説明

慢性炎症を有する膣感染治療の組成物

本発明は、膣感染および結果としてもたらされる炎症状態の治療に有用である、抗炎症、抗細菌および抗真菌活性を有する、ベンゾフラン化合物およびベンゾフェナントリジンアルカロイドを含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概要
本発明は、膣感染および結果としてもたらされる炎症状態の治療に有用である、抗炎症、抗細菌および抗真菌活性を有する、ベンゾフラン化合物およびベンゾフェナントリジンアルカロイドを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
膣炎は、多くの場合に最初は無症候性であるが、経時的に感染に変性する可能性があり、危険な場合がある。ウイルス、細菌、真菌または原生動物由来のいずれかである外陰腟感染(ヘルペス、トリコモナス症、カンジダ症)は、外陰部のかゆみ、刺痛、過敏および病変、続いて外排尿障害(external dysuria)および外陰部性交疼痛症を引き起こす。膣炎は、他の器官および臓器への毒性など、再発性感染を伴う一連の重篤な事象をもたらす可能性がある。この現象は、これらの事象が、罹患者にHIVまたは他の性行為感染性疾患に罹患する危険性の素因を与えるので、多くの開発途上国において特に重要である。
【0003】
トリコモナス病は、外陰部過敏、膣および外陰部上皮の炎症、ならびに子宮頸部の点状出血病変を伴う黄色を帯びた化膿性滲出液などの症状を表す。分泌物のpHは5を超え、したがってトリコモナス属の発生を促進する。カンジダ症では、紅斑および浮腫を伴う重篤な外陰部のかゆみがあり、分泌物は、細菌性膣炎の場合では悪臭がする。これらの障害は、抗生物質および抗真菌薬の高用量の経口投与により、または局所治療用のゲルにより治療される。これらの治療は、常に長期間かかり、副作用を有する可能性がある。
【0004】
マクレアヤコルダタ(Macleaya cordata)、マクレアヤミクロカルパ(Macleaya microcarpa)、サングイナリアカナデンシス(Sanguinaria canadensis)およびケリドニアマジュス(Chelidonia majus)から単離されたベンゾフェナントリジンアルカロイドは、腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)などのような膣感染に直接関与する菌株に特に活性である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、ベンゾフラン化合物は、以下の式:
【0006】
【化1】

[式中、Rは、水素または2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキル鎖またはアミン基、ニトロ基で置換されているアルキル鎖が可能であり;Rは、好ましくは水素またはアルキルC1〜C3である]を有する。
【0007】
前記のベンゾフラン化合物は既知であり、従来の方法によって、例えば2−フェノキシ−2',4'−ジメトキシアセトフェノンで適切に置換されたフェノールの、Chimie Therapeutique1973,8,398に報告された条件下での反応、続いてポリリン酸の存在下でのキシレンにおける環化、そしてメトキシおよびヒドロキシ基の加水分解によって、調製することができる。本発明の組成物に使用されるベンゾフラン化合物は、構造式1を有し、カンジダの多数の菌株に対して強力な抗細菌および抗真菌作用を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の説明
本発明は、
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド;および
b)ベンゾフラン化合物;
ならびに、場合によって
c)ザントキシルムブンゲアヌム(Zanthoxylum bungeanum)またはエキナセアアングスチホリア(Echinacea angustifolia)の抽出物
を含み、
膣感染および結果としてもたらされる炎症状態、特に関連する炎症性の問題を伴う多様な由来の膣炎の治療に有用である、抗炎症、抗細菌および抗真菌活性を有する組成物に関する。
【0009】
より詳細には、本発明は、
a)サンギナリンおよび/またはケレリトリンおよび/またはこれらの誘導体から選択されるベンゾフェナントリジンアルカロイド;および
b)上記において特定されたベンゾフラン化合物;
ならびに、場合によって
c)ザントキシルムブンゲアヌムまたはエキナセアアングスチホリアの抽出物
を含む製剤に関する。
【0010】
現在、驚くべきことに、本発明の組成物は、別々に投与される種々の成分の合計を超える抗細菌、抗真菌および抗酵素活性を有することが見出されている。前記効果は、当該の関連する種々の成分の間に生じる相乗作用機構に起因しうる。本発明の組成物は、非病原菌の存在を排除すること、ならびに炎症、かゆみ、および膣のpHを低減することにより、これらの感染を迅速に排除する。
【0011】
本発明によると、組成物は、以下のインターバル(intervals)で種々の成分を含有する(1単位用量あたりの重量):
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド:0.15〜15mg;および
b)ベンゾフラン化合物:0.2〜25mg;
ならびに、場合によって
c)ザントキシルムブンゲアヌムまたはエキナセアアングスチホリアの抽出物:0.1〜10mg。
【0012】
特に好ましい態様によると、当該の組成物は、以下のインターバルで種々の成分を含有する(1単位用量あたりの重量):
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド:0.4〜10mg;および
b)ベンゾフラン化合物:0.4〜10mg;
ならびに、場合によって
c)ザントキシルムブンゲアヌムまたはエキナセアアングスチホリアの抽出物:0.2〜5mg。
【0013】
ベンゾフェナントリジンアルカロイドのサンギナリンおよびケレリトリンは、遊離もしくは塩化形態、実質的に純粋なそのままの形態(as such in substantially pure form)、またはサングイナリアカナデンシス、マクレアヤコルダタ、マクレアヤミクロカルパもしくはケリドニアマジュスの抽出物の形態で存在しうる。好ましい態様によると、ベンゾフェナントリジンアルカロイドは、ルテイン酸(luteic acid)で塩化された形態で存在する。アルカロイドの硫酸塩または塩化物をルテイン酸のナトリウムまたはカリウム塩と反応させ、続いて結晶化させて調製した前記塩は、本発明の目的に特に効果的であることが証明されている。特にサンギナリンは、炎症を低減するのを助ける強力な抗血管形成因子である(Jong−Pil Eun 2004)。インビボにおいて、サンギナリンは、Matrigelにおける毛細血管の形成およびニワトリ胚の絨毛尿膜における毛細血管の形成を抑制する(Jong−Pil Eun 2004)。
【0014】
前記ベンゾフェナントリジンアルカロイドは、顕著な抗細菌、抗真菌および抗トリコモナス活性を有するのみならず、サイトメガロウイルスおよびパピローマウイルスに対して顕著な活性も表す。このため、これらのアルカロイドの原型であるサンギナリン、ケレリトリンおよびケリドニンは、鎮痛効果も有し、異なる病因の膣炎の治療に非常に有用である。これらの化合物は、互いに相乗的に作用して、炎症を低減し、結果的に症状を低減し、障害を抑制する。
【0015】
上記に記載されたベンゾフラン構造を有する化合物は、そのままで存在しうるか、またはクラメリアトリアンドラ(Krameria triandra)、エウポマティアラウリナ(Eupomatia laurina)およびピペル属種(Piper sp.)の抽出物など、それらを含有する抽出物の形態で存在しうる。特に活性であることが証明されている、クラメリアトリアンドラから単離された化合物は、オイポマテノイド(Eupomatenoid)6およびネオリグナン2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−5−(E)−プロペニル−ベンゾフランであり、これらはグラム陽性細菌、真菌および嫌気性細菌の多数の菌株において抗細菌および抗真菌活性を実証している。
【0016】
特に好ましい態様によると、当該の組成物は、ザントキシルムブンゲアヌムまたはエキナセアアングスチホリアの抽出物も含有して、存在する場合、かゆみおよび/または疼痛の除去を助ける。この作用は、カンナビノイドCB2およびCB1レセプターに結合するイソブチルアミドの存在に起因する。本発明の製剤は、“Remington's Pharmaceutical Handbook”,Mack PublishingCo.,N.Y.,USAに記載されているものなど、周知の従来の方法にしたがって、適切な賦形剤と一緒に調製することができる。
【0017】
本発明の組成物は、肛門性器領域の外部治療用には、他の適合する賦形剤により水/油乳剤に都合良く処方され、内部治療用には、化合物は、膣管への導入後に容易に分解する軟質ゼラチンカプセル中の油に懸濁される。
【0018】
本発明の製剤の例には、クリーム剤、軟膏剤、粉末剤、ローション剤など、体内温度で溶解するカプセル剤を含む、膣坐薬または同等の製剤が挙げられる。
【実施例】
【0019】
下記に記載されている例は、範囲を制限することなく本発明を説明する。
【0020】
例1−ベンゾフラン化合物の調製
段階A. 2−フェノキシ−2',4'−ジメトキシアセトフェノン(a)の調製
25mLの2−ブタノン中の2−ブロモ−2',4'−ジメトキシアセトフェノン(5g、19.1mmol)の溶液を、20.0mLの同じ溶媒中のフェノール(1.8g、19.1mmol)、KCO(2.6g、19.1mmol)およびKI(41.5mg、0.25mmol)の懸濁液に加えた。次に溶液を20時間還流した。混合物を濾過し、溶媒を真空下で排除した。得られた残渣をEtOAcに溶解し、NaOHの10%水溶液、次に水で洗浄した。有機抽出物をNaSOで乾燥し、濾過し、真空下で蒸発させた。最後に、粗残渣をEtOで洗浄し、低圧で乾燥して、4.4g(収率:84%)の標記化合物をもたらした。
【0021】
段階B. 2−(2',4'−ジメトキシフェニル)ベンゾフラン(b)の調製
12gのポリリン酸を、130.0mLのキシレン中の段階Aで得られた化合物(4.4g、16.2mmol)の溶液に加えた。混合物を2時間環流し、次に周囲温度に放置して冷ました。次に、溶液をデカントし、低圧で蒸発させた。得られた残渣(3.7g、収率:90%)を、更に精製することなく次の段階に使用した。
【0022】
段階C. 2−(2',4'−ジヒドロキシフェニル)ベンゾフラン(1)の調製
段階Bで調製した化合物(3.7g、14.5mmol)およびピリジン塩酸塩(11.1g、96.4mmol)の混合物を、225℃で45分間加熱した。形成された赤色生成物を10%HClに注いだ。混合物をEtOAcで繰り返し洗浄し、合わせた有機層をNaSOで乾燥し、蒸発させた。提供するために、残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc=7:3)により精製した。最終化合物を、ベンゼンからの結晶化の後、収率41%(1.36g)で得た。
【0023】
処方例1
膣管に挿入される軟質ゼラチンカプセル剤のための油状懸濁剤
マクレアヤコルダタ親油性抽出物(75%) 10mg
2,4−ジヒドロキシフェニル−3−ベンゾフラン 10mg
ソーヤレシチン 60mg
ミツロウ 50mg
植物油 800mgにする十分量。
【0024】
処方例2
クリーム剤(水中油乳剤)
クラメリアトリアンドラの抽出物 0.4g
マクレアヤコルダタのアルカロイド画分 0.4g
ザントキシルムブンゲアヌム親油性抽出物 0.2g
プロピレングリコール 10.00g
ミリスチル酸イソプロピル 5.00g
セチルアルコール 5.00g
ポリソルベート80 3.00g
カルボマー 0.40g
パラヒドロキシ安息香酸メチル 0.10g
パラヒドロキシ安息香酸プロピル 0.05g
精製水 100gにする十分量。
【0025】
処方例3
膣坐薬
2,4−ジヒドロキシフェニル−3−ベンゾフラン 10mg
マクレアヤ(Macleaya)アルカロイド画分 3mg
脂肪剤のグリセリド 2.0gにする十分量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド;および
b)下記式:
【化1】

[式中、Rは、水素または2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキル鎖、またはアミン基、ニトロ基で置換されているアルキル鎖でありうる]
のベンゾフラン化合物
ならびに、場合によって
c)ザントキシルムブンゲアヌム(Zanthoxylum bungeanum)またはエキナセアアングスチホリア(Echinacea angustifolia)の抽出物
を含む組成物。
【請求項2】
a)サンギナリン、ケレリトリンもしくはケリドニンまたはこれらの誘導体から選択されるベンゾフェナントリジンアルカロイド;および
b)上記に特定されたベンゾフラン化合物
ならびに、場合によって
c)ザントキシルムブンゲアヌム(Zanthoxylum bungeanum)またはエキナセアアングスチホリア(Echinacea angustifolia)の抽出物
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
種々の成分が、以下のインターバル(1単位用量あたりの重量):
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド:0.15〜15mg;および
b)ベンゾフラン化合物:0.2〜25mg;
ならびに、場合によって
c)ザントキシルムブンゲアヌムまたはエキナセアアングスチホリアの抽出物:0.1〜10mg
で存在する、請求項1および2に記載の組成物。
【請求項4】
種々の成分が、以下のインターバル(1単位用量あたりの重量):
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド:0.4〜10mg;および/または
b)ベンゾフラン化合物:0.4〜10mg;
ならびに、場合によって
c)ザントキシルムブンゲアヌムまたはエキナセアアングスチホリアの抽出物:0.2〜5mg
で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ベンゾフェナントリジンアルカロイドのサンギナリンおよびケレリトリンが、遊離もしくは塩化形態、実質的に純粋なそのままの形態、またはサングイナリアカナデンシス、マクレアヤコルダタ、マクレアヤミクロカルパもしくはケリドニアマジュスの抽出物の形態で存在する、請求項1〜4に記載の組成物。
【請求項6】
ベンゾフェナントリジンアルカロイドが、ルテイン酸で塩化された形態で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
式1および2のベンゾフラン化合物が、そのままで、またはそれらを含有する抽出物の形態で存在する、請求項1〜4に記載の組成物。
【請求項8】
ベンゾフラン化合物が、クラメリアトリアンドラ、エウポマティアラウリナおよびピペル属種の抽出物の形態で存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
水/油乳剤、軟質ゼラチンカプセル剤、膣坐薬または同等の製剤、クリーム剤、軟膏剤、粉末剤、ローション剤などの形態の、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
膣感染および結果としてもたらされる炎症状態の治療のための局所製剤を調製するための、
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド;および
b)ベンゾフラン化合物;
ならびに、場合によって
c)ザントキシルムブンゲアヌムまたはエキナセアアングスチホリアの抽出物
の使用。
【請求項11】
膣感染が、炎症性の問題を伴う多様な由来の膣炎である、請求項10に記載の使用。

【公表番号】特表2011−518793(P2011−518793A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505397(P2011−505397)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002516
【国際公開番号】WO2009/129927
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(591092198)インデナ エッセ ピ ア (52)
【Fターム(参考)】