説明

成形品の製造方法及びこの製造方法で得られるボタン

【課題】ユリア樹脂成形材料やメラミン樹脂成形材料を用いて装飾性に富んだ成形品を容易かつ安価に製造することができる成形品の製造方法及びこの製造方法によって得られるボタンを提供する。
【解決手段】粒状ユリア樹脂成形材料及び粒状メラミン樹脂成形材料から選ばれた少なくともいずれかの1種の粒状成形材料の少なくとも表面に、顔料を溶剤で溶解させた着色液を少なくともその表面層に含浸させて得られた粒状着色成形材料1aを成形金型2,3に必要量供給し、加熱圧縮成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともユリア樹脂あるいはメラミン樹脂からなる装飾ボタン、容器などの成形品の製造方法及びこの製造方法で得られるボタンに関する。
【背景技術】
【0002】
ユリア樹脂成形材料やメラミン樹脂成形材料などのアミノ樹脂成形材料を加熱圧縮成形することによって熱硬化させた熱硬化性樹脂からなる成形品が服飾ボタンや容器などによく用いられている。
また、この種の成形品においては、装飾性を高めるために、異なる色で着色することが求められる場合がある。
【0003】
多数の色に着色された装飾ボタンの製造方法としては、例えば、(1)単色のボタンをまず成形し、このボタンの表面に印刷を施す方法、(2)成形材料と顔料を含む混合物を混練して得た混練物を押出成形して得た色の異なる着色シートを重ね合わせた状態で円柱状に巻き上げて得た円柱状ブロックをさらにプランジャ式の押出機でボタンの外径をした円柱状成形体を連続的に押出ながらボタンの厚さに切断して加飾成形材料を得たのち、この加飾成形材料を加熱圧縮成形する方法(特許文献1参照)、(3)着色された粉状の成形座量を用いて一色ずつ加熱圧縮成形をして、その反応途中で止めたものどうしを合わせて再度加熱圧縮成形する方法などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−84732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記(1)〜(3)の方法は、それぞれ以下のような問題がある。
(1)の方法の場合、加熱圧縮成形装置以外に印刷装置が必要であるため、製造コストがかかるとともに、表面に印刷によって着色を施すようにしているので、深みがなく、また、洗濯などによってはげやすいという問題がある。
(2)の方法の場合、押出成形装置が大掛かりであるため、大量生産しないと、コスト的に問題があるとともに、工程が非常に煩雑である。
(3)の方法の場合、工程が煩雑であるとともに、色合いを微妙に変化させた装飾性に高いボタンを得にくい。
また、従来の着色ユリア樹脂成形材料の場合、粗い粒状の成形材料をボールミルで粉砕して粉状にするとともに、顔料をこの粉状体に混合して製造されているため、着色された成形品を製造するには、コストがかかるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて、ユリア樹脂成形材料やメラミン樹脂成形材料を用いて装飾性に富んだ成形品を容易かつ安価に製造することができる成形品の製造方法及びこの製造方法によって得られるボタンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかる成形品の製造方法は、粒状ユリア樹脂成形材料及び粒状メラミン樹脂成形材料から選ばれた少なくともいずれかの1種の粒状成形材料の少なくとも表面に、顔料を溶剤で溶解させた着色液を少なくともその表面層に含浸させて得られた粒状着色成形材料を成形金型に必要量供給し、加熱圧縮成形することを特徴としている。
【0008】
本発明の製造方法において、粒状ユリア樹脂成形材料とは、少なくとも尿素とホルムアルデヒドとを用いて得られる初期縮合物をパルプ等のセルロース系基材に含浸させたのちに乾燥させて粗粉砕されて得られるものをいい、その粒径は、特に限定されないが、粒子が細かすぎると、色合いの変化をつけにくく、粒子が粗すぎると、成形性に問題がでるおそれがあるので、最大径部分が2mm以上20mm以下程度とすることが好ましい。
【0009】
粒状メラミン樹脂成形材料とは、メチロールメラミンを溶剤に溶かし、パルプ等のセルロース系基材に含浸させたのちに乾燥させて粗粉砕されて得られるものをいい、その粒径は、特に限定されないが、粒子が細かすぎると、色合いの変化をつけにくく、粒子が粗すぎると、成形性に問題がでるおそれがあるので、最大径部分が2mm以上20mm以下程度とすることが好ましい。
【0010】
粒状ユリア樹脂成形材料及び粒状メラミン樹脂成形材料の着色方法は、特に限定されないが、従来からユリア樹脂及びメラミン樹脂の着色に用いられている顔料を溶媒に溶解させた着色液を粒状ユリア樹脂成形材料及び粒状メラミン樹脂成形材料の表面にスプレーを用いて噴霧する方法、前記着色液に粒状ユリア樹脂成形材料及び粒状メラミン樹脂成形材料を浸漬して含浸させる方法、また、前述の方法によって、一旦単色に着色したのち、さらにその上から色の異なる着色液を噴霧する方法などが挙げられる。
さらに、着色液の粒状ユリア樹脂成形材料及び粒状メラミン樹脂成形材料の含浸は、粒状ユリア樹脂成形材料及び粒状メラミン樹脂成形材料の表面層のみでも構わないし、表面層の一部でも構わない。
【0011】
上記溶剤としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールや水、及びこれらの混合物が挙げられるが、加熱圧縮成形時の成形材料の伸びを考慮すると、メタノールが好ましい。
【0012】
本発明において、成形金型に供給される粒状着色成形材料は、粒状着色成形材料がそれぞれ複数の色に着色されている場合(表面層が着色され、内部が無着色の状態に残っている場合も含む)は、着色状態が同じであるもののみを必要量用いるようにしてもよいが、装飾性により富んだ成形品を得ようとするならば、複数種の着色状態の異なる粒状着色成形材料を混合した状態で成形金型に供給することが好ましい。
なお、着色状態が異なるとは、粒状着色成形材料ごとの色が異なる、表面の色の配置が異なる、粒状着色成形材料の厚み方向で色が異なることなどをいう。
【0013】
また、本発明の成形品の製造方法は、上記粒状ユリア樹脂成形材料及び粒状メラミン樹脂成形材料に、透明不飽和ポリエステル樹脂成形材料を混合した状態でこれらの材料を成形金型に供給するようにしても構わない。
すなわち、透明ポリエステル樹脂成形材料を混合すると、成形時の材料の伸びがよくなり、金型転写性が向上するとともに、光沢のある成形品を得られるようになる。
【0014】
本発明において、透明不飽和ポリエステル樹脂成形材料は、特に限定されないが、例えば、液体状である不飽和ポリエステル樹脂に触媒(有機過酸化物等)を加えたものに、ゲル化剤(アルカリ土類金属の酸化物(又は水酸化物)、アルミニウムアルコレート、イソシアネートなどをスチレンなどのビニル化合物で希釈したもの)を添加した後、ゲル化するまで攪拌することで得られるものが挙げられる。
【0015】
このようにして作られた透明不飽和ポリエステル樹脂成形材料は、乾燥しないように合成樹脂製シートなどで覆って保存することが好ましい。
この透明不飽和ポリエステル樹脂成形材料は、触媒やゲル化剤の影響で徐々に硬化していくが、保存中において揉みほぐし粒状にすることで保存期間は倍以上に増え、夏場で一ヵ月、冬場で三ヵ月は保存可能である。
【0016】
本発明において必要量とは、得ようとする成形品の色柄などによって適宜決定され、特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる成形品の製造方法は、以上のように、粒状ユリア樹脂成形材料及び粒状メラミン樹脂成形材料から選ばれた少なくともいずれかの1種の粒状成形材料の少なくとも表面に、顔料を溶剤で溶解させた着色液を少なくともその表面層に含浸させて得られた粒状着色成形材料を成形金型に必要量供給し、加熱圧縮成形するので、ユリア樹脂成形材料やメラミン樹脂成形材料を用いて装飾性に富んだ成形品を容易かつ安価に製造することができる。
また、この成形品の製造方法によって得られる本発明のボタンは、装飾性に富んだものとなるとともに、製造コストも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の成形品の製造方法に用いられる粒状着色成形材料の着色状態の例を模式的にあらわしている。
【図2】本発明の成形品の製造方法に用いられる加熱圧縮成形装置の下型の平面図である。
【図3】図2の下型上に成形材料を供給した状態を模式的にあらわす平面図である。
【図4】上型と下型とを閉合する前の状態をあらわす断面図である。
【図5】本発明の成形品の製造方法で得られるボタンの1例をあらわす平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図4は、本発明にかかる成形品の製造方法の1つの実施の形態であるボタンの製造方法を工程順にあらわしている。
【0020】
このボタンの製造方法は、例えば、以下のようにして図5に示すようなボタンを製造することができる。
(1)図示していないが、例えば、青、赤、黄の3種の顔料をそれぞれ溶媒であるメタノールに溶解させて3色の着色液を作製する。
(2)例えば、無着色のユリア樹脂成形材料(例えば、株式会社台和社製乾燥材一級品等の市販のものが用いられる)あるいは無着色のメラミン樹脂成形材料(例えば、株式会社台和社製乾燥材一級品等の市販のものが用いられる)の表面に個別に着色液をスプレー塗布して、図1(a)に示すように、表面側に着色部11を有し、中央に無着色部12が残った青、赤、黄の単色に着色された粒状着色成形材料1a、図1(b)に示すように、表面部分の一部に着色部13が形成され、残部が無着色部14として残った青、赤、黄の単色に着色された粒状着色成形材料1b、図1(c)に示すように、図1(a)に示す粒状着色成形材料1aと同様に第1着色部15と、無着色部16とを形成したのち、第1着色層15と異なる色の着色液をスプレー塗布して異なる色の第2着色部17を備えた粒状着色成形材料1c、図示していないが、さらに別の色の着色液をスプレー塗布して第3着色部を備えた粒状着色成形材料、無着色のユリア樹脂成形材料(例えば、株式会社台和社製乾燥材一級品等の市販のものが用いられる)あるいは無着色のメラミン樹脂成形材料(例えば、株式会社台和社製乾燥材一級品等の市販のものが用いられる)をいずれかの着色液に浸漬して全体が単色に着色された粒状着色成形材料、この全体が単色に着色された粒状着色成形材料の表面にさらに異なる色の着色液をスプレー塗布して、表面側に第2着色部や第3着色部を形成した粒状着色成形材料を得る。
(3)液体状である不飽和ポリエステル樹脂に触媒(有機過酸化物等)を加えたものに、ゲル化剤(アルカリ土類金属の酸化物(又は水酸化物)、アルミニウムアルコレート、イソシアネートなどをスチレンなどのビニル化合物で希釈したもの)を添加した後、ゲル化するまで攪拌して不飽和ポリエステル樹脂成形材料を得る。
(4)上記のようにして得られた粒状着色成形材料中から複数種の粒状着色成形材料を選択して混合するとともに、必要に応じて、不飽和ポリエステル樹脂成形材料をさらに混合する。
(5)(4)のようにして得られた混合物を、加熱圧縮成形装置の成形金型を開き、図2に示すようなボタン形状の凹部21を多数設けられた下型2の上に、図3及び図4に示すように、必要量供給する。
(6)図4に示す上型3を下型2方向に移動させて、成形金型を閉合し、成形材料を凹部21の形状に加熱圧縮成形する。
(7)図示していないが、成形材料が熱硬化完了後、成形金型を開放し、下型2上に残ったバリ付きの成形体を取り出し、バリを取り除き、図5に示すボタン4を得る。
【0021】
この製造方法は、上記のように、粒状ユリア樹脂成形材料及び粒状メラミン樹脂成形材料が基材としてパルプ等のセルロース繊維を60〜70%含むので、着色液の浸透性に優れている。したがって、粗い粒状の成形材料に着色液を含浸させることによって長時間かかる粉砕工程など経ずに粒状着色成形材料が得られるので、粉体の着色成形材料に比べ、安価に、かつ、容易に着色成形材料を得ることができる。
【0022】
そして、例えば、上記青、赤、黄の単色に着色された図1(a)に示すような3色の粒状着色成形材料1aを混合した混合物を用いれば、青い部分、赤い部分、黄色い部分、青と赤とが混ざり合った紫色の部分、青と黄とが混ざり合った緑色部分、赤と黄とが混ざり合った橙色部分などが混ざり合うとともに、無着色部分によって、白色半透明な部分を備えたカラフルで装飾性の高いボタンを得ることができる。
【0023】
また、上記粒状着色成形材料にさらに透明不飽和ポリエステル樹脂成形材料を混合した混合物を金型に供給するようにすれば、表面が透明不飽和ポリエステル樹脂で覆われて光沢のあるボタン5を得ることができる。
【0024】
また、無着色の粉状成形材料をまず下型2の上に所定厚みで供給した後、上記混合物をこの粉状成形材料の上に供給し、加熱圧縮成形すれば、無着色の底面部の上にカラフルな上層部分を備えた装飾性の高いボタン5を得ることができる。
さらに、混合物は、粒状着色ユリア樹脂成形材料のみ、粒状着色メラミン樹脂成形材料のみ、あるいは、粒状着色ユリア樹脂成形材料及び粒状着色メラミン樹脂成形材料を混合したものでも構わない。
【0025】
すなわち、この成形品の製造方法によれば、粉状の成形材料に比べて1/2以下である粉体にする前の粒状成形材料を使用しているので、材料が安価である。しかも、この粒状成形材料に着色液を含浸させるだけで、容易に着色成形材料が得られる。そして、着色状態や粒径の異なる粒状着色成形材料を選択的に組み合わせたり、各粒状着色成形材料の混合比率を変更したりすることによって、いろいろなパターンの色彩模様を備えた装飾性に富んだ成形品を得ることができる。
【0026】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、成形品がボタンであったが、得られる成形品としては、特に限定されず、花瓶やお盆などでも構わないし、ネックレスなどの装飾品に用いられる玉状成形品でも構わない。
上記の実施の形態では、着色液の色が青、赤、黄の3色であったが、他の色の着色液を用いてもよく、4色以上の異なる色の着色部を設けるようにしても構わない。
【符号の説明】
【0027】
1a,1b,1c 粒状着色成形材料
11 着色部
12 無着色部
13 着色部
14 無着色部
15 第1着色部
16 無着色部
17 第2着色部
2 下型
21 凹部
3 上型
4 ボタン(成形品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状ユリア樹脂成形材料及び粒状メラミン樹脂成形材料から選ばれた少なくともいずれかの1種の粒状成形材料の少なくとも表面に、顔料を溶剤で溶解させた着色液を少なくともその表面層に含浸させて得られた粒状着色成形材料を成形金型に必要量供給し、加熱圧縮成形することを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項2】
着色状態の異なる複数種の粒状着色成形材料を混合した状態で成形金型に供給する請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項3】
必要量中、少なくとも一部の粒状着色成形材料が、無着色の粒状成形材料に複数の色を表面から含浸させて形成されている請求項1または請求項2に記載の成形品の製造方法。
【請求項4】
必要量中、少なくとも一部の粒状着色成形材料が、無着色の粒状成形材料の表面層のみ着色して形成されている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項5】
粒状着色成形材料と透明不飽和ポリエステル成形材料とを混合した状態で成形金型に供給する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項6】
溶剤がメタノールである請求項1〜請求項5のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の製造方法で得られてなることを特徴とするボタン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−56215(P2012−56215A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202612(P2010−202612)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(596082828)
【Fターム(参考)】