説明

懸垂碍子成形型

【課題】懸垂碍子成形型などのセラミックス製品を割れや変形等を生じさせることなく成形型から確実に取り出すことができる懸垂碍子成形型を提供する。
【解決手段】金属製の型本体1の内周面に複数の離型用ブローエア噴出孔2を有しており、このブローエア噴出孔2には各々エア分岐管3が連結され、これらエア分岐管3の基部が底部中央に設けたカプラ4に集約されている。前記カプラ4は底部の下面側において昇降動するエア供給配管5に着脱自在とされており、また底部に前記エア供給配管5と干渉しないように独立して昇降自在とされている製品の押し上げ装置7を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸垂碍子を割れや変形等を生じさせることなく成形型から確実に取り出すことができる懸垂碍子成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、懸垂碍子のような複雑な形状のセラミックス製品は、特許文献1や特許文献2に記載される多孔質石膏型の成形型を用いることにより、原料坏土を成形型の表面に加圧密着させ、正確な形状に成形している。また、成形したセラミックス製品を成形型から取り出す際には、多孔質の成形型から加圧空気のエアブローを行い製品を僅かに浮き上がらせて離型を図ると同時に、上部から吸着板を下降させてセラミックス製品を真空吸着して取り出すようにして、割れや変形等の発生を防止している。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1や特許文献2に記載される従来方法においては、エアブローによりセラミックス製品が均一に浮き上がらないことがあり、吸着板を上昇させた際に吸着が不十分で離型ができないことがあった。このために吸着板の真空圧を上げてセラミックス製品を確実に吸着させようとすると、製品のリブが内側に変形してしまうという問題点があった。また、吸着が確実に行われてもセラミックス製品の成形型からの浮き上がりが不十分であると、製品が上方に引き伸ばされて変形してしまうという問題点もあった。
【0004】
更には、従来のような多孔質石膏型の成形型の場合は、一定回数使用後は表面の土の目詰まりを除去するためにヤスリがけを頻繁に行う必要があり、メンテナンス作業が面倒であるという問題点があった。また、端面における型割れを生じやすく1年未満で型寿命が短いという問題点や、そのために複数予備用型を準備する必要があり大きな保管スペースが要求されるという問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−238029号公報
【特許文献2】特開平7−178713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決して、懸垂碍子を割れや変形等を生じさせることなく成形型から確実に取り出すことができ、またメンテナンスフリーで取り扱いが容易であり、また型寿命も10年以上に延ばすことが、更には型の保管スペースも小さくすることができる懸垂碍子成形型を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の懸垂碍子成形型は、金属製の型本体の内周面に複数の離型用ブローエア噴出孔を有しており、このブローエア噴出孔には各々エア分岐管が連結され、これらエア分岐管の基部が底部中央に設けたカプラに集約されている懸垂碍子成形型であって、前記カプラは底部の下面側において昇降動するエア供給配管に着脱自在とされており、また底部に前記エア供給配管と干渉しないように独立して昇降自在とされている製品の押し上げ装置を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
また、押し上げ装置は、型本体の底部を形成する底板と、この底板の下方に向けてエア供給配管を囲うように垂設した複数本のロッドと、このロッドを介して取り付けられたエア供給配管挿通陽の孔部を設けた押し上げ板を有しており、この押し上げ板が前記エア供給配管と干渉しない位置に配置されたシリンダにより昇降自在とされているものが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【0009】
更に、型本体の下部外周面には、下方に向け縮径するテーパ面が形成されており、このテーパ面をチャックユニットで把持してセンター出しが行われることが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、金属製の型本体の内周面に複数の離型用ブローエア噴出孔を有しており、このブローエア噴出孔には各々エア分岐管が連結され、これらエア分岐管の基部が底部中央に設けたカプラに集約されている懸垂碍子成形型であって、前記カプラは底部の下面側において昇降動するエア供給配管に着脱自在とされており、また底部に前記エア供給配管と干渉しないように独立して昇降自在とされている製品の押し上げ装置を設けたので、前記カプラをエア供給配管に連結すれば簡単にブローエアを噴出させることができ、その後は押し上げ装置のみを作動させて製品を確実に押し上げることが可能となる。
なお、本発明の成形型は金属製のものであり、従来の多孔質石膏型と異なりメンテナンスフリーとすることができ、また型寿命も10年以上に延ばすことができ、更には型の保管スペースも小さくすることができる。
【0011】
また、請求項2に係る発明では、押し上げ装置は、型本体の底部を形成する底板と、この底板の下方に向けてエア供給配管を囲うように垂設した複数本のロッドと、このロッドを介して取り付けられたエア供給配管挿通陽の孔部を設けた押し上げ板を有しており、この押し上げ板が前記エア供給配管と干渉しない位置に配置されたシリンダにより昇降自在とされているので、底板が成形用底型の役割をするとともに製品の押し上げも行い、割れや変形等を発生させることなく製品を型本体から取り出すことが可能となる。また、押し上げ装置の昇降動とエア供給配管の昇降動とが干渉することもない。
【0012】
また、請求項3に係る発明では、型本体の下部外周面には、下方に向け縮径するテーパ面が形成されており、このテーパ面をチャックユニットで把持してセンター出しが行われるので、カプラと上昇するエア供給配管のセンターが一致してエア漏れが生じることもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態を示す正面断面図である。
【図2】図1において押し上げ装置が上昇した状態を示す正面断面図である。
【図3】型本体を示す斜視図である。
【図4】懸垂碍子を成形後、エアブロー前の状態を示す正面図である。
【図5】エアブロー時の状態を示す正面図である。
【図6】底板を上昇した時の状態を示す正面図である。
【図7】チャックユニットを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、本発明の成形型を示す正面断面図、図2は図1において押し上げ装置が上昇した状態を示す正面断面図であり、図において1は金属製の型本体、Wはこの型本体1によって加圧成形される複雑な形状の懸垂碍子である。このような懸垂碍子の成形型では、原料となる杯土がこの型本体1と、図示しない焼鏝と称される表面をガスバーナで加熱処理した押し型とにより加圧成形されて懸垂碍子Wが生産される。また、このような成形は周知の直線移動式のプレス成形機により連続的に行われる。
【0015】
前記型本体1の内周面には、図3に示すように、複数の製品離型用のブローエア噴出孔2が同心状に均等な間隔で設けられている。このブローエア噴出孔2は、型本体1に形成した孔部に通気性のある焼結金属を埋め込んだものである。また、底部には後述する製品の押し上げ装置を備えたものとなっている。そして、前記ブローエア噴出孔2からのブローエアの噴出により、型面から懸垂碍子を僅かに浮かせ、その後更に押し上げ装置で押し上げて製品を完全に型外へ押し上げることで、製品取り出し時における割れや変形等の発生を有効に防止している。
【0016】
前記ブローエア噴出孔2には各々エア分岐管3が連結されており、これらエア分岐管3の基部は底部中央に設けた雌型のカプラ4aに集約されている。また、この雌型のカプラ4aは型本体1の底部中央の下面側において昇降動するエア供給配管5に着脱自在とされている。
即ち、図4〜図5に示されるように、エア供給配管5の下部にはエアシリンダ6が設置され、このエアシリンダ6の作動によりエア供給配管5が昇降動するよう構成されており、上昇時においてエア供給配管5の上端に設けた雄型のカプラ4bが前記雌型のカプラ4aに嵌合する構造となっている。
これにより、エア供給配管5から供給されるブローエアが各エア分岐管3を通じてブローエア噴出孔2から型内表面に向けて噴出され、ブロー圧によって懸垂碍子Wが僅かに浮いて離型することとなる。
【0017】
一方、押し上げ装置7は前記エア供給配管5とは独立して昇降自在とされている。
この押し上げ装置7は、型本体1の底部を形成する底板7aと、この底板7aから下方に向けてエア供給配管5を囲うように垂設した複数本のロッド7bと、このロッド7bを介して取り付けられた押し上げ板7cを有しており、この押し上げ板7cがエア供給配管5及びその昇降装置などと干渉しない位置に配置されたシリンダ8により昇降自在となっている。
【0018】
更に詳述すると、図5に示されるように、押し上げ装置7は底部を形成する円板状の底板7aと押し上げ板7cとが外周部に配置した複数本のロッド7bで連結した構造となっており、常時は自重によって底板7aが底部を形成する位置に下がった状態となっている。また、押し上げ板7cの中央には孔部7dが設けられており、この孔部7d内をエア供給配管5が挿通され両者が干渉しないよう構成されている。
また、押し上げ装置7を昇降動するためのエアシリンダ8は前記エア供給配管5を昇降動するエアシリンダ6とは干渉しない位置に設置されている。そして、このエアシリンダ8のロッド8aの先端には板状ブラケット9が取り付けられており、このブラケット9の上昇動作により押し上げ板7cが上昇し、この結果、底板7aが上昇して懸垂碍子Wを押し上げる構造となっている(図6参照)。
【0019】
なお、型本体1は搬送用ブラケット11に支持されて各ステーッションを順次移動するので、移動後において型本体1が各ステーッションのセンターに正確に位置合わせされる必要がある。そのため、型本体1の下部外周面には、下方に向け縮径するテーパ面12が形成されており、このテーパ面12をチャックユニット13で把持してセンター出しを行っている。これにより、カプラ4a、4bの嵌合や押し上げ装置7の正確な押し上げが可能となる。
このチャックユニット13は、例えば図7に示されるように、3等分した位置に配置した3個の爪部材13aを有するものであり、この爪部材13aの先端部と前記テーパ面12を一致させることにより、簡単にセンター出しを行う構造となっている。
【0020】
以上のように構成した本発明の成形型は、通常のプレス成形機に装着して使用に供され、原料となる坏土がこの型本体1と図示しない表面をガスバーナで加熱処理した押し型とにより加圧成形されて懸垂碍子Wが連続的に生産されることとなる。
図4は加圧成形を終えた状態を示しており、この後、懸垂碍子Wを取り出す場合、図5に示されるように、エアシリンダ6の作動によりエア供給配管5が上昇して上端にある雄型のカプラ4bが型本体1の下部にある雌型のカプラ4aに嵌合する構造となっている。これにより、エア供給配管5から供給されるブローエアが各エア分岐管3を通じてブローエア噴出孔2から型内表面に向けて噴出され、ブロー圧によって懸垂碍子Wが僅かに浮いて離型することとなる。
【0021】
次いで、図6に示されるように、エアシリンダ8が押し上げ装置7を上昇させると、先端の板状ブラケット9が上昇し、これにより押し上げ板7c及び底板7aが上昇して懸垂碍子Wを押し上げることとなる。
このように本発明の成形型によれば、加圧成形された懸垂碍子Wがブローエアの噴出と、押し上げ装置の上昇により割れや変形等を生じさせることなく成形型から確実に取り出すことができることとなる。
【符号の説明】
【0022】
1 型本体
2 ブローエア噴出孔
3 エア分岐管
4a カプラ
4b カプラ
5 エア供給配管
6 エアシリンダ
7 押し上げ装置
7a 底板
7b ロッド
7c 押し上げ板
8 エアシリンダ
8a シリンダロッド
9 板状ブラケット
11 搬送用ブラケット
12 テーパ面
13 チャックユニット
W 懸垂碍子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の型本体の内周面に複数の離型用ブローエア噴出孔を有しており、このブローエア噴出孔には各々エア分岐管が連結され、これらエア分岐管の基部が底部中央に設けたカプラに集約されている懸垂碍子成形型であって、前記カプラは底部の下面側において昇降動するエア供給配管に着脱自在とされており、また底部に前記エア供給配管と干渉しないように独立して昇降自在とされている製品の押し上げ装置を設けたことを特徴とする懸垂碍子成形型。
【請求項2】
押し上げ装置は、型本体の底部を形成する底板と、この底板から下方に向けてエア供給配管を囲うように垂設した複数本のロッドと、このロッドを介して取り付けられたエア供給配管挿通陽の孔部を設けた押し上げ板を有しており、この押し上げ板が前記エア供給配管と干渉しない位置に配置されたシリンダにより昇降自在とされている請求項1に記載の懸垂碍子成形型。
【請求項3】
型本体の下部外周面には、下方に向け縮径するテーパ面が形成されており、このテーパ面をチャックユニットで把持してセンター出しが行われる請求項1または2に記載の懸垂碍子成形型。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−194716(P2011−194716A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64033(P2010−64033)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】