.7の屈折率n323=n321及び1〜30nm、好ましくは10〜20nmの幾何厚さe323を有する比較的に低い密度d323=d321の水素化窒化ケイ素第三層323、及び、
−約1.9の屈折率n324=n322及び1〜30nm、好ましくは10〜20nmの幾何厚さe324を有する比較的に高い密度d324=d322の水素化窒化ケイ素第四層324。
【0054】
バリア層302は湿分蒸気輸送速度が10-2g/m2/日未満であり、EVA層304とAZO層305との間の界面での太陽放射の反射率の低減が達成でき、反射率の点で、約2%の利得に対応する。
【0055】
上記の例は本発明に係る層状要素の利点を例示している。その層状要素は、放射線を収集し又は放出するデバイス中に組み込まれたときに、このデバイスに、デバイスのエネルギー変換効率を低減することなく、又は、層状要素のバリア層の反射防止効果によりこの効率をさらに増加させつつ、空気又は湿分への暴露により誘導される劣化に対する耐性の改良を提供する。
【0056】
バリア層の種々の構成薄膜水素化窒化ケイ素層の幾何厚さを調節することにより得られる反射防止効果は有利であるが、必須ではない。本発明に係る層状要素の主な機能はその要素が組み込まれるデバイスの感受性要素、すなわち、特に、放射線を収集し又は放出するデバイスの場合のエネルギー変換要素の有効でかつ長期の保護を提供することである。特に、本発明に係る層状要素は環境条件の効果下に劣化を受けやすい要素の前方封入及び/又は後方封入に使用されうる。感受性要素が放射線を収集し又は放出する要素でない場合には、層状要素の反射防止機能は意味が無く、層状要素が放射線を収集し又は放出する要素、特に、光電池セル又は有機発光ダイオードの後方封入のために使用される場合と同様である。
【0057】
本発明は記載しそして示した例に限定されない。一般に、環境条件に対する保護の点での上記の利点は、ポリマー層、特に、熱可塑性ポリマー基材又はポリマーラミネーションインターレイヤから作られた層、及び、交互により低い密度及びより高い密度を有する少なくとも2層の水素化窒化ケイ素の多層からなる少なくとも1つのバリア層を含む任意の層状要素により得ることができる。
【0058】
特に、上記の例において、バリア層又は各バリア層は透明薄膜層である。変型として、本発明に従う層状要素の少なくとも1つのバリア層は不透明層であることができ、特に、層状要素が放射線を収集し又は放出する要素の後方封入のために使用され、又は、環境条件の効果下に劣化を受けやすい要素の前方及び/又は後方封入のために使用されるが、放射線を収集し又は放出する要素でないときに不透明層であることができる。本発明に係る層状要素のバリア層又は各バリア層の水素化窒化ケイ素薄膜層の特性は前に記載したものとは異なることができ、特にその屈折率及び厚さが異なることができる。本発明に従う層状要素のバリア層又は各バリア層は、また、2層又はそれ以上の任意の数の重ね合わせ薄膜層を含むことができる。
【0059】
さらに、本発明に係る層状要素のポリマー層が熱可塑性ポリマー基材である場合には、適切な特性を有する任意の熱可塑性ポリマーからなることができ、この熱可塑性ポリマーは用途によって透明であっても又は透明でなくてもよい。適切な熱可塑性ポリマーの例としては、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリイミド又はフルオロポリマー、たとえば、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)が挙げられる。同様に、ポリマー層がポリマーラミネーションインターレイヤである場合には、それは適切な特性を有する任意のポリマーからなることができ、たとえば、熱硬化性ポリマー、たとえば、EVA又はPVB、又は、他のイオノマー、熱可塑性ウレタン、ポリオレフィンメルト接着剤、熱可塑性シリコーンからなることができる。本発明に係る層状要素のポリマー層はその役割に適する任意の寸法であってよく、特に、例として上述した幾何厚さとは異なる幾何厚さを有することができる。
【0060】
本発明に係る層状要素は上記の放射線収集デバイス又は放射線放出デバイスに限定されずに、空気及び/又は湿分に感受性である要素を含む任意のタイプのデバイスにおいても使用できる。特に、本発明は、アブゾーバー層がCISもしくはCIGSタイプの黄銅鉱化合物の薄膜層の代わりに、非晶性もしくは微結晶シリコンをベースとし、又は、テルル化カドミウムをベースとする薄膜層である薄膜光電池セルの封入のために応用できる。既知のように、アブゾーバー層が薄いCISもしくはCIGSアブゾーバー層である場合には、光電池モジュールは基材モードで製造され、すなわち、モジュールの後方基材の上にセルの構成層の順次堆積により製造される。特に、第四の実施形態の場合に、バリア層302は前方電極を形成する層305の上に堆積される。逆に、アブゾーバー層がケイ素ベースの薄膜層又はテルル化カドミウムをベースとする薄膜層である場合には、光電池モジュールは階層モードで製造され、すなわち、モジュールの前方基材から出発してセルの構成層の順次堆積によって製造される。
【0061】
本発明は、また、有機アブゾーバー層が環境条件に特に感受性である有機光電池セルを含むモジュールに応用され、又は、光電池セルがp−n接合を形成している多結晶もしくは単結晶シリコンから作られたモジュールに応用されうる。本発明に係る層状要素は、また、湿分への暴露が電極の劣化をもたらし、そして阻害性電気化学反応を生じることによる電解質の機能障害をもたらす色素増感太陽電池セル(DSSC)又はグレッツェルセルを含むモジュールにも応用できる。
【0062】
ポリマー層及びそのポリマー層の少なくとも1つの面に対する水素化窒化ケイ素多層バリア層を含む、本発明に従う層状要素を製造するための1つの好ましい方法は、プラズマ増強化学蒸着(PECVD)によるバリア層又は各バリア層の堆積を含む。
【0063】
この減圧堆積技術はプラズマの効果下、特に、プラズマの励起もしくはイオン化種と前駆体分子との衝突の効果下での前駆体の分解を用いる。プラズマは、たとえば、2つの平面電極間に形成される高周波放電により得られるか(RF−PECVD)、又は、マイクロ波範囲の電磁波を用いることにより得られる(MW−PECVD)。プラズマを生成するために同軸チューブを用いるマイクロ波PECVD技術は大型の移動しているフィルム上に、特に、高い堆積速度で堆積することができるという利点を有する。
【0064】
PECVD技術は本発明に従う層状要素の製造に特に有利である。というのは、堆積チャンバー中の圧力、出力、前駆体の相対割合又はそれらの組み合わせなどの量の変更により、層の密度及び化学量論比の変更を非常に容易に行うことができるからである。特に、堆積チャンバー中の圧力を増加させると、一般に、より低い密度の層の形成に有利になる。このように、密度及び化学量論比の変更を相関的に達成するために堆積の間に圧力を変更することが可能である。出力の増加は層の密度の増加をもたらしうる。さらに、前駆体の相対割合の変更は層の構成材料の化学量論比の変更をもたらすことができ、それにより、層の屈折率及び/又は密度に影響を及ぼす。
【0065】
変型によると、堆積の間に下記の1つ又は両方の量:堆積チャンバー中の圧力、出力を変更することにより、スパッタリング、特に、マグネトロンスパッタリングでポリマー基材上に多層バリア層又は各多層バリア層を堆積することが可能である。圧力の増加は、PECVDの場合と同様に、より低い密度の層の形成に有利である。
【0066】
他の堆積技術、特に、蒸発技術又は大気圧PECVD法、特に、誘電バリア放電技術を用いたものも可能である。
【0067】
例示として、PET基材1及び水素化窒化ケイ素4層バリア層2を含む、第一の実施形態に従う層状要素11の場合には、PECVDによる層状要素の製造方法は下記のとおりの工程を含む。
【0068】
減圧下でのRF−PECVDによる堆積のためのチャンバー内にPET基材1を導入する。基材1の面1Aを、その後、プラズマ、特に、O2又はH2プラズマの手段により活性化し、それにより、基材の面1Aを清浄化し、そしてこの面へのバリア層2の付着性を改良する。
【0069】
SiNxyタイプのバリア層2の堆積のための前駆体はN2/H2混合物中に希釈されたSiH4/NH3混合物である。この希釈は、プラズマの安定化をより良好にさせることができ、一方、得られるバリア層の物理化学的性質に寄与する。
【0070】
堆積は4つの順次の工程において行われる。第一の工程において、チャンバー内の圧力を400mTorrに設定し、プラズマにより堆積される表面出力密度は0.15W/cm2である。第二の工程において、圧力を徐々に600mTorrに増加させ、出力は0.10W/cm2である。第三及び第四の工程はそれぞれ第一及び第二の工程と同一である。
【0071】
密度勾配を有する結合ゾーン20を得るために、プラズマを遮らず、圧力及び出力のパラメータを、バリア層2の多層順次薄膜層の各対の2つの順次薄膜層の堆積工程の間に連続的に変更する。別の言い方をすれば、連続的に上がる圧力傾斜及び連続的に下がる出力傾斜を課し、これらの傾斜の時間は各結合ゾーン20の所望の幾何厚さを得るように調節される。
【0072】
基材1上のバリア層2の堆積は100℃未満の周囲温度に近い温度で行う。
【0073】
適切な厚さの水素化窒化ケイ素バリア層2はこのようにして得られ、このバリア層を、各々が堆積の1つの工程に対応する4層の順次副次層21〜24に細分できる。屈折率及び密度は第一層21及び第三層23が第二層22及び第四層24よりも高い。
【0074】
第二及び第三の実施形態に従う層状要素111、211の製造は基材101又は102の対応する面にバリア層103、202、203を堆積させることにより、層状要素11に関して上述したのと同様の方法により行う。第四の実施形態の層状要素311の場合には、バリア層302は層状要素11に関して上述したのと同様の方法によってAZO層305の上に堆積され、その後、ラミネーションインターレイヤ304はバリア層302の上に堆積される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気及び/又は湿分に感受性である要素(12;13;312)、特に、光電池セル又は有機発光ダイオードなどの放射線を収集し又は放出する要素を封入するための層状要素(11;111;211;311)であって、ポリマー層(1;101;201;304)及び該ポリマー層の少なくとも1つの面(1A;101B;201A,201B;304A)に対するバリア層(2;103;202,203;302)を含む層状要素において、
前記バリア層又は各バリア層(2;103;202,203;302)は湿分蒸気輸送速度が10-2g/m2/日未満であり、かつ、交互により低密度とより高密度とを有する少なくとも2層の水素化窒化ケイ素薄膜層(21,22,23,24;131,132;221,222,231,232;321,322,323,324)の多層からなることを特徴とする、層状要素。
【請求項2】
前記バリア層又は各バリア層(2;103;202,203;302)は、構成多層の順次薄膜層の各対の第一の層及び第二の層の界面において、前記第一の層の密度と前記第二の層の密度との間の密度勾配を有する結合ゾーン(20;130;220,230;320)を有することを特徴とする、請求項1記載の層状要素。
【請求項3】
前記バリア層又は各バリア層(2;103;202,203;302)の構成多層の順次薄膜層の各対のより高密度の層の密度とより低密度の層の密度との差異はより低密度の層の密度の10%以上であることを特徴とする、請求項1又は2記載の層状要素。
【請求項4】
感受性要素(12;13;312)と面することが意図されたポリマー層(1;201;304)の面(1A;201A;304A)に対するバリア層(2;202;302)、及び/又は、感受性要素(12;13;312)とは反対側に面することが意図されたポリマー層の面(101B;201B)に対するバリア層(103;203)を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の層状要素。
【請求項5】
前記ポリマー層は熱可塑性ポリマーから作られた基材(1;101;201)であり、該基材はその少なくとも1つの面(1A;101B;201A,201B)の上にバリア層(2;103;202,203;302)を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の層状要素。
【請求項6】
前記ポリマー層はその少なくとも1つの面(304A)に対するバリア層(302)を含むラミネーションインターレイヤ(304)であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の層状要素。
【請求項7】
前記ポリマー層及び前記バリア層又は各バリア層は透明であり、前記バリア層又は各バリア層(2;103;202,203;302)の各薄膜層の幾何厚さ(e21,e22,e23,e24;e131,e132;e221,e222,e231,e232;e321,e322,e323,e324)は、反射防止効果により、層状要素(11;111;211;311)をとおって感受性要素(12;13;312)に向かう又は感受性要素(12;13;312)から層状要素(11;111;211;311)をとおる放射線の透過率を最大化するように調節されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の層状要素。
【請求項8】
前記バリア層又は各バリア層(2;103;202,203;302)の構成多層は550nmでの屈折率が1.8〜1.9である水素化窒化ケイ素薄膜層及び550nmでの屈折率が1.7〜1.8である水素化窒化ケイ素薄膜層の重ね合わせ層を少なくとも含むことを特徴とする、請求項7記載の層状要素。
【請求項9】
空気及び/又は湿分に感受性である要素(12;13;312)を含むデバイス(50;60;350)において、前記感受性要素(12;13;312)の前方及び/又は後方封入要素として、請求項1〜8のいずれか1項記載の層状要素(11;111;211;311)を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項10】
放射線を収集し又は放出する請求項9記載のデバイスであって、前記感受性要素は放射線を収集し又は放出する要素(12;13;312)であり、該要素は、ポリマー層(1;101;201;304)及び前記バリア層又は各バリア層(2;103;202,203;302)を通過する放射線を収集することができ又は前記ポリマー層及び前記バリア層又は各バリア層をとおして放射線を放出することができるように前記層状要素に対して配置されていることを特徴とする、デバイス。
【請求項11】
放射線を収集し又は放出する前記要素は光電池セル(12;312)又は有機発光ダイオード(13)であることを特徴とする、請求項10記載のデバイス。
【請求項12】
前記バリア層又は各バリア層(2;103;202,203;302)の構成多層の少なくとも幾つかの薄膜層はプラズマ増強化学蒸着(PECVD)及び/又はスパッタリングにより堆積されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の層状要素(11;111;211;311)の製造方法。
【請求項13】
前記バリア層又は各バリア層(2;103;202,203;302)の構成多層の少なくとも幾つかの薄膜層はプラズマ増強化学蒸着(PECVD)によって、堆積の間に、堆積チャンバー中の圧力及び/又は出力及び/又は前駆体の相対割合を変化させることにより堆積されることを特徴とする、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
前記バリア層又は各バリア層(2;103;202,203;302)の構成多層の少なくとも幾つかの薄膜層はスパッタリング、特にマグネトロンスパッタリングによって、堆積の間に、堆積チャンバー中の圧力及び/又は出力を変化させることにより堆積されることを特徴とする、請求項12記載の製造方法。
【請求項15】
前記バリア層又は各バリア層(2;103;202,203)の構成多層の薄膜層は熱可塑性ポリマー基材(1;101;201)の1つの面(1A;101B;201A,201B)の上に堆積され、かつ、堆積の前に、前記基材の前記面はプラズマの手段により活性化されることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか1項記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−504863(P2013−504863A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528331(P2012−528331)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062999
【国際公開番号】WO2011/029787
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(500149223)サン−ゴバン パフォーマンス プラスティックス コーポレイション (64)
【Fターム(参考)】