説明

成型品の製造方法

【課題】 コーヒー粕を含有する成型品を製造するに際して、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等の成型性に優れ、比較的に安価な汎用樹脂を使用した場合においても、コーヒー粕を成型品中に均一に分散することができ、良好な成型品を与えることができる成型品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 コーヒー粕を含有する成型品を製造する方法であって、
コーヒー粕と第1樹脂とを混合、造粒して、コーヒー粕と第1樹脂とを含有するペレットを得る工程と、前記ペレットと第2樹脂とを混合、成形する工程と、を有し、前記第1樹脂として、スチレン系エラストマーおよび/または水添スチレン系エラストマーを用いることを特徴とする成型品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー飲料の製造過程で生ずるコーヒー抽出液の抽出残渣や期限切れレギュラーコーヒー豆、すなわち、コーヒー粕を再利用する方法に係り、特に、コーヒー粕を樹脂とともに成型することにより得られる成型品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焙煎コーヒー豆からのコーヒー抽出液を抽出する際における抽出残渣、すなわち、コーヒー粕は、缶コーヒー、インスタントコーヒー等のコーヒー飲料の需要の増加に伴い、膨大な量となっている。このコーヒー粕は、多量の水分を含有しており、焼却処分に適さず、また、多量の脂肪が含有されているため、その処理に多大の費用を要している。そのため、処理に要する費用の低減という観点等から、コーヒー抽出液の抽出残渣としてのコーヒー粕や期限切れレギュラーコーヒー豆の有効な再利用方法が、望まれていた。
【0003】
これに対して、たとえば、特許文献1には、コーヒー粕等の植物性食物残滓粉末と繋ぎ材としてのコンスターチとからなる混合ペレットと、生分解性プラスチックと、を混合、撹拌し、得られた混合材を成形機内に投入して特定形状に成形することを特徴とする成型品が開示されている。
【0004】
しかしながら、この特許文献1では、コーヒー粕と、コンスターチと、を混合してペレット化するという工程を採用しているため、次の課題を有する。すなわち、このペレットに含まれるコンスターチは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)等の成型性に優れ、比較的に安価な汎用樹脂との相溶性が悪く、これらの汎用樹脂とともに均一に混合することができないという性質を有する。そのため、この特許文献1の技術では、これら汎用樹脂とともに組み合わせて使用することができないという問題があった。さらに、この特許文献1で使用しているコンスターチは、耐熱性が低いという問題も有しており、そのため、この特許文献1においては、成型品を得るための成型方法が限定されてしまうという課題や、得られる成型品の耐熱性が低いという課題があった。
【0005】
また、たとえば、これらの汎用樹脂とコーヒー粕とを直接に混合して、成型品を得ようとすると、汎用樹脂とコーヒー粕との界面で剥離(デラミネーション)が起こってしまい、汎用樹脂中にコーヒー粕を均一に分散することができないという課題があった。そのため、コーヒー粕を、たとえば、ミルなどにより、予め約30μm程度に粉砕して使用する必要があった。しかしながら、このような方法を採用した場合においても、汎用樹脂とコーヒー粕との界面で剥離(デラミネーション)の防止効果は十分でなく、しかも、微粉砕コスト等の処理コストが高くなってしまうという問題や、得られる微粉の取扱性が悪化してしまうという問題があった。
【0006】
さらに、上記のように、コーヒー粕を予め約30μm程度に粉砕し、微粉化した場合においては、汎用樹脂と微粉化されたコーヒー粕とを、ミル等で混合、粉砕する際に、コーヒー粕の有している油分により、次のような問題もあった。すなわち、ミル等で混合、粉砕する際に、コーヒー粕の油分により、スクリーンメッシュや射出機のストレーナーが目詰まりしてしまい、そのため、たとえば50kg以上程度の大量生産ができないという問題や、スクリーンメッシュやストレーナーの洗浄が必要となるという問題があり、結果として、処理コストの高騰を招来していた。
【0007】
【特許文献1】特開2001−81201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、コーヒー粕を含有する成型品を製造するに際して、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等の成型性に優れ、比較的に安価な汎用樹脂を使用した場合においても、コーヒー粕を成型品中に均一に分散することができ、良好な成型品を与えることができる成型品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、まず、コーヒー粕と、特定の樹脂(第1樹脂)とを、混合、粉砕、常温造粒して、コーヒー粕と特定の樹脂(第1樹脂)とを含有するペレットを製造し、次いで、このペレットを、成型性に優れた樹脂(第2樹脂)中に分散させることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る成型品の製造方法は、
コーヒー粕を含有する成型品を製造する方法であって、
コーヒー粕と第1樹脂とを混合、造粒して、コーヒー粕と第1樹脂とを含有するペレットを得る工程と、
前記ペレットと第2樹脂とを混合、成形する工程と、を有し、
前記第1樹脂として、スチレン系エラストマーおよび/または水添スチレン系エラストマーを用いることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記コーヒー粕と、前記第1樹脂と、の比率は、重量比で、コーヒー粕:第1樹脂=1:3〜1:1の範囲とする。なお、本発明で使用される前記コーヒー粕は、通常、水分を含んでおり、本発明においては、たとえば、水分を含んだ状態のコーヒー粕(すなわち、水分+コーヒー残渣)100重量%に対して、15〜30重量%の範囲で含有するコーヒー粕を使用する。そのため、本発明においては、上記比率におけるコーヒー粕の重量は、水分を含んだ状態のコーヒー粕の重量で定義する。
【0012】
本発明においては、前記第1樹脂としては、スチレン系エラストマーおよび/または水添スチレン系エラストマーを用いれば良く特に限定されず、前記コーヒー粕と前記第2樹脂との相溶性が高いという性質を有していれば良いが、さらにゴム弾性を有していることが好ましい。このような樹脂としては、たとえば、芳香族ビニルと、ジエン系化合物と、を主成分として含有するブロック共重合体および/または芳香族ビニルと、ジエン系化合物と、を主成分として含有するブロック共重合体を水素添加処理したものなどが好適に用いられる。
【0013】
前記第2樹脂としては、特に限定されないが、成型性に優れているとともに、比較的に安価であり、しかも汎用性が高いという点より、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ナイロン、ポリカーボネート(PC)、ナイロン(NL)、アクリル樹脂(AC)、塩化ポリビニル樹脂(PVC)などが挙げられる。これらのなかでも、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂が好ましく用いられる。
【0014】
あるいは、本発明においては、前記第2樹脂として、各種生分解性樹脂を使用しても良い。生分解性樹脂を使用することにより、環境負荷の低減を図ることが可能となる。さらに、本発明においては、上記したポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の成型性に優れ、比較的に安価な汎用樹脂とともに、各種生分解性樹脂を混合して用いても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法は、コーヒー粕を、予め特定の第1樹脂中に、均一に分散させ、ペレット化し、次いで得られたペレットを第2樹脂とともに混合することにより成型品を得るという工程を採用している。そのため、従来のように、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等の成型性に優れ、比較的に安価な汎用樹脂(これら汎用樹脂は、本発明で使用される第2樹脂の一例でもある。)と、コーヒー粕と、を直接に混合した場合における問題、すなわち、汎用樹脂とコーヒー粕との界面での剥離(デラミネーション)の発生の問題を有効に解決することができる。そのため、得られる成型品中にコーヒー粕を均一に分散させることができ、コーヒー粕の色合いや艶消し効果により、成型性だけでなく、意匠性にも優れた成型品を得ることができる。
【0016】
また、本発明の製造方法においては、コーヒー粕を、予め特定の第1樹脂中に均一に分散させるため、コーヒー粕を、含水率が比較的に高い状態(たとえば、15〜30重量%)で使用することが可能となる。そのため、コーヒー粕の乾燥に要するコストを削減することができる。
【0017】
さらに、本発明の製造方法においては、コーヒー粕を予め粉砕することなく使用することができる。そのため、たとえば、ミル等により、コーヒー粕を約30μm程度に粉砕する必要がないため、この点からも処理コストの低減が可能となる。さらには、微粉砕した場合におけるコーヒー粕の取扱性の低下も起こらない。
【0018】
特に、本発明においては、コーヒー粕の微粉砕時に生じる油分を、上記した特定の第1樹脂に吸着させることができる。そのため、コーヒー粕と第1樹脂とを予め混合、粉砕することにより、コーヒー粕から生じる油分を、この第1樹脂に吸着させながら、粉砕処理を行うことができ、結果として、コーヒー粕から生じる油分が原因となるスクリーンメッシュや射出機のストレーナーの目詰まりを有効に防止することができる。そのため、本発明によると、たとえば50kg以上の規模での生産はもちろんのこと、1,000kg以上程度という規模での大量生産が可能となり、さらにはスクリーンメッシュやストレーナーの洗浄に要するコストを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る成型品の製造工程を示す図である。
【0020】
本実施形態においては、焙煎コーヒー豆からのコーヒー抽出液を抽出する際における抽出残渣としてのコーヒー粕を用いて、このコーヒー粕を樹脂化し、成型品とすることにより、コーヒー粕を再利用する方法を説明する。
【0021】
本発明の一実施形態においては、抽出残渣としてのコーヒー粕を再利用するに際して、図1に示すような工程を採用する。
すなわち、まず、コーヒー粕を乾燥し、得られた乾燥後のコーヒー粕と、第1樹脂と、を混合し、粗粉砕する。そして、得られた粗粉砕物について、さらに微粉砕を行い、造粒することにより、粗粉砕物をペレット化し、コーヒー粕と第1樹脂とを含むペレット(マスターバッチ)を得る。
そして、このようにして得られたペレット(マスターバッチ)を、第2樹脂とともに、混合し、最後にこの混合物を所望の形状に成型し、成型品(再利用品)とする。
以下、詳細に説明する。
【0022】
まず、焙煎コーヒー豆からのコーヒー抽出液を抽出する際における抽出残渣としてのコーヒー粕を準備する。このような抽出残渣としてのコーヒー粕は、水分を含んだ状態となっており、通常、抽出残渣としてのコーヒー粕中の含水量は、水分を含んだ状態のコーヒー粕(すなわち、水分+コーヒー残渣)100重量%に対して、60〜90重量%程度となっている。そのため、まず、本実施形態では、コーヒー粕中に含まれている水分を低減するために、コーヒー粕を乾燥する。
【0023】
乾燥は、乾燥機を使用して行っても良いが、本実施形態では、コーヒー粕の含水量が比較的に多い場合でも、以下に説明するように、第1樹脂や第2樹脂中に均一に分散することができるため、室温で乾燥する方法を採用することもできる。室温で乾燥することにより、乾燥に要するコストの低減が可能となる。室温で乾燥する場合の乾燥時間は、好ましくは、24〜48時間程度である。あるいは、乾燥機を使用して乾燥を行う場合には、温度80〜120℃の条件で乾燥を行うことが好ましい。乾燥温度が高すぎると、コーヒー粕の有する香りや色あいが劣化するおそれがある。
【0024】
本実施形態では、乾燥により、乾燥後のコーヒー粕中の含水量を、水分を含んだ状態のコーヒー粕(すなわち、水分+コーヒー残渣)100重量%に対して、好ましくは、15〜30重量%の範囲、より好ましくは12〜18重量%の範囲とする。本実施形態においては、以下に説明するように、コーヒー粕を、まず特定の第1樹脂中に分散させるため、上記のように含水量が比較的に多い場合であっても、コーヒー粕の分散を良好に行うことができる。そして、含水量が比較的に多い状態での分散が可能となることにより、乾燥に要するエネルギーを低減することができ、結果として、処理コストを低く抑えることができる。なお、コーヒー粕に含まれている水分は、後に説明する造粒工程で除去されることとなる。
【0025】
乾燥によりコーヒー粕中の含水量を低くしすぎると、乾燥に要するコストが上昇してしまうという問題の他、コーヒー粕の有する微細孔に、悪臭物質等をトラップしてしまうため、得られる成型品から不快臭が発生してしまい、製品価値が低下してしまうというおそれがある。一方、コーヒー粕中の含水量が多すぎると、第1樹脂中への分散が困難となってしまう。
【0026】
次いで、乾燥により、所定の含水量としたコーヒー粕と、第1樹脂とを、混合後、粗粉砕し、続いて微粉砕する。
【0027】
本実施形態においては、コーヒー粕を、後述する第1樹脂に予め分散するという工程を採用するため、上記にて乾燥したコーヒー粕を、予め粉砕することなく、第1樹脂とともに、混合、粉砕することができる。すなわち、抽出残渣としてのコーヒー粕を約300μmの粒径のまま使用することができる。そのため、コーヒー粕を予め冷凍粉砕や専用ミル等により粉砕処理する必要がなくなるため、処理コストの低減を図ることができる。なお、従来においては、たとえば、抽出残渣としてのコーヒー粕を粉砕することなく、約300μm程度の粒径のまま使用すると、均一分散が極めて困難であるという問題があった。これに対して、本実施形態は、このような問題を有効に解決するものでもある。
【0028】
本実施形態では、コーヒー粕は、第1樹脂とともに、粗粉砕および微粉砕されることにより、粉砕されていくこととなる。粗粉砕および微粉砕は、得られる粉砕物中のコーヒー粕の平均粒子径が、好ましくは30〜80μm程度となるように行えば良い。
【0029】
また、コーヒー粕と、第1樹脂と、の比率は、重量比で、好ましくは、コーヒー粕:第1樹脂=1:3〜1:1の範囲、より好ましくは1:2〜1:1の範囲とする。なお、上記比率において、コーヒー粕の重量は、水分を含んだ状態のコーヒー粕(すなわち、水分+コーヒー残渣)の重量を意味する。
【0030】
コーヒー粕の比率が多すぎると、第1樹脂とともに、ペレット化した際に得られるペレットの、第2樹脂への分散性が悪化する傾向にある。一方、コーヒー粕の再利用という観点からは、コーヒー粕の比率が高い方が好ましいため、コーヒー粕の比率の下限は、上記した範囲とすることが好ましい。
【0031】
なお、最終製品である成型品に含有される乾燥状態のコーヒー粕の含有量は、成型品全体(すなわち、コーヒー粕、第1樹脂、および後述する第2樹脂との合計)100重量%に対して、好ましくは1.5〜30重量%程度、より好ましくは10〜15重量%程度である。
【0032】
上記第1樹脂としては、スチレン系エラストマーおよび/または水添スチレン系エラストマーを用いれば良く特に限定されず、コーヒー粕と後に説明する第2樹脂との相溶性が高いという性質を有していれば良いが、さらにゴム弾性を有していることが好ましい。
【0033】
このような第1樹脂を使用することにより、後に造粒を行う際に、コーヒー粕を第1樹脂中に均一に分散させることができ、さらには、コーヒー粕に含有されているエキス(アロマ、香り、色素等)を良好に、この第1樹脂に吸着させることができる。一方で、たとえば、コーヒー粕と、ポリエチレンやポリプロピレン等の汎用樹脂と、を直接に混合し、造粒した場合においては、汎用樹脂とコーヒー粕との界面で剥離(デラミネーション)が起こってしまい、汎用樹脂中にコーヒー粕を均一に分散することができなかった。すなわち、本実施形態は、このような不具合を有効に解決するものである。
【0034】
第1樹脂としてのスチレン系エラストマーとしては、具体的には、芳香族ビニルと、ジエン系化合物と、を主成分として含有するブロック共重合体などが挙げられる。また、水添スチレン系エラストマーとしては、芳香族ビニルと、ジエン系化合物と、を主成分として含有するブロック共重合体を水素添加処理したものなどが挙げられる。
【0035】
上記芳香族ビニルは、ポリスチレンブロック(S)を形成する。芳香族ビニルとしては、特に限定されないが、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられる。
【0036】
一方、ジエン系化合物は、エラストマーブロック(E)を形成する。ジエン系化合物としては、特に限定されないが、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。なお、エラストマーブロック(E)中には、これらジエン系化合物とともに、1−ブテンや、エチレン等の非ジエン系の不飽和単量体が共重合されていても良い。
【0037】
ブロック共重合体中におけるポリスチレンブロック(S)と、エラストマーブロック(E)との結合様式に特に制限はないが、これらのブロックが、S−E、S−E−Sの形状のブロック共重合体が、好ましい。
【0038】
また、ブロック共重合体中におけるポリスチレンブロック(S)と、エラストマーブロック(E)との比は、重量比で、ポリスチレンブロック(S):エラストマーブロック(E)=10:90〜60:40の範囲が好ましい。ポリスチレンブロック(S)の比が上記範囲より小さい場合には、コーヒー粕との親和性が低下してしまう傾向にある。一方、エラストマーブロック(E)の比が上記範囲より小さい場合には、得られる成型品の剛性が低下してしまう傾向にある。
【0039】
なお、このようなブロック共重合体は、たとえば、アニオン重合により、芳香族ビニル化合物とジエン化合物を交互に重合させることにより得ることができる。
【0040】
第1樹脂としてのスチレン系エラストマー、水添スチレン系エラストマーの分子量は、特に限定されないが、数平均分子量で、好ましくは30,000〜250,000の範囲、より好ましくは45,000〜180,000の範囲である。
【0041】
また、第1樹脂を、水添スチレン系エラストマーとする場合には、上記したエラストマーブロック中のジエン系化合物由来の二重結合を、水素化したものを使用すれば良い。
【0042】
なお、本実施形態においては、コーヒー粕と、第1樹脂と、混合、粉砕(粗粉砕および微粉砕)する際に、必要に応じて(たとえば、流れ性や作業性を向上させる等の目的のために)各種添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、たとえば、ポリオレフィン−スチレングラフト共重合体、無水マレイン共重合体、エチレンコポリマー、エチレンターポリマーなどが挙げられる。添加剤の含有量は、コーヒー粕と第1樹脂との合計の重量を100重量部とした場合に、3〜5重量部とすることが好ましい。
【0043】
次いで、上記にて得られた微粉砕物を、造粒し、ペレット化することにより、コーヒー粕と第1樹脂とを含有するペレット(マスターバッチ)を得る。ペレットの大きさは、特に限定されないが、通常、直径3〜5mm程度、高さ5〜30mm程度の円柱状とする。また、造粒、ペレット化する方法としては、たとえば、ペレタイザーを使用する方法などが挙げられる。なお、本実施形態においては、この造粒工程における造粒による摩擦により、コーヒー粕に含有されていた水分が除去されることとなる。そのため、得られるペレット中における含水率は、コーヒー粕(水分を含んだ状態での重量、すなわち、水分+コーヒー残渣)全体100重量%に対して、5〜7重量%に低減されている。
【0044】
次いで、上記にて得られたコーヒー粕と第1樹脂とを含有するペレットと、第2樹脂とを、タンブラーなどを用いて混合する。上記にて得られたペレットは、マスターバッチとして、第2樹脂に添加されることとなる。
【0045】
第2樹脂としては、成型性に優れた樹脂であれば特に限定されないが、成型性に優れているとともに、比較的に安価であり、汎用性が高いという点より、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ナイロン、ポリカーボネート(PC)、ナイロン(NL)、アクリル樹脂(AC)、塩化ポリビニル樹脂(PVC)などが挙げられる。これらのなかでも、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂が好ましく用いられる。
【0046】
また、コーヒー粕と第1樹脂とを含有するペレット(マスターバッチ)と、第2樹脂と、の比率は、重量比で、好ましくは、ペレット(マスターバッチ):第2樹脂=1:1〜1:100の範囲、より好ましくは1:10〜1:20の範囲とする。ペレット(マスターバッチ)の含有量が少なすぎると、得られる成形体の剛性が悪化してしまう傾向にある。一方、ペレット(マスターバッチ)の含有量が多すぎると、得られる成形体の強度が悪化してしまう傾向にある。
【0047】
最後に、上記にて得られた混合物を、たとえば、射出成型により、所望の形状に成型し、成型品(再利用品)を得る。成型品としては、特に限定されないが、たとえば、牛乳箱、コンテナ、鉢、パレット、ダストボックス、自動販売機の部品、文房具、団扇のグリップなどの様々な成形品を得ることができる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0049】
たとえば、上述した実施形態では、コーヒー粕として、焙煎コーヒー豆からのコーヒー抽出液を抽出する際における抽出残渣を用いた態様を例示したが、コーヒー粕としては、このような抽出残渣だけでなく、期限切れレギュラーコーヒー豆を用いることも可能である。
【0050】
また、上述した実施形態では、第2樹脂として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の汎用樹脂を使用する態様を例示したが、第2樹脂として、各種生分解性樹脂を使用しても良い。このような生分解性樹脂としては、特に限定されないが、酢酸セルロース(CA)、カプロラクトン―ブチレンサクシレート(CL−BS)、ポリブチレンアジペート・テレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート変性(PBSA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネートカーボネート変性(PEC)、ポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリビニルアルコール(PVA)などが挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0052】
実施例1
まず、焙煎コーヒー豆からのコーヒー抽出液を抽出する際における抽出残渣としてのコーヒー粕:80kgを準備した。次いで、このコーヒー粕を、室温、48時間の条件で乾燥することにより、乾燥後のコーヒー粕(乾燥後の重量:16kg)を得た。なお、本実施例においては、乾燥後のコーヒー粕中の水分量は、水分を含んだ状態のコーヒー粕(すなわち、水分+コーヒー残渣)100重量%に対して、16重量%であった。
【0053】
次いで、乾燥後のコーヒー粕16kgと、第1樹脂としてのスチレン系エラストマー(スチレンと、イソプレンと、のブロック共重合体)32kgとを、混合し、ピンミルを用いて粗粉砕し、次いで、ターボミルを用いて微粉砕して、最後に、ペレタイザーにより、得られた微粉砕物を造粒し、ペレット化することにより、直径5mm、高さ7〜8mmの円柱状のペレット(マスターバッチ)を得た。
【0054】
次いで、上記にて得られたペレット(マスターバッチ):5kgと、ポリプロピレン(直径約6mmの球形状)75kgと、を混合した。そして、得られた混合物を射出成型機により、射出成型することにより、直径10mmの円筒形状の射出成型品を製造したところ、コーヒー粕が均一に分散し、意匠性および成型性に優れた良好な成型品を得ることができた。
【0055】
なお、実施例1では、第1樹脂としてスチレン系エラストマーを使用した例を示したが、水添スチレン系エラストマーを使用した場合においても、同様の結果が得られた。また、実施例1では、第2樹脂として、ポリプロピレンを使用した例を例示したが、第2樹脂として、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂を使用した場合にも同様の結果が得られた。
【0056】
比較例1
コーヒー粕を、予め第1樹脂とともに予めペレット化することなく、直接、第2樹脂としてのポリプロピレンに混合し、粗粉砕および微粉砕を行い、その後、射出成型した以外は、実施例1と同様にして、成型品を製造した。なお、本実施例においては、コーヒー粕を乾燥する際の条件を変更して、水分量を、水分を含んだ状態のコーヒー粕(すなわち、水分+コーヒー残渣)100重量%に対して、7重量%としたコーヒー粕を使用した。
【0057】
その結果、コーヒー粕と、ポリプロピレンと、が界面で剥離(デラミネーション)してしまい、良好な成型品を得ることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る成型品の製造工程を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー粕を含有する成型品を製造する方法であって、
コーヒー粕と第1樹脂とを混合、造粒して、コーヒー粕と第1樹脂とを含有するペレットを得る工程と、
前記ペレットと第2樹脂とを混合、成形する工程と、を有し、
前記第1樹脂として、スチレン系エラストマーおよび/または水添スチレン系エラストマーを用いることを特徴とする成型品の製造方法。
【請求項2】
前記コーヒー粕と、前記第1樹脂と、の比率を、重量比で、コーヒー粕:第1樹脂=1:3〜1:1の範囲とする請求項1に記載の成型品の製造方法。
【請求項3】
前記第1樹脂が、芳香族ビニルと、ジエン系化合物と、を主成分として含有するブロック共重合体および/または芳香族ビニルと、ジエン系化合物と、を主成分として含有するブロック共重合体を水素添加処理したものである請求項1〜3のいずれかに記載の成型品の製造方法。
【請求項4】
前記第2樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンおよびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂から選択される1種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の成型品の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−277436(P2007−277436A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106856(P2006−106856)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(399104822)株式会社ジャパンビバレッジ (7)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】