説明

成形体及び該成形体からなる衝撃吸収体

【課題】 軽量かつ成形性、安全性に優れた成形体、およびこれを用いた衝撃吸収体を提供すること。
【解決手段】 軟質樹脂からなる基材樹脂中に発泡樹脂粒子を含有してなる成形体を用いれば、衝撃吸収体として、腰回りにおける前身頃、脇部、後身頃および臀部の適宜な部位に取り付けた衣類用などに好適に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン系樹脂に代表される軟質樹脂および発泡樹脂粒子を含んでなる成形体に関する。さらにこれを利用した、衝撃吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子化合物の発泡体としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂が、ビーズ発泡体あるいは発泡シート、発泡ボードとして、その断熱性、軽量性、緩衝性などの特性を活かし、土木建築分野、包装分野、家電分野、自動車分野などに利用されている。これらはいずれも、成形体とするのに大規模な設備を必要とする。
【0003】
また、上記の発泡体とは別に、液状樹脂組成物を硬化・発泡してなるポリウレタン発泡体も知られている。ポリウレタン発泡体は成形性に優れるが、毒性の懸念されるイソシアネートを使用するという欠点を有している。しかしながら、例えば、軟質かつ高倍率のポリウレタン発泡体は装着感もよく、スポーツを行う際に身体にかかる衝撃や傷の発生を防ぐ目的の防護具(軟質パッド)として衣類に設けることで使用されている。一方、同様の目的で硬質パッドも使用されるが、衝撃吸収性能は優れているものの、通気性が悪く、装着感が悪いなどの問題がある。
【0004】
これらに対し、成形性・安全性に優れる発泡体として、炭素−炭素2重結合を有する化合物と、平均して1分子内に少なくとも1.1個以上のSi−H基を含有する化合物と、発泡剤を含有する樹脂粒子とを必須とする発泡性樹脂組成物が検討されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、この技術においては、発泡性樹脂組成物を硬化・発泡させる際、炭素−炭素2重結合を有する化合物とSi−H基を含有する化合物との付加反応により発生する熱の利用を前提としているため、発泡剤を含有する樹脂粒子を発泡させるに十分な熱量が得られず、結果として約5〜10倍の低倍率発泡体しか得られていない。
【0005】
そこで、発泡倍率の高く、そして好ましくは毒性の懸念される原料を使用していない発泡体が望まれている。その理由は、そのような発泡体は、スポーツを行う際に身体にかかる衝撃や傷の発生を防ぐ目的や高齢者の大腿骨頚部骨折防止を目的とした衝撃吸収パッドとして利用できるためである。
【特許文献1】特開平7−196836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、軽量かつ成形性、安全性に優れた成形体、およびこれを用いた衝撃吸収体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題の解決のため鋭意研究を重ねた結果、発泡樹脂粒子を含有せしめたシリコン系樹脂に代表される軟質樹脂を用いることにより、成形性、かつ安全性に優れた成形体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第一は、軟質樹脂からなる基材樹脂中に発泡樹脂粒子を含有してなる成形体に関する。好ましい実施態様は、軟質樹脂がシリコン系重合体である前記記載の成形体に関する。より好ましくは、シリコン系重合体が、分子鎖中に少なくとも平均して1.1個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも平均して1個のアルケニル基を有する化合物(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、を含んでなる樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする前記記載の成形体、更に好ましくは、化合物(B)は、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、さらに主鎖を構成する繰返し単位が、飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体(b)であることを特徴とする前記記載の成形体、特に好ましくは、発泡樹脂粒子が、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂を発泡してなる粒子であることを特徴とする前記記載の成形体、極めて好ましくは、発泡樹脂粒子が、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1つの樹脂を発泡してなることを特徴とする前記記載の成形体、に関する。
【0009】
本発明の第二は、発泡樹脂粒子を樹脂組成物に混合した後、該樹脂組成物を硬化することを特徴とする前記記載の成形体の製造方法に関する。本発明の第三は、前記記載の成形体からなることを特徴とする衝撃吸収体に関する。本発明の第四は、前記記載の衝撃吸収体を、腰回りにおける前身頃、脇部、後身頃および臀部の少なくとも1に対応する部位に取り付けてなる衣類に関する。
【発明の効果】
【0010】
軽量かつ成形性、安全性に優れた成形体、及びこれを用いた衝撃吸収体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の成形体は、基材となる軟質樹脂中に、発泡樹脂粒子が分散した状態で含有してなり成形体をなすものである。基材となる軟質樹脂としては、シリコン系重合体、熱硬化性ポリウレタン、メラミン樹脂などの熱硬化性軟質樹脂、軟質塩化ビニル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン,ポリオレフィンなどの熱可塑性軟質樹脂、ゴム等が挙げられ、なかでも安全性の点からシリコン系重合体が好ましい。その他に、本発明の効果をなくさない程度に、充填材、貯蔵安定剤、可塑剤、増粘剤などを必要に応じて基材樹脂中に添加してもよい。
【0012】
本発明に用いうるシリコン系重合体は、分子骨格中にシロキサン単位を有した樹脂であれば、特に制限されるものではないが、例えば、ヒドロシリル基を有する化合物、アルケニル基を有する化合物、ヒドロシリル化触媒を含んでなる樹脂組成物を硬化してなる樹脂を用いることが、成形性や機械物性、および衝撃吸収体としての諸物性のバランスに優れることから好ましい。より好ましくは、ヒドロシリル基を有する化合物として「分子鎖中に平均して少なくとも1.1個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)」、前記アルケニル基を有する化合物として「分子鎖中に少なくとも平均して1個のアルケニル基を有する化合物(B)」および「ヒドロシリル化触媒(C)」を主成分とすることが好ましい。
【0013】
前記「分子鎖中に平均して少なくとも1.1個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)」(以下、単に、硬化剤(A)と称す場合がある)は、前記「分子鎖中に少なくとも平均して1個のアルケニル基を有する化合物(B)」(以下、単に、化合物(B)と称す場合がある)の硬化剤として作用する。硬化剤(A)は、分子鎖中には平均して少なくとも1.1個のヒドロシリル基を有することが好ましいが、より好ましくは2〜50個、さらに好ましくは2〜20個、特に好ましくは2〜15個、最も好ましくは3〜12個のヒドロシリル基を有し、そのため、それぞれのヒドロシリル基が化合物(B)に存在するアルケニル基と反応して硬化する。分子鎖中のヒドロシリル基の数が1.1個より少ないと、本発明の液状樹脂組成物をヒドロシリル化反応により硬化させる場合の硬化速度が遅くなり、硬化不良を起こす場合がある。また、分子鎖中のヒドロシリル基の個数が50個より多くなると、硬化剤(A)の安定性、即ち樹脂組成物の安定性が悪くなり、その上、硬化後も多量のヒドロシリル基が硬化した樹脂組成物中に残存しやすくなり、クラックの原因となる場合がある。
【0014】
なお、本発明において、ヒドロシリル基を1個有するとは、SiH結合を1個有することを言い、SiHの場合にはヒドロシリル基を2個有することになるが、1つのSiに結合するHの数は、1つである方が硬化性は良くなり、また、柔軟性の点からも好ましい。本発明において「分子鎖中に平均して1個のヒドロシリル基」とは、1gあたりのヒドロキシル基量にその物質の数平均分子量を乗じたものである。本発明においては、ヒドロシリル基以外の官能基についても特に断りのない限り同様に、分子鎖中の官能基数を計算したものを示す。
【0015】
硬化剤(A)の分子量は、成形性などの点から、数平均分子量(Mn)で30000以下であることが好ましく、20000以下、15000以下であることがより好ましい。化合物(B)との反応性や相溶性まで考慮すると、300〜10000が特に好ましい。
【0016】
前記のごとき硬化剤(A)の構造について特に制限はないが、例えば、炭化水素系硬化剤やポリシロキサン系硬化剤が例示できる。
【0017】
炭化水素系硬化剤とは、一般式(1):
(1)
(式中、Xは少なくとも1個のヒドロシリル基を含む基、Rは炭素数2〜150の1〜4価の炭化水素基、aは1〜4から選ばれる整数、ただし、Xに1個のヒドロシリル基しか含まれない場合、aは2〜4から選ばれる整数)
で示される。Xの具体例としては、例えば―SiH(CH3−n、―SiH(C3−n、―SiH(C3−n(以上のn=1〜3)、―SiH(C13)などのケイ素原子を1個だけ含有するヒドロシリル基、
【0018】
【化1】

例えば、化1で示されるケイ素原子を2個以上含むヒドロシリル基、
【0019】
【化2】

【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

化2〜化4などで示される鎖状、枝分かれ状、環状の各種の多価ハイドロジェンシロキサンより誘導されたヒドロシリル基などが挙げられる。なお、式中、m個の単位とp個の単位、n個の単位とq個の単位、m個の単位とp個の単位とx個の単位、n個の単位とq個の単にとy個の単位、m個の単位とn個の単位、さらにはm個の単位とn個の単位とp個の単位とq個の単位がブロック結合で結合しているように記載されているが、これらはブロック結合でもランダム結合でもよい。以下の記載においても同様である。
【0022】
前述の各種のヒドロシリル基のうち、硬化剤(A)が他の有機重合体との相溶性を損なう可能性が少ないという点から、一般式(1)のXの部分の分子量が500以下であるのが好ましく、さらにヒドロシリル基の反応性も考慮すれば、以下の化5で示されるヒドロシリル基が好ましい。
【0023】
【化5】

一般式(1)中、Rは炭素数2〜150で1〜4価の炭化水素基を表し、重合体からなる基であってもよい。重合体でない具体例としては、化6、化7に示すもの(これらは特開平3−95266号公報などに記載されている)などが挙げられる。
【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

また、重合体からなるRの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素数2〜6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させたもので、結合手を1〜4個有するもの、ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合させたり、前記オレフィン系化合物とジエン系化合物とを共重合させた後、水素添加したもので、結合手を1〜4個有するものなどが挙げられる。
【0026】
前記のごとき一般式(1)で表される炭化水素系硬化剤の中でも、Rが炭素数5〜20の炭化水素基で、Xが化5で示される基の場合の組み合わせが、化合物(B)との相溶性が良好である点、および、硬化剤(A)、化合物(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、を含んでなる樹脂組成物を硬化させる際の反応性を上げ、良好な網目構造を形成することができる点から好ましい。また、これらのなかでもRの炭素数が5〜12の炭化水素基であることが、原料が容易に入手できる点からより好ましく、Xが化5で示される基の中でも環状ポリシロキサン化合物であることが、化合物(B)との相溶性が特に良くなる点からより好ましい。この組み合わせによって得られる化合物が、炭化水素系硬化剤としては好ましい。その具体例としては、例えば、化8に示す化合物が挙げられる。
【0027】
【化8】

炭化水素系硬化剤の製法については特に制限はなく、任意の方法で製造すればよい。例えば、(i)分子中にSiCl基を持つ炭化水素系化合物をLiAlH、NaBHなどの還元剤で処理して該化合物中のSiCl基をSiH基に還元する方法、(ii)分子内にある官能基Xを持つ炭化水素系化合物と分子内に前記官能基Xと反応する官能基Yおよびヒドロシリル基の両者を有する化合物とを反応させる方法、(iii)アルケニル基を含有する炭化水素系化合物に対して少なくとも2個のヒドロシリル基を持つポリヒドロシラン化合物を選択ヒドロシリル化することにより、反応後もヒドロシリル基を炭化水素系化合物の分子中に残存させる方法、などが例示される。前記方法のうち、(iii)の方法が、製造工程が簡便なため好適に用いることができる。この場合、一部のポリヒドロシラン化合物に含まれるヒドロシリル基の2個以上が、炭化水素系化合物中のアルケニル基と反応して分子量が増大することがあるが、このように、分子量が増大したものを含むものを硬化剤(A)として用いても何ら差し支えない。
【0028】
硬化剤(A)として、ポリシロキサン系硬化剤も使用することができる。具体例としては、ポリオキシアルキレン変性体、スチレン類変性体、オレフィン変性体などを含む化9〜化11に示すような、鎖状、環状のポリオルガノハイドロジェンシロキサンが挙げられる。
【0029】
【化9】

(m、nは整数、2≦m+n≦50、2≦m、0≦n、Rはメチル基、分子量が100〜10000のポリオキシアルキレン基または炭素数2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有していてもよい。Rが複数個含まれる場合、これらは同じでなくともよい。)
【0030】
【化10】

(m、nは整数、2≦m+n≦50、0≦m、0≦n、Rはメチル基、分子量が100〜10000のポリオキシアルキレン基または炭素数2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有していてもよい。Rが複数個含まれる場合、これらは同じでなくともよい。)
【0031】
【化11】

(m、nは整数、3≦m+n≦20、2≦m≦19、0≦n≦18、Rはメチル基、分子量が100〜10000のポリオキシアルキレン基または炭素数2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有していてもよい。Rが複数個含まれる場合、これらは同じでなくともよい。)
【0032】
化合物(B)との相溶性をより良くするためには、前記Rがフェニル基を含有しているものが好ましい。さらに入手のしやすさからRは、―CH―CH―C、―CH―CH(CH)―C、また、貯蔵安定性の点から―CH―CH(CH)―Cであることが好ましい。
【0033】
本発明における化合物(B)は、分子鎖中に平均して少なくとも1個のアルケニル基を有する化合物であれば、特に限定するものでは無く、例えば、分子量が100〜100000の化合物があげられる。具体的には、スチレン、MMA、1−デカン、1,9−デカジエンなどのモノマー、末端あるいは側鎖にアルケニル基を有するポリエーテル、ポリエステル、ポリオレフィンなどが挙げられる。化合物(B)は、硬化剤(A)とヒドロシリル化反応して硬化する成分であり、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有するため、ヒドロシリル化反応が起こって高分子状となり、硬化する。化合物(B)に含まれるアルケニル基の数は、硬化剤(A)とヒドロシリル化反応するという点から少なくとも平均して1個必要であるが、硬化性、柔軟性の点からは分子鎖の両末端にアルケニル基が存在するのが好ましい。特に、化合物(B)は、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、さらに主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体(b)であることが好ましい。
【0034】
重合体(b)の分子量としては、主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系単位からなる場合は、取り扱いやすさなどの点から数平均分子量で500〜50000程度が好ましく、さらには1000〜30000程度の液状物〜流動性を有するものであるのが好ましい。なお、本明細書にいう、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位からなるとは、芳香環以外の炭素―炭素不飽和結合を実質的に含有していない状態を意味する概念である。したがって、前記のように重合体(b)の主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系単位からなる場合の主鎖は、
(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素数2〜6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させる、
(2)ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合させたり、前記オレフィン系化合物とジエン系化合物とを共重合させた後、水素添加する、
などの方法により得ることができる。
【0035】
繰返し単位が飽和炭化水素系単位である主鎖としては、末端に官能基を導入しやすい、分子量を制御しやすい、末端官能基の数を多くすることができるなどの点から、イソブチレン系重合体、水添ポリブタジエン系重合体、水添ポリイソプレン系重合体のいずれかであるのことが好ましい。
【0036】
前記イソブチレン系重合体は、単量体単位の全てがイソブチレン単位から形成されていても良く、イソブチレンと共重合性を有する単量体単位をイソブチレン系重合体の好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下の範囲で含有してもよい。イソブチレンと共重合性を有する単量体成分としては、例えば、炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アクリルシラン類などが挙げられる。このような共重合成分の具体例としては、例えば、1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、β−ピネン、インデン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。前記イソブチレンと共重合性を有する単量体成分の中でもビニルメチルメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、アリルジメチルメトキシシラン、ジアリルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなど、アルコキシシリル基を含む化合物以外の化合物は、共重合が容易であり、好ましい。
【0037】
前記水添ポリブタジエン系重合体や水添ポリイソプレン系重合体などにおいても、主成分となる単量体単位の他に、前記イソブチレン系重合体の場合と同様の単量体単位を含有させてもよい。
【0038】
また、重合体(b)として用いる、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系単位である重合体には、本発明の目的が達成される範囲でブタジエン、イソプレンのようなポリエン化合物のごとき重合後二重結合の残るような単量体単位を少量、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下の範囲で含有させてもよい。
【0039】
アルケニル基を飽和炭化水素単位からなる主鎖に導入して重合体(b)とする方法については、種々提案されている方法を用いることができるが、主鎖を重合した後にアルケニル基を導入する方法と重合中にアルケニル基を導入する方法とに大別することができる。
【0040】
重合後にアルケニル基を導入する方法としては、例えば、末端、主鎖または側鎖の水酸基を―ONaや―OKなどの基にした後、一般式(2):
CH=CH―R―Y (2)
(式中、Yは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、Rは―R―、―R―OCO―または―R―CO―(Rは炭素数1〜20の2価の炭化水素基で、好ましい具体例としてはアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基が挙げられる)で示される2価の有機基で、化12(Rは炭素数1〜10の炭化水素基)より選ばれた2価の基が特に好ましい)
【0041】
【化12】

で示される有機ハロゲン化合物を反応させることにより、末端、主鎖または側鎖にアルケニル基を有する主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位からなる重合体が製造できる。前記重合体の好ましい具体例としては、両末端にアルケニル基を2個有する直鎖状の数平均分子量(Mn)が2000〜20000で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが1.1〜1.2程度のポリイソブチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン系重合体などが挙げられる。
【0042】
重合体(b)の主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位である場合、主鎖を形成する出発物質として活性水素基を2個以上有する化合物、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノール化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールなどを用い、C〜Cのアルキレンオキシドを重合させることにより製造される。主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位である重合体(b)の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドの群より選ばれる2種以上からなるランダムまたはブロック共重合体などが挙げられ、それら共重合体の末端には、飽和炭化水素系単位からなる主鎖にアルケニル基を導入した場合と同様に、アルケニル基を導入する方が好ましい。
【0043】
前記主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位である重合体の好ましい具体例としては、硬化物の柔軟性向上の点から、主鎖の繰返し単位がオキシプロピレン単位のものが好ましい。主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位である重合体の分子量としては、反応性および低硬度化のバランスの点から、数平均分子量(Mn)で500〜50000が好ましく、さらには1000〜30000が好ましい。
【0044】
本発明のヒドロシリル化触媒(C)としては、ヒドロシリル化触媒として働くものである限り、特に制限はなく、任意のものを使用し得る。ヒドロシリル化触媒(C)の具体例としては、白金の担体;アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体;例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHClなどの白金−オレフィン錯体;例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO)などの白金−ビニルシロキサン錯体;例えば、Pt(PPh、Pt(PBuなどの白金−ホスフィン錯体;例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu)などの白金−ホスファイト錯体;ジカルボニルジクロロ白金などが挙げられる。なお、以上の式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、m,nは1以上の整数を表している。
【0045】
また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3,159,601号明細書および同第3,159,662号明細書に記載された白金−炭化水素複合体、ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3,220,972号明細書に記載された白金アルコラート触媒、モディック(Modic)の米国特許第3,516,946号明細書に記載された塩化白金酸−オレフィン複合体なども本発明に有用に使用し得る。さらに、白金化合物以外の触媒も使用することができ、その具体例としては、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al2O、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiClなど(Phはフェニル基を表す)が挙げられる。上記で挙げられたヒドロシリル化触媒群より選ばれる少なくとも1種を、ヒドロシリル化触媒(C)として用いルことが好ましい。それらの中でも、触媒活性および安全性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体から選ばれる1以上を使用することがより好ましい。
【0046】
硬化剤(A)および化合物(B)の含有割合は、化合物(B)中のアルケニル基1モル当り硬化剤(A)中のヒドロシリル基が0.1〜50モルが好ましく、0.2〜30モルがより好ましい。
【0047】
ヒドロシリル化触媒(C)の含有量としては、化合物(B)のアルケニル基1モルに対して10−8〜10−1モルが好ましく、10−6〜10−3モルがより好ましい。前記含有量が10−8モルより少ないと十分に硬化が進行しない場合がある。また10−1モルよりも多いと、樹脂組成物の硬化の制御が困難である場合や、得られた成形体が着色する場合がある。
【0048】
本発明における発泡樹脂粒子としては特に限定するものではないが、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂を発泡してなる粒子であることが好ましい。発泡樹脂粒子に使用しうる熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。発泡樹脂粒子に使用しうる熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン系樹脂等が挙げられ、これらのものを少なくとも1種を用いることができる。中でも、高倍率で軽量化が可能である点、シリコン系樹脂に代表される軟質樹脂との混合性、流動性、成形性等の観点から、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンから選ばれる少なくとも1つの樹脂を発泡してなる発泡樹脂粒子が好ましく用いられる。
【0049】
ポリスチレンとしては、特に限定されるものではなく、スチレン単量体のみから得られるスチレンホモポリマー、スチレン単量体とスチレンと共重合可能な単量体あるいはその誘導体から得られるランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、後臭素化ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレンなどの変性ポリスチレン、ABS樹脂などが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0050】
スチレンと共重合可能な単量体としては、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのスチレン誘導体、ジビニルベンゼンなどの多官能性ビニル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系化合物、ブダジエンなどのジエン系化合物あるいはその誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物などが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0051】
ポリプロピレンとしては、特に限定されるものではなく、プロピレン単量体のみから得られるプロピレンホモポリマー、プロピレン単量体とプロピレンと共重合可能な単量体、あるいは、その誘導体から得られるランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体などが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0052】
プロピレンと共重合可能な単量体の具体例としては、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテンなどの炭素数2〜8のα−オレフィン単量体やノルボルネン系モノマーなどの環状オレフィンなどのオレフィン類、酢酸ビニルなどのビニルアルコールエステル、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜6の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ビニルアルコール、メタクリル酸、塩化ビニルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
ポリプロピレンの具体例としては、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム3元共重合体、ポリエチレン−ポリプロピレンブロック共重合体、ホモポリプロピレンなどが挙げられる。
【0054】
ポリエチレンとしては、特に限定されるものではなく、エチレン単量体のみから得られるエチレンホモポリマー、エチレン単量体とエチレンと共重合可能な単量体あるいはその誘導体から得られるランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体などが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0055】
エチレンと共重合可能な単量体の具体例としては、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテンなどの炭素数2〜8のα−オレフィン単量体やノルボルネン系モノマーなどの環状オレフィンなどのオレフィン類、酢酸ビニルなどのビニルアルコールエステル、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜6の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ビニルアルコール、メタクリル酸、塩化ビニルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
ポリエチレンの具体例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体などが挙げられる。
【0057】
発泡樹脂粒子に使用する熱可塑性樹脂は、無架橋の状態で用いてもよく、パーオキサイドや放射線などにより架橋させて用いてもよい。
【0058】
本発明における発泡樹脂粒子の発泡倍率は、本発明の効果を損なわない範囲に設定できるが、好ましくは1.1倍〜200倍、より好ましくは1.5倍〜150倍、さらに好ましくは2倍〜100倍である。また、発泡樹脂粒子の粒径は、0.01〜100mmであることが好ましく、より好ましくは、0.05〜50mmである。
【0059】
また、軟質樹脂として、硬化剤(A)、化合物(B)、ヒドロシリル化触媒(C)を含んでなる樹脂組成物を使用する場合のこれらの相溶性を向上する目的で、界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤の種類としては特に限定されるものではないが、具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化アルコキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム液、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0060】
本発明の軟質樹脂からなる基材樹脂中に発泡樹脂粒子を含有してなる成形体には、必要に応じて、貯蔵安定性を改良するために貯蔵安定性改良剤を含有させてもよい。貯蔵安定性改良剤としては、硬化剤(A)の貯蔵安定剤として知られている通常の安定剤を使用することができる。このような貯蔵安定性改良剤の好ましい例としては、ベンゾチアゾール、チアゾール等の有機硫黄化合物、ジメチルマレート、ジメチルアセチレンジカルボキシレート、2,3−ジクロロプロペン、アセチレンアルコール類等の脂肪族不飽和結合を含有する化合物、2−ペンテンニトリル、キノリン等のチッ素含有化合物、有機リン化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などが挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができるが、これらに限定されるわけではない。これらの中では、ポットライフおよび速硬化性の両立という点から、チアゾール、ベンゾチアゾール、ジメチルマレート、アセチレンアルコール類が特に好ましい。
【0061】
前記貯蔵安定性改良剤の使用量は、硬化剤(A)および化合物(B)に均一に分散するかぎりほぼ任意に選ぶことができるが、硬化剤(A)のSiH基含有化合物中SiH基1モルに対し、10−6〜10−1モルの範囲で用いるのが好ましい。前記使用量が10−6モル未満では硬化剤(A)の貯蔵安定性が充分に改良されない場合があり、また10−1モルを超えると硬化性が不充分になることがある。
【0062】
本発明の軟質樹脂からなる基材樹脂中に発泡樹脂粒子を含有してなる成形体には、必要に応じて、さらに、充填剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、酸あるいは塩基性化合物(ヒドロシリル基とヒドロキシル基との反応調整のための添加剤であり、酸で縮合反応を抑制し、塩基で加速)、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤などを、本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0063】
本発明の衝撃吸収体は、その素材として、軟質樹脂からなる基材樹脂中に発泡樹脂粒子を含有してなる成形体を用いることが特徴である。
【0064】
<成形体を用いた衝撃吸収体の製造>
上軟質樹脂からなる基材樹脂中に発泡樹脂粒子を含有してなる成形体を用いて、以下のようにして衝撃吸収体を得る。
【0065】
<成形体の製造>
例えば、軟質樹脂として、分子鎖中に少なくとも平均して1.1個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも平均して1個のアルケニル基を有する化合物(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、を含んでなる樹脂組成物を硬化してなる樹脂を使用する場合、硬化剤(A)、化合物(B)、ヒドロシリル化触媒(C)からなる樹脂組成物に、さらに公知の技術により別途得られた発泡樹脂粒子を含有せしめて硬化させる方法が、成形性の観点から好ましい。上記硬化の方法は、配合条件によって異なるが、例えば、型枠注入後加熱養生する方法が挙げられる。
【0066】
<衝撃吸収体の製造>
上記で得られた成形体は、そのまま、あるいは成形時に形成される表皮層を切除したり、適当な形状に切り出したものを衝撃吸収体として使用することができる。ただし、通気性を効果的に発現させることが必要な用途に関しては、表皮層を切除するか、もしくは表皮層に開孔部を設けるか、貫通孔をあけることが好ましい。成形時の成形体の形態としては、特に限定するものではないが、たとえば板状、シート状、不定形塊状、ビーズ状、あるいは袋状や衣服の形態に成形したものなどが挙げられる。また、成形体は単独で用いても良く、未発泡体であるプラスチック、発泡体、フィルム、布、不織布、紙等の素材と一体成形して用いても良い。
【0067】
さらには、上記で得られた成形体の表面に綿、アクリル繊維、毛、ポリエステル繊維等でできた布や不織布を、適宜、接着剤を使って貼り合わせてから衝撃吸収体に用いても良い。この様に貼り合わせることで、成形体の感触を良好にし、さらに、運動時や高温・多湿時の発汗時にこの張り合わされた生地によって吸汗作用を施すことができる。本発明の衝撃吸収体は、パッドなどに使用される。
【0068】
本発明の衝撃吸収体の形状としては、特に限定されるものではないが、長方形、正方形、円形、楕円形、ひし形などの多角形や、短冊状やドーナツ型の内部がくりぬいてあるもの、表面に任意の凹凸を付けたもの等が挙げられる。また、通気性を持たせるために、適宜貫通孔をあけても良い。衝撃吸収体の大きさは特に限定されるものではないが、1cm〜1000cmが好ましく、50cm〜500cmがより好ましい。
【0069】
本発明の衝撃吸収体をパッドとして用いる場合は、衣類へ取り付けることで好適に用いられる。該衝撃吸収体を取り付ける衣類は特に限定されるものではなく、例えば、いが、下半身の一部または全部を覆う衣類が好ましく、例えば、スラックス、ジーンズ、トレーニングパンツ、サブリナパンツ、ニッカポッカ、ハーフパンツ、半ズボン、ホットパンツなどのスボン類、スカート類、袴類などの、下半身に着用するアウターウェアとしてのボトムス類、ショーツ、トランクス、ボクサーブリーフ、ブリーフなどのパンツ類、ガードル類、ふんどしなどの下半身用インナーウェア類、靴下類、足袋、タイツ、レッグウォーマー、脚絆などの足につける衣類、ワンピース、ドレス、合羽、つなぎ、着ぐるみ、全身タイツなどの全身を覆う衣類、エプロン、割烹着、白衣、外装用プロテクターなどの防護用衣類などが挙げられる。このうち、骨折しやすい部位での衝撃を吸収する目的から、スボン類もしくはパンツ類、特にパンツ類が好ましい。
【0070】
衣類への衝撃吸収体の取り付け方法も特に限定しないが、衝撃吸収体が着用時や洗濯時にかかるせん断力等によってずれないように、また、身体へのフィット性の向上、運動のしやすさを付与するためにキルト状に該衝撃吸収体を生地に縫い付ける方法が例示できる。このために、該衝撃吸収体を糸で縫いつけて固定してもよい。このときに、該衝撃吸収体は、身体に触れるようにしても良いし、あるいは、生地を介しても良い。また、例えば、ポケットを作り、その中で着脱自在に取り付ける方法も挙げられる。
【0071】
本発明の衝撃吸収体を衣類に取り付ける位置としては、腰回りにおける前身頃、脇部、後身頃、臀部の少なくとも1に対応する部位に取り付けることが好ましい。
【0072】
また、本来転倒等によって受ける衝撃を緩和する皮下脂肪が比較的薄く骨に対し衝撃が強くかかるところには、衝撃吸収性を重視し、厚手の成形体を用いたパッドを、また皮下組織は厚く、本来の衝撃吸収能力は多少あるが、尻もち等によっての衝撃を受けやすい臀部等には着用性を重視して1つのパンツに2種類以上のパッドを組み合わせて使用しても良い。また、着用性等の点で必要であれば衝撃の強く受ける場所には、本発明の衝撃吸収体を用い、さらに、衝撃の比較的緩和されるようなところには、他の衝撃吸収体を用いてもかまわない。他の衝撃吸収体としては、例えば、ウレタン発泡体やポリエチレン発泡体、アクリル発泡体、不織布、立体織物等が挙げられる。
【0073】
また、衣類に用いられる生地も、素材、編繊方法など、特に限定されるもではないが、例えば、通気性、衝撃吸収性を向上させるために、生地の表面に凹凸を付けたものを用いることができ、表面に凹凸の形状が現れる編み組織、パイル編み等が好ましい。特に、これらの生地を衣類の身体側に位置する場所に装着することによって上記のような効果を発揮できることが判明した。さらに、パッドを身体に密着させることで効率的に衝撃を緩和させるために、パッドの回りにストレッチ素材を用いても良い。
【実施例】
【0074】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、特にことわりがない場合、実施例および比較例の部や%は重量基準である。また実施例および比較例中の測定、評価は、次の条件・方法により行った。
【0075】
<使用化合物>
実施例・比較例においては、表1に示す化合物を用いた。
【0076】
【表1】

<衝撃吸収体の密度測定法>
得られた成形体の重量を秤量し、型枠体積で除して密度を算出した。なお、成形不良(型枠内充填不足)のものに関しては、得られた成形体の外形を測定して得られた体積から算出した。
【0077】
(実施例1)
まず、100部の重合体B−1に対して、シリカ(商品名:ニップシールSS−50A、東ソー・シリカ(株)製)を25部、さらに酸化防止剤(商品名:IRGANOX245、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を1部配合し、室温で撹拌・混合した。また、別に100部の重合体B−1に対して炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製MCコートS−20)200部および上記と同様の酸化防止剤を1部配合し、室温で撹拌・混合した。それぞれの混合物をそれぞれ混合物B−1a、混合物B−1bとした。
【0078】
重合体B−1を950部、混合物B−1aを1,000部、混合物B−1bを750部混合し、さらに、硬化剤A−1を40.33部、遅延剤マレイン酸ジメチル(ナカライテスク(株)製)および3−メチル−1−ペンチン−3−オール(日信科学工業(株)製オルフィンP)をそれぞれ0.03434部、0.35142部加え、触媒C−1を0.774部配合し、減圧下で脱泡することによりシリコン系重合体からなる基材樹脂原料を得た。
【0079】
上記シリコン系重合体からなる基材樹脂原料に、発泡ポリプロピレン樹脂粒子(発泡倍率50倍)900部を混合し、室温で攪拌することにより発泡樹脂粒子含有液状樹脂組成物を得た。この液状樹脂組成物を、厚さ18mm、長辺132mm、短辺112mmの長方形をした型枠に注入し、120℃の温度に設定したオーブンにて30分程度加熱硬化させることにより、シリコン系重合体からなる基材樹脂中に発泡樹脂粒子を含有してなる成形体を得た。得られた成形体の密度は90kg/mであった。
【0080】
(実施例2)
100部の重合体B−2に対して、触媒C−2を0.08部加えて十分に混合し、さらに、発泡ポリプロピレン樹脂粒子(発泡倍率50倍)20部、硬化剤A−2を13部添加してすばやく混合した。この混合物を厚さ20mm、長軸165mm、短軸115mmの楕円形型枠に注入し、40℃に設定したオーブンで60分加熱硬化し、シリコン系重合体からなる基材樹脂中に発泡樹脂粒子を含有してなる成形体を得た。得られた成形体の密度は150kg/mであった。
【0081】
(比較例1)
100部の重合体B−2に対して、触媒C−2を0.08部加えて十分に混合し、さらに、ブタン5wt%含有発泡性ポリスチレン樹脂粒子20部、硬化剤A−2を13部添加してすばやく混合した。この混合物を厚さ20mm、長軸165mm、短軸115mmの楕円形型枠に注入し、40℃に設定したオーブンで60分加熱硬化した。得られた樹脂は型枠内いっぱいに拡大せず、密度は920kg/mであった。
【0082】
上記のように、比較例において成形不良であったのに対し、実施例においては、成形性が良好かつ、軽量である成形体が得られた。すなわち、本特許によって、安全性に優れるシリコン系重合体からなる基材樹脂中に、発泡樹脂粒子を含有してなる、軽量かつ成形性に優れた成形体を提供できることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質樹脂からなる基材樹脂中に発泡樹脂粒子を含有してなる成形体。
【請求項2】
軟質樹脂がシリコン系重合体である請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
シリコン系重合体が、
分子鎖中に少なくとも平均して1.1個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、
分子鎖中に少なくとも平均して1個のアルケニル基を有する化合物(B)、
ヒドロシリル化触媒(C)、
を含んでなる樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする請求項2に記載の成形体。
【請求項4】
化合物(B)は、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、さらに主鎖を構成する繰返し単位が、飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体(b)であることを特徴とする請求項3に記載の成形体。
【請求項5】
発泡樹脂粒子が、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂を発泡してなる粒子であることを特徴とする請求項1〜4何れか一項に記載の成形体。
【請求項6】
発泡樹脂粒子が、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンから選ばれる少なくとも1つの樹脂を発泡してなることを特徴とする請求項1〜5何れか一項に記載の成形体。
【請求項7】
発泡樹脂粒子を樹脂組成物に混合した後、該樹脂組成物を硬化することを特徴とする請求項3〜6何れか一項に記載の成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6何れか一項に記載の成形体からなることを特徴とする衝撃吸収体。
【請求項9】
請求項8に記載の衝撃吸収体を、腰回りにおける前身頃、脇部、後身頃、臀部の少なくとも1に対応する部位に取り付けてなる衣類。

【公開番号】特開2009−24155(P2009−24155A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60974(P2008−60974)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】