説明

成型用延伸ポリエステルフィルム

【課題】成型性と形態安定性を好適に両立する成型用基材を提供する。
【解決手段】テレフタル酸成分もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分と、エチレングリコール成分を50モル%以上含み、スピログリコール成分を2〜20モル%含み、スピログリコール成分以外の共重合成分を5〜30モル%含む、成型用延伸ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成型用延伸ポリエステルフィルムに関する。詳しくは、形態保持性と成型性を両立した成型用延伸ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、成型加工に適した基材フィルムとしてポリエステル、ポリカーボネートおよびアクリル樹脂よりなる未延伸シートが使用されている。なかでも、ポリエステル樹脂よりなる未延伸シートは透明性がよく、経済性に優れる(特許文献1)。しかしながら、これらは未延伸シートであるため、耐溶剤性が充分ではなく市場の高度な要求を満足させるまでには至っていない。また、耐溶剤性に優れた特性を有する延伸ポリエチレンテレフタレートを用いることも提案されている(特許文献2)。しかしながら、高度な成型性の要求には対応できていない。そこで、耐溶剤性と成型性とを両立するため、共重合ポリエステル樹脂を原料として延伸ポリエステルフィルムが提案されている(特許文献3)。
【0003】
一方、共重合成分にスピログリコール成分を用いることで耐熱性を奏するフィルムが開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−249652号公報
【特許文献2】特開平11−268215号公報.
【特許文献3】特開2004−75713号公報
【特許文献4】特開2008−260965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成型用フィルムには印刷などの加飾を施されたのち、成型加工がなされる場合がある。近年は生産効率向上の観点から、印刷工程の短縮化のため、印刷後の乾燥処理などを高温で行なう方式が増えている。例えば、これまで乾燥温度は60℃程度であったところ、上記の方式では80〜90℃程度の条件で行われるようになってきた。そのため、成型用フィルムとしてはより高温(80〜90℃)における形態安定性が求められる。一方、成型性においては100〜120℃の比較的低温の温度域での成型性も求められる。しかし、上記特許文献1〜3で得られる成型用ポリエステルフィルムは100〜120℃の温度領域での軟らかさが不足しているか、90℃以下の温度では撓みやすい傾向があった。また、特許文献4で得られるフィルムは脆性が高く、成型性を有するものではなかった。
【0006】
本発明の目的は、100℃以上における成型性と90℃以下における形態安定性の両立により、比較的高温での形態安定性を保持しながら、比較的低温での成型が可能であるフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決することができる本発明の成型用延伸ポリエステルフィルムは、以下の構成からなる。
【0008】
本発明の第1の発明は、テレフタル酸成分もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分と、エチレングリコール成分を50モル%以上含み、スピログリコール成分を2〜20モル%含み、スピログリコール成分以外の共重合成分を5〜30モル%含む、成型用延伸ポリエステルフィルムである。
本発明の第2の発明は、前記フィルムのガラス転移温度が80〜150℃であり、融点が200〜255℃である前記成型用延伸ポリエステルフィルムである。
本発明の第3の発明は、フィルムの長手方向及び幅方向における弾性率がいずれも25℃において1〜5GPaである前記成型用延伸ポリエステルフィルムである。
本発明の第4の発明は、スピログリコール成分およびスピログリコール以外の共重合成分を含む共重合ポリエステルと、ホモポリエステルとを混合してなる前記成型用延伸ポリエステルフィルムである。
本発明の第5の発明は、スピログリコール成分を共重合成分として含む共重合ポリエステルと、スピログリコール以外の共重合成分を含む共重合ポリエステルと、ホモポリエステルとを混合してなる前記成型用延伸ポリエステルフィルムである。
本発明の第6の発明は、前記スピログリコール以外の共重合成分が、分岐状脂肪族グリコール、脂環族グリコール、ソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸のいずれか1種を含む前記成型用延伸ポリエステルフィルムである。
本発明の第7の発明は、フィルム中に紫外線吸収剤を含む前記成型用延伸ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の成型用延伸ポリエステルフィルムは、90℃程度の温度領域でも良好な形態安定性を有し、さらに100℃以上の温度領域でも良好な成型性を奏する。そのため、成型用途に好適である。
【0010】
また、フィルム中に紫外線吸収剤を含有させ、紫外領域の透過率を低減させることにより、耐光性を付与することができ、特に屋外で使用される用途(自動車の外装用または建材用部材)の成型材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の成型用延伸ポリエステルフィルムは、テレフタル酸成分もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分と、エチレングリコール成分を50モル%以上含み、スピログリコール成分を2〜20モル%含み、スピログリコール成分以外の共重合成分を5〜30モル%含むポリエステル樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0012】
本発明のフィルムを構成するポリエステル樹脂組成物は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分と、グリコール成分としてエチレングリコール成分を合わせ50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上含む。これにより本発明のフィルムはポリエステルフィルムとしての強度や透明性を好適に保持することができる。これらの成分はポリエステル樹脂組成物中に他のジカルボン酸成分/グリコール成分と共重合した状態であってもよいし、ホモポリエステルとして含まれてもよい。ホモポリエステルとしてはポリエチレンタレフタレートもしくはポリエチレンナフタレートが挙げられる。
【0013】
本発明のフィルムを構成するポリエステル樹脂組成物は、スピログリコール成分を2〜20モル%、好ましくは3〜15モル%含む。スピログリコールとは、下記化1に示す構造を持ったジオールの3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンである。スピログリコール成分はグリコール成分の共重合体成分としてスピロ環構造をポリエステル中に含まれる。スピログリコールは例えば三菱ガス化学社などから商業的に入手することができる。
【0014】
【化1】

【0015】
なお、後述の実施例の表1では各成分のモル比を酸成分とグリコール成分に分けて表示しているが、本発明で規定するモル比(モル%)はポリエステル樹脂を構成する酸成分およびグリコール成分をあわせた全成分量に対する比率として規定するものである。ポリエステル樹脂はグリコール成分と酸成分を同量含むため、酸成分とグリコール成分に分けて算出した場合は、酸成分およびグリコール成分をあわせた全成分量に対するモル比の2倍の数になる。
【0016】
本発明はこのような特定のグリコール成分を上記範囲で含むことにより、従来の処方では軟化する温度である90℃の領域においても十分な耐熱性を得ることができる。スピログリコール成分により耐熱性が得られる理由として、スピログリコール成分が比較的剛直な構造を有するが挙げられる。さらに、スピログリコール成分はポリエステル分子鎖中での自由回転が制限される。そのため、ポリエステル分子鎖の軟化が起こりにくくなり、ガラス転移点温度が上昇する結果、耐熱性が向上するものと考えられる。また、スピログリコール成分は比較的嵩が高く、分子周りに大きな自由空間が確保される。そのため、成型性の点でも良好な結果を奏することができる。スピログリコール成分の含有量が上記下限以上であると、スピログリコール成分による耐熱性向上の効果が得られやすい。また、スピログリコール成分が上記上限以下であると、常温でも安定的に形状を保持する点で好ましい。
【0017】
本発明のフィルムを構成するポリエステル樹脂組成物は、スピログリコール成分以外の共重合成分を5〜30モル%、好ましくは8〜25モル%、より好ましくは10〜20モル%含む。上記スピログリコール成分は比較的剛直な構造を有する。よって、共重合成分としてスピログリコール成分のみを有する場合は脆性が生じやすく、フィルムの製膜時に破断が生じるやすくなる。本発明はスピログリコール成分以外の共重合成分を上記範囲で含むことにより、フィルム製膜での破断が低減するとともに、100℃以上の温度領域での良好な成型性を奏することができる。スピログリコール成分以外の共重合成分が上記下限以上であると脆性が抑制され成型しやすくなる。一方、スピログリコール成分以外の共重合成分が上記上限以下であるとポリエステル樹脂組成物の融点が低く維持され、90℃程度の温度領域でも良好な形態安定性を保持しやすくなる。
【0018】
スピログリコール成分以外の共重合成分は、スピログリコール、エチレングリコール、そして酸成分としてテレフタル酸成分を用いる場合はテレフタル酸(もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を用いる場合は2,6−ナフタレンジカルボン酸)以外のグリコール成分もしくはジカルボン酸成分であれば良く、また1種類であっても2種以上を併用しても良い。本発明で用いる好適なスピログリコール成分以外の共重合成分としては、グリコール成分に分岐状脂肪族グリコール又は脂環族グリコールが挙げられ、ジカルボン酸成分としては芳香族ジカルボン酸成分や長鎖脂肪族系ジカルボン酸が挙げられる。これらの共重合成分はいずれも嵩高い分子構造をしていることから、ガラス転移点温度以上で急激に軟化することが可能になり、100℃以上における成型性を好適に得ることが出来る。
【0019】
分岐状脂肪族グリコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどが例示される。脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどが例示される。これらのなかでも、スピログリコール成分との相溶性の点からネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。
【0020】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体が好適である。また、長鎖脂肪族系ジカルボン酸としてはコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが好適である。これらのなかでも、スピログリコール成分との相溶性の点からイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸が特に好ましい。
【0021】
フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中の共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分と、グリコール成分としてエチレングリコール成分と、スピログリコール成分および/もしくは上記スピログリコール成分以外の共重合成分を構成成分とする。本発明で用いる共重合ポリエステルは共重合成分としてスピログリコール成分および上記スピログリコール成分以外の共重合成分を含んでも良いし、スピログリコール成分を含む共重合ポリエステルとスピログリコール成分以外の共重合成分を含む共重合ポリエステルをブレンドしたものであっても良い。この場合の混合比は、適宜上記成分のモル%比の範囲内で制御することができる。これらのなかでも、スピログリコール成分および上記スピログリコール成分以外の共重合成分を両方含む共重合ポリエステルは、ブレンドの場合よりも各成分の相溶性に好ましく、成型性と形態安定性をより好適に両立しうる。
【0022】
本発明のフィルムを構成するポリエステル樹脂組成物は、スピログリコール成分およびスピログリコール以外の共重合成分を含む共重合成ポリエステルであっても良いし、スピログリコール成分およびスピログリコール以外の共重合成分を含む共重合ポリエステルとホモポリエステルとを混合したブレンドであっても良いし、スピログリコール成分を共重合成分として含む共重合ポリエステルとスピログリコール以外の共重合成分を含む共重合ポリエステルとホモポリエステルとを混合したブレンドであっても良い。ブレンドしてフィルムを製膜することは、成型性を維持しながら透明性と高い融点(耐熱性)を実現する上で好ましい。いずれにしても、各成分のモル%が上記範囲内であることが重要である。なお、上記各成分の含有量はフィルム試料のNMR成分分析や質量分析により測定することができる。
【0023】
前記ポリエステルを製造する際に用いる触媒としては、例えば、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、チタン/ケイ素複合酸化物、ゲルマニウム化合物などが使用できる。これらのなかでも、チタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物が触媒活性の点から好ましい。
【0024】
前記ポリエステルを製造する際に、熱安定剤としてリン化合物を添加することが好ましい。前記リン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸などが好ましい。
【0025】
前記ポリエステルは、成型性、製膜安定性の点から、固有粘度が0.50dl/g以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.55dl/g以上、特に好ましくは0.60dl/g以上である。固有粘度が0.50dl/g未満では、成型性が低下する傾向がある。また、メルトラインに異物除去のためのフィルターを設けた場合、溶融樹脂の押出時における吐出安定性の点から、固有粘度の上限を1.0dl/gとすることが好ましい。
【0026】
本発明のポリエステルフィルムの融点は、耐熱性及び成型性の点から、200℃以上255℃未満であることが好ましく、210℃以上254℃以下であることがより好ましく、220℃以上253℃以下がさらに好ましい。融点を上記範囲にすることで、100℃以上の温度領域での成型性を好適に奏する。融点が上記下限以上である場合は形態保持の点で好ましく、融点が上記上限未満の場合は成型性の点から好ましい。融点を上記範囲に制御するためにはスピログリコール以外の共重合成分の含有量を調整することが好ましい。具体的にはスピログリコール以外の共重合成分の含有量が多くなると、ポリエステルフィルムの融点は低くなる。
【0027】
本発明のポリエステルフィルムのガラス転移温度は、高温での形態保持の点から、80℃以上150℃以下であることが好ましく、82℃以上140℃以下であることがより好ましく、85℃以上130℃以下がさらに好ましい。ガラス転移温度を上記範囲にすることで、90℃程度の温度領域での形態安定性を好適に奏する。ガラス転移温度が上記下限以上である場合は形態保持の点で好ましく、ガラス転移温度が上記上限未満の場合は成型性の点から好ましい。ガラス転移温度を上記範囲に制御するためにはスピログリコールの含有量を調整することが好ましい。具体的にはスピログリコールの含有量が多くなると、ポリエステルフィルムのガラス転移温度は高くなる。
【0028】
本発明ではスピログリコール以外の共重合成分を含むことでポリエステルフィルムの融点が下がり、好適な成型性が得られる。しかし、共重合成分のみではガラス転移温度の低下も招くため、高温での形態保持性が低下する。そこで、本発明では剛直な構造を有するスピログリコール成分を併用することで、ガラス転移温度を保持し、成型性と高温での形態保持性との両立を図ることができる。
【0029】
フィルムに印刷を施した場合、屋外環境では太陽光により印刷層が劣化する。また、長期間の屋外環境での使用ではフィルムそのものもの太陽光により劣化する。そこで、屋外環境でフィルムの耐光性を付与するために、成型用ポリエステルフィルムに紫外線吸収剤を配合することが好ましい。紫外線吸収剤としては、紫外線吸収作用を有するものであれば、無機系、有機系のどちらでも構わない。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等、及びその組み合わせが挙げられる。耐熱性の観点からはベンゾトアゾール系、環状イミノエステル系が好ましい。2種以上の紫外線吸収剤を併用した場合には、別々の波長の紫外線を同時に吸収させることができるので、いっそう紫外線吸収効果を改善することができる。
【0030】
無機系紫外線吸収剤としては、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物の超微粒子類が挙げられる。
【0031】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0032】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オンなどが挙げられる。
【0033】
紫外線吸収剤の添加量としては、0.01質量%以上10%質量以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。屋外長期間使用する場合、紫外線吸収剤の添加量が上記上限より少ないと紫外線によりフィルムが劣化するため好ましくない。また、添加量が多いとフィルムの透明性が低くなるため好ましくない。
【0034】
また、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性を改善するために、フィルム表面に凹凸を形成させることが好ましい。フィルム表面に凹凸を形成させる方法としては、一般にフィルム中に粒子を含有させる方法が用いられる。
【0035】
前記粒子としては、平均粒子径が0.01〜10μmの内部析出粒子、無機粒子及び/又は有機粒子などの外部粒子が挙げられる。平均粒子径が10μmを越える粒子を使用すると、フィルムの欠陥が生じ易くなり、意匠性や透明性が悪化する傾向がある。一方、平均粒子径が0.01μm未満の粒子では、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性が低下する傾向がある。前記粒子の平均粒子径は、滑り性や巻き取り性などのハンドリング性の点から、下限は0.10μmとすることがさらに好ましく、特に好ましくは0.50μmである。一方、前記粒子の平均粒子径は、透明性や粗大突起によるフィルム欠点の低減の点から、上限は5μmとすることがさらに好ましく、特に好ましくは2μmである。
【0036】
なお、粒子の平均粒子径は、少なくとも200個以上の粒子を電子顕微鏡法により複数枚写真撮影し、OHPフィルムに粒子の輪郭をトレースし、該トレース像を画像解析装置にて円相当径に換算して算出する。
【0037】
前記外部粒子としては、例えば、湿式及び乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレー、ヒドロキシアパタイト等の無機粒子及びスチレン、シリコーン、アクリル酸類等を構成成分とする有機粒子等を使用することができる。なかでも、乾式、湿式及び乾式コロイド状シリカ、アルミナ等の無機粒子及びスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼン等を構成成分とする有機粒子等が、好ましく使用される。これらの内部粒子、無機粒子及び/又は有機粒子は二種以上を、本願発明で規定した特性を損ねない範囲内で併用してもよい。
【0038】
さらに、前記粒子のフィルム中での含有量は、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。0.001質量%未満の場合、フィルムの滑り性が悪化したり、巻き取りが困難となったりするなどハンドリング性が低下しやすくなる。一方、10質量%を越えると、粗大突起の形成、製膜性や透明性の悪化などの原因となりやすい。
【0039】
また、フィルム中に含有させる粒子は、一般的には屈折率がポリエステルと異なるため、フィルムの透明性を低下させる要因となる。成型品は意匠性を高めるために、フィルムを成型する前にフィルム表面に印刷が施される場合が多い。このような印刷層は、成型用フィルムの裏側に施されることが多いため、印刷鮮明性の点から、フィルムの透明性が高いことが要望されている。
【0040】
そのため、フィルムのハンドリング性を維持しながら、高度な透明性を得るために、主層の基材フィルム中に実質的に粒子を含有させず、表面層にのみ粒子を含有させた積層構造を有する積層フィルムを用いることが有効である。
【0041】
本発明のポリエステルフィルムは、他の機能を付与するために、種類の異なるポリエステルを用い、公知の方法で積層構造とすることができる。かかる積層フィルムの形態は、特に限定されないが、例えば、A/Bの2種2層構成、B/A/B構成の2種3層構成、C/A/Bの3種3層構成の積層形態が挙げられる。上記紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制する場合、中心層にのみ紫外線吸収剤を添加する態様も好ましい。また、透明性と加工性との両立の点から表面層にのみ上記粒子を添加する態様も好ましい。
【0042】
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、25℃での弾性率は常態における形態安定性の指標である。フィルムをロール状に巻くときおよび巻き出す時に、弛みや応力の発生しない適切な形態安定性を示していることが好ましい。本発明のフィルムの25℃での弾性率は、長手方向および幅方向とも好ましくは1〜5GPa、より好ましくは1.2〜4GPa、さらに好ましくは1.5〜3GPaである。
【0043】
本発明において、フィルムを延伸することで、フィルムとしての形態保持性を好適に奏することができる。なお、フィルムの延伸の有無は、例えば面配向度(△P)を計測することで特定できる。具体的には、本発明のフィルムの面配向度(△P)は好ましくは0.0001以上であり、より好ましくは0.001以上であり、さらに好ましくは0.01以上である。
【0044】
延伸ポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されないが、例えばポリエステル樹脂を必要に応じて乾燥した後、溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸シートを得た後、かかる未延伸シートを一軸もしくは二軸延伸する方法が例示される。
【0045】
二軸延伸方法としては、未延伸シートをフィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)に延伸、熱処理し、目的とする面内配向度を有する二軸延伸フィルムを得る方法が採用される。これらの方式の中でも、フィルム品質の点で、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸するMD/TD法、又は幅方向に延伸した後、長手方向に延伸するTD/MD法などの逐次二軸延伸方式、長手方向及び幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。また、同時二軸延伸法の場合、リニアモーターで駆動するテンターを用いてもよい。さらに、必要に応じて、同一方向の延伸を多段階に分けて行う多段延伸法を用いても構わない。
【0046】
二軸延伸する際のフィルム延伸倍率としては、長手方向と幅方向に1.6〜4.2倍とすることが好ましく、特に好ましくは1.7〜4.0倍である。この場合、長手方向と幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよいし、同一倍率としてもよい。長手方向の延伸倍率は2.8〜4.0倍、幅方向の延伸倍率は3.0〜4.5倍で行うことがより好ましい。
【0047】
本発明の成型用ポリエステルフィルムを製造する際の延伸条件としては、例えば、下記の条件を採用することが選択することが好ましい。
【0048】
縦延伸においては、後の横延伸がスムースにできるように、延伸温度は80〜120℃、延伸倍率は1.6〜4.0倍とすることがさらに好ましい。
【0049】
以上説明したように、本発明の成型用ポリエステルフィルムを用いることで、従来のポリエステルフィルムでは成型することが困難であった、成型時の成型圧力が10気圧以下の低圧下での真空成型や圧空成型などの成型方法においても、仕上がり性の良好な成型品を得ることができる。また、これらの成型法は成型コストが安いので、成型品の製造における経済性において優位である。したがって、これらの成型法に適用することが本発明の成型用ポリエステルフィルムの効果を最も有効に発揮することができる。
【0050】
一方、金型成型は金型や成型装置が高価であり、経済性の点では不利であるが、前記の成型法よりも複雑な形状の成型品が高精度に成型されるという特徴がある。そのため、本発明に用いられる成型用ポリエステルフィルムを用いて金型成型した場合は、従来のポリエステルフィルムに比べて、より低い成型温度で成型が可能で、かつ成型品の仕上がり性が改善されるという顕著な効果が発現される。
【0051】
さらに、このように成型された成型品は、常温雰囲気下で使用する際に、弾性および形態安定性(熱収縮特性、厚み斑)に優れ、そのうえ耐溶剤性や耐熱性に優れ、さらに環境負荷も小さいので、家電用銘板、自動車用銘板、ダミー缶、建材、化粧板、化粧鋼鈑、転写シートなどの成型部材として好適に使用することができる。
【0052】
なお、本発明の成型用ポリエステルフィルムは、前記の成型方法以外にも、プレス成型、ラミネート成型、インモールド成型、絞り成型、折り曲げ成型などの成型方法を用いて成型する成型用材料としても好適である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、各実施例で得られたフィルム特性は以下の方法により測定、評価した。
【0054】
(1)ヘーズ
JIS−K7136−2000に準拠し、ヘーズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
【0055】
(2)フィルムの厚み
ミリトロンを用い、1枚当たり5点を計3枚の15点を測定し、その平均値を求めた。
【0056】
(3)弾性率
フィルムの長手方向及び幅方向に対して、それぞれ長さ20mm及び幅5mmの短冊状に試料を片刃カミソリで切り出した。次いで、バイブロン試験機(アイティー計測制御株式会社製)を用いて評価した。評価により得られた貯蔵弾性率の値を弾性率とした。
【0057】
なお、測定は、温度範囲20℃から200℃、昇温速度10℃/min、周波数10Hzの条件にて行い、25℃での弾性率を測定した。
【0058】
(4)ガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)
示差走査熱量分析装置(マックサイエンス社製、DSC3100S)を用いて、各実施例の条件で押出した原料約7mgをサンプルパンに入れ、パンのふたをし、窒素ガス雰囲気下で室温から300℃に20℃/分の昇温速度で昇温して測定した。Tg(℃)はJIS−K7121−1987、9・3項に基づいて、融点は、9・1項に定義される融解ピーク温度(Tpm)、にて求めた。
【0059】
(5)耐光性
暗箱中で蛍光灯ランプ(松下電器(株)社製、U型蛍光灯FUL9EX)の直下3cmの位置に、オフセット印刷した印刷サンプルを、印刷サンプルの印刷面が裏側になるように置いた。次いで、連続2000時間の光照射を行い、印刷面側の光照射前後におけるカラー(a*、b*、L*)をもとに、JIS Z 8730に準拠し、色差(ΔE値)を測定した。色差(ΔE値)が小さいほど、光照射前後における色の変化が小さい、すなわち耐光性に優れていることを意味する。色差(ΔE値)で0.5以下であるものを○、それを超えるものは×とした。なお、色差(ΔE値)は下記の式で算出される。
ΔE=√(Δa+Δb+ΔL
【0060】
(6)成型性
(A)真空成型
フィルムに5mm四方のマス目印刷を施した後、500℃に加熱した赤外線ヒーターでフィルムを10〜15秒加熱した後、金型温度30〜100℃で真空成型を行った。なお、加熱条件は各フィルムに対し、上記範囲内で最適条件を選択した。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が50mmであり、底面部は直径が40mmで、深さが50mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
【0061】
最適条件下で真空成型した成型品5個について成型性及び仕上がり性を評価し、下記基準にてランク付けを行った。なお、○を合格とし、×を不合格とした。
○:(i) 成型品に破れがなく、
(ii) 角の曲率半径が1mmを超え1.5mm以下、または印刷ずれが0.1
mmを超え0.2mm以下で、
(iii)さらに×に該当する外観不良がなく、実用上問題ないレベルのもの
×:成型品に破れがあるもの、または破れがなくとも以下の項目(i)〜(iv)の
いずれかに該当するもの
(i) 角の曲率半径が1.5mmを超えるもの
(ii) 大きな皺が入り外観が悪いもの
(iii)フィルムが白化し透明性が低下したもの
(iv) 印刷のずれが0.2mmを超えるもの
【0062】
(B)圧空成型性
フィルムに5mm四方のマス目印刷を施した後、500℃に加熱した赤外線ヒーターでフィルムを10〜15秒加熱した後、金型温度30〜100℃で、4気圧の加圧下で圧空成型を行った。なお、加熱条件は各フィルムに対し、上記範囲内で最適条件を選択した。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が60mmであり、底面部は直径が55mmで、深さが50mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
【0063】
最適条件下で圧空成型した成型品5個について成型性及び仕上がり性を評価し、下記基準にてランク付けをした。なお、○を合格とし、×を不合格とした。
○:(i)成型品に破れがなく、
(ii)角の曲率半径が1mmを超え1.5mm以下、または印刷ずれが0.1
mmを超え0.2mm以下で、
(iii)さらに×に該当する外観不良がなく、実用上問題ないレベルのもの
×:成型品に破れがあるもの、または破れがなくとも以下の項目(i)〜(iv)の
いずれかに該当するもの
(i)角の曲率半径が1.5mmを超えるもの
(ii)大きな皺が入り外観が悪いもの
(iii)フィルムが白化し透明性が低下したもの
(iv)印刷のずれが0.2mmを超えるもの
【0064】
(C)金型成型性
フィルムに印刷を施した後、100〜140℃に加熱した熱板で4秒間接触加熱後、金型温度30〜70℃、保圧時間5秒にてプレス成型を行った。なお、加熱条件は各フィルムに対し、上記範囲内で最適条件を選択した。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が50mmであり、底面部は直径が40mmで、深さが30mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
【0065】
最適条件下で金型成型した成型品5個について成型性及び仕上がり性を評価し、下記基準にてランク付けをした。なお、○を合格とし、×を不合格とした。
○:(i)成型品に破れがなく、
(ii)角の曲率半径が1mmを超え1.5mm以下、または印刷ずれが0.1
mmを超え0.2mm以下で、
(iii)さらに×に該当する外観不良がなく、実用上問題ないレベルのもの
×:成型品に破れがあるもの、または破れがなくとも以下の項目(i)〜(iv)の
いずれかに該当するもの
(i)角の曲率半径が1.5mmを超えるもの
(ii)大きな皺が入り外観が悪いもの
(iii)フィルムが白化し透明性が低下したもの
(iv)印刷のずれが0.2mmを超えるもの
【0066】
(7)耐熱性
フィルムを150mm×50mmに切り出し、幅50mmの支柱の上にフィルムの長辺の中央部を置き、撓み量をサンプル両端の高さと支柱の高さの差として取った。サンプルを支柱ごと90℃に設定したオーブンの中に入れて30分おいた後に、サンプル両端の高さと支柱の高さの差を取った。オーブン処理前後の撓み量を比較し、撓み量が10mmを超えないものを○、超えるものを×とした。
【0067】
(8)耐溶剤性
25℃に調温したトルエンに試料を30分間浸漬し、浸漬前後の外観変化について下記の基準で判定し、○を合格とした。なお、ヘーズ値は前記の方法で測定した。
○:外観変化がほとんど無く、ヘーズ値の変化が1%未満
×:外観変化が認められる、あるいはヘーズ値の変化が1%以上
【0068】
実施例1
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位20モル%及びシクロヘキサンジメタノール単位60モル%及びスピログリコール単位20%を構成成分とする、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(A)と、固有粘度が0.69dl/gで、かつ平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカを0.08質量%、およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(N)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、チヌビン326)を1.0質量%含有するポリエチレンテレフタレートのチップ(B)をそれぞれ乾燥させた。さらに、チップ(A)とチップ(B)を50:50の質量比となるように混合した。次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから270℃で溶融押出し、表面温度40℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
【0069】
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に100℃で3.2倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、110℃で3.8倍延伸した。さらに、230℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0070】
実施例2
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位20モル%及びシクロヘキサンジメタノール単位40モル%及びスピログリコール単位40%を構成成分とする、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(C)と、ポリエチレンテレフタレートのチップ(B)を50:50の質量比となるように混合したこと、縦方向に115℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0071】
実施例3
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位50モル%及びナフタレン酸ジカルボン酸単位50モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位88モル%及びスピログリコール単位12モル%を構成成分とする、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(E)と、ポリエチレンテレフタレートのチップ(B)を50:50の質量比となるように混合したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0072】
実施例4
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位60モル%及びアジピン酸単位40モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位70モル%及びスピログリコール単位30モル%を構成成分とする、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(E)と、ポリエチレンテレフタレートのチップ(B)を50:50の質量比となるように混合したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0073】
実施例5
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位40モル%及びネオペンチルグリコール単位40モル%及びスピログリコール単位20モル%を構成成分とする、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(E)と、ポリエチレンテレフタレートのチップ(B)を50:50の質量比となるように混合したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0074】
実施例6
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位56モル%及びネオペンチルグリコール単位24モル%及びスピログリコール単位20モル%を構成成分とする、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(F)と、ポリエチレンテレフタレートのチップ(B)を50:50の質量比となるように混合したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0075】
実施例7
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位80モル%及びイソフタル酸単位20モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位92モル%及びスピログリコール単位8モル%を構成成分とする、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(G)を原料として使用したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0076】
実施例8
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位80モル%及びナフタレン酸ジカルボン酸単位20モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位80モル%及びスピログリコール単位20モル%を構成成分とし、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(N)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、チヌビン326)を1.0質量%含有する、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(H)を原料として使用したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0077】
比較例1
ポリエチレンテレフタレートのチップ(B)のみを使用したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0078】
比較例2
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位65モル%及びシクロヘキサンジメタノール単位35モル%を構成成分とする、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(F)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0079】
比較例3
香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位25モル%及びシクロヘキサンジメタノール単位20モル%及びスピログリコール単位55%を構成成分とする、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(G)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0080】
比較例4
香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位76モル%及びシクロヘキサンジメタノール単位20モル%及びスピログリコール単位4%を構成成分とする、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(H)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0081】
比較例5
延伸しなかったことを除いては、実施例1と同様にして行った。
【0082】
実施例1〜8及び比較例1〜5に関し、使用したポリマーの原料組成を表1に、フィルムの製造条件と特性を表2、3に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の成型用延伸ポリエステルフィルムは、成型工程において優れた成型性を有し、かつ印刷工程において高い温度で乾燥しても撓むことなく用いることができるので、乾燥時間の短縮の点で優れている。また、成型品として常温雰囲気下で使用する際に、弾性および形態安定性(熱収縮特性、厚み斑)に優れ、そのうえ耐溶剤性、耐熱性に優れ、さらに環境負荷が小さいという利点がある。また、後加工時にロール状に巻き取った長尺のフィルムを巻き出す際に、ブロッキングや破れが起こりにくいため、生産性に優れている。さらに、平滑性と透明性に高度に優れているため、前記フィルムの印刷性改良層に、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷など各種の印刷加飾法、及び捺染、転写、塗装、ペインティング、蒸着、スパッタリング、CVD、ラミネートなどの加飾方法により印刷層、図柄層などの意匠を施し、次いで金型成型、圧空成型、真空成形などの各種成型法により成型する3次元加飾方法に適し、かつインモールド成型性やエンボス成型性に優れている。そのため、家電や自動車の銘板用部材又は建材用部材として好適であり、産業界への寄与は大きい。
【0087】
また、フィルム中に紫外線吸収剤を含有させ、紫外領域の透過率を低減させることにより、耐光性を付与することができ、特に屋外で使用される用途(自動車の外装用または建材用部材)の成型材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸成分もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分と、エチレングリコール成分を50モル%以上含み、
スピログリコール成分を2〜20モル%含み、
スピログリコール成分以外の共重合成分を5〜30モル%含む、
成型用延伸ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記フィルムのガラス転移温度が80℃以上150℃以下であり、融点が200以上255℃未満である、請求項1に記載の成型用延伸ポリエステルフィルム。
【請求項3】
フィルムの長手方向及び幅方向における弾性率がいずれも25℃において1〜5GPaである、請求項1または2に記載の成型用延伸ポリエステルフィルム。
【請求項4】
スピログリコール成分およびスピログリコール以外の共重合成分を含む共重合ポリエステルと、ホモポリエステルとを混合してなる、請求項1〜3に記載の成型用延伸ポリエステルフィルム。
【請求項5】
スピログリコール成分を共重合成分として含む共重合ポリエステルと、スピログリコール以外の共重合成分を含む共重合ポリエステルと、ホモポリエステルとを混合してなる、請求項1〜3に記載の成型用延伸ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記スピログリコール以外の共重合成分が、分岐状脂肪族グリコール、脂環族グリコール、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸のいずれか1種を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の成型用延伸ポリエステルフィルム。
【請求項7】
フィルム中に紫外線吸収剤を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の成型用延伸ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2012−162586(P2012−162586A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21559(P2011−21559)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】