説明

感熱孔版印刷原紙用薄葉紙および原紙

【課題】均一なインキの通過性が得られ、裏写りが無く、独立穿孔性に優れるため良好な中間調再現性を示し、印刷耐久性に優れた感熱孔版印刷原紙用薄葉紙を提供すること。
【解決手段】天然繊維と合成繊維からなる坪量4〜15g/m2の湿式不織布からなり、繊維の表面および繊維の交絡部に0.1g/m2〜3.0g/m2の合成樹脂を含有する不織布において、天然繊維を20〜80質量%含み、天然繊維として平均繊維厚みが2〜8μm、平均繊維幅が9〜20μmの広葉樹木材繊維を5〜50質量%含む感熱孔版印刷原紙用薄葉紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キセノンランプ等からの閃光照射、レーザー発振素子からの赤外線照射、または微細で多数の加熱素子を有したいわゆるサーマルヘッドからなる直接または間接の接触伝熱による加熱により、熱製版される感熱孔版印刷原紙用薄葉紙および感熱孔版印刷原紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルム、塩化ビニリデンフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムと、天然繊維、化学繊維を主成分とする薄葉紙、不織布、紗などを多孔性支持体として、両者を各種の接着剤で貼り合わせた構造の感熱性孔版印刷用原紙(以下、原紙と略記する)が知られている(特許文献1、特許文献2)。これらの原紙は、印刷画像の鮮明性を満足させるものではなかった。また木材繊維を用いた原紙を用いた薄葉紙についても報告がある(特許文献3、特許文献4)が、木材繊維として針葉樹木材繊維を単独、もしくは他の天然繊維や合成繊維と混抄した場合、針葉樹木材繊維の配合量がある量を超えると木材繊維本来の繊維径の太さが強調され、インキ通過性を阻害するために印刷画像を満足させるものではなく、広葉樹木材繊維を用いた場合は原料由来の夾雑物が多くベタ印刷時に白点とよばれるインキの通過性の悪い部分が多数発生する。また、天然繊維に化学繊維を混抄することにより、画像性が向上することが知られているが、これらの原紙は印刷物画像濃度の均一性が十分とはいえなかった。(特許文献5、特許文献6、特許文献7)また、合成繊維の極細繊維と細い繊維を混抄した薄葉紙が報告されている(特許文献8)が印刷時の独立穿孔性を満足させるものが得られていない。
【0003】
従来の原紙を用いた印刷物の階調性が十分でない理由は種々考えられるが、その大きな要因の一つに孔版印刷独特のものとして、中間調の再現不良(印刷物の中間調や写真印刷をした際に独立した網点が得られず斑模様がでてしまう)という現象がある。これは本来原紙のフィルム部が溶融穿孔して開孔するはずであるのに原紙表面の平滑性が低く、サーマルヘッド等の接触が阻害されきれいに穿孔しない場合や、フィルムが穿孔されインキの通過が行われるはずの部分に、支持体を構成する繊維数本が凝集して結束部を形成した場合、その部分をインキが通過しにくいために発生する。また天然繊維由来の夾雑物が薄葉紙中に存在し、ポリエステルフィルムと貼り合わせる際にフィルムと薄葉紙の界面に存在することにより、インキの通過を阻害することがあげられる。
【0004】
【特許文献1】特開昭51−2513号公報
【特許文献2】特開昭57−182492号公報
【特許文献3】特開昭62−92892号公報
【特許文献4】特開平6−155955号公報
【特許文献5】特開昭59−2896号公報
【特許文献6】特開平4−62095号公報
【特許文献7】特開平4−221697号公報
【特許文献8】特開平9−39429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、均一なインキの通過性が得られ、裏写りが無く、独立穿孔性に優れるため良好な中間調再現性を示し写真等の複写にも用いることができ、印刷耐久性に優れた感熱孔版印刷原紙用薄葉紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鋭意研究を重ねた結果、広葉樹木材繊維の繊維径が細く断面が扁平な形状をなし、叩解処理後の繊維がカールして繊維長が短いため結束となりにくいことを見出し、さらに広葉樹木材繊維を用いる場合に問題となる天然繊維由来の夾雑異物を粉砕除去することにより品質上問題無く、優れた性能を有することを見出した。また薄葉紙中の針葉樹木材繊維量を限定し、かつ広葉樹木材繊維と併用することで網点再現性が良く薄葉紙の剛性を高める効果があることを見出し本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明の第1は天然繊維と合成繊維からなる坪量4〜15g/m2の湿式不織布からなり、繊維の表面および繊維の交絡部に0.1〜3.0g/m2の合成樹脂を含有する不織布において、天然繊維を20〜80質量%含み、天然繊維として平均繊維厚みが2〜8μm、平均繊維幅が9〜20μmの広葉樹木材繊維を5〜50質量%含むことを特徴とする感熱孔版原紙用薄葉紙である。
【0008】
本発明の第2は、天然繊維を20〜80質量%含み、天然繊維として平均繊維厚みが2〜8μm、平均繊維幅が9〜20μmの広葉樹木材繊維を5〜50質量%含み、かつ平均繊維厚みが5〜15μm、平均繊維幅が20〜60μmの針葉樹木材繊維を5〜20質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙である。
本発明の第3は、請求項1〜請求項2からなる感熱孔版印刷原紙用薄葉紙とポリエステルフィルムを貼り合わせてなる感熱孔版印刷用原紙である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、均一なインキの通過性が得られ、裏写りが無く、独立穿孔性に優れるため良好な中間調再現性を示し写真等の複写にも用いることができ、印刷耐久性に優れた感熱孔版印刷原紙用薄葉紙および感熱孔版印刷原紙が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本願発明について具体的に説明する。本発明の薄葉紙の坪量は4〜15g/mである。坪量4g/m以上とすることで強度を維持することができる。より好ましくは6g/m以上である。また坪量を15g/m以下とすることでインキ通過性を良好に維持することができる。より好ましくは12g/m以下である。本発明に用いられる広葉樹木材繊維の種類としては、アスペン、ビーチ、ホワイトバーチ、レッドメイプル、アカシア、ユーカリ、ドロノキ、オニグルミ、サワグルミ、ハンノキ、ミズメ、ウダイカンバ、アサダ、クリ、ブナ、ミズナラ、アカガシ、シラカシ、ハルニレ、ヤマグワ、ケヤキ、カツラ、ホオノキ、クスノキ、タブノキ、イスノキ、ヤマザクラ、イヌエンジュ、ヒロハノキハダ、イタヤカエデ、トチノキ、シナノキ、ハリギリ、ヤチダモ、アオダモ、シオジ、キリ等があげられる。特に好ましくはアカシア、ユーカリである。本発明の薄葉紙に用いられる広葉樹木材繊維の平均繊維厚みは2〜8μm、平均繊維幅は9〜20μmであり、この範囲のものを用いるとインキ通過性と穿孔性が良好となり好ましい。なお、平均繊維厚みとは扁平した繊維断面の短径を示し、繊維幅とは扁平した繊維断面の長径を示す。
【0011】
本発明に用いられる広葉樹木材繊維は、本発明の天然繊維と合成繊維の合計質量に対し5〜50質量%含むことが好ましい。5質量%以上含むことで薄葉紙中の表面に微細な凹凸を形成し、ポリエステルフィルムとの接着点を微細化することができる。より好ましくは10質量%以上である。また50質量%以下とすることでインキ通過性を良好にすることができる。より好ましくは40質量%以下である。本発明に用いられる広葉樹木材繊維の蒸煮はクラフト法、サルファイト法、ソーダ法が用いられる。また、一度パルプ化したものを再度クラフト法、サルファイト法、ソーダ法により蒸煮することにより天然物由来の夾雑物をさらに低減できる。蒸煮条件は公知の条件とすることができるが、蒸煮後の残存リグニンの指標となるカッパー価(JIS P8211)は10以下が好ましい、カッ
パー価を10以下とすることで夾雑物を低減することができる、さらに漂白処理を行い漂白後の白色度(ISO Brightness)で88%以上とすることが好ましい。漂白処理は公知の方法を用いることができる。本発明に用いられる広葉樹木材繊維は公知の方法で適宜叩解することが好ましい、叩解を行うことにより広葉樹木材繊維の原料に混在する夾雑物を粉砕し低減することができる。広葉樹木材繊維に施す叩解はパルプのろ水性を示すショッパーろ水度試験機によるろ水度測定(JIS P8121)で12°SR〜25°SRであることが好ましい。この範囲のろ水度を示すパルプを用いることにより良好なインキ通過性が得られる。本発明に用いられる針葉樹木材繊維の種類としては、バルサム・ファー、イースタン・ホワイトシダー、イースタン・ヘムロック、ジャック・パイン、アラバマ・パイン、リブロリー・パイン、イエローパイン、ホワイト・スプルース、タラマック、イチイ、カヤ、イヌマキ、モミ、マツ、ツガ、スギ、ヒノキ、サワラ、ヒバ等が用いられる。
【0012】
本発明に用いられる針葉樹木材繊維の蒸煮はクラフト法、サルファイト法、ソーダ法等公知の方法が用いられる。本発明に用いられる針樹木材繊維は公知の方法で適宜叩解することができるが、パルプのろ水性を示すショッパーろ水度試験機によるろ水度測定(JIS P8121)で12°SR〜25°SRであることが好ましい。この範囲のろ水度を示すパルプを用いることにより良好なインキ通過性が得られる。本発明に用いられる針葉樹木材繊維は本発明の天然繊維と合成繊維の合計質量に対し、5〜20質量%、より好ましくは10〜15質量%の範囲で混合することができる。この範囲で用いることにより、薄葉紙の剛性をさらに上げることができ好ましい。該針葉樹木材繊維は平均繊維厚みが5〜15μm、平均繊維幅が20〜60μmである。この範囲の繊維を用いることによりインキの通過阻害を抑え、剛性をさらに上げることができる。好ましい平均繊維幅は45μm以下である。また、該針葉樹木材繊維の繊維長は10mm以下が好ましい。繊維長10mm以下とすることで、繊維の分散低下を抑えることができる。さらに好ましくは7mm以下である。
【0013】
本発明において、薄葉紙を構成する木材パルプ繊維以外の天然繊維は特に制限されず、亜麻、大麻、ジュート(黄麻)、ラミ−(芋麻)、ケナフ、こうぞ、みつまた、ガンピ等の靭皮繊維、綿等の種子繊維、マニラ麻、エクアドル麻、サイザル麻、ニュージーランド麻などの葉脈繊維、その他の天然繊維としては、エスパルト、竹、わら、などが使用できる。そのなかでも、マニラ麻、エクアドル麻、サイザル麻、黄麻(ジュート)、ケナフ、リンター、竹、は夾雑物が少なく好ましい。またセルロース由来の再生繊維である溶剤紡糸セルロースやレーヨン、アセテートも適宜用いることができる。これらの天然繊維や再生繊維は適宜フィブリル化させて用いることができる。これらの木材パルプ繊維以外の天然繊維や再生繊維は、本発明の天然繊維と合成繊維の合計質量に対し、20〜80質量%、好ましくは、30〜70質量%の範囲で含有される。
【0014】
本発明に用いる合成繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、PPS繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ポリイミド繊維等を用いることができる。合成繊維の断面は円形、中空、異形のいずれのものを用いても良い。また、ナイロン−ポリエステル、変成ポリエステル−ポリエステル等の芯鞘構造を有する繊維や未延伸ポリエステルを用いることができる。該合成繊維の平均繊維径は0.1μm〜13μmが好ましい。この範囲の平均繊維径である合成繊維を用いることによりインキの出すぎを抑え、良好な分散性を得ることができ好ましい。より好ましくは2μm〜8μmである。ここで示す繊維径は繊維断面の円相当径を示す。該合成繊維は、本発明の天然繊維と合成繊維の合計質量に対し、20〜80質量%、好ましくは、30〜70質量%の範囲で含有される。
【0015】
本発明の薄葉紙の抄紙は、公知の方法で抄紙することができる。その際、用いられる分
散剤と粘剤(好ましくはポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアマイド)、消泡剤、帯電防止剤及び抄造時の紙力増強剤、サイズ剤等の配合をしてもよいことは言うまでもない。
【0016】
本発明の薄葉紙は繊維表面および繊維の交絡部に0.1〜3.0g/m2の合成樹脂を含有することが好ましくこの範囲で耐水強度とインキ通過性が良好である。より好ましくは0.5〜2.0g/mである。該合成樹脂は、本発明の天然繊維と合成繊維の合計100質量部に対し、0.5〜30質量部、好ましくは、5〜15質量部含有される。合成樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル・ポリエーテル系ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ビスコ−ス、ポリ酢酸ビニル樹脂、エポキシ変成アクリル樹脂、ウレタン変成アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂やSBR、NBR等の合成ゴム等がある。これらの樹脂を単独あるいは2種以上混合して使用してもよい。また、これらの樹脂は溶媒溶液型、エマルジョン型のどちらでも使用することが出来る。これらの樹脂の塗布方法は、グラビア、含浸、サイズプレス等公知の方法が用いられる。また塗工樹脂に帯電防止剤等の添加剤を適宜添加することができる。またフィルムと接着する合成樹脂を用いてフィルムと接着しながら薄葉紙の強度を上げることもできる。
【0017】
本発明の感熱孔版原紙は、上記本発明の薄葉紙を多孔性支持体として、熱可塑性樹脂フィルムと接着することにより得られる。本発明の感熱孔版原紙における熱可塑性樹脂フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、等の共重合体、及びこれらの混合物からなる従来公知のフィルムを任意に用いることができるが、遠赤外線、サーマルヘッド、レーザー等による良好な穿孔を達成するため少なくとも1軸方向または2軸方向に延伸されているのが好ましい。また熱可塑性フィルムの厚さは0.1〜5μmが好ましい。本発明における熱可塑性樹脂フィルムと薄葉紙との接着剤としては公知の合成樹脂を適宜用いることができる。例えばホットメルト型接着剤、エマルジョンラテックス型接着剤、溶媒型接着剤、反応硬化型接着剤、紫外線または電子線硬化型接着剤等であり、酢酸ビニル系、プロピレン系、アクリル系、アクリル酸エステル系、塩化ビニル系、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエステル系アクリレート、ウレタン系アクリレート、エポキシ系アクリレート、ポリオール系アクリレート等の配合物等が挙げられる。
【0018】
本発明の支持体、フィルム、接着剤には必要に応じて他の添加剤、例えば帯電防止剤、滑剤等を混合して用いてもよい。またこれらの添加剤を支持体繊維表面、フィルム表面に塗布してもよい。また本発明の薄葉紙に対し、合成繊維の比率を70質量%以上で用いるときに支持体の繊維表面にカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、リン酸エステル塩等の界面活性剤、導電性フィラー等付着あるいは混合させることで静電気による搬送性不良を改善できるため好ましい。また、必要に応じて支持体やフィルム表面に、空気中、その他種々の雰囲気中でコロナ放電処理等を施しても良い。
【0019】
本発明の感熱孔版原紙には、サーマルヘッド等との融着防止のために、熱可塑性樹脂フィルム表面に融着防止剤を塗付するのが好ましい。融着防止剤としては、シリコーン系の樹脂またはオイル、フッ素系樹脂、リン酸エステル系等の界面活性剤、脂肪酸類、ワックス等を用いることができる。また、これらを塗付する場合、公知の各種添加剤、例えば融着防止剤の分散助剤や界面活性剤、防腐剤、消泡剤、耐熱剤、耐酸化防止剤、有機粒子、無機粒子、顔料等を、原紙の特性を妨げない範囲で添加してもよい。塗布方法は公知の方法で特に限定されないが、ロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、バーコーター等を用いて塗布するのが好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、使用した繊維の平均繊維径、平均繊維厚み、平均繊維幅、名称を表1に、支持体の繊維組成比および支持体の坪量、厚さ、密度、感熱孔版印刷用原紙性能評価結果を表2に記した。使用した繊維の平均繊維径、平均繊維厚み、平均繊維幅は繊維断面を低加速電圧SEMにて拡大撮影した後、画像解析にて50本測定での平均値を用いた。
【0021】
(1)坪量
恒温恒湿(20℃、65%RH)で24時間静置した試験片(31.5cm×31.5cm)10枚の質量を測定した。
(2)厚さ
JISP−8118により測定した。
(3)密度
(密度=坪量÷厚み)の式に従い算出した。
(4)中間調再現性
実施例、及び比較例に基づいて作製した感熱孔版印刷用原紙を感熱孔版印刷機(GR273:理想科学社製)を用い、ファクシミリテストチャートNo.11(画像電子学会)を写真モードで読み取り、標準設定で30枚の印刷を行い、印刷が安定した30枚目の画像について階調ステップパターン15階調のうち5〜10の中間調再現性について目視で比較評価した。
◎:印刷ムラが無く中間調の網点がきれいに再現されているもの
○:僅かに中間調の網点が崩れているもの
△:僅かにムラが見られるが5〜10の階調が十分区別できるもの
×:印刷ムラが多く、異なる階調の区別がつかない部分があるもの
【0022】
(5)インキの裏写り
実施例、及び比較例に基づいて作製した感熱孔版印刷用原紙を感熱孔版印刷機(GR273:理想科学社製)を用い標準設定で、一枚の原紙で30枚ベタ印刷を行い、印刷が安定した30枚目の印刷物の裏側に転写された29枚目の印刷物のインキ転移量を目視判定し次のように評価した。
◎:インキの転移が認められない
○:部分的に非常に僅かにインキの転移が認められるが実用上全く問題ないレベル
△:○と×の中間程度の転移量で、実用上何とか使えるレベル
×:インキ転移量が大きく、裏面が非常に汚れている
【0023】
(6)耐刷性
実施例、及び比較例に基づいて作製した感熱孔版印刷用原紙を感熱孔版印刷機(GR273:理想科学社製)を用い、ファクシミリテストチャートNo.11(画像電子学会)を写真モードで読み取り、標準設定で3000枚の印刷を行い、得られた3000枚目の画像の伸びについて10枚目の画像とを目視で比較評価した。
◎:画像の変化がなく良好なレベル
○:若干画像に変化があるが実用上問題ないレベル
△:○と×の中間程度の差で、実用上何とか使えるレベル
×:原紙の破れ等により画像が著しく乱れている
【0024】
[実施例1]マニラ麻をアルカリ蒸解し、水洗後、水で濃度3%に希釈して、ビーターにてろ水度18°SR(JIS P−8121)に叩解した。広葉樹木材繊維としてユーカリサルファイト晒しパルプ(白色度90%、ダートカウント 5mm2/kg未満)を水洗後、水で3%に希釈してビーターにてろ水度20°SRに叩解した。得られた広葉樹木
材繊維の平均繊維厚みは4μm、平均繊維幅は12μmであった。上記により得られたマニラ麻20質量%と広葉樹木材繊維40質量%を混合機により混合した。次に平均繊維径12μm、長さ3mmの未延伸ポリエステル繊維10質量%、平均繊維径8μm、長さ3mmのポリエステル繊維を20重量%、平均繊維径4μm長さ3mmのポリエステル繊維と10質量%を水で濃度3%に希釈して混合機により混合した。このようにして得られた天然繊維混合物と合成繊維混合物を混合機で混合し、これにエポキシ化ポリアミドポリアミン樹脂を繊維に対して2%となるように水溶液にして添加し均一に混合し、さらにカルボキシルメチルセルロースを繊維に対して2%となるように水溶液にして添加し均一に混合した。これを紙料として水で濃度0.05%となるよう希釈し、傾斜短網抄紙機による湿式抄紙法にて樹脂加工前の薄葉紙を得た。さらにこの薄葉紙に、グラビア塗工機を用いて、水系エマルジョンタイプのウレタン樹脂を塗工量1.0g/mとなるように塗工し原紙の支持体とした。このようにして得られた支持体の坪量は8g/m、支持体厚さは27μmであった。次に支持体と2軸延伸した厚み1.5μmのポリエステルフィルムとをウエットラミネ−ト用接着剤(エポキシ樹脂とポリアミン樹脂を重量比で17:83になるように配合し溶媒としてイソプロピルアルコ−ルを用いた濃度10重量%溶液)を用いて、接着剤量0.5g/m2となるようにウエットラミネ−タ−で貼り合わせ感熱孔版印刷用原紙とした。
【0025】
[実施例2]実施例1と同様の製法を用いて、天然繊維及び合成繊維の配合組成を表2に示すように変えて支持体、及び原紙を得た。
[実施例3]実施例1と同様の製法を用いて、天然繊維及び合成繊維の配合組成を表2に示すように変えて支持体、及び原紙を得た。
[実施例4]実施例1と同様の製法を用いて、天然繊維及び合成繊維の配合組成を表2に示すように変えて支持体、及び原紙を得た。
【0026】
[実施例5]マニラ麻をアルカリ蒸解し、水洗後、水で濃度3%に希釈して、ビーターにてろ水度18°SR(JIS P−8121)に叩解した。広葉樹木材繊維としてユーカリサルファイト晒しパルプ(白色度90%、ダートカウント 5mm2/kg未満)を水洗後、水で3%に希釈してビーターにてろ水度20°SRに叩解した。得られた広葉樹木材繊維の平均繊維厚みは4μm、平均繊維幅は12μmであった。針葉樹木材繊維としてNBKP(針葉樹クラフト晒しパルプ)を水で濃度3%に希釈して、ビーターにてろ水度18°SRに叩解した。得られた広葉樹木材繊維の平均繊維厚みは8μm、平均繊維幅は55μmであった。上記により得られたマニラ麻20質量%、広葉樹木材繊維30質量%、針葉樹木材繊維10質量%を混合機により混合した。次に平均繊維径8μm、長さ3mmのポリエステル繊維40重量%を水で濃度3%に希釈して混合機により混合した。このようにして得られた天然繊維混合物と合成繊維混合物を混合機で混合し、これにエポキシ化ポリアミドポリアミン樹脂を繊維に対して2%となるように水溶液にして添加し均一に混合し、さらにカルボキシルメチルセルロースを繊維に対して2%となるように水溶液にして添加し均一に混合した。これを紙料として水で濃度0.05%となるよう希釈し、傾斜短網抄紙機による湿式抄紙法にて樹脂加工前の薄葉紙を得た。さらにこの薄葉紙に、グラビア塗工機を用いて、水系エマルジョンタイプのウレタン樹脂を塗工量1.0g/mとなるように塗工し原紙の支持体とした。このようにして得られた支持体の坪量は10g/m、支持体厚さは34μmであった。次に支持体と2軸延伸した厚み1.5μmのポリエステルフィルムとをウエットラミネ−ト用接着剤(エポキシ樹脂とポリアミン樹脂を重量比で17:83になるように配合し溶媒としてイソプロピルアルコ−ルを用いた濃度10重量%溶液)を用いて、接着剤量0.5g/m2となるようにウエットラミネ−タ−で貼り合わせ感熱孔版印刷用原紙とした。
【0027】
[実施例6]実施例5と同様の製法を用いて、天然繊維及び合成繊維の配合組成を表2に示すように変えて支持体、及び原紙を得た。
【0028】
[比較例1]マニラ麻をアルカリ蒸解し、水洗後、水で濃度3%に希釈して、ビーターにてろ水度18°SR(JIS P−8121)に叩解した。このようにして得られたマニラ麻50質量%に、平均繊維径8μm、長さ3mmのポリエステル繊維を30重量%、平均繊維径4μm、長さ3mmのポリエステル繊維を20重量%、を水で濃度3%に希釈して混合機により混合したものを加え、混合機で混合し、これにエポキシ化ポリアミドポリアミン樹脂を繊維に対して2%となるように水溶液にして添加し均一に混合し、さらにカルボキシルメチルセルロースを繊維に対して2%となるように水溶液にして添加し均一に混合した。これを紙料として水で濃度0.05%となるよう希釈し、傾斜短網抄紙機による湿式抄紙法にて樹脂加工前の薄葉紙を得た。さらにこの薄葉紙に、グラビア塗工機を用いて、水系エマルジョンタイプのウレタン樹脂を塗工量1.0g/mとなるように塗工し原紙の支持体とした。このようにして得られた支持体の坪量は12g/m、支持体厚さは37μmであった。次に支持体と2軸延伸した厚み1.5μmのポリエステルフィルムとをウエットラミネ−ト用接着剤(エポキシ樹脂とポリアミン樹脂を重量比で17:83になるように配合し溶媒としてイソプロピルアルコ−ルを用いた濃度10重量%溶液)を用いて、接着剤量0.5g/m2となるようにウエットラミネ−タ−で貼り合わせ感熱孔版印刷用原紙とした。
【0029】
[比較例2]比較例1と同様の製法を用いて、天然繊維及び合成繊維の配合組成を表2に示すように変えて支持体、及び原紙を得た。
[比較例3]比較例1と同様の製法を用いて、天然繊維及び合成繊維の配合組成を表2に示すように変えて支持体、及び原紙を得た。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の薄葉紙は繊維分散性が良くインキ濃度が均一で、インキの出すぎを防ぎインキ
の裏写りを抑え、印刷時の寸法安定性が良好である。また、この薄葉紙と熱可塑性樹脂フィルム等から作製された原紙は独立穿孔性に優れるため良好な中間調再現性を示し、写真等の複写にも用いる感熱孔版印刷用原紙として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維と合成繊維からなる坪量4〜15g/m2の湿式不織布からなり、繊維の表面および繊維の交絡部に0.1〜3.0g/m2の合成樹脂を含有する不織布において、天然繊維を20〜80質量%含み、天然繊維として平均繊維厚みが2〜8μm、平均繊維幅が9〜20μmの広葉樹木材繊維を5〜50質量%含むことを特徴とする感熱孔版原紙用薄葉紙。
【請求項2】
天然繊維を20〜80質量%含み、天然繊維として平均繊維厚みが2〜8μm、平均繊維幅が9〜20μmの広葉樹木材繊維を5〜50質量%含み、かつ平均繊維厚みが5〜15μm、平均繊維幅が20〜60μmの針葉樹木材繊維を5〜20質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙とポリエステルフィルムを貼り合わせてなる感熱孔版印刷用原紙。

【公開番号】特開2006−321132(P2006−321132A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146583(P2005−146583)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】