成形シートの欠陥検査装置
【課題】種々の欠陥をより確実に検出することができる、成形シートの欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】欠陥検査装置は、成形シートの2次元画像を複数回撮像して複数の2次元画像データを生成する撮像部51〜5nと、成形シートにおける撮像領域の一部に線状光源像が投影されるように成形シートを照明するための線状光源と、成形シートにおける線状光源像の位置が変化するように、成形シートを、線状光源の長手方向と交差し、かつ成形シートの厚み方向に直交する方向に搬送する搬送装置と、撮像部51〜5nで生成された複数の2次元画像データから線欠陥検出アルゴリズムによって欠陥を検出する線欠陥用画像解析部611〜61nと、撮像部51〜5nで生成された複数の2次元画像データから点欠陥検出アルゴリズムによって欠陥を検出する点欠陥用画像解析部621〜62nとを備える。
【解決手段】欠陥検査装置は、成形シートの2次元画像を複数回撮像して複数の2次元画像データを生成する撮像部51〜5nと、成形シートにおける撮像領域の一部に線状光源像が投影されるように成形シートを照明するための線状光源と、成形シートにおける線状光源像の位置が変化するように、成形シートを、線状光源の長手方向と交差し、かつ成形シートの厚み方向に直交する方向に搬送する搬送装置と、撮像部51〜5nで生成された複数の2次元画像データから線欠陥検出アルゴリズムによって欠陥を検出する線欠陥用画像解析部611〜61nと、撮像部51〜5nで生成された複数の2次元画像データから点欠陥検出アルゴリズムによって欠陥を検出する点欠陥用画像解析部621〜62nとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルムや位相差フィルム等の光学フィルム(特にウェブ状に巻いて保管・輸送される長尺の光学フィルム)等のような、成形シートの欠陥を検査する欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旧来の成形シートの欠陥検査装置は、ラインセンサと呼ばれる1次元カメラを用い、成形シートを蛍光管等の線状光源で照明し、成形シート表面を成形シートの長手方向に沿って長手方向の一端から他端まで1次元カメラで走査して1枚の静止画像データを取得し、この1枚の静止画像データに基づいて成形シートの欠陥を検査するものである。この静止画像データには、通常、線状光源像が含まれる。線状光源像は、線状光源およびカメラと反射面との間に成形シートが配置されている場合には、線状光源から出射し成形シートによって正反射されてカメラに到達した光の像であり、線状光源とカメラとの間に成形シートが配置されている場合には、線状光源から出射し成形シートを透過してカメラに到達した光の像である。この欠陥検査装置では、成形シートの幅が広い場合、成形シートの幅方向全域を検査できるように、複数台のラインセンサを幅方向に並べて用いる。
【0003】
しかしながら、この旧来の欠陥検査装置では、成形シート全域についての1枚の静止画像データ(以下、単に「画像データ」と称する)に基づいて成形シートの欠陥を検査するものであるので、画像データにおける検査対象画素と線状光源像との位置関係は、1つの決まった位置関係となる。欠陥は、検査対象画素(注目画素)と線状光源像との位置関係が特定の位置関係にある場合にしか画像データ上に現れないことがある。例えば、欠陥の1種である気泡は、線状光源像の周縁または近傍にある場合にしか画像データ上に現れないことが多い。そのため、欠陥は、その位置によっては、検出されないことがある。したがって、上記旧来の欠陥検査装置は、限られた欠陥検出能力しか持っていない。
【0004】
そこで、本願の出願人は、上記旧来の欠陥検査装置に対して欠陥識別能力を向上させた成形シートの欠陥検査装置を出願している(特許文献1参照)。この欠陥検査装置では、成形シートを蛍光管等の線状光源で照明し、成形シートを所定方向に連続して搬送しながら、エリアセンサと呼ばれる2次元カメラを用いて動画データ(成形シート上での撮像位置が異なる複数枚の画像データ)を取得し、この動画データに基づいて成形シートの欠陥を検査するものである。この欠陥検査装置では、検査対象画素と線状光源像との位置関係が異なる複数枚の画像データに基づいて欠陥があるかを判定することができるので、旧来の欠陥検査装置よりも欠陥を確実に検出できる。したがって、この欠陥検査装置は、旧来の欠陥検査装置よりも欠陥検出能力が向上する。なお、この動画データを利用すれば、照明像に対して欠陥が動いていく様子を見ることもできる。
【特許文献1】特開2007−218629号公報(2007年8月30日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本願発明者の検討によれば、特許文献1に記載の欠陥検査装置も、欠陥検出能力に改善の余地があることが分かった。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載の欠陥検査装置では、エリアセンサによって撮像された(多値の)複数枚の画像データの各々から、以下の画像処理によって欠陥を検出している(特許文献1の[0032]〜[0035]参照)。
【0007】
まず、多値の画像データを2値化し、白領域および黒領域をラベリングして検出対象とする。次いで、検出対象の白領域から、指定値(線状光源像の面積に見合った比較的大きい値;例えば2500画素)を超える面積(画素数)を持つ白領域を、線状光源像とみなして除外する。同様に、検出対象の黒領域から、指定値(背景領域の面積に見合った比較的大きい値)を超える面積を持つ黒領域を、背景領域(成形シートにおける欠陥がない領域の画像)とみなして除外する。さらに、検出対象の白領域および黒領域から、指定値(1画素に近い比較的小さい値;例えば9画素)未満の面積を持つ白領域および黒領域をノイズとみなして除外する。そして、検出対象の白領域および黒領域から除外されずに残った領域を欠陥として検出する。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の欠陥検査装置は、明暗の反転に基づいて欠陥を検出するものであるため、画像データ上におけるコントラストが低い欠陥を検出できないことがある。
【0009】
ここで、本願発明において検出対象とする種々の欠陥について説明する。本願発明は、主として、成形シート表面の微小な凹凸(特に数μm程度の高さの凹凸)を伴う欠陥(外観欠陥)を検出しようとするものである。微小な凹凸を伴う欠陥としては、例えば、気泡または異物に起因して成形シート表面に生じた微小な凹凸;打痕(点で押されて生じた押し痕);折り曲げられた痕(「クニック」と呼ばれる);成形シートの製造時に、搬送ロールで搬送される際に生じた搬送ロールによる押し痕(「スジ」と呼ばれる)などが挙げられる。これらの微小な凹凸を伴う欠陥は、旧来のラインセンサを用いた欠陥検査装置では非常に検出が難しい。本願発明は、主として、これらの種類の欠陥を検出することを目的としている。
【0010】
本願明細書では、便宜上、微小凹凸が局所的に集中している(凸部の直径が1mm程度以下(撮像装置の分解能が200μm/画素の場合には数画素程度以下)である)欠陥、例えば、気泡、異物、打痕などを点欠陥と呼び、微小凹凸が線状に繋がって1mmを超える大きさとなったものを線欠陥と呼ぶ。スジ等のような典型的な線欠陥は、10mm程度を超える幅(撮像装置の分解能が200μm/画素の場合には数10画素程度を超える幅)を持ち、典型的には数十cm程度、場合によっては数十cmを超える幅を持つ。クニックは、10mm程度以下(撮像装置の分解能が200μm/画素の場合には数10画素程度以下)の幅、典型的には数mm程度の幅を持ち、点欠陥と典型的な線欠陥との中間的な性質をもつ。
【0011】
特許文献1に記載の欠陥検査装置の撮像部において撮像される欠陥画像(動画)の例は、特許文献1の図14〜図15に示されている通りである。特許文献1の図14〜図15では、動画を構成する連続した5枚のフレームを時間の早い順に(a)〜(e)として示している。この動画が通常のテレビジョン用動画であれば、フレーム間の時間間隔(フレームレート)は1/30秒である。フレーム間の時間間隔は、撮像部の特性に依存する。特許文献1の欠陥検査装置では、撮像部は、撮像部から成形シートの撮像領域(特許文献1の図1における成形シート表面に破線で示された矩形)の中心に向かう方向と成形シートの搬送方向とが鋭角をなすように、かつ、撮像領域の一部に照明像(線状光源の反射像)が含まれ、撮像領域における照明像の両側に照明像のない領域(背景領域)が存在するように配置されている。したがって、特許文献1の図14〜図15に示された動画における上方向は、成形シートの搬送方向と一致する。成形シートにおける撮像領域の中で、欠陥は成形シートの搬送方向に移動するので、特許文献1の図14〜図15に示された動画において、欠陥は下から上へと移動している(照明像は、白い帯状の領域として写っている)。
【0012】
特許文献1の図14は、撮像部によって撮像された気泡(点欠陥)を含む撮像領域(搬送方向に直交する方向のサイズ:5mm)の動画の例であり、気泡は明暗が反転した部分として見えている。この動画では、1つめのフレーム(a)では気泡が見えていないが、点欠陥が照明像に近づいた2つめのフレーム(b)では気泡が見え始め、気泡が照明像のエッジに位置する3つめのフレーム(c)では気泡が比較的良く見え、気泡が照明像の中に入った4つめおよび5つめのフレーム(d)(e)では、気泡が照明光に埋もれて見えなくなる。
【0013】
特許文献1の図15は、撮像部によって撮像されたクニックを含む撮像領域(搬送方向に直交する方向のサイズ:5mm)の動画の例であり、撮像部によって撮像されたクニックによる明暗の反転はなく、クニックが通過していくに従って、本来は矩形の白領域として写っているはずの照明像が時間と共に歪んでいっている。
【0014】
特許文献1の図15は、撮像部によって撮像されたスジ(線欠陥)を含む撮像領域(搬送方向に直交する方向のサイズ:200mm)の動画の例である。1〜3つめのフレーム(a)〜(c)では、照明像が多少弓状に歪んでいるが、この程度の弓状の歪みは、欠陥に起因するものではなく、成形シートを引っ張っているために生じるものである。一方、4つめのフレームでは、照明像が、S字状に、比較的大きく歪んでいる。照明像がこの程度以上歪むのは、歪んでいる位置にスジがあるためである。したがって、照明像がこの程度以上歪んだ部分を欠陥として検出することが望まれる。
【0015】
しかしながら、特許文献1の欠陥検査装置は、2値化処理において明領域(線状光源像および線状光源像内部の欠陥領域)と暗領域(背景領域および背景領域内部の欠陥領域)とを切り分ける閾値によっては、画像データ上におけるコントラストが低い欠陥を検出できないことがあることが分かった。
【0016】
すなわち、特許文献1の欠陥検査装置において、欠陥が、画像データ上におけるコントラスト(欠陥による輝度変化)が比較的高いものである場合、図3の垂直方向(成形シート搬送方向)輝度プロファイルに示すように、欠陥による輝度変化が2値化処理の閾値をまたぐように観測される。より詳細に説明すると、線状光源像の中で暗領域として観測される欠陥に対応する極小点(図3における谷の部分)の輝度値より大きく、かつ、その極小点の両側にある極大点の輝度値より小さくなる。また、2値化処理の閾値は、線状光源像の外で明領域として観測される欠陥に対応する極大点(図3における山の部分)の輝度値より大きく、かつ、その極大点の両側にある極小点の輝度値より大きくなる。それゆえ、線状光源像の中で暗領域として観測される欠陥も、線状光源像の外で明領域として観測される欠陥も、検出される。したがって、特許文献1の欠陥検査装置は、コントラストが比較的高い欠陥を確実に検出できる。
【0017】
一方、特許文献1の欠陥検査装置において、欠陥が、画像データ上におけるコントラストが低いものである場合、欠陥部分の垂直方向輝度プロファイルと2値化処理の閾値との関係が図4の垂直方向輝度プロファイルに示す関係、すなわち、欠陥による輝度変化が2値化処理の閾値をまたがない関係となる。目安として、次式
(欠陥による輝度変化量)<{(線状光源像領域の輝度レベル)
−(背景領域の輝度レベル)}/2 …(1)
を満たす場合に、図4に示す関係となることがある。図4に示す関係となった場合、欠陥を見逃すことになる。
【0018】
ただし、画像データ上における欠陥のコントラストが低く、式(1)を満たす場合であっても、図5の垂直方向輝度プロファイルに示すように欠陥による輝度変化が2値化処理の閾値をまたぐように観測される場合については、欠陥を検出できる。したがって、特許文献1の欠陥検査装置は、式(1)を満たす場合であっても、欠陥による輝度変化と2値化処理の閾値との関係によっては、欠陥を検出できる。
【0019】
さらに、特許文献1の欠陥検査装置は、動画像を用いており、動画像では、欠陥像が、1コマごとに線状光源像に接近し、線状光源像内を通過し、線状光源像から遠ざかるという動きが観測される。したがって、画像データ上における欠陥のコントラストが低く、式(1)を満たす場合であっても、動画像を構成する複数の画像の中に1つでも、欠陥による輝度変化と2値化処理の閾値との関係が図5に示す関係となる画像があれば、欠陥を検出できる。
【0020】
以上のように、特許文献1の欠陥検査装置では、式(1)を境として、欠陥による輝度変化量が小さくなるにしたがって、欠陥を見逃す可能性が高くなっていく。したがって、特許文献1の欠陥検査装置は、コントラストが低い欠陥の検出の確実性については、改善の余地がある。
【0021】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、種々の欠陥をより確実に検出することができる、成形シートの欠陥検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る欠陥検査装置は、上記課題を解決するために、成形シートの欠陥を検出する欠陥検査装置であって、上記成形シートの2次元画像を複数回撮像して複数の2次元画像データを生成する撮像手段と、上記成形シートにおける撮像される領域の一部に線状光源の像が投影されるように、上記成形シートを照明するための線状光源と、上記成形シートにおける上記線状光源の像が投影されている位置が変化するように、上記成形シートおよび上記線状光源の少なくとも一方を、上記線状光源の長手方向と交差し、かつ上記成形シートの厚み方向に直交する方向に移動させる移動手段と、上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから線欠陥を検出する線欠陥検出手段とを備え、上記線欠陥検出手段は、上記2次元画像データにおける線状光源の像のエッジを関数曲線でフィッティングし、線状光源の像のエッジと関数曲線との距離が第1の閾値以上である箇所を線欠陥として検出する線欠陥検出アルゴリズム、または上記2次元画像データにおける線状光源の像のエッジについて、各画素の近傍領域における曲率を求め、曲率が第2の閾値以上である箇所を線欠陥として検出する線欠陥検出アルゴリズムによって線欠陥を検出するものであることを特徴としている。
【0023】
上記の構成によれば、線欠陥をより確実に検出することができる。
【0024】
上記欠陥検査装置は、上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから点欠陥を検出する点欠陥検出手段をさらに備えることが好ましい。これにより、線欠陥だけでなく点欠陥をも検出できる。
【0025】
上記欠陥検査装置において、上記点欠陥検出手段は、上記2次元画像データにおける一直線上に沿った位置に依存した輝度の変化を輝度プロファイルとして表し、輝度プロファイルのプロット群をプロット間の移動時間が一定となるように移動する質点を想定し、注目プロットの直前2つのプロット間における上記質点の速度ベクトルと上記注目プロットの直前3つのプロット間における上記質点の加速度ベクトルとから上記注目プロットの輝度値を予測し、予測された輝度値と実際の輝度値との差が第3の閾値以上である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズム、または上記2次元画像データを平滑化し、平滑化された2次元画像データと元の2次元画像データとの差分を差分画像データとして求め、差分画像データにおける輝度値が第4の閾値以上である箇所および輝度値が第5の閾値(第5の閾値は第4の閾値より小さい)以下である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズムによって点欠陥を検出するものであることが好ましい。これにより、特許文献1の技術と比較して、コントラストの低い点欠陥(例えば、図4のような小さな輝度変化を示す欠陥)をより確実に検出することが可能になる。したがって、点欠陥および線欠陥の両方を確実に検出できる。
【0026】
本発明に係る欠陥検査装置は、上記課題を解決するために、成形シートの欠陥を検出する欠陥検査装置であって、上記成形シートの2次元画像を複数回撮像して複数の2次元画像データを生成する撮像手段と、上記成形シートにおける撮像される領域の一部に線状光源の像が投影されるように、上記成形シートを照明するための線状光源と、上記成形シートにおける上記線状光源の像が投影されている位置が変化するように、上記成形シートおよび上記線状光源の少なくとも一方を、上記線状光源の長手方向と交差し、かつ上記成形シートの厚み方向に直交する方向に移動させる移動手段と、上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから点欠陥を検出する点欠陥検出手段とを備え、上記点欠陥検出手段は、上記2次元画像データにおける一直線上に沿った位置に依存した輝度の変化を輝度プロファイルとして表し、輝度プロファイルのプロット群をプロット間の移動時間が一定となるように移動する質点を想定し、注目プロットの直前2つのプロット間における上記質点の速度ベクトルと上記注目プロットの直前3つのプロット間における上記質点の加速度ベクトルとから上記注目プロットの輝度値を予測し、予測された輝度値と実際の輝度値との差が第3の閾値以上である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズム、または上記2次元画像データを平滑化し、平滑化された2次元画像データと元の2次元画像データとの差分を差分画像データとして求め、差分画像データにおける輝度値が第4の閾値以上である箇所および輝度値が第5の閾値(第5の閾値は第4の閾値より小さい)以下である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズムによって点欠陥を検出するものであることを特徴としている。
【0027】
これにより、特許文献1の技術と比較して、コントラストの低い点欠陥(例えば、図4のような小さな輝度変化を示す欠陥)をより確実に検出することが可能になる。
【0028】
上記欠陥検査装置は、上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから線欠陥を検出する線欠陥検出手段をさらに備えることが好ましい。これにより、点欠陥だけでなく線欠陥をも検出できる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明は、種々の欠陥をより確実に検出することができる、成形シートの欠陥検査装置を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0031】
本実施形態に係る欠陥検査装置は、成形シートの欠陥を検出するものである。本実施形態に係る欠陥検査装置は、光透過性の成形シート、特に、熱可塑性樹脂等の樹脂からなる成形シートの検査に適している。樹脂からなる成形シートとしては、例えば、押出機から押し出された熱可塑性樹脂をロールの隙間に通して表面に平滑さや光沢を付与する処理が施され、引取ロールにより搬送ロール上を冷却されながら引き取ることにより成形されたものが挙げられる。本実施の形態に適用可能な熱可塑性樹脂は、例えば、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロール樹脂等である。成形シートは、これら熱可塑性樹脂のうちの1つのみからなっていてもよく、これら熱可塑性樹脂の複数種類を積層したもの(積層シート)であってもよい。また、本実施形態に係る欠陥検査装置は、偏光フィルムや位相差フィルム等の光学フィルム、特にウェブ状に巻いて保管・輸送される長尺の光学フィルムの検査に適している。また、成形シートは、どのような厚みを持つものであってもよく、一般にフィルムと呼ばれるような比較的薄い厚みを持つものであっても、一般に板と呼ばれるような比較的厚い厚みを持つものであってもよい。
【0032】
成形シートの欠陥の例としては、気泡(成形時に生じるもの等)、フィッシュアイ、異物、タイヤ跡、打痕、傷等の点欠陥;クニック、スジ(厚さの違いにより生じるもの等)等が挙げられる。
【0033】
本実施形態に係る欠陥検査装置1の構成について、図1および図2に基づいて以下に説明する。図1は、欠陥検査装置1の主要部の構成を示す機能ブロック図である。図2は、欠陥検査装置1の概観を示す模式図である。なお、図2においては、成形シートに重なった部材を識別し易いように成形シート表面の明暗を反転して示している。したがって、図2における成形シート表面の黒色領域は、実際には明領域であり、図2における成形シート表面の白色領域は、実際には暗領域である。
【0034】
欠陥検査装置1は、矩形の成形シート2を搬送装置(移動手段)3によって一定方向に搬送しながら、線状光源4により照明された成形シート2をn個(nは2以上の整数)の撮像部(撮像手段)51〜5nによって複数回撮像して撮像部51〜5nの各々で複数の2次元画像データを生成し、生成された複数の2次元画像データに基づいて解析装置6が成形シート2の欠陥を検出するものである。
【0035】
欠陥検査装置1は、成形シート2を搬送する搬送装置(移動手段)3と、成形シート2における撮像領域(撮像部51〜5nによって撮像される領域;図2における成形シート2表面に破線で示された矩形)の一部に線状光源4の像が投影されるように成形シート2を照明するための線状光源4と、線状光源4の反射像(線状光源4からの直接光が成形シート2によって反射されて撮像部51〜5nに到達する結果として形成される線状光源4の像)および成形シート2の反射像(線状光源4からの散乱光が成形シート2によって反射されて撮像部51〜5nに到達する結果として形成される成形シート2の像)を含む2次元画像を複数回撮像する撮像部51〜5nと、複数の2次元画像データに基づいて、画像処理アルゴリズム(欠陥検出アルゴリズム)によって成形シート2の欠陥を検出する解析装置6とを備えている。
【0036】
搬送装置3は、成形シート2における線状光源4の像が投影されている位置が変化するように、成形シート2を、その厚み方向に直交する方向、特にその長手方向に搬送するものである。搬送装置3は、例えば、成形シート2を一定の方向に搬送する送出ローラと受取ローラとを備え、ロータリーエンコーダ等により搬送速度を計測する。搬送速度は、例えば2m〜12m/分程度に設定される。搬送装置3における搬送速度は、図示しない情報処理装置等によって設定および制御される。
【0037】
線状光源4は、その長手方向が成形シート2の搬送方向と交差する方向(例えば成形シート2の搬送方向と直交する方向)となるように、かつ、線状光源4の反射像が成形シート2の撮像領域を横切り、撮像領域における線状光源4の反射像の両側に線状光源像のない領域(背景領域)が存在するように配置されている。線状光源4は、成形シート2の組成及び性質に影響を与えない光を発光するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、蛍光灯(特に高周波蛍光灯)、メタルハライドランプ、ハロゲン伝送ライトなどである。なお、線状光源4を、成形シート2を挟んで撮像部51〜5nに対向する位置に配置し、線状光源4の透過像(線状光源4からの直接光が成形シート2を透過して撮像部51〜5nに到達することによって形成される線状光源4の像)および成形シート2の透過像(線状光源4からの散乱光が成形シート2を透過して撮像部51〜5nに到達することによって形成される成形シート2の像)を含む2次元画像が撮像部51〜5nによって撮像されるようにしてもよい。
【0038】
撮像部51〜5nの各々は、線状光源4の反射像および成形シート2の反射像を含む2次元画像を複数回撮像して、複数の2次元画像データを生成し出力する。撮像部51〜5nは、2次元画像を撮像するCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子で構成されるエリアセンサからなる。欠陥検査装置1によって検出される欠陥のサイズは、撮像部51〜5nの分解能に依存するので、検出したい欠陥のサイズに合わせて撮像部51〜5nの分解能を選定するとよい。なお、欠陥検査装置1によって検出される欠陥の立体形状(幅対高さの比)は、基本的には撮像部51〜5nの分解能に依存しないので、検出したい欠陥の種類によってカメラ分解能を選定する必要はない。
【0039】
撮像部51〜5nは、撮像部51〜5nから成形シート2の撮像領域の中心に向かう方向と成形シート2の搬送方向とが鋭角をなすように配置されている。撮像部51〜5nは、成形シート2の幅方向(成形シート2の搬送方向に直交し、かつ成形シート2の厚み方向に直交する方向)の全領域が撮像部51〜5nの少なくとも1つで撮像されるように、成形シート2の幅方向に沿って並べて配置されている。撮像部51〜5nによって成形シート2の幅方向の全領域を撮像することにより、成形シート2の全領域の欠陥を検査することができる。
【0040】
撮像部51〜5nの撮像間隔(フレームレート)は、固定されていてもよく、ユーザが撮像部51〜5n自体を操作することによって変更可能となっていてもよく、撮像部51〜5nに接続された情報処理装置(図示しない;省略可能)をユーザが操作することによって変更可能となっていてもよい。また、撮像部51〜5nの撮像間隔は、デジタルスチルカメラの連続撮影の時間間隔である数分の1秒などであってもよいが、検査の効率化を向上させるために、短い時間間隔、例えば一般的な動画データのフレームレートである1/30秒などであることが好ましい。
【0041】
ここで、各撮像部51〜5nが1枚の2次元画像を撮像してから次の2次元画像を撮像するまでの期間に成形シート2が搬送される距離(搬送距離)は、成形シート2の搬送方向に沿った撮像領域の長さの少なくとも1/m(mは2以上)に設定されている。これによって、成形シート2の同一箇所を含む2次元画像がm回撮像される。mは2より十分大きいことが好ましい。成形シート2の同一箇所の撮像回数を増加させることにより、高精度に欠陥を検査することができる。
【0042】
解析装置6は、図1に示すように、各撮像部51〜5nから出力された複数の2次元画像データを受け取り、複数の2次元画像データに基づいて欠陥を検出して検出結果(検査結果)を出力する線欠陥用画像解析部(線欠陥検出手段)611〜61nおよび点欠陥用画像解析部(点欠陥検出手段)621〜62nと、検出結果(検査結果)を表示する表示部64と、これらの各部を統括的に制御するコントロールCPU63とを備えている。
【0043】
各撮像部51〜5nで生成された複数の2次元画像データは、それぞれ線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nに入力される。
【0044】
線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nの各々は、線欠陥検出アルゴリズムによって、成形シート2上における線状光源像の位置が異なる複数の(複数フレームの)2次元画像データから欠陥を検出し、その結果を検査結果として出力する。点欠陥用画像解析部621〜62nの各々は、点欠陥検出アルゴリズムによって、成形シート2上における線状光源像の位置が異なる複数の(複数フレームの)2次元画像データから欠陥を検出し、その結果を検査結果として出力する。線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nは、成形シート2上における線状光源像の位置が異なる複数の2次元画像データに基づいて欠陥があるかを判定するので、旧来の欠陥検査装置よりも欠陥を確実に検出できる。
【0045】
線欠陥検出アルゴリズムおよび点欠陥検出アルゴリズムについては、後段で説明する。線欠陥検出アルゴリズムおよび点欠陥検出アルゴリズムのパラメータは、固定されていてもよいが、線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nに接続された情報処理装置(図示しない;省略可能)をユーザが操作することによって変更可能となっていてもよい。
【0046】
線欠陥用画像解析部611〜61nは、線欠陥検出アルゴリズムによって複数の2次元画像データのうちのL個(L≦m)以上から線欠陥が検出された場合に、線欠陥があるという結果を検査結果として出力し、他の場合に、線欠陥がないという結果を検査結果として出力するものであってもよく、線欠陥検出アルゴリズムによって複数の2次元画像データのうちのL個以上から線欠陥が検出された場合に、線欠陥位置の情報を検査結果として出力し、他の場合には検査結果を出力しないものであってもよい。2次元画像データの個数mが3以上であり、Lが2以上である場合には、線欠陥検出アルゴリズムによって線欠陥が検出された2次元画像データの個数が少ない場合には、その線欠陥検出結果が虚報(本来欠陥でないものが誤って欠陥として検出されたもの)とみなされて除外されることになる。これにより、虚報を低減できる。なお、線欠陥位置の情報を検査結果として出力する場合には、線欠陥位置を求めることができる線欠陥検出アルゴリズムを用いる必要がある。
【0047】
点欠陥用画像解析部621〜62nは、点欠陥検出アルゴリズムによって複数の2次元画像データのうちのL個(L≦m)以上から点欠陥が検出された場合に、点欠陥があるという結果を検査結果として出力し、他の場合に、点欠陥がないという結果を検査結果として出力するものであってもよく、点欠陥検出アルゴリズムによって複数の2次元画像データのうちのL個以上から点欠陥が検出された場合に、点欠陥位置の情報を検査結果として出力し、他の場合には検査結果を出力しないものであってもよい。2次元画像データの個数mが3以上であり、Lが2以上である場合には、点欠陥検出アルゴリズムによって点欠陥が検出された2次元画像データの個数が少ない場合には、その点欠陥検出結果が虚報(本来欠陥でないものが誤って欠陥として検出されたもの)とみなされて除外されることになる。これにより、虚報を低減できる。なお、点欠陥位置の情報を検査結果として出力する場合には、点欠陥位置を求めることができる点欠陥検出アルゴリズムを用いる必要がある。
【0048】
コントロールCPU63は、線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nから出力された検査結果を統合して成形シート2の全領域に対応する検査結果情報を作成し、図示しない記憶装置に記憶させると共に、表示部64に表示させる。成形シート2の全領域に対応する検査結果情報としては、成形シート2の全領域に欠陥があるかないかを示す情報や、成形シート2の全領域の欠陥マップなどが挙げられる。成形シート2の全領域に対応する検査結果情報を作成する際には、線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nの少なくとも一方で欠陥が検出された場合に、欠陥が存在するものとして検査結果情報を作成する。
【0049】
コントロールCPU63が、成形シート2の全領域に対応する検査結果情報として、成形シート2の全領域の欠陥マップを作成する場合には、線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nの各々は、2次元画像データ上の座標位置を成形シート2上の座標位置に変換して欠陥位置情報を生成し、この欠陥位置情報をコントロールCPU63に出力する。線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nの各々の座標変換処理としては、例えば、特許文献1の段落[0037]〜[0041]および[0050]〜[0053]に記載された処理を用いることができる。欠陥マップの情報をマーキング装置(図示しない)および情報処理装置(図示しない)に出力し、マーキング装置が欠陥マップに基づいて成形シート2に欠陥位置をマーキングするようにしてもよい。このマーキング装置は、例えば、成形シート2の幅方向に沿って設けられたアームと、ペン等を有するマーカヘッドとを有し、マーカヘッドがアーム上を成形シート2の幅方向に往復移動することによって成形シート2上の任意の位置にマーキングを行うことができる。このマーキングされた欠陥位置の情報は、例えば、成形シート2を所定サイズの枚葉品に断裁した後、枚葉品を正常品と欠陥品とに分ける処理等に利用することができる。
【0050】
なお、上記の実施の形態では、線状光源4を固定して成形シート2を搬送させていたが、成形シート2における線状光源4の像が投影されている位置が変化するようになってさえいればよい。したがって、成形シート2を固定して線状光源4を移動させてもよく、成形シート2および線状光源4の両方を異なる方向または異なる速度で移動させてもよい。成形シート2を固定して線状光源4を移動させる場合には、撮像部51〜5nを線状光源4と同じ方向に同じ速度で移動させることが好ましい。これにより、線状光源像を含む複数の2次元画像データを得ることができる。成形シート2を固定して線状光源4を移動させる方法は、成形シート2を搬送装置3で引っ張ることによって線状光源像が歪むことを避けることができるが、一度に検査できる成形シート2の長さが線状光源4の移動可能範囲に対応する長さに制限されるので、長尺の成形シート2を効率的に検査するためには、前記の実施の形態のように成形シート2を搬送することが好ましい。
【0051】
また、上記の実施の形態では、線欠陥用画像解析部611〜61nと点欠陥用画像解析部621〜62nとは、同一の撮像部51〜5nから得られた2次元画像データに基づいて欠陥を検出していたが、線欠陥用画像解析部611〜61nと点欠陥用画像解析部621〜62nとが、異なる撮像部から得られた2次元画像データに基づいてそれぞれ欠陥を検出してもよい。これによって、撮像部51〜5nの撮像条件(成形シート2からの距離や、成形シート2の搬送方向と撮像方向とのなす角度など)を、検出しようとする欠陥に適した条件にすることが可能となる。線欠陥用画像解析部611〜61nで用いられる2次元画像データを撮像する撮像部は、点欠陥用画像解析部621〜62nで用いられる2次元画像データを撮像するための撮像部と比較して、成形シートからの距離を遠くし、成形シート2の搬送方向と撮像方向とのなす角度を狭くすることが好ましい。これにより、点欠陥および線欠陥の両方を最適な撮像条件で撮像できるので、点欠陥および線欠陥の両方をさらに精度良く検出できる。
【0052】
また、上記の実施の形態では、各撮像部51〜5nで撮像された2次元画像を線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nで分散して処理していたが、撮像部51〜5nで撮像された2次元画像間の相対位置に基づいて各撮像部51〜5nで撮像されたn枚の2次元画像から成形シート2の幅方向の全領域を含む1枚の全幅画像を合成し、全幅画像に基づいて1つの線欠陥用画像解析部および1つの点欠陥用画像解析部で欠陥を検出してもよい。n枚の2次元画像から1枚の全幅画像を合成する方法としては、例えば、特許文献1の段落[0050]に記載された方法を用いることができる。
【0053】
次に、線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nで用いられる線欠陥検出アルゴリズムおよび点欠陥検出アルゴリズムについて説明する。線欠陥検出アルゴリズムおよび点欠陥検出アルゴリズムとしては、以下の7種類の欠陥検出アルゴリズムA〜Gを用いることができる。
【0054】
〔欠陥検出アルゴリズムA〕
欠陥検出アルゴリズムAについて、図6に基づいて以下に説明する。図6(a)は、撮像部51〜5nの1つで生成された多値の2次元画像データ(以下、原画像データと称する)の例であり、画像の上側が搬送方向下流側であり、画像の下側が搬送方向上流側である。図6(a)において、中央の横方向に伸びる帯状の白領域が線状光源像であり、線状光源像の内部に存在する暗領域、および線状光源像の近傍に存在する小さい白領域が、欠陥である。
【0055】
この欠陥検出アルゴリズムAでは、撮像部51〜5nで生成された複数枚の原画像データの各々について、以下の処理を行う。
【0056】
まず、原画像データを、縦方向(成形シート2の搬送方向)に沿った1行ずつの画素列のデータ(輝度値(画素値)および位置を表すデータ;輝度プロファイル;1次元画像データ)に分割する。
【0057】
次に、各画素列のデータについて、以下のような一端(図6(a)の上端)から他端(図6(a)の下端)に向かってエッジを探していく第1のエッジ判定処理を行う。まず、画素列の一端側から2つめの画素を注目画素とし、注目画素に対して一端側に隣接する隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T1以上小さいかを判定する。隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T1以上小さいと判定された場合には、隣接画素が第1のエッジであると判定し、第1のエッジの位置を記録して、処理対象の画素列のデータの処理を終了し、それ以外の場合には、注目画素を他端に向かって1画素ずつ移動しながら、前記判定において隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T1以上小さいと判定されるまで前記判定を繰り返し、隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T1以上小さいと判定された場合には、隣接画素が第1のエッジであると判定し、第1のエッジの位置を記録して、処理対象の画素列のデータの処理を終了する。なお、閾値T1は、任意の自然数であり、輝度値の最小単位であってもよい。閾値T1が輝度値の最小単位である場合には、上記判定は、単に隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値以上小さいかを判定することになる。
【0058】
次に、各画素列のデータについて、以下のような他端から一端に向かってエッジを探していく以下の第2のエッジ判定処理を行う。まず、他端側から2つめの画素を注目画素とし、注目画素に対して他端側に隣接する隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T2以上大きいかを判定する。隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T2以上大きいと判定された場合には、注目画素が第2のエッジであると判定し、第2のエッジの位置を記録して、処理対象の画素列のデータの処理を終了し、それ以外の場合には、注目画素を一端に向かって1画素ずつ移動しながら、前記判定において隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T2以上大きいと判定されるまで前記判定を繰り返し、隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T2以上大きいと判定された場合には、注目画素が第2のエッジであると判定し、第2のエッジの位置を記録して、処理対象の画素列のデータの処理を終了する。なお、閾値T2は、任意の自然数であり、輝度値の最小単位であってもよい。閾値T2が輝度値の最小単位である場合には、上記判定は、単に隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値以上大きいかを判定することになる。
【0059】
これらの第1のエッジ判定処理によって検出された第1のエッジの例を図6(a)に「△」で示し、および第2のエッジ判定処理によって検出された第2のエッジの例を図6(a)に「○」で示す。図6(a)から分かるように、欠陥のない領域では、線状光源像のエッジ以外にエッジが存在しないので、第1のエッジおよび第2のエッジは、線状光源像における他端側のエッジ(図6(a)の例では下側のエッジ)に一致し、互いに一致する。一方、図6(a)から分かるように、欠陥のある領域(白領域および黒領域)では、第1のエッジおよび第2のエッジの少なくとも一方が、欠陥領域のエッジに一致し、線状光源像における他端側のエッジよりもエッジ探索開始側へずれるので、第1のエッジと第2のエッジとが離れた位置となる。
【0060】
そこで、次に、各画素列のデータについて、第1のエッジから第2のエッジまでの距離(画素数)をエッジ間距離として求める。求められたエッジ間距離を画素列の位置(横方向の座標)に対してプロットしたプロファイルを図6(b)に示す。そして、このエッジ間距離が閾値T3以上の画素列が存在すれば、欠陥があると判定する。なお、閾値T3は、任意の自然数であり、1画素であってもよい。閾値T3が1画素である場合には、エッジ間距離が0でない画素列が欠陥を含む画素列として判定されることになる。閾値T3は、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよいが、多値の2次元画像データが256階調(輝度値0〜255;8ビット)の2次元画像データである場合、例えば3であることが好ましい。
【0061】
なお、図6の例では上端を一端(第1のエッジ探索開始側)としていたが、画素列のいずれの端を一端とするかは任意であり、下端を一端としてもよい。その場合には、欠陥のない領域では、第1のエッジおよび第2のエッジは、線状光源像における上側のエッジに一致する。
【0062】
この欠陥検出アルゴリズムAは、種々の点欠陥をある程度の確実性をもって検出することができる。ただし、気泡やフィッシュアイ等のような微小な点欠陥の検出確実性は、あまり高くない。一方、この欠陥検出アルゴリズムAは、線欠陥の検出には不向きである。この欠陥検出アルゴリズムAを、以下、「エッジプロファイル法1」と呼ぶ。
【0063】
〔欠陥検出アルゴリズムB〕
欠陥検出アルゴリズムBは、2次元画像データにおける線状光源の像のエッジを関数曲線でフィッティングし、線状光源の像のエッジと関数曲線との距離が閾値T5(第1の閾値)以上である箇所を欠陥として検出するものである。
【0064】
欠陥検出アルゴリズムBについて、図7に基づいて以下に説明する。図7(a)は、撮像部51〜5nの1つで生成された原画像データの例であり、画像の上側が搬送方向下流側であり、画像の下側が搬送方向上流側である。図7(a)において、中央の横方向に伸びる帯状の白領域が線状光源像であり、線状光源像の下側エッジの局所的に歪んでいる部分(滑らかでないところ)が欠陥である。
【0065】
この欠陥検出アルゴリズムBでは、撮像部51〜5nで生成された複数枚の原画像データの各々について、以下の処理を行う。
【0066】
まず、原画像データから、線状光源像のエッジの少なくとも一方を求める。求められた線状光源像のエッジの例を図7(a)に「○」で示す。図7の例では線状光源像の下側エッジを求めているが、線状光源像の上側エッジを求めてもよく、線状光源像の上側エッジおよび下側エッジの両方を求めてもよい。
【0067】
線状光源像のエッジを求める方法としては、公知のエッジ抽出フィルタ(例えばソーベルフィルタ)を用いてエッジを抽出し、強度の強いエッジを線状光源像のエッジとする方法、2次元画像データを1行ずつの画素列のデータに分割した上で各画素列のデータから強いエッジを求めて線状光源像のエッジとする方法、特許文献1の[0057]に記載された方法で線状光源像の領域を求める方法(2値化およびラベリングを行い、ラベリングされた領域の中から面積が所定値よりも大きい領域を線状光源像の領域として抽出する方法)などが挙げられる。ここでは、一例として、原画像データを1行ずつの画素列のデータに分割した上で各画素列のデータから強いエッジを求めて線状光源像のエッジとする方法について説明する。まず、原画像データを、縦方向(成形シート2の搬送方向)に沿った1行ずつの画素列のデータに分割する。次に、各画素列のデータについて、以下のような一端(図7(a)の上端)から他端(図7(a)の下端)に向かってエッジを探していく処理を行う。まず、一端側から2つめの画素を注目画素とし、注目画素に対して一端側に隣接する隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T4(T4は自然数)以上小さいかを判定する。強いエッジのみを検出するために、このときの閾値T4は比較的大きい値とする。隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T4以上小さいと判定された場合には、隣接画素が線状光源像のエッジであると判定し、線状光源像のエッジの位置を記録して、処理対象の画素列のデータの処理を終了し、それ以外の場合には、注目画素を他端に向かって1画素ずつ移動しながら、前記判定において隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T4以上小さいと判定されるまで前記判定を繰り返し、隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T4以上小さいと判定された場合には、隣接画素が線状光源像のエッジであると判定し、線状光源像のエッジの位置を記録して、処理対象の画素列のデータの処理を終了する。
【0068】
次に、求められた線状光源像のエッジの列を、関数で表現される滑らかな曲線にフィッティングさせ(関数曲線でフィッティングを行い)、フィッティングカーブ(関数曲線)を求める。フィッティングに用いる関数としては、n次関数(nは2以上)、ガウス関数、ローレンツ関数、フォークト関数、これらの関数の組み合わせなどが挙げられるが、nが比較的小さいn次関数、例えば4次関数が好ましい。また、フィッティングを行う際に用いるフィッティングの評価方法としては、例えば最小二乗法を用いることができる。
【0069】
次に、2次元画像データを縦方向(成形シート2の搬送方向)に沿った1行ずつの画素列のデータに分割し、各画素列のデータについて、フィッティングカーブから線状光源像のエッジまでの距離(画素数)をフィッティング度として求める。求められたフィッティング度を画素列の位置(横方向(成形シート2の搬送方向に直交し、かつ成形シート2の厚み方向に直交する方向)の座標)に対してプロットしたプロファイルを図7(b)に示す。そして、このフィッティング度が閾値T5以上の画素列が存在すれば、その画素列における線状光源像のエッジの位置に欠陥があると判定する。これにより、欠陥の有無を判定することができ、また、欠陥の位置を求めることもできる。以上のようにして、線状光源像のエッジの局所的な歪み(エッジ近傍での微細な線状光源像の歪み)として現れる線欠陥を検出することができる。なお、上記判定に用いる閾値T5は、任意の自然数であり、1画素であってもよい。閾値T5が1画素である場合には、フィッティング度が0でない画素列が存在すれば、欠陥があると判定されることになる。閾値T5は、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよいが、多値の2次元画像データが256階調の2次元画像データである場合、4であることが好ましい。
【0070】
なお、この欠陥検出アルゴリズムBでは、欠陥の有無を判定するのに加えて、欠陥位置を求めてもよい。その場合には、フィッティング度が閾値T5以上の画素列を抽出し、抽出された画素列における線状光源像のエッジとフィッティングカーブとの間にある画素の位置を欠陥位置として求めればよい。
【0071】
この欠陥検出アルゴリズムBは、種々の線欠陥を高い確実性をもって検出することができる。一方、この欠陥検出アルゴリズムBは、点欠陥の検出には不向きである。この欠陥検出アルゴリズムBを、以下、「エッジプロファイル法2」と呼ぶ。
【0072】
〔欠陥検出アルゴリズムC〕
欠陥検出アルゴリズムCは、2次元画像データを平滑化し、平滑化された2次元画像データと元の2次元画像データとの差分を差分画像データとして求め、差分画像データにおける輝度値が閾値T6B(第4の閾値;T6Bは任意の正数)以上である箇所、および輝度値が閾値T6D(第5の閾値;T6DはT6Bより小さい任意の正数)以下である箇所を欠陥として検出するものである。
【0073】
欠陥検出アルゴリズムCについて、以下にさらに詳細に説明する。この欠陥検出アルゴリズムCは、線状光源像の横方向(成形シート2の搬送方向に直交し、かつ成形シート2の厚み方向に直交する方向)の明暗変化と比較して欠陥による横方向の明暗変化の方が、空間周波数が高いことを利用し、原画像データの高周波成分を抽出し、高周波成分における輝度値が閾値T6B以上または閾値T6D以下である部分を欠陥として検出するものである。
【0074】
(1)まず、1行n列(nは3以上の整数)の横方向平滑化フィルタ(行列)を用いて、原画像データを横方向に平滑化(スムージング)する。これにより、原画像データの横方向輝度変化の高周波領域が除去されて、横方向輝度変化については低周波成分だけが残る(横方向輝度変化の低周波成分および縦方向輝度変化が残る)。上記横方向平滑化フィルタとしては、ガウスフィルタ等の加重平均化フィルタ、平均化フィルタなどを用いることができる。なお、nは、3であることが好ましい。
【0075】
(2)次に、原画像データから平滑化された画像データを減算する(各画素の輝度値を減算する)。これにより、原画像データにおける横方向輝度変化の高周波成分だけが残る。
【0076】
(3)次に、減算により得られた画像データに対して3×3画素の平滑化フィルタ(オペレータ)を用いた平滑化を行う。この平滑化により、ノイズが除去され、ノイズ以外の高周波成分が残る。上記平滑化フィルタとしては、バイラテラルフィルタやメディアンフィルタなどのような、エッジを保存した平滑化を行うものを用いることが好ましい。
【0077】
(4)次に、原画像データから、線状光源像における上側エッジ(搬送方向下流側のエッジ)および下側エッジ(搬送方向上流側のエッジ)を求める。線状光源像のエッジを求める方法は、欠陥検出アルゴリズムBに関して説明したものと同様であるので、説明を省略する。次いで、原画像データにおける成形シート2の搬送方向をX軸とし、上側エッジを構成する全画素のX座標値の中から最小値Minを求め、下側エッジを構成する全画素のX座標値の中から最大値Maxを求める。そして、最小値Minから最大値Maxを減算した値を線状光源像の幅Wとみなし、X座標値が最小値Minから最大値Maxまでの領域より幅Wだけ外側へ広げた領域を検査領域として定義する。すなわち、X座標値がMin−(Min−Max)以上であってMax+(Min−Max)以下である領域を検査領域として定義する。この処理は、検査対象領域を線状光源像およびその近傍領域だけに絞るためのものである。また、検査領域を、X座標値が最小値Minから最大値Maxまでの領域よりも外側へ広げているのは、線状光源像の多少の歪みを含めて検査領域とするためである。
【0078】
(5)次に、上記(3)の平滑化が施された後の画像データ(ノイズ以外の高周波成分)における検査領域内の画素の輝度値から、次式によって、明(bright)側(輝度の高い側)の閾値T6Bおよび暗(dark)側(輝度の低い側)の閾値T6Dを決定する。
【0079】
T6B=(検査領域内の平均輝度値)+(検査領域内の輝度値の標準偏差)×k
T6D=(検査領域内の平均輝度値)−(検査領域内の輝度値の標準偏差)×k
(kは正数のパラメータを表す〉
なお、kの値は、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよいが、例えば、1.5、3、4.5などである。
【0080】
(6)次に、上記(3)の平滑化が施された後の画像データにおける検査領域内の全画素について、その輝度値が閾値T6B以上または閾値T6D以下であるかを判定する処理(閾値処理)を行い、閾値T6B以上または閾値T6D以下の画素を、欠陥部位として抽出する。これにより、欠陥の有無を判定することができ、また、欠陥の位置を求めることもできる。
【0081】
なお、撮像部51〜5nで生成される原画像データに含まれるノイズが少ない場合には、(3)の平滑化処理を省略してもよい。また、検査対象領域を線状光源像およびその近傍領域だけに絞る必要がない場合には、(4)の検査領域を定義する処理を省略し、(5)(6)の処理を画像データ全体に対して行ってもよい。
【0082】
この欠陥検出アルゴリズムCは、気泡やフィッシュアイ等のような微小欠陥を含むあらゆる点欠陥を高い確実性をもって検出することができる。一方、この欠陥検出アルゴリズムCは、線欠陥の検出には不向きである。ただし、処理時間については、この欠陥検出アルゴリズムCよりも他の欠陥検出アルゴリズムの方が短い(欠陥検出アルゴリズムCの処理時間は、例えば1フレームあたり40ms程度)。この欠陥検出アルゴリズムCを、以下、「ハイパスフィルタ法」と呼ぶ。
【0083】
〔欠陥検出アルゴリズムD〕
欠陥検出アルゴリズムDについて、図8および図9に基づいて以下に説明する。図8は、撮像部51〜5nの1つで生成された原画像データの例であり、画像の上側が搬送方向下流側であり、画像の下側が搬送方向上流側である。図8において、中央の横方向に伸びる帯状の白領域が線状光源像であり、線状光源像の内部に存在する暗領域、および線状光源像の近傍に存在する小さい白領域が、欠陥である。図8において、線状光源像の上方および下方にある曲線は、検査対象領域の上限および下限を示す。
【0084】
この欠陥検出アルゴリズムDでは、撮像部51〜5nで生成された複数枚の原画像データの各々について、以下の処理を行う。
【0085】
まず、原画像データを、縦方向(成形シート2の搬送方向)に沿った1行ずつの画素列のデータに分割し、各画素列における位置に依存した輝度値の変化を表すプロット列を垂直方向輝度プロファイルとして求める。求められた垂直方向輝度プロファイルの例を図9に示す。この例は、図8の矢印で示す位置の画素列に関する垂直方向輝度プロファイルであり、yは、下方向(図8の矢印で示す方向;成形シート2の搬送方向と逆の方向)をy軸としたときのy座標である。
【0086】
次に、各画素列の垂直方向輝度プロファイルについて、谷の部分の深さ(図8参照)を求める。すなわち、まず、各画素列の垂直方向輝度プロファイルについて、全ての極大点および極小点を求め、求められた全ての極小点について、その極小点の輝度値(極小値)と、その極小点に最も近い極大点の輝度値(極大値)との差を、谷の部分の深さとして求める。求められた谷の部分の深さが閾値T7(T7は正数)以上であれば、欠陥があると判定する。閾値T7は、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよいが、多値の2次元画像データが256階調の2次元画像データである場合、例えば0.25×255であることが好ましい。
【0087】
この欠陥検出アルゴリズムDは、処理時間が比較的短い。この欠陥検出アルゴリズムDは、種々の点欠陥をある程度の確実性をもって検出することができる。特に、線状光源像のエッジ付近にある局所的な明暗反転を生じる点欠陥の検出に向いている。ただし、点欠陥およびその近傍を含む画像が高コントラストである必要であり、気泡やフィッシュアイ、タイヤ跡等のような微小な点欠陥の検出確実性は、あまり高くない。一方、この欠陥検出アルゴリズムDは、線欠陥の検出には不向きである。この欠陥検出アルゴリズムDを、以下、「ピーク法」と呼ぶ。
【0088】
〔欠陥検出アルゴリズムE〕
欠陥検出アルゴリズムEは、2次元画像データにおける一直線上に沿った位置に依存した輝度の変化を輝度プロファイルとして表し、輝度プロファイルのプロット群をプロット間の移動時間が一定となるように移動する質点を想定し、注目プロットの直前2つのプロット間における上記質点の速度ベクトルと上記注目プロットの直前3つのプロット間における上記質点の加速度ベクトルとから上記注目プロットの輝度値を予測し、予測された輝度値と実際の輝度値との差が閾値T8(第3の閾値;T8は自然数)以上である箇所を欠陥として検出するものである。
【0089】
欠陥検出アルゴリズムEについて、図10および図11に基づいて以下に説明する。この欠陥検出アルゴリズムEは、ピーク法の精度を向上させたものであり、谷の深さに代えて実測値と予測値との差に基づいて欠陥を検出する。
【0090】
この欠陥検出アルゴリズムEでは、撮像部51〜5nで生成された複数枚の原画像データの各々について、以下の処理を行う。
【0091】
まず、ピーク法と同様にして、各画素列の垂直方向輝度プロファイルを求める。求められた垂直方向輝度プロファイルの例を、輝度値をx軸として、図10に示す。この垂直方向輝度プロファイルにおける丸囲み部が、この欠陥検出アルゴリズムEで検出しようとする欠陥に対応するプロファイルである。
【0092】
次に、各画素列の垂直方向輝度プロファイルについて、隣接するプロット間の移動時間がプロット間の距離にかかわらず一定となるように、プロット列の一端から他端に向かって移動する質点を想定する。そして、上記質点が、図11に示すように、プロットcからそれに隣接するプロットbへ、プロットbからそれに隣接するプロットaへ、プロットaからそれに隣接するプロットdへと移動していくとする。また、プロットdが注目画素に対応するプロットであるものとする。
【0093】
そして、プロットdの直前に質点が通過した3つのプロットa〜cにおける質点の速度ベクトルおよび加速度ベクトルを求める。すなわち、上記移動時間と、プロットdの直前に質点が通過した2つのプロットaおよびbの座標(x座標、y座標)とに基づいて、プロットbからプロットaまでの区間における上記質点の速度ベクトルを求める。さらに、上記移動時間と、プロットdの直前に質点が通過したプロットbおよびcの座標(x座標、y座標)とに基づいて、プロットcからプロットbまでの区間における上記質点の速度ベクトルを求め、プロットbからプロットaまでの区間における上記質点の速度ベクトルと、プロットcからプロットbまでの区間における上記質点の速度ベクトルとに基づいて、プロットcからプロットaまでの区間における上記質点の加速度ベクトルを求める。そして、プロットbからプロットaまでの区間における上記質点の速度ベクトルと、プロットcからプロットaまでの区間における上記質点の加速度ベクトルとから、プロットdの座標(位置)を予測する。
【0094】
このようにして予測されたプロットdのx座標(輝度値)と、プロットdの実際(実測)のx座標(輝度値)との差を求め、これらの差が閾値T8以上であればプロットdに対応する画素を欠陥部位として抽出する。これにより、欠陥の有無を判定することができ、また、欠陥の位置を求めることもできる。閾値T8は、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよいが、多値の2次元画像データが256階調の2次元画像データである場合、例えば20であることが好ましい。
【0095】
この欠陥検出アルゴリズムEは、種々の点欠陥を高い確実性をもって検出することができる。この欠陥検出アルゴリズムEを、以下、「ピーク法2」と呼ぶ。
【0096】
〔欠陥検出アルゴリズムF〕
欠陥検出アルゴリズムFについて、図12に基づいて以下に説明する。図12(a)は、撮像部51〜5nの1つで生成された原画像データの例であり、画像の上側が搬送方向下流側であり、画像の下側が搬送方向上流側である。図12(a)において、中央の横方向に伸びる帯状の白領域が線状光源像であり、線状光源像の下側エッジの局所的に歪んでいる部分(水平線に対する傾きが大きいところ)が欠陥である。
【0097】
この欠陥検出アルゴリズムFでは、撮像部51〜5nで生成された複数枚の原画像データの各々について、以下の処理を行う。
【0098】
まず、原画像データから、線状光源像のエッジの少なくとも一方を求める。求められた線状光源像のエッジの例を図12(a)に「○」で示す。図12の例では線状光源像の下側エッジを求めているが、線状光源像の上側エッジを求めてもよく、線状光源像の上側エッジおよび下側エッジの両方を求めてもよい。線状光源像のエッジを求める方法は、欠陥検出アルゴリズムBに関して説明したものと同様であるので、説明を省略する。
【0099】
次に、横方向をx軸、縦方向をy軸とし、線状光源像のエッジの曲線(エッジプロファイル)y=f(x)を、二次微分して二次微分プロファイルを求める。求められた二次微分プロファイルの例を図12(b)に示す。
【0100】
そして、線状光源像のエッジの各画素について、二次微分が閾値T9(T9は正数)以上であるかを判定し、二次微分が閾値T9以上である画素(高周波のところ)を欠陥部位と判定する。これにより、欠陥の有無を判定することができ、また、欠陥の位置を求めることもできる。閾値T9は、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよい。
【0101】
この欠陥検出アルゴリズムFは、線状光源像のエッジの局所的な湾曲として現れる線欠陥の検出に向く。この欠陥検出アルゴリズムFは、欠陥検出能力はあまり高くない。この欠陥検出アルゴリズムFを、以下、「エッジカーブ法1」と呼ぶ。
【0102】
〔欠陥検出アルゴリズムG〕
欠陥検出アルゴリズムGは、2次元画像データにおける線状光源の像のエッジについて、各画素の近傍領域(近傍2n+1画素の範囲)における曲率を求め、曲率が閾値T10(第2の閾値;T10は正数)以上である箇所を欠陥として検出するものである。
【0103】
欠陥検出アルゴリズムGについて、図13に基づいて以下に説明する。
【0104】
この欠陥検出アルゴリズムGでは、撮像部51〜5nで生成された複数枚の原画像データの各々について、以下の処理を行う。
【0105】
まず、原画像データから、線状光源像のエッジの少なくとも一方を求める。求められた線状光源像のエッジの例を図13に示す。線状光源像のエッジを求める方法は、欠陥検出アルゴリズムBに関して説明したものと同様であるので、説明を省略する。
【0106】
次に、線状光源像のエッジの曲線について、各点(各画素)での曲率を求める。曲率を求める方法は、特に限定されるものではなく、数学的に決まっている数式を用いて計算する方法であってもよいが、そのような方法では処理時間が長くなるので、以下の方法で曲率を近似的に求めることが好ましい。
【0107】
(1)エッジ上における、注目画素(図13における黒い点)に対して左右(または前後)n画素(図13における白い点)と注目画素とからなる範囲(注目画素の近傍2n+1画素の範囲)を計算対象範囲とする(nは自然数)。nは、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよいが、例えば30であることが好ましい。図13の例は、nが3の場合である。
【0108】
(2)次に、計算対象範囲の両端の画素を直線で結ぶ。
【0109】
(3)計算対象範囲の全画素にわたって、その直線から予測輝度値を求め、予測輝度値に対する実際の輝度値(エッジ曲線上の輝度値)の増分を求め、その増分またはその増分の絶対値を積算する。ここで得られる積算値によって、注目画素近傍2n+1画素の範囲における曲率を十分に近似できる(数学的に決まっている数式を用いて計算した曲率とほぼ同等の曲率値を得ることができる)。ここで、増分の積算値を用いた構成では、図13(c)のように計算対象範囲内で直線の上へ行ったり直線の下へ行ったりする微小な輝度値の変化が起こった場合に、これらの変化を相殺し無視して、曲率の近似値を求めることになる。一方、増分の絶対値の積算値を用いる構成では、そのような変化が起こった場合にも、そのような変化も含めて曲率の近似値を求めることになる。図13(c)のように計算対象範囲内で直線の上へ行ったり直線の下へ行ったりする微小な輝度値の変化を欠陥として検出したければ、増分の絶対値の積算値を用いる構成とすればよい。逆に、このような変化を許容して欠陥として検出したくない場合には、増分の積算値を用いる構成とすればよい。
【0110】
(4)注目画素を線状光源像におけるエッジの端から端まで1画素ずつ移動させながら、エッジ上の全ての画素について上記積算値を計算していく。これにより、曲率の近似値のプロプァイル(曲率プロファイル)が生成される。
【0111】
次に、上記曲率プロファイルにおける線状光源像のエッジの各画素について、曲率が閾値T10以上であるかを判定し、求められた曲率が閾値T10以上である画素を欠陥部位(または欠陥候補)と判定する。これにより、欠陥の有無を判定することができ、また、欠陥の位置を求めることもできる。成形シート2が多少反っているために線状光源像のエッジは多少曲がっているので、線状光源像のエッジの曲率がある程度までであれば、欠陥ではないものとして許容すべきである。したがって、閾値T10は、比較的大きくするべきである。閾値T10は、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよいが、多値の2次元画像データが256階調の2次元画像データである場合、例えば110であることが好ましい。
【0112】
この欠陥検出アルゴリズムGは、種々の線欠陥を高い確実性をもって検出することができる。この欠陥検出アルゴリズムGを、以下、「エッジカーブ法2」と呼ぶ。
【0113】
本実施形態において、線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nでそれぞれ用いる線欠陥検出アルゴリズムおよび点欠陥検出アルゴリズムの組み合わせは、以下の何れかである。
【0114】
(A)線欠陥用画像解析部611〜61nで用いる線欠陥検出アルゴリズムがエッジプロファイル法2またはエッジカーブ法2であり、点欠陥用画像解析部621〜62nで用いる点欠陥検出アルゴリズムがハイパスフィルタ法またはピーク法2である。
【0115】
(B)線欠陥用画像解析部611〜61nで用いる線欠陥検出アルゴリズムがエッジプロファイル法2またはエッジカーブ法2であり、点欠陥用画像解析部621〜62nで用いる点欠陥検出アルゴリズムがハイパスフィルタ法またはピーク法2以外の欠陥検出アルゴリズムである。
【0116】
(C)線欠陥用画像解析部611〜61nで用いる線欠陥検出アルゴリズムがエッジプロファイル法2またはエッジカーブ法2以外の欠陥検出アルゴリズムであり、点欠陥用画像解析部621〜62nで用いる点欠陥検出アルゴリズムがハイパスフィルタ法またはピーク法2である。
【0117】
(A)〜(C)の組み合わせのうち、(A)の組み合わせが最も好ましい。(A)の組み合わせの場合、線欠陥および点欠陥の両方を確実に検出できる。(B)の組み合わせの場合、線欠陥を確実に検出できる。(C)の組み合わせの場合、点欠陥を確実に検出できる。
【0118】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図14に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0119】
本実施形態に係る欠陥検査装置は、図1に示す解析装置6に代えて図14に示す解析装置6Aを備えている以外は、実施の形態1に係る欠陥検査装置1と同一の構成を備えている。解析装置6Aは、図14に示すように、図1に示す解析装置6から点欠陥用画像解析部621〜62nを省いたものである。
【0120】
本実施形態において、線欠陥用画像解析部611〜61nで用いる線欠陥検出アルゴリズムは、エッジプロファイル法2またはエッジカーブ法2である。本実施形態では、線欠陥を確実に検出できる。
【0121】
なお、本実施形態の欠陥検査装置は、単独で用いてもよいが、点欠陥を検出可能な欠陥検査装置と組み合わせて用いることが好ましい。これにより、線欠陥だけでなく点欠陥も検査できる。本実施形態の欠陥検査装置と組み合わせられる、点欠陥を検出可能な欠陥検査装置は、公知の種々の欠陥検査装置であってもよいが、後述する実施の形態3の欠陥検査装置であることが好ましい。これにより、線欠陥および点欠陥の両方を確実に検査できる。
【0122】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施の形態について図15に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0123】
本実施形態に係る欠陥検査装置は、図1に示す解析装置6に代えて図15に示す解析装置6Bを備えている以外は、実施の形態1に係る欠陥検査装置1と同一の構成を備えている。解析装置6Bは、図15に示すように、図1に示す解析装置6から線欠陥用画像解析部611〜61nを省いたものである。
【0124】
本実施形態において、点欠陥用画像解析部621〜62nで用いる点欠陥検出アルゴリズムは、ハイパスフィルタ法またはピーク法2である。本実施形態では、点欠陥を確実に検出できる。
【0125】
なお、本実施形態の欠陥検査装置は、単独で用いてもよいが、線欠陥を検出可能な欠陥検査装置と組み合わせて用いることが好ましい。これにより、点欠陥だけでなく線欠陥も検査できる。本実施形態の欠陥検査装置と組み合わせられる、線欠陥を検出可能な欠陥検査装置は、公知の種々の欠陥検査装置であってもよいが、実施の形態2の欠陥検査装置であることが好ましい。これにより、線欠陥および点欠陥の両方を確実に検査できる。
【0126】
〔実験例〕
次に、本願発明の効果を確認するために、上記実施の形態に係る欠陥検査装置に類似した14種類の実験用欠陥検査装置を用いて行った実験の結果を示す。
【0127】
第1〜7の実験用欠陥検査装置は、上記実施の形態3に係る欠陥検査装置から撮像部52〜5nを省き、搬送装置3として、搬送ロールに代えて、成形シート2をその表面に載せて搬送するコンベアを用いたものである。第1〜7の実験用欠陥検査装置は、点欠陥を含むサンプルから点欠陥を検出するためのものである。
【0128】
第1の実験用欠陥検査装置はエッジプロファイル法1を用いた点欠陥用画像解析部621〜62nを備え、第2の実験用欠陥検査装置はエッジプロファイル法2を用いた点欠陥用画像解析部621〜62nを備え、第3の実験用欠陥検査装置はハイパスフィルタ法を用いた点欠陥用画像解析部621〜62nを備え、第4の実験用欠陥検査装置はピーク法を用いた点欠陥用画像解析部621〜62nを備え、第5の実験用欠陥検査装置はピーク法2を用いた点欠陥用画像解析部621〜62nを備え、第6の実験用欠陥検査装置はエッジカーブ法1を用いた点欠陥用画像解析部621〜62nを備え、第7の実験用欠陥検査装置はエッジカーブ法2(増分の積算値を用いる方法)を用いた点欠陥用画像解析部621〜62nを備えている。
【0129】
第8〜14の実験用欠陥検査装置は、上記実施の形態2に係る欠陥検査装置から撮像部52〜5nを省き、搬送装置3として、搬送ロールに代えて、成形シート2をその表面に載せて搬送するコンベアを用いたものである。第8〜14の実験用欠陥検査装置は、線欠陥を含むサンプルから線欠陥を検出するためのものである。
【0130】
第8の実験用欠陥検査装置はエッジプロファイル法1を用いた線欠陥用画像解析部611〜61nを備え、第9の実験用欠陥検査装置はエッジプロファイル法2を用いた線欠陥用画像解析部611〜61nを備え、第10の実験用欠陥検査装置はハイパスフィルタ法を用いた線欠陥用画像解析部611〜61nを備え、第11の実験用欠陥検査装置はピーク法を用いた線欠陥用画像解析部611〜61nを備え、第12の実験用欠陥検査装置はピーク法2を用いた線欠陥用画像解析部611〜61nを備え、第13の実験用欠陥検査装置はエッジカーブ法1を用いた線欠陥用画像解析部611〜61nを備え、第14の実験用欠陥検査装置はエッジカーブ法2(増分の積算値を用いる方法)を用いた線欠陥用画像解析部611〜61nを備えている。
【0131】
本実験例では、成形シート2として、異なる種類の点欠陥を含む10種類の偏光フィルムのサンプルと、異なる種類の線欠陥を含む6種類の偏光フィルムのサンプルとを用いた。点欠陥を含む10種類のサンプルは、気泡を含むサンプル01、フィッシュアイを含むサンプル02、第1の異物を含むサンプル03、第1の異物と異なる第2の異物を含むサンプル04、第1のタイヤ跡を含むサンプル06、第1のタイヤ跡と異なる第2のタイヤ跡を含むサンプル07、第1の打痕を含むサンプル08、第1の打痕と異なる第2の打痕を含むサンプル09、第1の傷を含むサンプル11、および第1の傷と異なる第2の傷を含むサンプル12である。線欠陥を含む6種類のサンプルは、クニック(線欠陥)を含むサンプル10、第1のクニックと異なる第2のクニック(線欠陥)を含むサンプル13、成形シート2の搬送方向に沿ったスジを含むサンプル51、成形シート2の搬送方向に直交する強いスジを含むサンプル52、成形シート2の搬送方向に直交する弱いスジを含むサンプル53、および、成形シート2の搬送方向に対して斜め方向のスジを含むサンプル53である。
【0132】
また、第1〜14の実験用欠陥検査装置では、撮像部51として、二次元画像を撮像して、256階調の横512画素×縦480画素の二次元画像データを生成することができる、CCD素子を用いたプログレッシブスキャンエリアセンサを用いた。第1〜14の実験用欠陥検査装置では、線状光源4として、シャープエッジフード(線状光源像のエッジをシャープにするフード)を貼り付けた高周波蛍光灯を用いた。第1〜14の実験用欠陥検査装置では、コンベアによる成形シート2の搬送速度を20mm/sec(=1.2m/min)とした。また、コンベアの端(図2の手前側の端)から145mmの距離にある位置が撮像部51による撮像領域の中心となるようにした。また、この145mmを計るのに金尺を用い、金尺から欠陥までの距離が55mmとなるようにした。
【0133】
点欠陥を検出するための第1〜7の実験用欠陥検査装置では、成形シート2上の撮像領域(視野)が横(成形シート2の搬送方向に直交し、かつ成形シート2の厚み方向に直交する方向)51.2mm×縦(成形シート2の搬送方向)48mmとなるように、撮像部51の位置および角度を調整した。ただし、上記プログレッシブスキャンエリアセンサの512画素×480画素のうち、上から240番目の画素の位置(上下方向の中央位置)にある横方向に並ぶ512画素が成形シート2表面における横51.2mmの領域を撮影するように撮像部51の位置および角度を調整した。すなわち、成形シート2から撮像部51までの距離が190mmとなるように撮像部51の位置を調整し、また、撮像部51の撮像方向(撮像部51の集光レンズの中心から、撮像部51によって撮像される領域の中心に向かう方向)と成形シート2表面とのなす角度が40度となるように撮像部51の角度を調整した。この場合、撮像部51の解像度は、100μm/画素である。また、点欠陥を検出するための第1〜7の実験用欠陥検査装置では、プログレッシブスキャンエリアセンサとして、焦点距離が25mmであり、最小F値が1.4であり、レンズ先端ワークディスタンスが270mmであるCマウントのレンズをプログレッシブスキャンエリアセンサ本体に装着したものを用い、絞りを約11に調整した。
【0134】
また、点欠陥を検出するための第1〜7の実験用欠陥検査装置では、線状光源4の長手方向が成形シート2の搬送方向と直交し、成形シート2から線状光源4までの距離が240mmとなり、かつ、成形シート2上の撮像領域の中心と線状光源4の中心とを結んだ直線が成形シート2表面に対して37度の角度をなすように、線状光源4を配置した。
【0135】
線欠陥を検出するための第8〜14の実験用欠陥検査装置では、成形シート2上の撮像領域が横204.8mm×縦192mmとなるように、撮像部51の位置および角度を調整した。ただし、上記プログレッシブスキャンエリアセンサの512画素×480画素のうち、上から240番目の画素の位置(上下方向の中央位置)にある横方向に並ぶ512画素が成形シート2表面における横204.8mmの領域を撮影するように撮像部51の位置および角度を調整した。すなわち、成形シート2から撮像部51までの距離が400mmとなるように撮像部51の位置を調整し、また、撮像部51の撮像方向と成形シート2表面とのなす角度が15度となるように撮像部51の角度を調整した。この場合、撮像部51の解像度は、200μm/画素である。また、線欠陥を検出するための第8〜14の実験用欠陥検査装置では、プログレッシブスキャンエリアセンサとして、焦点距離が25mmであり、最小F値が1.4であり、レンズ先端ワークディスタンスが490mmであるCマウントのレンズをプログレッシブスキャンエリアセンサ本体に装着したものを用い、絞りを約5.6〜8に調整した。
【0136】
また、線欠陥を検出するための第8〜14の実験用欠陥検査装置では、線状光源4の長手方向が成形シート2の搬送方向に対して25度の角度をなすように、線状光源4を配置し、線状光源4のワークディスタンスを900mmとした。
【0137】
ここでは、直径が0.5mmの点欠陥を確実に検出できるように、欠陥検出アルゴリズムのパラメータを設定した。第1および第8の実験用欠陥検査装置では、エッジプロファイル法1における閾値T3を3に設定した。第2および第9の実験用欠陥検査装置では、エッジプロファイル法2における閾値T5を4に設定した。第3および第10の実験用欠陥検査装置では、エッジプロファイル法2におけるkを4.5に設定し、エッジプロファイル法2に用いる横方向平滑化フィルタを1行3列の平滑化フィルタとした。第4および第11の実験用欠陥検査装置では、ピーク法における閾値T7を最大輝度値の25%(255×0.25)に設定した。第5および第12の実験用欠陥検査装置では、ピーク法2における閾値を20に設定した。第6および第13の実験用欠陥検査装置では、エッジカーブ法1において用いるパラメータである距離を15に設定し、kを5に設定した。第7および第14の実験用欠陥検査装置では、エッジカーブ法2として前述した近似的に曲率を求める方法を用い、計算対象範囲を注目画素に対して前後30画素の範囲とした。
【0138】
そして、第1〜7の実験用欠陥検査装置を用いて、点欠陥を含む10種類のサンプルから点欠陥を検出できるかを調べ、第8〜14の実験用欠陥検査装置を用いて、線欠陥を含む6種類のサンプルから線欠陥を検出できるかを調べた。得られた結果を表1に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
第1〜7の実験用欠陥検査装置では、撮像される成形シート2の動画の全フレーム数(全キャプチャ枚数)は150枚であるが、1つの欠陥検出対象点あるいは点欠陥が撮像部51の撮像領域に入って撮像部51の撮像領域から出て行くまでの期間内に、30フレームの動画が撮像部51で撮像される。すなわち、欠陥が常に見えているとすれば、撮像部51で撮像された2次元画像データのうちで、上記期間内に撮像された30枚(30フレーム)の2次元画像データに欠陥の画像が含まれることになる。表1の点欠陥の各行では、上記期間内に撮像された30フレームの2次元画像データのうちで、各実験用欠陥検査装置によって欠陥が検出されたフレーム(コマ)の数(欠陥が検出された回数)を「検出コマ数」のカラムに記載している。
【0141】
第8〜14の実験用欠陥検査装置では、1つの欠陥検出対象点が撮像部51の撮像領域に入って撮像部51の撮像領域から出て行くまでの期間内に、300フレームの動画が撮像部51で撮像される。表1の線欠陥の各行では、上記期間内に撮像された300フレームの2次元画像データのうちで、各実験用欠陥検査装置によって欠陥が検出されたフレーム(コマ)の数を「検出コマ数」のカラムに記載している。
【0142】
表1において、検出コマ数が0であることは、欠陥が検出できなかったことを示し、検出コマ数の大小は、欠陥検出の精度あるいは確実性を示す。例えば検出コマ数が1〜2コマのような少ない数である場合には、欠陥検出の精度が低いと考えられる。表1では、欠陥検出の精度を、本願出願人が独自に決めた判定基準によって、「×」(検出コマ数が0コマ)、「△」(検出コマ数が1〜2コマ)、「○」(検出コマ数が3〜6コマ)、「◎」(検出コマ数が7コマ以上)の4段階に分類し、「判定」のカラムに記載している。
【0143】
また、表1において、「虚報」の行は、1800フレーム(コマ)中において何フレームで虚報が発生したかを示している。
【0144】
表1の結果から、ハイパスフィルタ法およびピーク法2を用いた欠陥検査装置(第3および第5の実験用欠陥検査装置)によって、全ての種類の点欠陥を精度良く検出できることが分かる。すなわち、前記実施の形態に係る欠陥検査装置において、点欠陥用画像解析部621〜62nで用いる点欠陥検出アルゴリズムがハイパスフィルタ法またはピーク法2であれば、全ての種類の点欠陥を精度良く検出できることが分かる。
【0145】
また、表1の結果から、エッジプロファイル法2およびエッジカーブ法2を用いた欠陥検査装置(第2および第7の実験用欠陥検査装置)によって、全ての種類の線欠陥を精度良く検出できることが分かる。すなわち、前記実施の形態に係る欠陥検査装置において、線欠陥用画像解析部611〜61nで用いる線欠陥検出アルゴリズムがエッジプロファイル法2またはエッジカーブ法2であれば、全ての種類の線欠陥を精度良く検出できることが分かる。
【0146】
また、表1のほとんどの場合において、検出コマ数が最大値(点欠陥の場合には30、線欠陥の場合には300)より小さいことから、本実験例で欠陥の検出に用いた複数枚の2次元画像データ(動画データ)のうちの1枚の2次元画像データ(静止画像データ)のみに基づいて欠陥を検出する方法では、欠陥が検出できない可能性があることが分かる。例えば、本実験例で欠陥の検出に用いた複数枚の2次元画像データのうちの1枚の2次元画像データをランダムに選択し、その1枚の2次元画像データのみに基づいてサンプル13に含まれるクニックを検出しようとした場合、最も確実にクニックを検出できる欠陥検出アルゴリズム(エッジカーブ法2)を用いても、8/300という低い確率でしかクニックを検出できない。
【0147】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の実施の一形態に係る欠陥検査装置の主要部の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】上記欠陥検査装置の概観を示す模式図である。
【図3】従来技術の問題点を説明するための図である。
【図4】従来技術の問題点を説明するための図である。
【図5】従来技術の問題点を説明するための図である。
【図6】欠陥検出アルゴリズムの一例(エッジプロファイル法1)を説明するための図である。
【図7】欠陥検出アルゴリズムの他の例(エッジプロファイル法2)を説明するための図である。
【図8】欠陥検出アルゴリズムのさらに他の例(ピーク法)を説明するための図である。
【図9】欠陥検出アルゴリズムのさらに他の例(ピーク法)を説明するための図である。
【図10】欠陥検出アルゴリズムのさらに他の例(ピーク法2)を説明するための図である。
【図11】欠陥検出アルゴリズムのさらに他の例(ピーク法2)を説明するための図である。
【図12】欠陥検出アルゴリズムのさらに他の例(エッジカーブ法1)を説明するための図である。
【図13】欠陥検出アルゴリズムのさらに他の例(エッジカーブ法2)を説明するための図である。
【図14】本発明の他の実施の形態に係る欠陥検査装置の主要部の構成を示す機能ブロック図である。
【図15】本発明のさらに他の実施の形態に係る欠陥検査装置の主要部の構成を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0149】
1 欠陥検査装置
2 成形シート
3 搬送装置(移動手段)
4 線状光源
51〜5n 撮像部(撮像手段)
6 解析装置
6A 解析装置
6B 解析装置
611〜61n 線欠陥用画像解析部(線欠陥検出手段)
621〜62n 点欠陥用画像解析部(点欠陥検出手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルムや位相差フィルム等の光学フィルム(特にウェブ状に巻いて保管・輸送される長尺の光学フィルム)等のような、成形シートの欠陥を検査する欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旧来の成形シートの欠陥検査装置は、ラインセンサと呼ばれる1次元カメラを用い、成形シートを蛍光管等の線状光源で照明し、成形シート表面を成形シートの長手方向に沿って長手方向の一端から他端まで1次元カメラで走査して1枚の静止画像データを取得し、この1枚の静止画像データに基づいて成形シートの欠陥を検査するものである。この静止画像データには、通常、線状光源像が含まれる。線状光源像は、線状光源およびカメラと反射面との間に成形シートが配置されている場合には、線状光源から出射し成形シートによって正反射されてカメラに到達した光の像であり、線状光源とカメラとの間に成形シートが配置されている場合には、線状光源から出射し成形シートを透過してカメラに到達した光の像である。この欠陥検査装置では、成形シートの幅が広い場合、成形シートの幅方向全域を検査できるように、複数台のラインセンサを幅方向に並べて用いる。
【0003】
しかしながら、この旧来の欠陥検査装置では、成形シート全域についての1枚の静止画像データ(以下、単に「画像データ」と称する)に基づいて成形シートの欠陥を検査するものであるので、画像データにおける検査対象画素と線状光源像との位置関係は、1つの決まった位置関係となる。欠陥は、検査対象画素(注目画素)と線状光源像との位置関係が特定の位置関係にある場合にしか画像データ上に現れないことがある。例えば、欠陥の1種である気泡は、線状光源像の周縁または近傍にある場合にしか画像データ上に現れないことが多い。そのため、欠陥は、その位置によっては、検出されないことがある。したがって、上記旧来の欠陥検査装置は、限られた欠陥検出能力しか持っていない。
【0004】
そこで、本願の出願人は、上記旧来の欠陥検査装置に対して欠陥識別能力を向上させた成形シートの欠陥検査装置を出願している(特許文献1参照)。この欠陥検査装置では、成形シートを蛍光管等の線状光源で照明し、成形シートを所定方向に連続して搬送しながら、エリアセンサと呼ばれる2次元カメラを用いて動画データ(成形シート上での撮像位置が異なる複数枚の画像データ)を取得し、この動画データに基づいて成形シートの欠陥を検査するものである。この欠陥検査装置では、検査対象画素と線状光源像との位置関係が異なる複数枚の画像データに基づいて欠陥があるかを判定することができるので、旧来の欠陥検査装置よりも欠陥を確実に検出できる。したがって、この欠陥検査装置は、旧来の欠陥検査装置よりも欠陥検出能力が向上する。なお、この動画データを利用すれば、照明像に対して欠陥が動いていく様子を見ることもできる。
【特許文献1】特開2007−218629号公報(2007年8月30日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本願発明者の検討によれば、特許文献1に記載の欠陥検査装置も、欠陥検出能力に改善の余地があることが分かった。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載の欠陥検査装置では、エリアセンサによって撮像された(多値の)複数枚の画像データの各々から、以下の画像処理によって欠陥を検出している(特許文献1の[0032]〜[0035]参照)。
【0007】
まず、多値の画像データを2値化し、白領域および黒領域をラベリングして検出対象とする。次いで、検出対象の白領域から、指定値(線状光源像の面積に見合った比較的大きい値;例えば2500画素)を超える面積(画素数)を持つ白領域を、線状光源像とみなして除外する。同様に、検出対象の黒領域から、指定値(背景領域の面積に見合った比較的大きい値)を超える面積を持つ黒領域を、背景領域(成形シートにおける欠陥がない領域の画像)とみなして除外する。さらに、検出対象の白領域および黒領域から、指定値(1画素に近い比較的小さい値;例えば9画素)未満の面積を持つ白領域および黒領域をノイズとみなして除外する。そして、検出対象の白領域および黒領域から除外されずに残った領域を欠陥として検出する。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の欠陥検査装置は、明暗の反転に基づいて欠陥を検出するものであるため、画像データ上におけるコントラストが低い欠陥を検出できないことがある。
【0009】
ここで、本願発明において検出対象とする種々の欠陥について説明する。本願発明は、主として、成形シート表面の微小な凹凸(特に数μm程度の高さの凹凸)を伴う欠陥(外観欠陥)を検出しようとするものである。微小な凹凸を伴う欠陥としては、例えば、気泡または異物に起因して成形シート表面に生じた微小な凹凸;打痕(点で押されて生じた押し痕);折り曲げられた痕(「クニック」と呼ばれる);成形シートの製造時に、搬送ロールで搬送される際に生じた搬送ロールによる押し痕(「スジ」と呼ばれる)などが挙げられる。これらの微小な凹凸を伴う欠陥は、旧来のラインセンサを用いた欠陥検査装置では非常に検出が難しい。本願発明は、主として、これらの種類の欠陥を検出することを目的としている。
【0010】
本願明細書では、便宜上、微小凹凸が局所的に集中している(凸部の直径が1mm程度以下(撮像装置の分解能が200μm/画素の場合には数画素程度以下)である)欠陥、例えば、気泡、異物、打痕などを点欠陥と呼び、微小凹凸が線状に繋がって1mmを超える大きさとなったものを線欠陥と呼ぶ。スジ等のような典型的な線欠陥は、10mm程度を超える幅(撮像装置の分解能が200μm/画素の場合には数10画素程度を超える幅)を持ち、典型的には数十cm程度、場合によっては数十cmを超える幅を持つ。クニックは、10mm程度以下(撮像装置の分解能が200μm/画素の場合には数10画素程度以下)の幅、典型的には数mm程度の幅を持ち、点欠陥と典型的な線欠陥との中間的な性質をもつ。
【0011】
特許文献1に記載の欠陥検査装置の撮像部において撮像される欠陥画像(動画)の例は、特許文献1の図14〜図15に示されている通りである。特許文献1の図14〜図15では、動画を構成する連続した5枚のフレームを時間の早い順に(a)〜(e)として示している。この動画が通常のテレビジョン用動画であれば、フレーム間の時間間隔(フレームレート)は1/30秒である。フレーム間の時間間隔は、撮像部の特性に依存する。特許文献1の欠陥検査装置では、撮像部は、撮像部から成形シートの撮像領域(特許文献1の図1における成形シート表面に破線で示された矩形)の中心に向かう方向と成形シートの搬送方向とが鋭角をなすように、かつ、撮像領域の一部に照明像(線状光源の反射像)が含まれ、撮像領域における照明像の両側に照明像のない領域(背景領域)が存在するように配置されている。したがって、特許文献1の図14〜図15に示された動画における上方向は、成形シートの搬送方向と一致する。成形シートにおける撮像領域の中で、欠陥は成形シートの搬送方向に移動するので、特許文献1の図14〜図15に示された動画において、欠陥は下から上へと移動している(照明像は、白い帯状の領域として写っている)。
【0012】
特許文献1の図14は、撮像部によって撮像された気泡(点欠陥)を含む撮像領域(搬送方向に直交する方向のサイズ:5mm)の動画の例であり、気泡は明暗が反転した部分として見えている。この動画では、1つめのフレーム(a)では気泡が見えていないが、点欠陥が照明像に近づいた2つめのフレーム(b)では気泡が見え始め、気泡が照明像のエッジに位置する3つめのフレーム(c)では気泡が比較的良く見え、気泡が照明像の中に入った4つめおよび5つめのフレーム(d)(e)では、気泡が照明光に埋もれて見えなくなる。
【0013】
特許文献1の図15は、撮像部によって撮像されたクニックを含む撮像領域(搬送方向に直交する方向のサイズ:5mm)の動画の例であり、撮像部によって撮像されたクニックによる明暗の反転はなく、クニックが通過していくに従って、本来は矩形の白領域として写っているはずの照明像が時間と共に歪んでいっている。
【0014】
特許文献1の図15は、撮像部によって撮像されたスジ(線欠陥)を含む撮像領域(搬送方向に直交する方向のサイズ:200mm)の動画の例である。1〜3つめのフレーム(a)〜(c)では、照明像が多少弓状に歪んでいるが、この程度の弓状の歪みは、欠陥に起因するものではなく、成形シートを引っ張っているために生じるものである。一方、4つめのフレームでは、照明像が、S字状に、比較的大きく歪んでいる。照明像がこの程度以上歪むのは、歪んでいる位置にスジがあるためである。したがって、照明像がこの程度以上歪んだ部分を欠陥として検出することが望まれる。
【0015】
しかしながら、特許文献1の欠陥検査装置は、2値化処理において明領域(線状光源像および線状光源像内部の欠陥領域)と暗領域(背景領域および背景領域内部の欠陥領域)とを切り分ける閾値によっては、画像データ上におけるコントラストが低い欠陥を検出できないことがあることが分かった。
【0016】
すなわち、特許文献1の欠陥検査装置において、欠陥が、画像データ上におけるコントラスト(欠陥による輝度変化)が比較的高いものである場合、図3の垂直方向(成形シート搬送方向)輝度プロファイルに示すように、欠陥による輝度変化が2値化処理の閾値をまたぐように観測される。より詳細に説明すると、線状光源像の中で暗領域として観測される欠陥に対応する極小点(図3における谷の部分)の輝度値より大きく、かつ、その極小点の両側にある極大点の輝度値より小さくなる。また、2値化処理の閾値は、線状光源像の外で明領域として観測される欠陥に対応する極大点(図3における山の部分)の輝度値より大きく、かつ、その極大点の両側にある極小点の輝度値より大きくなる。それゆえ、線状光源像の中で暗領域として観測される欠陥も、線状光源像の外で明領域として観測される欠陥も、検出される。したがって、特許文献1の欠陥検査装置は、コントラストが比較的高い欠陥を確実に検出できる。
【0017】
一方、特許文献1の欠陥検査装置において、欠陥が、画像データ上におけるコントラストが低いものである場合、欠陥部分の垂直方向輝度プロファイルと2値化処理の閾値との関係が図4の垂直方向輝度プロファイルに示す関係、すなわち、欠陥による輝度変化が2値化処理の閾値をまたがない関係となる。目安として、次式
(欠陥による輝度変化量)<{(線状光源像領域の輝度レベル)
−(背景領域の輝度レベル)}/2 …(1)
を満たす場合に、図4に示す関係となることがある。図4に示す関係となった場合、欠陥を見逃すことになる。
【0018】
ただし、画像データ上における欠陥のコントラストが低く、式(1)を満たす場合であっても、図5の垂直方向輝度プロファイルに示すように欠陥による輝度変化が2値化処理の閾値をまたぐように観測される場合については、欠陥を検出できる。したがって、特許文献1の欠陥検査装置は、式(1)を満たす場合であっても、欠陥による輝度変化と2値化処理の閾値との関係によっては、欠陥を検出できる。
【0019】
さらに、特許文献1の欠陥検査装置は、動画像を用いており、動画像では、欠陥像が、1コマごとに線状光源像に接近し、線状光源像内を通過し、線状光源像から遠ざかるという動きが観測される。したがって、画像データ上における欠陥のコントラストが低く、式(1)を満たす場合であっても、動画像を構成する複数の画像の中に1つでも、欠陥による輝度変化と2値化処理の閾値との関係が図5に示す関係となる画像があれば、欠陥を検出できる。
【0020】
以上のように、特許文献1の欠陥検査装置では、式(1)を境として、欠陥による輝度変化量が小さくなるにしたがって、欠陥を見逃す可能性が高くなっていく。したがって、特許文献1の欠陥検査装置は、コントラストが低い欠陥の検出の確実性については、改善の余地がある。
【0021】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、種々の欠陥をより確実に検出することができる、成形シートの欠陥検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る欠陥検査装置は、上記課題を解決するために、成形シートの欠陥を検出する欠陥検査装置であって、上記成形シートの2次元画像を複数回撮像して複数の2次元画像データを生成する撮像手段と、上記成形シートにおける撮像される領域の一部に線状光源の像が投影されるように、上記成形シートを照明するための線状光源と、上記成形シートにおける上記線状光源の像が投影されている位置が変化するように、上記成形シートおよび上記線状光源の少なくとも一方を、上記線状光源の長手方向と交差し、かつ上記成形シートの厚み方向に直交する方向に移動させる移動手段と、上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから線欠陥を検出する線欠陥検出手段とを備え、上記線欠陥検出手段は、上記2次元画像データにおける線状光源の像のエッジを関数曲線でフィッティングし、線状光源の像のエッジと関数曲線との距離が第1の閾値以上である箇所を線欠陥として検出する線欠陥検出アルゴリズム、または上記2次元画像データにおける線状光源の像のエッジについて、各画素の近傍領域における曲率を求め、曲率が第2の閾値以上である箇所を線欠陥として検出する線欠陥検出アルゴリズムによって線欠陥を検出するものであることを特徴としている。
【0023】
上記の構成によれば、線欠陥をより確実に検出することができる。
【0024】
上記欠陥検査装置は、上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから点欠陥を検出する点欠陥検出手段をさらに備えることが好ましい。これにより、線欠陥だけでなく点欠陥をも検出できる。
【0025】
上記欠陥検査装置において、上記点欠陥検出手段は、上記2次元画像データにおける一直線上に沿った位置に依存した輝度の変化を輝度プロファイルとして表し、輝度プロファイルのプロット群をプロット間の移動時間が一定となるように移動する質点を想定し、注目プロットの直前2つのプロット間における上記質点の速度ベクトルと上記注目プロットの直前3つのプロット間における上記質点の加速度ベクトルとから上記注目プロットの輝度値を予測し、予測された輝度値と実際の輝度値との差が第3の閾値以上である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズム、または上記2次元画像データを平滑化し、平滑化された2次元画像データと元の2次元画像データとの差分を差分画像データとして求め、差分画像データにおける輝度値が第4の閾値以上である箇所および輝度値が第5の閾値(第5の閾値は第4の閾値より小さい)以下である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズムによって点欠陥を検出するものであることが好ましい。これにより、特許文献1の技術と比較して、コントラストの低い点欠陥(例えば、図4のような小さな輝度変化を示す欠陥)をより確実に検出することが可能になる。したがって、点欠陥および線欠陥の両方を確実に検出できる。
【0026】
本発明に係る欠陥検査装置は、上記課題を解決するために、成形シートの欠陥を検出する欠陥検査装置であって、上記成形シートの2次元画像を複数回撮像して複数の2次元画像データを生成する撮像手段と、上記成形シートにおける撮像される領域の一部に線状光源の像が投影されるように、上記成形シートを照明するための線状光源と、上記成形シートにおける上記線状光源の像が投影されている位置が変化するように、上記成形シートおよび上記線状光源の少なくとも一方を、上記線状光源の長手方向と交差し、かつ上記成形シートの厚み方向に直交する方向に移動させる移動手段と、上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから点欠陥を検出する点欠陥検出手段とを備え、上記点欠陥検出手段は、上記2次元画像データにおける一直線上に沿った位置に依存した輝度の変化を輝度プロファイルとして表し、輝度プロファイルのプロット群をプロット間の移動時間が一定となるように移動する質点を想定し、注目プロットの直前2つのプロット間における上記質点の速度ベクトルと上記注目プロットの直前3つのプロット間における上記質点の加速度ベクトルとから上記注目プロットの輝度値を予測し、予測された輝度値と実際の輝度値との差が第3の閾値以上である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズム、または上記2次元画像データを平滑化し、平滑化された2次元画像データと元の2次元画像データとの差分を差分画像データとして求め、差分画像データにおける輝度値が第4の閾値以上である箇所および輝度値が第5の閾値(第5の閾値は第4の閾値より小さい)以下である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズムによって点欠陥を検出するものであることを特徴としている。
【0027】
これにより、特許文献1の技術と比較して、コントラストの低い点欠陥(例えば、図4のような小さな輝度変化を示す欠陥)をより確実に検出することが可能になる。
【0028】
上記欠陥検査装置は、上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから線欠陥を検出する線欠陥検出手段をさらに備えることが好ましい。これにより、点欠陥だけでなく線欠陥をも検出できる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明は、種々の欠陥をより確実に検出することができる、成形シートの欠陥検査装置を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0031】
本実施形態に係る欠陥検査装置は、成形シートの欠陥を検出するものである。本実施形態に係る欠陥検査装置は、光透過性の成形シート、特に、熱可塑性樹脂等の樹脂からなる成形シートの検査に適している。樹脂からなる成形シートとしては、例えば、押出機から押し出された熱可塑性樹脂をロールの隙間に通して表面に平滑さや光沢を付与する処理が施され、引取ロールにより搬送ロール上を冷却されながら引き取ることにより成形されたものが挙げられる。本実施の形態に適用可能な熱可塑性樹脂は、例えば、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロール樹脂等である。成形シートは、これら熱可塑性樹脂のうちの1つのみからなっていてもよく、これら熱可塑性樹脂の複数種類を積層したもの(積層シート)であってもよい。また、本実施形態に係る欠陥検査装置は、偏光フィルムや位相差フィルム等の光学フィルム、特にウェブ状に巻いて保管・輸送される長尺の光学フィルムの検査に適している。また、成形シートは、どのような厚みを持つものであってもよく、一般にフィルムと呼ばれるような比較的薄い厚みを持つものであっても、一般に板と呼ばれるような比較的厚い厚みを持つものであってもよい。
【0032】
成形シートの欠陥の例としては、気泡(成形時に生じるもの等)、フィッシュアイ、異物、タイヤ跡、打痕、傷等の点欠陥;クニック、スジ(厚さの違いにより生じるもの等)等が挙げられる。
【0033】
本実施形態に係る欠陥検査装置1の構成について、図1および図2に基づいて以下に説明する。図1は、欠陥検査装置1の主要部の構成を示す機能ブロック図である。図2は、欠陥検査装置1の概観を示す模式図である。なお、図2においては、成形シートに重なった部材を識別し易いように成形シート表面の明暗を反転して示している。したがって、図2における成形シート表面の黒色領域は、実際には明領域であり、図2における成形シート表面の白色領域は、実際には暗領域である。
【0034】
欠陥検査装置1は、矩形の成形シート2を搬送装置(移動手段)3によって一定方向に搬送しながら、線状光源4により照明された成形シート2をn個(nは2以上の整数)の撮像部(撮像手段)51〜5nによって複数回撮像して撮像部51〜5nの各々で複数の2次元画像データを生成し、生成された複数の2次元画像データに基づいて解析装置6が成形シート2の欠陥を検出するものである。
【0035】
欠陥検査装置1は、成形シート2を搬送する搬送装置(移動手段)3と、成形シート2における撮像領域(撮像部51〜5nによって撮像される領域;図2における成形シート2表面に破線で示された矩形)の一部に線状光源4の像が投影されるように成形シート2を照明するための線状光源4と、線状光源4の反射像(線状光源4からの直接光が成形シート2によって反射されて撮像部51〜5nに到達する結果として形成される線状光源4の像)および成形シート2の反射像(線状光源4からの散乱光が成形シート2によって反射されて撮像部51〜5nに到達する結果として形成される成形シート2の像)を含む2次元画像を複数回撮像する撮像部51〜5nと、複数の2次元画像データに基づいて、画像処理アルゴリズム(欠陥検出アルゴリズム)によって成形シート2の欠陥を検出する解析装置6とを備えている。
【0036】
搬送装置3は、成形シート2における線状光源4の像が投影されている位置が変化するように、成形シート2を、その厚み方向に直交する方向、特にその長手方向に搬送するものである。搬送装置3は、例えば、成形シート2を一定の方向に搬送する送出ローラと受取ローラとを備え、ロータリーエンコーダ等により搬送速度を計測する。搬送速度は、例えば2m〜12m/分程度に設定される。搬送装置3における搬送速度は、図示しない情報処理装置等によって設定および制御される。
【0037】
線状光源4は、その長手方向が成形シート2の搬送方向と交差する方向(例えば成形シート2の搬送方向と直交する方向)となるように、かつ、線状光源4の反射像が成形シート2の撮像領域を横切り、撮像領域における線状光源4の反射像の両側に線状光源像のない領域(背景領域)が存在するように配置されている。線状光源4は、成形シート2の組成及び性質に影響を与えない光を発光するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、蛍光灯(特に高周波蛍光灯)、メタルハライドランプ、ハロゲン伝送ライトなどである。なお、線状光源4を、成形シート2を挟んで撮像部51〜5nに対向する位置に配置し、線状光源4の透過像(線状光源4からの直接光が成形シート2を透過して撮像部51〜5nに到達することによって形成される線状光源4の像)および成形シート2の透過像(線状光源4からの散乱光が成形シート2を透過して撮像部51〜5nに到達することによって形成される成形シート2の像)を含む2次元画像が撮像部51〜5nによって撮像されるようにしてもよい。
【0038】
撮像部51〜5nの各々は、線状光源4の反射像および成形シート2の反射像を含む2次元画像を複数回撮像して、複数の2次元画像データを生成し出力する。撮像部51〜5nは、2次元画像を撮像するCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子で構成されるエリアセンサからなる。欠陥検査装置1によって検出される欠陥のサイズは、撮像部51〜5nの分解能に依存するので、検出したい欠陥のサイズに合わせて撮像部51〜5nの分解能を選定するとよい。なお、欠陥検査装置1によって検出される欠陥の立体形状(幅対高さの比)は、基本的には撮像部51〜5nの分解能に依存しないので、検出したい欠陥の種類によってカメラ分解能を選定する必要はない。
【0039】
撮像部51〜5nは、撮像部51〜5nから成形シート2の撮像領域の中心に向かう方向と成形シート2の搬送方向とが鋭角をなすように配置されている。撮像部51〜5nは、成形シート2の幅方向(成形シート2の搬送方向に直交し、かつ成形シート2の厚み方向に直交する方向)の全領域が撮像部51〜5nの少なくとも1つで撮像されるように、成形シート2の幅方向に沿って並べて配置されている。撮像部51〜5nによって成形シート2の幅方向の全領域を撮像することにより、成形シート2の全領域の欠陥を検査することができる。
【0040】
撮像部51〜5nの撮像間隔(フレームレート)は、固定されていてもよく、ユーザが撮像部51〜5n自体を操作することによって変更可能となっていてもよく、撮像部51〜5nに接続された情報処理装置(図示しない;省略可能)をユーザが操作することによって変更可能となっていてもよい。また、撮像部51〜5nの撮像間隔は、デジタルスチルカメラの連続撮影の時間間隔である数分の1秒などであってもよいが、検査の効率化を向上させるために、短い時間間隔、例えば一般的な動画データのフレームレートである1/30秒などであることが好ましい。
【0041】
ここで、各撮像部51〜5nが1枚の2次元画像を撮像してから次の2次元画像を撮像するまでの期間に成形シート2が搬送される距離(搬送距離)は、成形シート2の搬送方向に沿った撮像領域の長さの少なくとも1/m(mは2以上)に設定されている。これによって、成形シート2の同一箇所を含む2次元画像がm回撮像される。mは2より十分大きいことが好ましい。成形シート2の同一箇所の撮像回数を増加させることにより、高精度に欠陥を検査することができる。
【0042】
解析装置6は、図1に示すように、各撮像部51〜5nから出力された複数の2次元画像データを受け取り、複数の2次元画像データに基づいて欠陥を検出して検出結果(検査結果)を出力する線欠陥用画像解析部(線欠陥検出手段)611〜61nおよび点欠陥用画像解析部(点欠陥検出手段)621〜62nと、検出結果(検査結果)を表示する表示部64と、これらの各部を統括的に制御するコントロールCPU63とを備えている。
【0043】
各撮像部51〜5nで生成された複数の2次元画像データは、それぞれ線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nに入力される。
【0044】
線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nの各々は、線欠陥検出アルゴリズムによって、成形シート2上における線状光源像の位置が異なる複数の(複数フレームの)2次元画像データから欠陥を検出し、その結果を検査結果として出力する。点欠陥用画像解析部621〜62nの各々は、点欠陥検出アルゴリズムによって、成形シート2上における線状光源像の位置が異なる複数の(複数フレームの)2次元画像データから欠陥を検出し、その結果を検査結果として出力する。線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nは、成形シート2上における線状光源像の位置が異なる複数の2次元画像データに基づいて欠陥があるかを判定するので、旧来の欠陥検査装置よりも欠陥を確実に検出できる。
【0045】
線欠陥検出アルゴリズムおよび点欠陥検出アルゴリズムについては、後段で説明する。線欠陥検出アルゴリズムおよび点欠陥検出アルゴリズムのパラメータは、固定されていてもよいが、線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nに接続された情報処理装置(図示しない;省略可能)をユーザが操作することによって変更可能となっていてもよい。
【0046】
線欠陥用画像解析部611〜61nは、線欠陥検出アルゴリズムによって複数の2次元画像データのうちのL個(L≦m)以上から線欠陥が検出された場合に、線欠陥があるという結果を検査結果として出力し、他の場合に、線欠陥がないという結果を検査結果として出力するものであってもよく、線欠陥検出アルゴリズムによって複数の2次元画像データのうちのL個以上から線欠陥が検出された場合に、線欠陥位置の情報を検査結果として出力し、他の場合には検査結果を出力しないものであってもよい。2次元画像データの個数mが3以上であり、Lが2以上である場合には、線欠陥検出アルゴリズムによって線欠陥が検出された2次元画像データの個数が少ない場合には、その線欠陥検出結果が虚報(本来欠陥でないものが誤って欠陥として検出されたもの)とみなされて除外されることになる。これにより、虚報を低減できる。なお、線欠陥位置の情報を検査結果として出力する場合には、線欠陥位置を求めることができる線欠陥検出アルゴリズムを用いる必要がある。
【0047】
点欠陥用画像解析部621〜62nは、点欠陥検出アルゴリズムによって複数の2次元画像データのうちのL個(L≦m)以上から点欠陥が検出された場合に、点欠陥があるという結果を検査結果として出力し、他の場合に、点欠陥がないという結果を検査結果として出力するものであってもよく、点欠陥検出アルゴリズムによって複数の2次元画像データのうちのL個以上から点欠陥が検出された場合に、点欠陥位置の情報を検査結果として出力し、他の場合には検査結果を出力しないものであってもよい。2次元画像データの個数mが3以上であり、Lが2以上である場合には、点欠陥検出アルゴリズムによって点欠陥が検出された2次元画像データの個数が少ない場合には、その点欠陥検出結果が虚報(本来欠陥でないものが誤って欠陥として検出されたもの)とみなされて除外されることになる。これにより、虚報を低減できる。なお、点欠陥位置の情報を検査結果として出力する場合には、点欠陥位置を求めることができる点欠陥検出アルゴリズムを用いる必要がある。
【0048】
コントロールCPU63は、線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nから出力された検査結果を統合して成形シート2の全領域に対応する検査結果情報を作成し、図示しない記憶装置に記憶させると共に、表示部64に表示させる。成形シート2の全領域に対応する検査結果情報としては、成形シート2の全領域に欠陥があるかないかを示す情報や、成形シート2の全領域の欠陥マップなどが挙げられる。成形シート2の全領域に対応する検査結果情報を作成する際には、線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nの少なくとも一方で欠陥が検出された場合に、欠陥が存在するものとして検査結果情報を作成する。
【0049】
コントロールCPU63が、成形シート2の全領域に対応する検査結果情報として、成形シート2の全領域の欠陥マップを作成する場合には、線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nの各々は、2次元画像データ上の座標位置を成形シート2上の座標位置に変換して欠陥位置情報を生成し、この欠陥位置情報をコントロールCPU63に出力する。線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nの各々の座標変換処理としては、例えば、特許文献1の段落[0037]〜[0041]および[0050]〜[0053]に記載された処理を用いることができる。欠陥マップの情報をマーキング装置(図示しない)および情報処理装置(図示しない)に出力し、マーキング装置が欠陥マップに基づいて成形シート2に欠陥位置をマーキングするようにしてもよい。このマーキング装置は、例えば、成形シート2の幅方向に沿って設けられたアームと、ペン等を有するマーカヘッドとを有し、マーカヘッドがアーム上を成形シート2の幅方向に往復移動することによって成形シート2上の任意の位置にマーキングを行うことができる。このマーキングされた欠陥位置の情報は、例えば、成形シート2を所定サイズの枚葉品に断裁した後、枚葉品を正常品と欠陥品とに分ける処理等に利用することができる。
【0050】
なお、上記の実施の形態では、線状光源4を固定して成形シート2を搬送させていたが、成形シート2における線状光源4の像が投影されている位置が変化するようになってさえいればよい。したがって、成形シート2を固定して線状光源4を移動させてもよく、成形シート2および線状光源4の両方を異なる方向または異なる速度で移動させてもよい。成形シート2を固定して線状光源4を移動させる場合には、撮像部51〜5nを線状光源4と同じ方向に同じ速度で移動させることが好ましい。これにより、線状光源像を含む複数の2次元画像データを得ることができる。成形シート2を固定して線状光源4を移動させる方法は、成形シート2を搬送装置3で引っ張ることによって線状光源像が歪むことを避けることができるが、一度に検査できる成形シート2の長さが線状光源4の移動可能範囲に対応する長さに制限されるので、長尺の成形シート2を効率的に検査するためには、前記の実施の形態のように成形シート2を搬送することが好ましい。
【0051】
また、上記の実施の形態では、線欠陥用画像解析部611〜61nと点欠陥用画像解析部621〜62nとは、同一の撮像部51〜5nから得られた2次元画像データに基づいて欠陥を検出していたが、線欠陥用画像解析部611〜61nと点欠陥用画像解析部621〜62nとが、異なる撮像部から得られた2次元画像データに基づいてそれぞれ欠陥を検出してもよい。これによって、撮像部51〜5nの撮像条件(成形シート2からの距離や、成形シート2の搬送方向と撮像方向とのなす角度など)を、検出しようとする欠陥に適した条件にすることが可能となる。線欠陥用画像解析部611〜61nで用いられる2次元画像データを撮像する撮像部は、点欠陥用画像解析部621〜62nで用いられる2次元画像データを撮像するための撮像部と比較して、成形シートからの距離を遠くし、成形シート2の搬送方向と撮像方向とのなす角度を狭くすることが好ましい。これにより、点欠陥および線欠陥の両方を最適な撮像条件で撮像できるので、点欠陥および線欠陥の両方をさらに精度良く検出できる。
【0052】
また、上記の実施の形態では、各撮像部51〜5nで撮像された2次元画像を線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nで分散して処理していたが、撮像部51〜5nで撮像された2次元画像間の相対位置に基づいて各撮像部51〜5nで撮像されたn枚の2次元画像から成形シート2の幅方向の全領域を含む1枚の全幅画像を合成し、全幅画像に基づいて1つの線欠陥用画像解析部および1つの点欠陥用画像解析部で欠陥を検出してもよい。n枚の2次元画像から1枚の全幅画像を合成する方法としては、例えば、特許文献1の段落[0050]に記載された方法を用いることができる。
【0053】
次に、線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nで用いられる線欠陥検出アルゴリズムおよび点欠陥検出アルゴリズムについて説明する。線欠陥検出アルゴリズムおよび点欠陥検出アルゴリズムとしては、以下の7種類の欠陥検出アルゴリズムA〜Gを用いることができる。
【0054】
〔欠陥検出アルゴリズムA〕
欠陥検出アルゴリズムAについて、図6に基づいて以下に説明する。図6(a)は、撮像部51〜5nの1つで生成された多値の2次元画像データ(以下、原画像データと称する)の例であり、画像の上側が搬送方向下流側であり、画像の下側が搬送方向上流側である。図6(a)において、中央の横方向に伸びる帯状の白領域が線状光源像であり、線状光源像の内部に存在する暗領域、および線状光源像の近傍に存在する小さい白領域が、欠陥である。
【0055】
この欠陥検出アルゴリズムAでは、撮像部51〜5nで生成された複数枚の原画像データの各々について、以下の処理を行う。
【0056】
まず、原画像データを、縦方向(成形シート2の搬送方向)に沿った1行ずつの画素列のデータ(輝度値(画素値)および位置を表すデータ;輝度プロファイル;1次元画像データ)に分割する。
【0057】
次に、各画素列のデータについて、以下のような一端(図6(a)の上端)から他端(図6(a)の下端)に向かってエッジを探していく第1のエッジ判定処理を行う。まず、画素列の一端側から2つめの画素を注目画素とし、注目画素に対して一端側に隣接する隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T1以上小さいかを判定する。隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T1以上小さいと判定された場合には、隣接画素が第1のエッジであると判定し、第1のエッジの位置を記録して、処理対象の画素列のデータの処理を終了し、それ以外の場合には、注目画素を他端に向かって1画素ずつ移動しながら、前記判定において隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T1以上小さいと判定されるまで前記判定を繰り返し、隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T1以上小さいと判定された場合には、隣接画素が第1のエッジであると判定し、第1のエッジの位置を記録して、処理対象の画素列のデータの処理を終了する。なお、閾値T1は、任意の自然数であり、輝度値の最小単位であってもよい。閾値T1が輝度値の最小単位である場合には、上記判定は、単に隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値以上小さいかを判定することになる。
【0058】
次に、各画素列のデータについて、以下のような他端から一端に向かってエッジを探していく以下の第2のエッジ判定処理を行う。まず、他端側から2つめの画素を注目画素とし、注目画素に対して他端側に隣接する隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T2以上大きいかを判定する。隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T2以上大きいと判定された場合には、注目画素が第2のエッジであると判定し、第2のエッジの位置を記録して、処理対象の画素列のデータの処理を終了し、それ以外の場合には、注目画素を一端に向かって1画素ずつ移動しながら、前記判定において隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T2以上大きいと判定されるまで前記判定を繰り返し、隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T2以上大きいと判定された場合には、注目画素が第2のエッジであると判定し、第2のエッジの位置を記録して、処理対象の画素列のデータの処理を終了する。なお、閾値T2は、任意の自然数であり、輝度値の最小単位であってもよい。閾値T2が輝度値の最小単位である場合には、上記判定は、単に隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値以上大きいかを判定することになる。
【0059】
これらの第1のエッジ判定処理によって検出された第1のエッジの例を図6(a)に「△」で示し、および第2のエッジ判定処理によって検出された第2のエッジの例を図6(a)に「○」で示す。図6(a)から分かるように、欠陥のない領域では、線状光源像のエッジ以外にエッジが存在しないので、第1のエッジおよび第2のエッジは、線状光源像における他端側のエッジ(図6(a)の例では下側のエッジ)に一致し、互いに一致する。一方、図6(a)から分かるように、欠陥のある領域(白領域および黒領域)では、第1のエッジおよび第2のエッジの少なくとも一方が、欠陥領域のエッジに一致し、線状光源像における他端側のエッジよりもエッジ探索開始側へずれるので、第1のエッジと第2のエッジとが離れた位置となる。
【0060】
そこで、次に、各画素列のデータについて、第1のエッジから第2のエッジまでの距離(画素数)をエッジ間距離として求める。求められたエッジ間距離を画素列の位置(横方向の座標)に対してプロットしたプロファイルを図6(b)に示す。そして、このエッジ間距離が閾値T3以上の画素列が存在すれば、欠陥があると判定する。なお、閾値T3は、任意の自然数であり、1画素であってもよい。閾値T3が1画素である場合には、エッジ間距離が0でない画素列が欠陥を含む画素列として判定されることになる。閾値T3は、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよいが、多値の2次元画像データが256階調(輝度値0〜255;8ビット)の2次元画像データである場合、例えば3であることが好ましい。
【0061】
なお、図6の例では上端を一端(第1のエッジ探索開始側)としていたが、画素列のいずれの端を一端とするかは任意であり、下端を一端としてもよい。その場合には、欠陥のない領域では、第1のエッジおよび第2のエッジは、線状光源像における上側のエッジに一致する。
【0062】
この欠陥検出アルゴリズムAは、種々の点欠陥をある程度の確実性をもって検出することができる。ただし、気泡やフィッシュアイ等のような微小な点欠陥の検出確実性は、あまり高くない。一方、この欠陥検出アルゴリズムAは、線欠陥の検出には不向きである。この欠陥検出アルゴリズムAを、以下、「エッジプロファイル法1」と呼ぶ。
【0063】
〔欠陥検出アルゴリズムB〕
欠陥検出アルゴリズムBは、2次元画像データにおける線状光源の像のエッジを関数曲線でフィッティングし、線状光源の像のエッジと関数曲線との距離が閾値T5(第1の閾値)以上である箇所を欠陥として検出するものである。
【0064】
欠陥検出アルゴリズムBについて、図7に基づいて以下に説明する。図7(a)は、撮像部51〜5nの1つで生成された原画像データの例であり、画像の上側が搬送方向下流側であり、画像の下側が搬送方向上流側である。図7(a)において、中央の横方向に伸びる帯状の白領域が線状光源像であり、線状光源像の下側エッジの局所的に歪んでいる部分(滑らかでないところ)が欠陥である。
【0065】
この欠陥検出アルゴリズムBでは、撮像部51〜5nで生成された複数枚の原画像データの各々について、以下の処理を行う。
【0066】
まず、原画像データから、線状光源像のエッジの少なくとも一方を求める。求められた線状光源像のエッジの例を図7(a)に「○」で示す。図7の例では線状光源像の下側エッジを求めているが、線状光源像の上側エッジを求めてもよく、線状光源像の上側エッジおよび下側エッジの両方を求めてもよい。
【0067】
線状光源像のエッジを求める方法としては、公知のエッジ抽出フィルタ(例えばソーベルフィルタ)を用いてエッジを抽出し、強度の強いエッジを線状光源像のエッジとする方法、2次元画像データを1行ずつの画素列のデータに分割した上で各画素列のデータから強いエッジを求めて線状光源像のエッジとする方法、特許文献1の[0057]に記載された方法で線状光源像の領域を求める方法(2値化およびラベリングを行い、ラベリングされた領域の中から面積が所定値よりも大きい領域を線状光源像の領域として抽出する方法)などが挙げられる。ここでは、一例として、原画像データを1行ずつの画素列のデータに分割した上で各画素列のデータから強いエッジを求めて線状光源像のエッジとする方法について説明する。まず、原画像データを、縦方向(成形シート2の搬送方向)に沿った1行ずつの画素列のデータに分割する。次に、各画素列のデータについて、以下のような一端(図7(a)の上端)から他端(図7(a)の下端)に向かってエッジを探していく処理を行う。まず、一端側から2つめの画素を注目画素とし、注目画素に対して一端側に隣接する隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T4(T4は自然数)以上小さいかを判定する。強いエッジのみを検出するために、このときの閾値T4は比較的大きい値とする。隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T4以上小さいと判定された場合には、隣接画素が線状光源像のエッジであると判定し、線状光源像のエッジの位置を記録して、処理対象の画素列のデータの処理を終了し、それ以外の場合には、注目画素を他端に向かって1画素ずつ移動しながら、前記判定において隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T4以上小さいと判定されるまで前記判定を繰り返し、隣接画素の輝度値よりも注目画素の輝度値が閾値T4以上小さいと判定された場合には、隣接画素が線状光源像のエッジであると判定し、線状光源像のエッジの位置を記録して、処理対象の画素列のデータの処理を終了する。
【0068】
次に、求められた線状光源像のエッジの列を、関数で表現される滑らかな曲線にフィッティングさせ(関数曲線でフィッティングを行い)、フィッティングカーブ(関数曲線)を求める。フィッティングに用いる関数としては、n次関数(nは2以上)、ガウス関数、ローレンツ関数、フォークト関数、これらの関数の組み合わせなどが挙げられるが、nが比較的小さいn次関数、例えば4次関数が好ましい。また、フィッティングを行う際に用いるフィッティングの評価方法としては、例えば最小二乗法を用いることができる。
【0069】
次に、2次元画像データを縦方向(成形シート2の搬送方向)に沿った1行ずつの画素列のデータに分割し、各画素列のデータについて、フィッティングカーブから線状光源像のエッジまでの距離(画素数)をフィッティング度として求める。求められたフィッティング度を画素列の位置(横方向(成形シート2の搬送方向に直交し、かつ成形シート2の厚み方向に直交する方向)の座標)に対してプロットしたプロファイルを図7(b)に示す。そして、このフィッティング度が閾値T5以上の画素列が存在すれば、その画素列における線状光源像のエッジの位置に欠陥があると判定する。これにより、欠陥の有無を判定することができ、また、欠陥の位置を求めることもできる。以上のようにして、線状光源像のエッジの局所的な歪み(エッジ近傍での微細な線状光源像の歪み)として現れる線欠陥を検出することができる。なお、上記判定に用いる閾値T5は、任意の自然数であり、1画素であってもよい。閾値T5が1画素である場合には、フィッティング度が0でない画素列が存在すれば、欠陥があると判定されることになる。閾値T5は、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよいが、多値の2次元画像データが256階調の2次元画像データである場合、4であることが好ましい。
【0070】
なお、この欠陥検出アルゴリズムBでは、欠陥の有無を判定するのに加えて、欠陥位置を求めてもよい。その場合には、フィッティング度が閾値T5以上の画素列を抽出し、抽出された画素列における線状光源像のエッジとフィッティングカーブとの間にある画素の位置を欠陥位置として求めればよい。
【0071】
この欠陥検出アルゴリズムBは、種々の線欠陥を高い確実性をもって検出することができる。一方、この欠陥検出アルゴリズムBは、点欠陥の検出には不向きである。この欠陥検出アルゴリズムBを、以下、「エッジプロファイル法2」と呼ぶ。
【0072】
〔欠陥検出アルゴリズムC〕
欠陥検出アルゴリズムCは、2次元画像データを平滑化し、平滑化された2次元画像データと元の2次元画像データとの差分を差分画像データとして求め、差分画像データにおける輝度値が閾値T6B(第4の閾値;T6Bは任意の正数)以上である箇所、および輝度値が閾値T6D(第5の閾値;T6DはT6Bより小さい任意の正数)以下である箇所を欠陥として検出するものである。
【0073】
欠陥検出アルゴリズムCについて、以下にさらに詳細に説明する。この欠陥検出アルゴリズムCは、線状光源像の横方向(成形シート2の搬送方向に直交し、かつ成形シート2の厚み方向に直交する方向)の明暗変化と比較して欠陥による横方向の明暗変化の方が、空間周波数が高いことを利用し、原画像データの高周波成分を抽出し、高周波成分における輝度値が閾値T6B以上または閾値T6D以下である部分を欠陥として検出するものである。
【0074】
(1)まず、1行n列(nは3以上の整数)の横方向平滑化フィルタ(行列)を用いて、原画像データを横方向に平滑化(スムージング)する。これにより、原画像データの横方向輝度変化の高周波領域が除去されて、横方向輝度変化については低周波成分だけが残る(横方向輝度変化の低周波成分および縦方向輝度変化が残る)。上記横方向平滑化フィルタとしては、ガウスフィルタ等の加重平均化フィルタ、平均化フィルタなどを用いることができる。なお、nは、3であることが好ましい。
【0075】
(2)次に、原画像データから平滑化された画像データを減算する(各画素の輝度値を減算する)。これにより、原画像データにおける横方向輝度変化の高周波成分だけが残る。
【0076】
(3)次に、減算により得られた画像データに対して3×3画素の平滑化フィルタ(オペレータ)を用いた平滑化を行う。この平滑化により、ノイズが除去され、ノイズ以外の高周波成分が残る。上記平滑化フィルタとしては、バイラテラルフィルタやメディアンフィルタなどのような、エッジを保存した平滑化を行うものを用いることが好ましい。
【0077】
(4)次に、原画像データから、線状光源像における上側エッジ(搬送方向下流側のエッジ)および下側エッジ(搬送方向上流側のエッジ)を求める。線状光源像のエッジを求める方法は、欠陥検出アルゴリズムBに関して説明したものと同様であるので、説明を省略する。次いで、原画像データにおける成形シート2の搬送方向をX軸とし、上側エッジを構成する全画素のX座標値の中から最小値Minを求め、下側エッジを構成する全画素のX座標値の中から最大値Maxを求める。そして、最小値Minから最大値Maxを減算した値を線状光源像の幅Wとみなし、X座標値が最小値Minから最大値Maxまでの領域より幅Wだけ外側へ広げた領域を検査領域として定義する。すなわち、X座標値がMin−(Min−Max)以上であってMax+(Min−Max)以下である領域を検査領域として定義する。この処理は、検査対象領域を線状光源像およびその近傍領域だけに絞るためのものである。また、検査領域を、X座標値が最小値Minから最大値Maxまでの領域よりも外側へ広げているのは、線状光源像の多少の歪みを含めて検査領域とするためである。
【0078】
(5)次に、上記(3)の平滑化が施された後の画像データ(ノイズ以外の高周波成分)における検査領域内の画素の輝度値から、次式によって、明(bright)側(輝度の高い側)の閾値T6Bおよび暗(dark)側(輝度の低い側)の閾値T6Dを決定する。
【0079】
T6B=(検査領域内の平均輝度値)+(検査領域内の輝度値の標準偏差)×k
T6D=(検査領域内の平均輝度値)−(検査領域内の輝度値の標準偏差)×k
(kは正数のパラメータを表す〉
なお、kの値は、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよいが、例えば、1.5、3、4.5などである。
【0080】
(6)次に、上記(3)の平滑化が施された後の画像データにおける検査領域内の全画素について、その輝度値が閾値T6B以上または閾値T6D以下であるかを判定する処理(閾値処理)を行い、閾値T6B以上または閾値T6D以下の画素を、欠陥部位として抽出する。これにより、欠陥の有無を判定することができ、また、欠陥の位置を求めることもできる。
【0081】
なお、撮像部51〜5nで生成される原画像データに含まれるノイズが少ない場合には、(3)の平滑化処理を省略してもよい。また、検査対象領域を線状光源像およびその近傍領域だけに絞る必要がない場合には、(4)の検査領域を定義する処理を省略し、(5)(6)の処理を画像データ全体に対して行ってもよい。
【0082】
この欠陥検出アルゴリズムCは、気泡やフィッシュアイ等のような微小欠陥を含むあらゆる点欠陥を高い確実性をもって検出することができる。一方、この欠陥検出アルゴリズムCは、線欠陥の検出には不向きである。ただし、処理時間については、この欠陥検出アルゴリズムCよりも他の欠陥検出アルゴリズムの方が短い(欠陥検出アルゴリズムCの処理時間は、例えば1フレームあたり40ms程度)。この欠陥検出アルゴリズムCを、以下、「ハイパスフィルタ法」と呼ぶ。
【0083】
〔欠陥検出アルゴリズムD〕
欠陥検出アルゴリズムDについて、図8および図9に基づいて以下に説明する。図8は、撮像部51〜5nの1つで生成された原画像データの例であり、画像の上側が搬送方向下流側であり、画像の下側が搬送方向上流側である。図8において、中央の横方向に伸びる帯状の白領域が線状光源像であり、線状光源像の内部に存在する暗領域、および線状光源像の近傍に存在する小さい白領域が、欠陥である。図8において、線状光源像の上方および下方にある曲線は、検査対象領域の上限および下限を示す。
【0084】
この欠陥検出アルゴリズムDでは、撮像部51〜5nで生成された複数枚の原画像データの各々について、以下の処理を行う。
【0085】
まず、原画像データを、縦方向(成形シート2の搬送方向)に沿った1行ずつの画素列のデータに分割し、各画素列における位置に依存した輝度値の変化を表すプロット列を垂直方向輝度プロファイルとして求める。求められた垂直方向輝度プロファイルの例を図9に示す。この例は、図8の矢印で示す位置の画素列に関する垂直方向輝度プロファイルであり、yは、下方向(図8の矢印で示す方向;成形シート2の搬送方向と逆の方向)をy軸としたときのy座標である。
【0086】
次に、各画素列の垂直方向輝度プロファイルについて、谷の部分の深さ(図8参照)を求める。すなわち、まず、各画素列の垂直方向輝度プロファイルについて、全ての極大点および極小点を求め、求められた全ての極小点について、その極小点の輝度値(極小値)と、その極小点に最も近い極大点の輝度値(極大値)との差を、谷の部分の深さとして求める。求められた谷の部分の深さが閾値T7(T7は正数)以上であれば、欠陥があると判定する。閾値T7は、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよいが、多値の2次元画像データが256階調の2次元画像データである場合、例えば0.25×255であることが好ましい。
【0087】
この欠陥検出アルゴリズムDは、処理時間が比較的短い。この欠陥検出アルゴリズムDは、種々の点欠陥をある程度の確実性をもって検出することができる。特に、線状光源像のエッジ付近にある局所的な明暗反転を生じる点欠陥の検出に向いている。ただし、点欠陥およびその近傍を含む画像が高コントラストである必要であり、気泡やフィッシュアイ、タイヤ跡等のような微小な点欠陥の検出確実性は、あまり高くない。一方、この欠陥検出アルゴリズムDは、線欠陥の検出には不向きである。この欠陥検出アルゴリズムDを、以下、「ピーク法」と呼ぶ。
【0088】
〔欠陥検出アルゴリズムE〕
欠陥検出アルゴリズムEは、2次元画像データにおける一直線上に沿った位置に依存した輝度の変化を輝度プロファイルとして表し、輝度プロファイルのプロット群をプロット間の移動時間が一定となるように移動する質点を想定し、注目プロットの直前2つのプロット間における上記質点の速度ベクトルと上記注目プロットの直前3つのプロット間における上記質点の加速度ベクトルとから上記注目プロットの輝度値を予測し、予測された輝度値と実際の輝度値との差が閾値T8(第3の閾値;T8は自然数)以上である箇所を欠陥として検出するものである。
【0089】
欠陥検出アルゴリズムEについて、図10および図11に基づいて以下に説明する。この欠陥検出アルゴリズムEは、ピーク法の精度を向上させたものであり、谷の深さに代えて実測値と予測値との差に基づいて欠陥を検出する。
【0090】
この欠陥検出アルゴリズムEでは、撮像部51〜5nで生成された複数枚の原画像データの各々について、以下の処理を行う。
【0091】
まず、ピーク法と同様にして、各画素列の垂直方向輝度プロファイルを求める。求められた垂直方向輝度プロファイルの例を、輝度値をx軸として、図10に示す。この垂直方向輝度プロファイルにおける丸囲み部が、この欠陥検出アルゴリズムEで検出しようとする欠陥に対応するプロファイルである。
【0092】
次に、各画素列の垂直方向輝度プロファイルについて、隣接するプロット間の移動時間がプロット間の距離にかかわらず一定となるように、プロット列の一端から他端に向かって移動する質点を想定する。そして、上記質点が、図11に示すように、プロットcからそれに隣接するプロットbへ、プロットbからそれに隣接するプロットaへ、プロットaからそれに隣接するプロットdへと移動していくとする。また、プロットdが注目画素に対応するプロットであるものとする。
【0093】
そして、プロットdの直前に質点が通過した3つのプロットa〜cにおける質点の速度ベクトルおよび加速度ベクトルを求める。すなわち、上記移動時間と、プロットdの直前に質点が通過した2つのプロットaおよびbの座標(x座標、y座標)とに基づいて、プロットbからプロットaまでの区間における上記質点の速度ベクトルを求める。さらに、上記移動時間と、プロットdの直前に質点が通過したプロットbおよびcの座標(x座標、y座標)とに基づいて、プロットcからプロットbまでの区間における上記質点の速度ベクトルを求め、プロットbからプロットaまでの区間における上記質点の速度ベクトルと、プロットcからプロットbまでの区間における上記質点の速度ベクトルとに基づいて、プロットcからプロットaまでの区間における上記質点の加速度ベクトルを求める。そして、プロットbからプロットaまでの区間における上記質点の速度ベクトルと、プロットcからプロットaまでの区間における上記質点の加速度ベクトルとから、プロットdの座標(位置)を予測する。
【0094】
このようにして予測されたプロットdのx座標(輝度値)と、プロットdの実際(実測)のx座標(輝度値)との差を求め、これらの差が閾値T8以上であればプロットdに対応する画素を欠陥部位として抽出する。これにより、欠陥の有無を判定することができ、また、欠陥の位置を求めることもできる。閾値T8は、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよいが、多値の2次元画像データが256階調の2次元画像データである場合、例えば20であることが好ましい。
【0095】
この欠陥検出アルゴリズムEは、種々の点欠陥を高い確実性をもって検出することができる。この欠陥検出アルゴリズムEを、以下、「ピーク法2」と呼ぶ。
【0096】
〔欠陥検出アルゴリズムF〕
欠陥検出アルゴリズムFについて、図12に基づいて以下に説明する。図12(a)は、撮像部51〜5nの1つで生成された原画像データの例であり、画像の上側が搬送方向下流側であり、画像の下側が搬送方向上流側である。図12(a)において、中央の横方向に伸びる帯状の白領域が線状光源像であり、線状光源像の下側エッジの局所的に歪んでいる部分(水平線に対する傾きが大きいところ)が欠陥である。
【0097】
この欠陥検出アルゴリズムFでは、撮像部51〜5nで生成された複数枚の原画像データの各々について、以下の処理を行う。
【0098】
まず、原画像データから、線状光源像のエッジの少なくとも一方を求める。求められた線状光源像のエッジの例を図12(a)に「○」で示す。図12の例では線状光源像の下側エッジを求めているが、線状光源像の上側エッジを求めてもよく、線状光源像の上側エッジおよび下側エッジの両方を求めてもよい。線状光源像のエッジを求める方法は、欠陥検出アルゴリズムBに関して説明したものと同様であるので、説明を省略する。
【0099】
次に、横方向をx軸、縦方向をy軸とし、線状光源像のエッジの曲線(エッジプロファイル)y=f(x)を、二次微分して二次微分プロファイルを求める。求められた二次微分プロファイルの例を図12(b)に示す。
【0100】
そして、線状光源像のエッジの各画素について、二次微分が閾値T9(T9は正数)以上であるかを判定し、二次微分が閾値T9以上である画素(高周波のところ)を欠陥部位と判定する。これにより、欠陥の有無を判定することができ、また、欠陥の位置を求めることもできる。閾値T9は、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよい。
【0101】
この欠陥検出アルゴリズムFは、線状光源像のエッジの局所的な湾曲として現れる線欠陥の検出に向く。この欠陥検出アルゴリズムFは、欠陥検出能力はあまり高くない。この欠陥検出アルゴリズムFを、以下、「エッジカーブ法1」と呼ぶ。
【0102】
〔欠陥検出アルゴリズムG〕
欠陥検出アルゴリズムGは、2次元画像データにおける線状光源の像のエッジについて、各画素の近傍領域(近傍2n+1画素の範囲)における曲率を求め、曲率が閾値T10(第2の閾値;T10は正数)以上である箇所を欠陥として検出するものである。
【0103】
欠陥検出アルゴリズムGについて、図13に基づいて以下に説明する。
【0104】
この欠陥検出アルゴリズムGでは、撮像部51〜5nで生成された複数枚の原画像データの各々について、以下の処理を行う。
【0105】
まず、原画像データから、線状光源像のエッジの少なくとも一方を求める。求められた線状光源像のエッジの例を図13に示す。線状光源像のエッジを求める方法は、欠陥検出アルゴリズムBに関して説明したものと同様であるので、説明を省略する。
【0106】
次に、線状光源像のエッジの曲線について、各点(各画素)での曲率を求める。曲率を求める方法は、特に限定されるものではなく、数学的に決まっている数式を用いて計算する方法であってもよいが、そのような方法では処理時間が長くなるので、以下の方法で曲率を近似的に求めることが好ましい。
【0107】
(1)エッジ上における、注目画素(図13における黒い点)に対して左右(または前後)n画素(図13における白い点)と注目画素とからなる範囲(注目画素の近傍2n+1画素の範囲)を計算対象範囲とする(nは自然数)。nは、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよいが、例えば30であることが好ましい。図13の例は、nが3の場合である。
【0108】
(2)次に、計算対象範囲の両端の画素を直線で結ぶ。
【0109】
(3)計算対象範囲の全画素にわたって、その直線から予測輝度値を求め、予測輝度値に対する実際の輝度値(エッジ曲線上の輝度値)の増分を求め、その増分またはその増分の絶対値を積算する。ここで得られる積算値によって、注目画素近傍2n+1画素の範囲における曲率を十分に近似できる(数学的に決まっている数式を用いて計算した曲率とほぼ同等の曲率値を得ることができる)。ここで、増分の積算値を用いた構成では、図13(c)のように計算対象範囲内で直線の上へ行ったり直線の下へ行ったりする微小な輝度値の変化が起こった場合に、これらの変化を相殺し無視して、曲率の近似値を求めることになる。一方、増分の絶対値の積算値を用いる構成では、そのような変化が起こった場合にも、そのような変化も含めて曲率の近似値を求めることになる。図13(c)のように計算対象範囲内で直線の上へ行ったり直線の下へ行ったりする微小な輝度値の変化を欠陥として検出したければ、増分の絶対値の積算値を用いる構成とすればよい。逆に、このような変化を許容して欠陥として検出したくない場合には、増分の積算値を用いる構成とすればよい。
【0110】
(4)注目画素を線状光源像におけるエッジの端から端まで1画素ずつ移動させながら、エッジ上の全ての画素について上記積算値を計算していく。これにより、曲率の近似値のプロプァイル(曲率プロファイル)が生成される。
【0111】
次に、上記曲率プロファイルにおける線状光源像のエッジの各画素について、曲率が閾値T10以上であるかを判定し、求められた曲率が閾値T10以上である画素を欠陥部位(または欠陥候補)と判定する。これにより、欠陥の有無を判定することができ、また、欠陥の位置を求めることもできる。成形シート2が多少反っているために線状光源像のエッジは多少曲がっているので、線状光源像のエッジの曲率がある程度までであれば、欠陥ではないものとして許容すべきである。したがって、閾値T10は、比較的大きくするべきである。閾値T10は、許容される欠陥のサイズに応じて適宜決めればよいが、多値の2次元画像データが256階調の2次元画像データである場合、例えば110であることが好ましい。
【0112】
この欠陥検出アルゴリズムGは、種々の線欠陥を高い確実性をもって検出することができる。この欠陥検出アルゴリズムGを、以下、「エッジカーブ法2」と呼ぶ。
【0113】
本実施形態において、線欠陥用画像解析部611〜61nおよび点欠陥用画像解析部621〜62nでそれぞれ用いる線欠陥検出アルゴリズムおよび点欠陥検出アルゴリズムの組み合わせは、以下の何れかである。
【0114】
(A)線欠陥用画像解析部611〜61nで用いる線欠陥検出アルゴリズムがエッジプロファイル法2またはエッジカーブ法2であり、点欠陥用画像解析部621〜62nで用いる点欠陥検出アルゴリズムがハイパスフィルタ法またはピーク法2である。
【0115】
(B)線欠陥用画像解析部611〜61nで用いる線欠陥検出アルゴリズムがエッジプロファイル法2またはエッジカーブ法2であり、点欠陥用画像解析部621〜62nで用いる点欠陥検出アルゴリズムがハイパスフィルタ法またはピーク法2以外の欠陥検出アルゴリズムである。
【0116】
(C)線欠陥用画像解析部611〜61nで用いる線欠陥検出アルゴリズムがエッジプロファイル法2またはエッジカーブ法2以外の欠陥検出アルゴリズムであり、点欠陥用画像解析部621〜62nで用いる点欠陥検出アルゴリズムがハイパスフィルタ法またはピーク法2である。
【0117】
(A)〜(C)の組み合わせのうち、(A)の組み合わせが最も好ましい。(A)の組み合わせの場合、線欠陥および点欠陥の両方を確実に検出できる。(B)の組み合わせの場合、線欠陥を確実に検出できる。(C)の組み合わせの場合、点欠陥を確実に検出できる。
【0118】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図14に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0119】
本実施形態に係る欠陥検査装置は、図1に示す解析装置6に代えて図14に示す解析装置6Aを備えている以外は、実施の形態1に係る欠陥検査装置1と同一の構成を備えている。解析装置6Aは、図14に示すように、図1に示す解析装置6から点欠陥用画像解析部621〜62nを省いたものである。
【0120】
本実施形態において、線欠陥用画像解析部611〜61nで用いる線欠陥検出アルゴリズムは、エッジプロファイル法2またはエッジカーブ法2である。本実施形態では、線欠陥を確実に検出できる。
【0121】
なお、本実施形態の欠陥検査装置は、単独で用いてもよいが、点欠陥を検出可能な欠陥検査装置と組み合わせて用いることが好ましい。これにより、線欠陥だけでなく点欠陥も検査できる。本実施形態の欠陥検査装置と組み合わせられる、点欠陥を検出可能な欠陥検査装置は、公知の種々の欠陥検査装置であってもよいが、後述する実施の形態3の欠陥検査装置であることが好ましい。これにより、線欠陥および点欠陥の両方を確実に検査できる。
【0122】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施の形態について図15に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0123】
本実施形態に係る欠陥検査装置は、図1に示す解析装置6に代えて図15に示す解析装置6Bを備えている以外は、実施の形態1に係る欠陥検査装置1と同一の構成を備えている。解析装置6Bは、図15に示すように、図1に示す解析装置6から線欠陥用画像解析部611〜61nを省いたものである。
【0124】
本実施形態において、点欠陥用画像解析部621〜62nで用いる点欠陥検出アルゴリズムは、ハイパスフィルタ法またはピーク法2である。本実施形態では、点欠陥を確実に検出できる。
【0125】
なお、本実施形態の欠陥検査装置は、単独で用いてもよいが、線欠陥を検出可能な欠陥検査装置と組み合わせて用いることが好ましい。これにより、点欠陥だけでなく線欠陥も検査できる。本実施形態の欠陥検査装置と組み合わせられる、線欠陥を検出可能な欠陥検査装置は、公知の種々の欠陥検査装置であってもよいが、実施の形態2の欠陥検査装置であることが好ましい。これにより、線欠陥および点欠陥の両方を確実に検査できる。
【0126】
〔実験例〕
次に、本願発明の効果を確認するために、上記実施の形態に係る欠陥検査装置に類似した14種類の実験用欠陥検査装置を用いて行った実験の結果を示す。
【0127】
第1〜7の実験用欠陥検査装置は、上記実施の形態3に係る欠陥検査装置から撮像部52〜5nを省き、搬送装置3として、搬送ロールに代えて、成形シート2をその表面に載せて搬送するコンベアを用いたものである。第1〜7の実験用欠陥検査装置は、点欠陥を含むサンプルから点欠陥を検出するためのものである。
【0128】
第1の実験用欠陥検査装置はエッジプロファイル法1を用いた点欠陥用画像解析部621〜62nを備え、第2の実験用欠陥検査装置はエッジプロファイル法2を用いた点欠陥用画像解析部621〜62nを備え、第3の実験用欠陥検査装置はハイパスフィルタ法を用いた点欠陥用画像解析部621〜62nを備え、第4の実験用欠陥検査装置はピーク法を用いた点欠陥用画像解析部621〜62nを備え、第5の実験用欠陥検査装置はピーク法2を用いた点欠陥用画像解析部621〜62nを備え、第6の実験用欠陥検査装置はエッジカーブ法1を用いた点欠陥用画像解析部621〜62nを備え、第7の実験用欠陥検査装置はエッジカーブ法2(増分の積算値を用いる方法)を用いた点欠陥用画像解析部621〜62nを備えている。
【0129】
第8〜14の実験用欠陥検査装置は、上記実施の形態2に係る欠陥検査装置から撮像部52〜5nを省き、搬送装置3として、搬送ロールに代えて、成形シート2をその表面に載せて搬送するコンベアを用いたものである。第8〜14の実験用欠陥検査装置は、線欠陥を含むサンプルから線欠陥を検出するためのものである。
【0130】
第8の実験用欠陥検査装置はエッジプロファイル法1を用いた線欠陥用画像解析部611〜61nを備え、第9の実験用欠陥検査装置はエッジプロファイル法2を用いた線欠陥用画像解析部611〜61nを備え、第10の実験用欠陥検査装置はハイパスフィルタ法を用いた線欠陥用画像解析部611〜61nを備え、第11の実験用欠陥検査装置はピーク法を用いた線欠陥用画像解析部611〜61nを備え、第12の実験用欠陥検査装置はピーク法2を用いた線欠陥用画像解析部611〜61nを備え、第13の実験用欠陥検査装置はエッジカーブ法1を用いた線欠陥用画像解析部611〜61nを備え、第14の実験用欠陥検査装置はエッジカーブ法2(増分の積算値を用いる方法)を用いた線欠陥用画像解析部611〜61nを備えている。
【0131】
本実験例では、成形シート2として、異なる種類の点欠陥を含む10種類の偏光フィルムのサンプルと、異なる種類の線欠陥を含む6種類の偏光フィルムのサンプルとを用いた。点欠陥を含む10種類のサンプルは、気泡を含むサンプル01、フィッシュアイを含むサンプル02、第1の異物を含むサンプル03、第1の異物と異なる第2の異物を含むサンプル04、第1のタイヤ跡を含むサンプル06、第1のタイヤ跡と異なる第2のタイヤ跡を含むサンプル07、第1の打痕を含むサンプル08、第1の打痕と異なる第2の打痕を含むサンプル09、第1の傷を含むサンプル11、および第1の傷と異なる第2の傷を含むサンプル12である。線欠陥を含む6種類のサンプルは、クニック(線欠陥)を含むサンプル10、第1のクニックと異なる第2のクニック(線欠陥)を含むサンプル13、成形シート2の搬送方向に沿ったスジを含むサンプル51、成形シート2の搬送方向に直交する強いスジを含むサンプル52、成形シート2の搬送方向に直交する弱いスジを含むサンプル53、および、成形シート2の搬送方向に対して斜め方向のスジを含むサンプル53である。
【0132】
また、第1〜14の実験用欠陥検査装置では、撮像部51として、二次元画像を撮像して、256階調の横512画素×縦480画素の二次元画像データを生成することができる、CCD素子を用いたプログレッシブスキャンエリアセンサを用いた。第1〜14の実験用欠陥検査装置では、線状光源4として、シャープエッジフード(線状光源像のエッジをシャープにするフード)を貼り付けた高周波蛍光灯を用いた。第1〜14の実験用欠陥検査装置では、コンベアによる成形シート2の搬送速度を20mm/sec(=1.2m/min)とした。また、コンベアの端(図2の手前側の端)から145mmの距離にある位置が撮像部51による撮像領域の中心となるようにした。また、この145mmを計るのに金尺を用い、金尺から欠陥までの距離が55mmとなるようにした。
【0133】
点欠陥を検出するための第1〜7の実験用欠陥検査装置では、成形シート2上の撮像領域(視野)が横(成形シート2の搬送方向に直交し、かつ成形シート2の厚み方向に直交する方向)51.2mm×縦(成形シート2の搬送方向)48mmとなるように、撮像部51の位置および角度を調整した。ただし、上記プログレッシブスキャンエリアセンサの512画素×480画素のうち、上から240番目の画素の位置(上下方向の中央位置)にある横方向に並ぶ512画素が成形シート2表面における横51.2mmの領域を撮影するように撮像部51の位置および角度を調整した。すなわち、成形シート2から撮像部51までの距離が190mmとなるように撮像部51の位置を調整し、また、撮像部51の撮像方向(撮像部51の集光レンズの中心から、撮像部51によって撮像される領域の中心に向かう方向)と成形シート2表面とのなす角度が40度となるように撮像部51の角度を調整した。この場合、撮像部51の解像度は、100μm/画素である。また、点欠陥を検出するための第1〜7の実験用欠陥検査装置では、プログレッシブスキャンエリアセンサとして、焦点距離が25mmであり、最小F値が1.4であり、レンズ先端ワークディスタンスが270mmであるCマウントのレンズをプログレッシブスキャンエリアセンサ本体に装着したものを用い、絞りを約11に調整した。
【0134】
また、点欠陥を検出するための第1〜7の実験用欠陥検査装置では、線状光源4の長手方向が成形シート2の搬送方向と直交し、成形シート2から線状光源4までの距離が240mmとなり、かつ、成形シート2上の撮像領域の中心と線状光源4の中心とを結んだ直線が成形シート2表面に対して37度の角度をなすように、線状光源4を配置した。
【0135】
線欠陥を検出するための第8〜14の実験用欠陥検査装置では、成形シート2上の撮像領域が横204.8mm×縦192mmとなるように、撮像部51の位置および角度を調整した。ただし、上記プログレッシブスキャンエリアセンサの512画素×480画素のうち、上から240番目の画素の位置(上下方向の中央位置)にある横方向に並ぶ512画素が成形シート2表面における横204.8mmの領域を撮影するように撮像部51の位置および角度を調整した。すなわち、成形シート2から撮像部51までの距離が400mmとなるように撮像部51の位置を調整し、また、撮像部51の撮像方向と成形シート2表面とのなす角度が15度となるように撮像部51の角度を調整した。この場合、撮像部51の解像度は、200μm/画素である。また、線欠陥を検出するための第8〜14の実験用欠陥検査装置では、プログレッシブスキャンエリアセンサとして、焦点距離が25mmであり、最小F値が1.4であり、レンズ先端ワークディスタンスが490mmであるCマウントのレンズをプログレッシブスキャンエリアセンサ本体に装着したものを用い、絞りを約5.6〜8に調整した。
【0136】
また、線欠陥を検出するための第8〜14の実験用欠陥検査装置では、線状光源4の長手方向が成形シート2の搬送方向に対して25度の角度をなすように、線状光源4を配置し、線状光源4のワークディスタンスを900mmとした。
【0137】
ここでは、直径が0.5mmの点欠陥を確実に検出できるように、欠陥検出アルゴリズムのパラメータを設定した。第1および第8の実験用欠陥検査装置では、エッジプロファイル法1における閾値T3を3に設定した。第2および第9の実験用欠陥検査装置では、エッジプロファイル法2における閾値T5を4に設定した。第3および第10の実験用欠陥検査装置では、エッジプロファイル法2におけるkを4.5に設定し、エッジプロファイル法2に用いる横方向平滑化フィルタを1行3列の平滑化フィルタとした。第4および第11の実験用欠陥検査装置では、ピーク法における閾値T7を最大輝度値の25%(255×0.25)に設定した。第5および第12の実験用欠陥検査装置では、ピーク法2における閾値を20に設定した。第6および第13の実験用欠陥検査装置では、エッジカーブ法1において用いるパラメータである距離を15に設定し、kを5に設定した。第7および第14の実験用欠陥検査装置では、エッジカーブ法2として前述した近似的に曲率を求める方法を用い、計算対象範囲を注目画素に対して前後30画素の範囲とした。
【0138】
そして、第1〜7の実験用欠陥検査装置を用いて、点欠陥を含む10種類のサンプルから点欠陥を検出できるかを調べ、第8〜14の実験用欠陥検査装置を用いて、線欠陥を含む6種類のサンプルから線欠陥を検出できるかを調べた。得られた結果を表1に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
第1〜7の実験用欠陥検査装置では、撮像される成形シート2の動画の全フレーム数(全キャプチャ枚数)は150枚であるが、1つの欠陥検出対象点あるいは点欠陥が撮像部51の撮像領域に入って撮像部51の撮像領域から出て行くまでの期間内に、30フレームの動画が撮像部51で撮像される。すなわち、欠陥が常に見えているとすれば、撮像部51で撮像された2次元画像データのうちで、上記期間内に撮像された30枚(30フレーム)の2次元画像データに欠陥の画像が含まれることになる。表1の点欠陥の各行では、上記期間内に撮像された30フレームの2次元画像データのうちで、各実験用欠陥検査装置によって欠陥が検出されたフレーム(コマ)の数(欠陥が検出された回数)を「検出コマ数」のカラムに記載している。
【0141】
第8〜14の実験用欠陥検査装置では、1つの欠陥検出対象点が撮像部51の撮像領域に入って撮像部51の撮像領域から出て行くまでの期間内に、300フレームの動画が撮像部51で撮像される。表1の線欠陥の各行では、上記期間内に撮像された300フレームの2次元画像データのうちで、各実験用欠陥検査装置によって欠陥が検出されたフレーム(コマ)の数を「検出コマ数」のカラムに記載している。
【0142】
表1において、検出コマ数が0であることは、欠陥が検出できなかったことを示し、検出コマ数の大小は、欠陥検出の精度あるいは確実性を示す。例えば検出コマ数が1〜2コマのような少ない数である場合には、欠陥検出の精度が低いと考えられる。表1では、欠陥検出の精度を、本願出願人が独自に決めた判定基準によって、「×」(検出コマ数が0コマ)、「△」(検出コマ数が1〜2コマ)、「○」(検出コマ数が3〜6コマ)、「◎」(検出コマ数が7コマ以上)の4段階に分類し、「判定」のカラムに記載している。
【0143】
また、表1において、「虚報」の行は、1800フレーム(コマ)中において何フレームで虚報が発生したかを示している。
【0144】
表1の結果から、ハイパスフィルタ法およびピーク法2を用いた欠陥検査装置(第3および第5の実験用欠陥検査装置)によって、全ての種類の点欠陥を精度良く検出できることが分かる。すなわち、前記実施の形態に係る欠陥検査装置において、点欠陥用画像解析部621〜62nで用いる点欠陥検出アルゴリズムがハイパスフィルタ法またはピーク法2であれば、全ての種類の点欠陥を精度良く検出できることが分かる。
【0145】
また、表1の結果から、エッジプロファイル法2およびエッジカーブ法2を用いた欠陥検査装置(第2および第7の実験用欠陥検査装置)によって、全ての種類の線欠陥を精度良く検出できることが分かる。すなわち、前記実施の形態に係る欠陥検査装置において、線欠陥用画像解析部611〜61nで用いる線欠陥検出アルゴリズムがエッジプロファイル法2またはエッジカーブ法2であれば、全ての種類の線欠陥を精度良く検出できることが分かる。
【0146】
また、表1のほとんどの場合において、検出コマ数が最大値(点欠陥の場合には30、線欠陥の場合には300)より小さいことから、本実験例で欠陥の検出に用いた複数枚の2次元画像データ(動画データ)のうちの1枚の2次元画像データ(静止画像データ)のみに基づいて欠陥を検出する方法では、欠陥が検出できない可能性があることが分かる。例えば、本実験例で欠陥の検出に用いた複数枚の2次元画像データのうちの1枚の2次元画像データをランダムに選択し、その1枚の2次元画像データのみに基づいてサンプル13に含まれるクニックを検出しようとした場合、最も確実にクニックを検出できる欠陥検出アルゴリズム(エッジカーブ法2)を用いても、8/300という低い確率でしかクニックを検出できない。
【0147】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の実施の一形態に係る欠陥検査装置の主要部の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】上記欠陥検査装置の概観を示す模式図である。
【図3】従来技術の問題点を説明するための図である。
【図4】従来技術の問題点を説明するための図である。
【図5】従来技術の問題点を説明するための図である。
【図6】欠陥検出アルゴリズムの一例(エッジプロファイル法1)を説明するための図である。
【図7】欠陥検出アルゴリズムの他の例(エッジプロファイル法2)を説明するための図である。
【図8】欠陥検出アルゴリズムのさらに他の例(ピーク法)を説明するための図である。
【図9】欠陥検出アルゴリズムのさらに他の例(ピーク法)を説明するための図である。
【図10】欠陥検出アルゴリズムのさらに他の例(ピーク法2)を説明するための図である。
【図11】欠陥検出アルゴリズムのさらに他の例(ピーク法2)を説明するための図である。
【図12】欠陥検出アルゴリズムのさらに他の例(エッジカーブ法1)を説明するための図である。
【図13】欠陥検出アルゴリズムのさらに他の例(エッジカーブ法2)を説明するための図である。
【図14】本発明の他の実施の形態に係る欠陥検査装置の主要部の構成を示す機能ブロック図である。
【図15】本発明のさらに他の実施の形態に係る欠陥検査装置の主要部の構成を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0149】
1 欠陥検査装置
2 成形シート
3 搬送装置(移動手段)
4 線状光源
51〜5n 撮像部(撮像手段)
6 解析装置
6A 解析装置
6B 解析装置
611〜61n 線欠陥用画像解析部(線欠陥検出手段)
621〜62n 点欠陥用画像解析部(点欠陥検出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形シートの欠陥を検出する欠陥検査装置であって、
上記成形シートの2次元画像を複数回撮像して複数の2次元画像データを生成する撮像手段と、
上記成形シートにおける撮像される領域の一部に線状光源の像が投影されるように、上記成形シートを照明するための線状光源と、
上記成形シートにおける上記線状光源の像が投影されている位置が変化するように、上記成形シートおよび上記線状光源の少なくとも一方を、上記線状光源の長手方向と交差し、かつ上記成形シートの厚み方向に直交する方向に移動させる移動手段と、
上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから線欠陥を検出する線欠陥検出手段とを備え、
上記線欠陥検出手段は、
上記2次元画像データにおける線状光源の像のエッジを関数曲線でフィッティングし、線状光源の像のエッジと関数曲線との距離が第1の閾値以上である箇所を線欠陥として検出する線欠陥検出アルゴリズム、または
上記2次元画像データにおける線状光源の像のエッジについて、各画素の近傍領域における曲率を求め、曲率が第2の閾値以上である箇所を線欠陥として検出する線欠陥検出アルゴリズムによって線欠陥を検出するものであることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから点欠陥を検出する点欠陥検出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
上記点欠陥検出手段は、
上記2次元画像データにおける一直線上に沿った位置に依存した輝度の変化を輝度プロファイルとして表し、輝度プロファイルのプロット群をプロット間の移動時間が一定となるように移動する質点を想定し、注目プロットの直前2つのプロット間における上記質点の速度ベクトルと上記注目プロットの直前3つのプロット間における上記質点の加速度ベクトルとから上記注目プロットの輝度値を予測し、予測された輝度値と実際の輝度値との差が第3の閾値以上である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズム、または
上記2次元画像データを平滑化し、平滑化された2次元画像データと元の2次元画像データとの差分を差分画像データとして求め、差分画像データにおける輝度値が第4の閾値以上である箇所および輝度値が第5の閾値(第5の閾値は第4の閾値より小さい)以下である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズムによって点欠陥を検出するものであることを特徴とする請求項2記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
成形シートの欠陥を検出する欠陥検査装置であって、
上記成形シートの2次元画像を複数回撮像して複数の2次元画像データを生成する撮像手段と、
上記成形シートにおける撮像される領域の一部に線状光源の像が投影されるように、上記成形シートを照明するための線状光源と、
上記成形シートにおける上記線状光源の像が投影されている位置が変化するように、上記成形シートおよび上記線状光源の少なくとも一方を、上記線状光源の長手方向と交差し、かつ上記成形シートの厚み方向に直交する方向に移動させる移動手段と、
上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから点欠陥を検出する点欠陥検出手段とを備え、
上記点欠陥検出手段は、
上記2次元画像データにおける一直線上に沿った位置に依存した輝度の変化を輝度プロファイルとして表し、輝度プロファイルのプロット群をプロット間の移動時間が一定となるように移動する質点を想定し、注目プロットの直前2つのプロット間における上記質点の速度ベクトルと上記注目プロットの直前3つのプロット間における上記質点の加速度ベクトルとから上記注目プロットの輝度値を予測し、予測された輝度値と実際の輝度値との差が第3の閾値以上である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズム、または
上記2次元画像データを平滑化し、平滑化された2次元画像データと元の2次元画像データとの差分を差分画像データとして求め、差分画像データにおける輝度値が第4の閾値以上である箇所および輝度値が第5の閾値(第5の閾値は第4の閾値より小さい)以下である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズムによって点欠陥を検出するものであることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項5】
上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから線欠陥を検出する線欠陥検出手段をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の欠陥検査装置。
【請求項1】
成形シートの欠陥を検出する欠陥検査装置であって、
上記成形シートの2次元画像を複数回撮像して複数の2次元画像データを生成する撮像手段と、
上記成形シートにおける撮像される領域の一部に線状光源の像が投影されるように、上記成形シートを照明するための線状光源と、
上記成形シートにおける上記線状光源の像が投影されている位置が変化するように、上記成形シートおよび上記線状光源の少なくとも一方を、上記線状光源の長手方向と交差し、かつ上記成形シートの厚み方向に直交する方向に移動させる移動手段と、
上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから線欠陥を検出する線欠陥検出手段とを備え、
上記線欠陥検出手段は、
上記2次元画像データにおける線状光源の像のエッジを関数曲線でフィッティングし、線状光源の像のエッジと関数曲線との距離が第1の閾値以上である箇所を線欠陥として検出する線欠陥検出アルゴリズム、または
上記2次元画像データにおける線状光源の像のエッジについて、各画素の近傍領域における曲率を求め、曲率が第2の閾値以上である箇所を線欠陥として検出する線欠陥検出アルゴリズムによって線欠陥を検出するものであることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから点欠陥を検出する点欠陥検出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
上記点欠陥検出手段は、
上記2次元画像データにおける一直線上に沿った位置に依存した輝度の変化を輝度プロファイルとして表し、輝度プロファイルのプロット群をプロット間の移動時間が一定となるように移動する質点を想定し、注目プロットの直前2つのプロット間における上記質点の速度ベクトルと上記注目プロットの直前3つのプロット間における上記質点の加速度ベクトルとから上記注目プロットの輝度値を予測し、予測された輝度値と実際の輝度値との差が第3の閾値以上である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズム、または
上記2次元画像データを平滑化し、平滑化された2次元画像データと元の2次元画像データとの差分を差分画像データとして求め、差分画像データにおける輝度値が第4の閾値以上である箇所および輝度値が第5の閾値(第5の閾値は第4の閾値より小さい)以下である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズムによって点欠陥を検出するものであることを特徴とする請求項2記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
成形シートの欠陥を検出する欠陥検査装置であって、
上記成形シートの2次元画像を複数回撮像して複数の2次元画像データを生成する撮像手段と、
上記成形シートにおける撮像される領域の一部に線状光源の像が投影されるように、上記成形シートを照明するための線状光源と、
上記成形シートにおける上記線状光源の像が投影されている位置が変化するように、上記成形シートおよび上記線状光源の少なくとも一方を、上記線状光源の長手方向と交差し、かつ上記成形シートの厚み方向に直交する方向に移動させる移動手段と、
上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから点欠陥を検出する点欠陥検出手段とを備え、
上記点欠陥検出手段は、
上記2次元画像データにおける一直線上に沿った位置に依存した輝度の変化を輝度プロファイルとして表し、輝度プロファイルのプロット群をプロット間の移動時間が一定となるように移動する質点を想定し、注目プロットの直前2つのプロット間における上記質点の速度ベクトルと上記注目プロットの直前3つのプロット間における上記質点の加速度ベクトルとから上記注目プロットの輝度値を予測し、予測された輝度値と実際の輝度値との差が第3の閾値以上である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズム、または
上記2次元画像データを平滑化し、平滑化された2次元画像データと元の2次元画像データとの差分を差分画像データとして求め、差分画像データにおける輝度値が第4の閾値以上である箇所および輝度値が第5の閾値(第5の閾値は第4の閾値より小さい)以下である箇所を点欠陥として検出する点欠陥検出アルゴリズムによって点欠陥を検出するものであることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項5】
上記撮像手段で生成された複数の2次元画像データから線欠陥を検出する線欠陥検出手段をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の欠陥検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−122192(P2010−122192A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298680(P2008−298680)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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