成形品の製造方法
【課題】
量産性の高く、良好な転写性を得ることができる成形品の製造方法を提供すること。
【解決手段】
本発明にかかる成形品の製造方法は、転写面を有する金型より形成されるキャビティ内に熱可塑性樹脂からなる母材シート1を挿入し、金型の転写面を該母材シート1の表面に押し付けることにより金型転写面の形状を母材シート1に転写させるものである。特に、母材シート1に対してその表面近傍に二酸化炭素を含有させ、さらに母材のガラス転移温度よりも低温度の金型転写面を押し付けることを特徴とする。二酸化炭素が転写表面を軟化させることで、母材全体の温度を上昇させることなく温度制御を一定にて成形できるので量産性が向上する。
量産性の高く、良好な転写性を得ることができる成形品の製造方法を提供すること。
【解決手段】
本発明にかかる成形品の製造方法は、転写面を有する金型より形成されるキャビティ内に熱可塑性樹脂からなる母材シート1を挿入し、金型の転写面を該母材シート1の表面に押し付けることにより金型転写面の形状を母材シート1に転写させるものである。特に、母材シート1に対してその表面近傍に二酸化炭素を含有させ、さらに母材のガラス転移温度よりも低温度の金型転写面を押し付けることを特徴とする。二酸化炭素が転写表面を軟化させることで、母材全体の温度を上昇させることなく温度制御を一定にて成形できるので量産性が向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる成形品の製造方法に関するものであり、より詳しくはフィルムや板状等、粗形状を有する熱可塑性樹脂1次成形品を2次加工する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂からなる成形品の製造方法としては、大量生産に適した射出成形方法が知られる。しかしながら、射出成形方法は、加熱溶融した樹脂材料を金型のキャビティに射出充填する際、表面に固化層が形成されるため、金型表面に対する転写精度や成形品の薄肉化に限界がある。
【0003】
こうした欠点を改善するために、予め射出成形等により成形したプラスチック母材を金型キャビティ内に挿入し、この母材を、母材のガラス転移温度以上に加熱溶融させて樹脂内圧を上昇させた後、緩やかに冷却する成形方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法においては、圧力および温度に分布や偏りが生じないように、母材のガラス転移温度以下まで緩やかに冷却することが不可欠であるため、成形サイクルが長期化するという欠点があった。
【0004】
かかる問題を回避する方法として、例えば、棒状、板状の発熱体や超音波による加熱手段を転写部材となる金型に設けることで、母材の被転写面のみを局所的に加熱溶融させて転写させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、高周波誘導加熱により、母材の転写表面のみを溶融させる方法も提案されている(例えば、非特許文献1参照)。これらの方法によれば、樹脂表面を軟化させるために樹脂を直接もしくは間接的に加熱しているので、熱源もしくは溶融樹脂の熱が金型に伝達し、金型およびプレス装置の温度が少しずつ上昇する。そのため成形品の表面全体における温度の均一性および連続生産時におけるヒートサイクルの安定性を正確に制御することが困難であった。また、大面積を有する成形品の場合、金型の熱容量が増大するため、上記問題が顕著であった。つまり、射出成形に匹敵する量産性を得るには限界が生じていた。
【0005】
一方、近年、超臨界二酸化炭素や二酸化炭素を成形加工に応用する試みが盛んであるが、古くから二酸化炭素を熱可塑性樹脂に吸収させると可塑剤として働き、樹脂のガラス転移温度を低下させることが非特許文献2等で知られている。また、これを射出成形に応用した技術が特許文献3に開示されている。特許文献3には、加圧した二酸化炭素(CO2)で充満させた金型内に、二酸化炭素を溶解させた溶融樹脂を充填することで流動樹脂のフローフロントに二酸化炭素が含浸して金型接触面における固化層の成長を抑制する技術が開示されているが、これは溶融状態の樹脂に適用されたものであり、本発明の場合、固化した樹脂に適用するものであるため技術分野が異なる。また、特許文献3に記載された方法では、二酸化炭素の樹脂に対する接触時間は射出時間によって制限されるので、最表面における二酸化炭素の浸透量を制御することが困難である。また、二酸化炭素を超臨界状態(7MPa)以上の高圧状態にすると、射出の障害となるため、金型内に導入される二酸化炭素は低圧とせざるを得ない。そのため、短時間に多量の二酸化炭素を浸透させることはより困難であった。
【0006】
二酸化炭素を利用して成形品の転写性を向上させる他の手法が特許文献4に開示されている。特許文献4によれば、射出成形後に金型を一旦開き、金型と樹脂表面のスキン層の間に隙間を形成し、該隙間に高圧の二酸化炭素を導入することでスキン層を軟化させ、さらに樹脂圧を高めて金型表面を転写している。特許文献4も特許文献3と同様に溶融樹脂に適用したものであり、成形品全体がガラス転移温度以下になっているわけではない。そのため、スキン層表面から浸透した二酸化炭素は溶融状態の樹脂内部まで容易に浸透可能である。従って、樹脂と金型との隙間に滞留した二酸化炭素が溶け残るという、固化した樹脂に特有の問題が生じない。
【0007】
本発明者らの鋭意検討によれば、ガラス転移温度以下の固化した熱可塑性樹脂からなる母材に超臨界状態における高圧の二酸化炭素を短時間で浸透させ、表面を軟化させることは容易であった。しかしながら、高圧の二酸化炭素を充満した雰囲気にて、単にプレス等により母材を金型面に押し付けたのでは、成形品の表面に膨れや局所発泡、転写むらの問題が生じてしまい。金型表面の微細形状を転写することは困難であった。この問題は、母材の厚みが1mm以下、特に0.5mm以下と薄い場合に顕著であった。この要因として、プレス時に母材と金型の隙間に溶け残った二酸化炭素が圧縮されて高圧状態にて挟まれ、プレス圧により樹脂内部に浸透させることができなかったためと考えられる。母材が薄いほどに、二酸化炭素の浸透できる絶対量が減少し、溶け残った二酸化炭素を母材と金型の隙間から排気することが困難となったため、問題が顕著になると思われる。
【0008】
二酸化炭素の圧力を低くすれば、密度が低下しガス体となるため、上記問題は回避できたが、二酸化炭素の浸透時間が長くなり、連続量産化が困難であった。さらにプレス圧等の母材と樹脂との押し付け圧を非常に高くすることによって、ある程度問題は回避できるかエネルギー効率が悪いという課題が発生した。
【特許文献1】特開平4−163119号公報
【特許文献2】特開2002−36355号公報
【特許文献3】特開2001−62862号公報
【特許文献4】特開2002−52583号公報
【非特許文献1】プラスチック工業技術研究会主催技術講演会「最新記録媒体の動向と材料・成形加工技術」予稿集P3-30〜31,2004
【非特許文献2】J.APPl.PolyM.Sci."Vol.30,2633(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたもので、第1の目的は、量産性の高い成形品の製造方法を提供することにある。第2の目的は、良好な転写性を得ることができる成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の例示的側面としての成形方法は、転写面を有する金型より形成されるキャビティ内に熱可塑性樹脂からなる母材を挿入し、該金型の転写面を該母材の表面に押し付けることにより金型転写面の形状を母材に転写させる熱可塑性樹脂の成形方法において、該母材は少なくとも表面近傍に二酸化炭素を含有し、母材のガラス転移温度よりも低温度の金型転写面を押し付けることを特徴とする。二酸化炭素が転写表面を軟化させることで、母材全体の温度を上昇させることなく温度制御を一定にて成形できるので量産性が向上する。
【0011】
本発明において、二酸化炭素を母材表面に浸透させるタイミングは任意であり、成形サイクル内で行ってもよいし、予め前処理にて浸透させておいてもよい。
【0012】
前記転写面の金型表面温度が、母材の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも5℃から100℃低い温度の範囲であることが望ましい。樹脂の温度がこの範囲よりも高いと母材の機械的な変形等が抑制困難となり、低いと二酸化炭素が浸透しにくくなり、量産性が低下する。より望ましくは、母材のガラス転移温度よりも10℃から50℃低い範囲に金型表面温度を制御することである。なお、本発明において熱可塑性樹脂のガラス転移温度とは、軟化材や可塑剤、ガス体等を含まないバルク材料の物性と定義する。
【0013】
本発明において、前記母材の厚みは1mm以下の熱可塑性樹脂フィルムであってもよい。さらに射出成形等では成形困難な0.5mm厚み以下であることが望ましい。より望ましくは0.2mm以下の厚みのフィルムである。さらに、例えば導光板等においては15インチサイズ以上の大面積であってもよい。射出成形で達成困難な薄肉かつ大面積の精密成形の本発明の特徴を生かすことができる。
【0014】
本発明の他の側面としての成形方法は、前記熱可塑性樹脂からなる母材が挿入された金型キャビティ内に、温度50℃〜250℃、圧力1〜25MPaの範囲に予め調整された二酸化炭素を導入することで、母材の少なくとも転写側表面に二酸化炭素を浸透させることを特徴とする。温度および圧力は母材に対する可塑剤としての観点から考慮することは勿論であるが、下記観点からも最適化されることが望ましい。すなわち、金型に導入する際の金型温度変化である。金型の表面温度が大きく影響を受けないように、金型との二酸化炭素の温度差は小さい方が望ましく、温度差が100℃以下の範囲であることが望ましい。
【0015】
前記二酸化炭素を予め加圧温調させる容器の内容積V1と前記熱可塑性樹脂からなる母材が挿入された二酸化炭素が充填される金型キャビティの内容積V2と比であるV1/V2は0.5以上20.0以下の範囲であることが望ましい。この範囲より小さいと金型導入時に、断熱膨張により二酸化炭素の温度が急激に低下し、さらには液化してしまう恐れがある。それにより金型や母材の熱量を奪う問題が発生する。また、この範囲よりも大きい場合、特に、下記のような条件時に問題が発生する。つまり、予め加圧温調された二酸化炭素の温度がキャビティ内の表面温度よりも低い場合、キャビティ内に導入された二酸化炭素が急激に高温となることで圧力上昇し、温度制御した高圧タンクの内部を含めた圧力制御が困難になる。
【0016】
また、前記母材を真空吸着した状態で内径及び/又は外径を切断するようにしてもよい。特に、光ディスクなどの円盤状の情報記録媒体を製造する上で、この方法は好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、量産性の高い成形品の製造方法及び良好な転写性を得ることができる成形品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施例1.
本発明の実施例1に関する成形品の製造方法は、特に光学レンズ、プラスチックミラー、導光板やマイクロレンズアレイ等の光学部品、光ディスク等の情報メディア等の製造に用いられる。
【0019】
以下、本実施例1にかかる成形装置及び成形方法について図1〜図10を用いて説明する。なお、熱可塑性樹脂からなる母材が挿入される金型内空間以外に余剰な二酸化炭素が滞留するスペースが存在するが、それらを包括してキャビティと呼ぶ。
【0020】
図1〜図4は、本実施例1にかかる成形装置の概略構成を示すブロック図である。当該成形装置は、図示しない電動サーボモーターで駆動し位置制御が可能なトグル式プレス機構101、高圧二酸化炭素供給ユニット102、成形加工用プレスユニット103から構成される。図1は装置全体の断面構造模式図、図2はプレスユニット103の要部断面構造図であり、図3,4はプレスユニット103上面からの模式図である。
【0021】
本発明において、母材表面もしくは全体に二酸化炭素を浸透させる方法は任意である。例えば、金型とは別の容器内を予め母材のガラス転移温度よりも低い温度に温度制御するとともに高圧力の二酸化炭素を充満させておき、その容器内に母材を長時間滞留させる方法を適用できる。
【0022】
また、金型キャビティ内にて、連続式に短時間で母材に二酸化炭素を接触させながら浸透させる方法も適用できる。本実施例では、後者の方法を採用し、温度および圧力が制御された高圧タンク6内に保持された二酸化炭素を密閉した状態にてプレスユニット103内の金型キャビティ2に浸透させた。
【0023】
母材シート1に金型表面形状を転写させる成形期間中は、金型キャビティ2の内部は、二酸化炭素をシール(封止)することが望ましい。金型キャビティ2内に充満した高圧二酸化炭素をシールする方法は任意であるが、プレス機構等による駆動源により、該二酸化炭素の圧力よりも高い反力を与えてシールするよりは、機械的に固定しシールした方が消費エネルギーを低減できるので望ましい。
【0024】
本実施例1において、プレスユニット103は、超臨界染色の高圧容器等で採用されている下記公知の方法にて25MPaまでの高圧二酸化炭素がシールできる構造を採用し、以下のようにシールを行った。
【0025】
まず、微細構造の転写面を有するスタンパ3を保持した上蓋20を、図3に示されるように、下プレスユニット21内にギア19が嵌まり合うように挿入し、ついで図4に示すように上蓋を45度回転させた。上蓋20には、放射状に外側に突出したギア19が90°間隔で4箇所に設けられている。下プレスユニット21は、中央に当該上蓋20の外形状に対応した窪みを有し、さらに、その窪みの内側面には、上蓋20のギア19が嵌め込まれる窪みが設けられている。下プレスユニット21は、上蓋20のギア19における最外周の直径以上の直径よりなる円柱状にくり貫かれた空洞部が形成されており、この空洞部において上蓋20のギア19が回転し、所定の位置に位置決めされる。
【0026】
図2に示されるように、上蓋20の外周に設けられた窪みにはOリング4が挿入されている。このOリング4と下プレスユニット21内の内壁シール面5を密着させることにより、シール性が維持される。上蓋20の上下移動は、図示しないエアーシリンダーに接続されたピストンの駆動により行われる。上蓋20は、操作者が取手28を把持し回転させることによって回転させることができる。
【0027】
高圧二酸化炭素供給ユニット102は、図1に示されるように、二酸化炭素ボンベ18、ポンプ9、減圧弁10、圧力計11、減圧弁12、圧力計13、ストップバルブ14、エアーオペレートバルブ15,16、逆止弁17、高圧タンク6を備えている。このうち、エアーオペレートバルブ15,16は、電磁弁のオンオフにより自動制御することができる。エアーオペレートバルブ15はプレスユニット103への導入用、エアーオペレートバルブ16は排出用である。エアーオペレートバルブ15,16は、トグル式プレス機構101と連動して自動運転可能である。
【0028】
二酸化炭素ボンベ18より供給された二酸化炭素は、ポンプ9により昇圧され、減圧弁10によって圧力計11の表示がPになるように圧力調整される。圧力調整された二酸化炭素は、高圧タンク6内で任意の温度および圧力Pに保持される。本発明において、金型キャビティ内に導入させる二酸化炭素の温度および圧力Pは、それぞれ50℃〜250℃、1〜25MPaの範囲に調整されることが望ましいが、本実施例においては、温度を150℃とし、圧力Pを15MPaとした。
【0029】
本発明において、二酸化炭素の圧力や温度を予め調整する高圧タンクの容量V2と二酸化炭素が導入される金型キャビティ内の内容積V1の体積比である、V2/V1は0.5以上20.0以下であることが望ましい。本実施例においては、高圧タンク6内における内容量V2は2.0リットル、二酸化炭素を導入する際における金型キャビティ2の内容積V1は1.5リットルとし、V2/V1=1.3とした。
【0030】
下プレスユニット21の中央部に設けられた空洞部には、下プレス金型7が上下方向に可動な状態で保持されている。この下プレス金型7の下面と下プレスユニット21の間には、密閉シリンダー8が形成されている。下プレスユニット21内における密閉シリンダー8内には、減圧弁12により圧力計13の表示が6MPaに調整された二酸化炭素がストップバルブ14の開放により常時充填されている。このため、下プレス金型7は、金型キャビティ2内に二酸化炭素が充填されていない場合、密閉シリンダー8によって上方に押し上げられ、常に上昇した位置にある。
【0031】
そして金型キャビティ2内に8MPaの二酸化炭素が充填されると、密閉シリンダー8による下プレス金型7の上昇圧力と下プレス金型7上面全体にかかる二酸化炭素による下降圧力が平衡になるように設定した。このような機構により、トグル式プレス機構101によるプレス力は、キャビティに充填された二酸化炭素が高圧になっても過剰な駆動力は必要としない。下プレス金型7は下プレスユニット21に対し、ガイドポスト31にてガイドされている。
【0032】
本発明において、母材となる成形品の形態は任意である。また、母材の成形加工方法は、公知の射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、トランスファー成形、押し出し成形、キャスティング等を選択できる。本実施例においては、厚さ0.4mm、500×800mm□の押し出し成形によって得られたフィルムを用いた。
【0033】
本発明において、母材となる熱可塑性樹脂の種類は、任意であり、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、脂環式オレフィン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリメチルペンテン、非晶質ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、液晶ポリマー、スチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリアセタール、ポリアミド系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニルスルフォン、ポリエーテルスルフォン、芳香族ポリエステル、生分解性プラスチック等を選択できる。また、これらの材料の各種共重合体、ブレンド材料でもよく、フィラー等の各種添加材を含有していてもよい。本実施例においてはガラス転移温度145℃のポリカーボネートを用いた。
【0034】
本発明における、金型キャビティ内における母材の保持方法は任意であるが、本実施例においては、次のように行った。まず、図2に示されるように、母材シート1を下プレス金型7上の下鏡面プレート25に設置した。ここで、下鏡面プレート25の面上には、矩形状に真空吸引溝23が設けられている。真空吸引溝23は吸引孔22の一端に接続されている。吸引孔22の他端側には、プレスユニット103の外に設置された真空ポンプ(不図示)が設けられている。母材シート1は、当該真空吸引溝23上に設置されている。そのため、真空ポンプにより吸引すると、吸引孔22及び真空吸引溝23を介して、母材シート1が下鏡面プレート25の平坦な上面に吸引される。このようにして、母材シート1は、下鏡面プレート25の上面に対して密着固定される。
【0035】
本発明において母材シート1に転写させる金型表面の形態は任意であるが、本実施例においては、転写パターンとして厚さ0.3mmのNiスタンパ3上に設けられたφ100μm、高さ50μmのレンズが密集したマイクロレンズパターンを形成した。Niスタンパ3をスタンパ保持部材54によって上鏡面プレート26に固定した。スタンパと鏡面裏面に滞留したガスをスタンパ外周部より逃がすために、本実施例の金型はスタンパ保持部材54内の排気孔541(図7参照)につながる図示しない排気経路が形成されている。
【0036】
本発明において母材や転写金型の温度制御方法や設定温度は任意であるが、本実施例においては、図2に示されるように上下の温調水回路24、27内に、125℃に調整された水媒体を温調機により加圧状態にて循環させることにより、下鏡面プレート25およびスタンパ3の表面温度が120℃になるように制御した。この120℃の温度は、母材のガラス転移温度から25℃差し引いた温度である。なお、上蓋20の全体、および下プレスユニット21内部におけるプレスピストンを構成する下プレス金型7の外側は図示しないヒーターにより120℃に温度制御されている。
【0037】
本発明においては、高圧の二酸化炭素がキャビティ内にて導入、排出されることにより、キャビティ内の気体が圧縮、開放されることにより温度変化する場合がある。そのため、金型全体を温度制御し、二酸化炭素の流動に起因した金型の温度変化を抑制することが望ましい。
【0038】
次に、本実施例における成形プロセスについて説明する。まず、母材シート1を上述の方法にて下鏡面プレート25に密着固定した。その後、図5に示されるように、ギア19が下プレスユニット21の空洞部に嵌まり合うように上蓋20を挿入した。図6のようにギア19を下プレスユニット21の空洞部に対して完全に挿入できたところで、上蓋20を45度回転させた。上蓋20を回転させ始めるとシールが効くので、それと同時に、図1に示すエアーオペレートバルブ15の開放した。これにより高圧タンク6内の二酸化炭素は、金型キャビティ2内に導入された。
【0039】
図6のA部拡大図を図7、さらにスタンパ3の界面における拡大図を図8に示す。二酸化炭素が導入されることにより金型キャビティ2内の圧力が8MPa以上に達すると、下プレス金型7は上面の二酸化炭素による圧力に押圧されて後退、即ち下降する。本実施例では、図1に示すトグル式プレス機構101の上面を下プレス金型7の押し当て面29に接触させて、キャビティ間距離を制御した。本実施例においては、母材シート1とスタンパ3が全面にて密着した状態におけるキャビティ間距離をゼロとした。
【0040】
本発明においては、可塑性樹脂からなる母材と金型転写面との隙間を5mm以内に保持した状態にて、二酸化炭素を金型キャビティ内に導入することが望ましい。母材とスタンパ間に、高圧で高密度の二酸化炭素が滞留した場合、該隙間が広いと、余剰な二酸化炭素を母材とスタンパの転写面から速やかに排出することが困難となる。特に母材の面積が広く厚みが薄い場合には、余剰な二酸化炭素を母材とスタンパの転写面から速やかに排出することが困難である。ここで、母材とスタンパを接触させるプレススピードを遅くすることで、かかる課題をある程度回避することも可能であるが、サイクルアップにつながる。
【0041】
本実施例においては、下プレス金型7が後退した瞬間、トグル式プレス機構101を位置制御し、キャビティ間距離(即ち、スタンパ3と母材シート1間の距離)が0.2mmになるように金型キャビティ2内のガス圧にあわせてプレス力を上昇させた。キャビティ2内部のガス圧力は図示しない金型内ガス圧センサーにてモニターした。
【0042】
本実施例における、ガス圧、プレス力およびキャビティ間距離のプロセスタイムチャートを図10に示す。図10において横軸は時間、縦軸はキャビティ内の圧、プレス力又はキャビティ間距離を示す。図10に示されるように、キャビティ内圧力を高め始めてから3秒後にプレス力を高めている。プレス力が高まるにつれて、ガス圧により下プレス金型7が瞬間的に後退するが、それに伴いプレス力が上昇してキャビティ間距離を一定に保持する。本実施例では、約6秒から約16秒に亘ってキャビティ間距離を0.2mmに保持した。
【0043】
次に、キャビティ間距離0.2mmを約10秒間保持した後に、プレス力を上昇させ、図9に示されるように転写を行った。20秒間プレスしている途中にて、エアーオペレートバルブ16を開放し、二酸化炭素をキャビティ2内より放出した。その後、プレス力を開放し、母材シート1とスタンパ3を剥離させた。さらに上蓋20を外した後、成形品を取り出した。
【0044】
本実施例にかかる成形方法によって製造した成形フィルムは、厚みの変化が1μm以内であり、全面に亘ってスタンパ3のマイクロレンズパターンが良好に転写されているものであった。
【0045】
上述のように、熱可塑性樹脂からなる母材と金型転写面との隙間を5mm以内に維持した状態にて二酸化炭素を金型キャビティ内に導入することが望ましい。より望ましくは1mm以下である。さらに望ましくは100μm以下である。これ以上に母材と金型転写面の隙間が広いと、母材に溶けない余剰な二酸化炭素の量が多くなり、プレス等で転写面を押し付けた際に、低圧のプレス力では排気しにくくなる。また隙間の狭いほうが導入する二酸化炭素の絶対量を減らすことができ経済的である。
【0046】
また、熱可塑性樹脂からなる母材に前記金型転写面を押し付けた際に、少なくとも転写完了までには母材に一部金型が接触しない面があり、該表面には二酸化炭素が接触しているほうが望ましい。プレス等による押し付け時に、余剰な二酸化炭素が該非接触部より効率よく排気できる。
【0047】
また、前記金型の転写表面が微細な凹凸を有するものであり、10MPa以下、より望ましくは7MPa以下となる低圧力P1の二酸化炭素雰囲気にて母材と該金型転写面を接触させることが好ましい。二酸化炭素が低圧状態において母材と金型の微細凹凸を密着させることにより、余剰となる二酸化炭素は低密度なガスに近い状態であるため、母材と金型の接触面より外部に排気しやすくなる。また二酸化炭素が圧縮されながら金型表面の凹凸に高圧状態で樹脂と密着および滞留することになり、母材表面の可塑化が促進すると考えられる。該金型転写面と母材とが接触する際における二酸化炭素の圧力P1は1〜10MPa、より望ましくは1〜7MPaの範囲であることが望ましい。
【0048】
また、二酸化炭素と金型の凹凸を接触させた後、さらに母材に接する二酸化炭素の圧力P2をP1以上の高圧にすることが望ましい。P2は7MPa以上の超臨界状態にすることが望ましく、より望ましくは10MPa以上である。浸透性高く可塑剤効果の大きい超臨界状態の二酸化炭素が、母材表面と金型の密着面に存在する微細凹凸を通じて、母材表面全体より浸透して転写性を向上させることが期待できる。また、母材に接する二酸化炭素を高圧にした後、さらにプレス等における母材と金型の押し付け力を上昇させることで、より転写性を向上させることができる。その後、二酸化炭素を金型内より排気することで、母材を冷却固化させることができる。
【0049】
二酸化炭素にはアルコールが含有させていてもよい。エタノール等のアルコールを含有させることで母材である樹脂への可塑剤効果が飛躍的に向上する。エタノールの混合濃度は1〜10%程度が望ましい。
【0050】
実施例2.
実施例2に係る成形装置及び成形方法について図11〜図20を用いて説明する。図11は、本実施例に係る成形装置の概略構成を示すブロック図であり、図12はその要部断面構造図である。本実施例における装置構成は、実施例1と同様に、トグル式プレス機構101、高圧二酸化炭素供給ユニット102、成形加工用プレスユニット103からなる。
【0051】
実施例1にかかる成形装置に加えて、下プレス金型7の排気孔38,39に通じる二酸化炭素排気用エアーオペレートバルブ34、エアーオペレートバルブ35、真空ポンプ36が付加されている。
【0052】
また、プレス上昇用の二酸化炭素を密閉シリンダー8に供給するため逆止弁57、エアーオペレートバルブ58および排気用エアーオペレートバルブ16につながる排出孔56を設けた。
【0053】
本実施例においては、高圧タンク6内における内容量V2は30ml、二酸化炭素を導入する際におけるキャビティ内容積V1は15ml、V2/V1=2.0とした。高圧タンク6内の内容積V2は内部に金属部材を挿入して減少させた。
【0054】
本実施例においては、母材シート1に外径φ130mm、板厚0.1mmのポリカーボネートからなるフィルムを用い、金型の転写面に円盤状の情報記憶媒体である光ディスクのランドグルーブを有するパターンが形成されたNiスタンパ3を用いた。このスタンパ3には、グルーブ幅(WG)0.17μm、ランド幅(WL)0.12μm、トラックピッチ(W)0.32μmのパターンが形成されているものを用いた。ディスク認識情報やアドレス情報等を、溝の蛇行やプリピットなどによって予め記録しておくことも可能である。
【0055】
図12に示すように、スタンパ3の上鏡面プレート26への保持は、内径保持部材40および外径保持部材44で行った。両保持部材40,44には、スタンパ3と母材シート1の隙間に滞留した二酸化炭素を排気するための排気孔401、441を設けた。
【0056】
母材シート1は、金型から取り外し可能なフィルムプレート37上にクランプ部材45で固定する。予め、フィルムプレート37は母材シート1を固定した状態にて、外段取りにて120℃に加熱温調しておいた。フィルムプレート37の下面の中央には下受板55上に設けられたテーパー凹み40に嵌り合う突起41が形成されている。
【0057】
次に、図13に示されるように、加熱温調したフィルムプレート37を下受板55にセットする。セットされた状態において、突起41はテーパー凹み40に嵌合している。母材シート1は、後述するように、転写成形中において内外径ともに切断するので、その際に母材シート1をフィルムプレート37に固定するための内周吸引溝49、外周吸引溝46が円周状に掘られている。両吸引溝46,49は貫通孔47で連結されており、さらに排気孔39に連結している。フィルムプレート37の下面中央部であって、突起41を設けた部分にはバネ42およびチェックボール43が内蔵されている。
【0058】
これにより、成形後に大気開放した後に、内周吸引溝49および外周吸引溝46の間を該バネ42のバネ力よりも強い吸引力にて母材シート1を真空保持した後であれば、フィルムプレート37を下受板55より取り外しても、該チェックボール43がバネ42のバネ力によりフィルムプレート37に押し付けられる。
【0059】
よって、両吸引溝46,49の内部は負圧に維持され母材シート1がフィルムプレート37より剥離しない。これにより、薄いフィルム状の母材シート1を高強度のフィルムプレート37と一体にして容易に取り扱うことが可能になる。例えばフィルムプレート37に保持した状態で母材シート1上に有機色素材料等をスピンコートすることができる。
【0060】
実施例2においては、実施例1と同様にして金型の温調及び二酸化炭素の加圧温調を実行した。また、成形は以下のように行った。
【0061】
まず、図11に示される上蓋20を下プレスユニット21に挿入し、回転させてシール状態にした。そして、図11に示すトグル式プレス機構101を下プレス金型7下面の押し当て面29に接触させて、キャビティ間距離を0.2mmに設定した。
【0062】
次に、エアーオペレートバルブ15、58を開き、金型キャビティ2内及び密閉シリンダー8内に実施例1と同様な圧力の二酸化炭素を導入した。二酸化炭素を導入する間も、トグル式プレス機構101を下プレス金型7下面の押し当て面29に接触させて、キャビティ間距離を0.2mmに維持した。
【0063】
二酸化炭素を導入している間における、金型キャビティ2内の構造を示す模式図を図14に示す。そして、図14における外周部A部および内周部B部それぞれの拡大図を図15、図16に示す。
【0064】
本実施例においては、母材シート1の両面から二酸化炭素を浸透させた。両面から浸透させることによって両面転写できることは勿論、後収縮等による反りが低減できる。図14,15に示す通り、スタンパ面側における母材シート1への二酸化炭素の導入および排出は、第1に上鏡面プレート26の外周に設けられたスリット51およびそれに通じる外径保持部材44内部の排気孔441から行われる。さらに、図15に示す外径保持部材44に設けられた外径切断歯52と母材シート1の隙間からも同様に二酸化炭素の導入及び排出が可能である。
【0065】
そして、反スタンパ面側における母材シート1への二酸化炭素の導入は、図14,15中の導入孔48から行われる。この導入孔48は、フィルムプレート37の上面と側面とを貫通する貫通孔である。母材シート1が載置されるフィルムプレート37の上面においては、導入孔48の孔径よりも広めの空洞部が形成され、この空洞部と導入孔48が連結している。母材シート1近傍からの二酸化炭素の排出は、さらに内周吸引溝49および外周吸引溝46からも行われる。
【0066】
本発明においては、10MPa以下の低圧力P1の二酸化炭素雰囲気にて母材シートと該金型転写面を接触させることが望ましいが、本実施例においては、金型キャビティ2内の二酸化炭素圧力P1が5MPaに達したときにキャビティ間距離をゼロとなるように、プレス力を上昇させて母材シート1をスタンパ3に押し付けた。
【0067】
また本発明においては、母材シートと金型の凹凸面が接触した後、二酸化炭素の圧力P2をP1以上の高圧にすることが望ましいが、加圧するタイミングや方法は任意であり、本実施例においては、母材シート1とスタンパ3の接触後、二酸化炭素の圧力を所定圧力である16MPaまで、約6秒かけて上昇させた。
【0068】
本発明においては、母材シートに接する二酸化炭素を高圧にした後、さらに母材シートと金型の押し付け力を上昇させることが転写性を向上させる上で望ましい。本実施例におけるプロセスのタイムチャートを図20に示す。図20において横軸は時間、縦軸はキャビティ内の圧、プレス力又はキャビティ間距離を示す。図20に示されるように、母材シート1とスタンパ3を密着させながら、上記のように二酸化炭素の圧力を上昇させるとともに、任意のタイミングにてプレス力を上昇させた。
【0069】
本実施例においては、母材シート1とスタンパ3を密着させながら、同時に図17に示すように、内径切断歯53と外径切断歯52により、母材シート1の内外径を切断した。図16に示されるように、内径切断歯53は、内径保持部材40においてスタンパ3を保持する面とは反対側の面から母材シート1側に鋭角に突出することによって形成されている。図15に示されるように、外径切断歯52は、外径保持部材44においてスタンパ3を保持する面とは反対側の面から母材シート1側に鋭角に突出することによって形成されている。これらの内径切断歯53と外径切断歯54は、光ディスクの内周と外周に対応する位置に円弧状に連続形成されている。
【0070】
そして、最大プレス力を約9秒間保持した。二酸化炭素は高圧状態にて一定時間保持した後、図11に示すエアーオペレートバルブ16、34を開き二酸化炭素を排出した。
【0071】
金型キャビティ2内を大気開放した後、エアーオペレートバルブ34を閉鎖し、さらにエアーオペレートバルブ35を開き真空ポンプ36により内周吸引溝49および外周吸引溝46から吸引することによって母材シート1をフィルムプレート37に対して密着固定した。さらにプレス圧を解除し、キャビティを開いた後、上蓋20を実施例1と同様に取り外した。本実施例における成形フィルムのパターンを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscopy)を用いて観察したところ良好に転写されていた。
【0072】
本発明における成形方法の転写メカニズムとして2種類考えられる。この点について図17のA部を拡大したイメージ図である図18、19を用いて説明する。
【0073】
まず、転写初期には図18に示されるように、スタンパ3の表面における微細なスパイラルのランドグルーブ形状を通じ、高圧の二酸化炭素がフィルム表面に浸透し軟化していくことが考えられる。そして最表面のみガラス転移温度が低下した状態で、図19に示すように転写が完了する。
【0074】
一方では、低圧の二酸化炭素が滞留した状態にて、スタンパと母材シートを接触させることにより、微細なスタンパパターン上に圧縮されて高圧となった二酸化炭素が滞留し可塑化が促進することも考えられる。
【0075】
[比較例1]
【0076】
実施例2と同様な装置にて、初期のキャビティ内における母材シート1とスタンパ3間の距離を10mmとした以外は実施例1と同様な条件で成形した。本比較例における成形品は一部発泡部や、パターンが転写しないところが発生した。これは、母材シート1とスタンパ3間に滞留した二酸化炭素量が多くなり、プレス時に余剰分が排出できなかったと考えられる。この問題は上記距離が5mm以内でないと解消できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施例1に係る成形装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例1に係る成形装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】本実施例1に係る成形装置の一部を示す上面図である。
【図4】本実施例1に係る成形装置の一部を示す上面図である。
【図5】本実施例1に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図6】本実施例1に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図7】本実施例1に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図8】本実施例1に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図9】本実施例1に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図10】本実施例1における、ガス圧、プレス力およびキャビティ間距離のプロセスタイムチャートである。
【図11】本実施例2に係る成形装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】本実施例2に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図13】本実施例2に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図14】本実施例2に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図15】本実施例2に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図16】本実施例2に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図17】本実施例2に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図18】本実施例2に係る成形方法のメカニズムを説明するための図である。
【図19】本実施例2に係る成形方法のメカニズムを説明するための図である。
【図20】本実施例2における、ガス圧、プレス力およびキャビティ間距離のプロセスタイムチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1 母材シート、2 金型キャビティ、3 スタンパ、4 リング、
5 内壁シール面、6 高圧タンク、7 下プレス金型、8 密閉シリンダー、
9 ポンプ、10 減圧弁、11 圧力計、12 減圧弁、13 圧力計、
14 ストップバルブ、15,16 エアーオペレートバルブ、
17 逆止弁、18 二酸化炭素ボンベ、19 ギア、
20 上蓋、21 下プレスユニット、22 吸引孔、
23 真空吸引溝、24,27 温調水回路、25 下鏡面プレート、
26 上鏡面プレート、28 取手、31 ガイドポスト、
33 上蓋、34 エアーオペレートバルブ、35 エアーオペレートバルブ、
36 真空ポンプ、37 フィルムプレート、38 排気孔、
39 排気孔、40 内径保持部材、41 突起、42 バネ、
43 チェックボール、44 外径保持部材、45 クランプ部材、
46 外周吸引溝、47 貫通孔、48 導入孔、49 内周吸引溝、
51 スリット、52 外径切断歯、53 内径切断歯、
54 スタンパ保持部材、55 下受板、56 排出孔、
57 逆止弁、58 エアーオペレートバルブ、101 トグル式プレス機構、
102 高圧二酸化炭素供給ユニット、103 プレスユニット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる成形品の製造方法に関するものであり、より詳しくはフィルムや板状等、粗形状を有する熱可塑性樹脂1次成形品を2次加工する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂からなる成形品の製造方法としては、大量生産に適した射出成形方法が知られる。しかしながら、射出成形方法は、加熱溶融した樹脂材料を金型のキャビティに射出充填する際、表面に固化層が形成されるため、金型表面に対する転写精度や成形品の薄肉化に限界がある。
【0003】
こうした欠点を改善するために、予め射出成形等により成形したプラスチック母材を金型キャビティ内に挿入し、この母材を、母材のガラス転移温度以上に加熱溶融させて樹脂内圧を上昇させた後、緩やかに冷却する成形方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法においては、圧力および温度に分布や偏りが生じないように、母材のガラス転移温度以下まで緩やかに冷却することが不可欠であるため、成形サイクルが長期化するという欠点があった。
【0004】
かかる問題を回避する方法として、例えば、棒状、板状の発熱体や超音波による加熱手段を転写部材となる金型に設けることで、母材の被転写面のみを局所的に加熱溶融させて転写させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、高周波誘導加熱により、母材の転写表面のみを溶融させる方法も提案されている(例えば、非特許文献1参照)。これらの方法によれば、樹脂表面を軟化させるために樹脂を直接もしくは間接的に加熱しているので、熱源もしくは溶融樹脂の熱が金型に伝達し、金型およびプレス装置の温度が少しずつ上昇する。そのため成形品の表面全体における温度の均一性および連続生産時におけるヒートサイクルの安定性を正確に制御することが困難であった。また、大面積を有する成形品の場合、金型の熱容量が増大するため、上記問題が顕著であった。つまり、射出成形に匹敵する量産性を得るには限界が生じていた。
【0005】
一方、近年、超臨界二酸化炭素や二酸化炭素を成形加工に応用する試みが盛んであるが、古くから二酸化炭素を熱可塑性樹脂に吸収させると可塑剤として働き、樹脂のガラス転移温度を低下させることが非特許文献2等で知られている。また、これを射出成形に応用した技術が特許文献3に開示されている。特許文献3には、加圧した二酸化炭素(CO2)で充満させた金型内に、二酸化炭素を溶解させた溶融樹脂を充填することで流動樹脂のフローフロントに二酸化炭素が含浸して金型接触面における固化層の成長を抑制する技術が開示されているが、これは溶融状態の樹脂に適用されたものであり、本発明の場合、固化した樹脂に適用するものであるため技術分野が異なる。また、特許文献3に記載された方法では、二酸化炭素の樹脂に対する接触時間は射出時間によって制限されるので、最表面における二酸化炭素の浸透量を制御することが困難である。また、二酸化炭素を超臨界状態(7MPa)以上の高圧状態にすると、射出の障害となるため、金型内に導入される二酸化炭素は低圧とせざるを得ない。そのため、短時間に多量の二酸化炭素を浸透させることはより困難であった。
【0006】
二酸化炭素を利用して成形品の転写性を向上させる他の手法が特許文献4に開示されている。特許文献4によれば、射出成形後に金型を一旦開き、金型と樹脂表面のスキン層の間に隙間を形成し、該隙間に高圧の二酸化炭素を導入することでスキン層を軟化させ、さらに樹脂圧を高めて金型表面を転写している。特許文献4も特許文献3と同様に溶融樹脂に適用したものであり、成形品全体がガラス転移温度以下になっているわけではない。そのため、スキン層表面から浸透した二酸化炭素は溶融状態の樹脂内部まで容易に浸透可能である。従って、樹脂と金型との隙間に滞留した二酸化炭素が溶け残るという、固化した樹脂に特有の問題が生じない。
【0007】
本発明者らの鋭意検討によれば、ガラス転移温度以下の固化した熱可塑性樹脂からなる母材に超臨界状態における高圧の二酸化炭素を短時間で浸透させ、表面を軟化させることは容易であった。しかしながら、高圧の二酸化炭素を充満した雰囲気にて、単にプレス等により母材を金型面に押し付けたのでは、成形品の表面に膨れや局所発泡、転写むらの問題が生じてしまい。金型表面の微細形状を転写することは困難であった。この問題は、母材の厚みが1mm以下、特に0.5mm以下と薄い場合に顕著であった。この要因として、プレス時に母材と金型の隙間に溶け残った二酸化炭素が圧縮されて高圧状態にて挟まれ、プレス圧により樹脂内部に浸透させることができなかったためと考えられる。母材が薄いほどに、二酸化炭素の浸透できる絶対量が減少し、溶け残った二酸化炭素を母材と金型の隙間から排気することが困難となったため、問題が顕著になると思われる。
【0008】
二酸化炭素の圧力を低くすれば、密度が低下しガス体となるため、上記問題は回避できたが、二酸化炭素の浸透時間が長くなり、連続量産化が困難であった。さらにプレス圧等の母材と樹脂との押し付け圧を非常に高くすることによって、ある程度問題は回避できるかエネルギー効率が悪いという課題が発生した。
【特許文献1】特開平4−163119号公報
【特許文献2】特開2002−36355号公報
【特許文献3】特開2001−62862号公報
【特許文献4】特開2002−52583号公報
【非特許文献1】プラスチック工業技術研究会主催技術講演会「最新記録媒体の動向と材料・成形加工技術」予稿集P3-30〜31,2004
【非特許文献2】J.APPl.PolyM.Sci."Vol.30,2633(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたもので、第1の目的は、量産性の高い成形品の製造方法を提供することにある。第2の目的は、良好な転写性を得ることができる成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の例示的側面としての成形方法は、転写面を有する金型より形成されるキャビティ内に熱可塑性樹脂からなる母材を挿入し、該金型の転写面を該母材の表面に押し付けることにより金型転写面の形状を母材に転写させる熱可塑性樹脂の成形方法において、該母材は少なくとも表面近傍に二酸化炭素を含有し、母材のガラス転移温度よりも低温度の金型転写面を押し付けることを特徴とする。二酸化炭素が転写表面を軟化させることで、母材全体の温度を上昇させることなく温度制御を一定にて成形できるので量産性が向上する。
【0011】
本発明において、二酸化炭素を母材表面に浸透させるタイミングは任意であり、成形サイクル内で行ってもよいし、予め前処理にて浸透させておいてもよい。
【0012】
前記転写面の金型表面温度が、母材の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも5℃から100℃低い温度の範囲であることが望ましい。樹脂の温度がこの範囲よりも高いと母材の機械的な変形等が抑制困難となり、低いと二酸化炭素が浸透しにくくなり、量産性が低下する。より望ましくは、母材のガラス転移温度よりも10℃から50℃低い範囲に金型表面温度を制御することである。なお、本発明において熱可塑性樹脂のガラス転移温度とは、軟化材や可塑剤、ガス体等を含まないバルク材料の物性と定義する。
【0013】
本発明において、前記母材の厚みは1mm以下の熱可塑性樹脂フィルムであってもよい。さらに射出成形等では成形困難な0.5mm厚み以下であることが望ましい。より望ましくは0.2mm以下の厚みのフィルムである。さらに、例えば導光板等においては15インチサイズ以上の大面積であってもよい。射出成形で達成困難な薄肉かつ大面積の精密成形の本発明の特徴を生かすことができる。
【0014】
本発明の他の側面としての成形方法は、前記熱可塑性樹脂からなる母材が挿入された金型キャビティ内に、温度50℃〜250℃、圧力1〜25MPaの範囲に予め調整された二酸化炭素を導入することで、母材の少なくとも転写側表面に二酸化炭素を浸透させることを特徴とする。温度および圧力は母材に対する可塑剤としての観点から考慮することは勿論であるが、下記観点からも最適化されることが望ましい。すなわち、金型に導入する際の金型温度変化である。金型の表面温度が大きく影響を受けないように、金型との二酸化炭素の温度差は小さい方が望ましく、温度差が100℃以下の範囲であることが望ましい。
【0015】
前記二酸化炭素を予め加圧温調させる容器の内容積V1と前記熱可塑性樹脂からなる母材が挿入された二酸化炭素が充填される金型キャビティの内容積V2と比であるV1/V2は0.5以上20.0以下の範囲であることが望ましい。この範囲より小さいと金型導入時に、断熱膨張により二酸化炭素の温度が急激に低下し、さらには液化してしまう恐れがある。それにより金型や母材の熱量を奪う問題が発生する。また、この範囲よりも大きい場合、特に、下記のような条件時に問題が発生する。つまり、予め加圧温調された二酸化炭素の温度がキャビティ内の表面温度よりも低い場合、キャビティ内に導入された二酸化炭素が急激に高温となることで圧力上昇し、温度制御した高圧タンクの内部を含めた圧力制御が困難になる。
【0016】
また、前記母材を真空吸着した状態で内径及び/又は外径を切断するようにしてもよい。特に、光ディスクなどの円盤状の情報記録媒体を製造する上で、この方法は好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、量産性の高い成形品の製造方法及び良好な転写性を得ることができる成形品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施例1.
本発明の実施例1に関する成形品の製造方法は、特に光学レンズ、プラスチックミラー、導光板やマイクロレンズアレイ等の光学部品、光ディスク等の情報メディア等の製造に用いられる。
【0019】
以下、本実施例1にかかる成形装置及び成形方法について図1〜図10を用いて説明する。なお、熱可塑性樹脂からなる母材が挿入される金型内空間以外に余剰な二酸化炭素が滞留するスペースが存在するが、それらを包括してキャビティと呼ぶ。
【0020】
図1〜図4は、本実施例1にかかる成形装置の概略構成を示すブロック図である。当該成形装置は、図示しない電動サーボモーターで駆動し位置制御が可能なトグル式プレス機構101、高圧二酸化炭素供給ユニット102、成形加工用プレスユニット103から構成される。図1は装置全体の断面構造模式図、図2はプレスユニット103の要部断面構造図であり、図3,4はプレスユニット103上面からの模式図である。
【0021】
本発明において、母材表面もしくは全体に二酸化炭素を浸透させる方法は任意である。例えば、金型とは別の容器内を予め母材のガラス転移温度よりも低い温度に温度制御するとともに高圧力の二酸化炭素を充満させておき、その容器内に母材を長時間滞留させる方法を適用できる。
【0022】
また、金型キャビティ内にて、連続式に短時間で母材に二酸化炭素を接触させながら浸透させる方法も適用できる。本実施例では、後者の方法を採用し、温度および圧力が制御された高圧タンク6内に保持された二酸化炭素を密閉した状態にてプレスユニット103内の金型キャビティ2に浸透させた。
【0023】
母材シート1に金型表面形状を転写させる成形期間中は、金型キャビティ2の内部は、二酸化炭素をシール(封止)することが望ましい。金型キャビティ2内に充満した高圧二酸化炭素をシールする方法は任意であるが、プレス機構等による駆動源により、該二酸化炭素の圧力よりも高い反力を与えてシールするよりは、機械的に固定しシールした方が消費エネルギーを低減できるので望ましい。
【0024】
本実施例1において、プレスユニット103は、超臨界染色の高圧容器等で採用されている下記公知の方法にて25MPaまでの高圧二酸化炭素がシールできる構造を採用し、以下のようにシールを行った。
【0025】
まず、微細構造の転写面を有するスタンパ3を保持した上蓋20を、図3に示されるように、下プレスユニット21内にギア19が嵌まり合うように挿入し、ついで図4に示すように上蓋を45度回転させた。上蓋20には、放射状に外側に突出したギア19が90°間隔で4箇所に設けられている。下プレスユニット21は、中央に当該上蓋20の外形状に対応した窪みを有し、さらに、その窪みの内側面には、上蓋20のギア19が嵌め込まれる窪みが設けられている。下プレスユニット21は、上蓋20のギア19における最外周の直径以上の直径よりなる円柱状にくり貫かれた空洞部が形成されており、この空洞部において上蓋20のギア19が回転し、所定の位置に位置決めされる。
【0026】
図2に示されるように、上蓋20の外周に設けられた窪みにはOリング4が挿入されている。このOリング4と下プレスユニット21内の内壁シール面5を密着させることにより、シール性が維持される。上蓋20の上下移動は、図示しないエアーシリンダーに接続されたピストンの駆動により行われる。上蓋20は、操作者が取手28を把持し回転させることによって回転させることができる。
【0027】
高圧二酸化炭素供給ユニット102は、図1に示されるように、二酸化炭素ボンベ18、ポンプ9、減圧弁10、圧力計11、減圧弁12、圧力計13、ストップバルブ14、エアーオペレートバルブ15,16、逆止弁17、高圧タンク6を備えている。このうち、エアーオペレートバルブ15,16は、電磁弁のオンオフにより自動制御することができる。エアーオペレートバルブ15はプレスユニット103への導入用、エアーオペレートバルブ16は排出用である。エアーオペレートバルブ15,16は、トグル式プレス機構101と連動して自動運転可能である。
【0028】
二酸化炭素ボンベ18より供給された二酸化炭素は、ポンプ9により昇圧され、減圧弁10によって圧力計11の表示がPになるように圧力調整される。圧力調整された二酸化炭素は、高圧タンク6内で任意の温度および圧力Pに保持される。本発明において、金型キャビティ内に導入させる二酸化炭素の温度および圧力Pは、それぞれ50℃〜250℃、1〜25MPaの範囲に調整されることが望ましいが、本実施例においては、温度を150℃とし、圧力Pを15MPaとした。
【0029】
本発明において、二酸化炭素の圧力や温度を予め調整する高圧タンクの容量V2と二酸化炭素が導入される金型キャビティ内の内容積V1の体積比である、V2/V1は0.5以上20.0以下であることが望ましい。本実施例においては、高圧タンク6内における内容量V2は2.0リットル、二酸化炭素を導入する際における金型キャビティ2の内容積V1は1.5リットルとし、V2/V1=1.3とした。
【0030】
下プレスユニット21の中央部に設けられた空洞部には、下プレス金型7が上下方向に可動な状態で保持されている。この下プレス金型7の下面と下プレスユニット21の間には、密閉シリンダー8が形成されている。下プレスユニット21内における密閉シリンダー8内には、減圧弁12により圧力計13の表示が6MPaに調整された二酸化炭素がストップバルブ14の開放により常時充填されている。このため、下プレス金型7は、金型キャビティ2内に二酸化炭素が充填されていない場合、密閉シリンダー8によって上方に押し上げられ、常に上昇した位置にある。
【0031】
そして金型キャビティ2内に8MPaの二酸化炭素が充填されると、密閉シリンダー8による下プレス金型7の上昇圧力と下プレス金型7上面全体にかかる二酸化炭素による下降圧力が平衡になるように設定した。このような機構により、トグル式プレス機構101によるプレス力は、キャビティに充填された二酸化炭素が高圧になっても過剰な駆動力は必要としない。下プレス金型7は下プレスユニット21に対し、ガイドポスト31にてガイドされている。
【0032】
本発明において、母材となる成形品の形態は任意である。また、母材の成形加工方法は、公知の射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、トランスファー成形、押し出し成形、キャスティング等を選択できる。本実施例においては、厚さ0.4mm、500×800mm□の押し出し成形によって得られたフィルムを用いた。
【0033】
本発明において、母材となる熱可塑性樹脂の種類は、任意であり、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、脂環式オレフィン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリメチルペンテン、非晶質ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、液晶ポリマー、スチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリアセタール、ポリアミド系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニルスルフォン、ポリエーテルスルフォン、芳香族ポリエステル、生分解性プラスチック等を選択できる。また、これらの材料の各種共重合体、ブレンド材料でもよく、フィラー等の各種添加材を含有していてもよい。本実施例においてはガラス転移温度145℃のポリカーボネートを用いた。
【0034】
本発明における、金型キャビティ内における母材の保持方法は任意であるが、本実施例においては、次のように行った。まず、図2に示されるように、母材シート1を下プレス金型7上の下鏡面プレート25に設置した。ここで、下鏡面プレート25の面上には、矩形状に真空吸引溝23が設けられている。真空吸引溝23は吸引孔22の一端に接続されている。吸引孔22の他端側には、プレスユニット103の外に設置された真空ポンプ(不図示)が設けられている。母材シート1は、当該真空吸引溝23上に設置されている。そのため、真空ポンプにより吸引すると、吸引孔22及び真空吸引溝23を介して、母材シート1が下鏡面プレート25の平坦な上面に吸引される。このようにして、母材シート1は、下鏡面プレート25の上面に対して密着固定される。
【0035】
本発明において母材シート1に転写させる金型表面の形態は任意であるが、本実施例においては、転写パターンとして厚さ0.3mmのNiスタンパ3上に設けられたφ100μm、高さ50μmのレンズが密集したマイクロレンズパターンを形成した。Niスタンパ3をスタンパ保持部材54によって上鏡面プレート26に固定した。スタンパと鏡面裏面に滞留したガスをスタンパ外周部より逃がすために、本実施例の金型はスタンパ保持部材54内の排気孔541(図7参照)につながる図示しない排気経路が形成されている。
【0036】
本発明において母材や転写金型の温度制御方法や設定温度は任意であるが、本実施例においては、図2に示されるように上下の温調水回路24、27内に、125℃に調整された水媒体を温調機により加圧状態にて循環させることにより、下鏡面プレート25およびスタンパ3の表面温度が120℃になるように制御した。この120℃の温度は、母材のガラス転移温度から25℃差し引いた温度である。なお、上蓋20の全体、および下プレスユニット21内部におけるプレスピストンを構成する下プレス金型7の外側は図示しないヒーターにより120℃に温度制御されている。
【0037】
本発明においては、高圧の二酸化炭素がキャビティ内にて導入、排出されることにより、キャビティ内の気体が圧縮、開放されることにより温度変化する場合がある。そのため、金型全体を温度制御し、二酸化炭素の流動に起因した金型の温度変化を抑制することが望ましい。
【0038】
次に、本実施例における成形プロセスについて説明する。まず、母材シート1を上述の方法にて下鏡面プレート25に密着固定した。その後、図5に示されるように、ギア19が下プレスユニット21の空洞部に嵌まり合うように上蓋20を挿入した。図6のようにギア19を下プレスユニット21の空洞部に対して完全に挿入できたところで、上蓋20を45度回転させた。上蓋20を回転させ始めるとシールが効くので、それと同時に、図1に示すエアーオペレートバルブ15の開放した。これにより高圧タンク6内の二酸化炭素は、金型キャビティ2内に導入された。
【0039】
図6のA部拡大図を図7、さらにスタンパ3の界面における拡大図を図8に示す。二酸化炭素が導入されることにより金型キャビティ2内の圧力が8MPa以上に達すると、下プレス金型7は上面の二酸化炭素による圧力に押圧されて後退、即ち下降する。本実施例では、図1に示すトグル式プレス機構101の上面を下プレス金型7の押し当て面29に接触させて、キャビティ間距離を制御した。本実施例においては、母材シート1とスタンパ3が全面にて密着した状態におけるキャビティ間距離をゼロとした。
【0040】
本発明においては、可塑性樹脂からなる母材と金型転写面との隙間を5mm以内に保持した状態にて、二酸化炭素を金型キャビティ内に導入することが望ましい。母材とスタンパ間に、高圧で高密度の二酸化炭素が滞留した場合、該隙間が広いと、余剰な二酸化炭素を母材とスタンパの転写面から速やかに排出することが困難となる。特に母材の面積が広く厚みが薄い場合には、余剰な二酸化炭素を母材とスタンパの転写面から速やかに排出することが困難である。ここで、母材とスタンパを接触させるプレススピードを遅くすることで、かかる課題をある程度回避することも可能であるが、サイクルアップにつながる。
【0041】
本実施例においては、下プレス金型7が後退した瞬間、トグル式プレス機構101を位置制御し、キャビティ間距離(即ち、スタンパ3と母材シート1間の距離)が0.2mmになるように金型キャビティ2内のガス圧にあわせてプレス力を上昇させた。キャビティ2内部のガス圧力は図示しない金型内ガス圧センサーにてモニターした。
【0042】
本実施例における、ガス圧、プレス力およびキャビティ間距離のプロセスタイムチャートを図10に示す。図10において横軸は時間、縦軸はキャビティ内の圧、プレス力又はキャビティ間距離を示す。図10に示されるように、キャビティ内圧力を高め始めてから3秒後にプレス力を高めている。プレス力が高まるにつれて、ガス圧により下プレス金型7が瞬間的に後退するが、それに伴いプレス力が上昇してキャビティ間距離を一定に保持する。本実施例では、約6秒から約16秒に亘ってキャビティ間距離を0.2mmに保持した。
【0043】
次に、キャビティ間距離0.2mmを約10秒間保持した後に、プレス力を上昇させ、図9に示されるように転写を行った。20秒間プレスしている途中にて、エアーオペレートバルブ16を開放し、二酸化炭素をキャビティ2内より放出した。その後、プレス力を開放し、母材シート1とスタンパ3を剥離させた。さらに上蓋20を外した後、成形品を取り出した。
【0044】
本実施例にかかる成形方法によって製造した成形フィルムは、厚みの変化が1μm以内であり、全面に亘ってスタンパ3のマイクロレンズパターンが良好に転写されているものであった。
【0045】
上述のように、熱可塑性樹脂からなる母材と金型転写面との隙間を5mm以内に維持した状態にて二酸化炭素を金型キャビティ内に導入することが望ましい。より望ましくは1mm以下である。さらに望ましくは100μm以下である。これ以上に母材と金型転写面の隙間が広いと、母材に溶けない余剰な二酸化炭素の量が多くなり、プレス等で転写面を押し付けた際に、低圧のプレス力では排気しにくくなる。また隙間の狭いほうが導入する二酸化炭素の絶対量を減らすことができ経済的である。
【0046】
また、熱可塑性樹脂からなる母材に前記金型転写面を押し付けた際に、少なくとも転写完了までには母材に一部金型が接触しない面があり、該表面には二酸化炭素が接触しているほうが望ましい。プレス等による押し付け時に、余剰な二酸化炭素が該非接触部より効率よく排気できる。
【0047】
また、前記金型の転写表面が微細な凹凸を有するものであり、10MPa以下、より望ましくは7MPa以下となる低圧力P1の二酸化炭素雰囲気にて母材と該金型転写面を接触させることが好ましい。二酸化炭素が低圧状態において母材と金型の微細凹凸を密着させることにより、余剰となる二酸化炭素は低密度なガスに近い状態であるため、母材と金型の接触面より外部に排気しやすくなる。また二酸化炭素が圧縮されながら金型表面の凹凸に高圧状態で樹脂と密着および滞留することになり、母材表面の可塑化が促進すると考えられる。該金型転写面と母材とが接触する際における二酸化炭素の圧力P1は1〜10MPa、より望ましくは1〜7MPaの範囲であることが望ましい。
【0048】
また、二酸化炭素と金型の凹凸を接触させた後、さらに母材に接する二酸化炭素の圧力P2をP1以上の高圧にすることが望ましい。P2は7MPa以上の超臨界状態にすることが望ましく、より望ましくは10MPa以上である。浸透性高く可塑剤効果の大きい超臨界状態の二酸化炭素が、母材表面と金型の密着面に存在する微細凹凸を通じて、母材表面全体より浸透して転写性を向上させることが期待できる。また、母材に接する二酸化炭素を高圧にした後、さらにプレス等における母材と金型の押し付け力を上昇させることで、より転写性を向上させることができる。その後、二酸化炭素を金型内より排気することで、母材を冷却固化させることができる。
【0049】
二酸化炭素にはアルコールが含有させていてもよい。エタノール等のアルコールを含有させることで母材である樹脂への可塑剤効果が飛躍的に向上する。エタノールの混合濃度は1〜10%程度が望ましい。
【0050】
実施例2.
実施例2に係る成形装置及び成形方法について図11〜図20を用いて説明する。図11は、本実施例に係る成形装置の概略構成を示すブロック図であり、図12はその要部断面構造図である。本実施例における装置構成は、実施例1と同様に、トグル式プレス機構101、高圧二酸化炭素供給ユニット102、成形加工用プレスユニット103からなる。
【0051】
実施例1にかかる成形装置に加えて、下プレス金型7の排気孔38,39に通じる二酸化炭素排気用エアーオペレートバルブ34、エアーオペレートバルブ35、真空ポンプ36が付加されている。
【0052】
また、プレス上昇用の二酸化炭素を密閉シリンダー8に供給するため逆止弁57、エアーオペレートバルブ58および排気用エアーオペレートバルブ16につながる排出孔56を設けた。
【0053】
本実施例においては、高圧タンク6内における内容量V2は30ml、二酸化炭素を導入する際におけるキャビティ内容積V1は15ml、V2/V1=2.0とした。高圧タンク6内の内容積V2は内部に金属部材を挿入して減少させた。
【0054】
本実施例においては、母材シート1に外径φ130mm、板厚0.1mmのポリカーボネートからなるフィルムを用い、金型の転写面に円盤状の情報記憶媒体である光ディスクのランドグルーブを有するパターンが形成されたNiスタンパ3を用いた。このスタンパ3には、グルーブ幅(WG)0.17μm、ランド幅(WL)0.12μm、トラックピッチ(W)0.32μmのパターンが形成されているものを用いた。ディスク認識情報やアドレス情報等を、溝の蛇行やプリピットなどによって予め記録しておくことも可能である。
【0055】
図12に示すように、スタンパ3の上鏡面プレート26への保持は、内径保持部材40および外径保持部材44で行った。両保持部材40,44には、スタンパ3と母材シート1の隙間に滞留した二酸化炭素を排気するための排気孔401、441を設けた。
【0056】
母材シート1は、金型から取り外し可能なフィルムプレート37上にクランプ部材45で固定する。予め、フィルムプレート37は母材シート1を固定した状態にて、外段取りにて120℃に加熱温調しておいた。フィルムプレート37の下面の中央には下受板55上に設けられたテーパー凹み40に嵌り合う突起41が形成されている。
【0057】
次に、図13に示されるように、加熱温調したフィルムプレート37を下受板55にセットする。セットされた状態において、突起41はテーパー凹み40に嵌合している。母材シート1は、後述するように、転写成形中において内外径ともに切断するので、その際に母材シート1をフィルムプレート37に固定するための内周吸引溝49、外周吸引溝46が円周状に掘られている。両吸引溝46,49は貫通孔47で連結されており、さらに排気孔39に連結している。フィルムプレート37の下面中央部であって、突起41を設けた部分にはバネ42およびチェックボール43が内蔵されている。
【0058】
これにより、成形後に大気開放した後に、内周吸引溝49および外周吸引溝46の間を該バネ42のバネ力よりも強い吸引力にて母材シート1を真空保持した後であれば、フィルムプレート37を下受板55より取り外しても、該チェックボール43がバネ42のバネ力によりフィルムプレート37に押し付けられる。
【0059】
よって、両吸引溝46,49の内部は負圧に維持され母材シート1がフィルムプレート37より剥離しない。これにより、薄いフィルム状の母材シート1を高強度のフィルムプレート37と一体にして容易に取り扱うことが可能になる。例えばフィルムプレート37に保持した状態で母材シート1上に有機色素材料等をスピンコートすることができる。
【0060】
実施例2においては、実施例1と同様にして金型の温調及び二酸化炭素の加圧温調を実行した。また、成形は以下のように行った。
【0061】
まず、図11に示される上蓋20を下プレスユニット21に挿入し、回転させてシール状態にした。そして、図11に示すトグル式プレス機構101を下プレス金型7下面の押し当て面29に接触させて、キャビティ間距離を0.2mmに設定した。
【0062】
次に、エアーオペレートバルブ15、58を開き、金型キャビティ2内及び密閉シリンダー8内に実施例1と同様な圧力の二酸化炭素を導入した。二酸化炭素を導入する間も、トグル式プレス機構101を下プレス金型7下面の押し当て面29に接触させて、キャビティ間距離を0.2mmに維持した。
【0063】
二酸化炭素を導入している間における、金型キャビティ2内の構造を示す模式図を図14に示す。そして、図14における外周部A部および内周部B部それぞれの拡大図を図15、図16に示す。
【0064】
本実施例においては、母材シート1の両面から二酸化炭素を浸透させた。両面から浸透させることによって両面転写できることは勿論、後収縮等による反りが低減できる。図14,15に示す通り、スタンパ面側における母材シート1への二酸化炭素の導入および排出は、第1に上鏡面プレート26の外周に設けられたスリット51およびそれに通じる外径保持部材44内部の排気孔441から行われる。さらに、図15に示す外径保持部材44に設けられた外径切断歯52と母材シート1の隙間からも同様に二酸化炭素の導入及び排出が可能である。
【0065】
そして、反スタンパ面側における母材シート1への二酸化炭素の導入は、図14,15中の導入孔48から行われる。この導入孔48は、フィルムプレート37の上面と側面とを貫通する貫通孔である。母材シート1が載置されるフィルムプレート37の上面においては、導入孔48の孔径よりも広めの空洞部が形成され、この空洞部と導入孔48が連結している。母材シート1近傍からの二酸化炭素の排出は、さらに内周吸引溝49および外周吸引溝46からも行われる。
【0066】
本発明においては、10MPa以下の低圧力P1の二酸化炭素雰囲気にて母材シートと該金型転写面を接触させることが望ましいが、本実施例においては、金型キャビティ2内の二酸化炭素圧力P1が5MPaに達したときにキャビティ間距離をゼロとなるように、プレス力を上昇させて母材シート1をスタンパ3に押し付けた。
【0067】
また本発明においては、母材シートと金型の凹凸面が接触した後、二酸化炭素の圧力P2をP1以上の高圧にすることが望ましいが、加圧するタイミングや方法は任意であり、本実施例においては、母材シート1とスタンパ3の接触後、二酸化炭素の圧力を所定圧力である16MPaまで、約6秒かけて上昇させた。
【0068】
本発明においては、母材シートに接する二酸化炭素を高圧にした後、さらに母材シートと金型の押し付け力を上昇させることが転写性を向上させる上で望ましい。本実施例におけるプロセスのタイムチャートを図20に示す。図20において横軸は時間、縦軸はキャビティ内の圧、プレス力又はキャビティ間距離を示す。図20に示されるように、母材シート1とスタンパ3を密着させながら、上記のように二酸化炭素の圧力を上昇させるとともに、任意のタイミングにてプレス力を上昇させた。
【0069】
本実施例においては、母材シート1とスタンパ3を密着させながら、同時に図17に示すように、内径切断歯53と外径切断歯52により、母材シート1の内外径を切断した。図16に示されるように、内径切断歯53は、内径保持部材40においてスタンパ3を保持する面とは反対側の面から母材シート1側に鋭角に突出することによって形成されている。図15に示されるように、外径切断歯52は、外径保持部材44においてスタンパ3を保持する面とは反対側の面から母材シート1側に鋭角に突出することによって形成されている。これらの内径切断歯53と外径切断歯54は、光ディスクの内周と外周に対応する位置に円弧状に連続形成されている。
【0070】
そして、最大プレス力を約9秒間保持した。二酸化炭素は高圧状態にて一定時間保持した後、図11に示すエアーオペレートバルブ16、34を開き二酸化炭素を排出した。
【0071】
金型キャビティ2内を大気開放した後、エアーオペレートバルブ34を閉鎖し、さらにエアーオペレートバルブ35を開き真空ポンプ36により内周吸引溝49および外周吸引溝46から吸引することによって母材シート1をフィルムプレート37に対して密着固定した。さらにプレス圧を解除し、キャビティを開いた後、上蓋20を実施例1と同様に取り外した。本実施例における成形フィルムのパターンを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscopy)を用いて観察したところ良好に転写されていた。
【0072】
本発明における成形方法の転写メカニズムとして2種類考えられる。この点について図17のA部を拡大したイメージ図である図18、19を用いて説明する。
【0073】
まず、転写初期には図18に示されるように、スタンパ3の表面における微細なスパイラルのランドグルーブ形状を通じ、高圧の二酸化炭素がフィルム表面に浸透し軟化していくことが考えられる。そして最表面のみガラス転移温度が低下した状態で、図19に示すように転写が完了する。
【0074】
一方では、低圧の二酸化炭素が滞留した状態にて、スタンパと母材シートを接触させることにより、微細なスタンパパターン上に圧縮されて高圧となった二酸化炭素が滞留し可塑化が促進することも考えられる。
【0075】
[比較例1]
【0076】
実施例2と同様な装置にて、初期のキャビティ内における母材シート1とスタンパ3間の距離を10mmとした以外は実施例1と同様な条件で成形した。本比較例における成形品は一部発泡部や、パターンが転写しないところが発生した。これは、母材シート1とスタンパ3間に滞留した二酸化炭素量が多くなり、プレス時に余剰分が排出できなかったと考えられる。この問題は上記距離が5mm以内でないと解消できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施例1に係る成形装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例1に係る成形装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】本実施例1に係る成形装置の一部を示す上面図である。
【図4】本実施例1に係る成形装置の一部を示す上面図である。
【図5】本実施例1に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図6】本実施例1に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図7】本実施例1に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図8】本実施例1に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図9】本実施例1に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図10】本実施例1における、ガス圧、プレス力およびキャビティ間距離のプロセスタイムチャートである。
【図11】本実施例2に係る成形装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】本実施例2に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図13】本実施例2に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図14】本実施例2に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図15】本実施例2に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図16】本実施例2に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図17】本実施例2に係る成形装置の一部を拡大した構成図である。
【図18】本実施例2に係る成形方法のメカニズムを説明するための図である。
【図19】本実施例2に係る成形方法のメカニズムを説明するための図である。
【図20】本実施例2における、ガス圧、プレス力およびキャビティ間距離のプロセスタイムチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1 母材シート、2 金型キャビティ、3 スタンパ、4 リング、
5 内壁シール面、6 高圧タンク、7 下プレス金型、8 密閉シリンダー、
9 ポンプ、10 減圧弁、11 圧力計、12 減圧弁、13 圧力計、
14 ストップバルブ、15,16 エアーオペレートバルブ、
17 逆止弁、18 二酸化炭素ボンベ、19 ギア、
20 上蓋、21 下プレスユニット、22 吸引孔、
23 真空吸引溝、24,27 温調水回路、25 下鏡面プレート、
26 上鏡面プレート、28 取手、31 ガイドポスト、
33 上蓋、34 エアーオペレートバルブ、35 エアーオペレートバルブ、
36 真空ポンプ、37 フィルムプレート、38 排気孔、
39 排気孔、40 内径保持部材、41 突起、42 バネ、
43 チェックボール、44 外径保持部材、45 クランプ部材、
46 外周吸引溝、47 貫通孔、48 導入孔、49 内周吸引溝、
51 スリット、52 外径切断歯、53 内径切断歯、
54 スタンパ保持部材、55 下受板、56 排出孔、
57 逆止弁、58 エアーオペレートバルブ、101 トグル式プレス機構、
102 高圧二酸化炭素供給ユニット、103 プレスユニット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写面を有する金型より形成されるキャビティ内に熱可塑性樹脂からなる母材を挿入し、当該金型の転写面を前記母材の表面に押し付けることにより金型転写面の形状を前記母材に転写させる成形品の製造方法であって、
前記母材に対して、少なくとも表面近傍に二酸化炭素を含有させるステップと、
前記母材のガラス転移温度よりも低温度の金型転写面を前記母材に対して押し付けるステップとを備えた成形品の製造方法。
【請求項2】
前記二酸化炭素を含有させるステップは、前記キャビティ内に配置した母材に対して二酸化炭素を含有させることを特徴とする請求項1記載の成形品の製造方法。
【請求項3】
前記二酸化炭素を含有させるステップは、
前記二酸化炭素を温度50℃〜250℃、圧力1〜25MPaの範囲に調整するステップと、
調整された二酸化炭素を、前記母材が挿入されたキャビティ内に導入するステップとを有することを特徴とする請求項2記載の成形品の製造方法。
【請求項4】
前記二酸化炭素に対して温度調整及び加圧を実行する容器の内容積V1と前記母材が挿入される金型キャビティの内容積V2との比であるV1/V2は0.5以上20.0以下の範囲であることを特徴とする請求項2又は3記載の成形品の製造方法。
【請求項5】
前記転写面における金型の表面温度が、前記母材の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも5℃から100℃低い温度の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項6】
前記母材が厚み1mm以下の熱可塑性樹脂フィルムからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項7】
前記二酸化炭素にはアルコールが含有されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項8】
前記母材を真空吸着した状態で内径及び/又は外径を切断するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項9】
前記成形品は、円盤状の情報記録媒体であることを特徴とする請求項8記載の成形品の製造方法。
【請求項1】
転写面を有する金型より形成されるキャビティ内に熱可塑性樹脂からなる母材を挿入し、当該金型の転写面を前記母材の表面に押し付けることにより金型転写面の形状を前記母材に転写させる成形品の製造方法であって、
前記母材に対して、少なくとも表面近傍に二酸化炭素を含有させるステップと、
前記母材のガラス転移温度よりも低温度の金型転写面を前記母材に対して押し付けるステップとを備えた成形品の製造方法。
【請求項2】
前記二酸化炭素を含有させるステップは、前記キャビティ内に配置した母材に対して二酸化炭素を含有させることを特徴とする請求項1記載の成形品の製造方法。
【請求項3】
前記二酸化炭素を含有させるステップは、
前記二酸化炭素を温度50℃〜250℃、圧力1〜25MPaの範囲に調整するステップと、
調整された二酸化炭素を、前記母材が挿入されたキャビティ内に導入するステップとを有することを特徴とする請求項2記載の成形品の製造方法。
【請求項4】
前記二酸化炭素に対して温度調整及び加圧を実行する容器の内容積V1と前記母材が挿入される金型キャビティの内容積V2との比であるV1/V2は0.5以上20.0以下の範囲であることを特徴とする請求項2又は3記載の成形品の製造方法。
【請求項5】
前記転写面における金型の表面温度が、前記母材の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも5℃から100℃低い温度の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項6】
前記母材が厚み1mm以下の熱可塑性樹脂フィルムからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項7】
前記二酸化炭素にはアルコールが含有されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項8】
前記母材を真空吸着した状態で内径及び/又は外径を切断するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項9】
前記成形品は、円盤状の情報記録媒体であることを特徴とする請求項8記載の成形品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−175756(P2006−175756A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372243(P2004−372243)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
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