説明

成形品加飾用粘着シート

【課題】加熱前には適度な粘弾性を有し、弱い圧力で被着体に圧着させることができ、また、短時間の加熱により成形された被加飾品に対する粘着性を高めることが可能な成形品加飾用粘着シートを提供すること。
【解決手段】本発明の成形品加飾用粘着シートは、成形された被加飾品の加飾するために用いられ、前記粘着シートは、粘着剤層と、当該粘着剤層の少なくとも一方の面に積層された剥離可能な保護フィルム層とを有し、前記粘着剤層は、メタクリル酸エステル重合体ブロック(M)とアクリル酸エステル重合体ブロック(A)とからなるM−A−M型トリブロック共重合体を含有する粘着剤組成物からなり、前記粘着剤組成物における前記M−A−M型トリブロック共重合体の占める割合が60質量%以上であり、前記M−A−M型トリブロック共重合体における前記メタクリル酸エステル重合体ブロック(M)の占める割合が15〜25質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形された被加飾品を加飾するために用いる成形品加飾用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形された被加飾品を加飾する方法として、例えば、塗装、クリアコート剤等の塗布、装飾フィルムの貼付等が行われてきた。しかしながら、塗装やクリアコート剤等の塗布による加飾方法では、溶剤を使用するため環境を汚染する恐れがあり、また、装飾フィルムの貼付による加飾方法では、被加飾品が複雑な形状を有する場合、加飾を部分的にしか行えないという問題があった。
【0003】
これまで、溶剤を使用せず、且つ貼付によらない加飾方法として、真空成形等による一体成形法が種々、提案されており、自動車内装品や家電製品等に用いられている。例えば、特許文献1には、熱可塑性の合成樹脂シートを加熱し、真空吸引により被加飾品に貼付する一体成形法が提案されている。また、特許文献2には、ホットメルト粘着剤層を設けてなる装飾フィルムを加熱し、射出成形金型内に装着させ、この射出成形金型内に被加飾品を押しつけることにより、装飾フィルムと被加飾品とを接合させる一体成形法が提案されている。
【0004】
しかしながら、上記のいずれの一体成形法も、熱可塑性樹脂を接着剤として使用するため、接着剤が可塑状態となり、接着強度が低下する高温環境下で使用される製品が被加飾品の場合には適用することができなかった。また、熱可塑性樹脂は接着強度が低いため、被加飾品に対する密着性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2566744号公報
【特許文献2】特許2001−150534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記問題を有する熱可塑性樹脂の代わりに熱硬化性樹脂を接着剤として使用した場合には、高温下で長時間かけて硬化させる必要があるため、耐熱性が低い樹脂製品に接着させると、該樹脂製品が熱で変形するという問題がある。また、電離放射線硬化型樹脂を使用した場合には、貼付後に電離放射線を照射して硬化させる必要があるため、製品の材質を電離放射線が透過可能なものにしなければならない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、加熱前には適度な粘弾性を有し、弱い圧力で被着体に圧着させることができ、また、短時間の加熱により成形された被加飾品に対する粘着性及び密着性を高めることが可能な成形品加飾用粘着シート、該粘着シートを用いた加飾シート、及び該加飾シートを用いた加飾形成品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねたところ、ある特定の樹脂を含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートによれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 成形された被加飾品の加飾するために用いられる成形品加飾用粘着シートであって、上記粘着シートは、粘着剤層と、当該粘着剤層の少なくとも一方の面に積層された剥離可能な保護フィルム層とを有し、上記粘着剤層は、メタクリル酸エステル重合体ブロック(M)とアクリル酸エステル重合体ブロック(A)とからなるM−A−M型トリブロック共重合体を含有する粘着剤組成物からなり、上記粘着剤組成物における上記M−A−M型トリブロック共重合体の占める割合が60質量%以上であり、上記M−A−M型トリブロック共重合体における上記メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合が15〜25質量%であることを特徴とする成形品加飾用粘着シート。
【0010】
(2) 上記粘着剤組成物は、粘着付与剤を更に含有する(1)に記載の成形品加飾用粘着シート。
【0011】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の粘着シートの粘着剤層上に、絵柄層と、100〜140℃における貯蔵弾性率が1×10〜1×10Paである基材とが順に積層されている加飾シート。
【0012】
(4) 上記(3)に記載の加飾シートを、成形された被加飾品に貼付した後、100〜140℃にて10〜120秒間真空成形を行う工程を含む、加飾形成品の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の成形品加飾用粘着シートによれば、粘着剤層が加熱前に適度な粘弾性を有するので、成形された被加飾品に対して弱い圧力で圧着させることができ、且つ、高温下で長時間反応させることなく、上記被加飾品に対して適度な粘着性と良好な密着性とを示すので、被加飾品の材質を問わず適用することができる。また、成形性に優れ、特に真空形成による一体成形法において好適に使用することができる。更に、耐久性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0015】
[成形品加飾用粘着シート]
本発明の成形品加飾用粘着シート(以下、粘着シートという。)は、成形された被加飾品の加飾するために用いられる粘着シートである。そして、該粘着シートは、粘着剤層と、当該粘着剤層の少なくとも一方の面に積層された剥離可能な保護フィルム層とを有し、上記粘着剤層は、メタクリル酸エステル重合体ブロック(M)とアクリル酸エステル重合体ブロック(A)とからなるM−A−M型トリブロック共重合体を含有する粘着剤組成物からなり、上記粘着剤組成物における上記M−A−M型トリブロック共重合体の占める割合が60質量%以上であり、上記M−A−M型トリブロック共重合体における上記メタクリル酸エステル重合体ブロック(M)の占める割合が15〜25質量%であることを特徴とする。
【0016】
成形された被加飾品の加飾するために用いられる粘着シートには、成形性、成形された被加飾品への密着性、及び耐熱性が求められる。また、被加飾品が耐熱性の低い樹脂製品である場合を考慮すると、加熱前には弱い圧力で被加飾品に圧着可能で、且つ、短時間の加熱により、被加飾品に対する粘着力が高まる粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートが好ましい。本発明の粘着シートは、上記粘着剤組成物からなる粘着剤層を有するので良好な耐熱性を示し、熱可塑性樹脂を接着剤として使用したシートのように、高温環境下で接着剤が可塑状態となり、接着強度が低下することがない。また、本発明の粘着シートは、熱可塑性樹脂を接着剤として使用したシートとは異なり、被加飾品に対する密着性が良好である。これは、粘着剤が加熱により溶融し、被加飾品表面への濡れ性が向上するためと考えられる。更に、熱硬化性樹脂を接着剤として使用したシートのように、高温下に長時間さらさなくても、粘着力を高めることができるので、被加飾品が耐熱性の低い樹脂製品であっても、加飾の際に熱変形させる恐れがない。そして、電離放射線硬化型樹脂を接着剤として使用したシートのように、貼付後に電離放射線を照射して硬化させる必要がないので、被加飾品の材質を電離放射線が透過可能なものに限定されない。
【0017】
<粘着剤層>
本発明の粘着シートの粘着剤層について、具体的に説明する。本発明の粘着シートを構成する粘着剤層は、メタクリル酸エステル重合体ブロック(M)とアクリル酸エステル重合体ブロック(A)とからなるM−A−M型トリブロック共重合体を含有する粘着剤組成物からなる。該粘着剤組成物におけるM−A−M型トリブロック共重合体の占める割合は、60質量%以上であり、好ましくは70質量%以上である。上記範囲であれば、後述するメタクリル酸エステル重合体ブロック(M)の占める割合を更に調整することで、成形性、成形された被加飾品への密着性、及び耐熱性に優れる粘着シートを得ることができる。また、加熱前は成形された被加飾品に対して弱い圧力で圧着することが可能で、且つ、短時間の加熱で粘着力を高めることが可能な粘着剤層とすることができる。粘着剤組成物におけるM−A−M型トリブロック共重合体の占める割合が60質量%に満たないと、被着体への密着性が低下する。
【0018】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(M)を構成する単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジジル等が挙げられる。また、アクリル酸エステル重合体ブロック(A)を構成する単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジジル等が挙げられる。
【0019】
なお、本発明の粘着シートの粘着剤層に含まれるM−A−M型トリブロック共重合体としては、初期粘着性、加熱後の粘着向上性、生産コスト等の観点から、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)と、アクリル酸ブチル重合体ブロック(A)とからなるM−A−M型トリブロック共重合体が好ましい。メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)とアクリル酸ブチル重合体ブロック(A)とからなるM−A−M型トリブロック共重合体の市販品としては、例えば、LA2140e(クラレ社製)、LA410L(クラレ社製)、LA2250(クラレ社製)、LA4285(クラレ社製)等を好適に用いることができ、これらの1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
本発明の粘着シートでは、M−A−M型トリブロック共重合体におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(M)の占める割合が15〜25質量%であり、好ましくは20〜25質量%である。上記範囲であれば、成形性、成形された被加飾品への密着性、及び耐熱性に優れる粘着シートを得ることができる。また、加熱前は成形された被加飾品に対して弱い圧力で圧着することが可能で、且つ、短時間の加熱で粘着力を高めることが可能な粘着剤層とすることができる。M−A−M型トリブロック共重合体におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(M)の占める割合が、上記範囲外であると、被着体への密着性が低下する。また、所望の耐久性が得られない場合がある。
【0021】
なお、M−A−M型トリブロック共重合体として、異なる2種以上のM−A−M型トリブロック共重合体の混合物を含有する場合、上記M−A−M型トリブロック共重合体におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(M)の占める割合は、M−A−M型トリブロック共重合体の混合物全体に占めるメタクリル酸エステル重合体ブロック(M)の占める割合を意味する。例えば、メタクリル酸エステル重合体ブロック(M)の占める割合が15質量%に満たないM−A−M型トリブロック共重合体と、25質量%を超えるM−A−M型トリブロック共重合体とを混合して、M−A−M型トリブロック共重合体の混合物全体として、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合が15〜25質量%であればよい。
【0022】
本発明の粘着シートでは、上記M−A−M型トリブロック共重合体の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されるものではないが、粘着性の観点から、5,000〜200,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜100,000の範囲内であることがより好ましい。なお、上記M−A−M型トリブロック共重合体の質量平均分子量(Mw)が5,000に満たないと、凝集力が劣る場合があり、200,000を超えると、十分な初期粘着力が得られない場合がある。ここで、上記質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の値である。
【0023】
本発明の粘着シートでは、粘着剤組成物中に粘着付与剤を含有してもよい。粘着付与剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、天燃樹脂や合成樹脂からなる常温で粘着性を有する樹脂が挙げられる。具体的には、例えば、天然樹脂ロジン、重合ロジン、水素添加ロジン、グリセルネステルロジン、ペンタエリスリトール等のロジン系樹脂、テルペン、芳香族変性テルペン、テルペン−フェノール、水素添加テルペン等のテルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、水添脂環式系石油樹脂等の石油樹脂等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、これらの中でも、ロジン系樹脂がアクリル系樹脂との相溶性が良好であるという点において好ましい。
【0024】
上記粘着付与剤の市販品としては、例えば、パインクリスタル KE−100(荒川化学工業社製)、パインクリスタル KE−311(荒川化学工業社製)、パインクリスタル KE−359(荒川化学工業社製)、HARIESTER C(ハリマ化成社製)等を好適に使用することができる。
【0025】
本発明の粘着シートでは、粘着剤組成物における上記粘着付与剤の含有量は、上記M−A−M型トリブロック共重合体100質量部に対して、10〜200質量部であることが好ましく、20〜100質量部であることがより好ましい。なお、2種以上のM−A−M型トリブロック共重合体を併用する場合には、共重合体全体に対する含有量を意味する。上記範囲の粘着付与剤を含有する場合には、短時間の加熱で粘着力をより高めることが可能となる。粘着剤組成物における上記粘着付与剤の含有量が、200質量部を超えると、性能に対してコスト高となる場合がある。
【0026】
本発明の粘着シートでは、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、粘着剤組成物に各種添加剤を配合してもよい。例えば、被加飾品に対する粘着性や密着性を向上させるためにカップリング剤を配合してもよいし、初期の粘着力を調整するために架橋剤を配合してもよい。更に、酸化防止剤、顔料、染料、帯電防止剤等の各種添加剤を配合することもできる。
【0027】
本発明の粘着シートでは、厚さ25μmの粘着剤層を形成した場合、該粘接着剤層のABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)板に対する180°引き剥がし粘着力(JIS Z0237準拠)が、加熱処理する前では0.5N/10mm以上であり、且つ、120℃にて2分間加熱処理した後では8N/10mm以上であることが好ましい。加熱処理する前の粘着力が0.5N/10mm未満であると、被加飾品によっては初期粘着性が劣る場合がある。また、加熱処理した後の粘着力が8N/10mm未満であると、経時で被加飾品の端部から剥離する可能性がある。
【0028】
上記粘着剤層の厚みは、特に限定されるものではなく、通常、5〜500μmであり、好ましくは10〜50μmである。厚みが5μm未満であると、十分な粘着強度が得られない場合があり、500μmを超えると、性能に対してコスト高となったり、また、加工条件によっては、十分な粘着性を発現するための熱量や圧力が不足したりする可能性がある。なお、真空形成による一体成形法に適用する場合には、100μmを超えると十分な接着性が得られない可能性がある。
【0029】
<保護フィルム層>
本発明の粘着シートは、上記粘着剤層と、該粘着剤層の少なくとも一方の面に積層された剥離可能な保護フィルム層とを有し、例えば、保護フィルム層/粘着剤層/保護フィルム層のような両面粘着テープの構成であってもよい。本発明の粘着シートでは、保護フィルム層は、剥離性を有する剥離部材からなり、粘着剤層の表面を保護する機能を有し、使用に際して剥離除去されるものである。剥離部材は、必要な強度や柔軟性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルム又はそれらの発泡フィルムに、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したものを挙げることができる。保護フィルム層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは25〜75μmである。
【0030】
[粘着シートの製造方法]
本発明の粘着シートの製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、上記M−A−M型トリブロック共重合体と、必要に応じて、上記粘着付与剤と、上記各種添加剤とを有機溶剤に溶解・分散させることにより、粘着剤層形成用塗工液を得る。次いで、該塗工液を、剥離可能な保護フィルムの剥離処理面上にアプリケータ等により全面塗工し、粘着剤層を形成する。その後、該粘着剤層を乾燥させ、剥離可能な保護フィルムをラミネートすることにより、本発明の粘着シートを形成することができる。有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、これらの混合溶液等を好適に使用することができる。上記塗工液を、剥離可能な保護フィルム上に塗工する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。印刷による形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等が挙げられる。コーティングによる方法としては、例えば、ロールコート、リバースコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、グラビアコート等が挙げられる。
【0031】
本発明の粘着シートの厚みは、特に限定されるものではないが、5〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがより好ましい。上記範囲であれば、適度な柔軟性を有するので、取り扱いが容易となる。
【0032】
本発明の粘着シートは、被加飾品の材質を問わず適用することができる。また、本発明の粘着シートを構成する粘着剤層は、成形された被加飾品に対して良好な粘着性及び密着性を示し、耐久性にも優れるので、例えば、自動車、鉄道等の車両、航空機、及び船舶の内装材や外装材、窓枠や扉枠等の建具、壁、床、天井等の建築物の内装材、テレビや空調機等の家電製品の筐体や容器、パソコン等のOA機器の筐体等にも適用することができる。更に、本発明の粘着シートは、粘着剤層を構成する粘接着組成物の加熱前は、被加飾品に弱い圧力で圧着させることができ、その後の低温且つ短時間での硬化により、良好な粘着性と密着性とを実現させることができるので、特に、真空形成による一体成形法に好適に使用することができる。
【0033】
[加飾シート]
本発明の粘着シートは、加飾シートに利用することもできる。例えば、本発明の加飾シートは、本発明の粘着シートの粘着剤層上に、絵柄層と、100〜140℃における貯蔵弾性率が1×10〜1×10Paである基材とが順に積層されていることが好ましい。本発明の加飾シートは、立体形状の表面に対する追随性が良好であり、成形された被加飾品を加飾するために用いる加飾シートとして好適である。
【0034】
<絵柄層>
本発明の加飾シートは、該加飾シートに対して意匠性を付与するための絵柄層を有する。絵柄層は、通常、基材上に印刷インキで模様や文字がグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷法により形成される。絵柄層の厚みは、特に限定されるものではなく、意匠性等の観点により適宜、選択するとよい。
【0035】
<基材>
本発明の加飾シートでは、基材は、100〜140℃における貯蔵弾性率が1×10〜1×10Paであることが好ましい。貯蔵弾性率が上記範囲内であれば、曲面追従性が良好な加飾シートを得ることができる。なお、1×10Pa未満では、成形後のフィルム収縮等により外観不良となる可能性がある。なお、上記貯蔵弾性率は、樹脂の変形のしやすさ等を示すものであり、JIS K7244−1及びJIS K7244−4に準拠した方法にて測定することができる。具体的には、市販の粘弾性測定装置を用いて測定することができる。例えば、レオメトリックス社製の固体粘弾性アナライザーRSA−IIを用い、幅5mmのサンプルを引張りモードにて、つかみ間隔10mm、測定周波数1Hz、測定温度−50℃〜150℃、昇温速度5℃/分の条件下にて測定する。
【0036】
基材としては、一般的に合成樹脂フィルムが用いられる。合成樹脂フィルムの材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、単層であってもよいし、2層以上の積層体であってもよい。機械的強度の観点から、1軸延伸や2軸延伸した延伸フィルムが好ましい。なお、本発明では、上記合成樹脂の中でも、耐熱性、寸法安定性、剛性、柔軟性、積層適性、価格等の観点から、ポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、及びウレタン系樹脂が特に好ましい。
【0037】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等が挙げられるが、この中でも、取り扱い易さ、低価格等の観点から、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0038】
基材の厚みは、特に限定されるものではなく、通常、12〜250μm程度であるが、好ましくは25〜250μmである。上記範囲であれば、機械的強度が十分であり、反り、弛み、破断等を生じ難く、作業性が良好であり、また、連続帯状で供給して加工することも可能である。なお、上記の厚さを超えると、過剰性能でコスト高になる場合がある。
【0039】
基材の形成方法は、特に限定されず、例えば、溶液流延法、溶融押出法、カレンダー法等の従来公知の製膜方法を用いることができる。また、上記方法によりあらかじめフィルム状に製膜された市販の基材を使用してもよい。
【0040】
基材には、濡れ性の向上のため、その片面又は両面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理等の公知の易接着処理を施してもよい。
【0041】
[加飾シートの製造方法]
本発明の加飾シートの製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、上記基材上に、上記絵柄層、上記粘着剤層、及び上記保護フィルム層を、公知の印刷、コーティング、又は各層を別途作製した後、ラミネートにより積層すればよい。
【0042】
[加飾形成品の製造方法]
本発明の加飾シートは、成形された被加飾品に対して弱い圧力で圧着させることができ、且つ、高温下で長時間反応させることなく、上記被加飾品に対して適度な粘着性と良好な密着性とを示し、成形性も良いので、真空吸引によって加飾シートを成形品に貼着させる真空形成による一体成形法に好適である。本発明の加飾シートによれば、該加飾シートを成形された被加飾品に貼付した後、100〜140℃にて10〜120秒間加熱しながら真空形成することで、加飾形成品を得ることができる。被加飾品の耐熱性や加飾シートのフィルム材質により異なるが、具体的には、本発明の加飾シートを、保護フィルムを剥離した状態で装置内にセットする。装置内を減圧し、加飾シートを成形可能な温度(100〜140℃にて10〜120秒間)まで加熱する。その後、大気開放することで常圧に戻し、加飾シートを密着させて被加飾品を加飾する。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0044】
<実施例1>
粘着剤(商品名:LA2140e、M−A−M型トリブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:75,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:23質量%、クラレ社製)100質量部と、希釈溶剤(商品名:KT11、MEK:トルエン=1:1、DICグラフィックス社製)100質量部と、を混合し、ディスパーにて回転数1000rpmで30分間攪拌した後、室温に放置し、脱泡させて粘着剤層形成用塗工液を調製した。
【0045】
そして、剥離可能な保護フィルム層である剥離シート(商品名:SP−PET−03、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム、膜厚:38μm、東セロ社製)の剥離処理面上に、乾燥後の膜厚が25μmとなるように上記粘着剤層形成用塗工液をアプリケータにより全面塗工した後、乾燥オーブンにより100℃で2分間乾燥させた。次いで、剥離可能な保護フィルム層である剥離シート(商品名:SP−PET−01、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム、膜厚:38μm、東セロ社製)とラミネートし、実施例1の粘着シートを得た。
【0046】
<実施例2>
粘着剤(商品名:LA410L、M−A−M型トリブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:150,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:23質量%、クラレ社製)100質量部と、希釈溶剤(商品名:KT11、MEK:トルエン=1:1、DICグラフィックス社製)100質量部と、を混合し、ディスパーにて回転数1000rpmで30分間攪拌した後、室温に放置し、脱泡させて粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて実施例2の粘着シートを得た。
【0047】
<実施例3>
粘着剤(商品名:LA410L、M−A−M型トリブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:150,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:23質量%、クラレ社製)97.5質量部と、粘着剤(商品名:LA4285、M−A−M型トリブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:75,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:50質量%、クラレ社製)2.5質量部と、希釈溶剤(商品名:KT11、MEK:トルエン=1:1、DICグラフィックス社製)100質量部と、を混合し、ディスパーにて回転数1000rpmで30分間攪拌した後、室温に放置し、脱泡させて粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて実施例3の粘着シートを得た。
【0048】
<実施例4>
粘着剤(商品名:LA410L、M−A−M型トリブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:150,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:23質量%、クラレ社製)95質量部と、粘着剤(商品名:LA4285、M−A−M型トリブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:75,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:50質量%、クラレ社製)5質量部と、希釈溶剤(商品名:KT11、MEK:トルエン=1:1、DICグラフィックス社製)100質量部と、を混合し、ディスパーにて回転数1000rpmで30分間攪拌した後、室温に放置し、脱泡させて粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて実施例4の粘着シートを得た。
【0049】
<実施例5>
粘着剤(商品名:LA410L、M−A−M型トリブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:150,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:23質量%、クラレ社製)67質量部と、粘着付与剤(商品名:パインクリスタル KE−100、ロジンエステル系、固形分:100%、荒川化学工業社製)33質量部と、希釈溶剤(商品名:KT11、MEK:トルエン=1:1、DICグラフィックス社製)100質量部と、を混合し、ディスパーにて回転数1000rpmで30分間攪拌した後、室温に放置し、脱泡させて粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて実施例5の粘着シートを得た。
【0050】
<比較例1>
粘着剤(商品名:LA2140e、M−A−M型トリブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:75,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:23質量%、クラレ社製)50質量部と、粘着剤(商品名:LA1114、M−A型ジブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:75,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:7質量%、クラレ社製)50質量部と、希釈溶剤(商品名:KT11、MEK:トルエン=1:1、DICグラフィックス社製)100質量部と、を混合し、ディスパーにて回転数1000rpmで30分間攪拌した後、室温に放置し、脱泡させて粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて比較例1の粘着シートを得た。
【0051】
<比較例2>
粘着剤(商品名:LA410L、M−A−M型トリブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:150,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:23質量%、クラレ社製)90質量部と、粘着剤(商品名:LA4285、M−A−M型トリブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:75,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:50質量%、クラレ社製)10質量部と、希釈溶剤(商品名:KT11、MEK:トルエン=1:1、DICグラフィックス社製)100質量部と、を混合し、ディスパーにて回転数1000rpmで30分間攪拌した後、室温に放置し、脱泡させて粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて比較例2の粘着シートを得た。
【0052】
<比較例3>
粘着剤(商品名:LA410L、M−A−M型トリブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:150,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:23質量%、クラレ社製)75質量部と、粘着剤(商品名:LA4285、M−A−M型トリブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:75,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:50質量%、クラレ社製)25質量部と、希釈溶剤(商品名:KT11、MEK:トルエン=1:1、DICグラフィックス社製)100質量部と、を混合し、ディスパーにて回転数1000rpmで30分間攪拌した後、室温に放置し、脱泡させて粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて比較例3の粘着シートを得た。
【0053】
<比較例4>
粘着剤(商品名:LA410L、M−A−M型トリブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:150,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:23質量%、クラレ社製)57質量部と、粘着剤(商品名:LA1114、M−A型ジブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:75,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:7質量%、クラレ社製)28.6質量部と、粘着付与剤(商品名:パインクリスタル KE−100、ロジンエステル系、固形分:100%、荒川化学工業社製)14.4質量部と、希釈溶剤(商品名:KT11、MEK:トルエン=1:1、DICグラフィックス社製)100質量部と、を混合し、ディスパーにて回転数1000rpmで30分間攪拌した後、室温に放置し、脱泡させて粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて比較例4の粘着シートを得た。
【0054】
<比較例5>
粘着剤(商品名:LA2250、M−A−M型トリブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:75,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:32質量%、クラレ社製)100質量部と、希釈溶剤(商品名:KT11、MEK:トルエン=1:1、DICグラフィックス社製)100質量部と、を混合し、ディスパーにて回転数1000rpmで30分間攪拌した後、室温に放置し、脱泡させて粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて比較例5の粘着シートを得た。
【0055】
<比較例6>
粘着剤(商品名:LA4285、M−A−M型トリブロック共重合体、固形分:100%、質量平均分子量:75,000、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)の占める割合:50質量%、クラレ社製)100質量部と、希釈溶剤(商品名:KT11、MEK:トルエン=1:1、DICグラフィックス社製)100質量部と、を混合し、ディスパーにて回転数1000rpmで30分間攪拌した後、室温に放置し、脱泡させて粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて比較例6の粘着シートを得た。
【0056】
<比較例7>
攪拌器、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、ブチルアクリレート95質量部と、アクリル酸4質量部と、メチルメタアクリレート1質量部、酢酸エチル180質量部とを仕込み、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.4質量部を加え、窒素ガス気流中にて70℃で8時間重合反応させた。反応終了後、酢酸エチルにて希釈し、固形分を25質量%に調整した重合体(質量平均分子量:600,000)溶液1を得た。重合体溶液1と同じ反応装置に、トルエン100質量部を仕込み、窒素ガス気流中にて90℃に昇温した。次いで、メチルメタクリレート99質量部と、ジメチルアミノエチルメタクリレート1質量部と、アゾビスイソブチロニトリル1質量部とを滴下ロートより、2時間かけて滴下し、更にアゾビスイソブチロニトリル1質量部を滴下して還流させ、5時間重合した。反応終了後、トルエンにて希釈し、固形分を45質量%に調整した重合体(質量平均分子量:20,000)溶液2を得た。そして、100質量部の重合体溶液1に対して、10質量部の重合体溶液2を加え、アクリル系重合組成物を得た。
【0057】
上記にて得られたアクリル系重合組成物100質量部と、硬化剤(商品名:E−5XM、エポキシ系、固形分:5%、綜研化学社製)0.5質量部と、希釈溶剤(商品名:KT11、MEK:トルエン=1:1、DICグラフィックス社製)25質量部と、を混合し、ディスパーにて回転数1000rpmで30分間攪拌した後、室温に放置し、脱泡させて粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて比較例7の粘着シートを得た。
【0058】
<比較例8>
スチレン系熱可塑性エラストマー(商品名:セプトン2063、SISブロック共重合体の水素添加物、固形分:100%、クラレ社製)100質量部と、粘着付与剤(商品名:パインクリスタル KE−100、ロジンエステル系、固形分:100%、荒川化学工業社製)100質量部と、可塑剤(商品名:GI−3000、水添ジエン系オリゴマー、日本曹達社製)75質量部と、希釈溶剤(商品名:KT11、MEK:トルエン=1:1、DICグラフィックス社製)425質量部と、を混合し、ディスパーにて回転数1000rpmで30分間攪拌した後、室温に放置し、脱泡させて粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて比較例8の粘着シートを得た。
【0059】
[粘着性評価]
上記実施例1〜5及び比較例1〜8で得られた粘着シートの剥離シート(SP−PET−01)を剥がし、基材シート(商品名:E5100、片面にコロナ処理が施されてなるPETフィルム、膜厚:38μm、東洋紡績社製)のコロナ処理面に貼付させた後、25mm×150mmに切断し、試験片を作成した。この試験片を、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)板に2kgのローラーを用いてラミネートした。そして、引張り試験機(製品名:RTF−1150H,A&D社製)を用いて、加熱処理前のABS板面に対する粘着力を測定(JIS Z0237準拠、速度:300mm/min、剥離距離:150mm、剥離角:180°)した。また、上記試験片を、ABS板に2kgのローラーを用いてラミネートし、乾燥オーブンにて120℃で2分間加熱した後、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下に24時間放置した。そして、引張り試験機(製品名:RTF−1150H、A&D社製)を用いて、加熱処理後のABS板面に対する粘着力を測定(JIS Z0237準拠、速度:300mm/min、剥離距離:150mm、剥離角:180°)し、粘着性を評価した。なお、評価基準は次の通りである。○:加熱処理前の粘着力が0.5N/10mm以上であり、且つ、加熱処理後の粘着力が8N/10mm以上、×:加熱処理前の粘着力が0.5N/10mm未満、及び/又は、加熱処理後の粘着力が8N/10mm未満。
【0060】
[成形性及び密着性評価]
基材シート(商品名:ソフトシャインA1597、ポリエステルフィルム、膜厚:50μm、100〜140℃における貯蔵弾性率(E’):1.8×10Pa、東洋紡績社製)上に、アクリル系印刷インキを用い、木目模様をグラビア印刷(塗工量8g/m)し、絵柄層を形成することにより、加飾シートを得た。そして、上記実施例1〜5及び比較例1〜8で得られた粘着シートの剥離シート(SP−PET−01)を剥がし、上記加飾シートの絵柄層面に貼付させ、ラミネートした後、200mm×200mmに切断し、試験片を作成した。この試験片の剥離シート(SP−PET−03)を剥がし、真空成型機(布施真空社製)を用い、真空成形(100〜140℃、2分間)を行い、ABS成型品に貼付させた。そして、真空成形後の粘着シートとABS成型品との接着の状態を観察し、成形性を評価した。なお、評価基準は次の通りである。○:シートの浮きやシワがなく、真空成形可能、×:シートの浮きやシワがあり、真空成形不可能。
【0061】
次いで、ABS成型品に貼付した上記加飾シートの基材シートの表面に、下地まで達する一辺が5mmである正方形の格子柄を作製した後に、2kgのローラーを用いて長さ50mmのセロテープ(登録商標、型番:CT−15、ニチバン社製)を貼り付け、引張り試験機(製品名:RTF−1150H、A&D社製)を用いて、基材シートの表面からセロテープを剥がし(速度:2000mm/min、剥離角:180°)、剥がした後の基材シートの表面を観察し、密着性を評価した。なお、評価基準は次の通りである。○:剥離無し、×:剥離有り。
【0062】
[耐久性評価]
上記実施例1〜5及び比較例1〜8で得られた粘着シートの剥離シート(SP−PET−01)を剥がし、上記加飾シートの絵柄層面に貼付させ、ラミネートした後、25mm×150mmに切断し、試験片を作成した。この試験片の剥離シート(SP−PET−03)を剥がし、ステンレス板に貼付させ、2kgのローラーを用いてラミネートし、乾燥オーブンにて120℃で2分間加熱した後、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下に30分放置した。その後、100℃の雰囲気下の乾燥オーブンに、12時間放置し、放置後の試験片を目視にて観察し、耐久性を評価した。なお、評価基準は次の通りである。○:シートの浮きやシワが認められない、×:シートの浮きやシワが認められる。
【0063】
【表1】

【0064】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(M)とアクリル酸エステル重合体ブロック(A)とからなるM−A−M型トリブロック共重合体を含有する粘着剤組成物からなり、粘着剤組成物におけるM−A−M型トリブロック共重合体の占める割合が60質量%以上であり、M−A−M型トリブロック共重合体におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(M)の占める割合が15〜25質量%である粘着剤層を有する粘着シート(実施例1〜5)は、成形性及び耐久性のいずれも良好な結果を示した。また、実施例1〜5の粘着シートは、粘着剤組成物の加熱前には、適度な接着性を示し、成形品に対して弱い力で圧着できることが確認された。更に、実施例1〜5の粘着シートは、高温下で長時間反応させることなく、短時間の加熱により、成形品に対して適度な粘着性と良好な密着性とを示し、特に、粘着付与剤を粘着剤組成物中に含む実施例2〜4の粘着シートでは、高い粘着力を示すことが確認された。
【0065】
なお、比較例1〜7の粘着シートによれば、120℃で10分以上加熱することにより粘着強度は発現したが、ABS成型品が変形した。また、比較例8の粘着シートによれば、120℃で加熱を継続しても粘着力の上昇は見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形された被加飾品の加飾するために用いられる成形品加飾用粘着シートであって、
前記粘着シートは、粘着剤層と、当該粘着剤層の少なくとも一方の面に積層された剥離可能な保護フィルム層とを有し、
前記粘着剤層は、メタクリル酸エステル重合体ブロック(M)とアクリル酸エステル重合体ブロック(A)とからなるM−A−M型トリブロック共重合体を含有する粘着剤組成物からなり、
前記粘着剤組成物における前記M−A−M型トリブロック共重合体の占める割合が60質量%以上であり、
前記M−A−M型トリブロック共重合体における前記メタクリル酸エステル重合体ブロック(M)の占める割合が15〜25質量%であることを特徴とする成形品加飾用粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤組成物は、粘着付与剤を更に含有する請求項1に記載の成形品加飾用粘着シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粘着シートの粘着剤層上に、絵柄層と、100〜140℃における貯蔵弾性率が1×10〜1×10Paである基材とが順に積層されている加飾シート。
【請求項4】
請求項3に記載の加飾シートを、成形された被加飾品に貼付した後、100〜140℃にて10〜120秒間真空成形を行う工程を含む、加飾形成品の製造方法。

【公開番号】特開2012−77177(P2012−77177A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223045(P2010−223045)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】