説明

慣性質量ダンパー

【課題】付加バネを一体に組み込むことによってそれ自体で優れた性能を確保し得る有効適切な慣性質量ダンパーを提供する。
【解決手段】外装シリンダー11内にダンパー本体20と付加バネとしてのバネ部材30とを直列に接続して一体に組み込む。ダンパー本体は外装シリンダー内において軸方向に変位可能かつ回転不能に支持されたボールネジ軸21と、ボールネジ軸に螺着されて外装シリンダー内において回転可能かつ軸方向に変位不能に保持されたボールナット22と、ボールナットの回転により回転せしめられる回転錘23とを有する。付加バネとしてのバネ部材30は複数の皿バネ40が積層された1組の皿バネ群を有し、その皿バネ群の全体が外装シリンダーの軸方向に相対変位可能な状態で弾性的に伸縮可能に組み込まれて圧縮および引張の双方に対応する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等の構造物を対象とする免震システムや制振システムにおける構成要素として適用して好適な慣性質量ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の免震システムや制振システムに慣性質量ダンパーを適用したものが提案されている(たとえば特許文献1〜3参照)。
慣性質量ダンパーは小質量の回転錘によって桁違いに大きな慣性質量が得られるものであり、ダンパーに作用する相対加速度に比例した反力が得られる特徴を有していることから、上記各システムのように慣性質量ダンパーに対して付加バネを直列に接続することによって高振動数域での応答を低減したり、TMDのように共振特性を大幅に改善できるシステムを構築できることから、今後の普及が期待されている。
【0003】
そのようなシステムにおいては慣性質量ダンパーに対して付加バネを直列に接続するための具体的な構造としては、慣性質量ダンパーに対して直列配置される構造部材(曲げ柱、ブレース、板材等)の曲げ剛性や軸剛性を付加バネとして利用するか、あるいは慣性質量ダンパーにコイルバネや皿バネ等の格別のバネ部材を直列に接続することになるが、前者の場合は適切なバネ剛性を有しつつ所望の耐力とストロークを確保できるような構造部材を設定することは容易ではないことから、実際上は後者の手法が現実的である。
【0004】
その場合、付加バネとしては各種のバネ部材が採用可能であるが、コンパクトで大きな耐荷重性能を持つ皿バネが好適に採用可能であると考えられ、特に複数の皿バネを直列あるいは並列に組み合わせて皿バネ群として用いれば変形性能や耐荷重を増すことができることから、最も一般的なコイルバネを用いる場合よりもコンパクトでローコストに所定の性能が得られるメリットがある。
【0005】
但し、皿バネ単体では圧縮力にしか対応できないので、圧縮力のみならず引張力にも対応できる付加バネとして機能させるためには、圧縮力に対応するための皿バネ群と引張力に対応するための皿バネ群を組み合わせた構成とする必要がある
図6はその一例を示すもので、シリンダー1内に両方向に変位可能なピストン2を配設し、(a)に示すような皿バネ3を(b)に示すようにピストン2の両側にそれぞれ多数(図示例では8枚づつ)直列に重ねた2組の皿バネ群3Aとして収容した構成としたものである。
このようなバネ部材では、ピストン2に連結したロッド4とシリンダー1の一端に設けたクレビス5との間に生じる圧縮力に対しては、一方(図示例ではピストン2の右側)の皿バネ群3A全体をピストン2により一方向(図示例では右方)に押圧して弾性的に圧縮することで対応し、引張力に対しては他方(同、左側)の皿バネ群3A全体をピストン2により逆方向(同、左方)に押圧して弾性的に圧縮させることで対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−101769号公報
【特許文献2】特開2009−180346号公報
【特許文献3】特開2009−293691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いずれにしても、慣性質量ダンパーに対して付加バネとしてのバネ部材を構造的に直列に接続するためには、図7に模式的に示すように慣性質量ダンパー6とバネ部材7の一端どうしをクレビス8を介して接続し、それらの他端をそれぞれクレビス9を介して対象構造物の所定位置に対して堅固に接続することが通常である。
【0008】
しかし、図7(a)に示す構造で慣性質量ダンパー6とバネ部材7とを接続して対象構造物に設置した場合、各接続点がいずれもピン接合の形態で接続されるため全体として3ピン構造となり、そのため(b)に示すように自重で撓んでしまったり、圧縮時に座屈するように変形して直線性を維持できなくなることも想定され、その場合には設計時のバネ定数や耐力、ストロークを維持できなくなって所望の性能を発揮できず、システムとしての信頼性を損なってしまう懸念もある。
【0009】
また、上述したように付加バネとして皿バネ3を利用すること自体は好適ではあるものの、図6に示したように2組の皿バネ群3Aを備えたバネ部材7ではその全長がかなり大きくなるので、この種のシステムに好適に適用し得るような小形のバネ部材が求められているという事情もある。
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は付加バネを一体に組み込むことによってそれ自体で優れた性能を確保し得る有効適切な慣性質量ダンパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、互いに離接する方向に相対振動する二部材間に介装されて該二部材間の相対振動を制御する慣性質量ダンパーであって、前記二部材の一方に対して接続される外装シリンダー内に、ダンパー本体と付加バネとが直列に接続されて一体に組み込まれて、前記付加バネが前記二部材の他方に対して接続され、前記ダンパー本体は、前記外装シリンダー内において軸方向に変位可能かつ回転不能に支持されたボールネジ軸と、該ボールネジ軸に螺着されて前記外装シリンダー内において回転可能かつ軸方向に変位不能に保持されたボールナットと、該ボールナットの回転により回転せしめられる回転錘とを有してなり、前記付加バネは、前記外装シリンダーの軸方向に伸縮可能な状態で前記ボールネジ軸に対して連結されてなることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の慣性質量ダンパーであって、前記付加バネは、複数の皿バネが前記外装シリンダーの軸方向に積層された皿バネ群を有し、該皿バネ群の全体が前記外装シリンダーの軸方向に相対変位可能な状態で弾性的に伸縮可能に組み込まれたバネ部材からなることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の慣性質量ダンパーであって、前記付加バネとしてのバネ部材は、前記二部材の他方に対して接続される端部シリンダー要素と、該端部シリンダー要素に対して先端部が軸方向に相対変位可能に挿入されたロッド要素と、該ロッド要素の先端部に組み付けられて前記端部シリンダー要素内に収容されたバネ要素により構成されていて、前記ロッド要素の基端部に対して前記ダンパー本体のボールネジ軸が接続され、前記バネ要素は、複数枚の皿バネが直列および/または並列に重ねられてなる1組の前記皿バネ群と、該皿バネ群の両端側にそれぞれ配設された対の押板からなり、前記ロッド要素の先端部が前記バネ要素の全体に対して軸方向に相対変位可能に挿通せしめられているとともに、該ロッド要素には前記各押板の外側の位置にそれぞれストッパーが設けられていて、該ストッパーの間において前記バネ要素の全体が前記ロッド要素の軸方向両側に弾性的に変位可能な状態で組み付けられ、前記各押板がそれぞれ前記端部シリンダー要素の両端部に設けられた蓋体の内側に配置され、かつ前記ロッド要素の前記端部シリンダー要素に対する軸方向相対変位により各押板が各蓋体の内面に対して押圧されて該ロッド要素の軸方向内側に変位可能な状態で、前記バネ要素の全体が前記端部シリンダー要素内に収容されて保持されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、それ自体が慣性質量ダンパーとして機能するダンパー本体と付加バネとを外装シリンダー内に収容してその内部においてそれらを直列に接続したので、この慣性質量ダンパーの両端を対象構造物に対してピン接合すれば良く、したがって両端だけで安定に保持することが可能であって自重により撓んだり圧縮時に座屈するような変形を生じることがない。
また、従来のように慣性質量ダンパーと付加バネとを接続する場合に比べて全体の所要長さを短縮し得てコンパクト化を実現できるし、対象構造物に対する設置作業も容易となり、製作コストを削減することも可能である。
【0015】
特に、付加バネとして皿バネによるバネ部材を用いれば、十分な小形化と低価格化を実現できるし、その場合において1組の皿バネ群により圧縮と引張の双方に対応する構成とすれば全体の所要長さを十分に削減し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態である慣性質量ダンパーの概略構成を示す図である。
【図2】同、付加バネとしてのバネ部材の構成例とその挙動の説明図である。
【図3】同、バネ部材における皿バネ群の構成例を示す図である。
【図4】同、慣性質量ダンパー全体の挙動の説明図である。
【図5】同、慣性質量ダンパーの変形例を示す図である。
【図6】従来の皿バネによる付加バネの一例を示す図である。
【図7】従来の慣性質量ダンパーと付加バネの接続例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の慣性質量ダンパー10の一実施形態を図1〜図4を参照して説明する。
本実施形態の慣性質量ダンパー10は、それ自体が従来一般の慣性質量ダンパーと同様に機能するダンパー本体20と、それに接続される付加バネとしてのバネ部材30を外装シリンダー11内に一体に組み込んだことを主眼とする。
【0018】
外装シリンダー11は、所定長さの高軸剛性かつ高曲げ剛性の中空円筒体であって、その一端(図では左端)がクレビス12を介して対象構造物の所定位置に接続されるものである。
【0019】
外装シリンダー11内の一端側(図では左端側)には、ボールネジ軸21とボールナット22と回転錘23とにより構成されたダンパー本体20が組み込まれている。
ボールネジ軸21は、ほぼその中心位置に円板状の回転防止板24が固定され、その回転防止板24は外装シリンダー11に対してキー25により軸方向に変位可能かつ回転不能に支持されており、したがってボールネジ軸21自体が外装シリンダー11内において軸方向に変位可能かつ回転不能に支持されている。
ボールナット22は上記のボールネジ軸21に螺着されて外装シリンダー11内においてベアリング26により回転可能かつ軸方向に変位不能に保持されており、そのボールナット22に対して円筒状の回転錘23が一体に組み付けられている。
【0020】
したがってこのダンパー本体20は、後述するようにボールネジ軸21がバネ部材30を介して外装シリンダー11に対して(つまりボールナット22に対して)軸方向に変位せしめられた際には、ボールナット22および回転錘23が回転せしめられて大きな慣性質量が得られるものであり、それを利用して従来システムと同様に優れた制振効果や免震効果を発揮するものである。
勿論、このダンパー本体20は、従来一般の慣性質量ダンパーと同様に、ボールネジのリードや回転錘23の質量・寸法・形状等を調整することで慣性質量を自由に設定することができるものである。
なお、回転錘23をボールナット22に対して適宜の摩擦材(図示せず)を介して相対回転可能に装着して過負荷時には回転錘23をボールナット21に対してスリップさせる構成とすれば、この慣性質量ダンパー10に過負荷防止機能を持たせることができる。
【0021】
外装シリンダー11内の他端側(右端側)には上記のバネ部材30が軸方向に相対変位可能に組み込まれ、このバネ部材30に対して上記のボールネジ軸21が接続され、これによりそれ自体が慣性質量ダンパーとして機能するダンパー本体20と付加バネとして機能するバネ部材30とが構造的に直列に接続されている。
【0022】
本実施形態におけるバネ部材30の構成およびその挙動を図2に示す。
本実施形態のバネ部材30は、端部シリンダー要素31(以下では単に端部シリンダー31と略す)と、その端部シリンダー31に対して軸方向に相対変位可能に挿入されたロッド要素32(以下では単にロッド32と略す)と、ロッド32の先端部に組み付けられて端部シリンダー31内に収容されているバネ要素33により構成されている。
【0023】
端部シリンダー31は、外装シリンダー11の他端側からその内部に挿入されてキー34(図1参照)を介して外装シリンダー11に対して軸方向に変位可能(つまり外装シリンダー11に対して出没可能)かつ相対回転不能な状態で組み付けられており、その基端がクレビス35を介して対象構造物の所定位置に接続されるものである。
【0024】
ロッド32はその基端(図示左端)に上記のボールネジ軸21が接続されているとともに、その先端部(図示右端部)に組み付けられているバネ要素33を端部シリンダー31内に収容し保持することにより、対象構造物の振動(外装シリンダー11の軸方向に沿う振動)を端部シリンダー31、バネ要素33を介してボールネジ軸21に対して伝達してダンパー本体20を作動させるものである。
【0025】
バネ要素33は、複数枚(図示例では8枚)の皿バネ40が直列に重ねられた1組の皿バネ群40Aを主体とするもので、これ自体で圧縮と引張の双方に対応できるものである。
すなわち、本実施形態におけるバネ要素33は、皿バネ群40Aの両端側に押板41(41a、41b)がそれぞれ配設されていて、そのバネ要素33の全体に対してロッド32が軸方向に相対変位可能に挿通せしめられており、かつロッド32には各押板41の外側の位置にそれぞれストッパー42(42a、42b)としての加力ボルトが螺着されていて、それらストッパー42の間においてバネ要素33の全体がロッド32の軸方向両側に弾性的に伸縮可能かつその全体が弾性的に変位可能な状態で組み付けられている。
【0026】
そして、このバネ要素33の全体が端部シリンダー31内に収容された状態では、図2(a)に示すように、皿バネ群40A全体の弾性付勢力によってその両側の各押板41(41a、41b)がそれぞれ端部シリンダー31の両端部に固定されている環状の各蓋体43(43a、43b)の内面に対して押圧されるようになっており、その状態でバネ要素33は端部シリンダー31内に安定に持されている。
なお、押板41の外面には硬質ゴム等の緩衝材44が取り付けられていて、押板41とストッパー42および蓋体43とが接触した際に騒音が発生することが防止されるようになっている。
【0027】
上記構成のもとに、このバネ部材30は、図2(a)に示す状態で静的に外装シリンダー11内の端部に位置している状態から、対象構造物に振動が生じて(b)に示すように端部シリンダー31が外装シリンダー11に対して押し込まれるような圧縮力が作用した際には、ロッド32が端部シリンダー31に対して押し込まれる方向に相対変位し、それにより一方のストッパー42bによって押板41bが端部シリンダー31内に押し込まれて皿バネ群40Aの全体が図示右方向に変位するとともに、押板41aが蓋体43aに対して押圧され、これによりバネ要素33全体が弾性的に圧縮される。
逆に、(c)に示すように端部シリンダー31が外装シリンダー11から引き抜かれるような引張力が作用した際には、ロッド32が端部シリンダー31から抜き出る方向に相対変位し、それにより他方のストッパー42aによって押板41aが端部シリンダー31内に引き込まれて皿バネ群40Aの全体が図示左方向に変位するとともに、押板41bが蓋体43bに対して押圧され、これによりバネ要素33全体が弾性的に圧縮される。
【0028】
このように、本実施形態のバネ部材30によれば、圧縮時および引張時のいずれにおいても1組の皿バネ群3Aが圧縮されて圧縮力および引張力の双方に対応可能であるから、図6に示した従来のバネ部材のように2組の皿バネ群を必要とせず、したがって従来と同等のバネ剛性を持つものであっても皿バネ40の所要枚数を半減できるし、バネ部材30全体としての所要長さも半減でき、その結果、構成の十分な簡略化と小形化およびローコスト化を実現し得るものである。
【0029】
勿論、皿バネ40単体としてのバネ剛性やそれらの枚数、積層パターンを調整することで任意の変形性能や耐力に幅広く対応できるから、皿バネ40の枚数や配列パターンは皿バネ群40A全体として所望のバネ剛性が得られるように、たとえば図3に示すような様々なパターンで任意に設計すれば良い。
その場合、皿バネ40を同じ向きに重ねる並列配列とすれば耐力(荷重)を増大させることができ、逆向きに重ねる直列配列とすれば変形性能を増大させることができるから、バネ部材30全体として所定の荷重に必要な枚数を並列とし、所定の変形に必要な枚数を直列にすれば良い。
【0030】
本実施形態の慣性質量ダンパー10は、上記構成のバネ部材30を付加バネとして用いて外装シリンダー11内に組み込み、そのバネ部材30を外装シリンダー11内においてダンパー本体20に対して接続した構成により、図4(a)に示すように圧縮力を受けた際にはバネ部材30が外装シリンダー11内に押し込まれるように変位しつつダンパー本体20を作動せしめてボールナット22および回転錘23を一方向に回転せしめ、図4(b)に示すように引張力を受けた際にはバネ部材30が外装シリンダー11から引き出されるように変位しつつダンパー本体20を作動せしめてボールナット22および回転錘23を逆方向に回転せしめるから、いずれの場合もダンパー本体20を有効に作動せしめて所望の特性を得ることができる。
【0031】
そして、本実施形態の慣性質量ダンパー10はそれ自体の両端を対象構造物に対してクレビス12,35を介してピン接合すれば良く、図7に示した従来例のように慣性質量ダンパー6とバネ部材7とが3ピン構造で接続されることがないから、両端だけで安定に保持することが可能であるし、自重により撓んだり圧縮時に座屈するような変形を生じることがないばかりか、外装シリンダー11に対して軸方向の荷重が作用するだけで曲げやトルクを生じることもなく、これが接続される本体構造に対してトルク負荷が生じることもない。
勿論、従来のように個別の慣性質量ダンパー6とバネ部材7とを接続する場合に比べて全体の所要長さを短縮し得てコンパクト化を実現できるし、対象構造物に対する設置作業も容易となり、安価な皿バネ40を用いることと相俟って製作コストを十分に削減することも可能である。
【0032】
以上で本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は好適な一例であって本発明は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内でたとえば以下に列挙するような適宜の設計的変形や応用が可能である。
【0033】
上記実施形態では皿バネ群40Aからなるバネ要素33の全体を端部シリンダー31内に収容し、その端部シリンダー31を外装シリンダー11に対して出没自在に組み込む構成としたが、要は皿バネ群40Aの全体を軸方向両側に変位可能に保持することで圧縮と引張に双方に作用するように構成すれば良いのであって、そのためにはたとえば図5に示すように両側の蓋体43a、43bどうしをボルト50(鎖線で示す)により連結することとして、蓋体43bに設けた貫通孔にボルト50を通してナット51で固定し、蓋体43aに対してはボルト50をタップネジで固定することで、そのボルト50を上記の端部シリンダー(端部シリンダー要素)31に代わる要素として機能せしめるように変更しても同様に機能するものとなる。
なお、図5に示す変形例では、上記の変更の他に、上記実施形態における回転防止板24とストッパー42bとを一体化し、端部シリンダー11の先端面と蓋体43aとを一体化している。
【0034】
上記実施形態のように付加バネとしては1組の皿バネ群40Aにより圧縮時と引張時の双方に対応する構成のバネ部材30を用いることが最適ではあるが、それに限るものではなく、図6に示した圧縮用と引張用の2組の皿バネ群3Aからなるバネ部材を用いることも可能である。但し、その場合は付加バネとしての所要寸法が長くなるので、外装シリンダー11内に収容できることが条件となる。
【0035】
さらには、付加バネとして皿バネ40を用いることに限るものでもなく、外装シリンダー11内に収容でき、かつ圧縮と引張の双方において同等のバネ剛性を呈するものであれば、コイルバネや板バネも含めて任意のバネ要素を採用することも妨げるものではない。
【0036】
さらになお、本発明の慣性質量ダンパーは、外装シリンダー内に付加バネを一体に組み込むことに加えて、オイルダンパー等の適宜の減衰要素を外装シリンダー内に組み込むことも考えられる。また、クレビス12,35をボールジョイントにしても良い。
【符号の説明】
【0037】
10 慣性質量ダンパー
11 外装シリンダー
12 クレビス
20 ダンパー本体
21 ボールネジ軸
22 ボールナット
23 回転錘
24 回転防止板
25 キー
26 ベアリング
30 バネ部材(付加バネ)
31 端部シリンダー(端部シリンダー要素)
32 ロッド(ロッド要素)
33 バネ要素
34 キー
35 クレビス
40 皿バネ
40A 皿バネ群
41(41a、41b) 押板
42(42a、42b) ストッパー
43(43a、43b) 蓋体
44 緩衝材
50 ボルト(端部シリンダー要素)
51 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離接する方向に相対振動する二部材間に介装されて該二部材間の相対振動を制御する慣性質量ダンパーであって、
前記二部材の一方に対して接続される外装シリンダー内に、ダンパー本体と付加バネとが直列に接続されて一体に組み込まれて、前記付加バネが前記二部材の他方に対して接続され、
前記ダンパー本体は、前記外装シリンダー内において軸方向に変位可能かつ回転不能に支持されたボールネジ軸と、該ボールネジ軸に螺着されて前記外装シリンダー内において回転可能かつ軸方向に変位不能に保持されたボールナットと、該ボールナットの回転により回転せしめられる回転錘とを有してなり、
前記付加バネは、前記外装シリンダーの軸方向に伸縮可能な状態で前記ボールネジ軸に対して連結されてなることを特徴とする慣性質量ダンパー。
【請求項2】
請求項1記載の慣性質量ダンパーであって、
前記付加バネは、複数の皿バネが前記外装シリンダーの軸方向に積層された皿バネ群を有し、該皿バネ群の全体が前記外装シリンダーの軸方向に相対変位可能な状態で弾性的に伸縮可能に組み込まれたバネ部材からなることを特徴とする慣性質量ダンパー。
【請求項3】
請求項2記載の慣性質量ダンパーであって、
前記付加バネとしてのバネ部材は、前記二部材の他方に対して接続される端部シリンダー要素と、該端部シリンダー要素に対して先端部が軸方向に相対変位可能に挿入されたロッド要素と、該ロッド要素の先端部に組み付けられて前記端部シリンダー要素内に収容されたバネ要素により構成されていて、前記ロッド要素の基端部に対して前記ダンパー本体のボールネジ軸が接続され、
前記バネ要素は、複数枚の皿バネが直列および/または並列に重ねられてなる1組の前記皿バネ群と、該皿バネ群の両端側にそれぞれ配設された対の押板からなり、
前記ロッド要素の先端部が前記バネ要素の全体に対して軸方向に相対変位可能に挿通せしめられているとともに、該ロッド要素には前記各押板の外側の位置にそれぞれストッパーが設けられていて、該ストッパーの間において前記バネ要素の全体が前記ロッド要素の軸方向両側に弾性的に変位可能な状態で組み付けられ、
前記各押板がそれぞれ前記端部シリンダー要素の両端部に設けられた蓋体の内側に配置され、かつ前記ロッド要素の前記端部シリンダー要素に対する軸方向相対変位により各押板が各蓋体の内面に対して押圧されて該ロッド要素の軸方向内側に変位可能な状態で、前記バネ要素の全体が前記端部シリンダー要素内に収容されて保持されてなることを特徴とする慣性質量ダンパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−189104(P2012−189104A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51596(P2011−51596)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】