説明

感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、該組成物を用いた感活性光線性又は感放射線性膜、及び、パターン形成方法

【課題】高感度、優れた露光ラチチュード、及び、優れたラインエッジラフネス性能を高次元で鼎立可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、該組成物を用いた感活性光線性又は感放射線性膜、及び、パターン形成方法の提供。
【解決手段】(A)下記一般式(1−1)により表される化合物を含有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。


式中、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、脂肪族環式基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、脂肪族環式基、芳香族炭化水素基、複素環式基、シアノ基、又は、アルコキシカルボニル基を表す。Rは、1つ以上の−CH−基が、エーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、又は、ウレア基により置換されていても良い、アルキレン基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、該組成物を用いた感活性光線性又は感放射線性膜、及び、パターン形成方法に関する。更に詳しくは、本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、更にその他のフォトファブリケーション工程、平版印刷版、酸硬化性組成物に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、該組成物を用いた感活性光線性又は感放射線性膜、及び、パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学増幅レジスト組成物は、遠紫外光等の放射線の照射により露光部に酸を生成させ、この酸を触媒とする反応によって、活性放射線の照射部と非照射部の現像液に対する溶解性を変化させ、パターンを基板上に形成させるパターン形成材料である。
【0003】
KrFエキシマレーザーを露光光源とする場合には、主として248nm領域での吸収の小さい、ポリ(ヒドロキシスチレン)を基本骨格とする樹脂を主成分に使用するため、高感度、高解像度で、かつ良好なパターンを形成し、従来のナフトキノンジアジド/ノボラック樹脂系に比べて良好な系となっている。
【0004】
一方、更なる短波長の光源、例えばArFエキシマレーザー(193nm)を露光光源として使用する場合は、芳香族基を有する化合物が本質的に193nm領域に大きな吸収を示すため、上記化学増幅系でも十分ではなかった。このため、脂環炭化水素構造を有する樹脂を含有するArFエキシマレーザー用レジストが開発されてきている。
【0005】
また、化学増幅型レジスト組成物の主要構成成分である光酸発生剤についても種々の化合物が開発されている(例えば、特許文献1〜8を参照)。
【0006】
しかしながら、レジストとしての総合性能の観点から、使用される樹脂、光酸発生剤、塩基性化合物、添加剤、溶剤等の適切な組み合わせを見い出すことが極めて困難であり、未だ十分とはいえないのが実情である。特に、優れた露光ラチチュード(EL)、及び、優れたラインエッジラフネス(LWR)性能を高次元で両立可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−140332号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第1270553号明細書
【特許文献3】国際公開第02/042845号
【特許文献4】特開2002−131897号公報
【特許文献5】特開2002−214774号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0087690号明細書
【特許文献7】特開2005−266766号公報
【特許文献8】特開2002−255930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記背景技術に鑑み、高感度、優れた露光ラチチュード、及び、優れたラインエッジラフネス性能を高次元で鼎立可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、該組成物を用いた感活性光線性又は感放射線性膜、及び、パターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の構成であり、これにより本発明の上記課題が解決される。
【0010】
〔1〕(A)下記一般式(1−1)により表される化合物を含有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

式中、
は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、脂肪族環式基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基を表す。
は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、脂肪族環式基、芳香族炭化水素基、複素環式基、シアノ基、又は、アルコキシカルボニル基を表す。
は、1つ以上の−CH−基が、エーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、又は、ウレア基により置換されていても良い、アルキレン基を表す。
は、アルキル基、アルケニル基、脂肪族環式基、アリールカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基、又は、アルコキシカルボニルアルキル基を表す。
また、RとRは互いに結合し、環を形成していても良い。
は、アニオンを表す。
〔2〕 前記一般式(1−1)中のRが、芳香族炭化水素基、又は、芳香族性複素環式基である、上記〔1〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔3〕 前記一般式(1−1)中のRが、芳香族炭化水素基である、上記〔2〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔4〕 前記一般式(1−1)中のRが、無置換のアルキレン基である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔5〕 前記Yが、有機酸アニオンを表す、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔6〕 前記Yが、スルホン酸アニオン、イミド酸アニオン、又は、メチド酸アニオンを表す、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔7〕 (B)酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂を含有する、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔8〕 更に、疎水性樹脂を含有する、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔9〕 更に、(F)塩基性化合物、又は、(G)酸の作用により脱離する基を有し、該脱離により塩基性が増大する低分子化合物を含有する、上記〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔10〕 上記〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
〔11〕 上記〔10〕に記載の感活性光線性又は感放射線性膜を露光することと、前記露光された膜を現像することとを含む、パターン形成方法。
〔12〕 前記露光は液浸液を介して行う、上記〔11〕に記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高感度、優れた露光ラチチュード、及び、優れたラインエッジラフネス性能を高次元で鼎立可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、該組成物を用いた感活性光線性又は感放射線性膜、及び、パターン形成方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線(EB)等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。
また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0013】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、以下に詳述する一般式(1−1)により表される化合物(以下、「化合物(A)」ともいう)を含有する。
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、例えばポジ型の組成物であり、典型的にはポジ型のレジスト組成物である。以下、この組成物の各成分について説明する。
【0014】
[1]一般式(1−1)により表される化合物(A)
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、上述した通り、下記一般式(1−1)により表される化合物(以下、化合物(A)ともいう)を含有している。ここで、化合物(A)は、活性光線又は放射線の照射により分解して、酸を発生する。即ち、この化合物(A)は、酸発生剤として機能する。
【0015】
【化2】

【0016】
式中、
は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、脂肪族環式基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基を表す。
は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、脂肪族環式基、芳香族炭化水素基、複素環式基、シアノ基、又は、アルコキシカルボニル基を表す。
は、1つ以上の−CH−基が、エーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、又は、ウレア基により置換されていても良い、アルキレン基を表す。
は、アルキル基、アルケニル基、脂肪族環式基、アリールカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基、又は、アルコキシカルボニルアルキル基を表す。
また、RとRは互いに結合し、環を形成していても良い。
は、アニオンを表す。
【0017】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、酸発生剤として、上記一般式(1−1)で表される化合物を含有することにより、上記したように、優れた露光ラチチュード、及び、優れたラインエッジラフネス性能を高次元で両立できる。その理由は、定かではないが、上記一般式(1−1)のように、硫黄原子と、カルボニル基に隣接する炭素原子とが結合してなるS−C結合部位が、Rとしてのアルキレン基を介して環を形成することにより、露光部における化合物(A)に由来する残留物(すなわち、露光により化合物(A)から酸が発生した後の状態における、化合物(A)に由来する化合物)の分子量は、上記環を有さない酸発生剤を使用した場合と比較して大きくなる傾向となる。これは、上記Rとしてのアルキレン基の存在により、露光後のフラグメントが連結されたままでいるためと、推測される。これにより、露光部における膜のガラス転移温度を向上でき、結果、露光部で発生した酸が、未露光部にまで拡散しすぎることが抑制され、優れた露光ラチチュードが達成できるものと考えられる。
また、上記一般式(1−1)で表される化合物は、上記環構造により分子の運動性が制限される。これにより、露光時の励起状態における熱的失活が抑制され、効率的に分解が起きる結果、酸の発生効率が高くなるものと考えられる。その結果、感度及びラインエッジラフネス性能が向上するものと推測される。
【0018】
上記したように、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、脂肪族環式基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基を表す。これらの基は、置換基を更に備えていてもよい。
【0019】
により表されるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルキル基の炭素数は、1〜50であることが好ましく、1〜30であることがより好ましく、1〜20であることが更に好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1−エチルペンチル基、及び、2−エチルヘキシル基が挙げられる。
【0020】
により表されるアルケニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルケニル基の炭素数は、2〜50であることが好ましく、2〜30であることがより好ましく、3〜20であることが更に好ましい。このようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、及びスチリル基が挙げられる。
【0021】
により表されるアルコキシ基は、アルコキシ基におけるアルキル部位が、直鎖状であっても、分岐状であっても、環状であってもよい。このアルコキシ基の炭素数は、1〜10のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等を挙げることができる。これらのアルコキシ基のうち、メトキシ基、エトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が好ましい。
【0022】
により表される脂肪族環式基は、例えば、シクロアルキル基である。シクロアルキル基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。この脂肪族環式基としては、好ましくは、シクロプロピル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の炭素数3〜8の単環のシクロアルキル基が挙げられる。
【0023】
により表される芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜14のものが好ましい。このような基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基などのアリール基が挙げられる。Rにより表される芳香族炭化水素基は、好ましくは、フェニル基である。
【0024】
により表される複素環式基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。この複素環式基は、芳香族性を有していることが好ましい。
上記の基に含まれる複素環は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このような複素環としては、例えば、イミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、2H−ピロール環、3H−インドール環、1H−インダゾール、プリン環、イソキノリン環、4H−キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、ペリミジン環、トリアジン環、ベンズイソキノリン環、チアゾール環、チアジアジン環、アゼピン環、アゾシン環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、及び、ジベンゾチオフェン環が挙げられる。
【0025】
は、露光光源に対して適度な吸収を有するという観点からは、芳香族炭化水素基、又は、芳香族性複素環式基であることが好ましく、芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
【0026】
により表される基が置換基を更に備えている場合、この置換基としては、例えば、以下のものが挙げられる。即ち、この置換基としては、例えば、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、又は−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリーロキシ基、アルコキシカルボニル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリール基、アリールチオ基、アミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基(スルホナト基と称する)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、ホスホノ基(−PO)及びその共役塩基基(ホスホナト基と称する)、ホスホノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基(ホスホナトオキシ基と称する)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基、シリル基、シクロアルキル基、並びに、アルキル基が挙げられる。
これら置換基のうち、ハロゲン原子、アルキル基、脂肪族環式基、アルコキシカルボニル基、又はアルコキシ基が特に好ましい。このアルキル基、脂肪族環式基としては、例えば、先にRについて説明したものと同様のものが挙げられる。
【0027】
は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、脂肪族環式基、芳香族炭化水素基、複素環式基、シアノ基、又は、アルコキシカルボニル基を表す。
【0028】
により表されるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルキル基の炭素数は、1〜50であることが好ましく、1〜30であることがより好ましく、1〜20であることが更に好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1−エチルペンチル基、及び、2−エチルヘキシル基が挙げられる。
【0029】
により表されるアルコキシ基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等を挙げることができる。これらのアルコキシ基のうち、メトキシ基、エトキシ基等が好ましい。
【0030】
により表されるアルケニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルケニル基の炭素数は、2〜50であることが好ましく、2〜30であることがより好ましく、3〜20であることが更に好ましい。このようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、及びスチリル基が挙げられる。
【0031】
により表される脂肪族環式基は、例えば、シクロアルキル基である。シクロアルキル基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。この脂肪族環式基としては、好ましくは、シクロプロピル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の炭素数3〜8の単環のシクロアルキル基が挙げられる。
【0032】
により表される芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜14のものが好ましい。このような基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基などのアリール基が挙げられる。Rにより表される芳香族炭化水素基は、好ましくは、フェニル基である。
【0033】
により表される複素環式基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。この複素環式基は、芳香族性を有していることが好ましい。
上記の基に含まれる複素環は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このような複素環としては、例えば、イミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、2H−ピロール環、3H−インドール環、1H−インダゾール環、プリン環、イソキノリン環、4H−キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、ペリミジン環、トリアジン環、ベンズイソキノリン環、チアゾール環、チアジアジン環、アゼピン環、アゾシン環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、及びベンゾチアゾール環が挙げられる。
【0034】
により表されるアルコキシカルボニル基は、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル等の炭素原子数2〜21の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルコキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0035】
は、水素原子、又はアルキル基であることが好ましい。
【0036】
により表される基は、置換基を更に備えていても良く、この場合、置換基としては、先にRについて説明したのと同様のものが挙げられる。
【0037】
上記したように、Rは、1つ以上の−CH−基が、エーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、又は、ウレア基により置換されていても良い、アルキレン基を表し、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数2〜6であることがより好ましく、炭素数3又は4であることがより好ましい。このようなアルキレン基としては、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基が挙げられる。ここで、アルキレン基における1つ以上の−CH−基が、エーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、又は、ウレア基により置換される場合、上記好ましいアルキル基の炭素数範囲は、上記1つ以上の−CH−基が、上記した基によって置換された後の状態における炭素数範囲である。
【0038】
により表される基は、置換基を更に備えていても良く、この場合、置換基としては、先にRについて説明したのと同様のものが挙げられる。
【0039】
は、無置換のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0040】
上記したように、Rは、アルキル基、アルケニル基、脂肪族環式基、芳香族炭化水素基、複素環式基、アリールオキシカルボニルアルキル基、又は、アルコキシカルボニルアルキル基を表す。
【0041】
により表されるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルキル基の炭素数は、1〜50であることが好ましく、1〜30であることがより好ましく、1〜20であることが更に好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1−エチルペンチル基、及び、2−エチルヘキシル基が挙げられる。
【0042】
により表されるアルケニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルケニル基の炭素数は、2〜50であることが好ましく、2〜30であることがより好ましく、3〜20であることが更に好ましい。このようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、及びスチリル基が挙げられる。
【0043】
により表される脂肪族環式基は、例えば、シクロアルキル基である。シクロアルキル基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。この脂肪族環式基としては、好ましくは、シクロプロピル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の炭素数3〜8の単環のシクロアルキル基が挙げられる。
【0044】
アリールカルボニルアルキル基おけるアリール基としては、炭素数6〜14のアリール基を挙げることができる。なかでも、フェニル基及びナフチル基が好ましい。アリールオキシカルボニルアルキル基おけるアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基を挙げることができる。なかでも、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0045】
アリールオキシカルボニルアルキル基おけるアリール基としては、炭素数6〜14のアリール基を挙げることができる。なかでも、フェニル基及びナフチル基が好ましい。アリールオキシカルボニルアルキル基おけるアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基を挙げることができる。なかでも、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0046】
アルコキシカルボニルアルキル基におけるアルコキシ基は、そのアルコキシ基におけるアルキル部位が、直鎖状であっても、分岐状であっても、環状であってもよい。好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基を挙げることができる。アルコキシカルボニルアルキル基におけるアルキル基(すなわち、カルボニル基に直結するアルキル基)としては、例えば、炭素数1〜10(好ましく炭素数1〜6)の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができる。なかでも、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0047】
により表される基は、置換基を更に備えていても良く、この場合、置換基としては、先にRについて説明したのと同様のものが挙げられる。
【0048】
は、アルキル基、脂肪族環式基、アルコキシカルボニルアルキル基であることが好ましく(これらの基の炭素数は1〜12であることが好ましい)、エチル基、プロピル基、アルコキシカルボニルメチル基であることがより好ましい。
【0049】
及びRが互いに結合して形成してもよい環としては、4員以上の環が好ましく、5又は6員の環がより好ましい。なお、この環を構成する炭素原子(環員としての炭素原子)は、オキソ基(=O)で置換されても良い(すなわち、カルボニル炭素であっても良い)。
【0050】
は、有機酸アニオンであることが好ましく、スルホン酸アニオン、イミド酸アニオン及びメチド酸アニオンであることが好ましい。
また、Yは、非求核性アニオンであることが好ましい。ここで、非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンであり、分子内求核反応による経時分解を抑制することができるアニオンである。これにより、本発明に係る組成物の経時安定性が向上する。
【0051】
としての非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン及びビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン等のイミド酸アニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン等のメチド酸アニオンを挙げることができる。
【0052】
スルホン酸アニオンとしては、例えば、脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンなどが挙げられる。
【0053】
カルボン酸アニオンとしては、例えば、脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオンなどが挙げられる。
【0054】
脂肪族スルホン酸アニオンにおける脂肪族部位は、アルキル基であってもシクロアルキル基であってもよく、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基及び炭素数3〜30のシクロアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基等を挙げることができる。
【0055】
芳香族スルホン酸アニオンにおける芳香族基としては、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0056】
脂肪族スルホン酸アニオン及び芳香族スルホン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。脂肪族スルホン酸アニオン及び芳香族スルホン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基の置換基としては、例えば、ニトロ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルイミノスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15)、アリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20)、アルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数7〜20)、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数10〜20)、アルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数5〜20)、シクロアルキルアルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数8〜20)等を挙げることができる。各基が有するアリール基及び環構造については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)を挙げることができる。
【0057】
脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位としては、脂肪族スルホン酸アニオンおけると同様のアルキル基及びシクロアルキル基を挙げることができる。
【0058】
芳香族カルボン酸アニオンにおける芳香族基としては、芳香族スルホン酸アニオンにおけると同様のアリール基を挙げることができる。
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルブチル基等を挙げることができる。
【0059】
脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン及びアラルキルカルボン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン及びアラルキルカルボン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基の置換基としては、例えば、芳香族スルホン酸アニオンにおけると同様のハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基等を挙げることができる。
【0060】
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンを挙げることができる。
【0061】
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基等を挙げることができる。これらのアルキル基の置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基等を挙げることができ、フッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。また、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおける2つのアルキル基が、互いに結合して環状構造を形成している態様も好ましい。この場合、形成される環状構造は5〜7員環であることが好ましい。
【0062】
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、弗素化燐、弗素化硼素、弗素化アンチモン等を挙げることができる。
【0063】
の非求核性アニオンとしては、スルホン酸のα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。非求核性アニオンとして、より好ましくは炭素数4〜8のパーフロロ脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオン、更により好ましくはノナフロロブタンスルホン酸アニオン、パーフロロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフロロベンゼンスルホン酸アニオン、3,5−ビス(トリフロロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンである。
【0064】
また、Yの非求核性アニオンは、例えば、下記一般式(LD1)により表されることが好ましい。
【0065】
【化3】

【0066】
式中、
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、又は、アルキル基を表し、複数存在する場合のR及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なってもよい。
Cyは、環状の有機基を表す。
xは、1〜20の整数を表す。
yは、0〜10の整数を表す。
zは、0〜10の整数を表す。
【0067】
Xfは、フッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfは、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。より具体的には、Xfは、フッ素原子、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH、又はCHCHであることが好ましく、フッ素原子又はCFが好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0068】
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、又は、アルキル基を表す。このアルキル基は、置換基(好ましくはフッ素原子)を有していてもよく、炭素数1〜4のものが好ましい。更に好ましくは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。R、Rの置換基を有するアルキル基の具体例としては、例えば、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH、及びCHCHが挙げられ、中でもCFが好ましい。
、Rとしては、好ましくはフッ素原子又はCFである。
【0069】
Lは、2価の連結基を表す。この2価の連結基としては、例えば、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基又はこれらの複数が結合してなる基が挙げられる。これらの中でも、−COO−アルキレン基−、−OCO−アルキレン基−、−CONH−アルキレン基−、−O−アルキレン基−、−CONH−、−CO−、又は−SO−が好ましく、−CONH−又は−SO−がより好ましい。
【0070】
Cyは、環状の有機基を表す。環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性の抑制及びMEEF(MaskError Enhancement Factor)の向上の観点から好ましい。
アリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基及びアントリル基が挙げられる。中でも、193nmにおける光吸光度が比較的低いナフチル基が好ましい。
複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよいが、多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピペリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。複素環構造を有する基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又はデカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。また、ラクトン環の例としては、後に樹脂(A)において例示するラクトン構造が挙げられる。
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。また、アルキル基は、炭素数が1〜12であることが好ましい。シクロアルキル基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。また、シクロアルキル基は、炭素数が3〜12であることが好ましい。アリール基は、炭素数が6〜14であることが好ましい。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0071】
xは1〜8が好ましく、中でも1〜4が好ましく、1が特に好ましい。yは0〜4が好ましく、0がより好ましい。zは0〜8が好ましく、中でも0〜4が好ましい。
【0072】
また、Yの非求核性アニオンは、例えば、下記一般式(LD2)により表されることも好ましい。
【0073】
【化4】

【0074】
一般式(LD2)中、Xf、R、R、L、Cy、x、y及びzは、一般式(LD1)における各々と同義である。Rfは、フッ素原子を含んだ基である。
Rfで表されるフッ素原子を含んだ基としては、例えば、少なくとも1つのフッ素原子を有するアルキル基、少なくとも1つのフッ素原子を有するシクロアルキル基、及び少なくとも1つのフッ素原子を有するアリール基が挙げられる。
これらアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、フッ素原子により置換されていてもよく、フッ素原子を含んだ他の置換基により置換されていてもよい。Rfが少なくとも1つのフッ素原子を有するシクロアルキル基又は少なくとも1つのフッ素原子を有するアリール基である場合、フッ素原子を含んだ他の置換基としては、例えば、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基が挙げられる。
また、これらアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、フッ素原子を含んでいない置換基によって更に置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、先にCyについて説明したもののうち、フッ素原子を含んでいないものを挙げることができる。
Rfにより表される少なくとも1つのフッ素原子を有するアルキル基としては、例えば、Xfにより表される少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基として先に説明したのと同様のものが挙げられる。Rfにより表される少なくとも1つのフッ素原子を有するシクロアルキル基としては、例えば、パーフルオロシクロペンチル基、及びパーフルオロシクロヘキシル基が挙げられる。Rfにより表される少なくとも1つのフッ素原子を有するアリール基としては、例えば、パーフルオロフェニル基が挙げられる。
【0075】
以下、化合物(A)のカチオン部位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
【化5】

【0077】
【化6】

【0078】
【化7】

【0079】
【化8】

【0080】
【化9】

【0081】
【化10】

【0082】
【化11】

【0083】
【化12】

【0084】
一般式(1−1)により表される化合物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の合成スキームに示すように、下記一般式(2)により表される化合物と、下記一般式(3)により表される化合物とを反応させることで合成する。
【0085】
【化13】

【0086】
一般式(2)中、Zは、例えば、臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン、スルホン酸イオン、BF、AsF、SbF、PF、又はClOであり、好ましくは、臭素イオン、塩素イオン、スルホン酸イオン、又はカルボン酸イオンである。
における、スルホン酸イオンとしては、例えば、p−トルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンが挙げられる。
における、カルボン酸イオンとしては、例えば、トリフルオロ酢酸イオン及び酢酸イオンが挙げられる。
一般式(3)中、Mは、例えば、アルカリ金属イオンである。このアルカリ金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、リチウムイオン及びカリウムイオンが挙げられる。
一般式(2)及び(3)におけるR、R、R、R及びYは、それぞれ、上記した一般式(1−1)におけるR、R、R、R及びYと同義である。
【0087】
一般式(2)で表される化合物の製造方法は、特に限定されない。具体例として、一般式(4)で表されるスルフィド化合物の場合を例に挙げると、以下の合成スキームに示すように、一般式(4)で表される化合物と、一般式(5)で表されるアルキルハライドとを、活性化剤の存在下で反応させることで、一般式(2)で表される化合物を合成することが出来る。
【0088】
【化14】

【0089】
ここで、一般式(4)で表される化合物に対する一般式(5)で表される化合物のモル比は、好ましくは1〜100であり、更に好ましくは1〜10であり、特に好ましくは1〜5である。
【0090】
反応に使用する活性化剤としては、AgBFが好ましい。
一般式(5)中、Lは、脱離基を表す。脱離基としては、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、アリールスルホニル基又は、アルキルスルホニル基が好ましい。
一般式(4)及び(5)におけるR、R、R及びRは、それぞれ、上記した一般式(1−1)におけるR、R、R及びRと同義である。
【0091】
この反応は、例えば、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルムなどの非プロトン性有機溶媒中で行われる。中でも、アセトニトリル又はクロロホルム中で、反応を行うことが好ましい。有機溶媒の使用割合は、有機溶媒と水との合計100質量部に対して、好ましくは、2〜100質量部であり、更に好ましくは5〜100質量部であり、特に好ましくは、10〜95質量部である。
反応温度は、−40〜100℃が好ましく、更に好ましくは、−20℃〜80℃であり、特に好ましくは、0℃〜80℃である。また、反応時間は、0.1〜96時間であり、更に好ましくは、0.5〜24時間である。
【0092】
一般式(4)で表される化合物(4)の製造方法の具体例として、一般式(6)で表されるスルフィド化合物の場合を考える。この場合、例えば、以下の合成スキームに示すように、一般式(6)で表される化合物を適当な塩基の存在下にて反応させることで、一般式(4)で表される化合物を合成することが出来る。
【0093】
【化15】

【0094】
一般式(6)中、Xは、脱離基を表す。脱離基としては、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、アリールスルホニル基又は、アルキルスルホニル基が好ましい。
一般式(6)におけるR、R及びRは、それぞれ、一般式(1−1)におけるR、R及びRと同義である。
反応に使用する塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、t−ブトキシカリウム、リチウムジイソプロピルアミン、を挙げることができる。中でも、適当な塩基性を有するという理由から、水素化ナトリウムが好ましい。
この反応は、例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、NMP などの非プロトン性有機溶媒中で行われる。中でも、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド中で、反応を行うことが好ましい。有機溶媒の使用割合は、有機溶媒と水との合計100質量部に対して、好ましくは、2〜100質量部であり、更に好ましくは5〜100質量部であり、特に好ましくは、10〜95質量部である。
反応温度は、−40〜100℃が好ましく、更に好ましくは、−20℃〜80℃であり、特に好ましくは、0℃〜80℃である。また、反応時間は、0.1〜96時間であり、更に好ましくは、0.5〜24時間である。
【0095】
一般式(6)で表される化合物の製造方法の具体例として、例えば、以下の合成スキームに示すように、一般式(7)で表される化合物、及び、一般式(8)で表される化合物を適当な塩基の存在下にて反応させることで、一般式(6)で表される化合物を合成することが出来る。
【0096】
【化16】

【0097】
一般式(7)におけるR及びXは、それぞれ、一般式(6)におけるR及びXと同義である。
一般式(8)中、Zは、脱離基を表す。脱離基としては、ヨウ素原子、臭素原子又は、塩素原子好ましい。
一般式(8)におけるR及びRは、それぞれ、一般式(1−1)におけるR及びRと同義である。
【0098】
ここで、一般式(8)で表される化合物に対する一般式(7)で表される化合物のモル比は、好ましくは1〜100であり、更に好ましくは1〜10であり、特に好ましくは1〜5である。
反応に使用する塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、t−ブトキシカリウムが挙げられる。
この反応は、例えば、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ピリジン、NMP、塩化メチレン、及びピリジンなどの非プロトン性有機溶媒中で行われる。中でも、アセトン、アセトニトリル又はテトラヒドロフラン中で、反応を行うことが好ましい。有機溶媒の使用割合は、有機溶媒と水との合計100質量部に対して、好ましくは、2〜100質量部であり、更に好ましくは5〜100質量部であり、特に好ましくは、10〜95質量部である。
反応温度は、−40〜100℃が好ましく、更に好ましくは、−20℃〜80℃であり、特に好ましくは、0℃〜80℃である。また、反応時間は、0.1〜96時間であり、更に好ましくは、0.5〜24時間である。
【0099】
化合物(A)は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
化合物(A)の含有量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分を基準として、0.1〜30.0質量%であることが好ましく、1.0〜25.0質量%であることがより好ましく、2.0〜25.0質量%であることが更に好ましい。
【0100】
[2]酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂(B)
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」又は「樹脂(B)」などともいう)を含有することが好ましい。
樹脂(B)は、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する。
樹脂(B)は、好ましくはアルカリ現像液に不溶又は難溶性である。
【0101】
酸分解性基は、アルカリ可溶性基を酸の作用により分解し脱離する基で保護された構造を有することが好ましい。
アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
【0102】
好ましいアルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基が挙げられる。
【0103】
酸分解性基として好ましい基は、これらのアルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0104】
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0105】
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
【0106】
樹脂(B)が含有し得る、酸分解性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0107】
【化17】

【0108】
一般式(AI)に於いて、
Xaは、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基又は−CH−Rで表される基を表す。Rは、ヒドロキシ基又は1価の有機基を表し、例えば、1価の有機基としては、炭素数5以下のアルキル基、炭素数5以下のアシル基が挙げられ、好ましくは炭素数3以下のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。Xaは好ましくは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
【0109】
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx〜Rxは、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖若しくは分岐)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。
Rx〜Rxの2つが結合して、シクロアルキル基(単環若しくは多環)を形成してもよい。
【0110】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、−COO−Rt−基、−O−Rt−基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は−COO−Rt−基が好ましい。Rtは、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、−CH−基、−(CH−基、−(CH−基がより好ましい。
Rx〜Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
【0111】
Rx〜Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx〜Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。炭素数5〜6の単環のシクロアルキル基が特に好ましい。
Rxがメチル基またはエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0112】
上記各基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)などが挙げられ、炭素数8以下が好ましい。
【0113】
酸分解性基を有する繰り返し単位の合計としての含有率は、樹脂中の全繰り返し単位に対し、15〜70mol%が好ましく、より好ましくは20〜60mol%である。
【0114】
酸分解性基を有する繰り返し単位の好ましい具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0115】
具体例中、Rx、Xaは、水素原子、CH、CF、又はCHOHを表す。Rxa、Rxbはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基を表す。Zは、極性基を含む置換基を表し、複数存在する場合は、複数のZは、互いに同じであっても異なっていてもよい。pは0または正の整数を表す。Zの具体例及び好ましい例は、後述する一般式(II−1)におけるR10の具体例及び好ましい例と同様である。
【0116】
【化18】

【0117】
【化19】

【0118】
【化20】

【0119】
【化21】

【0120】
樹脂(B)は、一般式(AI)で表される繰り返し単位として、一般式(I)で表される繰り返し単位及び一般式(II)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかを有する樹脂であることがより好ましい。
【0121】
【化22】

【0122】
式(I)及び(II)中、
及びRは、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基又は−CH−Rで表される基を表す。Rは水酸基又は1価の有機基を表す。
、R、R、Rは、各々独立して、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rは、炭素原子とともに脂環構造を形成するのに必要な原子団を表す。
【0123】
及びRは、好ましくは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。Rにおける1価の有機基の具体例及び好ましい例は、一般式(AI)のRで記載したものと同様である。
【0124】
におけるアルキル基は、直鎖型でも分岐型でもよく、置換基を有していてもよい。
におけるシクロアルキル基は、単環でも多環でもよく、置換基を有していてもよい。
は好ましくはアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5のものであり、例えばメチル基、エチル基などが挙げられる。
【0125】
Rは、炭素原子とともに脂環構造を形成するのに必要な原子団を表す。Rが該炭素原子とともに形成する脂環構造としては、好ましくは、単環の脂環構造であり、その炭素数は好ましくは3〜7、より好ましくは5又は6である。
【0126】
は好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0127】
、R、Rにおけるアルキル基は、直鎖型でも分岐型でもよく、置換基を有していてもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
【0128】
、R、Rにおけるシクロアルキル基は、単環でも多環でもよく、置換基を有していてもよい。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0129】
一般式(I)により表される繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(1−a)により表される繰り返し単位が挙げられる。
【0130】
【化23】

【0131】
式中、R及びRは、一般式(I)における各々と同義である。
【0132】
一般式(II)で表される繰り返し単位が、以下の一般式(II−1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0133】
【化24】

【0134】
式(II−1)中、
〜Rは、各々、一般式(II)におけるものと同義である。
【0135】
10は極性基を含む置換基を表す。R10が複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。極性基を含む置換基としては、例えば、水酸基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミド基又はスルホンアミド基自体、又はこれらの少なくとも1つを有する、直鎖又は分岐のアルキル基、シクロアルキル基が挙げられ、好ましくは、水酸基を有するアルキル基である。より好ましくは水酸基を有する分岐状アルキル基である。分岐状アルキル基としてはイソプロピル基が特に好ましい。
【0136】
pは0〜15の整数を表す。pは好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1である。
【0137】
酸分解性樹脂は、一般式(AI)により表される繰り返し単位として、一般式(I)により表される繰り返し単位及び一般式(II)により表される繰り返し単位の少なくとも一方を含んだ樹脂であることがより好ましい。また、他の形態において、一般式(AI)により表される繰り返し単位として、一般式(I)により表される繰り返し単位の少なくとも2種を含んだ樹脂であることがより好ましい。
樹脂(B)が酸分解性基を有する繰り返し単位は1種であってもよいし2種以上を併用していてもよい。
【0138】
樹脂(A)が酸分解性繰り返し単位を併用する場合の、好ましい組み合わせとしては、以下に挙げるものが好ましい。下式において、Rは、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【0139】
【化25】

【0140】
樹脂(B)は、ラクトン構造又はスルトン(環状スルホン酸エステル)構造を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
【0141】
ラクトン構造又はスルトン構造としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−17)、(SL1−1)、(SL1−2)のいずれかで表されるラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)、(LC1−17)であり、特定のラクトン構造を用いることでLWR、現像欠陥が良好になる。
【0142】
【化26】

【0143】
ラクトン構造又はスルトン構造部分は、置換基(Rb)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。nは、0〜4の整数を表す。nが2以上の時、複数存在する置換基(Rb)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb)同士が結合して環を形成してもよい。
【0144】
樹脂(B)は、下記一般式(III)で表されるラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
【0145】
【化27】

【0146】
式(III)中、
Aは、エステル結合(−COO−で表される基)又はアミド結合(−CONH−で表される基)を表す。
は、複数個ある場合にはそれぞれ独立にアルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。
Zは、複数個ある場合にはそれぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合
【0147】
【化28】

【0148】
又はウレア結合
【0149】
【化29】

【0150】
を表す。ここで、Rは、各々独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。
【0151】
は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基を表す。
nは、−R−Z−で表される構造の繰り返し数であり、0〜2の整数を表し、0又は1であることが好ましい。nが0である場合、−R−Z−は存在せず、単結合となる。
は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
【0152】
のアルキレン基、シクロアルキレン基は置換基を有してよい。
Zは好ましくは、エーテル結合、エステル結合であり、特に好ましくはエステル結合である。
【0153】
のアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。Rのアルキレン基、シクロアルキレン基、Rにおけるアルキル基は、各々置換されていてもよく、置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子やメルカプト基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等のアシルオキシ基が挙げられる。Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基が好ましい。
【0154】
における好ましい鎖状アルキレン基としては炭素数が1〜10の鎖状のアルキレンが好ましく、より好ましくは炭素数1〜5であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。好ましいシクロアルキレン基としては、炭素数3〜20のシクロアルキレン基であり、例えば、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、ノルボルニレン基、アダマンチレン基等が挙げられる。本発明の効果を発現するためには鎖状アルキレン基がより好ましく、メチレン基が特に好ましい。
【0155】
で表されるラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基は、ラクトン構造又はスルトン構造を有していれば限定されるものではなく、それぞれ、具体例として上述した一般式(LC1−1)〜(LC1−17)で表されるラクトン構造、一般式(SL1−1)又は(SL1−2)で表されるスルトン構造が挙げられ、これらのうち(LC1−4)で表される構造が特に好ましい。また、(LC1−1)〜(LC1−17)、(SL1−1)及び(SL1−2)におけるnは2以下のものがより好ましい。
また、Rは無置換のラクトン構造を有する1価の有機基、或いはメチル基、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を置換基として有するラクトン構造を有する1価の有機基が好ましく、シアノ基を置換基として有するラクトン構造(シアノラクトン)を有する1価の有機基がより好ましい。
【0156】
以下に一般式(III)で表されるラクトン構造又はスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
下記具体例中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又はハロゲン原子を表し、好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、アセチルオキシメチル基を表す。
【0157】
【化30】

【0158】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(III−1)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0159】
【化31】

【0160】
一般式(III−1)に於いて、
、A、R、Z、及びnは、上記一般式(III)と同義である。
は、複数個ある場合にはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、水酸基又はアルコキシ基を表し、複数個ある場合には2つのRが結合し、環を形成していてもよい。
【0161】
Xは、アルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
mは、置換基数であって、0〜5の整数を表す。mは0又は1であることが好ましい。
【0162】
のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、がより好ましく、メチル基が最も好ましい。シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基を挙げることができる。アルコキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等を挙げることができる。これらの基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、シアノ基、フッ素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。Rはメチル基、シアノ基又はアルコキシカルボニル基であることがより好ましく、シアノ基であることが更に好ましい。
【0163】
Xのアルキレン基としてはメチレン基、エチレン基等が挙げられる。Xは酸素原子又はメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることが更に好ましい。
【0164】
mが1以上である場合、少なくとも1つのRはラクトンのカルボニル基のα位又はβ位に置換することが好ましく、特にα位に置換することが好ましい。
【0165】
一般式(III−1)で表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。下記具体例中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又はハロゲン原子を表し、好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、アセトキシメチル基を表す。
【0166】
【化32】

【0167】
【化33】

【0168】
一般式(III)で表される単位は、一態様において、下記一般式(AII’)で表される繰り返し単位であり得る。
【0169】
【化34】

【0170】
一般式(AII’)中、
Rbは、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rbのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。Rbのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基であり、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0171】
Vは、一般式(LC1−1)〜(LC1−17)の内のいずれかで示される構造を有する基を表す。
【0172】
樹脂(B)は、また、一般式(III)で表される単位以外にも、上述したラクトン構造を有する繰り返し単位を含有していてもよい。
【0173】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位の具体例として、上記に挙げた具体例に加え、以下を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0174】
【化35】

【0175】
【化36】

【0176】
【化37】

【0177】
上記具体例の中で特に好ましい繰り返し単位としては、下記の繰り返し単位が挙げられる。最適なラクトン基を選択することにより、パターンプロファイル、疎密依存性が良好となる。
【0178】
【化38】

【0179】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90%以上のものが好ましく、より好ましくは95%以上である。
【0180】
樹脂(B)は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位の2種以上を有していてもよい。特に、一般式(III)の内、nが1であるラクトン繰り返し単位から2種以上を選択し併用することが好ましい。
【0181】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位の含有率は、複数種類含有する場合は合計して樹脂中の全繰り返し単位に対し、15〜70mol%が好ましく、より好ましくは20〜65mol%、更に好ましくは30〜60mol%である。
【0182】
樹脂(B)は、一般式(AI)及び(III)以外の水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましく、酸分解性基を有さないことが好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。好ましい水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造が好ましい。
【0183】
【化39】

【0184】
一般式(VIIa)〜(VIIc)に於いて、
c〜Rcは、各々独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。ただし、Rc〜Rcの内の少なくとも1つは、水酸基又はシアノ基を表す。好ましくは、Rc〜Rcの内の1つ又は2つが、水酸基で、残りが水素原子である。一般式(VIIa)に於いて、更に好ましくは、Rc〜Rcの内の2つが、水酸基で、残りが水素原子である。
【0185】
一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)〜(AIId)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0186】
【化40】

【0187】
一般式(AIIa)〜(AIId)に於いて、
cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
【0188】
c〜Rcは、一般式(VIIa)〜(VIIc)に於ける、Rc〜Rcと同義である。
【0189】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の含有率は、樹脂(B)中の全繰り返し単位に対し、5〜40mol%が好ましく、より好ましくは5〜30mol%、更に好ましくは10〜30mol%である。
【0190】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0191】
【化41】

【0192】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に用いられる樹脂は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有してもよい。アルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビススルホニルイミド基、α位が電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えばヘキサフロロイソプロパノール基)が挙げられ、カルボキシル基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、更にはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましく、連結基は単環又は多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
【0193】
本発明における樹脂(B)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含有してもしなくても良いが、含有する場合、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有率は、樹脂(B)中の全繰り返し単位に対し、1〜20mol%が好ましく、より好ましくは3〜15mol%、更に好ましくは5〜10mol%である。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、RxはH,CH,CHOH,又はCFを表す。
【0194】
【化42】

【0195】
本発明の樹脂(B)は、更に極性基(例えば、前記アルカリ可溶性基、水酸基、シアノ基等)を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有することができる。このような繰り返し単位としては、一般式(IV)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0196】
【化43】

【0197】
一般式(IV)中、Rは少なくとも一つの環状構造を有し、極性基を有さない炭化水素基を表す。
Raは水素原子、アルキル基又は−CH−O−Ra基を表す。式中、Raは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Raは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0198】
が有する環状構造には、単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基が含まれる。単環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基などの炭素数3から12のシクロアルキル基、シクロへキセニル基など炭素数3から12のシクロアルケニル基が挙げられる。好ましい単環式炭化水素基としては、炭素数3から7の単環式炭化水素基であり、より好ましくは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0199】
多環式炭化水素基には環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれ、環集合炭化水素基の例としては、ビシクロヘキシル基、パーヒドロナフタレニル基などが含まれる。架橋環式炭化水素環として、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環等)などの2環式炭化水素環及び、ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン環などの3環式炭化水素環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレン環などの4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、パーヒドロフェナレン環などの5〜8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も含まれる。
【0200】
好ましい架橋環式炭化水素環として、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビシクロオクタニル基、トリシクロ[5、2、1、02,6]デカニル基、などが挙げられる。より好ましい架橋環式炭化水素環としてノルボニル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0201】
これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、水素原子が置換されたヒドロキシル基、水素原子が置換されたアミノ基などが挙げられる。好ましいハロゲン原子としては臭素、塩素、フッ素原子、好ましいアルキル基としてはメチル、エチル、ブチル、t−ブチル基が挙げられる。上記のアルキル基は更に置換基を有していても良く、更に有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、水素原子が置換されたヒドロキシル基、水素原子が置換されたアミノ基を挙げることができる。
【0202】
上記水素原子が置換された基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、好ましい置換メチル基としてはメトキシメチル、メトキシチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基、好ましい置換エチル基としては、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、好ましいアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6の脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基としては炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0203】
樹脂(B)は、極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有してもしなくても良いが、含有する場合、この繰り返し単位の含有率は、樹脂(B)中の全繰り返し単位に対し、1〜40モル%が好ましく、より好ましくは2〜20モル%である。
極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH、CHOH、又はCFを表す。
【0204】
【化44】

【0205】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に用いられる樹脂(B)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にレジスト組成物の一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有することができる。
【0206】
このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0207】
これにより、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に用いられる樹脂に要求される性能、特に、(1)塗布溶剤に対する溶解性、(2)製膜性(ガラス転移点)、(3)アルカリ現像性、(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、(5)未露光部の基板への密着性、(6)ドライエッチング耐性、等の微調整が可能となる。
【0208】
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0209】
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0210】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に用いられる樹脂(B)において、各繰り返し構造単位の含有モル比はレジスト組成物のドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にはレジスト組成物の一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0211】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、ArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に用いられる樹脂(B)は実質的に芳香族基を有さないことが好ましい。より具体的には、樹脂(B)の全繰り返し中、芳香族基を有する繰り返し単位が全体の5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、理想的には0モル%、すなわち、芳香族基を有する繰り返し単位を有さないことが更に好ましい。また、樹脂(B)は単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
なお、樹脂(B)は、後述する疎水性樹脂との相溶性の観点から、フッ素原子および珪素原子を含有しないことが好ましい。
【0212】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に用いられる樹脂(B)として好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50mol%以下であることが好ましい。また、酸分解性基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位20〜50モル%、ラクトン基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位20〜50モル%、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位5〜30モル%、更にその他の(メタ)アクリレート系繰り返し単位を0〜20モル%含む共重合ポリマーも好ましい。
【0213】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物にKrFエキシマレーザー光、電子線、X線、波長50nm以下の高エネルギー光線(EUVなど)を照射する場合には、樹脂(B)は、更に、ヒドロキシスチレン系繰り返し単位を有することが好ましい。更に好ましくはヒドロキシスチレン系繰り返し単位と、酸分解性基で保護されたヒドロキシスチレン系繰り返し単位、(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル等の酸分解性繰り返し単位を有するが好ましい。
【0214】
ヒドロキシスチレン系の好ましい酸分解性基を有する繰り返し単位としては、例えば、t−ブトキシカルボニルオキシスチレン、1−アルコキシエトキシスチレン、(メタ)アクリル酸3級アルキルエステルによる繰り返し単位等を挙げることができ、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート及びジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位がより好ましい。
【0215】
本発明の樹脂(B)は、市販されている場合は市販品を使ってもよいが、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、更には後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0216】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは60〜100℃である。
【0217】
本発明の樹脂(B)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、より好ましくは2,000〜20,000、更により好ましくは3,000〜15,000、特に好ましくは3,000〜10,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。
【0218】
分散度(分子量分布)は、通常1.0〜3.0であり、好ましくは1.0〜2.6、更に好ましくは1.0〜2.0、特に好ましくは1.4〜2.0の範囲のものが使用される。分子量分布の小さいものほど、解像度、パターン形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0219】
本発明において、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対する樹脂(B)の含有量は、30〜99質量%が好ましく、より好ましくは60〜95質量%である。
また、本発明の樹脂(B)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0220】
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、上述した化合物(A)及び化合物(B)に加えて、他の成分を更に含有していてもよい。以下、これらの任意成分について説明する。
【0221】
[3]化合物(A)とは異なる、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(C)
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、化合物(A)とは異なる、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(C)(以下、化合物(C)、その他の酸発生剤ともいう)を更に含有していても良い。
その他の酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
その他の酸発生剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
また、これらの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、例えば、米国特許第3,849,137号明細書、独国特許第3914407号明細書、特開昭63−26653号公報、特開昭55−164824号公報、特開昭62−69263号公報、特開昭63−146038号公報、特開昭63−163452号公報、特開昭62−153853号公報、特開昭63−146029号公報等に記載の化合物を用いることができる。
更に米国特許第3,779,778号明細書、欧州特許第126,712号明細書等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
酸発生剤の内で好ましい化合物として、下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0222】
【化45】

【0223】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
は、非求核性アニオンを表す。
【0224】
としては、例えば、先に一般式(1−1)におけるYについて説明したのと同様のものを挙げることができる。ZとYとは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。但し、化合物(A)と化合物(C)との塩交換反応を抑制する観点から、前者の構成を採用することが好ましい。
【0225】
一般式(ZII)、(ZIII)において、R204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204〜R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。R204〜R207のアリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等を挙げることができる。
204〜R207におけるアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。R204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZの非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0226】
以下、化合物(C)の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0227】
【化46】

【0228】
【化47】

【0229】
【化48】

【0230】
【化49】

【0231】
【化50】

【0232】
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、化合物(C)を含有している場合、その含有量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分を基準として、0.1〜25質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜15質量%、特に好ましくは2〜20質量%である。
【0233】
また、化合物(A)に対する化合物(C)の質量比は、0.1〜10であることが好ましい。
【0234】
[4]疎水性樹脂(D)
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、特に液浸露光に適用する際、疎水性樹脂(以下、樹脂(D)ともいう)を更に含有していてもよい。これにより、膜表層に疎水性樹脂が偏在化し、液浸媒体が水の場合、水に対するレジスト膜表面の静的/動的な接触角を向上させ、液浸水追随性を向上させることができる。
樹脂(D)は、界面に偏在するものであるが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくても良い。
【0235】
疎水性樹脂は、典型的には、フッ素原子及びケイ素原子の少なくとも一方を有している。
疎水性樹脂に於けるフッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかは、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0236】
疎水性樹脂がフッ素原子を含んでいる場合、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基であり、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4であり、更に他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環又は多環のシクロアルキル基であり、更に他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、更に他の置換基を有していてもよい。
【0237】
フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基として、好ましくは、下記一般式(F2)〜(F4)のいずれかで表される基を挙げることができるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0238】
【化51】

【0239】
一般式(F2)〜(F4)中、
57〜R68は、各々独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基(直鎖若しくは分岐)を表す。但し、R57〜R61の少なくとも1つ、R62〜R64の少なくとも1つ及びR65〜R68の少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。
57〜R61及びR65〜R67は、全てがフッ素原子であることが好ましい。R62、R63及びR68は、フルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)が好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることが更に好ましい。R62及びR63がパーフルオロアルキル基であるとき、R64は水素原子であることが好ましい。R62とR63は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0240】
一般式(F2)で表される基の具体例としては、例えば、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられる。
一般式(F3)で表される基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基、2,2,3,3−テトラフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロヘキシル基などが挙げられる。ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基が好ましく、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基が更に好ましい。
【0241】
一般式(F4)で表される基の具体例としては、例えば、−C(CFOH、−C(COH、−C(CF)(CH)OH、−CH(CF)OH等が挙げられ、−C(CFOHが好ましい。
フッ素原子を含む部分構造は、主鎖に直接結合しても良く、更に、アルキレン基、フェニレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合及びウレイレン結合よりなる群から選択される基、あるいはこれらの2つ以上を組み合わせた基を介して主鎖に結合しても良い。
フッ素原子を有する好適な繰り返し単位としては、以下に示すものが挙げられる。
【0242】
【化52】

【0243】
式中、R10及びR11は、各々独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。該アルキル基は、好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であり、置換基を有していてもよく、置換基を有するアルキル基としては特にフッ素化アルキル基を挙げることができる。
〜Wは、各々独立に、少なくとも1つ以上のフッ素原子を含有する有機基を表す。具体的には前記(F2)〜(F4)の原子団が挙げられる。
また、疎水性樹脂は、これら以外にも、フッ素原子を有する繰り返し単位として下記に示すような単位を有していてもよい。
【0244】
【化53】

【0245】
式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、又はアルキル基を表す。該アルキル基は、好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であり、置換基を有していてもよく、置換基を有するアルキル基としては特にフッ素化アルキル基を挙げることができる。
ただし、R〜Rの少なくとも1つはフッ素原子を表す。RとR若しくはRとRは環を形成していてもよい。
は、少なくとも1つのフッ素原子を含有する有機基を表す。具体的には前記(F2)〜(F4)の原子団が挙げられる。
は、単結合、あるいは2価の連結基を示す。2価の連結基としては、置換又は無置換のアリーレン基、置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のシクロアルキレン基、−O−、−SO−、−CO−、−N(R)−(式中、Rは水素原子又はアルキルを表す)、−NHSO−又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基を示す。
Qは脂環式構造を表す。脂環式構造は置換基を有していてもよく、単環型でもよく、多環型でもよく、多環型の場合は有橋式であってもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。多環型としては、炭素数5以上のビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができ、炭素数6〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、ジシクロペンチル基、トリシクロデカニル基、テトシクロドデシル基等を挙げることができる。なお、シクロアルキル基中の炭素原子の一部が、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。Qとして特に好ましくはノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトシクロドデシル基等を挙げることができる。
【0246】
疎水性樹脂は、ケイ素原子を含有してもよい。
ケイ素原子を有する部分構造として、アルキルシリル構造(好ましくはトリアルキルシリル基)、又は環状シロキサン構造を有することが好ましい。
アルキルシリル構造、又は環状シロキサン構造としては、具体的には、下記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基などが挙げられる。
【0247】
【化54】

【0248】
一般式(CS−1)〜(CS−3)に於いて、
12〜R26は、各々独立に、直鎖若しくは分岐アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)又はシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)を表す。
〜Lは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、フェニレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、又はウレイレン結合よりなる群から選択される単独あるいは2つ以上の基の組み合わせを挙げられる。
nは、1〜5の整数を表す。nは、好ましくは、2〜4の整数である。
【0249】
フッ素原子又はケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位は(メタ)アクリレート系繰り返し単位であることが好ましい。
以下、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、具体例中、Xは、水素原子、−CH、−F又は−CFを表し、Xは、−F又は−CFを表す。
【0250】
【化55】

【0251】
【化56】

【0252】
【化57】

【0253】
疎水性樹脂は、下記(x)〜(z)からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する繰り返し単位(b)を有することが好ましい。
(x)アルカリ可溶基
(y)アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(以下、極性変換基とも言う)
(z)酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基
【0254】
繰り返し単位(b)としては、以下の類型が挙げられる。
・1つの側鎖上に、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかと、上記(x)〜(z)からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する繰り返し単位(b’)
・上記(x)〜(z)からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有し、かつ、フッ素原子及びケイ素原子を有さない繰り返し単位(b*)
・1つの側鎖上に上記(x)〜(z)からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有し、かつ、同一繰り返し単位内の前記側鎖と異なる側鎖上に、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位(b”)
【0255】
疎水性樹脂は、繰り返し単位(b)として繰り返し単位(b’)を有することがより好ましい。すなわち、上記(x)〜(z)からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する繰り返し単位(b)が、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有することがより好ましい。
なお、疎水性樹脂が、繰り返し単位(b*)を有する場合、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位(前記繰り返し単位(b’)、(b”)とは異なる繰り返し単位)とのコポリマーであることが好ましい。また、繰り返し単位(b”)における、下記(x)〜(z)からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する側鎖とフッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する側鎖とは、主鎖中の同一の炭素原子に結合している、すなわち下記式(K1)のような位置関係にあることが好ましい。
式中、B1は上記(x)〜(z)からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する部分構造、B2はフッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する部分構造を表す。
【0256】
【化58】

【0257】
上記(x)〜(z)からなる群から選ばれる基は、好ましくは、(x)アルカリ可溶基又は(y)極性変換基であり、(y)極性変換基であることがより好ましい。
アルカリ可溶性基(x)としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
好ましいアルカリ可溶性基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホンイミド基、ビス(カルボニル)メチレン基が挙げられる。
【0258】
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位(bx)としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位などが挙げられ、更にはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入することもでき、いずれの場合も好ましい。
【0259】
繰り返し単位(bx)が、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位である場合(すなわち、前記繰り返し単位(b’)又は(b”)に相当する場合)、繰り返し単位(bx)におけるフッ素原子を有する部分構造としては、前記フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位において挙げたものと同様のものが挙げられ、好ましくは、前記一般式(F2)〜(F4)で表される基を挙げることができる。またこの場合、繰り返し単位(bx)におけるケイ素原子を有する部分構造は、前記フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位において挙げたものと同様のものが挙げられ、好ましくは前記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基を挙げることができる。
【0260】
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位(bx)の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対し、1〜50mol%が好ましく、より好ましくは3〜35mol%、更に好ましくは5〜20mol%である。
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位(bx)の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、具体例中、Xは、水素原子、−CH、−F又は−CFを表す。
【0261】
【化59】

【0262】
【化60】

【0263】
極性変換基(y)としては、例えば、ラクトン基、カルボン酸エステル基(−COO−)、酸無水物基(−C(O)OC(O)−)、酸イミド基(−NHCONH−)、カルボン酸チオエステル基(−COS−)、炭酸エステル基(−OC(O)O−)、硫酸エステル基(−OSOO−)、スルホン酸エステル基(−SOO−)などが挙げられ、好ましくはラクトン基である。
極性変換基(y)は、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルによる繰り返し単位中に含まれることにより、樹脂の側鎖に導入される形態、あるいは極性変換基(y)を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入される形態のいずれも好ましい。
【0264】
極性変換基(y)を有する繰り返し単位(by)の具体例としては、後述の式(KA−1−1)〜(KA−1−17)で表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を挙げることができる。
更に、極性変換基(y)を有する繰り返し単位(by)は、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位である(すなわち、前記繰り返し単位(b’)、(b”)に相当する)ことが好ましい。該繰り返し単位(by)を有する樹脂は疎水性を有するものであるが、特に現像欠陥の低減の点で好ましい。
【0265】
繰り返し単位(by)として、例えば、式(K0)で示される繰り返し単位を挙げることができる。
【0266】
【化61】

【0267】
式中、Rk1は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は極性変換基を含む基を表す。
k2はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は極性変換基を含む基を表す。
但し、Rk1、Rk2の少なくとも一方は、極性変換基を含む基を表す。
極性変換基とは、上述したようにアルカリ現像像液の作用により分解しアルカリ現像液中での溶解度が増大する基を表す。極性変換基としては、一般式(KA−1)又は(KB−1)で表される部分構造におけるXで表される基であることが好ましい。
【0268】
【化62】

【0269】
一般式(KA−1)又は(KB−1)におけるXは、カルボン酸エステル基:−COO−、酸無水物基:−C(O)OC(O)−、酸イミド基:−NHCONH−、カルボン酸チオエステル基:−COS−、炭酸エステル基:−OC(O)O−、硫酸エステル基:−OSOO−、スルホン酸エステル基:−SOO−を表す。
及びYは、それぞれ同一でも異なっても良く、電子求引性基を表す。
なお、繰り返し単位(by)は、一般式(KA−1)又は(KB−1)で表される部分構造を有する基を有することで、好ましいアルカリ現像液中での溶解度が増大する基を有するが、一般式(KA−1)で表される部分構造、Y及びYが1価である場合の(KB−1)で表される部分構造の場合のように、該部分構造が結合手を有しない場合は、該部分構造を有する基とは、該部分構造における任意の水素原子を少なくとも1つ除いた1価以上の基を有する基である。
一般式(KA−1)又は(KB−1)で表される部分構造は、任意の位置で置換基を介して疎水性樹脂の主鎖に連結している。
【0270】
一般式(KA−1)で表される部分構造は、Xとしての基とともに環構造を形成する構造である。
一般式(KA−1)におけるXとして好ましくは、カルボン酸エステル基(即ち、KA−1としてラクトン環構造を形成する場合)、及び酸無水物基、炭酸エステル基である。より好ましくはカルボン酸エステル基である。
一般式(KA−1)で表される環構造は、置換基を有していてもよく、例えば、置換基Zka1をnka個有していてもよい。
ka1は、複数ある場合はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、エーテル基、ヒドロキシル基、アミド基、アリール基、ラクトン環基、又は電子求引性基を表す。
ka1同士が連結して環を形成しても良い。Zka1同士が連結して形成する環としては、例えば、シクロアルキル環、ヘテロ環(環状エーテル環、ラクトン環など)が挙げられる。
nkaは0〜10の整数を表す。好ましくは0〜8の整数、より好ましくは0〜5の整数、更に好ましくは1〜4の整数、最も好ましくは1〜3の整数である。
【0271】
ka1としての電子求引性基は、後述のY及びYとしての電子求引性基と同様である。なお、上記電子求引性基は、別の電子求引性基で置換されていてもよい。
【0272】
ka1は好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、エーテル基、ヒドロキシル基、又は電子求引性基であり、より好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基又は電子求引性基である。なお、エーテル基としては、アルキル基又はシクロアルキル基等で置換されたもの、すなわち、アルキルエーテル基等が好ましい。電子求引性基は前記と同義である。
ka1としてのハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
ka1としてのアルキル基は置換基を有していてもよく、直鎖、分岐のいずれでもよい。直鎖アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30、更に好ましくは1〜20であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基等が挙げられる。分岐アルキル基としては、好ましくは炭素数3〜30、更に好ましくは3〜20であり、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、i−ヘキシル基、t−ヘキシル基、i−ヘプチル基、t−ヘプチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、i−ノニル基、t−デカノイル基等が挙げられる。メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
ka1としてのシクロアルキル基は、置換基を有していてもよく、単環型でもよく、多環型でもよい。多環型の場合、シクロアルキル基は有橋式であってもよい。即ち、この場合、シクロアルキル基は橋かけ構造を有していてもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。多環型としては、炭素数5以上のビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができ、炭素数6〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトシクロドデシル基、アンドロスタニル基が挙げられる。シクロアルキル基としては下記構造も好ましい。なお、シクロアルキル基中の炭素原子の一部が、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0273】
【化63】

【0274】
上記脂環部分の好ましいものとしては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、デカリン基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基、トリシクロデカニル基である。
これらの脂環式構造の置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の低級アルキル基が好ましく、更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を表す。上記アルコキシ基としては、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。アルキル基及びアルコキシ基が有してもよい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4)等を挙げることができる。
【0275】
また、上記基は更に置換基を有していてもよく、更なる置換基としては、水酸基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、上記のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ベンジル基、フエネチル基、クミル基等のアラルキル基、アラルキルオキシ基、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ベンゾイル基、シアナミル基、バレリル基等のアシル基、ブチリルオキシ基等のアシルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、アリル基等のアルケニル基、ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、アリルオキシ基、ブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基、上記のアリール基、フエノキシ基等のアリールオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアリールオキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0276】
一般式(KA−1)におけるXがカルボン酸エステル基であり、一般式(KA−1)が示す部分構造がラクトン環であることが好ましく、5〜7員環ラクトン環であることが好ましい。
なお、下記(KA−1−1)〜(KA−1−17)におけるように、一般式(KA−1)で表される部分構造としての5〜7員環ラクトン環に、ビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環していることが好ましい。
一般式(KA−1)で表される環構造が結合してもよい周辺の環構造については、例えば、下記(KA−1−1)〜(KA−1−17)におけるもの、又はこれに準じたものを挙げることができる。
一般式(KA−1)が示すラクトン環構造を含有する構造として、下記(KA−1−1)〜(KA−1−17)のいずれかで表される構造がより好ましい。なお、ラクトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましい構造としては、(KA−1−1)、(KA−1−4)、(KA−1−5)、(KA−1−6)、(KA−1−13)、(KA−1−14)、(KA−1−17)である。
【0277】
【化64】

【0278】
上記ラクトン環構造を含有する構造は、置換基を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基としては、上記一般式(KA−1)が示す環構造が有してもよい置換基Zka1と同様のものが挙げられる。
【0279】
一般式(KB−1)のXとして好ましくは、カルボン酸エステル基(−COO−)を挙げることができる。
【0280】
一般式(KB−1)におけるY及びYは、各々独立に、電子求引性基を表す。
【0281】
電子求引性基は、下記式(EW)で示す部分構造である。式(EW)における*は(KA−1)に直結している結合手、又は(KB−1)中のXに直結している結合手を表す。
【0282】
【化65】

【0283】
式(EW)中、
ewは−C(Rew1)(Rew2)−で表される連結基の繰り返し数であり、0又は1の整数を表す。newが0の場合は単結合を表し、直接Yew1が結合していることを示す。
ew1は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトリル基、ニトロ基、−C(Rf1)(Rf2)−Rf3で表されるハロ(シクロ)アルキル基又はハロアリール基、オキシ基、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、及びこれらの組み合わせをあげることができ、電子求引性基は例えば下記構造であってもよい。なお、「ハロ(シクロ)アルキル基」とは、少なくとも一部がハロゲン化したアルキル基及びシクロアルキル基を表し、「ハロアリール基」とは、少なくとも一部がハロゲン化したアリール基を表す。下記構造式において、Rew3、Rew4は、各々独立して任意の構造を表す。Rew3、Rew4はどのような構造でも式(EW)で表される部分構造は電子求引性を有し、例えば樹脂の主鎖に連結していてもよいが、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、フッ化アルキル基である。
【0284】
【化66】

【0285】
ew1が2価以上の基である場合、残る結合手は、任意の原子又は置換基との結合を形成するものである。Yew1、Rew1、Rew2の少なくとも何れかの基が更なる置換基を介して疎水性樹脂の主鎖に連結していてもよい。
ew1は、好ましくはハロゲン原子、又は、−C(Rf1)(Rf2)−Rf3で表されるハロ(シクロ)アルキル基又はハロアリール基である。
ew1、Rew2は、各々独立して任意の置換基を表し、例えば水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
ew1、Rew2及びYew1の少なくとも2つが互いに連結して環を形成していてもよい。
【0286】
ここでRf1はハロゲン原子、パーハロアルキル基、パーハロシクロアルキル基、又はパーハロアリール基を表し、より好ましくはフッ素原子、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基、更に好ましくはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。
f2、Rf3は各々独立して水素原子、ハロゲン原子又は有機基を表し、Rf2とRf3とが連結して環を形成してもよい。有機基としては例えばアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基等を表す。Rf2はRf1と同様の基を表すか、又はRf3と連結して環を形成していることがより好ましい。
f1〜Rf3とは連結して環を形成してもよく、形成する環としては、(ハロ)シクロアルキル環、(ハロ)アリール環等が挙げられる。
f1〜Rf3における(ハロ)アルキル基としては、例えば前述したZka1におけるアルキル基、及びこれがハロゲン化した構造が挙げられる。
f1〜Rf3における、又は、Rf2とRf3とが連結して形成する環における(パー)ハロシクロアルキル基及び(パー)ハロアリール基としては、例えば前述したZka1におけるシクロアルキル基がハロゲン化した構造、より好ましくは−C(n)(2n−2)Hで表されるフルオロシクロアルキル基、及び、−C(n)(n−1)で表されるパーフルオロアリール基が挙げられる。ここで炭素数nは特に限定されないが、5〜13のものが好ましく、6がより好ましい。
【0287】
ew1、Rew2及びYew1の少なくとも2つが互いに連結して形成してもよい環としては、好ましくはシクロアルキル基又はヘテロ環基が挙げられ、ヘテロ環基としてはラクトン環基が好ましい。ラクトン環としては、例えば上記式(KA−1−1)〜(KA−1−17)で表される構造が挙げられる。
【0288】
なお、繰り返し単位(by)中に、一般式(KA−1)で表される部分構造を複数、あるいは、一般式(KB−1)で表される部分構造を複数、あるいは、一般式(KA−1)で表される部分構造と一般式(KB−1)で表される部分構造の両方を有していてもよい。
なお、一般式(KA−1)の部分構造の一部又は全部が、一般式(KB−1)におけるY又はYとしての電子求引性基を兼ねてもよい。例えば、一般式(KA−1)のXがカルボン酸エステル基である場合、そのカルボン酸エステル基は一般式(KB−1)におけるY又はYとしての電子求引性基として機能することもあり得る。
【0289】
また、繰り返し単位(by)が、上記繰り返し単位(b*)又は繰り返し単位(b”)に該当し、かつ、一般式(KA−1)で表される部分構造を有する場合、一般式(KA−1)で表される部分構造は、極性変換基が、一般式(KA−1)で示す構造における−COO−で表される部分構造であることがより好ましい。
【0290】
繰り返し単位(by)は、一般式(KY−0)で表わされる部分構造を有する繰り返し単位でありえる。
【0291】
【化67】

【0292】
一般式(KY−0)中、
は、各々独立に、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
は、構成炭素上の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された炭化水素基を表す。
は、m≧2の場合には各々独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又は、R−C(=O)−若しくはR−C(=O)O−で表される基を表す。ここで、Rは、アルキル基若しくはシクロアルキル基を表す。m≧2の場合、2つ以上のRが互いに結合して、環を形成していてもよい。
Xは、アルキレン基、シクロアルキレン基、酸素原子、又は硫黄原子を表す。
Z及びZaは、各々独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、又はウレア結合を表す。
*は、前記樹脂(D)の主鎖又は側鎖への結合手を表す。
oは、1〜7の整数を表す。
mは、0〜7の整数を表す。
nは、0〜5の整数を表す。
−R−Z−の構造として好ましくは、−(CH−COO−で表される構造が好ましい(lは1〜5の整数を表す)。
【0293】
としてのアルキレン基又はシクロアルキレン基の好ましい炭素数範囲及び具体例は、一般式(bb)のZにおけるアルキレン基又はシクロアルキレン基で説明したものと同様である。
としての直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基の炭素数は、直鎖状の場合、好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20であり、分岐状の場合、好ましくは3〜30、更に好ましくは3〜20であり、環状の場合、6〜20である。Rの具体例としては、上記したZka1としてのアルキル基及びシクロアルキル基の具体例を挙げることができる。
及びRとしてのアルキル基及びシクロアルキル基における好ましい炭素数、及び、具体例は、上記したZka1としてのアルキル基及びシクロアルキル基において記載したものと同様である。
としてのアシル基としては、炭素数1〜6のものが好ましく、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基などを挙げることができる。
としてのアルコキシ基及びアルコキシカルボニル基におけるアルキル部位としては、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル部位を挙げることができ、アルキル部位の好ましい炭素数、及び、具体例は、上記したZka1としてのアルキル基及びシクロアルキル基において記載したものと同様である。
Xとしてのアルキレン基又はシクロアルキレン基の好ましい炭素数及びその具体例は、Rとしてのアルキレン基又はシクロアルキレン基について説明したものと同様である。
【0294】
また、繰り返し単位(by)は、少なくとも2つ以上の極性変換基を有する繰り返し単位であることがより好ましい。
【0295】
繰り返し単位(by)が少なくとも2つの極性変換基を有する場合、下記一般式(KY−1)で示す、2つの極性変換基を有する部分構造を有する基を有することが好ましい。なお、一般式(KY−1)で表される構造が、結合手を有さない場合は、該構造における任意の水素原子を少なくとも1つ除いた1価以上の基を有する基である。
【0296】
【化68】

【0297】
一般式(KY−1)において、
ky1、Rky4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、エーテル基、ヒドロキシル基、シアノ基、アミド基、又はアリール基を表す。或いは、Rky1、Rky4が同一の原子と結合して二重結合を形成していてもよく、例えばRky1、Rky4が同一の酸素原子と結合してカルボニル基の一部(=O)を形成してもよい。
ky2、Rky3はそれぞれ独立して電子求引性基であるか、又はRky1とRky2が連結してラクトン環を形成するとともにRky3が電子求引性基である。形成するラクトン環としては、前記(KA−1−1)〜(KA−1−17)の構造が好ましい。電子求引性基としては、前記式(KB−1)におけるY、Yと同様のものが挙げられ、好ましくはハロゲン原子、又は、前記−C(Rf1)(Rf2)−Rf3で表されるハロ(シクロ)アルキル基又はハロアリール基である。好ましくはRky3がハロゲン原子、又は、前記−C(Rf1)(Rf2)−Rf3で表されるハロ(シクロ)アルキル基又はハロアリール基であり、Rky2はRky1と連結してラクトン環を形成するか、ハロゲン原子を有さない電子求引性基である。
ky1、Rky2、Rky4はそれぞれ互いに連結して単環又は多環構造を形成しても良い。
【0298】
ky1、Rky4は具体的には式(KA−1)におけるZka1と同様の基が挙げられる。
ky1とRky2が連結して形成するラクトン環としては、前記(KA−1−1)〜(KA−1−17)の構造が好ましい。電子求引性基としては、前記式(KB−1)におけるY、Yと同様のものが挙げられる。
【0299】
一般式(KY−1)で表される構造としては、下記一般式(KY−2)で示す構造であることがより好ましい。なお、一般式(KY−2)で表される構造は、該構造における任意の水素原子を少なくとも1つ除いた1価以上の基を有する基である。
【0300】
【化69】

【0301】
式(KY−2)中、
ky6〜Rky10は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、エーテル基、ヒドロキシル基、シアノ基、アミド基、又はアリール基を表す。
ky6〜Rky10は、2つ以上が互いに連結して単環又は多環構造を形成しても良い。
ky5は電子求引性基を表す。電子求引性基は前記Y、Yにおけるものと同様のものが挙げられ、好ましくはハロゲン原子、又は、前記−C(Rf1)(Rf2)−Rf3で表されるハロ(シクロ)アルキル基又はハロアリール基である。
ky5〜Rky10は具体的には式(KA−1)におけるZka1と同様の基が挙げられる。
式(KY−2)で表される構造は、下記一般式(KY−3)で示す部分構造であることがより好ましい。
【0302】
【化70】

【0303】
式(KY−3)中、Zka1、nkaは各々前記一般式(KA−1)と同義である。Rky5は前記式(KY−2)と同義である。
kyはアルキレン基、シクロアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。Lkyのアルキレン基としてはメチレン基、エチレン基等が挙げられる。Lkyは酸素原子又はメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることが更に好ましい。
【0304】
繰り返し単位(b)は、付加重合、縮合重合、付加縮合、等、重合により得られる繰り返し単位であれば限定されるものではないが、炭素−炭素2重結合の付加重合により得られる繰り返し単位であることが好ましい。例として、アクリレート系繰り返し単位(α位、β位に置換基を有する系統も含む)、スチレン系繰り返し単位(α位、β位に置換基を有する系統も含む)、ビニルエーテル系繰り返し単位、ノルボルネン系繰り返し単位、マレイン酸誘導体(マレイン酸無水物やその誘導体、マレイミド、等)の繰り返し単位、等を挙げることが出来、アクリレート系繰り返し単位、スチレン系繰り返し単位、ビニルエーテル系繰り返し単位、ノルボルネン系繰り返し単位が好ましく、アクリレート系繰り返し単位、ビニルエーテル系繰り返し単位、ノルボルネン系繰り返し単位が好ましく、アクリレート系繰り返し単位が最も好ましい。
【0305】
繰り返し単位(by)が、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位である場合(すなわち、前記繰り返し単位(b’)又は(b”)に相当する場合)、繰り返し単位(by)におけるフッ素原子を有する部分構造としては、前記フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位において挙げたものと同様のものが挙げられ、好ましくは、前記一般式(F2)〜(F4)で表される基を挙げることができる。またこの場合、繰り返し単位(by)におけるケイ素原子を有する部分構造は、前記フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位において挙げたものと同様のものが挙げられ、好ましくは前記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基を挙げることができる。
【0306】
アルカリ現像液中での溶解度が増大する基を有する繰り返し単位(by)に対応したモノマーは、例えば、US2010/0152400A、WO2010/067905A、又はWO2010/067898Aに記載された方法により合成することができる。
【0307】
疎水性樹脂に於ける、繰り返し単位(by)の含有率は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対し、10〜100mol%が好ましく、より好ましくは20〜99mol%、更に好ましくは30〜97mol%、最も好ましくは40〜95mol%である。
アルカリ現像液中での溶解度が増大する基を有する繰り返し単位(by)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。Raは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。
【0308】
【化71】

【0309】
【化72】

【0310】
疎水性樹脂に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位(bz)は、樹脂(B)について説明した酸分解性基を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。
【0311】
繰り返し単位(bz)が、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位である場合(すなわち、前記繰り返し単位(b’)又は(b”)に相当する場合)、繰り返し単位(bz)におけるフッ素原子を有する部分構造としては、前記フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位において挙げたものと同様のものが挙げられ、好ましくは、前記一般式(F2)〜(F4)で表される基を挙げることができる。またこの場合、繰り返し単位(by)におけるケイ素原子を有する部分構造は、前記フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位において挙げたものと同様のものが挙げられ、好ましくは前記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基を挙げることができる。
【0312】
疎水性樹脂に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位(bz)の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対し、1〜80mol%が好ましく、より好ましくは10〜80mol%、更に好ましくは20〜60mol%である。
【0313】
以上、上記(x)〜(z)からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する繰り返し単位(b)について説明したが、疎水性樹脂に於ける、繰り返し単位(b)の含有率は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対し、1〜98mol%が好ましく、より好ましくは3〜98mol%、更に好ましくは5〜97mol%、最も好ましくは10〜95mol%である。
繰り返し単位(b’)の含有率は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対し、1〜100mol%が好ましく、より好ましくは3〜99mol%、更に好ましくは5〜97mol%、最も好ましくは10〜95mol%である。
繰り返し単位(b*)の含有率は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対し、1〜90mol%が好ましく、より好ましくは3〜80mol%、更に好ましくは5〜70mol%、最も好ましくは10〜60mol%である。繰り返し単位(b*)と共に用いられる、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位の含有率は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対し、10〜99mol%が好ましく、より好ましくは20〜97mol%、更に好ましくは30〜95mol%、最も好ましくは40〜90mol%である。
繰り返し単位(b”)の含有率は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対し、1〜100mol%が好ましく、より好ましくは3〜99mol%、更に好ましくは5〜97mol%、最も好ましくは10〜95mol%である。
【0314】
疎水性樹脂は、更に、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0315】
【化73】

【0316】
一般式(III)に於いて、
c31は、水素原子、アルキル基(フッ素で置換されていても良い)、シアノ基又は−CH−O−Rac基を表す。式中、Racは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Rc31は、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
c32は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を有する基を表す。これら基はフッ素原子、ケイ素原子を含む基等で置換されていても良い。
c3は、単結合又は2価の連結基を表す。
【0317】
一般式(III)に於ける、Rc32のアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3〜20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3〜20のシクロアルケニル基が好ましい。
アリール基は、炭素数6〜20のフェニル基、ナフチル基が好ましく、これらは置換基を有していてもよい。
c32は無置換のアルキル基又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
c3の2価の連結基は、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜5)、オキシ基、フェニレン基、エステル結合(−COO−で表される基)が好ましい。
【0318】
疎水性樹脂は、更に、下記一般式(BII−AB)で表される繰り返し単位を有することも好ましい。
【0319】
【化74】

【0320】
式(BII−AB)中、
c11’及びRc12’は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Zc’は、結合した2つの炭素原子(C−C)と共に脂環式構造を形成するための原子団を表す。
【0321】
一般式(III)、(BII−AB)で表される繰り返し単位における各基が、フッ素原子又はケイ素原子を含む基で置換されている場合、その繰り返し単位は、前記フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位にも相当する。
【0322】
以下に一般式(III)、(BII−AB)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH、CHOH、CF又はCNを表す。なお、RaがCFである場合の繰り返し単位は、前記フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位にも相当する。
【0323】
【化75】

【0324】
疎水性樹脂は、樹脂(A)と同様に、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が0〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜5質量%、0〜1質量%が更により好ましい。それにより、液中異物や感度等の経時変化の少ない組成物が得られる。また、解像度、パターン形状、パターンの側壁、ラフネスなどの点から、分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は、1〜3の範囲が好ましく、より好ましくは1〜2、更に好ましくは1〜1.8、最も好ましくは1〜1.5の範囲である。
【0325】
疎水性樹脂は、各種市販品を利用することもできるし、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することもできる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。
反応溶媒、重合開始剤、反応条件(温度、濃度等)、及び、反応後の精製方法は、樹脂(B)について説明した内容と同様である。
【0326】
以下に疎水性樹脂の具体例を示す。また、後掲の表に、各樹脂における繰り返し単位のモル比(各繰り返し単位と左から順に対応)、重量平均分子量、分散度を示す。
【0327】
【化76】

【0328】
【化77】

【0329】
【化78】

【0330】
【表1】

【0331】
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを含有する疎水性樹脂を含有することにより、組成物から形成された膜の表層に疎水性樹脂が偏在化し、液浸媒体が水の場合、水に対する該膜表面の後退接触角を向上させ、液浸水追随性を向上させることができる。
【0332】
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物からなる塗膜をベークした後で且つ露光前の膜の後退接触角は露光時の温度、通常室温23±3℃、湿度45±5%において60°〜90°が好ましく、より好ましくは65°以上、更に好ましくは70°以上、特に好ましくは75°以上である。
【0333】
疎水性樹脂は前述のように界面に偏在するものであるが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくても良い。
【0334】
液浸露光工程に於いては、露光ヘッドが高速でウエハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウエハ上を動く必要があるので、動的な状態に於ける組成物膜に対する液浸液の接触角が重要になり、液滴が残存することなく、露光ヘッドの高速なスキャンに追随する性能が求められている。
【0335】
疎水性樹脂は、疎水的であるためアルカリ現像後に現像残渣(スカム)、BLOB欠陥が悪化しやすいが、少なくとも1つの分岐部を介してポリマー鎖を3つ以上有することで直鎖型樹脂に比べ、アルカリ溶解速度が向上するため現像残渣(スカム)、BLOB欠陥性能が改善される。
【0336】
疎水性樹脂がフッ素原子を有する場合、フッ素原子の含有率は、疎水性樹脂の質量平均分子量に対し、5〜80質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。また、フッ素原子を含む繰り返し単位が、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対し、10〜100モル%であることが好ましく、30〜100モル%であることがより好ましい。
疎水性樹脂がケイ素原子を有する場合、ケイ素原子の含有率は、疎水性樹脂の質量平均分子量に対し、2〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。また、ケイ素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂の全繰り返し単位に対し、10〜90モル%であることが好ましく、20〜80モル%であることがより好ましい。
【0337】
疎水性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは2,000〜50,000、更に好ましくは3,000〜30,000である。ここで、樹脂の重量平均分子量は、GPC(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))によって測定したポリスチレン換算分子量を示す。
【0338】
疎水性樹脂は1種類単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の疎水性樹脂の含有率は、組成物の全固形分を基準として、0.01〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜18質量%、更に好ましくは0.5〜15質量%である。
【0339】
[5]溶剤(E)
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、通常、溶剤を更に含有する。
この溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を含有しても良いモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
【0340】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましく挙げられる。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルを好ましく挙げられる。
【0341】
乳酸アルキルエステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルを好ましく挙げられる。
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチルを好ましく挙げられる。
【0342】
環状ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンが好ましく挙げられる。
【0343】
環を含有しても良いモノケトン化合物としては、例えば、2−ブタノン、3−メチルブタノン、ピナコロン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、4,4−ジメチル−2−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−3−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、5−ヘキセン−2−オン、3−ペンテン−2−オン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2,2−ジメチルシクロペンタノン、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,2−ジメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘプタノン、3−メチルシクロヘプタノンが好ましく挙げられる。
【0344】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートが好ましく挙げられる。
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、酢酸−3−メトキシ−3−メチルブチル、酢酸−1−メトキシ−2−プロピルが好ましく挙げられる。
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピルが好ましく挙げられる。
好ましく使用できる溶剤としては、常温常圧下で、沸点130℃以上の溶剤が挙げられる。具体的には、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、プロピレンカーボネートが挙げられる。
本発明に於いては、上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0345】
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤、水酸基を含有しない溶剤としては前述の例示化合物が適宜選択可能であるが、水酸基を含有する溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を含有しない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を含有しても良いモノケトン化合物、環状ラクトン、酢酸アルキルなどが好ましく、これらの内でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルが特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノンが最も好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。
【0346】
[6]塩基性化合物(F)
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、塩基性化合物(以下、化合物(F)ともいう)を更に含有していてもよい。
塩基性化合物としては、好ましくは、下記式(A)〜(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0347】
【化79】

【0348】
一般式(A)及び(E)中、
200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表し、ここで、R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。R203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
これら一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0349】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0350】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカー7−エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはテトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタン−1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0351】
好ましい塩基性化合物として、更に、フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物を挙げることができる。
前記フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物は、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合していることが好ましい。また、前記アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でも−CHCHO−、−CH(CH)CHO−もしくは−CHCHCHO−の構造が好ましい。
前記フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物の具体例としては、米国特許出願公開2007/0224539号明細書の[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0352】
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
本発明に係る組成物が化合物(F)を含んでいる場合、その含有率は、本発明の組成物の全固形分を基準として、通常は0.001〜10質量%であり、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0353】
酸発生剤と化合物(F)との組成物中の含有割合は、酸発生剤/化合物(F)(モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/化合物(F)(モル比)は、より好ましくは3.5〜200、更に好ましくは3.5〜150である。なお、酸発生剤の量は、化合物(A)の量と、化合物(C)の量の和である。
【0354】
[7]酸の作用により脱離する基を有し、該脱離により塩基性が増大する低分子化合物(G)
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸の作用により脱離する基を有し、該脱離により塩基性が増大する低分子化合物(以下において、「低分子化合物(G)」ともいう。)を含有することが好ましい。
酸の作用により脱離する基としては特に限定されないが、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又はヘミアミナールエーテル基であることが好ましく、カルバメート基又はヘミアミナールエーテル基であることが特に好ましい。
酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(G)の分子量は、100〜1000が好ましく、100〜700がより好ましく、100〜500が特に好ましい。
化合物(G)としては、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体が好ましい。
化合物(G)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有していてもよい。カルバメート基を構成する保護基は、例えば、下記一般式(d−1)により表される。
【0355】
【化80】

【0356】
一般式(d−1)中、
R’は、各々独立に、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルコキシアルキル基を表す。R’は、互いに結合して、環を形成していてもよい。
R’は、より好ましくは、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基である。より好ましくは、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はシクロアルキル基である。
低分子化合物(G)は、上述の塩基性化合物と一般式(d−1)で表される構造を任意に組み合わせることで構成することも出来る。
低分子化合物(G)は、下記一般式(A)で表される構造を有するものであることが特に好ましい。
なお、低分子化合物(G)は、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物であるかぎり、前記の塩基性化合物に相当するものであってもよい。
【0357】
【化81】

【0358】
一般式(A)において、Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。また、n=2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に結合して、2価の複素環式基(好ましくは炭素数20以下)若しくはその誘導体を形成していてもよい。
Rbは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基を示す。但し、−C(Rb)(Rb)(Rb)において、1つ以上のRbが水素原子のとき、残りのRbの少なくとも1つはシクロプロピル基、1−アルコキシアルキル基又はアリール基である。
少なくとも2つのRbが結合して脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式基若しくはその誘導体を形成していてもよい。
nは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、n+m=3である。
【0359】
一般式(A)において、RaおよびRbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
前記Ra及び/又はRbのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、上記官能基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい)としては、
例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基、これらのアルカンに由来する基を、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基、
【0360】
シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ノルボルナン、アダマンタン、ノルアダマンタン等のシクロアルカンに由来する基、これらのシクロアルカンに由来する基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の直鎖状、分岐状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基、
ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香族化合物に由来する基、これらの芳香族化合物に由来する基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の直鎖状、分岐状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基、
ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、インドール、インドリン、キノリン、パーヒドロキノリン、インダゾール、ベンズイミダゾール等の複素環化合物に由来する基、これらの複素環化合物に由来する基を直鎖状、分岐状のアルキル基或いは芳香族化合物に由来する基の1種以上或いは1個以上で置換した基、直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基・シクロアルカンに由来する基をフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の芳香族化合物に由来する基の1種以上或いは1個以上で置換した基等或いは前記の置換基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基で置換された基等が挙げられる。
【0361】
また、前記Raが相互に結合して、形成する2価の複素環式基(好ましくは炭素数1〜20)若しくはその誘導体としては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、ホモピペラジン、4−アザベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、5−アザベンゾトリアゾール、1H−1,2,3−トリアゾール、1,4,7−トリアザシクロノナン、テトラゾール、7−アザインドール、インダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾ[1,2−a]ピリジン、(1S,4S)−(+)−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デック−5−エン、インドール、インドリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン、パーヒドロキノリン、1,5,9−トリアザシクロドデカン等の複素環式化合物に由来する基、これらの複素環式化合物に由来する基を直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基、シクロアルカンに由来する基、芳香族化合物に由来する基、複素環化合物に由来する基、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基の1種以上或いは1個以上で置換した基等が挙げられる。
本発明における特に好ましい低分子化合物(G)を具体的に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0362】
【化82】

【0363】
【化83】

【0364】
一般式(A)で表される化合物は、例えば、特開2009−199021号公報に記載されている方法により合成することができる。
低分子化合物(G)は、一種単独でも又は2種以上を混合しても使用することができる。
本発明において、低分子化合物(G)の含有率は、組成物の全固形分を基準として、通常、0.001〜20質量%、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%である。
酸発生剤と低分子化合物(G)との組成物中の使用割合は、酸発生剤/[低分子化合物(G)+塩基性化合物(F)](モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/[低分子化合物(G)+塩基性化合物(F)](モル比)は、より好ましくは3.5〜200、更に好ましくは3.5〜150である。なお、酸発生剤の量は、化合物(A)の量と、化合物(C)の量の和である。
【0365】
[8]界面活性剤(H)
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、更に界面活性剤を含有してもよい。含有する場合、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子とケイ素原子の両方を有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましい。
本発明の組成物が上記界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
【0366】
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0276]に記載の界面活性剤が挙げられ、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(DIC(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D、222D((株)ネオス製)等である。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0367】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)もしくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
【0368】
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。更に、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(DIC(株)製)、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C37基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体等を挙げることができる。
【0369】
また、本発明では、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0280]に記載の、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また、いくつかの組み合わせで使用してもよい。
本発明に係る組成物が界面活性剤を含有している場合、その含有率は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.1〜2質量%、更に好ましくは0.1〜1.5質量%、特に好ましくは0.1〜1質量%である。
一方、界面活性剤の添加量を10ppm以下、或いは含有しないことも好ましい。これにより疎水性樹脂の表面偏在性があがり、それにより、レジスト膜表面をより疎水的にすることができ、液浸露光時の水追随性を向上させることが出来る。
【0370】
[9]カルボン酸オニウム塩(I)
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、カルボン酸オニウム塩を含有してもよい。カルボン酸オニウム塩としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が好ましい。アニオン部としては、炭素数1〜30の直鎖、分岐、単環又は多環環状アルキルカルボン酸アニオンが好ましい。更に好ましくはこれらのアルキル基の一部又は全てがフッ素置換されたカルボン酸のアニオンが好ましい。アルキル鎖中に酸素原子を含んでいても良い。これにより220nm以下の光に対する透明性が確保され、感度、解像力が向上し、疎密依存性、露光マージンが改良される。
フッ素置換されたカルボン酸のアニオンとしては、フロロ酢酸、ジフロロ酢酸、トリフロロ酢酸、ペンタフロロプロピオン酸、ヘプタフロロ酪酸、ノナフロロペンタン酸、パーフロロドデカン酸、パーフロロトリデカン酸、パーフロロシクロヘキサンカルボン酸、2,2−ビストリフロロメチルプロピオン酸のアニオン等が挙げられる。
カルボン酸オニウム塩の組成物中の含有率は、組成物の全固形分に対し、一般的には0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0371】
[10]溶解阻止化合物(J)
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物を含有していてもよい。溶解阻止化合物としては、220nm以下の透過性を低下させないため、Proceeding of SPIE, 2724,355 (1996)に記載されている酸分解性基を含むコール酸誘導体の様な、酸分解性基を含有する脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。酸分解性基、脂環式構造としては、樹脂(B)について説明したものと同様のものが挙げられる。
なお、本発明の組成物をKrFエキシマレーザーで露光するか、或いは電子線で照射する場合には、溶解阻止化合物としてはフェノール化合物のフェノール性水酸基を酸分解基で置換した構造を含有するものが好ましい。フェノール化合物としてはフェノール骨格を1〜9個含有するものが好ましく、更に好ましくは2〜6個含有するものである。
溶解阻止化合物の添加量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対し、好ましくは3〜50質量%であり、より好ましくは5〜40質量%である。
以下に溶解阻止化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0372】
【化84】

【0373】
[11]その他の添加剤(K)
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて更に染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)等を含有させることができる。
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号公報、特開平2−28531号公報、米国特許第4,916,210号明細書、欧州特許第219294号明細書等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0374】
[12]パターン形成方法
本発明のパターン形成方法は、感活性光線性又は感放射線性膜を露光することと、前記露光された膜を現像することとを含んでいる。
感活性光線性又は感放射線性膜は、上記した本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物から形成されるものであり、より具体的には、基板上に形成されることが好ましい。本発明のパターン形成方法に於いて、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物による感活性光線性又は感放射線性膜を基板上に形成する工程、膜を露光する工程、及び現像工程は、一般的に知られている方法により行うことができる。
本発明の感活性光線性又は感放射線性膜は、解像力向上の観点から、膜厚が30〜250nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
【0375】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分濃度は、一般的には1〜10質量%、より好ましくは1〜8.0質量%、更に好ましくは1.0〜7.0質量%である。
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは前記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、次のように所定の支持体上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。なお、フィルターは、複数種類を直列又は並列に接続して用いてもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理などを行ってもよい。
例えば、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布、乾燥し、膜を形成する。
【0376】
膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0377】
当該膜に、所定のマスクを通して活性光線又は放射線を照射し、好ましくはベーク(加熱)を行い、現像、リンスする。これにより良好なパターンを得ることができる。なお、電子ビームの照射では、マスクを介さない描画(直描)が一般的である。
製膜後、露光工程の前に、前加熱工程(PB;Prebake)を含むことも好ましい。
また、露光工程の後かつ現像工程の前に、露光後加熱工程(PEB;Post Exposure Bake)を含むことも好ましい。
加熱温度はPB、PEB共に70〜120℃で行うことが好ましく、80〜110℃で行うことがより好ましい。
加熱時間は30〜300秒が好ましく、30〜180秒がより好ましく、30〜90秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光・現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行っても良い。
ベークにより露光部の反応が促進され、感度やパターンプロファイルが改善する。
【0378】
活性光線又は放射線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光、X線、電子線等を挙げることができるが、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、特に好ましくは1〜200nmの波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、X線、電子ビーム等であり、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(13nm)、電子ビームが好ましい。
【0379】
現像工程におけるアルカリ現像液としては、通常、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩が用いられるが、これ以外にも無機アルカリ、1級アミン、2級アミン、3級アミン、アルコールアミン、環状アミン等のアルカリ水溶液も使用可能である。
更に、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
リンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
【0380】
リンス工程においては、現像を行ったウェハをリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程は、通常40〜160℃、好ましくは70〜95℃で、通常10秒〜3分、好ましくは30秒から90秒間行う。
【0381】
また、現像処理又は、リンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【0382】
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成した膜に対しては、液浸露光を行ってもよい。即ち、膜とレンズの間に空気よりも屈折率の高い液体を満たした状態で、活性光線又は放射線の照射を行ってもよい。これにより、解像性を更に高めることが可能となる。
液浸露光する際に使用する液浸液について、以下に説明する。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつレジスト膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましい。特に、露光光源がArFエキシマレーザー(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ及び取り扱いのし易さといった点から、水を用いるのが好ましい。
また、更なる短波長化を図るべく、屈折率1.5以上の媒体を用いることもできる。この媒体は、水溶液であってもよく、有機溶剤であってもよい。
【0383】
液浸液として水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させるために、ウェハ上のレジスト層を溶解させず、且つレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できる添加剤(液体)を僅かな割合で添加してもよい。
その添加剤としては、水とほぼ等しい屈折率を有する脂肪族系のアルコールが好ましく、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール及びイソプロピルアルコール等が挙げられる。水とほぼ等しい屈折率を有するアルコールを添加することにより、水中のアルコール成分が蒸発して含有濃度が変化しても、液体全体としての屈折率変化を極めて小さくできる。一方で、193nm光に対して不透明な物質や屈折率が水と大きく異なる不純物が混入した場合、レジスト上に投影される光学像の歪みを招くため、使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。
液浸液として用いる水の電気抵抗は、18.3MQcm以上であることが望ましく、TOC(有機物濃度)は20ppb以下であることが望ましく、脱気処理がされていることが望ましい。
また、液浸液の屈折率を高めることにより、リソグラフィー性能を高めることが可能である。このような観点から、屈折率を向上させるための添加剤を水に加えてもよく、水の代わりに重水(DO)を用いてもよい。
レジスト膜と液浸液との間には、レジスト膜と液浸液との接触を避けるために、液浸液難溶性膜(以下、「トップコート」ともいう)を設けてもよい。トップコートに必要な機能としては、レジスト膜上への塗布適性、放射線、特には193nmの波長を有した放射線に対する透明性、及び液浸液難溶性が挙げられる。トップコートとしては、レジスト膜と混合せず、レジスト膜上に均一に塗布できるものを用いることが好ましい。
トップコートは、193nmにおける透明性という観点からは、芳香族を含有しないポリマーが好ましい。このようなポリマーとしては、例えば、炭化水素ポリマー、アクリル酸エステルポリマー、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、シリコン含有ポリマー及びフッ素含有ポリマーが挙げられる。上述した疎水性樹脂は、トップコートとしても好適なものである。トップコートから液浸液へ不純物が溶出すると光学レンズを汚染されるため、トップコートに含まれるポリマーの残留モノマー成分は、少ない方が好ましい。
トップコートを剥離する際は、現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、レジスト膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。剥離工程がレジストの現像処理工程と同時にできるという点では、アルカリ現像液により剥離できることが好ましい。アルカリ現像液で剥離するという観点からは、トップコートは酸性であることが好ましいが、レジストとの非インターミクス性の観点から、中性であってもアルカリ性であってもよい。
トップコートと液浸液との間には、屈折率の差がないか又は小さいことが好ましい。この場合、解像力を向上させることが可能となる。露光光源がArFエキシマレーザー(波長:193nm)の場合には、液浸液として水を用いることが好ましいため、ArF液浸露光用トップコートは、水の屈折率(1.44)に近いことが好ましい。
また、透明性及び屈折率の観点から、トップコートは、薄膜であることが好ましい。トップコートは、レジスト膜と混合せず、更に液浸液とも混合しないことが好ましい。この観点から、液浸液が水の場合には、トップコートに使用される溶剤は、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に使用される溶媒に難溶で、かつ非水溶性の媒体であることが好ましい。また、液浸液が有機溶剤である場合には、トップコートは水溶性であっても非水溶性であってもよい。
【実施例】
【0384】
本発明の態様を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0385】
<酸発生剤(1)>
化合物(A)として、下記化合物(A−1)〜(A−16)を合成した。また、参照用に、下記化合物(A−17)及び(A−18)を準備した。
【0386】
【化85】

【0387】
【化86】

【0388】
<合成例1;化合物(A−1)の合成>
1Lの3口フラスコ内にて、20gのフェナシルブロミドと15.5gのトリエチルアミンを200gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。これを氷冷しながら攪拌し、3−メルカプト1−プロパノール 9.3gを10分かけて加えた。滴下後、アイスバスを除去し、室温にて1時間攪拌した。反応液に、200gの酢酸エチルを加え、有機層を飽和重曹水、水、飽和食塩水で順次洗浄し、溶媒を除去して、透明液体状の下記化合物(A−1−1)を20.5g得た。
【0389】
1Lの3口フラスコ内にて、20.5gの化合物(A−1−1)と19.5gのトリエチルアミンを200gのTHFに溶解させた。これを氷冷しながら撹拌し、14.2gのメタンスルホニルクロリドを10分かけて滴下した。滴下後、アイスバスを除去して、室温にて30分撹拌した。反応液に、200gの酢酸エチルを加え、有機層を飽和重曹水、水、飽和食塩水で順次洗浄し、溶媒を除去して、透明液体状の下記化合物(A−1−2)を21.0g得た。
1Lの3口フラスコ内にて、21.0gの化合物(A−1−2)を、160gのTHFと40gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。これを氷冷しながら撹拌し、7.6gのNaHを加え、その後、室温にて1時間撹拌した。反応液を塩酸にて中和した後、200gの酢酸エチルを加え、有機層を飽和重曹水、水、飽和食塩水で順次洗浄し、溶媒を除去して、褐色液体状の化合物(A−1−3)を15.0得た。
【0390】
50mLの1口フラスコ内にて、1.0gの化合物(A−1−3)と、1.6gのエチルヨージドを5gのアセトニトリルに溶かした。これに、1.1gのAgBFを加え、その後、60℃にて3時間撹拌した。反応液を濾過し、ヨウ化銀を取り除いた後、30gのクロロホルムと、30gの水を加え、更に2.5gの化合物(A−1−4)を加えて、1時間撹拌した。有機層を水で3回洗浄し、溶媒を除去して、析出した結晶を50gのジイソプロピルエーテルで洗浄することで、白色固体の化合物(A−1)2.0gを得た。化合物(A−1)のH−NMRにおけるケミカルシフトを以下に示す。
【0391】
H−NMR(300MHz,CDCl): 8.13(d,2H),7.69(t,1H),7.53(t,1H),6.33(dd,1H),3.95(d,1H),3.79(d,1H),3.72(m,1H),3.66(q,2H),3.51(m,1H),3.22−3.05(m,2H),2.78−2.65(m,2H),2.40(m,1H),2.25(m,1H),1.78−1.60(m,6H),1.55(t,3H),1.40−1.20(m,4H),1.15−0.90(m,2H)
【0392】
【化87】

【0393】
<合成例2;化合物(A−2)の合成>
300mLの3口フラスコ内にて、2.3gの3−メルカプト1−プロパノールを50gのTHFと10gのエタノール(EtOH)に溶解させ、2.8gのカリウムtert−ブトキシド(tBuOK)を加えた。これを氷冷しながら撹拌し、5.0gの2−ブロモプロピオフェノンを10分かけて加えた。滴下後、アイスバスを除去し、室温にて1時間攪拌した。反応液を1Nの塩酸で中和した後、100gの酢酸エチルを加え、有機層を飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄し、溶媒を除去して、透明液体状の下記化合物(A−2−1)を5.1g得た。
【0394】
200mLの3口フラスコ内にて、4.2gの化合物(A−2−1)と3.8gのトリエチルアミンを40gのTHFに溶解させた。これを氷冷しながら撹拌し、2.8gのメタンスルホニルクロリドを10分かけて滴下した。滴下後、アイスバスを除去して、室温にて30分撹拌した。反応液に、100gの酢酸エチルを加え、有機層を飽和重曹水、水、飽和食塩水で順次洗浄し、溶媒を除去して、透明液体状の下記化合物(A−2−2)を5.0g得た。
【0395】
200mLの3口フラスコ内に、5.0gの化合物(A−2−2)を、40gのTHFと10gのDMFに溶解させた。これを氷冷しながら撹拌し、1.5gの水素化ナトリウム(NaH)を加え、その後、室温にて1時間撹拌した。反応液を1Nの塩酸にて中和した後、100gの酢酸エチルを加え、有機層を飽和重曹水、水、飽和食塩水で順次洗浄し、溶媒を除去して、透明液体状の下記化合物(A−2−3)を得た。
【0396】
50mLの1口フラスコ内にて、1.0gの化合物(A−2−3)を5gの塩化メチレンに溶かした。これを氷冷しながら撹拌し、1.5gのトリエチルオキソニウムテトラフルオロボレート(EtBF)を加え、その後、室温にて3時間撹拌した。これに30gのクロロホルムと50gの水を加え、更に3.9gの化合物(A−1−4)を加えて、1時間撹拌した。有機層を水で3回洗浄し、溶媒を除去して、析出した結晶を50gのジイソプロピルエーテルで洗浄することで、白色固体の化合物(A−2,dr=3:2)2.1gを得た。化合物(A−2)のH−NMRにおけるケミカルシフトを以下に示す。
【0397】
H−NMR(300MHz,CDCl):8.0(m,2H),7.75(m,1H),7.60(m,2H),3.95(d,1H),3.85(m,0.4H),3.79(d,1H),3.65(m,1H),3.45(m,1H),3.18(m,0.6H),3.05(t,1H),2.90(m,0.4H),2.80(m,1H),2.65(t,1H),2.60(m,1.4H),2.50(m,1.6H),2.10(m,0.4H),2.0(s,3H),1.78−1.60(m,6H),1.55(t,3H),1.40−1.20(m,7H),1.15−0.90(m,2H)
【0398】
【化88】

【0399】
他の化合物(A)についても、化合物(A−1)又は(A−2)と同様の方法により合成した。
【0400】
<酸発生剤(2)>
化合物(C)として、下記化合物(C−1)〜(C−7)を準備した。
【0401】
【化89】

【0402】
<樹脂(B)>
樹脂(B)として、下記樹脂(B−1)〜(B−11)を準備した。
【0403】
【化90】

【0404】
【化91】

【0405】
<疎水性樹脂>
疎水性樹脂(D)として、下記樹脂(D−1)〜(D−8)を準備した。
【0406】
【化92】

【0407】
【化93】

【0408】
<塩基性化合物(F)又は低分子化合物(G)>
塩基性化合物(F)又は低分子化合物(G)として、下記化合物(F−1)〜(F−6)を準備した。
【0409】
【化94】

【0410】
<溶剤>
溶剤として、下記S−1〜S−5を準備した。
S−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
S−2:プロピレングリコールモノメチルエーテル
S−3:γ−ブチロラクトン
S−4:シクロヘキサノン
S−5:プロピレンカーボネート
【0411】
<界面活性剤>
界面活性剤として、下記W−1〜W−5を準備した。
W−1:メガファックF176(DIC(株)製)
W−2:メガファックR08(DIC(株)製)
W−3:ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)
W−4:トロイゾルS 366(トロイケミカル(株)製)
W−5:PF6320(OMNOVA社製)。
【0412】
[実施例1〜25、比較例1〜4]
<レジスト組成物調製>
下記表2及び表3に示す成分を、同表に示す溶剤に溶解させ、固形分濃度4.4質量%の溶液を調製した。これを0.03μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(ポジ型レジスト溶液)を調製した。
【0413】
<露光条件(1):ArF液浸評価>
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29SR(日産化学社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークを行い、膜厚78nmの反射防止膜を形成した。その上に、調製した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を塗布し、130℃で60秒間ベークを行い、膜厚110nmのレジスト膜を形成した。得られたウエハーに対して、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製 XT1700i、NA1.35)を用いて、線幅45nm(1:1ラインアンドスペースパターン)の6%ハーフトーンマスクを通して露光した。液浸液としては純水を用いた。
その後、90℃で60秒間加熱した。次いで、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像した。続いて、純水でリンスした後、スピン乾燥してレジストパターンを得た。
【0414】
<露光条件(2):ArFドライ評価>
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205
℃で、60秒間ベークを行い、膜厚78nmの反射防止膜を形成した。その上に、調製した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を塗布し、130℃で60秒間ベークを行い、膜厚120nmの膜を形成した。得られたウエハーに対してArFエキシマレーザースキャナー(ASML社製PAS5500/1100、NA0.75)を用い、線幅75nm(1:1ラインアンドスペースパターン)の6%ハーフトーンマスクを通して露光した。その後、90℃で60秒間加熱した後、ついでテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像した。純水でリンスした後、スピン乾燥してパターンを得た。
【0415】
<レジスト評価>
〔感度:露光条件(1)〕
得られたパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて観察した。そして、線幅45nmのライン(ライン:スペース=1:1)を解像する時の最小照射エネルギーを感度とした。
【0416】
〔感度:露光条件(2)〕
得られたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて観察した。線幅75nmのライン(ライン:スペース=1:1)を解像する時の最小照射エネルギーを感度とした。
【0417】
〔露光ラチチュード:露光条件(1)〕
線幅45nmのラインアンドスペース(1:1)のマスクパターンを再現する露光量を最適露光量とし、露光量を変化させた際にパターンサイズが45nm±10%を許容する露光量幅を求め、この値を最適露光量で割って百分率表示した。値が大きいほど露光量変化による性能変化が小さく、露光ラチチュード(EL)が良好である。
【0418】
〔露光ラチチュード:露光条件(2)〕
線幅75nmのラインアンドスペース(1:1)のマスクパターンを再現する露光量を最適露光量とし、露光量を変化させた際にパターンサイズが75nm±10%を許容する露光量幅を求め、この値を最適露光量で割って百分率表示した。値が大きいほど露光量変化による性能変化が小さく、露光ラチチュード(EL)が良好である。
【0419】
〔LWR:露光条件(1)〕
45nmの線幅に仕上がっているラインパターンについて、走査型顕微鏡(日立社製S9260)で観察し、ラインパターンの長手方向のエッジ2μmの範囲について、エッジがあるべき基準線からの距離を50ポイント測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0420】
〔LWR:露光条件(2)〕
75nmの線幅に仕上がっているラインパターンについて、走査型顕微鏡(日立社製S9260)で観察し、ラインパターンの長手方向のエッジ2μmの範囲について、エッジがあるべき基準線からの距離を50ポイント測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0421】
以上の測定結果を、下記表2及び表3に示す。
【0422】
【表2】

【0423】
【表3】

【0424】
表2及び表3から、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によれば、酸発生剤として上記一般式(1−1)により表される化合物を含有しない比較例の組成物を用いた場合と比較して、高感度、優れた露光ラチチュード、及び、優れたラインエッジラフネス性能を高次元で鼎立できることが分かった。
また、一般式(1−1)において、Rが、芳香族炭化水素基、又は、芳香族性複素環式基である化合物を用いた実施例は、高感度、優れた露光ラチチュード、及び、優れたラインエッジラフネス性能をより高次元で鼎立できることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1−1)により表される化合物を含有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

式中、
は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、脂肪族環式基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基を表す。
は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、脂肪族環式基、芳香族炭化水素基、複素環式基、シアノ基、又は、アルコキシカルボニル基を表す。
は、1つ以上の−CH−基が、エーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、又は、ウレア基により置換されていても良い、アルキレン基を表す。
は、アルキル基、アルケニル基、脂肪族環式基、アリールカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基、又は、アルコキシカルボニルアルキル基を表す。
また、RとRは互いに結合し、環を形成していても良い。
は、アニオンを表す。
【請求項2】
前記一般式(1−1)中のRが、芳香族炭化水素基、又は、芳香族性複素環式基である、請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(1−1)中のRが、芳香族炭化水素基である、請求項2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(1−1)中のRが、無置換のアルキレン基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
前記Yが、有機酸アニオンを表す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
前記Yが、スルホン酸アニオン、イミド酸アニオン、又は、メチド酸アニオンを表す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
(B)酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項8】
更に、疎水性樹脂を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項9】
更に、(F)塩基性化合物、又は、(G)酸の作用により脱離する基を有し、該脱離により塩基性が増大する低分子化合物を含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
【請求項11】
請求項10に記載の感活性光線性又は感放射線性膜を露光することと、前記露光された膜を現像することとを含む、パターン形成方法。
【請求項12】
前記露光は液浸液を介して行う、請求項11に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2013−44810(P2013−44810A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180895(P2011−180895)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】