成形体、電子機器および真贋判定方法
【課題】正規品本体に直接記録され、真贋判定パターンによる意匠性が損なわれることがなく、それでいて簡単・確実に真贋判定ができ、かつ容易に複製されることがないようにした成形体、半導体メモリ等の電子機器、及び真贋判定方法を提供する。
【解決手段】成形体11表面の形状記憶樹脂に、ナノインプリント法により凹凸形状による真贋判定パターン12が一次賦形として転写された構成とする。また、一次賦形の真贋判定パターンそのままの状態で真贋判定ができる。さらには、この一次賦形の真贋判定パターンを二次賦形させて置き、常時は凹凸形状の周期的な構造に起因する文字、記号あるいは文様等の表示、発色などを消失させた状態にして置くことも可能になる。
【解決手段】成形体11表面の形状記憶樹脂に、ナノインプリント法により凹凸形状による真贋判定パターン12が一次賦形として転写された構成とする。また、一次賦形の真贋判定パターンそのままの状態で真贋判定ができる。さらには、この一次賦形の真贋判定パターンを二次賦形させて置き、常時は凹凸形状の周期的な構造に起因する文字、記号あるいは文様等の表示、発色などを消失させた状態にして置くことも可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真贋判定パターンが転写された成形体、電子機器、および真贋判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラやパーソナルコンピュータの記憶媒体として用いられるカード状の薄型補助記憶装置等に代表される電子機器(例えば半導体メモリカード)の正規品に対して、安価な偽造品が出回るという問題が起こっている。偽造品が正規品と同じようなデザインで作成される場合、消費者は偽造品を正規品として認識して、購入してしまう。このため、正規品の信頼性が保たれず、また、正規品の市場利益も確保されなくなってしまう。
【0003】
このため、偽造品が市場に出回り、正規品と誤認されてしまうことを防止するために、正規品に偽造防止の為の印を付して置くことが行われている。このような偽造防止技術は、様々な製品に施しており、消費者が正規品と認識できるように工夫がなされている。
【0004】
偽造防止技術は、一般の使用者が偽造防止に関連する技術として認知でき、それぞれの使用者が真贋の判定をできるようにした、特許文献1に代表されるようなオバート技術と、特定の使用者のみが偽造防止に関連する技術として認識でき、特定の使用者のみが真贋判定を行えるようにした、特許文献2に代表されるようなコバート技術とがある。
【0005】
オバート技術としては、ホログラム等の回折構造形成体や、OVI(Optically Variable Ink)などの多層干渉膜などがその具体例として挙げられる。例えば、特許文献1に記載されている偽造防止ラベルは、表面にエンボス型によって形成された凹凸形状を有するもので、ラベルを見ただけで真贋が判定できるような構成とされている。
【0006】
コバート技術としては、蛍光印刷、万線潜像などが挙げられる。例えば、特許文献2に記載されている偽造防止シートは、表面に凹凸パターンを設けた光透過性ファイバーを紙基材またはプラスチック基材のシートの中に設けられている。このような構成により、基材のある端面方向から光を照射することにより、その端面と相対する反射側の端面からファイバーを伝わった光が発光すると同時に、基材表面からも光透過性ファイバーの表面に設けられた凹凸パターンに応じて発光が生じる。そして、これらを検証装置により検知することで、簡単に真贋判定ができる。このような構成を、クレジットカードや銀行カードなどに用いることにより、偽造を困難なものとしている。
【0007】
一方、半導体メモリカード等の比較的に小さくて高価な製品は、その製造元の真贋判定方法として、パケージにホログラムシールを貼り付ける等の方法が採られている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−72887号公報
【特許文献2】特開2000−309182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、例えば上述のホログラムシールは、比較的簡単に模造することが可能であり、模造品が製造された場合に正規品を製造している製造元が多大な損害を受けるという問題が生じる。また、小型の製品の場合は、表示可能なエリアが限られており、表示パターンの面積確保や、意匠性の点で、偽造防止技術の導入に困難な場合がある。そのため、正規品本体に直接記録され、真贋判定パターンによる意匠性が損なわれることがなく、それでいて簡単・確実に真贋判定ができ、かつ容易に複製されない方法で正規品を保護することが要求されている。
【0010】
本発明は、上述の点に鑑み、少なくとも容易に複製されることなく、かつ真贋判定を確実に行えるようにした成形体、半導体メモリ等の電子機器、及び真贋判定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る成形体は、成形体表面の形状記憶樹脂に、ナノインプリント法により凹凸形状による真贋判定パターンが一次賦形として転写されて成ることを特徴とする。
【0012】
本発明の成形体では、成形体表面の形状記憶樹脂にナノインプリント法による凹凸形状の真贋判定パターンが一次賦形として転写された構成であるので、複製(模造)され難い。すなわち、同じ真贋判定パターンを形成するためには高額なナノインプリント装置及び高度なナノインプリント法のノウハウが必要のため容易に真似ができない。また複製するための金型を作るには直接形状記憶樹脂の表面から凸凹形状を転写しそれを反転する必要があるが、これにも高度なノウハウが必要となる。さらに3次元凹凸形状の場合は転写そのものが非常に困難である。
また、一次賦形の真贋判定パターンそのままの状態で真贋判定ができる。さらには、この一次賦形の真贋判定パターンを二次賦形させて置き、常時は凹凸形状の周期的な構造に起因する文字、記号あるいは文様等の表示、発色などを消失させた状態にして置くことも可能になる。
【0013】
本発明に係る電子機器は、成形体表面の形状記憶樹脂にナノインプリント法により凹凸形状による真贋判定パターンが一次賦形として転写されて成る成形体に、記憶素子が組み込まれて成ることを特徴とする。
【0014】
本発明の電子機器では、形状記憶樹脂を用いて成形体表面にナノインプリント法による凹凸形状の真贋判定パターンが形成されているので、上述したように複製され難く、また真贋判定ができる。
【0015】
本発明に係る真贋判定方法は、ナノインプリント法により凹凸形状による真贋判定パターンを一次賦形として転写し、該真贋判定パターンを二次賦形させた形状記憶樹脂を表面に有する成形体に対し、形状記憶樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱して一次賦形された真贋判定パターンを復元させることを特徴とする。
【0016】
本発明の真贋判定方法では、二次賦形された状態では真贋判定パターンが消失して確認できないが、形状記憶樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱することにより一次賦形の真贋判定パターンが復元され、真贋判定がなされる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る成形体、電子機器によれば、容易に複製されることがなく、かつ真贋判定を確実に行うことができる。
また、本発明に係る真贋判定方法によれば、真贋判定を必要としたときに、真贋判定パターンを復元して判定を行うことができ、確実な真贋判定ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
まず、本発明の実施の形態の説明に先立ち、本発明に適用されるナノインプリント技術について説明する。
【0020】
ナノインプリントとは、ナノスケールの微細な凹凸パターンを例えば樹脂層に転写して、樹脂層の凹凸パターンを形成する技術である。ナノインプリントに用いられる金型は、ナノスケールの凹凸パターンを有する。このような微細な凹凸パターンが形成された金型は、例えば電子ビーム露光法を用いて形成される。すなわち、試料にフォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜に対して電子ビームで微細パターンを露光し、現像してレジストマスクを形成する。その後、レジストマスクを介してエッチング処理することによって金型を形成する。電子ビーム露光は、電子ビームのビーム径を数nmまで絞ることができ、10nm以下の微細パターンも作成可能とされている。
【0021】
図11にナノインプリントの一例を示す。図11Aに示すように、基板1上に例えば樹脂層2が形成される。一方、ナノスケールの微細な凹凸パターン4が形成された金型3を用意する。次に、図11Bに示すように、樹脂層2に対して、金型3を加熱、加圧して押し付ける。次に、図11Cに示すように、金型3を冷却して樹脂層2から剥離する。これにより、樹脂層2にナノインプリントが施されて微細な凹凸パターン5が転写される。
【0022】
次に、図1に、本発明に係る真贋判定を可能にした成形体の第1実施の形態を示す。本実施の形態に係る成形体は、製品の最外側を構成する成形体である。例えば、カバー体、ケース、パッケージ、その他等の匣体が成形体に当たる。以下の他の実施の形態における成形体も同様である。
第1実施の形態に係る成形体11は、成形体11自体を形状記憶樹脂で形成し、その成形体の外面、本例では表面11aにナノインプリント法によって微細な凹凸形状13の真贋判定パターン12を一次賦形として転写して構成される。この真贋判定パターン12は、光が照射されたときに所要の文字、記号あるいは文様等と共に、所要の色光が判別できるように、凹凸形状13が所要の周期構造をもって形成されている。
【0023】
形状記憶樹脂としては、例えば脂肪族ポリエステルを含む樹脂、形状記憶性を有する植物原料樹脂等を用いることができる。脂肪族ポリエステルを含む樹脂としては、例えば、トランスイソプレン樹脂、ポリノボルネン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。形状記憶性を有する植物原料樹脂は、一次賦形の温度が200℃程度、二次賦形の温度が60℃程度の、PLA(ポリ乳酸)を主体とした樹脂を挙げることができる。例えばトウモロコシを原料とし、全体に占める植物成分の割合が約90%の植物原料樹脂を用いることができる。
【0024】
形状記憶樹脂は、一度変形させた材料を加熱すると、その材料が変化前の元の状態に完全に戻ってしまう現象を示し、かつ実用的な温度領域での現象が観察される樹脂である。機能性材料の1つである形状記憶樹脂は、温度によってガラス領域、ガラス転移領域、ゴム領域、流動領域と変態する樹脂である。これらの相変態は可逆的で、ガラス転移温度に加熱すれば、繰り返し賦形できるという特徴を持っている。前述の形状記憶樹脂のうち、ポリノボルネン樹脂の温度に対する相変態を図10に示す。
【0025】
100℃〜150℃でポリノボルネン樹脂を成形すると高分子の鎖が絡み合って一定の形が決まる(いわゆる一次賦形される)。100℃以下の温度ではゴム、さらに35℃以下になると樹脂の性質を示す。従って、ゴムの性質を示す温度域で自由に変形した後、冷却すると、その形状が保たれ(いわゆる二次賦形される)、35℃以上に温めると再び成形した状態に戻る。また、トランス型ポリイソプレン(TPI)を加流架橋したポリマーは、67℃を境にゴムと樹脂の性質が入れ替わり、形状記憶機能を発揮する。その他の形状記憶樹脂についても、温度の違いはあるも同様の傾向を示すものである。
【0026】
図2に、上記第1実施の形態の成形体の製造方法の一実施の形態を示す。
先ず、図2Aに示すように、形状記憶樹脂による成形体11、この例ではケースを構成するケース半体をステージ14に載置する。一方、ナノスケールの微細な凹凸形状の真贋判定パターンと同じ凹凸形状パターン15を有する金型16を用意する。金型16の表面には、図示しないが離型膜(いわゆる剥離膜)が形成されている。
【0027】
次に、図2Bに示すように、形状記憶樹脂による成形体11を所要の温度に加熱して軟化させる。一方、金型16を一次賦形が得られる所要の成形温度に加熱した状態で、所要の加圧力をもって成形体11の表面に押しつける。これにより、成形体11の表面には金型16の凹凸パターンが転写される。
【0028】
次に、図2Cに示すように、成形体11を冷却すると共に、金型11を冷却して成形体11から剥離する。これによって、表面に周期構造となるように微細な凹凸形状13からなる一次賦形としての真贋判定パターン12が形成された成形体11が得られる。
【0029】
図3に、第1実施の形態の成形体の製造方法の他の実施の形態を示す。この実施の形態では、成形体11の成形と同時に、表面に真贋判定パターン12を形成するようになされる。
先ず、図3Aに示すように、基台側の第1の成形金型半体24と、この第1の成形金型半体24と対をなす第2の成形金型半体25を用意する。第2の成形金型半体25の内面には、前述した真贋判定パターンと同じ微細な凹凸形状のパターン15が形成されている。成形金型半体24、25の内面には、図示しないが、離型膜が形成されている。そして、基台側の成形金型半体24上に形状記憶樹脂21を配置する。
【0030】
次に、図3Bに示すように、成形金型半体24と共に形状記憶樹脂21を加熱して軟化させ、第2の成形金型半体25を加熱して形状記憶樹脂21に対してプレス成形する。このプレス成形で、成形体11、この例ではケース半体が成形されると共に、その表面にナノインプリントによる微細な凹凸形状の一次賦形としての真贋判定パターン12が転写される。
【0031】
次に、図3Cに示すように、第1の成形金型半体24及び成形体11を冷却すると共に、第2の成形金型半体25を冷却して成形体11から剥離する。これによって、表面に周期構造となるように微細な凹凸形状13からなる真贋判定パターン12が形成された成形体11が得られる。
【0032】
上述の第1実施の形態に係る成形体11によれば、成形体11の表面にナノインプリント法により周期構造の微細な凹凸形状13による真贋判定パターン12が一次賦形として転写されているので、成形体11の表面に光が照射されたとき、凹凸形状13の周期的な構造に起因する所要の文字、記号、文様が表示される。さらに、真贋判定パターン12の凹凸形状13の周期的な構造に起因した所要の発色(いわゆる二次元構造色)が認識される。これにより、真贋判定が確実になされ、正規品であることが確認される。また、本実施の形態の真贋判定パターンは、従来のホロブラムシートのように容易に複製、模造されることもない。すなわち、同じ真贋判定パターンを形成するためには高額なナノインプリント装置及び高度なナノインプリント法のノウハウが必要のため容易に真似ができない。また複製するための金型を作るには直接形状記憶樹脂の表面から凸凹形状を転写しそれを反転する必要があるが、これにも高度なノウハウが必要となる。従って、複製、模造がし難い。
【0033】
真贋判定パターン12は、形状記憶樹脂で形成されているので、一次賦形による真贋判定パターンを形成した後に、二次賦形させて凹凸形状を変形させることが可能になる。二次賦形させた後は、真贋判定パターンのパターンエリアを表示部として利用することが可能になる。表示部は印刷等で形成することができる。
【0034】
図4に、本発明に係る成形体の第2実施の形態を示す。第2実施の形態に係る成形体31は、成形体31自体を形状記憶樹脂で形成し、その成形体31の外面、本例では表面31aにナノインプリント法によって微細な凹凸形状13の真贋判定パターン12を一次賦形として転写する。この一次賦形としての真贋判定パターン12を転写した後、熱変形により二次賦形として凹凸形状13を変形して最終的な成形体31が構成される。
【0035】
図5及び図6に、第2実施の形態の成形体31の製造方法の一実施の形態を示す。本実施の形態では、成形体31の表面に一次賦形としての真贋判定パターン12を形成するまでの工程は、前述の図2A〜Cと同様である。
すなわち、図5Aに示すように、形状記憶樹脂による成形体31、この例ではケースを構成するケース半体をステージ14に載置する。一方、ナノスケールの微細な凹凸形状の真贋判定パターンと同じ凹凸形状パターン15を有する金型16を用意する。金型16の表面には、図示しないが離型膜(いわゆる剥離膜)が形成されている。
【0036】
次に、図5Bに示すように、形状記憶樹脂による成形体31を所要の温度に加熱して軟化させる。一方、金型16を一次賦形が得られる所要の成形温度に加熱した状態で、所要の加圧力をもって成形体31の表面に押しつける。これにより、成形体31の表面には金型16の凹凸パターンが一次賦形として転写される。
【0037】
次に、図5Cに示すように、成形体31を冷却すると共に、金型11を冷却して成形体31から剥離する。これによって、成形体31の表面に周期構造となるように微細な凹凸形状13からなる真贋判定パターン12が形成される。
【0038】
次に、本実施の形態においては、図6Dに示すように、平板状の型32を二次賦形が得られる温度、すなわち形状記憶樹脂のガラス転移点の温度に加熱し、この平板状型32を真贋判定パターン12を構成する微細な凹凸形状13に押し当てながら、図6Eに示すように、成形体31の面に沿って移動させる。
【0039】
このように平板状型32を加熱し、凹凸形状13に押圧しながら移動することにより、図6Fに示すように、真贋判定パターン12を構成する微細な凹凸形状13は、二次賦形として凹凸形状13が変形する。図示の例では、凸部が倒れるように変形する。二次賦形させた後、平板状型32を成形体31から剥離する。
【0040】
これによって、図6Fに示すように、表面に真贋判定パターンである微細な凹凸形状13が二次賦形として形状変形した成形体31が得られる。
【0041】
第2実施の形態の成形体31の製造方法の他の実施の形態としては、図示しないが、前述の図3に示す成形体の形成と同時に一次賦形としての真贋判定パターン12を形成した後、図6D〜Fの工程で真贋判定パターン12の凹凸形状13を二次賦形として変形する。このようにして、一次賦形の真贋判定パターン12が、その凹凸形状を変形させて二次賦形された目的の成形体31を得る。
【0042】
第2実施の形態の成形体31は、凹凸形状13を二次賦形させた後、二次賦形された領域を含めて、成形体表面上に印刷等の方法で所要の表示を形成することができる。
【0043】
上述の第2実施の形態に係る成形体31によれば、形状記憶樹脂による成形体31の表面にナノインプリント法により、周期構造の微細な凹凸形状13による真贋判定パターン12を一次賦形として転写し、その後、凹凸形状13を二次賦形として形状変化させて、目的の成形体31を構成している。従って、通常の状態では、成形体31の表面の一次賦形としての凹凸形状が熱変形により二次賦形とされているので、光が照射されても、真贋判定パターン12、すなわち文字、記号、文様が現れず、さらに凹凸形状の周期的な構造に起因する発色が消失する。このため、従来のエンボスシートを貼着したような場合の、常に表面がキラキラ光る状態ではなくなる。
【0044】
そして、通常は、真贋判定パターンが隠れて目立たないので、この真贋判定パターンの領域に印刷等による所要のデザイン、意匠性を有する表示部を形成することができる。また、第2実施の形態の成形体31は、真贋判定パターン12の領域を他の表示部として利用することができるので、特に、小型の製品に適用した場合、後述する真贋判定を可能し、かつ表示部の形成も可能であるため、意匠性にも優れるものである。
【0045】
次に、第2実施の形態の成形体31を用いた真贋判定方法について説明する。第2実施の形態における成形体31では、真贋判定する場合は、成形体31を構成する形状記憶樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱する。これにより、凹凸形状13がもとの状態に戻り、一次賦形された真贋判定パターン12が復元して、真贋判定パターン12の微細な凹凸形状の周期的な構造に起因する文字、記号あるいは模様が表示される。さらに凹凸形状13の周期的な構造に起因する発色が認識される。このようにして、真贋判定、つまり正規品であることが確実に確認される。
【0046】
二次賦形した場合は、二次賦形した後において、外力により直接的に真贋判定パターンが変形することはない。また、二次賦形の有無に関係なく、すなわち第1実施の形態、第2実施の形態にかかわらず、真贋判定パターン領域の変形が生じたとしても、加熱に復元することができるため、本発明の実施の形態に係る真贋判定パターン12は、超寿命な真贋判定パターンとなる。本発明の実施の形態に係る真贋判定パターン12は、形状記憶樹脂と成形体材料そのものも限定されているため、真贋判定パターン単体に比べて、さらに複製が困難となる。
【0047】
図7に、本発明に係る成形体の第3実施の形態を示す。同図は要部の拡大断面図である。本実施の形態に係る成形体41は、成形体41自体を形状記憶樹脂で形成し、その成形体表面にナノインプリント法によって微細な凹凸形状42の真贋判定パターン43を一次賦形として転写して構成される。この凹凸形状42は、深さが変調された3次元凹凸形状を有して構成される。
【0048】
このような第3実施の形態に係る成形体41によれば、真贋判定パターン43を構成する3次元凹凸形状42において、その深さの変調パターン応じて反射光の強度が変わり、また異なる3次元構造色が得られるので、真贋判定の視認性が良くなる。特に、3次元凹凸形状で真贋判定パターン43が形成されるので、凹凸構造が複雑な上、ナノインプリントも難しくなるので、より複製することが困難となる。すなわち、3次元凹凸形状の場合は転写そのものが非常に困難である。その他、前述の第1実施の形態で説明したと同様の効果を奏する。
【0049】
図8に、本発明に係る成形体の第4実施の形態を示す。同図は要部の拡大断面図である。本実施の形態に係る成形体44は、図7に示す一次賦形の真贋判定パターン43を二次賦形として形状変化させて構成される。第4実施の形態に係る成形体44によれば、通常は真贋判定パターンは表示されない。真贋判定する場合は、成形体44を形状記憶樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱して二次賦形の状態から一次賦形の真贋判定パターン43に復元させて行う。この成形体44も前述の第2、3実施の形態で説明したと同様の効果を奏する。
【0050】
なお、図7、図8の凹凸形状42としては、階段状となるように周期的に深さが変調された凹凸形状として構成したが、その他の構造とすることも可能である。例えば、凹凸形状の凸部の幅が深さ方向に関して周期的に異なるようにして深さが変調された凹凸形状として構成する等、深さが変調された凹凸形状であれば、本実施の形態の成形体に適用できる。
【0051】
上述した成形体11、31、41、44は、カード状の補助記憶装置等の電子機器に用いることができる。図9に、第1〜第4実施の形態における成形体11、31、41、44によるケースを用いた電子機器51を示す。この電子機器51は、前述した成形体11、31、41または44によるケース52内に記憶素子(図示せず)が組み込まれており、そのケース52表面に真贋判定パターン12、43が形成された構成となっている。ケース52表面の真贋判定パターン12、43は、一次賦形として形成された状態でも良く、あるいはさらに二次賦形として真贋判定パターン12、43が形状変化された状態でも良い。
【0052】
このような小型の補助記憶装置としての電子機器51によれば、容易に複製されず、真贋判定を確実に行うことができる。特に、二次賦形した状態であれば、真贋判定パターン領域が表示部として利用できるので、真贋判定と意匠性に優れた電子機器を提供できる。
【0053】
上例の形状記憶樹脂による真贋判定パターンを有した成形体は、成形体自体を形状記憶樹脂で形成し、この成形体の表面にナノインプリント法で真贋判定パターンを転写して構成したが、その他の構成を採ることもできる。例えば、形状記憶樹脂以外の樹脂、または金属で成形体を形成し、この成形体の表面に、予め上述した実施の形態の真贋判定パターンを形成した形状記憶樹脂フィルムを貼着した構成とすることもできる。あるいは、予め上述した実施の形態の真贋判定パターンを形成した形状記憶樹脂基板を用意する。この形状記憶樹脂基板を射出成形金型に配置し、いわゆる二色成形法により射出成形で真贋判定パターンを有する形状記憶樹脂基板が表面に埋め込まれるように成形体を形成した構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】A,B 本発明に係る成形体の第1実施の形態を示す概略斜視図及びそのB−B線上の断面図である。
【図2】A〜C 第1実施の形態に係る成形体の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図である。
【図3】A〜C 第1実施の形態に係る成形体の製造方法の他の実施の形態を示す製造工程図である。
【図4】A,B 本発明に係る成形体の第2実施の形態を示す概略斜視図及びそのB−B線上の断面図である。
【図5】A〜C 第2実施の形態に係る成形体の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その1)である。
【図6】D〜F 第2実施の形態に係る成形体の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その1)である。
【図7】本発明に係る成形体の第3実施の形態を示す要部の拡大断面図である。
【図8】本発明に係る成形体の第4実施の形態を示す要部の拡大断面図である。
【図9】本発明に係る電子機器の一実施の形態を示す概略斜視図である。
【図10】形状記憶樹脂の温度に対する相変態を示す相変態図である。
【図11】A〜C ナノインプリントの例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0055】
11、31、41、44・・成形体、12、43・・真贋判定パターン、13、42・・凹凸形状、16・・金型、32・・平板状の型、24、25・・金型半体、51・・電子機器、52・・ケース
【技術分野】
【0001】
本発明は、真贋判定パターンが転写された成形体、電子機器、および真贋判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラやパーソナルコンピュータの記憶媒体として用いられるカード状の薄型補助記憶装置等に代表される電子機器(例えば半導体メモリカード)の正規品に対して、安価な偽造品が出回るという問題が起こっている。偽造品が正規品と同じようなデザインで作成される場合、消費者は偽造品を正規品として認識して、購入してしまう。このため、正規品の信頼性が保たれず、また、正規品の市場利益も確保されなくなってしまう。
【0003】
このため、偽造品が市場に出回り、正規品と誤認されてしまうことを防止するために、正規品に偽造防止の為の印を付して置くことが行われている。このような偽造防止技術は、様々な製品に施しており、消費者が正規品と認識できるように工夫がなされている。
【0004】
偽造防止技術は、一般の使用者が偽造防止に関連する技術として認知でき、それぞれの使用者が真贋の判定をできるようにした、特許文献1に代表されるようなオバート技術と、特定の使用者のみが偽造防止に関連する技術として認識でき、特定の使用者のみが真贋判定を行えるようにした、特許文献2に代表されるようなコバート技術とがある。
【0005】
オバート技術としては、ホログラム等の回折構造形成体や、OVI(Optically Variable Ink)などの多層干渉膜などがその具体例として挙げられる。例えば、特許文献1に記載されている偽造防止ラベルは、表面にエンボス型によって形成された凹凸形状を有するもので、ラベルを見ただけで真贋が判定できるような構成とされている。
【0006】
コバート技術としては、蛍光印刷、万線潜像などが挙げられる。例えば、特許文献2に記載されている偽造防止シートは、表面に凹凸パターンを設けた光透過性ファイバーを紙基材またはプラスチック基材のシートの中に設けられている。このような構成により、基材のある端面方向から光を照射することにより、その端面と相対する反射側の端面からファイバーを伝わった光が発光すると同時に、基材表面からも光透過性ファイバーの表面に設けられた凹凸パターンに応じて発光が生じる。そして、これらを検証装置により検知することで、簡単に真贋判定ができる。このような構成を、クレジットカードや銀行カードなどに用いることにより、偽造を困難なものとしている。
【0007】
一方、半導体メモリカード等の比較的に小さくて高価な製品は、その製造元の真贋判定方法として、パケージにホログラムシールを貼り付ける等の方法が採られている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−72887号公報
【特許文献2】特開2000−309182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、例えば上述のホログラムシールは、比較的簡単に模造することが可能であり、模造品が製造された場合に正規品を製造している製造元が多大な損害を受けるという問題が生じる。また、小型の製品の場合は、表示可能なエリアが限られており、表示パターンの面積確保や、意匠性の点で、偽造防止技術の導入に困難な場合がある。そのため、正規品本体に直接記録され、真贋判定パターンによる意匠性が損なわれることがなく、それでいて簡単・確実に真贋判定ができ、かつ容易に複製されない方法で正規品を保護することが要求されている。
【0010】
本発明は、上述の点に鑑み、少なくとも容易に複製されることなく、かつ真贋判定を確実に行えるようにした成形体、半導体メモリ等の電子機器、及び真贋判定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る成形体は、成形体表面の形状記憶樹脂に、ナノインプリント法により凹凸形状による真贋判定パターンが一次賦形として転写されて成ることを特徴とする。
【0012】
本発明の成形体では、成形体表面の形状記憶樹脂にナノインプリント法による凹凸形状の真贋判定パターンが一次賦形として転写された構成であるので、複製(模造)され難い。すなわち、同じ真贋判定パターンを形成するためには高額なナノインプリント装置及び高度なナノインプリント法のノウハウが必要のため容易に真似ができない。また複製するための金型を作るには直接形状記憶樹脂の表面から凸凹形状を転写しそれを反転する必要があるが、これにも高度なノウハウが必要となる。さらに3次元凹凸形状の場合は転写そのものが非常に困難である。
また、一次賦形の真贋判定パターンそのままの状態で真贋判定ができる。さらには、この一次賦形の真贋判定パターンを二次賦形させて置き、常時は凹凸形状の周期的な構造に起因する文字、記号あるいは文様等の表示、発色などを消失させた状態にして置くことも可能になる。
【0013】
本発明に係る電子機器は、成形体表面の形状記憶樹脂にナノインプリント法により凹凸形状による真贋判定パターンが一次賦形として転写されて成る成形体に、記憶素子が組み込まれて成ることを特徴とする。
【0014】
本発明の電子機器では、形状記憶樹脂を用いて成形体表面にナノインプリント法による凹凸形状の真贋判定パターンが形成されているので、上述したように複製され難く、また真贋判定ができる。
【0015】
本発明に係る真贋判定方法は、ナノインプリント法により凹凸形状による真贋判定パターンを一次賦形として転写し、該真贋判定パターンを二次賦形させた形状記憶樹脂を表面に有する成形体に対し、形状記憶樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱して一次賦形された真贋判定パターンを復元させることを特徴とする。
【0016】
本発明の真贋判定方法では、二次賦形された状態では真贋判定パターンが消失して確認できないが、形状記憶樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱することにより一次賦形の真贋判定パターンが復元され、真贋判定がなされる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る成形体、電子機器によれば、容易に複製されることがなく、かつ真贋判定を確実に行うことができる。
また、本発明に係る真贋判定方法によれば、真贋判定を必要としたときに、真贋判定パターンを復元して判定を行うことができ、確実な真贋判定ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
まず、本発明の実施の形態の説明に先立ち、本発明に適用されるナノインプリント技術について説明する。
【0020】
ナノインプリントとは、ナノスケールの微細な凹凸パターンを例えば樹脂層に転写して、樹脂層の凹凸パターンを形成する技術である。ナノインプリントに用いられる金型は、ナノスケールの凹凸パターンを有する。このような微細な凹凸パターンが形成された金型は、例えば電子ビーム露光法を用いて形成される。すなわち、試料にフォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜に対して電子ビームで微細パターンを露光し、現像してレジストマスクを形成する。その後、レジストマスクを介してエッチング処理することによって金型を形成する。電子ビーム露光は、電子ビームのビーム径を数nmまで絞ることができ、10nm以下の微細パターンも作成可能とされている。
【0021】
図11にナノインプリントの一例を示す。図11Aに示すように、基板1上に例えば樹脂層2が形成される。一方、ナノスケールの微細な凹凸パターン4が形成された金型3を用意する。次に、図11Bに示すように、樹脂層2に対して、金型3を加熱、加圧して押し付ける。次に、図11Cに示すように、金型3を冷却して樹脂層2から剥離する。これにより、樹脂層2にナノインプリントが施されて微細な凹凸パターン5が転写される。
【0022】
次に、図1に、本発明に係る真贋判定を可能にした成形体の第1実施の形態を示す。本実施の形態に係る成形体は、製品の最外側を構成する成形体である。例えば、カバー体、ケース、パッケージ、その他等の匣体が成形体に当たる。以下の他の実施の形態における成形体も同様である。
第1実施の形態に係る成形体11は、成形体11自体を形状記憶樹脂で形成し、その成形体の外面、本例では表面11aにナノインプリント法によって微細な凹凸形状13の真贋判定パターン12を一次賦形として転写して構成される。この真贋判定パターン12は、光が照射されたときに所要の文字、記号あるいは文様等と共に、所要の色光が判別できるように、凹凸形状13が所要の周期構造をもって形成されている。
【0023】
形状記憶樹脂としては、例えば脂肪族ポリエステルを含む樹脂、形状記憶性を有する植物原料樹脂等を用いることができる。脂肪族ポリエステルを含む樹脂としては、例えば、トランスイソプレン樹脂、ポリノボルネン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。形状記憶性を有する植物原料樹脂は、一次賦形の温度が200℃程度、二次賦形の温度が60℃程度の、PLA(ポリ乳酸)を主体とした樹脂を挙げることができる。例えばトウモロコシを原料とし、全体に占める植物成分の割合が約90%の植物原料樹脂を用いることができる。
【0024】
形状記憶樹脂は、一度変形させた材料を加熱すると、その材料が変化前の元の状態に完全に戻ってしまう現象を示し、かつ実用的な温度領域での現象が観察される樹脂である。機能性材料の1つである形状記憶樹脂は、温度によってガラス領域、ガラス転移領域、ゴム領域、流動領域と変態する樹脂である。これらの相変態は可逆的で、ガラス転移温度に加熱すれば、繰り返し賦形できるという特徴を持っている。前述の形状記憶樹脂のうち、ポリノボルネン樹脂の温度に対する相変態を図10に示す。
【0025】
100℃〜150℃でポリノボルネン樹脂を成形すると高分子の鎖が絡み合って一定の形が決まる(いわゆる一次賦形される)。100℃以下の温度ではゴム、さらに35℃以下になると樹脂の性質を示す。従って、ゴムの性質を示す温度域で自由に変形した後、冷却すると、その形状が保たれ(いわゆる二次賦形される)、35℃以上に温めると再び成形した状態に戻る。また、トランス型ポリイソプレン(TPI)を加流架橋したポリマーは、67℃を境にゴムと樹脂の性質が入れ替わり、形状記憶機能を発揮する。その他の形状記憶樹脂についても、温度の違いはあるも同様の傾向を示すものである。
【0026】
図2に、上記第1実施の形態の成形体の製造方法の一実施の形態を示す。
先ず、図2Aに示すように、形状記憶樹脂による成形体11、この例ではケースを構成するケース半体をステージ14に載置する。一方、ナノスケールの微細な凹凸形状の真贋判定パターンと同じ凹凸形状パターン15を有する金型16を用意する。金型16の表面には、図示しないが離型膜(いわゆる剥離膜)が形成されている。
【0027】
次に、図2Bに示すように、形状記憶樹脂による成形体11を所要の温度に加熱して軟化させる。一方、金型16を一次賦形が得られる所要の成形温度に加熱した状態で、所要の加圧力をもって成形体11の表面に押しつける。これにより、成形体11の表面には金型16の凹凸パターンが転写される。
【0028】
次に、図2Cに示すように、成形体11を冷却すると共に、金型11を冷却して成形体11から剥離する。これによって、表面に周期構造となるように微細な凹凸形状13からなる一次賦形としての真贋判定パターン12が形成された成形体11が得られる。
【0029】
図3に、第1実施の形態の成形体の製造方法の他の実施の形態を示す。この実施の形態では、成形体11の成形と同時に、表面に真贋判定パターン12を形成するようになされる。
先ず、図3Aに示すように、基台側の第1の成形金型半体24と、この第1の成形金型半体24と対をなす第2の成形金型半体25を用意する。第2の成形金型半体25の内面には、前述した真贋判定パターンと同じ微細な凹凸形状のパターン15が形成されている。成形金型半体24、25の内面には、図示しないが、離型膜が形成されている。そして、基台側の成形金型半体24上に形状記憶樹脂21を配置する。
【0030】
次に、図3Bに示すように、成形金型半体24と共に形状記憶樹脂21を加熱して軟化させ、第2の成形金型半体25を加熱して形状記憶樹脂21に対してプレス成形する。このプレス成形で、成形体11、この例ではケース半体が成形されると共に、その表面にナノインプリントによる微細な凹凸形状の一次賦形としての真贋判定パターン12が転写される。
【0031】
次に、図3Cに示すように、第1の成形金型半体24及び成形体11を冷却すると共に、第2の成形金型半体25を冷却して成形体11から剥離する。これによって、表面に周期構造となるように微細な凹凸形状13からなる真贋判定パターン12が形成された成形体11が得られる。
【0032】
上述の第1実施の形態に係る成形体11によれば、成形体11の表面にナノインプリント法により周期構造の微細な凹凸形状13による真贋判定パターン12が一次賦形として転写されているので、成形体11の表面に光が照射されたとき、凹凸形状13の周期的な構造に起因する所要の文字、記号、文様が表示される。さらに、真贋判定パターン12の凹凸形状13の周期的な構造に起因した所要の発色(いわゆる二次元構造色)が認識される。これにより、真贋判定が確実になされ、正規品であることが確認される。また、本実施の形態の真贋判定パターンは、従来のホロブラムシートのように容易に複製、模造されることもない。すなわち、同じ真贋判定パターンを形成するためには高額なナノインプリント装置及び高度なナノインプリント法のノウハウが必要のため容易に真似ができない。また複製するための金型を作るには直接形状記憶樹脂の表面から凸凹形状を転写しそれを反転する必要があるが、これにも高度なノウハウが必要となる。従って、複製、模造がし難い。
【0033】
真贋判定パターン12は、形状記憶樹脂で形成されているので、一次賦形による真贋判定パターンを形成した後に、二次賦形させて凹凸形状を変形させることが可能になる。二次賦形させた後は、真贋判定パターンのパターンエリアを表示部として利用することが可能になる。表示部は印刷等で形成することができる。
【0034】
図4に、本発明に係る成形体の第2実施の形態を示す。第2実施の形態に係る成形体31は、成形体31自体を形状記憶樹脂で形成し、その成形体31の外面、本例では表面31aにナノインプリント法によって微細な凹凸形状13の真贋判定パターン12を一次賦形として転写する。この一次賦形としての真贋判定パターン12を転写した後、熱変形により二次賦形として凹凸形状13を変形して最終的な成形体31が構成される。
【0035】
図5及び図6に、第2実施の形態の成形体31の製造方法の一実施の形態を示す。本実施の形態では、成形体31の表面に一次賦形としての真贋判定パターン12を形成するまでの工程は、前述の図2A〜Cと同様である。
すなわち、図5Aに示すように、形状記憶樹脂による成形体31、この例ではケースを構成するケース半体をステージ14に載置する。一方、ナノスケールの微細な凹凸形状の真贋判定パターンと同じ凹凸形状パターン15を有する金型16を用意する。金型16の表面には、図示しないが離型膜(いわゆる剥離膜)が形成されている。
【0036】
次に、図5Bに示すように、形状記憶樹脂による成形体31を所要の温度に加熱して軟化させる。一方、金型16を一次賦形が得られる所要の成形温度に加熱した状態で、所要の加圧力をもって成形体31の表面に押しつける。これにより、成形体31の表面には金型16の凹凸パターンが一次賦形として転写される。
【0037】
次に、図5Cに示すように、成形体31を冷却すると共に、金型11を冷却して成形体31から剥離する。これによって、成形体31の表面に周期構造となるように微細な凹凸形状13からなる真贋判定パターン12が形成される。
【0038】
次に、本実施の形態においては、図6Dに示すように、平板状の型32を二次賦形が得られる温度、すなわち形状記憶樹脂のガラス転移点の温度に加熱し、この平板状型32を真贋判定パターン12を構成する微細な凹凸形状13に押し当てながら、図6Eに示すように、成形体31の面に沿って移動させる。
【0039】
このように平板状型32を加熱し、凹凸形状13に押圧しながら移動することにより、図6Fに示すように、真贋判定パターン12を構成する微細な凹凸形状13は、二次賦形として凹凸形状13が変形する。図示の例では、凸部が倒れるように変形する。二次賦形させた後、平板状型32を成形体31から剥離する。
【0040】
これによって、図6Fに示すように、表面に真贋判定パターンである微細な凹凸形状13が二次賦形として形状変形した成形体31が得られる。
【0041】
第2実施の形態の成形体31の製造方法の他の実施の形態としては、図示しないが、前述の図3に示す成形体の形成と同時に一次賦形としての真贋判定パターン12を形成した後、図6D〜Fの工程で真贋判定パターン12の凹凸形状13を二次賦形として変形する。このようにして、一次賦形の真贋判定パターン12が、その凹凸形状を変形させて二次賦形された目的の成形体31を得る。
【0042】
第2実施の形態の成形体31は、凹凸形状13を二次賦形させた後、二次賦形された領域を含めて、成形体表面上に印刷等の方法で所要の表示を形成することができる。
【0043】
上述の第2実施の形態に係る成形体31によれば、形状記憶樹脂による成形体31の表面にナノインプリント法により、周期構造の微細な凹凸形状13による真贋判定パターン12を一次賦形として転写し、その後、凹凸形状13を二次賦形として形状変化させて、目的の成形体31を構成している。従って、通常の状態では、成形体31の表面の一次賦形としての凹凸形状が熱変形により二次賦形とされているので、光が照射されても、真贋判定パターン12、すなわち文字、記号、文様が現れず、さらに凹凸形状の周期的な構造に起因する発色が消失する。このため、従来のエンボスシートを貼着したような場合の、常に表面がキラキラ光る状態ではなくなる。
【0044】
そして、通常は、真贋判定パターンが隠れて目立たないので、この真贋判定パターンの領域に印刷等による所要のデザイン、意匠性を有する表示部を形成することができる。また、第2実施の形態の成形体31は、真贋判定パターン12の領域を他の表示部として利用することができるので、特に、小型の製品に適用した場合、後述する真贋判定を可能し、かつ表示部の形成も可能であるため、意匠性にも優れるものである。
【0045】
次に、第2実施の形態の成形体31を用いた真贋判定方法について説明する。第2実施の形態における成形体31では、真贋判定する場合は、成形体31を構成する形状記憶樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱する。これにより、凹凸形状13がもとの状態に戻り、一次賦形された真贋判定パターン12が復元して、真贋判定パターン12の微細な凹凸形状の周期的な構造に起因する文字、記号あるいは模様が表示される。さらに凹凸形状13の周期的な構造に起因する発色が認識される。このようにして、真贋判定、つまり正規品であることが確実に確認される。
【0046】
二次賦形した場合は、二次賦形した後において、外力により直接的に真贋判定パターンが変形することはない。また、二次賦形の有無に関係なく、すなわち第1実施の形態、第2実施の形態にかかわらず、真贋判定パターン領域の変形が生じたとしても、加熱に復元することができるため、本発明の実施の形態に係る真贋判定パターン12は、超寿命な真贋判定パターンとなる。本発明の実施の形態に係る真贋判定パターン12は、形状記憶樹脂と成形体材料そのものも限定されているため、真贋判定パターン単体に比べて、さらに複製が困難となる。
【0047】
図7に、本発明に係る成形体の第3実施の形態を示す。同図は要部の拡大断面図である。本実施の形態に係る成形体41は、成形体41自体を形状記憶樹脂で形成し、その成形体表面にナノインプリント法によって微細な凹凸形状42の真贋判定パターン43を一次賦形として転写して構成される。この凹凸形状42は、深さが変調された3次元凹凸形状を有して構成される。
【0048】
このような第3実施の形態に係る成形体41によれば、真贋判定パターン43を構成する3次元凹凸形状42において、その深さの変調パターン応じて反射光の強度が変わり、また異なる3次元構造色が得られるので、真贋判定の視認性が良くなる。特に、3次元凹凸形状で真贋判定パターン43が形成されるので、凹凸構造が複雑な上、ナノインプリントも難しくなるので、より複製することが困難となる。すなわち、3次元凹凸形状の場合は転写そのものが非常に困難である。その他、前述の第1実施の形態で説明したと同様の効果を奏する。
【0049】
図8に、本発明に係る成形体の第4実施の形態を示す。同図は要部の拡大断面図である。本実施の形態に係る成形体44は、図7に示す一次賦形の真贋判定パターン43を二次賦形として形状変化させて構成される。第4実施の形態に係る成形体44によれば、通常は真贋判定パターンは表示されない。真贋判定する場合は、成形体44を形状記憶樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱して二次賦形の状態から一次賦形の真贋判定パターン43に復元させて行う。この成形体44も前述の第2、3実施の形態で説明したと同様の効果を奏する。
【0050】
なお、図7、図8の凹凸形状42としては、階段状となるように周期的に深さが変調された凹凸形状として構成したが、その他の構造とすることも可能である。例えば、凹凸形状の凸部の幅が深さ方向に関して周期的に異なるようにして深さが変調された凹凸形状として構成する等、深さが変調された凹凸形状であれば、本実施の形態の成形体に適用できる。
【0051】
上述した成形体11、31、41、44は、カード状の補助記憶装置等の電子機器に用いることができる。図9に、第1〜第4実施の形態における成形体11、31、41、44によるケースを用いた電子機器51を示す。この電子機器51は、前述した成形体11、31、41または44によるケース52内に記憶素子(図示せず)が組み込まれており、そのケース52表面に真贋判定パターン12、43が形成された構成となっている。ケース52表面の真贋判定パターン12、43は、一次賦形として形成された状態でも良く、あるいはさらに二次賦形として真贋判定パターン12、43が形状変化された状態でも良い。
【0052】
このような小型の補助記憶装置としての電子機器51によれば、容易に複製されず、真贋判定を確実に行うことができる。特に、二次賦形した状態であれば、真贋判定パターン領域が表示部として利用できるので、真贋判定と意匠性に優れた電子機器を提供できる。
【0053】
上例の形状記憶樹脂による真贋判定パターンを有した成形体は、成形体自体を形状記憶樹脂で形成し、この成形体の表面にナノインプリント法で真贋判定パターンを転写して構成したが、その他の構成を採ることもできる。例えば、形状記憶樹脂以外の樹脂、または金属で成形体を形成し、この成形体の表面に、予め上述した実施の形態の真贋判定パターンを形成した形状記憶樹脂フィルムを貼着した構成とすることもできる。あるいは、予め上述した実施の形態の真贋判定パターンを形成した形状記憶樹脂基板を用意する。この形状記憶樹脂基板を射出成形金型に配置し、いわゆる二色成形法により射出成形で真贋判定パターンを有する形状記憶樹脂基板が表面に埋め込まれるように成形体を形成した構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】A,B 本発明に係る成形体の第1実施の形態を示す概略斜視図及びそのB−B線上の断面図である。
【図2】A〜C 第1実施の形態に係る成形体の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図である。
【図3】A〜C 第1実施の形態に係る成形体の製造方法の他の実施の形態を示す製造工程図である。
【図4】A,B 本発明に係る成形体の第2実施の形態を示す概略斜視図及びそのB−B線上の断面図である。
【図5】A〜C 第2実施の形態に係る成形体の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その1)である。
【図6】D〜F 第2実施の形態に係る成形体の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その1)である。
【図7】本発明に係る成形体の第3実施の形態を示す要部の拡大断面図である。
【図8】本発明に係る成形体の第4実施の形態を示す要部の拡大断面図である。
【図9】本発明に係る電子機器の一実施の形態を示す概略斜視図である。
【図10】形状記憶樹脂の温度に対する相変態を示す相変態図である。
【図11】A〜C ナノインプリントの例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0055】
11、31、41、44・・成形体、12、43・・真贋判定パターン、13、42・・凹凸形状、16・・金型、32・・平板状の型、24、25・・金型半体、51・・電子機器、52・・ケース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体表面の形状記憶樹脂に、ナノインプリント法により凹凸形状による真贋判定パターンが一次賦形として転写されて成る
ことを特徴とする成形体。
【請求項2】
前記一次賦形として転写された前記真贋判定パターンが、熱変形により二次賦形として形状変化されて成る
ことを特徴とする請求項1記載の成形体。
【請求項3】
前記二次賦形により凹凸形状の周期的な構造に起因する発色が消失して成る
ことを特徴とする請求項2記載の成形体。
【請求項4】
前記形状変化した面に表示部が施されて成る
ことを特徴とする請求項2記載の成形体。
【請求項5】
前記真贋判定パターンが凹凸形状の周期的な構造に起因する発色を有して成る
ことを特徴とする請求項1記載の成形体。
【請求項6】
前記形状記憶樹脂が脂肪族ポリエステルを含む樹脂、又は植物原料樹脂から成る
ことを特徴とする請求項1記載の成形体。
【請求項7】
成形体表面の形状記憶樹脂にナノインプリント法により凹凸形状による真贋判定パターンが一次賦形として転写されて成る成形体に、
記憶素子が組み込まれて成る
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
前記一次賦形として転写された前記真贋判定パターンが、熱変形により二次賦形として形状変化されて成る
ことを特徴とする請求項7記載の電子機器。
【請求項9】
前記二次賦形により凹凸形状の周期的な構造に起因する発色がが消失して成る
ことを特徴とする請求項8記載の電子機器。
【請求項10】
前記形状変化した面に表示部が施されて成る
ことを特徴とする請求項8記載の電子機器。
【請求項11】
前記真贋判定パターンが凹凸形状の周期的な構造に起因する発色を有して成る
ことを特徴とする請求項7記載の電子機器。
【請求項12】
前記形状記憶樹脂が脂肪族ポリエステルを含む樹脂、又は植物原料樹脂から成る
ことを特徴とする請求項7記載の電子機器。
【請求項13】
ナノインプリント法により凹凸形状による真贋判定パターンを一次賦形として転写し、該真贋判定パターンを二次賦形させた形状記憶樹脂を表面に有する成形体に対し、
前記形状記憶樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱して一次賦形された真贋判定パターンを復元させる
ことを特徴とする真贋判定方法。
【請求項14】
前記真贋判定パターンを、前記凹凸形状の周期的な構造に起因する発色で確認する
ことを特徴とする請求項13記載の真贋判定方法。
【請求項15】
前記真贋判定パターンを、前記凹凸形状の周期的な構造に起因する文字、記号あるいは文様で確認する
ことを特徴とする請求項13記載の真贋判定方法。
【請求項1】
成形体表面の形状記憶樹脂に、ナノインプリント法により凹凸形状による真贋判定パターンが一次賦形として転写されて成る
ことを特徴とする成形体。
【請求項2】
前記一次賦形として転写された前記真贋判定パターンが、熱変形により二次賦形として形状変化されて成る
ことを特徴とする請求項1記載の成形体。
【請求項3】
前記二次賦形により凹凸形状の周期的な構造に起因する発色が消失して成る
ことを特徴とする請求項2記載の成形体。
【請求項4】
前記形状変化した面に表示部が施されて成る
ことを特徴とする請求項2記載の成形体。
【請求項5】
前記真贋判定パターンが凹凸形状の周期的な構造に起因する発色を有して成る
ことを特徴とする請求項1記載の成形体。
【請求項6】
前記形状記憶樹脂が脂肪族ポリエステルを含む樹脂、又は植物原料樹脂から成る
ことを特徴とする請求項1記載の成形体。
【請求項7】
成形体表面の形状記憶樹脂にナノインプリント法により凹凸形状による真贋判定パターンが一次賦形として転写されて成る成形体に、
記憶素子が組み込まれて成る
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
前記一次賦形として転写された前記真贋判定パターンが、熱変形により二次賦形として形状変化されて成る
ことを特徴とする請求項7記載の電子機器。
【請求項9】
前記二次賦形により凹凸形状の周期的な構造に起因する発色がが消失して成る
ことを特徴とする請求項8記載の電子機器。
【請求項10】
前記形状変化した面に表示部が施されて成る
ことを特徴とする請求項8記載の電子機器。
【請求項11】
前記真贋判定パターンが凹凸形状の周期的な構造に起因する発色を有して成る
ことを特徴とする請求項7記載の電子機器。
【請求項12】
前記形状記憶樹脂が脂肪族ポリエステルを含む樹脂、又は植物原料樹脂から成る
ことを特徴とする請求項7記載の電子機器。
【請求項13】
ナノインプリント法により凹凸形状による真贋判定パターンを一次賦形として転写し、該真贋判定パターンを二次賦形させた形状記憶樹脂を表面に有する成形体に対し、
前記形状記憶樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱して一次賦形された真贋判定パターンを復元させる
ことを特徴とする真贋判定方法。
【請求項14】
前記真贋判定パターンを、前記凹凸形状の周期的な構造に起因する発色で確認する
ことを特徴とする請求項13記載の真贋判定方法。
【請求項15】
前記真贋判定パターンを、前記凹凸形状の周期的な構造に起因する文字、記号あるいは文様で確認する
ことを特徴とする請求項13記載の真贋判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−98460(P2009−98460A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270650(P2007−270650)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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