説明

成形型、ウェハレンズ及び光学レンズの製造方法

【課題】離型抵抗の低減によって意図した形状を持つ成形型を得ることができ、所期の光学性能が発揮される光学レンズが形成されたウェハレンズを製造することができる成形型の製造方法を提供すること。
【解決手段】加工工程において、繋がり部48を所定の面粗さを有する断面曲線状の凹形部48bに加工するので、複数の樹脂層部分(樹脂レプリカ部)41d間の繋がり部48で意図しない突起が形成されることを防止でき、サブマスター型40、サブサブマスター型50等の成形型やウェハレンズ10等において異形状が発生することを回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の光学レンズを有するウェハレンズを製造する際に用いられる成形型並びにこの成形型を利用するウェハレンズ及び光学レンズの製造方法に関し、特に基板上に転写によって樹脂製の形状転写層を形成することによって得られる成形型、ウェハレンズ、光学レンズ等の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多数の光学レンズが形成されたウェハ状の板状部材(ウェハレンズ)を作製し、個片化することで個々の光学レンズを得ることが検討されている。微小光学部品をウェハ規模で転写する方法として、小さなマスター型を繰り返し使用して転写することで樹脂等からなる第1世代複製ツールを作製し、続いて第1世代複製ツールから複数のサブマスター型を作製し、サブマスター型から多数の微小光学素子を設けた複数の第2世代複製ツールを製造するものが知られている(特許文献1参照)。この方法によって得られるウェハ状の第1世代複製ツールは、次の成形物を作製するための成形型であり、基板上に樹脂製の形状転写層を形成したものとなる。
【0003】
また、ウェハレンズを作製するために用いる成形型であって、基板上に樹脂製の形状転写層が設けられた成形型を製造する方法として、成形物をマスター基板から離型する際の離型不良の防止等を目的として、成形型用基板に内部が閉じた形状の凹部を複数形成し、各凹部に樹脂材料を吐出しマスター型でプレスするようにした成形用型の製造方法も提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
最近、小型の光学レンズの用途が増大しており、所期の光学性能が発揮されるように、光学レンズには意図したレンズ形状が正確に実現されていることが求められる。また、光学性能を高めるために複数の光学レンズを積層する場合がある。これらの観点から、ウェハレンズの樹脂層を厚くしすぎないことが求められる。ウェハレンズの樹脂層が厚すぎると、所期の光学性能が得られなかったり、樹脂層の応力増大によりウェハレンズに反りや変形等を生じたりするおそれがある。また、光学レンズを積層した際に全体サイズが大きくなるおそれがある。さらに、材料コストの増大や硬化時間の増加を招くという問題もある。
【0005】
ウェハレンズの樹脂層が厚くなり過ぎないようにするために、上述した樹脂製の形状転写層を有する成形型もこれに配慮して作製することが求められ、成形型の製造時に、成型用基板にできるだけマスター型を近づけて成形を行う必要がある。成形型の樹脂製の形状転写層が厚くなると、この成形型を用いて成形された成形物にも形状が転写される結果、最終的に得られるウェハレンズにおいても樹脂層の厚みを薄くできなくなるからである。
【0006】
一般的に、樹脂材料が介在した状態でマスター型を成形型用基板の表面に近づけるには、マスター型を大きな圧力で基板側に押し付けることが必要であり、製造装置が大掛かりになってマスター型の位置決め精度の確保が容易でなくなる。また、マスター型が何らかの原因で傾いているとサブマスター用基板に接触してサブマスター用基板やマスター型を破損するおそれもある。さらに、成形時に樹脂材料がマスター型の周囲からはみ出してしまいはみ出した部分が意図しない形状となることも考えられる。特に、特許文献2のように成形型用基板に内部が閉じた形状の凹部を設けている場合は、成形時に凹部の周縁部とマスター型の周端部との間が非常に狭い空間となる結果、凹部へ吐出する樹脂量のばらつきやマスター型と成形型用基板との距離の僅かな誤差等によりマスター型の周囲に樹脂がはみ出すおそれがより高くなる。ウェハレンズ1枚当たりの光学レンズの取り数を多くするためにマスター型による各成形位置の間隔を近づけると、はみ出した樹脂同士がくっついて盛りあがり、突起物が形成されて、ますます意図しない形状を生じる可能性が高くなる。一方、成形時に樹脂材料がマスター型の周囲からはみ出さないように樹脂量を少なくすると、マスター型の周囲において階段部分が形成され、下向きの斜面を有するアンダー形状又はオーバーハング形状となる場合がある。このような階段部分は、この成形型を用いた次の成形工程で離型抵抗となることがわかっており、局所的な形状歪、階段部分の破損等の成形不良、基板の成形耐久性の劣化等を引き起こす。特にマスター型の周囲に相当するエッジ辺の総和が長くなる場合、例えばマスター型内の光学面数が増えた大個片の場合、局所的に発生する離型抵抗が増大して様々な弊害が顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0259546号公報
【特許文献2】特開2010−102312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、離型抵抗の低減によって意図した形状を持つ成形型を得ることができ、所期の光学性能が発揮される光学レンズが形成されたウェハレンズを製造することができる成形型の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、上記製造方法によって得られる成形型を利用した高精度のウェハレンズ及び光学レンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る成形型の製造方法では、光学レンズに対応する形状が複数配列された第1成形面を有するマスター型を繰り返し用いて第1基板上に複数の樹脂レプリカ部を成形することにより、複数の樹脂レプリカ部を有する成形型を得る成形型の製造方法であって、複数の樹脂レプリカ部のうち隣接する樹脂レプリカ部間を残膜部以上の厚みで繋ぐ繋がり部を形成し得る樹脂量で、複数の樹脂レプリカ部を成形する成形工程と、成形工程において成形された繋がり部を、所定の面粗さを有する断面曲線状若しくは断面多角状の凹形部又は平坦部に加工する加工工程とを備える。
【0011】
上記製造方法によれば、加工工程において、繋がり部を所定の面粗さを有する凹形部又は平坦部に加工するので、複数の樹脂レプリカ部間の繋がり部で意図しない突起が形成されることを防止でき、成形型やウェハレンズ等において異形状が発生することを回避することができる。なお、隣接する樹脂レプリカ部間を残膜部以上の厚みで繋ぐ繋がり部を形成し得る樹脂量で複数の樹脂レプリカ部を成形することにより、樹脂レプリカ部を成形する際に樹脂量を多めとしてマスター型の周囲に樹脂材料がはみ出すことを許容することができ、樹脂レプリカ部に意図しない窪みが形成されることを防止できる。結果的に、本成形型を用いた成形工程において、意図しない異形状の発生を防止することができ、かつ、個々の樹脂レプリカ部を繋げることで離型抵抗を軽減し又は無くすことができる。これにより、ウェハレンズの形成に際して局所的な離型抵抗分布の形成を低減し局所変形を抑えることで、ウェハレンズ内に多数存在するレンズ間の形状差をなくすことができ、成形精度を向上させ、精度的に安定したレンズを提供することができる。
【0012】
本発明の別の側面によれば、繋がり部の凹形部が、残膜部との繋がり角度が100°以上の円弧凹形に加工されている。このような円弧凹形は、エッジ部分で離型抵抗が発生し難く、かつ作りやすい形状であり、マスター型等について良好な離型性が確保される。
【0013】
本発明の具体的な側面又は観点によれば、成形型の製造方法において、繋がり部の凹形部は、アスペクト比0.1以下の矩形凹形に加工されることによって形成される。このような矩形凹形は、作りやすい形状であり、マスター型等について良好な離型性が確保される。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、繋がり部の凹形部が、面粗さRaが0.5μm以上10μm以下に加工されている。実験的には、凹形部を鏡面とするよりも粗面とする方が離型性が良くなることがわかっている。以上のような面粗さの範囲とすることで、離型抵抗を調整するができ、全体の離型抵抗を軽減させ、かつ抵抗分布をなくすことができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面によれば、凹形部が、繋がり部の一部を硬化後に除去することにより、除去後に残った部分として形成される。この場合、硬化後に繋がり部の一部を除去するので、比較的形状精度を高めることができる。
【0016】
本発明のさらに別の側面によれば、凹形部が、機械加工によって形成される。機械加工は、形状精度が高く、凹形部の形成が容易である。また、機械加工を用いる場合、凹形部面粗さの制御も容易である。
【0017】
本発明のさらに別の側面によれば、凹形部が、レーザー加工によって形成される。レーザー加工では、切粉が巻き上がらず、レンズ面へのゴミ付着が無い。また、クリーンルーム内で作業することができる。
【0018】
本発明のさらに別の側面によれば、凹形部が、マスター型による型締め中において樹脂の硬化前に繋がり部の一部を除去することにより、除去後に残った部分として形成される。この場合、凹形部の除去に際して、切粉、ゴミ等の発生が無い。また、かかる除去作業は、クリーンルーム内で一連の成形工程の一部として実現することができる。
【0019】
本発明のさらに別の側面によれば、凹形部が、マスター型による型締め中において樹脂の半硬化状態で繋がり部の一部を押圧した後に全硬化させることにより、形成される。この場合、凹形部の形成に際して、切粉、ゴミ等の発生が無い。また、かかる形成作業は、簡易であり、クリーンルーム内で一連の成形工程の一部として実現することができる。
【0020】
本発明のさらに別の側面によれば、繋がり部の一部を押圧する際の樹脂の半硬化時の粘度は、10Pa・s以上10000Pa・s以下である。この場合、樹脂レプリカ部の形成に際して樹脂を広げやすく良好な転写性を確保でき、良好な再現性で成形型を製造することができる。
【0021】
第1基板は、樹脂レプリカ部に対応する領域に第1成形面より大きいサイズを有し内部が閉じた形状の凹部を有し、マスター型は第1成形面の周囲に環状を段差を有する。
【0022】
本発明のさらに別の側面によれば、第1基板が、樹脂レプリカ部に対応する成形位置に第1成形面より大きいサイズを有し内部が閉じた形状の凹部を有し、マスター型が、第1成形面の周囲に環状を段差を有する。この場合、第1成形面の周囲に環状の段差を設けることで、段差と凹部の周辺との間に樹脂材料が広がり得る空間を形成することができる。これにより、マスター型の成形面を第1の基板の平坦面の高さに近づけても、上記空間が樹脂材料によって満たされることで、樹脂材料のはみ出しや不足に起因する異形状の発生を回避することができる。
【0023】
本発明のさらに別の側面によれば、成形工程が、第1成形面と第1基板上の成形位置との間に第1の樹脂材料を満たして硬化させ、マスター型を離型することで、第1成形面を転写した樹脂レプリカ部を得る転写工程と、転写工程をマスター型と第1基板との相対位置を変更しつつ繰り返し実行することにより、第1基板上に複数の樹脂レプリカ部を2次元的に配列した第1形状転写層を得る繰返工程とを備える。
【0024】
本発明のさらに別の側面によれば、上述の成形型の製造方法により得られた第1形状転写層を有する成形型を第1の成形型とし、当該第1の成形型と成形型用の第2基板との間に第2の樹脂材料を満たし、当該第2の樹脂材料を硬化させ、第1の成形型を離型することにより、第2形状転写層を有する第2の成形型を得る。この場合、第2の成形型は、ウェハレンズ等を形成するための、一括転写用の成形型となっている。
【0025】
本発明に係るウェハレンズの製造方法では、上述の成形型の製造方法により得られた成形型と、第3基板との間に第3の樹脂材料を満たし、当該第3の樹脂材料を硬化させ、上記成形型を離型することにより、第3基板の表面に複数のレンズ要素が形成されたウェハレンズを得る。この場合、第2の成形型等の転写を利用した複製によって第3基板の片側に複数のレンズ要素を設けたウェハレンズ等を得ることができる。
【0026】
本発明に係るウェハレンズの製造方法では、上述の成形型の製造方法により得られた成形型と、上述のウェハレンズの製造方法により得られたウェハレンズの裏面との間に第4の樹脂材料を満たし、当該第4の樹脂材料を硬化させ、成形型を離型することにより、第3基板の裏面に複数の光学レンズが形成されたウェハレンズを得る。この場合、第2の成形型等の転写を利用した複製によって第3基板の両側に複数のレンズ要素を設けたウェハレンズ等を得ることができる。
【0027】
本発明に係る光学レンズの製造方法では、上述のウェハレンズの製造方法により得られたウェハレンズを切断して個片化する工程を備える。この場合、レンズ基板から個片化した多数の高性能の光学レンズを一括して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態の製造方法によって得られるウェハレンズ(レンズ基板)の側面図であり、表裏の部分拡大斜視図を含む。
【図2】図1のウェハレンズから得た光学レンズの側面図である。
【図3】(A)は、ウェハレンズの製造のために用いるマスター型を説明する斜視図であり、(B)は、マスター型の平面図であり、(C)は、マスター型によって作製されるべきサブマスター型のうちサブマスター基板の斜視図である。
【図4】(A)は、マスター型の一部を切り出して説明する斜視図であり、(B)は、サブマスター型の一部を切り出して説明する斜視図であり、(C)は、サブサブマスター型の一部を切り出して説明する斜視図である。
【図5】サブマスター型等を作製するための製造装置を回路的に説明するブロック図である。
【図6】製造装置のうち表面加工装置を説明する概念図である。
【図7】(A)〜(E)は、ウェハレンズの製造工程を説明するための図である。
【図8】(A)〜(E)は、ウェハレンズの製造工程を説明するための図である。
【図9】ウェハレンズの製造工程を概念的に説明するフローチャートである。
【図10】(A)は、樹脂レプリカ部間を残膜部以上の厚みで繋ぐ繋がり部の側方断面形状を説明する図であり、(B)及び(C)は、繋がり部の加工を説明する図である。
【図11】第2実施形態における繋がり部に対する凹形部の形成を説明する部分的な側方断面図である。
【図12】第3実施形態における表面加工装置を説明する概念図である。
【図13】(A)は、第4実施形態における押圧装置説明する概念図であり、(B)は、繋がり部に対する凹形部の形成を説明する拡大側方断面図である。
【図14】(A)は、第5実施形態における押圧装置説明する概念図であり、(B)は、繋がり部に対する平坦部の形成を説明する拡大側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第1実施形態〕
図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る成形型の製造方法を利用することによって最終的に得られるウェハレンズについて説明し、かかるウェハレンズを作製するための成形型の構造や製造方法について説明する。
【0030】
A)ウェハレンズ等の構造
図1に示すように、ウェハレンズ10は、円盤状の外形を有しており、基板11と、第1レンズ樹脂層12と、第2レンズ樹脂層13とを有する。本実施形態においては、ウェハレンズ10をレンズ基板とも称する場合がある。なお、図1において、第1レンズ樹脂層12や第2レンズ樹脂層13の表面を部分的に拡大して斜視図として示している。
【0031】
ウェハレンズ(レンズ基板)10のうち基板11は、ウェハレンズ10の中心に埋め込まれた円形の平板(後述する第3基板)であり、光透過性を有するガラスで形成されている。基板11の外径は、第1及び第2レンズ樹脂層12,13の外径と略同じである。基板11の厚さは、基本的には光学的仕様によって決定されるが、少なくとも成形物を離型してウェハレンズ10を得るに際して破損しない程度の厚さとなっている。
【0032】
第1レンズ樹脂層12は、光透過性を有し、基板11の一方の面11a上に形成されている。第1レンズ樹脂層12は、部分的な拡大斜視図に示すように、第1レンズ本体1aと第1フランジ部1bとを一組とする多数の第1レンズ要素L1をXY面内で2次元的に配列している。これらの第1レンズ要素L1は、連結部1cを介して一体に成形されている。各第1レンズ要素L1と連結部1cとを合わせた表面は、転写によって一括成形される第1被転写面12aとなっている。第1レンズ本体1aは、図2にも示すように、例えば凸形状の非球面型又は球面型のレンズ部であり、第1光学面OS1を有している。周囲の第1フランジ部1bは、第1光学面OS1の周囲に広がる平坦な第1フランジ面FP1を有し、第1フランジ面FP1の外周は、連結部1cの表面ともなっている。第1フランジ面FP1は、光軸OAに垂直なXY面に対して平行に配置されている。
【0033】
なお、図1に示すように、第1レンズ樹脂層12は、製造工程に由来して多数のアレイユニットAUに区分されており、これらのアレイユニットAUは、詳細な図示を省略するが、矩形の輪郭を有し、基板11上でマトリックス状又は格子状に配列されている。各アレイユニットAUは、後述するマスター型30の端面30bを反転したような表面形状を有しており、等間隔でマトリクス状に配列された多数の第1レンズ本体1aを有している。
【0034】
第1レンズ樹脂層12は、例えば光硬化性樹脂で構成される。光硬化性樹脂は、主成分である重合性単量体等の重合性組成物と、重合性組成物の重合硬化を開始させるための光重合開始剤と、必要に応じて用いられる各種添加剤とを含む光硬化性樹脂材料を硬化させることにより得られる。このような光硬化性樹脂材料は、硬化前の状態では流動性を有している。光硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アリルエステル樹脂、ビニル樹脂等がある。エポキシ樹脂は、光重合開始剤のカチオン重合により重合性組成物を反応硬化させて得ることができ、アクリル樹脂、アリルエステル樹脂、及びビニル樹脂は、光重合開始剤のラジカル重合により重合性組成物を反応硬化させて得ることができる。
【0035】
第2レンズ樹脂層13は、第1レンズ樹脂層12と同様に、光透過性を有し、基板11の他方の面11b上に形成されている。第2レンズ樹脂層13は、部分的な拡大斜視図に示すように、第2レンズ本体2aと第2フランジ部2bとを一組とする多数の第2レンズ要素L2をXY面内で2次元的に配列している。これらの第2レンズ要素L2は、連結部2cを介して一体に成形されている。各第2レンズ要素L2と連結部2cとを合わせた表面は、転写によって一括成形される第2被転写面13aとなっている。第2レンズ本体2aは、図2にも示すように、例えば凸形状の非球面型又は球面型のレンズ部であり、第2光学面OS2を有している。周囲の第2フランジ部2bは、第2光学面OS2の周囲に広がる平坦な第2フランジ面FP2を有し、第2フランジ面FP2の外周は、連結部2cの表面ともなっている。第2フランジ面FP2は、光軸OAに垂直なXY面に対して平行に配置されている。
【0036】
なお、第2レンズ樹脂層13も、製造工程に由来して多数のアレイユニットAUに区分されており、これらのアレイユニットAUは、矩形の輪郭を有し、基板11上でマトリックス状又は格子状に配列されている。
【0037】
第2レンズ樹脂層13に用いられる光硬化性樹脂は、第1レンズ樹脂層12に用いられるものと同様の光硬化性樹脂である。ただし、両レンズ樹脂層12,13を同一の光硬化性樹脂で形成する必要はなく、別の光硬化性樹脂で形成することができる。
【0038】
なお、第1レンズ樹脂層12と第2レンズ樹脂層13とのうち一方を省略することができる。つまり、基板11の一方の面11a又は他方の面11bにのみレンズ樹脂層を設けてもよい。
【0039】
図2に示すように、第1レンズ樹脂層12に設けたいずれか1つの第1レンズ要素L1と、これに対向する第2レンズ樹脂層13の第2レンズ要素L2と、これらのレンズ要素L1,L2間に挟まれた基板11の部分11pとは、1つの光学レンズ4に相当する。光学レンズ4は、ウェハレンズ10を連結部1c,2cの位置でダイシングすることによって個片化して得られる平面視正方形の複合レンズとなっている。
【0040】
B)形状転写用の成形型の構造
図1のウェハレンズ10は、図3(A)に示すマスター型30を原版として3段階の転写を行うことによって作製される。以下、マスター型30やこれから得られる樹脂製の形状転写面を持つ成形型の構造について説明する。
【0041】
図3(A)、3(B)、及び4(A)に示すように、マスター型30は、直方体状のブロック部材であり、その端部30aにおいて、略矩形の端面30bと、端面30bの周囲に設けられた環状の段差32とを有する。端面30bは、図4(B)のサブマスター型40の第2成形面43を形成するための第1成形面31となっている。
【0042】
マスター型30は、サブマスター型40の作製のため繰返し使用されるものであり、図4(B)のサブマスター基板42上にマトリックス状又は格子状の配列で一様に形成された浅い矩形の凹部42cに対向するように2次元的に移動しながら転写を繰り返すステップ&リピート方式の転写によって、サブマスター基板42上に分離して配列された単位(後述する図7(D)の樹脂層部分41d)をまとめたサブマスター樹脂層(第1形状転写層)41を形成することができる。マスター型30の第1成形面31は、凹部42cよりもひとまわり小さな外周を有し、最終的に得られるウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12の第1被転写面12aを部分的に反転した表面形状を有する。第1成形面31は、第1被転写面12aのうち第1光学面OS1を形成するための第1光学転写面31aと、第1フランジ面FP1を形成するための平坦な第1フランジ転写面31bとを含む。第1光学転写面31aは、例えば等間隔の格子点上に多数個配置されており、各々が最終的に得られる光学レンズに対応する形状、ここでは、略半球の凹形状に形成されている。一方、段差32は、樹脂材料を充填する際にサブマスター基板42に形成された凹部42cの周囲の表面との間に隙間を形成するための後退面32aを有している。段差32は、サブマスター型40のサブマスター樹脂層41に後に詳述する残膜部を形成するための部分である。後退面32aから端面30bに至る側面部には、成形物の離型性向上のために、端面30bに近づくほど第1成形面31の中央に向かって傾斜するテーパーを設けてもよい。
【0043】
マスター型30は、一般に金属材料で形成される。金属材料としては、例えば鉄系材料、鉄系合金、非鉄系合金等が挙げられる。なお、マスター型30は、金属ガラスやアモルファス合金で形成されてもよい。マスター型30は、単一の材料で形成されるものに限らず、適当な基材上に上記のような金属材料等を被覆したものとすることもできる。
【0044】
図4(B)に部分的に拡大して示すように、第1の成形型であるサブマスター型40は、サブマスター樹脂層(第1形状転写層)41とサブマスター基板42とを有する。なお、図4(B)においては、理解を容易にするために、サブマスター型40の一部を切り出した状態を模式的に示している。サブマスター樹脂層41とサブマスター基板42とは、積層構造となっている。サブマスター樹脂層(第1形状転写層)41は、その端面41a上に、後述するサブサブマスター型50の第3成形面53を形成するための第2成形面43を有する。この第2成形面43は、最終的に得られるウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12の第1被転写面12aのポジ型に対応し、第1被転写面12aのうち第1光学面OS1を形成するための第2光学転写面43aと、第1フランジ面FP1を形成するための第2フランジ転写面43bとを含む。第2光学転写面43aは、マスター型30の第1光学転写面31aによって転写され、格子点上に多数個配置されており、略半球の凸形状に形成されている。
【0045】
サブマスター樹脂層41は、第1の樹脂材料を用いて形成されている。第1の樹脂材料としては、光硬化性樹脂材料が挙げられ、上記ウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12と同様の材料の使用、すなわち、硬化後に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アリルエステル樹脂、ビニル樹脂等になる光硬化性樹脂材料の使用が可能である。また、第1の樹脂材料としては、硬化後に良好な離型性を示す樹脂材料、特に硬化波長で十分な光透過性を有し、離型剤を塗布しなくても離型できる樹脂材料が好ましい。
【0046】
サブマスター基板42は、光透過性を有し十分な剛性を有する材料、例えばガラス等で形成されている第1基板である。サブマスター基板(第1基板)42の表面42a上には、図3(C)に示すように、略全面に亘ってマトリックス状に配列された多数の浅い矩形の凹部42cが形成されている。各凹部42cは、一般に200μm以下の深さを有し、底面42dと側面42eとを有し内部が閉じた形状を持つ窪みである。凹部42cは、マスター型30の端面30bとサブマスター基板42の表面42aとの間に第1の樹脂材料を挟んで転写を行う際に、第1の樹脂材料が極端に薄くなることを防止している。これにより、マスター型30を大きな圧力でサブマスター基板42側に押し付けることなく、マスター型30をサブマスター基板42の表面42aに対して適所まで近づけることができる。凹部42cは、サブマスター基板42に対する切削加工やエッチング等、各種の方法によって形成することができる。凹部42cの側面42eは、底面42dに近づくほど凹部42cの開口面積が小さくなるように傾斜していたり曲面になっていたりしてもよい。このようにすると凹部42cを比較的容易に形成できる。あるいは、底面42dに近づくほど広くなるように側面42eを傾斜させたり、側面42eを粗面化してもよい。このようにすると、マスター型30からの離型時における離型不良を低減することができる。
【0047】
図4(C)に部分的に拡大して示すように、第2の成形型であるサブサブマスター型50は、サブサブマスター樹脂層(第2形状転写層)51とサブサブマスター基板52とを有する。なお、図4(C)においては、理解を容易にするために、サブサブマスター型50の一部を切り出した状態を模式的に示している。サブサブマスター樹脂層(第2形状転写層)51とサブサブマスター基板52とは、積層構造となっている。サブサブマスター樹脂層(第2形状転写層)51は、その端面51a上に、ウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12を転写によって形成するための第3成形面53を有する。この第3成形面53は、ウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12の第1被転写面12aを反転した形状を有し、第1被転写面12aのうちのうち第1光学面OS1を形成するための第3光学転写面53aと、第1フランジ面FP1を形成するための第3フランジ転写面53bとを含む。第3光学転写面53aは、サブマスター基板42の第2光学転写面43aによって転写され、マトリクス状に複数個配置されており、略半球の凹形状に形成されている。
【0048】
サブサブマスター樹脂層51は、サブマスター樹脂層41の第1の樹脂材料と同様の第2の樹脂材料で形成され、第2基板としてのサブサブマスター基板52は、サブマスター基板42と同様の材料で形成される。すなわち、サブサブマスター樹脂層51の第2の樹脂材料としては、硬化後に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アリルエステル樹脂、ビニル樹脂等になる光硬化性樹脂材料の使用が可能である。第2の樹脂材料としては、硬化後に良好な離型性を示す樹脂材料、特に硬化波長で十分な光透過性を有し、離型剤を塗布しなくても離型できる樹脂材料が好ましい。また、サブサブマスター基板(第2基板)52としては、光透過性を有し十分な剛性を有する材料、例えばガラス等で形成されている。
【0049】
なお、サブマスター樹脂層41とサブサブマスター樹脂層51とは、必ずしも同一の材料で形成される必要はなく、異なる光硬化性樹脂等で形成されてもよい。また、サブマスター基板42とサブサブマスター基板52も、必ずしも同一の材料で形成される必要はなく、異なる材料で形成されてもよい。
【0050】
以上において、マスター型30、サブマスター型40、及び、サブサブマスター型50の表面には、それぞれによる成形物の離型を容易にするため、離型剤を塗布する等して離形層を形成してもよい。
【0051】
C)サブマスター型等の製造装置
以下、図5を参照して、図4(B)に示すサブマスター型40等を作製するための製造装置について説明する。
【0052】
図5に示すように、製造装置100は、アライメント駆動部61と、ディスペンサー62と、光源63と、ユーザー操作部64と、制御装置66とを備え、付随的な装置として、搬出入装置72と、表面加工装置73とを備える。このうち、アライメント駆動部61と、ディスペンサー62と、光源63等は、クリーンルーム内に設置される。
【0053】
ここで、アライメント駆動部61は、図3(A)に示すマスター型30を図3(C)に示すサブマスター基板42に設けた各凹部42cに対して精密に位置決めして配置するために用いられる。アライメント駆動部61は、サブマスター基板42を支持する基板用ステージ部61aと、マスター型30を支持する金型用ステージ部61bと、マスター型30やサブマスター基板42の周辺を減圧する減圧機構61dと、マスター型30の姿勢等を検出する姿勢センサー61eと、アライメント状態を観察するための顕微鏡61fと、マスター型30のサブマスター基板42への押し付け圧力を検出する圧力センサー61gとを備える。
【0054】
このうち、基板用ステージ部61aは、これに設けた基板用支持部(不図示)上に固定されたサブマスター基板42をX軸方向の所望位置に移動させためのX軸移動機構61hと、サブマスター基板42をY軸方向の所望位置に移動させるY軸移動機構61iと、上記基板用支持部にセットされたサブマスター基板42のX軸及びY軸の位置情報を検出して制御装置66に送信する基板ステージセンサー61jと、軸移動機構61h,61i等の滑らかな動作を可能にするエアスライド機構61kとを有する。金型用ステージ部61bは、これに設けた金型用支持部(不図示)上に固定されたマスター型30をZ軸方向の所望位置に移動させるZ軸移動機構61mと、上記金型用支持部に固定されたマスター型30のZ軸の位置情報を検出して制御装置66に送信する金型ステージセンサー61nと、Z軸移動機構61m等の滑らかな動作を可能にするエアスライド機構61pと、マスター型30の傾斜や回転姿勢を調整するとともにマスター型30を上方に付勢するマスター駆動部61qとを有する。
【0055】
アライメント駆動部61において、姿勢センサー61eは、マスター型30の上面の傾き等に関する情報を検出し、制御装置66に出力する。顕微鏡61fは、マスター型30の上面に形成された複数のアライメントマークを検出し、位置情報として制御装置66に出力する。
【0056】
ディスペンサー62は、図3(C)に示すサブマスター基板42上にサブマスター樹脂層41を形成するために、マスター型30上に光硬化性樹脂材料からなる第1の樹脂材料を供給する役割を有する。光源63は、マスター型30とサブマスター基板42との間に挟まれた第1の樹脂材料に対して、例えばUV光源等の、樹脂材料を硬化させる波長の光を発生するものであり、光を照射することにより、サブマスター基板42上に固化したサブマスター樹脂層41を形成する。
【0057】
ユーザー操作部64は、ユーザーによるキーボードやマウス等(不図示)の操作に基づいて、入力された製造装置100の動作に必要な情報を受け付ける。例えばユーザーによって、サブマスター基板42の凹部42cのサイズ、配置等に関する情報や、マスター型30のサイズ等の情報が制御装置66に入力される。
【0058】
制御装置66は、サブマスター型40等の作製のため、上記のアライメント駆動部61の各部、ディスペンサー62、光源63等の動作を統括的に制御する部分である。制御装置66は、基板用ステージ部61aと金型用ステージ部61bとを適宜動作させることにより、サブマスター基板42に対してマスター型30を3次元的に移動させて、マスター型30の第1成形面31がサブマスター基板42の表面42a上の所望領域(具体的には凹部42c)に対向するように配置することができる。この際、制御装置66は、軸移動機構61h,61i,61mや顕微鏡61fを利用して検出した位置情報に基づいてサブマスター基板42に対するマスター型30の位置を回転角とともに精密に調整する。また、制御装置66は、マスター駆動部61qを動作させて、サブマスター基板42に対するマスター型30の傾斜等を精密に調整する。また、制御装置66は、マスター駆動部61qを動作させて、サブマスター基板42に対してマスター型30の第1成形面31を所望の圧力で押し付ける役割も有する。
【0059】
搬出入装置72は、未処理のサブマスター基板42を基板用ステージ部61aに搬入して基板用ステージ上に載置し、基板用ステージ部61aから転写処理済みのサブマスター型40を搬出する。
【0060】
表面加工装置73は、基板用ステージ部61aから搬出された転写処理済みのサブマスター型40に対して不要部分を除去する表面加工処理を施して、サブマスター型40を完成する。
【0061】
図6は、表面加工装置73を概念的に説明する図である。表面加工装置73は、図5に示す搬出入装置72によってアライメント駆動部61から搬出されたサブマスター型40を載置するステージ73aと、ステージ73aに対向して配置される切削具73bを有する切削装置73cと、切削具73bの周辺から発生した切削屑を吸引する集塵機73dとを備える。ステージ73aは、サブマスター樹脂層41を形成したサブマスター型40を支持し、切削装置73cは、サブマスター型40に対して切削具73bを3次元的移動させながらサブマスター樹脂層41の表面上の必要箇所に切削加工を施す。切削具73bは、例えばボールエンドミル等であり、切削装置73cは、切削具73bを回転させつつ例えばXY面内で2次元的に移動させることができる。これにより、回転する切削具73bの先端がサブマスター型40の表面のサブマスター樹脂層41に沿って移動する。集塵機73dは、切削装置73cの周囲にフード73gを有し、切削装置73cによって切除されたサブマスター樹脂層41の切削屑が周囲に飛散することを防止している。
【0062】
D)ウェハレンズの製造工程
図7(A)〜7(E)、8(A)〜8(E)等を参照しつつ、上述のマスター型30、サブマスター型(第2の成型型)40、サブサブマスター型(第3の成型型)50を使用して行われるウェハレンズ10の製造工程の概要について説明する。なお、以下では第1レンズ樹脂層12の成形について説明するが、第2レンズ樹脂層13の成形についても同様の工程が行われる。
【0063】
まず、研削加工等によって、ウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12を構成する各アレイユニットAUのネガ型に対応するマスター型30を作製する(図9のステップS1参照)。
【0064】
次に、図7(A)に示すように、図5等に示す製造装置100を用いて、マスター型30の第1成形面31上方に第1の樹脂材料41bを配置する。その後、図7(B)に示すように、図5等に示す製造装置100を用いて、マスター型30の端面30bすなわち第1成形面31をサブマスター基板42の表面42aに形成された特定の凹部42cに対向するようにアライメントして配置し、サブマスター基板42の下方からマスター型30を押圧して、第1成形面31と凹部42cとが適当な間隔となるまで近接させる。ここで、第1の樹脂材料41bはマスター型30によって押圧され、凹部42cを満たすとともに、マスター型30の段差32の後退面32aとサブマスター基板42との対向部を満たす。この状態で、光源63によりUV光等の所定波長の光を照射し、間に挟まれた第1の樹脂材料41bを硬化させる。結果的に、マスター型30の第1成形面31が転写されかつ硬化した樹脂によって構成される樹脂層部分(樹脂レプリカ部)41dが形成される。この樹脂層部分41dは、例えば100μm程度の厚みを有する。次に、図7(C)に示すように、マスター型30から樹脂層部分41dとサブマスター基板42とを一体として離型する。これにより、マスター型30の端面30bすなわち第1成形面31を対向させた凹部42cを含む矩形領域において樹脂層部分41dが露出する。この樹脂層部分(樹脂レプリカ部)41dは、マスター型30の段差32を転写したものとして、本体の周囲に残膜部44を有する。また、樹脂層部分(樹脂レプリカ部)41dは、その表面として、第2成形面43の一部を構成する転写面要素43dを有する。この転写面要素43dは、マスター型30の第1成形面31上にn個の第1光学転写面31aが形成されている場合、これに対応してn個の第2光学転写面43aを有する。
【0065】
図10(A)に模式的に示すように、今回形成した新たな(後の)樹脂層部分41dの周囲に形成された残膜部44と、既に形成した隣の(先の)樹脂層部分41dの周囲に形成された残膜部44との間には、隣接する樹脂層部分41d,41d間を残膜部44以上の厚みで繋ぐ断面円形の繋がり部48が形成されている。残膜部44は、例えば0.5mm程度の横幅を有し60μm程度の厚みを有している。繋がり部48は、例えば0.2mm程度の横幅を有し50μm程度の高さを有している。このような繋がり部48は、第1の樹脂材料41bの樹脂量を適切に設定することにより形成し得る。つまり、樹脂層部分41dを形成するために、マスター型30とサブマスター基板42との間に供給される第1の樹脂材料41bの量すなわち樹脂量を比較的多く設定することで、第1の樹脂材料41bをマスター型30の周囲に多少溢れるように供給することができ、繋がり部48を残膜部44よりも厚く盛り上がる畝状に形成できる。また、複数の樹脂レプリカ部が繋がっていることで、個々の樹脂レプリカ部が離れて形成されている場合に後の成形工程で離型抵抗を増加させるエッジ部をなくすことができるため、離型抵抗を低減又は無くすことができる。なお、図7(C)に示すように、今回形成した新たな樹脂層部分41dの周囲に形成された残膜部44であっても、隣接して樹脂層部分41dが形成されていない側(紙面の左側)については、繋がり部48に相当する盛り上がりがまだ形成されていない。
【0066】
次に、図7(A)に戻って、マスター型30の第1成形面31上に第1の樹脂材料41bを配置する。その後、図7(B)に示すように、マスター型30の端面30bをサブマスター基板42の表面42aに形成された次の凹部42cに対向するようにアライメントして配置し、サブマスター基板42の下方からマスター型30を押圧して、第1成形面31と凹部42cとが適当な間隔となるまで近接させる。ここで、樹脂材料41bはマスター型30によって押圧され、凹部42c及びマスター型30の段差32の後退面32aとサブマスター基板42との対向部とを満たす。この状態で、光源63によりUV光等の所定波長の光を照射させ、間に挟まれた第1の樹脂材料41bを硬化させる。結果的に、第1の樹脂材料41bにマスター型30の第1成形面31が転写され、第1の樹脂材料41bによって第2成形面43を分割した転写面要素43dを有する樹脂層部分41dが形成される。この樹脂層部分41dは、マスター型30の段差32を転写したものとして、本体の周囲に残膜部44を有する。今回形成した新たな樹脂層部分41dの周囲に形成された残膜部44と、既に形成した隣の樹脂層部分41dの周囲に形成された残膜部44との間には、隣接する樹脂層部分41d,41d間を残膜部44以上の厚みで繋ぐ繋がり部48が形成される。
【0067】
以上のように、隣接する樹脂層部分41d,41d間を外縁の残膜部44以上の厚みで繋ぐ繋がり部48を形成する場合、第1の樹脂材料41bの樹脂量が比較的多くなるので、サブマスター基板42の凹部42cに充填されるべき樹脂材料41bが不足するといった事態が防止される。これにより、樹脂材料が不足した場合に次工程のサブサブマスター型50の成形時にこの不足部分に起因する突起等の異形状が発生することを防止できる。このような異形状は、結果的にサブサブマスター型50の成形時にサブサブマスター樹脂層51の高低差を過剰に大きくすることにつながり、ウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12の厚みが過剰になったり厚みの精度が低下したりする可能性も生じてしまう。また、意図しない異形状が形成される結果、離型抵抗が増大し離型不良を生じるおそれもある。なお、樹脂材料があまり不足しない場合であっても、残膜部44の外側の側面は、奥側に傾斜したアンダー形状(オーバーハング形状)になったり垂直に立ったりし、離型抵抗を増大させる要因となる。
【0068】
以上の図7(A)〜図7(C)に示す工程を繰り返すことにより、サブマスター基板42上に形成されたすべての凹部42cにおいて樹脂層部分41dが形成され、マトリックス状に配列された多数の樹脂層部分41dを含むサブマスター樹脂層41が形成され、結果としてサブマスター型40が完成する(図9のステップS2参照)。サブマスター樹脂層41は、サブマスター基板42上にm個の凹部42cが形成されている場合、これに対応してm個の樹脂層部分41dを有する。つまり、サブマスター型40上には、n×m個の第2光学転写面43aが形成されている。
【0069】
次に、図7(D)や図10(B)に示すように、サブマスター型40に対して表面加工処理を施す。つまり、サブマスター型40の表面において、隣接する樹脂層部分41d,41d間を繋ぐ繋がり部48の上部を部分的に除去して断面曲線状の円弧凹形である凹形部48bを形成する。このように、繋がり部48に凹形部48bを形成することで、繋ぐ繋がり部48の突出を抑えてサブマスター樹脂層41を比較的薄く形成することができる。凹形部48bの形成には、図6に示す表面加工装置73の切削具73bを利用する。この場合、切削具73bは、例えばボールエンドミルのように先端にRが形成されている。加工によって得た凹形部48bの面粗さは、Ra=1.5μmである。ここで面粗さRaは、JIS B0601:2001で規定されている算術平均高さRaのことをいう。面粗さRaは、市販の触針式表面粗さ測定機等を用いて測定することができる。また、凹形部48bの幅に対する深さの比であるアスペクト比は、1mm/20μm=1/50となっている。さらに、凹形部48bの残膜部44との繋がり角度αは、105°となっている。ここで、繋がり角度αは、図10(B)に示すように、残膜部44の上面の平坦部48aと、この平坦部48aが凹型部48bと交わる点における凹型部48bの凹面の接線とのなす角をさす。以上のように設定することにより、繋がり部48における離型性を良好なものとすることができる。
【0070】
図10(C)は、サブマスター型40の表面を部分的に拡大した図であり、多数の樹脂層部分41dがマトリックス状に配列された状態を示している。この図において、樹脂層部分41d間の境界である繋がり部48は、格子状に延びていることが分かる。繋がり部48は、図6に示す表面加工装置73によって上部が除去される。この際、図6に示す表面加工装置73の切削装置73cは、格子状に延びる繋がり部48のパターンに対応する軌跡TRで切削具73bを移動させ、切削具73bの先端によって格子状に延びる全ての繋がり部48の上部を部分的に除去し、適度な面粗さで深さを有する凹形部48bを格子状に形成する。
【0071】
次に、図7(E)に示すように、図5等に示す製造装置100と同様の加工装置を用いて、サブマスター型40の第2成形面43上に第2の樹脂材料51bを広範囲に配置する。その後、図8(A)に示すように、図5等に示す製造装置100と同様の加工装置を用いて、サブサブマスター基板52の下方からサブマスター型40を押圧して、第2成形面43とサブサブマスター基板52の表面52aとが近接して適当な間隔となるまで移動させる。この状態で、光源によりUV光等の所定波長の光を照射し、間に挟まれた第2の樹脂材料51bを硬化させる。結果的に、サブマスター型40の第2成形面43が転写されかつ硬化した樹脂によって構成されるサブサブマスター樹脂層51が形成される。つまり、サブサブマスター樹脂層51上に第3成形面53(図4(C)に示す第3光学転写面53a及び第3フランジ転写面53bを含む)が形成される。なお、本実施形態においては、サブサブマスター基板52側から光を照射しているが、サブマスター型40側から光を照射してもよいし、サブサブマスター基板52側とサブマスター型40との両方から光を照射してもよい。
【0072】
次に、図8(B)に示すように、サブマスター型40からサブサブマスター樹脂層51とサブサブマスター基板52とを一体として離型し、独立したサブサブマスター型50が完成する(図9のステップS3参照)。なお、サブサブマスター型50のサブサブマスター樹脂層51は、サブマスター型40の樹脂層部分41dに対応して多数の樹脂層部分51dに区分されており、これらの樹脂層部分51dは、マトリックス状に配列されている。各樹脂層部分51dの外側には、サブマスター型40の残膜部44に挟まれた繋がり部48の凹形部48bに対応する低い突起部54が形成される。この突起部54は、サブマスター型40の表面において格子パターン状に延びる。
【0073】
次に、ウェハレンズ10の作製を開始する。図8(C)に示すように、図5等に示す製造装置100と同様の加工装置を用いて、サブサブマスター型50の第3成形面53上に第3の樹脂材料12b(第1レンズ樹脂層12を形成するための光硬化性樹脂材料)を広範囲に配置する。その後、図8(D)に示すように、図5等に示す製造装置100と同様の加工装置を用いて、基板11の下方からサブサブマスター型50を押圧して第3成形面53と基板11の表面とが近接して適当な間隔となるまで移動させる。この状態で、光源によりUV光等の所定波長の光を照射し、間に挟まれた第3の樹脂材料12bを硬化させる。結果的に、サブサブマスター型50の第3成形面53が転写されかつ硬化した樹脂から構成される第1レンズ樹脂層12が形成される。つまり、第1レンズ樹脂層12上に第1被転写面12a(図1に示す第第1光学面OS1及び第1フランジ面FP1を含む)が形成される。なお、本実施形態においては、基板11側から光を照射しているが、サブサブマスター基板52側から光を照射してもよいし、基板11側とサブサブマスター基板52側との両方から光を照射してもよい。
【0074】
その後、図8(E)に示すように、サブサブマスター型50から第1レンズ樹脂層12と基板11とを一体として離型する。既に第2レンズ樹脂層13が形成されている場合、ウェハレンズ10が完成する(図9のステップS4参照)。第2レンズ樹脂層13が形成されていない場合、第1レンズ樹脂層12と同様の工程を行うことで第4の樹脂材料からなる第2レンズ樹脂層13が形成され、第2レンズ樹脂層13用のサブサブマスター型50から第2レンズ樹脂層13と基板11とを一体として離型することで、ウェハレンズ10が完成する(図9のステップS4参照)。なお、第1レンズ樹脂層12を得るためにサブサブマスター型50を離型する前に、第2レンズ樹脂層13を形成するための工程を開始するようにしてもよい。基板11の一方の面に成形型を残した状態で、基板11の他方の面に成形を始めることで、成形物に反りが発生するのを抑えやすくなる。
【0075】
以上のように作製したウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12は、サブサブマスター型50の樹脂層部分51dに対応してマトリックス状に配列された多数のアレイユニットAUに区分されている。各アレイユニットAUの外縁には、サブサブマスター型50のサブサブマスター樹脂層51に形成された突起部54に隣接する窪み、すなわちサブマスター型40の残膜部44に対応するものとして、低い突起14が形成される。
【0076】
ウェハレンズ10は、例えば上記と同様の工程で複数種類作製され、これらが適宜積層され、ダイシングラインLに沿って、第1レンズ本体1a等を中心とする四角柱状にダイシングによって切り出されることにより、複数の分割された複合レンズすなわち光学レンズ4(図2の場合、単一の複合レンズ)となる。
【0077】
以上で説明したマスター型30、サブマスター型40及びサブサブマスター型50は、複数回使用される(図9のステップS5参照)。つまり、これらの型30,40,50が劣化して型交換又は型変更が必要となった場合、マスター型30、サブマスター型40及びサブサブマスター型50のいずれかを新たなものと交換又は別のものを再利用しつつ、図9のステップS1〜S4が適当な上限回数まで実行される。結果的に、例えばマスター型30がi回転写され、サブマスター型40がj回転写され、サブサブマスター型50がk回転写されることで、計i×j×k個のウェハレンズ10を得ることができる。
【0078】
本実施形態の製造方法によれば、加工工程において、繋がり部48を所定の面粗さを有する断面曲線状の凹形部48bに加工するので、複数の樹脂層部分(樹脂レプリカ部)41d間の繋がり部48で意図しない突起が形成されることを防止でき、段差部32周辺に形成されるエッジによる離型抵抗の増加を抑えることができるだけでなく、離型性向上を狙った表面処理が行き届きやすいものとなる。これにより、サブマスター型40、サブサブマスター型50等の成形型やウェハレンズ10等において異形状が発生することを回避しつつ成形精度を向上させ、精度的に安定したレンズを提供することができる。
【0079】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る成形型の製造方法等について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態の成形型の製造方法等の変形例であり、特に説明しない部分又は事項は、第1実施形態の場合と同様である。
【0080】
図11に示すように、第2実施形態の製造方法では、スクエアエンドミルタイプの切削具173bを用いてサブマスター型40に対して表面加工処理を施す。この場合、隣接する樹脂層部分41d,41d間を繋ぐ繋がり部48の上部を部分的に除去して断面曲線状の矩形凹形である凹形部148bを形成する。加工によって得た凹形部148bの面粗さは、Ra=1.5μmである。また、凹形部148bの幅に対する深さの比であるアスペクト比は、1/50となっている。以上のように設定することにより、繋がり部48における離型性を良好なものとすることができる。
【0081】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る成形型の製造方法等について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態の成形型の製造方法等の変形例であり、特に説明しない部分又は事項は、第1実施形態の場合と同様である。
【0082】
図12に示すように、第3実施形態の製造方法では、図5に示す製造装置100の表面加工装置73に代えて、アライメント駆動部61内に組み込まれるレーザー加工部273を備える。なお、サブマスター型40は、基板用ステージ部61aに支持され、マスター型30は、金型用ステージ部61bに支持されている。この場合、サブマスター型40は、レーザー加工のためマスター型30の上方からはずれた位置に移動させられている。レーザー加工部273は、サブマスター型40に対して非接触で表面加工処理を施す。レーザー加工部273は、レーザー光LLをサブマスター型40の樹脂層部分41d間の境界である繋がり部48の表層部に集光させ、この集光スポットを繋がり部48のパターンに対応する軌跡TRに沿って移動させる。この場合、図7(C)等に示す樹脂層部分41d,41d間を繋ぐ繋がり部48の上部は、レーザーの熱によって局所的にガス化され、図10(B)に示す凹形部48bと同様の凹部が形成される。
【0083】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る成形型の製造方法等について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態の成形型の製造方法等の変形例であり、特に説明しない部分又は事項は、第1実施形態の場合と同様である。
【0084】
図13(A)に示すように、第4実施形態の製造方法の場合、図5に示す製造装置100の表面加工装置73に代えて、アライメント駆動部61内に組み込まれる吸引装置373を備える。なお、サブマスター型40は、基板用ステージ部61aに支持され、マスター型30は、金型用ステージ部61bに支持されている。吸引装置373は、樹脂吸引部373aとノズル373bとを有し、ノズル373bの先端をマスター型30の端部30a周辺の任意の位置に移動させることができる。吸引装置373は、図13(B)に示すように、型締め中、すなわち、樹脂材料41bを介してマスター型30をサブマスター基板42に押し当てている間においてマスター型30の周囲に設けた段差32の周囲にはみ出す不要な第1の樹脂材料41bを硬化前に吸い取って除去する。その後、UV光等の照射を行って、第1の樹脂材料41bを完全に硬化させる。この場合、図7(D)等に示す樹脂層部分41d,41d間を繋ぐ繋がり部48の上部には、当初から窪みすなわち凹形部が形成される。
【0085】
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態に係る成形型の製造方法等について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態の成形型の製造方法等の変形例であり、特に説明しない部分又は事項は、第1実施形態の場合と同様である。
【0086】
図14(A)に示すように、第5実施形態の製造方法の場合、図5に示す製造装置100の表面加工装置73に代えて、アライメント駆動部61内に組み込まれる押圧装置473を備える。押圧装置473は、マスター型30の側面に沿って配置される枠状の押圧部材473aを有しており、金型用ステージ部461bに組み込まれた補助昇降機構によって押圧部材473aをZ方向に移動させることができ、押圧部材473aの先端をサブマスター型40側に押し付けることができる。本実施形態の場合、図7(B)に示す第1の樹脂材料41bの硬化中すなわち光源63によるUV光等の照射の途中で、処理を一旦中断する。結果的に、第1の樹脂材料41bは、照射量の調整によって粘度10Pa・s〜10000Pa・sの半硬化状態に保持され、柔らかく変形可能な状態となっている。なお、粘度の測定は、JIS Z 8809に規定されている粘度計校正用標準液で検定されたものであれば特に制限はなく、回転式、振動式や細管式の粘度計を用いることができる。粘度計としては、Saybolt粘度計、Redwood粘度計等で測定でき、例えば、トキメック社製、円錐平板型E型粘度計、東機産業社製のE Type Viscometer(回転粘度計)、東京計器社製のB型粘度計BL、山一電機社製のFVM−80A、Nametore工業社製のViscoliner、山一電機社製のVISCO MATE MODEL VM−1G等を挙げることができる。その後、図13(B)に示すように、マスター型30の周囲に設けた段差32の周囲にはみ出した半硬化状態の第1の樹脂材料41bの突起に対して押圧部材473aを押し付けることで、このはみ出した半硬化状態の第1の樹脂材料41bの下面を平坦化することができる。以後は、再度UV光等の照射を行って、第1の樹脂材料41bを完全に硬化させる。この場合、図7(D)等に示す樹脂層部分41d,41d間を繋ぐ繋がり部48の上部は、当初から平坦な平坦部448bとなる。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0088】
例えば、上記実施形態においては、凹形部48b,148bを窪みとしたが平坦部とすることもできる。
【0089】
また、上記実施形態においては、レンズ樹脂層12等が光硬化性樹脂で形成されるものとし、光照射で樹脂材料を硬化させたが、光照射に加えて加熱により硬化を促進させてもよい。また、光硬化性樹脂に代えて、熱硬化性樹脂等の他のエネルギー硬化性樹脂で形成することもできる。
【0090】
サブマスター基板42に対するマスター型30の移動方法については、特に制限はないが、なるべく隣接する凹部42cに移動する経路とすることが処理速度上は望ましい。マスター型30に対してサブマスター基板42を移動させてもよいし、両者を移動させてもよい。両者で樹脂を押圧する際も同様であり、マスター型30をサブマスター基板42に押圧する代わりに、サブマスター基板42をマスター型30に押圧してもよいし、両者を移動して近づけてもよい。
【0091】
上記実施形態においては、最終的に得られるウェハレンズとして、基板上に光学レンズとして機能する樹脂層を設けたもの(レンズ基板)について説明したが、これに限らず、材質等が異なる独立した基板を特に有しておらず、光学レンズとして機能する部分とその周囲の平坦部、及び、それらを連結する部分が樹脂で一体的に構成されたものであってもよい。この場合、2つの成形型の間に樹脂材料を介在させて当該樹脂材料を硬化させることで光学レンズ部及びその周囲部が一体的に構成されたウェハレンズを作製することができる。
【0092】
上記実施形態においては、サブサブマスター型を用いてウェハレンズを作製する例について説明したが、これに限るものではなく、サブマスター型を用いてウェハレンズを作製するようにしてもよい。この場合、原版となるマスター型は、最終成形物であるウェハレンズのレンズ要素のポジ型とする。第1のレンズ樹脂層12と第2のレンズ樹脂層13ともに、サブサブマスター型を用いて成形を行ってもよいし、両者ともにサブマスター型を用いて成形を行ってもよいし、一方をサブサブマスター型、他方をサブマスター型で成形してもよい。
【0093】
また、上記では、凹部42cを設けることを前提としているが、凹部42cを設けず、直接サブマスター基板42上に樹脂層部分(樹脂レプリカ部)41dを転写する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1a,2a…レンズ本体、 1b,2b…フランジ部、 1c,2c…連結部、 4…光学レンズ、 10…ウェハレンズ、 11…基板、 12,13…レンズ樹脂層、 14…突起、 30…マスター型、 30a…端部、 31…成形面、 31a…光学転写面、 31b…フランジ転写面、 32…段差、 40…サブマスター型、 41…サブマスター樹脂層、 41b…樹脂材料、 41d…樹脂層部分、 42…サブマスター基板、 42c…凹部、 43…成形面、 43a…光学転写面、 43b…フランジ転写面、 43d…転写面要素、 44…残膜部、 48…繋がり部、 48b…凹形部、 50…サブサブマスター型、 51…サブサブマスター樹脂層、 51b…樹脂材料、 51d…樹脂層部分、 52…サブサブマスター基板、 53…成形面、 53a…光学転写面、 53b…フランジ転写面、 54…突起部、 61…アライメント駆動部、 61a…基板用ステージ部、 61b…金型用ステージ部、 62…ディスペンサー、 63…光源、 66…制御装置、 73…表面加工装置、 73b…切削具、 73c…切削装置、 100…製造装置、 AU…アレイユニット、 L…ダイシングライン、 L1,L2…レンズ要素、 OA…光軸、 OS1,OS2…光学面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学レンズに対応する形状が複数配列された第1成形面を有するマスター型を繰り返し用いて第1基板上に複数の樹脂レプリカ部を成形することにより、前記複数の樹脂レプリカ部を有する成形型を得る、成形型の製造方法であって、
前記複数の樹脂レプリカ部のうち隣接する樹脂レプリカ部間を残膜部以上の厚みで繋ぐ繋がり部を形成し得る樹脂量で、前記複数の樹脂レプリカ部を成形する成形工程と、
前記成形工程において形成された前記繋がり部を、所定の面粗さを有する凹形部又は平坦部に加工する加工工程と、
を備えることを特徴とする成形型の製造方法。
【請求項2】
前記繋がり部の前記凹形部は、前記残膜部との繋がり角度が100°以上の円弧凹形に加工されていることを特徴とする請求項1に記載の成形型の製造方法。
【請求項3】
前記繋がり部の前記凹形部は、アスペクト比0.1以下の矩形凹形に加工されることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の成形型の製造方法。
【請求項4】
前記繋がり部の前記凹形部は、面粗さRaが0.5μ以上10μm以下に加工されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の成形型の製造方法。
【請求項5】
前記凹形部は、前記繋がり部の一部を硬化後に除去することにより、除去後に残った部分として形成されることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の成形型の製造方法。
【請求項6】
前記凹形部は、機械加工によって形成されることを特徴とする請求項5に記載の成形型の製造方法。
【請求項7】
前記凹形部は、レーザー加工によって形成されることを特徴とする請求項5に記載の成形型の製造方法。
【請求項8】
前記凹形部は、前記マスター型による型締め中において樹脂の硬化前に前記繋がり部の一部を除去することにより、除去後に残った部分として形成されることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の成形型の製造方法。
【請求項9】
前記凹形部は、前記マスター型による型締め中において樹脂の半硬化状態で前記繋がり部の一部を押圧した後に全硬化させることにより、形成されることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の成形型の製造方法。
【請求項10】
前記繋がり部の一部を押圧する際の樹脂の半硬化時の粘度は、10Pa・s以上10000Pa・s以下であることを特徴とする請求項9に記載の成形型の製造方法。
【請求項11】
前記第1基板は、前記樹脂レプリカ部に対応する成形位置に前記第1成形面より大きいサイズを有し内部が閉じた形状の凹部を有し、前記マスター型は、前記第1成形面の周囲に環状の段差を有することを特徴とする請求項1から10までのいずいれか一項に記載の成形型の製造方法。
【請求項12】
前記成形工程は、
前記第1成形面と前記第1基板上の成形位置との間に第1の樹脂材料を満たして硬化させ、前記マスター型を離型することで、前記第1成形面を転写した前記樹脂レプリカ部を得る転写工程と、
前記転写工程を前記マスター型と前記第1基板との相対位置を変更しつつ繰り返し実行することにより、前記第1基板上に前記複数の樹脂レプリカ部を2次元的に配列した第1形状転写層を得る繰返工程と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の成形型の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の成形型の製造方法により得られた前記第1形状転写層を有する成形型を第1の成形型とし、当該第1の成形型と成形型用の第2基板との間に第2の樹脂材料を満たし、当該第2の樹脂材料を硬化させ、前記第1の成形型を離型することにより、第2形状転写層を有する第2の成形型を得ることを特徴とする成形型の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の成形型の製造方法により得られた前記第2の成形型と請求項12に記載の成形型の製造方法により得られた成形型との少なくとも一方と、第3基板との間に第3の樹脂材料を満たし、当該第3の樹脂材料を硬化させ、前記成形型を離型することにより、前記第3基板の表面に複数のレンズ要素が形成されたウェハレンズを得るウェハレンズの製造方法。
【請求項15】
請求項13に記載の成形型の製造方法により得られた前記第2の成形型と請求項12に記載の成形型の製造方法により得られた成形型との少なくとも一方と、請求項14に記載のウェハレンズの製造方法により得られた前記ウェハレンズの裏面との間に第4の樹脂材料を満たし、当該第4の樹脂材料を硬化させ、前記成形型を離型することにより、前記第3基板の裏面に複数の光学レンズが形成されたウェハレンズを得ることを特徴とするウェハレンズの製造方法。
【請求項16】
請求項14及び15のいずれか一項に記載のウェハレンズの製造方法により得られた前記ウェハレンズを切断して個片化する工程を備えることを特徴とする光学レンズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−183777(P2012−183777A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49713(P2011−49713)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】