説明

成形機の射出装置

【課題】シリンダ装置と他の駆動装置とによって好適に射出を行うことができる成形機の射出装置を提供する。
【解決手段】射出装置1は、キャビティ105に溶湯を押し出すプランジャ5と、プランジャ5と連結された射出シリンダ装置7と、変換シリンダ装置29と、射出ヘッド側室21hと変換ヘッド側室33hとを連通するヘッド側連通路51と、変換ピストン35により変換ヘッド側室33hの作動液を射出ヘッド側室21hへ押し出す方向へ変換ロッド37を駆動可能な駆動装置31と、射出ヘッド側室21hに作動液を供給可能なアキュムレータ11と、射出ヘッド側室21hから変換ヘッド側室33hへの作動液の流れを禁止可能なヘッド側逆止弁55とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機の射出装置に関する。成形機は、例えば、ダイカストマシンや射出成形機である。
【背景技術】
【0002】
成形材料を押し出すプランジャを液圧機器と他の駆動機器(例えば電動機)との組み合わせにより駆動する、いわゆるハイブリッド式の射出装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、プランジャに連結された油圧シリンダと、当該油圧シリンダと並列に配置されてプランジャに連結されたボールねじ機構と、当該ボールねじ機構を駆動する電動機とを有する射出装置が開示されている。当該射出装置では、電動機(ボールねじ機構)の駆動力によって射出が行われ、油圧シリンダの駆動力によって増圧が行われる。
【0004】
また、例えば、特許文献2では、プランジャに連結された射出シリンダと、当該射出シリンダの後方に連通するブースタと、射出シリンダに作動液を供給可能なアキュムレータとを有する射出装置が開示されている。ブースタは、油圧シリンダにより構成され、電動機及びボールねじ機構によってピストンが駆動されることにより作動液を射出シリンダに供給する。当該射出装置では、ブースタから射出シリンダへの作動液の供給により低速射出が行われ、ブースタ及びアキュムレータの双方から射出シリンダへの作動液の供給により高速射出が行われ、ブースタから射出シリンダへの作動液の供給により増圧が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−000887号公報
【特許文献2】特開2008−155280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のハイブリッド式の射出装置は、種々の不都合を生じている。
【0007】
例えば、特許文献1の技術では、油圧シリンダの駆動力によってプランジャを駆動するときにおいても、ボールねじ機構はプランジャに追従しなければならない。その結果、ボールねじ機構はプランジャと同等のストロークが必要とされ、大型化する。また、射出速度がボールねじ機構の限界速度に制限される。
【0008】
また、例えば、特許文献2の技術では、低速射出から増圧までブースタが使用されることから、やはりボールねじ機構のストロークが大きくなる。また、増圧においてもブースタが使用されることから、電動機は大きな駆動力を発揮可能なものでなければならず、電動機が大型化し、コストも増大する。
【0009】
従って、シリンダ装置と他の駆動装置とによって好適に射出を行うことができる新たな射出装置が提供されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る成形機の射出装置は、キャビティに成形材料を押し出すプランジャと、前記プランジャと連結された射出ロッド、当該射出ロッドに固定された射出ピストン、及び、当該射出ピストンを収容する射出シリンダチューブを有し、前記射出シリンダチューブ内が前記射出ピストンにより前記射出ロッド側の射出ロッド側室及びその反対側の射出ヘッド側室に区画された射出シリンダ装置と、変換ロッド、当該変換ロッドに固定された変換ピストン、及び、当該変換ピストンを収容する変換シリンダチューブを有し、前記変換シリンダチューブ内において前記変換ピストンに対して前記変換ロッドとは反対側に変換ヘッド側室が形成された変換シリンダ装置と、前記射出ヘッド側室と前記変換ヘッド側室とを連通するヘッド側連通路と、前記変換ピストンにより前記変換ヘッド側室の作動液を前記射出ヘッド側室へ押し出す方向へ前記変換ロッドを駆動可能な駆動装置と、前記射出ヘッド側室に作動液を供給可能なアキュムレータと、前記射出ヘッド側室から前記変換ヘッド側室への作動液の流れを禁止可能な制御弁と、を有する。
【0011】
好適には、前記変換シリンダチューブ内において前記変換ピストンに対して前記変換ロッド側に変換ロッド側室が形成されており、前記射出ロッド側室と前記変換ロッド側室とを連通するロッド側連通路が設けられている。
【0012】
好適には、記変換ピストンの直径と前記射出ピストンの直径との比と、前記変換ロッドの直径と前記射出ロッドの直径との比とが等しい。
【0013】
好適には、前記変換ピストンと前記射出ピストンとは直径が等しく、前記変換ロッドと前記射出ロッドとは直径が等しい。
【0014】
好適には、前記変換ピストンの直径は前記射出ピストンの直径よりも大きい。
【0015】
好適には、前記駆動装置は、回転式の電動機と、電動機の回転を並進運動に変換して前記変換ロッドに伝達する伝達機構と、を有する。
【0016】
好適には、前記アキュムレータから前記射出ヘッド側室への作動液の流れを制御する液圧回路と、前記駆動装置によって前記変換ピストンを前記変換ヘッド側室側へ移動させて前記変換ヘッド側室から前記射出ヘッド側室へ作動液を供給することによって低速射出を行い、前記アキュムレータから前記射出ヘッド側室へ作動液を供給することによって高速射出を行うように前記駆動装置及び前記液圧回路を制御する制御装置と、を更に有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シリンダ装置と他の駆動装置とによって好適に射出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るダイカストマシンの射出装置の要部の構成を示す模式図。
【図2】図1の射出装置の動作を説明する図。
【図3】変形例に係る低速射出機構を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るダイカストマシンDC1の射出装置1の要部の構成を示す図である。
【0020】
射出装置1は、不図示の型締装置に保持された固定金型101及び移動金型103により形成されたキャビティ105に溶湯(溶融状態の金属材料)を射出・充填する装置である。
【0021】
射出装置1は、キャビティ105に連通するスリーブ3と、スリーブ3内において溶湯をキャビティ105へ押し出すプランジャ5と、プランジャ5を駆動する射出シリンダ装置7とを有している。
【0022】
また、射出装置1は、主として低速射出において射出シリンダ装置7に作動液を供給するための低速射出機構9を有するとともに、他の工程(高速射出等)において射出シリンダ装置7に作動液を供給するためのアキュムレータ11、タンク12及びポンプ13を有している。さらに、射出装置1は、これら液圧源から射出シリンダ装置7への作動液の流れを制御するために、液圧回路15及び制御装置17を有している。
【0023】
以下、概ね、上記の列挙順に詳細を説明する。
【0024】
(スリーブ、プランジャ及び射出シリンダ装置)
スリーブ3は、例えば、固定金型101に挿通されるように設けられている。プランジャ5は、スリーブ3を摺動するプランジャチップ5aと、プランジャチップ5aに固定されたプランジャロッド5bとを有している。
【0025】
スリーブ3に形成された給湯口3aから溶湯がスリーブ3内に供給された状態で、プランジャチップ5aがスリーブ3内をキャビティ105に向かって摺動する(前進する)ことにより、溶湯はキャビティ105に射出、充填される。
【0026】
射出シリンダ装置7は、例えば、単動式のシリンダ装置により構成されており、射出シリンダチューブ21と、射出シリンダチューブ21の内部を摺動可能な射出ピストン23と、射出ピストン23に固定され、射出シリンダチューブ21から延び出る射出ロッド25とを有している。
【0027】
射出シリンダチューブ21は、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体である。射出シリンダチューブ21の内部は、射出ピストン23により、射出ロッド25が延び出る側の射出ロッド側室21rと、その反対側の射出ヘッド側室21hとに区画されている。
【0028】
射出ヘッド側室21hに作動液が供給されることにより、射出ピストン23は前進(プランジャ5側へ移動)し、射出ロッド側室21rに作動液が供給されることにより、射出ピストン23は後退する。
【0029】
射出シリンダ装置7は、プランジャ5に対して同軸に配置され、射出ロッド25は、プランジャ5に継手27を介して連結され、射出シリンダチューブ21は、不図示の型締装置などに対して固定的に設けられている。従って、射出ピストン23の射出シリンダチューブ21に対する移動により、プランジャ5はスリーブ3内を前進又は後退する。
【0030】
(低速射出機構)
低速射出機構9は、作動液を送出可能な変換シリンダ装置29と、変換シリンダ装置29を駆動する駆動装置31とを有している。また、低速射出機構9は、液圧回路15のうち、変換シリンダ装置29と射出シリンダ装置7とを連通する部分を含んでいる。
【0031】
変換シリンダ装置29は、変換シリンダチューブ33と、変換シリンダチューブ33の内部を摺動可能な変換ピストン35と、変換ピストン35に固定され、変換シリンダチューブ33から延び出る変換ロッド37とを有している。
【0032】
変換シリンダチューブ33は、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体である。変換シリンダチューブ33の内部は、変換ピストン35により、変換ロッド37が延び出る側の変換ロッド側室33rと、その反対側の変換ヘッド側室33hとに区画されている。
【0033】
変換ピストン35(変換シリンダチューブ33)の直径は、例えば、射出ピストン23(射出シリンダチューブ21)の直径と同一のDである。また、変換ロッド37の直径は、例えば、射出ロッド25の直径と同一のdである。一方、変換シリンダチューブ33の長さは、射出シリンダチューブ21の長さよりも短い。
【0034】
変換シリンダ装置29は、変換ピストン35が変換ヘッド側室33h側へ駆動されることにより、変換ヘッド側室33hから射出ヘッド側室21hに作動液を供給可能であり、変換ピストン35が変換ロッド側室33r側へ駆動されることにより、変換ロッド側室33rから射出ロッド側室21rに作動液を供給可能である。
【0035】
駆動装置31は、低速用電動機39と、低速用電動機39の駆動力を変換ロッド37に伝達する伝達機構41とを有している。
【0036】
低速用電動機39は、例えば、回転式の電動機であり、特に図示しないが、界磁及び電機子の一方を構成するステータと、界磁及び電機子の他方を構成し、ステータに対して回転可能なロータとを有している。なお、低速用電動機39は、直流モータでも交流モータでもよい。また、低速用電動機39は、誘導モータや同期モータ等の適宜なモータにより構成されてよい。
【0037】
低速用電動機39は、例えば、サーボモータとして構成されており、低速用電動機39の回転を検出するエンコーダ43と、低速用電動機39に電力を供給するサーボドライバ45と共にサーボ機構を構成している。
【0038】
低速用電動機39は、ブレーキ付きの電動機であることが好ましい。例えば、特に図示しないが、低速用電動機39は、ロータと共にステータに対して回転するディスクと、ステータに対して回転不可能なディスクと、これら2枚のディスクを当接させるばね力を生じるばねと、ばね力に抗して2枚のディスクを離間させることが可能なアーマチュアとを有している。
【0039】
なお、後述する動作の説明において、低速用電動機39が停止しているとき、低速用電動機39は、トルクフリーの状態とされてもよいし、一定位置に停止するように位置制御されてもよいし、ブレーキが使用されてもよい。射出装置の具体的な構成及び低速用電動機39が停止される状況に応じて適切な停止方法が選択されてよい。
【0040】
伝達機構41は、低速用電動機39の回転を並進運動に変換してプランジャ5に伝達する。伝達機構41は、例えば、ねじ機構により構成され、低速用電動機39により回転駆動されるナット47と、ナット47が螺合されるねじ軸49とを有している。
【0041】
ナット47は、例えば、低速用電動機39と一体的に構成されており、低速用電動機39の内部において、低速用電動機39の不図示のロータに対して同心状に配置されるとともに、当該ロータに固定されている。そして、ナット47は、軸方向の移動が規制されている。
【0042】
ねじ軸49は、変換ロッド37に対して同軸に固定されている。なお、ねじ軸49及び変換ロッド37は、一体的に形成されていてもよい。ねじ軸49は、その軸方向への移動が許容されている一方で、キー溝等の不図示の回り止め機構により軸回りの回転が規制されている。
【0043】
そして、ナット47が低速用電動機39により回転駆動されると、ねじ軸49が軸方向へ移動する。これにより、変換ピストン35が変換シリンダチューブ33内を摺動し、変換ヘッド側室33h若しくは変換ロッド側室33rから作動液が押し出される。
【0044】
なお、ねじ軸49の長さ(伝達機構41のストローク)は、変換シリンダ装置29のストロークと同等の大きさを有すれば十分であり、射出シリンダ装置7のストロークよりも短い。
【0045】
液圧回路15の低速射出機構9に含まれる部分は、変換ヘッド側室33hと射出ヘッド側室21hとを連通するヘッド側連通路51と、変換ロッド側室33rと射出ロッド側室21rとを連通するロッド側連通路53とを有している。これらの流路は、例えば、鋼管、可撓性のホース又は金属ブロックにより構成されている。
【0046】
また、液圧回路15の低速射出機構9に含まれる部分は、ヘッド側連通路51に設けられたヘッド側逆止弁55と、ロッド側連通路53に設けられたロッド側逆止弁57とを有している。
【0047】
ヘッド側逆止弁55及びロッド側逆止弁57は、例えば、パイロット圧力が導入されて制御されるものである。パイロット圧力としては、例えば、不図示の液圧回路を介してアキュムレータ11の圧力が利用される。
【0048】
ヘッド側逆止弁55は、パイロット圧力が導入されていないときは、変換ヘッド側室33h側から射出ヘッド側室21h側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、ヘッド側逆止弁55は、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを許容する(開かれる)。
【0049】
ロッド側逆止弁57は、パイロット圧力が導入されていないときは、変換ロッド側室33r側から射出ロッド側室21r側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、ロッド側逆止弁57は、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを許容する(開かれる)。
【0050】
(高速射出等に係る液圧源及び液圧回路)
アキュムレータ11は、重量式、ばね式、気体圧式(空気圧式含む)、シリンダ式、プラダ式などの適宜な形式のアキュムレータにより構成されてよい。例えば、アキュムレータ11は、気体圧式、シリンダ式又はプラダ式のアキュムレータであり、アキュムレータ11内に保持されている気体(例えば空気若しくは窒素)が圧縮されることにより蓄圧され、その蓄圧された圧力により作動液を供給する。
【0051】
タンク12は、例えば、開放タンクであり、大気圧下で作動液を保持している。タンク12は、射出シリンダ装置7から排出される作動液を受け入れ、また、ポンプ13を介して射出シリンダ装置7及びアキュムレータ11に作動液を供給する。
【0052】
ポンプ13は、歯車ポンプやベーンポンプ等のロータの回転により作動液を吐出するロータリポンプであってもよいし、アキシャル型のプランジャポンプやラジアル式のプランジャポンプ等のピストンの往復により作動液を吐出するプランジャポンプであってもよい。また、ポンプ13は、ロータやピストンの1周期の運動における吐出量が、固定された定容量ポンプであってもよいし、可変とされた可変容量ポンプであってもよい。ポンプ13は、1方向に作動液を吐出できれば十分であるが、双方向(2方向)ポンプと構造が同一であってもよい。
【0053】
ポンプ13は、ポンプ用電動機59によって駆動される。ポンプ用電動機59は、直流モータでも交流モータでもよい。また、ポンプ用電動機59は、誘導モータや同期モータ等の適宜なモータにより構成されてよい。ポンプ用電動機59は、例えば、サーボモータとして構成されており、ポンプ用電動機59の回転を検出するエンコーダ61と、ポンプ用電動機59に電力を供給するサーボドライバ(サーボアンプ)63と共にサーボ機構を構成している。
【0054】
なお、後述する動作の説明において、ポンプ用電動機59が停止しているとき、ポンプ用電動機59は、トルクフリーの状態とされてもよいし、一定位置に停止するように位置制御されてもよいし、ブレーキが使用されてもよい。射出装置の具体的な構成及びポンプ用電動機59が停止される状況に応じて適切な停止方法が選択されてよい。
【0055】
液圧回路15は、射出シリンダ装置7、タンク12、ポンプ13及びアキュムレータ11を互いに接続する複数の流路、及び、当該複数の流路における作動液の流れを制御する複数の弁を有している。複数の流路は、例えば、鋼管、可撓性のホース又は金属ブロックにより構成されている。液圧回路15は、具体的には、例えば、以下に述べる流路及び弁を有している。
【0056】
液圧回路15は、アキュムレータ11と射出ヘッド側室21hとを接続する第1流路65と、射出ロッド側室21rとタンク12とを接続する第2流路67と、射出ロッド側室21rと射出ヘッド側室21hとを接続する第3流路69とを有している。なお、第1流路65及び第3流路69は、射出ヘッド側室21h側の一部が互いに共用され、第2流路67及び第3流路69は、射出ロッド側室21r側の一部が互いに共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。
【0057】
射出装置1は、アキュムレータ11から第1流路65を介して射出ヘッド側室21hへ作動液を供給して射出ピストン23を前進させることが可能である。また、射出装置1は、射出ピストン23の前進に伴って射出ロッド側室21rから押し出される作動液を第2流路67を介してタンク12に排出することが可能である。換言すれば、射出装置1は、射出ロッド側室21rの圧抜きが可能である。また、射出装置1は、射出ピストン23の前進に伴って射出ロッド側室21rから押し出される作動液を第3流路69を介して射出ヘッド側室21hに還流させることも可能である。すなわち、第3流路69はランアラウンド回路を構成している。
【0058】
液圧回路15は、ポンプ13の吐出口とアキュムレータ11とを接続する第4流路71と、ポンプ13の吐出口と射出ヘッド側室21hとを接続する第5流路73とを有している。なお、第4流路71のアキュムレータ11側の一部は第1流路65のアキュムレータ11側の一部と共用され、第5流路73の射出ヘッド側室21h側の一部は第3流路69の射出ヘッド側室21h側の一部と共用され、第4流路71及び第5流路73のポンプ13側の一部は互いに共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。
【0059】
射出装置1は、ポンプ13から第4流路71を介してアキュムレータ11に作動液を供給することにより、アキュムレータ11を蓄圧することが可能である。また、射出装置1は、ポンプ13から射出ヘッド側室21hに作動液を供給することにより、射出ピストン23を前進させることが可能である。
【0060】
液圧回路15は、第2流路67及び第3流路69の射出ロッド側室21r側の共用部分に設けられたサーボバルブ75を有している。サーボバルブ75は、入力された電圧に応じた開口度で開くことにより、流量を無段階で調整可能である。また、サーボバルブ75は、開口度に応じた信号を出力可能であり、その信号に基づいてフィードバック制御がなされることによりサーボ機構を構成する。サーボバルブ75は、例えば、圧力補償付の流量制御弁により構成されている。サーボバルブ75は、射出ロッド側室21rから排出される作動液の流量を制御して射出シリンダ装置7の動作(速度)を制御可能であり、いわゆるメータアウト回路を構成している。
【0061】
液圧回路15は、第1逆止弁VLA〜第4逆止弁VLDを有している。これらは、例えば、パイロット圧力が導入されて制御されるものである。パイロット圧力としては、例えば、不図示の液圧回路を介してアキュムレータ11の圧力が利用される。第1逆止弁VLA〜第4逆止弁VLDの配置及び機能は、具体的には以下のとおりである。
【0062】
第1逆止弁VLAは、第1流路65に設けられている。第1逆止弁VLAは、パイロット圧力が導入されていないときは、アキュムレータ11側から射出ヘッド側室21h側への作動液の流れを禁止し、その反対方向の流れを許容する。また、第1逆止弁VLAは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを許容する(開かれる)。
【0063】
第2逆止弁VLBは、第2流路67に設けられている。第2逆止弁VLBは、パイロット圧力が導入されていないときは、射出ロッド側室21r側からタンク12側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第2逆止弁VLBは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを禁止する(閉じられる)。
【0064】
第3逆止弁VLCは、第3流路69に設けられている。第3逆止弁VLCは、パイロット圧力が導入されていないときは、射出ロッド側室21r側から射出ヘッド側室21h側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第3逆止弁VLCは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを禁止する(閉じられる)。
【0065】
第4逆止弁VLDは、第4流路71に設けられている。第4逆止弁VLDは、パイロット圧力が導入されていないときは、ポンプ13側からアキュムレータ11側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第4逆止弁VLDは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを禁止する(閉じられる)。
【0066】
上記の他、液圧回路15は、ポンプ13の作動液を中子用のシリンダ装置等の適宜な装置に送出するための流路及び制御弁を有していてもよい。
【0067】
(制御系)
制御装置17は、例えば、CPU77、ROMやRAM等のメモリ79、入力回路81、及び、出力回路83を含んで構成されている。CPU77は、メモリ79に記憶されたプログラムを実行し、入力回路81を介して入力される入力信号に基づいて、各部を制御するための制御信号を出力回路83を介して出力する。
【0068】
入力回路81に信号を入力するのは、例えば、ユーザの入力操作を受け付ける入力装置85、エンコーダ43及び61、射出ロッド25の位置を検出する射出位置センサ89、変換ロッド37の位置を検出する変換位置センサ91、サーボバルブ75、射出ヘッド側室21hの圧力を検出するヘッド圧力センサ93、射出ロッド側室21rの圧力を検出するロッド圧力センサ95、及び、アキュムレータ11の圧力を検出するアキュムレータ圧力センサ97である。
【0069】
出力回路83が信号を出力するのは、例えば、ユーザに情報を表示する表示器87、サーボドライバ45及び63、サーボバルブ75、及び、各種の弁へのパイロット圧力の導入を制御する不図示の液圧回路である。
【0070】
射出位置センサ89は、射出シリンダチューブ21に対する射出ロッド25の位置を検出するものであり、プランジャ5の位置を間接的に検出するものである。射出位置センサ89は、例えば、射出ロッド25に固定され若しくは形成され、射出ロッド25の軸方向に延びる不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。なお、射出位置センサ89、又は、制御装置17は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
【0071】
変換位置センサ91は、変換シリンダチューブ33に対する変換ロッド37の位置を検出するものであり、その構成は射出位置センサ89と同様であるので詳細は省略する。
【0072】
ヘッド圧力センサ93及びロッド圧力センサ95は、射出ヘッド側室21h及び射出ロッド側室21rの圧力を検出することにより、プランジャ5が溶湯に加える圧力を間接的に検出するものである。また、アキュムレータ圧力センサ97は、アキュムレータ11の充填完了などの判定に利用される。
【0073】
(射出装置の動作)
図2は、射出装置1の動作を説明する図である。図2において、横軸は時間を示している。また、実線Lvは射出速度の変化を示し、実線Lpは射出圧力の変化を示している。実線Lv及びLpが描かれたグラフにおいて、縦軸は射出速度及び射出圧力の大きさを示している。また、当該グラフの下方においては、プランジャ5、低速用電動機39、サーボバルブ75、ポンプ用電動機59及びアキュムレータ11の動作を示している。なお、サーボバルブ75のON/OFFは、開口度が制御されている状態/開口度が制御されずに開かれている若しくは閉じられている状態を示している。
【0074】
射出装置1は、概観すると、低速射出、高速射出、及び、増圧(昇圧)を順に行う。すなわち、射出装置1は、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止するために比較的低速でプランジャ5を前進させ、次に、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速でプランジャ5を前進させる。その後、射出装置1は、成形品のヒケをなくすために、プランジャ5の前進する方向の力によりキャビティ内の溶湯を増圧する。具体的には、以下のとおりである。
【0075】
(低速射出:t0〜t1)
低速射出の開始直前において、射出装置1は、図1に示す状態となっている。具体的には、まず、射出ピストン23は射出ヘッド側室21h側の所定位置(初期位置)に位置し、変換ピストン35は変換ロッド側室33r側の所定位置(初期位置)に位置している。これらの初期位置は、ピストンの可動範囲内の適宜な位置とされてよいが、ピストンの可動限界とされていることが好ましい。
【0076】
また、射出装置1において、低速用電動機39及びポンプ用電動機59は停止している。アキュムレータ11は蓄圧が完了している。サーボバルブ75、ヘッド側逆止弁55、ロッド側逆止弁57及び第1逆止弁VLA〜第4逆止弁VLDは、アキュムレータ11からの作動液の放出が禁止されている限り適宜な状態とされてよいが、例えば、サーボバルブ75は閉じられ、ヘッド側逆止弁55、ロッド側逆止弁57及び第1逆止弁VLAはパイロット圧力(開くためのもの)が導入されておらず、第2逆止弁VLB〜第4逆止弁VLDはパイロット圧力(閉じるためのもの)が導入されている。
【0077】
固定金型101及び移動金型103の型締が終了し、溶湯がスリーブ3に供給されるなど、所定の低速射出開始条件が満たされると、制御装置17は、変換ピストン35を変換ヘッド側室33h側へ移動させる方向に低速用電動機39を駆動する(正転させる)。これにより、変換ヘッド側室33hから射出ヘッド側室21hに作動液が供給され、射出ピストン23及びプランジャ5が前進する。すなわち、駆動装置31の駆動力によって低速射出が行われる。
【0078】
このとき、ロッド側逆止弁57は、パイロット圧力が導入されて開かれる。従って、射出ピストン23の前進に伴って射出ロッド側室21rから排出される作動液は、変換ピストン35の移動に伴って容積が拡大する変換ロッド側室33rに供給される。ここで、変換ピストン35と射出ピストン23とは直径(D)が等しく、且つ、変換ロッド37と射出ロッド25とは直径(d)が等しいから、変換シリンダ装置29と射出シリンダ装置7との間においては、過不足なく、作動液の供給及び受給が行われる。
【0079】
プランジャ5の速度は、低速用電動機39の回転数の調整により制御される。具体的には、制御装置17は、変換位置センサ91(射出位置センサ89でもよい)により検出されるプランジャ5の速度に基づいて、低速用電動機39の回転数をフィードバック制御する。
【0080】
なお、図2では、低速射出速度が一定の場合を例示しているが、低速射出速度は適宜に変速されてよい。このとき、低速用電動機39のブレーキを利用して、減速制御が行われてもよい。
【0081】
(高速射出:t1〜t2)
制御装置17は、変換位置センサ91(射出位置センサ89でもよい)の検出値に基づくプランジャ5の位置が所定の高速切換位置に到達すると、ロッド側逆止弁57へのパイロット圧力の導入を停止するとともに低速用電動機39を停止する。また、制御装置17は、第1逆止弁VLAに開くパイロット圧力を導入し、第3逆止弁VLCへの閉じるパイロット圧力の導入を停止し、サーボバルブ75を適宜な開度に調整する。
【0082】
第1逆止弁VLAが開かれることにより、アキュムレータ11から第1逆止弁VLAを介して射出ヘッド側室21hに作動液が供給され、射出ピストン23及びプランジャ5は比較的高速で前進する。射出ピストン23の前進に伴って射出ロッド側室21rから排出された作動液は、第3逆止弁VLCを介して射出ヘッド側室21hに還流される。
【0083】
一方、変換シリンダ装置29においては、ヘッド側逆止弁55が自閉することにより、アキュムレータ11の作動液が射出ヘッド側室21hを介して変換ヘッド側室33hへ流入することが禁止されるとともに、ロッド側逆止弁57が自閉することにより、射出ロッド側室21rの作動液が変換ロッド側室33rに流入することが禁止される。従って、変換ピストン35は、高い圧力が加えられることなく、その場に停止している。なお、低速射出の終了時において、変換ピストン35は、変換ヘッド側室33h側の可動限界若しくはその付近に位置することが好ましい。
【0084】
プランジャ5の速度は、サーボバルブ75の開口度の調整により制御される。なお、制御装置17は、射出位置センサ89により検出されるプランジャ5の速度に基づいて、サーボバルブ75の開口度をフィードバック制御してもよい。
【0085】
(減速射出:t2〜t3)
溶湯がキャビティ105にある程度充填されると、プランジャ5は、その充填された溶湯から反力を受けて減速され、その一方で、射出圧力は、急激に上昇していく。なお、各部の動作は、高速射出時と同様である。ただし、充填時の衝撃を緩和するために、プランジャ5が所定の減速位置に到達するなど所定の減速開始条件が満たされたときにサーボバルブ75の開口度を小さくするなど、適宜な減速制御がなされてもよい。
【0086】
(増圧:t3〜t4)
所定の増圧開始条件が満たされると、制御装置17は、第2逆止弁VLBへの閉じるパイロット圧力の導入を停止する。増圧開始条件は、例えば、ヘッド圧力センサ93及びロッド圧力センサ95により検出される射出圧力の検出値が所定の値に到達したこと、又は、射出位置センサ89により検出されるプランジャ5の検出位置が所定の位置に到達したことである。
【0087】
第2逆止弁VLBへの閉じるパイロット圧力の導入が停止されることにより、射出ロッド側室21rはタンク圧とされる。そして、射出ヘッド側室21hの圧力はアキュムレータ11の圧力と同等となるまで上昇し、射出圧力は終圧に到達する。また、射出速度は、キャビティ105に溶湯が完全に充填されることにより0となる。なお、第3逆止弁VLCは、射出ロッド側室21rがタンク圧とされることによって自閉するが、閉じるパイロット圧力が導入されてもよい。
【0088】
(保圧:t4〜t5)
制御装置17は、射出圧力が終圧となっている状態を維持する。この間に、溶湯は冷却されて凝固する。溶湯が凝固すると、制御装置17は、サーボバルブ75を閉じ、第1逆止弁VLAへの開くパイロット圧力の導入を停止し、第2逆止弁VLBに閉じるパイロット圧力を導入する。これにより、アキュムレータ11から射出ヘッド側室21hへの液圧の供給及び射出ロッド側室21rからタンク12への作動液の排出が停止され、保圧は終了する。
【0089】
なお、制御装置17は、適宜に溶湯が凝固したか否かを判定する。例えば、制御装置は、終圧が得られた時点等の所定の時点から所定の時間が経過したか否かにより、溶湯が凝固したか否か判定する。
【0090】
(押出追従:t6〜t7)
保圧終了後、制御装置17は、不図示の型締装置に型開きを行わせるとともに、不図示の押出装置により固定金型101から成形品を押し出す。このとき、制御装置17は、ポンプ用電動機59を駆動して、ポンプ13から射出ヘッド側室21hに作動液を供給するとともに、射出ロッド側室21rの作動液をタンク12に排出可能とし、プランジャ5によりビスケットを押し出す。
【0091】
なお、ポンプ13から射出ヘッド側室21hへの作動液の供給は、例えば、第3逆止弁VLCへのパイロット圧力の導入を停止して、第3流路69を介して行われる。また、この際、射出ロッド側室21rから排出される作動液は、例えば、サーボバルブ75を開くことによって射出時と同様に、第3流路を介して射出ヘッド側室21hに還流される。射出ロッド側室21rの作動液は、第3流路69と第2流路67との連通を遮断することにより第2流路67を介してタンク12に排出されてもよい。
【0092】
(プランジャ後退:t8〜t10)
制御装置17は、低速用電動機39を、変換ピストン35が変換ロッド側室33r側へ移動する方向を回転させる(逆転させる)。これにより、変換ロッド側室33rから射出ロッド側室21rに作動液が供給され、射出ピストン23及びプランジャ5が後退する。すなわち、駆動装置31の駆動力によってプランジャ5の後退が行われる。
【0093】
このとき、ヘッド側逆止弁55は、パイロット圧力が導入されて開かれる。従って、射出ピストン23の後退に伴って射出ヘッド側室21hから排出される作動液は、変換ピストン35の移動に伴って容積が拡大する変換ヘッド側室33hに供給される。なお、低速射出時と同様に、変換シリンダ装置29と射出シリンダ装置7との間においては、過不足なく、作動液の供給及び受給が行われる。
【0094】
制御装置17は、変換位置センサ91の検出値に基づいて、変換ピストン35が初期位置に復帰したことを検知すると(時刻t9)、低速用電動機39を停止させるとともにヘッド側逆止弁55へのパイロット圧力の導入を停止する。
【0095】
そして、制御装置17は、ポンプ用電動機59を駆動してポンプ13から射出ロッド側室21rに作動液を供給するとともに、射出ヘッド側室21hの作動液をタンク12に排出可能とし、射出ピストン23及びプランジャ5を後退させる。
【0096】
なお、ポンプ13から射出ロッド側室21rへの作動液の供給は、例えば、サーボバルブ75を開くことにより、第5流路73のポンプ13側部分と、第3流路69の射出ロッド側室21r側部分とを介して行われる。また、射出ヘッド側室21hからタンク12への作動液の排出は、例えば、射出ヘッド側室21hとタンク12とを接続する不図示の流路に設けられた不図示の弁が開かれることにより行われる。射出ヘッド側室21hの作動液は、第1逆止弁VLAを介してアキュムレータ11に排出されてもよい。
【0097】
変換シリンダ装置29によるプランジャ5の後退と、ポンプ13によるプランジャ5の後退とは、順序が逆であってもよいし、また、少なくとも一部が同時に行われてもよい。
【0098】
(アキュムレータ充填:t11〜t12)
制御装置17は、第4逆止弁VLDへの閉じるパイロット圧力の導入を停止し、ポンプ用電動機59を駆動する。一方、第2逆止弁VLB及び第3逆止弁VLCは、パイロット圧力が導入されて閉じられ、また、サーボバルブ75も閉じられる。従って、ポンプ13から第4流路71を介してアキュムレータ11に作動液が供給され、アキュムレータ11の蓄圧が行われる。なお、第1逆止弁VLAは自閉する。
【0099】
アキュムレータ圧力センサ97の検出圧力が所定の蓄圧完了圧力に到達するなど、アキュムレータ11の蓄圧の完了条件が満たされると、制御装置17は、ポンプ用電動機59を停止し、第4逆止弁VLDへ閉じるパイロット圧力を導入する。なお、プランジャ5(射出ピストン23)の後退と、アキュムレータ充填とは、順序が逆であってもよい。
【0100】
以上の実施形態によれば、射出装置1は、キャビティ105に溶湯を押し出すプランジャ5と、プランジャ5と連結された射出シリンダ装置7と、変換シリンダ装置29と、射出ヘッド側室21hと変換ヘッド側室33hとを連通するヘッド側連通路51と、変換ピストン35により変換ヘッド側室33hの作動液を射出ヘッド側室21hへ押し出す方向へ変換ロッド37を駆動可能な駆動装置31と、射出ヘッド側室21hに作動液を供給可能なアキュムレータ11と、射出ヘッド側室21hから変換ヘッド側室33hへの作動液の流れを禁止可能なヘッド側逆止弁55と、を有している。
【0101】
従って、駆動装置31の駆動力によって変換シリンダ装置29及び射出シリンダ装置7を介してプランジャ5を駆動可能であるとともに、アキュムレータ11により射出シリンダ装置7に作動液を供給してプランジャ5を駆動可能である。その結果、例えば、アキュムレータ11によって高圧の作動液を供給して高速射出を行い、駆動装置31により精密な制御で低速射出を行うなど、各駆動源の長所を引き出して好適な射出を行うことができる。
【0102】
さらに、駆動装置31とプランジャ5との間には、変換シリンダ装置29が介在していることから、プランジャ5は、駆動装置31が停止していても移動可能であり、駆動装置31は、アキュムレータ11によってプランジャ5を駆動しているときにプランジャ5に追従する必要はない。従って、駆動装置31のストロークはプランジャ5のストロークよりも短くてよく、駆動装置31の小型化が図られる。
【0103】
また、ヘッド側逆止弁55によって射出ヘッド側室21hから変換ヘッド側室33hへの作動液の流れが禁止されることにより、アキュムレータ11からの高圧の作動液が変換シリンダ装置29を介して駆動装置31に作用することも抑制される。その結果、駆動装置31は、当該高圧の作動液に抗して位置保持等を行う大きな駆動力を発揮する必要が無く、小型化が図られる。
【0104】
射出装置1は、射出ロッド側室21rと変換ロッド側室33rとを連通するロッド側連通路53を更に有している。
【0105】
従って、例えば、変換ピストン35を射出開始前の初期位置へ復帰させる際に、変換ロッド側室33rから排出される作動液を射出ロッド側室21rに供給して、射出ピストン23(プランジャ5)の後退も行うことができ、効率的である。
【0106】
また、例えば、変換シリンダ装置29から射出シリンダ装置7へ作動液を供給して射出ピストン23を移動させる際に、射出ピストン23の移動に伴って射出シリンダ装置7から排出される作動液を変換シリンダ装置29に還流させることができる。その結果、液圧回路15の簡素化及びタンク12の小型化が図られる。
【0107】
なお、還流の効果は、特に、変換ピストン35の直径(D)と射出ピストン23の直径(D)との比と、変換ロッド37の直径(d)と射出ロッド25の直径(d)との比とが等しいとき(変換ヘッド側室33hの受圧面積と射出ヘッド側室21hの受圧面積との比と、変換ロッド側室33rの受圧面積と射出ロッド側室21rの受圧面積との比とが等しいとき)に顕著となる。すなわち、この場合、射出シリンダ装置7と変換シリンダ装置29との間で、過不足なく作動液の供給及び受給が行われる。
【0108】
その一例として、実施形態では、変換ピストン35と射出ピストン23とで直径が等しく、変換ロッド37と射出ロッド25とで直径が等しい態様(上記の比が1と1とで等しい態様)を挙げている。この態様では、例えば、設計や制御が容易化されたり、射出ピストン23と変換ピストン35とを同一部材とするなど、部材の共通化が図られる。
【0109】
図3は、変換シリンダ装置の変形例を示す図である。
【0110】
変形例に係る変換シリンダ装置229は、変換ピストン235(変換シリンダチューブう233)の直径Dが、射出ピストン23(射出シリンダチューブ21)の直径Dよりも大きく設定されている。
【0111】
従って、射出ピストン23(プランジャ5)の移動量に対して変換ピストン235の移動量が短くなる。ひいては、変形例に係る変換シリンダ装置229やねじ軸349等の長さは、実施形態の変換シリンダ装置29やねじ軸49に比較して短くなる。
【0112】
なお、変換ロッド237の直径dは、D/D=d/dを満たす大きさとされてもよいし、dと同等の大きさなどの適宜な大きさとされてもよい。なお、上述のように、D/D=d/dの場合には、射出シリンダ装置7と変換シリンダ装置229との間で過不足なく作動液の供給及び受給が行われる。また、D/D=d/dではない場合には、作動液の過不足は、タンク12への作動液の排出やタンク12若しくはポンプ13からの作動液の補給により適宜に解消可能である。
【0113】
また、実施形態に係る変換シリンダ装置29は射出シリンダ装置7に対して並列(水平射出では水平)に配置されていたのに対し、変形例に係る変換シリンダ装置229は、射出シリンダ装置7に対して交差するように(水平射出では例えば鉛直に)配置されている。
【0114】
ダイカストマシンの構成によっては、このように変換シリンダ装置が縦置きとされた方が、全体として小型化が図られたり、設置が容易化されたりすることがある。なお、この変形例は、上述のように変換シリンダ装置229が短いことから、縦置きに有利である。
【0115】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0116】
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、プラスチック射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、射出装置は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出であってもよい。作動液は、油に限定されず、例えば水でもよい。
【0117】
射出シリンダ装置は、単動式のものに限定されず、増圧ピストンを有する増圧式のものであってもよい。増圧式のシリンダ装置は、射出用のシリンダチューブに対して増圧用のシリンダチューブが直結されているものであってもよいし、射出用のシリンダチューブと増圧用のシリンダチューブとが分離しているものであってもよい。
【0118】
変換シリンダ装置は、変換ロッド側室が形成されていないものであってもよい。例えば、変換ロッドと変換シリンダチューブ(変換ピストン)とは概ね同径とされていてもよい。また、変換ロッド側室が形成されている場合において、変換ロッド側室は、作動液を収容せずに、大気に開放されていてもよい。
【0119】
なお、上記から理解されるように、ロッド側連通路は本願発明の必須要件ではない。また、変換ロッド側室に作動液が満たされる場合においても、射出ロッド側室と変換ロッド側室との間において作動液の供給及び受給が行われなくてもよい。射出ロッド側室と変換ロッド側室との間において作動液の供給及び受給が行われる場合において、ロッド側制御弁は必須の要件ではない。
【0120】
液圧装置は、適宜に構成することができ、種々の流路の接続及び共用、並びに、種々の弁の配置は、適宜に変更可能である。作動液の流れを制御する弁としてパイロット式の逆止弁を多用したが、逆止弁に代えて、方向切換弁等の他の制御弁が用いられてもよい。ランアラウンド回路は設けられなくてもよいし、メータアウト回路に代えて若しくは追加してメータイン回路が構成されてもよい。
【0121】
駆動装置は、好適には電動機を含むものである。ただし、駆動装置は、必ずしも電動機を含むものに限定されず、駆動力を生じる種々の方式のものとされてよい。また、電動機は、回転式のものに限定されず、リニアモータであってもよい。なお、リニアモータの場合には、伝達機構を介さずに、リニアモータの駆動力が直接に移動ロッドに伝達されてもよい。また、駆動装置は、2以上設けられてもよい。
【0122】
伝達機構は、ねじ機構に限定されず、例えば、ラック・ピニオン機構であってもよい。また、ねじ機構は、ナットが移動してもよいし、電動機の回転が歯車機構若しくはプーリ・ベルト機構を介して伝達されてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1…射出装置、5…プランジャ、7…シリンダ装置、9…低速射出機構、11…アキュムレータ、21…射出シリンダチューブ、23…射出ピストン、25…射出ロッド、29…変換シリンダ装置、31…駆動装置、33…変換シリンダチューブ、35…変換ピストン、37…変換ロッド、51…ヘッド側連通路、55…ヘッド側逆止弁、105…キャビティ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティに成形材料を押し出すプランジャと、
前記プランジャと連結された射出ロッド、当該射出ロッドに固定された射出ピストン、及び、当該射出ピストンを収容する射出シリンダチューブを有し、前記射出シリンダチューブ内が前記射出ピストンにより前記射出ロッド側の射出ロッド側室及びその反対側の射出ヘッド側室に区画された射出シリンダ装置と、
変換ロッド、当該変換ロッドに固定された変換ピストン、及び、当該変換ピストンを収容する変換シリンダチューブを有し、前記変換シリンダチューブ内において前記変換ピストンに対して前記変換ロッドとは反対側に変換ヘッド側室が形成された変換シリンダ装置と、
前記射出ヘッド側室と前記変換ヘッド側室とを連通するヘッド側連通路と、
前記変換ピストンにより前記変換ヘッド側室の作動液を前記射出ヘッド側室へ押し出す方向へ前記変換ロッドを駆動可能な駆動装置と、
前記射出ヘッド側室に作動液を供給可能なアキュムレータと、
前記射出ヘッド側室から前記変換ヘッド側室への作動液の流れを禁止可能な制御弁と、
を有する成形機の射出装置。
【請求項2】
前記変換シリンダチューブ内において前記変換ピストンに対して前記変換ロッド側に変換ロッド側室が形成されており、
前記射出ロッド側室と前記変換ロッド側室とを連通するロッド側連通路が設けられている
請求項1に記載の成形機の射出装置。
【請求項3】
記変換ピストンの直径と前記射出ピストンの直径との比と、前記変換ロッドの直径と前記射出ロッドの直径との比とが等しい
請求項2に記載の成形機の射出装置。
【請求項4】
前記変換ピストンと前記射出ピストンとは直径が等しく、
前記変換ロッドと前記射出ロッドとは直径が等しい
請求項3に記載の成形機の射出装置。
【請求項5】
前記変換ピストンの直径は前記射出ピストンの直径よりも大きい
請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形機の射出装置。
【請求項6】
前記駆動装置は、
回転式の電動機と、
電動機の回転を並進運動に変換して前記変換ロッドに伝達する伝達機構と、
を有する
請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形機の射出装置。
【請求項7】
前記アキュムレータから前記射出ヘッド側室への作動液の流れを制御する液圧回路と、
前記駆動装置によって前記変換ピストンを前記変換ヘッド側室側へ移動させて前記変換ヘッド側室から前記射出ヘッド側室へ作動液を供給することによって低速射出を行い、前記アキュムレータから前記射出ヘッド側室へ作動液を供給することによって高速射出を行うように前記駆動装置及び前記液圧回路を制御する制御装置と、
を更に有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の成形機の射出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−18011(P2013−18011A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151638(P2011−151638)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】