説明

成形品の製造方法およびこれに用いる装置

【課題】異物を精度よく判定する。
【解決手段】熱可塑性樹脂材料を貫通したブローピンから気体を注入して該樹脂材料を膨らませることで中空の樹脂部材16を成形するブロー成形工程および中空の樹脂部材16に孔をあける穿孔工程を経て得られるリアスポイラ10の製造過程では、ブロー成形工程または穿孔工程で生じた異物の有無を判定する検査工程が行われる。検査工程では、樹脂部材16を揺動することで、該樹脂部材16の内部で転がるブロー成形工程または穿孔工程で生じた異物の振動を振動測定手段44によって測定し、振動測定手段44で測定した測定振動データと予め設定された基準振動データとの照合により異物の有無の判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内部が空洞である成形品の製造方法およびこれに用いる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の車体に取り付けられるリアスポイラは、重量の軽減や意匠上の要請から内部が空洞になるように形成された合成樹脂の成形品が多く用いられている。リアスポイラは、ブロー成形工程において、ブロー成形型に挟んだ筒状のパリソンにブローピンを差し込み、ブローピンを介してパリソンの内部にガスを吹き込むことでパリソンを膨らませて製造される(例えば、特許文献1参照)。また、リアスポイラの製造過程では、ブロー成形工程後に、直径5mm程度の水抜き孔や車体に取り付けるための取付具を取着する取付孔等の開口がレーザーやドリル等によって形成される穿孔工程も行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−150757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブロー成形工程では、パリソンの外側からブローピンが刺されるので、ブローピンに破られたパリソンの一部がパリソンの内部空間に押し込まれる。同様に、穿孔工程では、孔を開設することで開口部分を構成していたリアスポイラの壁部が内部空間に押し込まれることがある。すなわち、リアスポイラの内部空間には、ブローピンの差し込みや開口の形成に由来する異物が残留することがあり、車両の走行時にリアスポイラの内部空間を転がる異物によって異音が発生する不都合がある。
【0005】
そこで、作業者がリアスポイラを持ち上げて揺らし、異音を聞き取ることで聴覚によって異物の有無を検査することがなされている。しかしながら、前記検査方法は、作業者の聴覚に頼っているので、個人差があり、製造現場の雑然とした雰囲気の中では聞き漏らしも多く発生し、検査の正確性に欠ける問題が指摘される。また、リアスポイラは、ある程度の重量があり、かつ大型の部材であるので、作業者の負担を強いることになり、製造効率を低下する要因の1つとなっている。
【0006】
すなわち本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、内部に残留した異物の有無を正確に判定できる成形品の製造方法およびこれに用いる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の成形品の製造方法は、
熱可塑性樹脂材料を貫通したブローピンから気体を注入して該樹脂材料を膨らませることで中空の樹脂部材を成形するブロー成形工程および中空の樹脂部材に孔をあける穿孔工程の少なくとも一方を行う形成工程を経る成形品の製造方法において、
前記形成工程を経て得られた樹脂部材を揺動することで、該樹脂部材の内部で転がる前記ブロー成形工程または前記穿孔工程で生じた異物の振動を振動測定手段によって測定し、前記振動測定手段で測定した測定振動データと予め設定された基準振動データとの照合により異物の有無の判定を行う検査工程を備えることを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、作業者の聴覚に頼ることなく樹脂部材の内部に残留した異物の有無を精度よく判定できる。また、検査工程における作業者の負担を軽減できる。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記ブロー成形工程または前記穿孔工程で生じることが想定される異物に応じた指標物を前記樹脂部材の内部に入れ、該樹脂部材を前記検査工程と同様に揺動することで指標物を転がして、前記振動測定手段によって指標物毎の基準振動データを得る設定工程を少なくとも初回に行うことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、残留が想定される異物に応じた基準振動データが設定されているので、雑音等の異物によらない振動の影響を受け難く、異物の有無をより正確に判定できる。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記基準振動データおよび前記測定振動データは、振動周波数および振動加速度を含むデータからなり、
所定範囲の振動周波数帯で区分した照合領域において、前記基準振動データと前記測定振動データとを照合することを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、基準振動データと測定振動データとを照合する照合領域を狭く設定することで、雑音等の異物によらない振動の影響をより受け難くすることができる。
【0010】
請求項4に係る発明では、前記振動測定手段は、圧電式加速度ピックアップが用いられることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、圧電式加速度ピックアップを用いることで、振動を精度よく測定することができる。
【0011】
請求項5に係る発明では、前記検査工程で異物の有りが判定されると、前記樹脂部材に開設された孔から接着剤を内部に注入した後に該樹脂部材を揺動することで、樹脂部材に対して異物を接着剤で固定することを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、接着剤で異物を固定することで、異物による異音の発生を防止できる。
【0012】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項6に係る発明の検査装置は、
熱可塑性樹脂材料を貫通したブローピンから気体を注入して該樹脂材料を膨らませることで中空の樹脂部材を成形するブロー成形工程および中空の樹脂部材に孔をあける穿孔工程の少なくとも一方を行う形成工程の後に実施される検査工程で用いられる検査装置において、
前記形成工程を経て得られた前記樹脂部材を係脱可能に保持する保持手段を有し、該保持手段で保持した樹脂部材を揺動する揺動手段と、
前記保持手段で保持された樹脂部材の振動を測定する振動測定手段と、
前記振動測定手段から入力される測定振動データと予め設定された基準振動データとを照合し、前記樹脂部材の内部における異物の有無を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする。
請求項6に係る発明によれば、作業者の聴覚に頼ることなく樹脂部材の内部に残留した異物の有無を精度よく判定できる。また、検査工程における作業者の負担を軽減できる。
【0013】
請求項7に係る発明では、前記判定手段には、前記ブロー成形工程または前記穿孔工程で生じることが想定される異物に応じた指標物を前記樹脂部材の内部に入れて該樹脂部材を前記揺動手段で揺動することで、前記振動測定手段で得られる指標物毎の基準振動データが設定されることを要旨とする。
請求項7に係る発明によれば、残留が想定される異物に応じた基準振動データが設定されているので、雑音等の異物によらない振動の影響を受け難く、異物の有無をより正確に判定できる。
【0014】
請求項8に係る発明では、前記振動測定手段は、圧電式加速度ピックアップが用いられ、
前記判定手段には、振動周波数および振動加速度を含むデータからなる基準振動データが設定されると共に、振動周波数および振動加速度を含むデータからなる測定振動データが入力され、
前記判定手段は、所定範囲の振動周波数帯で区分した照合領域において、基準振動データと測定振動データとを照合するよう構成されることを要旨とする。
請求項8に係る発明によれば、圧電式加速度ピックアップを用いることで、振動を精度よく測定することができる。また、基準振動データと測定振動データとを照合する照合領域を狭く設定することで、雑音等の異物によらない振動の影響をより受け難くすることができる。
【0015】
請求項9に係る発明では、前記振動測定手段は、前記揺動手段により揺動する樹脂部材と同期して揺動するように構成されることを要旨とする。
請求項9に係る発明によれば、振動測定手段が樹脂部材と相対的な位置関係が変わらないので、振動測定手段と樹脂部材との擦過による振動の発生を防止できる。
【0016】
請求項10に係る発明では、前記判定手段の異物有り判定に基づいて前記保持手段で保持された樹脂部材に開設された孔から該樹脂部材の内部へ接着剤を注入する注入手段を備え、
前記揺動手段は、前記注入手段による接着剤の注入後に樹脂部材を揺動するよう構成されることを要旨とする。
請求項10に係る発明によれば、接着剤で異物を固定することで、異物による異音の発生を防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る成形品の製造方法およびこれに用いる装置によれば、検査工程で異物の有無を精度よく判定することができると共に、作業者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適な実施例に係る製造方法に用いられる検査装置を示す正面図である。
【図2】実施例の検査装置を示す平面図である。
【図3】図2のX−X線断面図である。
【図4】図2のY−Y線断面図である。
【図5】図2のZ−Z線断面図である。
【図6】実施例の検査装置の制御ブロック図である。
【図7】振動データの振動周波数−振動加速度曲線を模式的に示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る成形品の製造方法およびこれに用いる装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、実施例では、中空の成形品としてリアスポイラを製造する場合を例に挙げて説明する。
【実施例】
【0020】
図1〜図3に示すように、リアスポイラ10は、車体の左右幅に合わせて長手辺が形成された部材であって、車体の左右方向に長手辺を沿わせると共に、短手辺を車体の前後方向に沿わせて車体に取り付けられる。また、リアスポイラ10は、内部が空洞になるよう形成されている(図3参照)。なお、図3では、リアスポイラ10が二点鎖線で示され、図右側が車体上面になる。更に、リアスポイラ10は、車体に重ねて取り付けられる部位10aが、車体から突出する部位10bと比べて車体上下方向の幅が薄くなるように形成されている。リアスポイラ10には、左右の側部の夫々に水抜き孔12が開設されると共に、車体への取付具を装着する取付孔14が適宜部位に開設されている(図1参照)。
【0021】
実施例のリアスポイラ10は、熱可塑性樹脂からなるパリソン(熱可塑性樹脂材料)を該リアスポイラ10の外形に合わせて賦形するブロー成形工程と、このブロー成形工程で得られた中空の樹脂部材16(図1参照)に孔をあける穿孔工程と、樹脂部材16の内部に異物が残留しているか否かを検査する検査工程とを基本的に経て製造される。なお、実施例では、検査工程での検査結果に基づいて、異物が内部を転がる不良状態を解消する工程も行われる。
【0022】
前記ブロー成形工程では、熱可塑性樹脂を押出し成形機によって筒状に押し出して、筒状のパリソンを形成し、リアスポイラ10の外形に合わせて画成されたブロー成形型のキャビティにパリソンを挿入する。ブロー成形型には、ガス供給装置に繋がるブローピンがキャビティに対して進退動可能に設けられ、キャビティに収容したパリソンの内部にブローピンを差し込み、ガス供給装置からブローピンを介して空気等のガスをパリソンに吹き込むことでパリソンを膨張させる。これにより、パリソンは、ブロー成形型の型面に押し当てられて賦形され、これを硬化させることで、リアスポイラ10の外形に賦形された中空の樹脂部材16が得られる。このように、中空の樹脂部材16の成形方法としてブロー成形を採用することで、樹脂部材16を一度の成形工程で簡単に一体形成することができる。そして、穿孔工程では、樹脂部材16に対してレーザーやドリル等の加工手段で水抜き孔12や取付孔14等の孔が設けられる。
【0023】
前記検査工程では、異物によって生じる振動を指標として、異物の有無が検査装置20を用いて判定される(図1〜5参照)。なお、以下の検査装置20の説明では、使用者が検査装置20に対し樹脂部材16を着脱作業する側を前側とし、前側から検査装置20を見た場合を基準として左右方向を指称する。
【0024】
前記検査装置20は、樹脂部材16を揺動可能な揺動手段22と、この揺動手段22に保持された樹脂部材16の振動を測定する振動測定手段44と、この振動測定手段44から入力される測定振動データに基づいて異物の有無を判定する判定手段としての制御手段50(図6参照)とを備えている。実施例の検査装置20では、車体への取り付け時の車幅方向を左右方向に沿わせると共に、車体への取り付け時の前後方向を上下方向にした姿勢で樹脂部材16が揺動手段22で保持される。なお、実施例では、樹脂部材16がリアスポイラ10の車体からの突出部位が下側になる姿勢で揺動手段22にセットされる。検査装置20は、揺動手段22の駆動手段26、保持手段32の爪駆動部38、振動測定手段44のセンサ駆動部48および後述する注入手段52が、制御手段50に電気的に接続され(図6参照)、制御手段50の制御下に所定の動作を行うようになっている。
【0025】
前記揺動手段22は、台座24と、この台座24の上部に固定されたモータや流体圧シリンダ等の駆動手段26と、この駆動手段26の前側に接続された支持枠28と、この支持枠28の前側に設けられ、樹脂部材16を係脱可能に保持する保持手段32とから基本的に構成される(図1〜図3参照)。実施例では、駆動手段としてサーボモータ等の任意の周期で正逆回転駆動可能なものが用いられている。揺動手段22には、支持枠28の左右方向に離間して一対の保持手段32,32が設けられ、一対の保持手段32,32が支持枠28の揺動中心を挟んで左右対称な位置関係で配置されている。なお、検査装置20には、揺動手段22や振動測定手段44等の樹脂部材16に接する部位に、ゴム、不織布やポリウレタン等の発泡体からなる柔軟性を有する緩衝材Bが設けられ、この緩衝材Bを介して樹脂部材16を保持するようになっている。
【0026】
前記揺動手段22は、長尺な支持枠28を左右方向に長手が延在した状態で駆動手段26で支持し、支持枠28における左右方向の中央部位を支持する駆動手段26の正逆回転駆動によって、左右の側縁が上下するように支持枠28を揺動するようになっている(図1参照)。実施例の揺動手段22は、支持枠28が左右方向に水平になった基準姿勢で保持手段32に対して樹脂部材16を着脱し、基準姿勢から30°〜45°の振り幅で樹脂部材16を上下に揺動するよう構成される。支持枠28には、前方および上方へ延出する位置決め片30が左右の側縁前面に夫々立設されており、左右の位置決め片30,30の間隔が樹脂部材16の左右寸法と略同一に設定されている(図1または図2参照)。
【0027】
前記保持手段32は、前後方向に離間して配置された一対の保持爪34,36と、空気等を用いる流体圧シリンダ(実施例)やモータ等からなり、両保持爪34,36を相対移動する爪駆動部38とから構成される(図3参照)。保持手段32は、支持枠28の下部に前側に延出するように設置された台板22aに爪駆動部38が設けられ(図2参照)、この爪駆動部38に一対の保持爪34,36が支持されている。保持手段32は、一対の保持爪34,36を爪駆動部38によって互いに近接または離間するよう変位され、一対の保持爪34,36の間への樹脂部材16の出し入れを許容する一方、一対の保持爪34,36で樹脂部材16を挟持可能になっている。保持手段32は、前側の保持爪34が、後側の保持爪36と比べて低く形成されており、前側からの保持手段32への樹脂部材16の出し入れが容易になっている。また、保持手段32は、一対の保持爪34,36が下から上に向かうにつれて後側(振動測定手段44側)へ傾くように設置され、一対の保持爪34,36で樹脂部材16を後傾する姿勢で保持するよう構成されている(図3または図5参照)。
【0028】
前記揺動手段22は、樹脂部材16の下部を支持する補助支持部材40を備えている(図1,図2および図4参照)。実施例の揺動手段22には、支持枠28の左右方向に離間して一対の補助支持部材40,40が設けられ、一対の補助支持部材40,40が支持枠28の揺動中心を挟んで左右対称な位置関係で配置されている。各補助支持部材40は、上方に開放する溝42が開設された板状部材であって、前側の壁部42aが後側の壁部42bと比べて低く形成されている。補助支持部材40は、保持手段32と共通の台板22aに設けられ、溝42が一対の保持爪34,36の間の空間と左右方向に並ぶように配置されている。補助支持部材40は、前側の壁部42aと後側の壁部42bとの間が、樹脂部材16を挟持した一対の保持爪34,36の間隔より大きく設定されると共に、溝42が保持爪34,36と同様に後傾するように形成されている(図4参照)。補助支持部材40は、後側の壁部42bが後側の保持爪36より高く形成されており、後側の壁部42bに突き当てて樹脂部材16を溝42に挿入することで、一対の保持爪34,36の間に樹脂部材16を案内し、溝42に収容した樹脂部材16を該溝42の底部42cで支持するようになっている。
【0029】
前記振動測定手段44は、樹脂部材16の振動を測定するセンサ部46と、このセンサ部46を揺動手段22で保持された樹脂部材16に対して進退移動するセンサ駆動部48とを備えている(図5参照)。振動測定手段44は、少なくともセンサ部46が揺動手段22によって揺動される樹脂部材16と同期して揺動するよう構成されている。実施例では、支持枠28の前面にセンサ駆動部48が設置されて、樹脂部材16を揺動しても振動測定手段44全体が樹脂部材16との間の相対的な位置関係が変わらないようになっている(図2参照)。振動測定手段44は、センサ部46が後側の保持爪36より後側に退避可能に構成される。振動測定手段44は、保持手段32に対する樹脂部材16の出し入れに際してセンサ部46を後方へ退避する一方、保持手段32に樹脂部材16を保持した際に、センサ駆動部48によりセンサ部46を樹脂部材16に当接するようになっている。振動測定手段44は、支持枠28の左右方向中央部に設置され、センサ部46が樹脂部材16の長手方向中央で、かつ下部(保持手段32で保持した際に重力方向に位置する部位)に相対するように配置される。センサ部46は、圧電式加速度ピックアップ、渦電流方式や非接触レーザー方式その他の方式があるが、特に圧電式加速度ピックアップを用いるのが好適である。圧電式加速度ピックアップは、他の方式と比べて小型軽量で、振動加速度および振動数範囲が広く、精度および信頼性が高く取り扱いが容易である等の利点がある。
【0030】
前記判定手段としての制御手段50は、振動測定手段44のセンサ部46に電気的に接続され、揺動手段22により樹脂部材16を揺動した際に測定される振動データがセンサ部46から入力されるようになっている。制御手段50には、検査工程で対比する基準となる基準振動データが予め入力されており、検査工程においてセンサ部46から入力された測定振動データを、基準振動データと照合して異物の有無を判定するようになっている。検査装置20では、該検査工程に先立って行われる設定工程において、検査工程で検査される樹脂部材16と同型の基準となる樹脂部材(以下、基準品という。)を揺動手段22にセットして、検査工程と同一条件で揺動した際に振動測定手段44で得られる振動データが制御手段50に設定される。なお、検査装置20では、設定工程において、基準品に対するセンサ部46の取着位置や保持爪34,36の保持条件等についても検査工程と同一条件とされる。設定工程において、検査装置20では、内部に異物が混入していないことを確認した基準品に、ブロー成形工程または穿孔工程で生じることが想定される異物に応じた指標物を入れて、この基準品を揺動手段22で揺動した際に得られる振動データを基準振動データとして取得するようになっている。検査装置20は、設定工程において、指標物の1つ毎に振動データを取得し、複数の異物が想定される場合は各異物に応じた指標物の夫々の基準振動データが制御手段50に予め設定される。なお、検査装置20では、設定工程での設定作業を初回の検査工程を行う前に実施すれば足りる。
【0031】
前記検査装置20では、基準振動データが、振動周波数および振動加速度を含むデータとして分析されて、制御手段50に振動周波数と振動加速度とが関連付けて設定されている。検査装置20では、基準振動データと同様に、測定振動データが振動周波数と振動加速度とを関連付けたデータとして取得される。また、検査装置20は、基準振動データのなかで所定範囲の振動周波数帯における所定範囲の振動加速度帯(この範囲を以下照合領域という。)を選択し、この照合領域で基準振動データと測定振動データとが照合される。制御手段50は、この照合領域で基準振動データと測定振動データとが重なるか否かを照合し、基準振動データと測定振動データとが照合領域で重なる場合に異物の有りを判定するようになっている。また、制御手段50は、照合領域で測定振動データが基準振動データから外れていれば、他の領域で測定振動データが基準振動データに重なっていても、異物の無しを判定するようになっている。なお、実施例の検査装置20では、設定工程において指標物を入れない基準品だけでも振動データ(ブランクデータ)を取得し、基準振動データがブランクデータから大きく外れる特徴的な変動を示す領域が照合領域として設定される。
【0032】
図7は、振動データの振動周波数−振動加速度曲線を概略的に示すグラフ図である。図7に示す例では、ブローピンに由来する異物を想定した指標物(小)と(実線参照)、ブローピンより大きな水抜き孔12に由来する異物を想定した指標物(中)と(一点鎖線参照)、水抜き孔より大きな取付孔14に由来する異物を想定した指標物(大)と(二点鎖線参照)の夫々について振動データを取得している。異物のない樹脂部材16から得たブランクデータ(図7の点線参照)と比較すると、指標物の振動データは、該ブランクデータと異なる周波数帯にピークが現れる。また、振動データは、指標物(異物)の材質が同じであれば、ピークが現れる周波数帯がおおよそ同じになり、異物が大きくなるにつれて振動加速度が大きくなる傾向がある。そして、設定工程では、指標物の振動データのピークがある周波数帯において、全ての指標物の振動加速度をカバーする範囲を照合領域としている。また、雑音等の指標物(異物)以外の振動データは、ピークがある周波数帯が照合領域から外れたり(図7の丸付き線参照)、ピークのある振動加速度帯が照合領域(図7のハッチング領域)から外れる。
【0033】
前記検査装置20は、シアノアクリレート等の湿気硬化性樹脂や熱硬化性樹脂その他の接着剤を樹脂部材16の内部に注入する注入手段52を有している(図2参照)。接着剤は、樹脂部材16の内壁に注入塗布された後、異物と接着剤が接触して異物を固定するため、速乾性のものが好ましい。注入手段52は、例えば樹脂部材16の一側部に設けられた水抜き孔12に相対するよう配置され、樹脂部材16から退避した位置と、水抜き孔12にノズルを挿入する位置とに進退変位可能に構成される。注入手段52は、制御手段50での判定結果に応じて動作するよう構成され、制御手段50で異物有り判定をした場合のみ、退避した位置からノズルを水抜き孔12に挿入して、接着剤を樹脂部材16の内部に注入するようになっている。
【0034】
前記検査工程の開始時には、保持手段32の一対の保持爪34,36が樹脂部材16より大きく開き、振動測定手段44のセンサ部46および注入手段52が揺動手段22における樹脂部材16の保持位置から退避している。形成工程を経て得られた樹脂部材16を、左右の位置決め片30,30の間において補助支持部材40の後側の壁部42bに沿って挿入する。これにより、左右の位置決め片30,30によって樹脂部材16の左右方向の位置決めがなされると共に、後側の壁部42bで前後方向の位置が決まり、樹脂部材16を一対の保持爪34,36の間に簡単に挿入することができる。ここで、後側の壁部42bは、後傾するように形成されているので、樹脂部材16の荷重の一部を後側の壁部42bに預けて樹脂部材16を揺動手段22にセットすることができ、作業者の作業負担を軽減することができる。そして、樹脂部材16を補助支持部材40の底部42cに載置することで、上下方向の位置が決まり、この状態で一対の保持爪34,36を爪駆動部38により互いに近接移動して樹脂部材16を挟持することで、樹脂部材16が揺動手段22にセットされる。この際、樹脂部材16は、後傾した姿勢で前後上下左右の移動が規制される。センサ駆動部48によってセンサ部46を樹脂部材16に向けて移動し、樹脂部材16にセンサ部46を当接することで、振動測定準備が整う。
【0035】
前記検査装置20は、駆動手段26を駆動することで、樹脂部材16が左右方向中央部を揺動中心として揺動されると共に、振動測定手段44のセンサ部46によって、揺動時の樹脂部材16の振動が測定される。センサ部46は、樹脂部材16の中央下部に接するように配置されているので、揺動手段22の揺動下に樹脂部材16の内底面を転がる異物にセンサ部46が近くなると共に、左右方向に転がる異物がセンサ部46の前側を通る頻度が高くなる。しかも、保持手段32は、樹脂部材16をセンサ部側に向けて後傾するように保持しているので、樹脂部材16の内部空間において異物がセンサ部46側でより転がり易くなる。従って、センサ部46によって異物の振動をより確実に取得することができ、検査精度を向上することができる。
【0036】
前記センサ部46は、支持枠28に設けられているので樹脂部材16の揺動に同期して動き、センサ部46と樹脂部材16との相対的な位置関係が樹脂部材16を揺動しても変わらない。すなわち、検査工程において、センサ部46の測定場所が変わることがなく、測定条件を一定にして検査の精度を向上することができる。また、樹脂部材16の揺動時に、センサ部46が樹脂部材16に擦れることも抑えることができ、樹脂部材16とセンサ部46との擦過に起因する余分な振動の測定を回避できる。しかも、センサ部46は、支持枠28の揺動中心に配置されているので、センサ部46自体の変位を少なくすることができ、検査の精度をより向上することが可能となる。
【0037】
前記検査工程では、制御手段50の制御下に予め設定された条件(振幅、揺動時間)に従って駆動手段26を駆動することで樹脂部材16を揺動し、揺動過程全体に亘って振動測定手段44のセンサ部46によって樹脂部材16の振動が測定され、センサ部46から振動データが制御手段50に入力される。制御手段50は、センサ部46から入力された測定振動データを、設定工程で予め設定されている基準振動データと照合する。検査工程では、樹脂部材16を揺動することで、ブロー成形工程でのブローピンの挿通や穿孔工程での穿孔に由来する異物が樹脂部材16の内部に残っていると、異物が樹脂部材16の内部を転がり、異物の転動や衝突等によって該異物毎に特有の振動が生じる。制御手段50は、異物の転動等による振動を含む測定振動データが入力されると、当該異物に対応して予め設定された基準振動データと測定振動データとが照合領域で重なるので、これにより異物の有りを判定する。これに対し、検査工程において、樹脂部材16の内部に異物がない場合には、異物の転動等による振動を含む測定振動データではなく、前述したブランクデータと同様の測定振動データが得られる。すなわち、制御手段50は、測定振動データを基準振動データと照合しても、照合領域で測定振動データが基準振動データから外れるので、異物の無しを判定する。実施例の検査工程では、所定の揺動時間に亘る揺動過程に亘って測定振動データが基準測定データから外れている場合に異物の無しを判定し、揺動過程で測定振動データが基準振動データに重なった段階で異物の有りを判定する。
【0038】
このように、検査工程では、揺動手段22で樹脂部材16を揺動し、振動測定手段44による振動データに基づいて異物の有無を制御手段50で判定しているので、従来例で説明した聴覚に頼る検査方法と比べて検査精度を格段に向上することができる。また、樹脂部材16を揺動手段22で揺動しているので、作業者の負担を軽減できると共に、振動測定条件を揃えることができ、検査の精度が高くなる。
【0039】
前記検査工程では、設定工程で設定された基準振動データと測定振動データとを照合し、基準振動データに測定振動データが重なった場合に異物の有りを判定する。基準振動データは、例えば水抜き孔を開設することで直径5mmの円形の異物が生じるのであれば、直径5mmの円形の指標物を入れた樹脂部材16を揺動して取得されるので、水抜き孔12に由来する異物が樹脂部材16の内部に存在するのであれば、検査工程で得られる測定振動データが基準振動データに一致するものになる。すなわち、周囲の雑音等の異物以外の振動データが制御手段50に入力されても、設定工程で想定される異物に応じて設定された基準振動データから外れるので(図7参照)、異物の誤検出を防止できる。また、周囲の雑音等の異物以外の振動データが入力されても、測定振動データが基準振動データに重なることで異物の存在を判定できるので、異物以外の余分な振動データが入力されても異物の判定精度が低下することはない。このように、周囲の雑音等の影響を受け難いので、検査工程を防音室等の特別な場所で行うことは必須ではなく、簡易な設備で検査を行うことができる。
【0040】
異物は、孔の大きさ、孔の形状、樹脂部材において孔をあける部位の厚み等によって、得られる振動データが変わるので、想定される異物に応じた数だけ基準振動データを設定しておくことで、検査工程における検査精度をより向上することができる。実施例では、ブローピンによる孔、水抜き孔12および取付孔14から出る異物の夫々に対応する基準振動データが設定されており、ブロー成形工程および穿孔工程に起因する何れの異物が生じても、異物の有りを判定することができ、異物の種類も判別可能である。しかも、想定される異物に応じた数だけ基準振動データを設定し、個々の基準振動データと測定振動データとを照合するので、基準振動データと測定振動データとの照合範囲を狭くすることができる。すなわち、検査工程において、異物以外の雑音の影響をより受け難くなり、より短い時間で異物判定の精度を更に向上することができる。
【0041】
実施例では、基準振動データと測定振動データとが、測定した全ての振動周波数帯および振動加速度帯に亘って照合されるのではなく、測定した範囲の一部である照合領域で測定振動データの振動周波数および振動加速度が基準振動データの振動周波数および振動加速度と対比される。このように、基準振動データにおける周波数−振動加速度曲線の特徴的なピークを示す照合領域で測定振動データを照合するだけで、異物の有無を判定することができ、照合する範囲を絞ることで、雑音等の異物以外の振動データを排除できる。すなわち、検査工程において、異物以外の雑音の影響をより受け難くなり、異物判定の精度をより向上することができる。
【0042】
前記検査装置20は、異物の無しを判定すると、駆動手段26を停止して揺動過程を終了した後に、センサ駆動部48によってセンサ部46を樹脂部材16から後方へ退避し、爪駆動部38によって保持爪34,36を互いに離間させることで、樹脂部材16の保持状態を解除する。そして、検査工程を終えた樹脂部材16は、検査装置20から取り外して次工程に送られる。
【0043】
これに対し、検査工程において、異物の有りが判定されると、駆動手段26を停止して対処的な工程に移行する。対処的な工程では、保持爪34,36による樹脂部材16の挟持状態が維持されて、樹脂部材16が取り外しできないようにされ、注入手段52が樹脂部材16に向けて移動して、水抜き孔12にノズルを挿入し、樹脂部材16の内部に接着剤を注入する。そして、注入手段52を樹脂部材16から退避した後に、駆動手段26を駆動して樹脂部材16を揺動する。これにより、樹脂部材16の内部にある異物は、接着剤によって捕捉され、接着剤が硬化することで樹脂部材16の内部で固定される。
【0044】
実施例の対処的な工程によれば、接着剤によって異物を固定することで、得られたリアスポイラ10において異物に起因する異音の発生を防止できる。樹脂部材16に設けられる孔が小さい場合には、異物を検出しても孔から異物を取り出すのは困難であるが、前記対処的な工程は、樹脂部材16の孔から接着剤を注入して樹脂部材16を揺動するだけの簡単な方法で異物を固定できる。なお、対処的な工程を行った後に、再度検査工程を行うことで、異物が固定されたか否かを確認してもよい。
【0045】
(変更例)
前述した実施例の構成に限定されず、以下のように変更することも可能である。
(1)実施例では、ブロー成形によって成形品を成形したが、インジェクション成形等の他の成形方法によって得られた部材を組み合わせて中空の成形品を構成し、この成形品に後工程を行う場合であっても、本願発明に係る製造方法および検査装置を適用できる。
(2)成形品に開口を設ける後加工を行わないブロー成形による成形品であっても、本願発明に係る製造方法および検査装置を適用できる。
(3)実施例では、リアスポイラを例に挙げて説明したが、内部に空洞を有して内部空間に異物が残留する可能性がある成形品であれば、本願発明に係る製造方法および検査装置を適用できる。
(4)実施例では、指標物を内部に入れた基準品を揺動して基準振動データを得たが、指標物を入れない基準品から得られる振動データと測定振動データとを照合してもよい。この場合、測定振動データが基準振動データより外れることで、異物の有りが判定される。
(5)注入手段は、省略してもよい。対処的な工程では、注入手段による接着剤の注入により異物を固定する例を挙げたが、これに限定されず、樹脂部材に開設された孔から異物を取り出してもよい。
(6)実施例では、想定される異物毎に取得した基準振動データから照合領域を設定したが、代表となる異物に対応する指標物から得た基準振動データだけで照合領域を設定してもよい。前述の如く、同じ樹脂部材より生じる異物から得られる周波数−振動加速度の特徴的なピークは、周波数帯がおおよそ同じになり、異物の大きさから振動加速度帯もある程度類推できる。
(7)実施例では、照合領域を所定範囲の周波数帯における所定範囲の振動加速度帯で区分したが、所定範囲の周波数帯または所定範囲の振動加速度帯だけで区分してもよい。
【符号の説明】
【0046】
16 樹脂部材、22 揺動手段、32 保持手段、44 振動測定手段、
50 制御手段(判定手段)、52 注入手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂材料を貫通したブローピンから気体を注入して該樹脂材料を膨らませることで中空の樹脂部材を成形するブロー成形工程および中空の樹脂部材に孔をあける穿孔工程の少なくとも一方を行う形成工程を経る成形品の製造方法において、
前記形成工程を経て得られた樹脂部材を揺動することで、該樹脂部材の内部で転がる前記ブロー成形工程または前記穿孔工程で生じた異物の振動を振動測定手段によって測定し、前記振動測定手段で測定した測定振動データと予め設定された基準振動データとの照合により異物の有無の判定を行う検査工程を備える
ことを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項2】
前記ブロー成形工程または前記穿孔工程で生じることが想定される異物に応じた指標物を前記樹脂部材の内部に入れ、該樹脂部材を前記検査工程と同様に揺動することで指標物を転がして、前記振動測定手段によって指標物毎の基準振動データを得る設定工程を少なくとも初回に行う請求項1記載の成形品の製造方法。
【請求項3】
前記基準振動データおよび前記測定振動データは、振動周波数および振動加速度を含むデータからなり、
所定範囲の振動周波数帯で区分した照合領域において、前記基準振動データと前記測定振動データとを照合する請求項1または2記載の成形品の製造方法。
【請求項4】
前記振動測定手段は、圧電式加速度ピックアップが用いられる請求項1〜3の何れか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項5】
前記検査工程で異物の有りが判定されると、前記樹脂部材に開設された孔から接着剤を内部に注入した後に該樹脂部材を揺動することで、樹脂部材に対して異物を接着剤で固定する請求項1〜4の何れか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂材料を貫通したブローピンから気体を注入して該樹脂材料を膨らませることで中空の樹脂部材を成形するブロー成形工程および中空の樹脂部材に孔をあける穿孔工程の少なくとも一方を行う形成工程の後に実施される検査工程で用いられる検査装置において、
前記形成工程を経て得られた前記樹脂部材を係脱可能に保持する保持手段を有し、該保持手段で保持した樹脂部材を揺動する揺動手段と、
前記保持手段で保持された樹脂部材の振動を測定する振動測定手段と、
前記振動測定手段から入力される測定振動データと予め設定された基準振動データとを照合し、前記樹脂部材の内部における異物の有無を判定する判定手段とを備えた
ことを特徴とする検査装置。
【請求項7】
前記判定手段には、前記ブロー成形工程または前記穿孔工程で生じることが想定される異物に応じた指標物を前記樹脂部材の内部に入れて該樹脂部材を前記揺動手段で揺動することで、前記振動測定手段で得られる指標物毎の基準振動データが設定される請求項6記載の検査装置。
【請求項8】
前記振動測定手段は、圧電式加速度ピックアップが用いられ、
前記判定手段には、振動周波数および振動加速度を含むデータからなる基準振動データが設定されると共に、振動周波数および振動加速度を含むデータからなる測定振動データが入力され、
前記判定手段は、所定範囲の振動周波数帯で区分した照合領域において、基準振動データと測定振動データとを照合するよう構成される請求項6または7記載の検査装置。
【請求項9】
前記振動測定手段は、前記揺動手段により揺動する樹脂部材と同期して揺動するように構成される請求項6〜8の何れか一項に記載の検査装置。
【請求項10】
前記判定手段の異物有り判定に基づいて前記保持手段で保持された樹脂部材に開設された孔から該樹脂部材の内部へ接着剤を注入する注入手段を備え、
前記揺動手段は、前記注入手段による接着剤の注入後に樹脂部材を揺動するよう構成される請求項6〜9の何れか一項に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−194836(P2011−194836A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66873(P2010−66873)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】