説明

成形用ローラの製造方法

【課題】寸法精度の高い成形用ローラの生産効率を高めることができるローラの製造方法を提供する。
【解決手段】成形用ローラの製造方法は、円盤部材92の外周面93に、外周面93より内側に窪む窪み部94を複数個形成し、その窪み部94間に第一領域56を形成する第一領域形成工程と、窪み部94から回転周方向に沿って第一領域56に光を当てながら研削する光学式倣い研削により第一領域56に凹状部48を形成する凹状部形成工程と、凹状部42から外側に突き出るように入れ子部材110を窪み部94に固定し、入れ子部材110に第二領域58を形成する第二領域形成工程と、第一領域56の外周側から回転周方向に沿って第二領域58に光を当てながら研削する光学式倣い研削により第二領域58に凸状部48を形成する凸状部形成工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器用に用いられるコルゲートフィンは、熱交換器のチューブ間に介在されるものであり、全体として波形状を呈するように長手方向に連続する山部および谷部と、この山部と谷部との間に等しい角度で傾斜するように切り起こされた複数個のルーバーとから構成されている。このようなコルゲートフィンは、一対のローラによる成形加工によって製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ローラは、回転軸の径方向外方の円周上に等間隔に設けられた頂部および底部と、この頂部および底部とを連絡するように形成された傾斜面と、この傾斜面上に回転軸方向に複数個並んで配列された切り刃と、を備えて形成されている。
【0004】
一対のローラの間に金属製の板材が挟まれた状態で、それぞれのローラが互いに逆回りに回転することにより、それぞれのローラにおける頂部と底部とが噛み合って、コルゲートフィンが成形される。コルゲートフィンのルーバーは、一対のローラの頂部と底部とが噛み合い、互いの傾斜面が金属製の板材を挟み込むときに、切り刃によって切り起こされて成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−229615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱交換器はあらゆる用途に使用され、大きさも様々である。特に、小さい熱交換器ではコルゲートフィンも小さいものが使用されることとなる。このため、コルゲートフィンの山部と谷部との傾斜面に切り起こされてなるルーバーも小さくなる。
【0007】
上述したように特許文献1のローラによるコルゲートフィンの成形方法では、山部および谷部を成形すると同時に、複数個のルーバーまで成形している。このようなルーバーの成形方法では、要求される微細なルーバーを成形するのは不向きであり、別途、ルーバー成形用のローラを開発する必要があった。
【0008】
そこで、発明者は、図12に示すようなローラ200を作成した。このローラ200は、外周面から凹む凹状部210が回転軸方向に複数並ぶ第一領域と、外周面から突き出る凸状部220が回転軸方向に複数並ぶ第二領域とを有している。そして、それら第一領域および第二領域は、回転周方向に交互に並んで設けられている。一対のローラ200は、一対のローラ200の間に金属製板材を挟んで、一方のローラの凸状部220が他方のローラの凹状部210に入り込むように互いに逆回りに回転する。そうすると、一方のローラの凸状部220が金属製板材の少なくとも一部を他方のローラに向かって押圧することとなり、他方のローラ側に曲げ起こされてなるルーバーが金属製板材に成形される。
【0009】
これら一対のローラ200のそれぞれは、図13に示すような複数の薄板円盤状のブレード240から構成されている。それぞれのブレード240には、各ブレード240を積層することにより、凹状部210となる段差部250と、凸状部220となる突起部260とが回転周方向に交互に設けられるとともに、かつそれぞれの段差部250および突起部260とが回転周方向に並んで設けられている。
【0010】
図13に示すように、段差部250は、ブレード240の回転軸方向の側面から凹むように形成されている。一方、突起部260はブレード240の外周面突き出るように形成されている。これら段差部250および突起部260が形成されたブレード240を板厚方向に重ね合わせることにより、各ブレード240の段差部250同士が合わさって凹状部210が形成され、各ブレード240の突起部260同士が合わさって凸状部220が形成される。これら段差部250および突起部260は、光学式倣い研削により形成されており、凹状部210および凸状部220の寸法精度が確保されている。
【0011】
ここで、光学式倣い研削について説明する。光学式倣い研削は、光を被加工物の加工領域に当てることにより得られる被加工物の加工領域の拡大された投影画像上に被加工物の仕上がり形状を拡大して描いた原図を貼り付け、貼り付けられた原図のケガキ線に倣って、砥石などを移動させて被加工物の加工領域を加工する加工方法である。この加工方法は、通常の切削・研削加工や放電加工に比べ、非常に加工精度の高い。したがって、光学式倣い研削によって部品を製造することにより、寸法精度の高い部品を製造することができる。
【0012】
しかしながら、前述したように複数のブレード240を積層することによりローラ200では、特に隣り合うブレード240のそれぞれに形成した段差部250をつき合わせることにより一つの凹状部210を形成している。このようにして凹状部210を複数のブレード240から形成するものでは、一つの凹状部210を形成するのに、二箇所の加工が必要となる。このため、ローラ200の生産効率が悪化してしまう。
【0013】
そこで、発明者は、複数枚のブレードを積層させて一つのローラにするのではなく、単体の円盤部材の外周面に直接、複数の凸状部および凹状部を形成すれば加工回数が増大し、生産効率が悪化するという問題は回避することができると考えた。しかしながら、単体の円盤部材からローラを製造すれば、生産効率の悪化を回避することはできるものの、特に凹状部の寸法精度が低下するという別の問題が発生してしまう。特に、凹状部が形成される第一領域の回転周方向両側には凸状部が形成される第二領域が設けられており、しかも凸状部は外周面より突き出るような形状となっているため、第一領域へ回転周方向から光を当てるための光学部材を設置するスペースがなく、光学式倣い研削により凹状部が形成できない。比較的加工精度が良いと言われている放電加工(寸法誤差約10μm)でも、光学式倣い研削に比べ加工精度は低い。これでは、要求寸法誤差が数μmである場合に対処することができなくなる。
【0014】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、寸法精度の高い成形用ローラの生産効率を高めることができる成形用ローラの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1記載の発明は、外周面から凹む凹状部が回転軸方向に沿って複数並ぶ第一領域と、前記外周面から突き出る凸状部が回転軸方向に沿って複数並ぶ第二領域とが回転周方向に交互に設けられている成形用ローラの製造方法であって、
前記ローラの母材となる円盤部材の外周面から内側に窪む窪み部を回転周方向に沿って複数並ぶように形成することにより、隣り合う前記窪み部間に前記第一領域を形成する第一領域形成工程と、
前記第一領域形成工程の後に、前記窪み部から回転周方向に沿って前記第一領域に光を当てながら研削をする光学式倣い研削により、回転軸方向に沿って複数並ぶ前記凹状部を前記第一領域に形成する凹状部形成工程と、
前記窪み部を埋めるための入れ子部材を前記凹状部より外周側に突き出るように前記窪み部に固定することにより、前記入れ子部材の外周面に前記第二領域を形成する第二領域形成工程と、
前記第二領域形成工程の後に、前記第一領域の外周側から回転周方向に沿って前記第二領域に光を当てながら研削をする前記光学式倣い研削により、回転軸方向に沿って複数並ぶ前記凸状部を前記第二領域に形成する凸状部形成工程と、を含むことを特徴としている。
【0016】
請求項1記載の製造方法によれば、円盤部材の外周面に回転周方向に沿って複数並ぶように円盤部材の外周面に窪み部を形成することにより、隣り合う窪み部間に第一領域を形成し、その後に、凹状部を第一領域に形成するようにしているので、凹状部は、第一領域の回転周方向両側に窪み部が存在した状態で形成されることとなる。第一領域に凹状部を形成する際に第一領域の回転周方向両側に窪み部が存在していれば、これらの窪み部から回転周方向に沿って第一領域に光を当てながら研削をする光学式倣い研削を用いて第一領域に凹状部を形成することができる。このようにして凹状部は第一領域に形成されるため、凹状部の寸法精度が非常に高くなる。
【0017】
また、請求項1記載の製造方法によれば、凹状部から外側に突き出るように入れ子部材を、凹状部形成工程を経た後の窪み部に固定することにより、入れ子部材の外周面に第二領域を形成している。このように、入れ子部材は凹状部よりも外周側に突き出るように窪み部に固定されるので、第二領域の回転周方向両側、つまり第一領域の外周側には、入れ子部材が突き出た分の空間が形成されることとなる。そして、請求項1記載の製造方法では、入れ子部材の回転周方向両側に空間が形成された状態で、入れ子部材の第二領域に凸状部を形成している。第二領域に凸状部を形成する際に第二領域の回転周方向両側に空間が存在していれば、これらの空間(第一領域の外周側)から回転周方向に沿って第二領域に光を当てながら研削する光学式倣い研削を用いて第二領域に凸状部を形成することができる。このようにして凸状部は第二領域に形成されるため、凸状部の寸法精度が非常に高くなる。
【0018】
さらに、凹状部は回転軸方向に沿って複数並ぶように第一領域に形成され、凸状部は回転軸方向に沿って複数並ぶように第二領域に形成されている。このため、凹状部および凸状部を形成する工数としては、凹状部および凸状部を形成する数分の工数だけで良い。このため、ローラを製造するための工数の増加を抑制させることができるので、ローラの生産効率を高めることができる。
【0019】
以上説明したように、請求項1記載の製造方法によれば、寸法精度の高い成形用ローラの生産効率を高めることができるのである。
【0020】
上記請求項1記載の発明は、請求項2に記載されているように、第一領域の凹状部と第二領域の凸状部とが回転周方向において並んで設けられているローラを製造する場合に特に有効である。ローラを複数枚のブレードを重ね合わせて形成する場合、図13に示すように凹状部と凸状部の中央部分で分割すると、凸状部は分割されたブレードの外周面に一つの溝を形成するだけで良い。しかし、凹状部は二つのブレードに亘って形成されることとなるため、一つの凹状部を形成するのに、隣り合うブレードのそれぞれに段差部を形成しなければならなくなり、凹状部形成のための工数が非常に多くなる。一方、請求項1記載の製造方法によれば、請求項2に記載されているように凹状部および凸状部を回転周方向に並んで形成する場合であっても、凹状部形成のための工数は凹状部の数分だけでよいので、ローラの生産効率を高めることができる。
【0021】
請求項3記載の発明は、前記第二領域形成工程では、前記窪み部の底部に対して隙間が形成されるように前記入れ子部材を前記窪み部に嵌め、その後、前記入れ子部材と前記窪み部の前記底部とを溶接することにより前記入れ子部材を前記窪み部に固定することを特徴としている。
【0022】
請求項3記載の製造方法では、入れ子部材と窪み部の底部との間に隙間が形成されるように入れ子部材を窪み部に嵌めてから、入れ子部材と窪み部の底部とを溶接によって固定するようにしている。このように入れ子部材と窪み部の底部との間に隙間が形成された状態で、両者を溶接すると、窪み部または入れ子部材の溶融金属がこの隙間に満遍なく流入して、凝固し得るため、窪み部に入れ子部材を強固に固定させることができる。
【0023】
第一領域に形成される凹状部の回転周方向の両端部が窪み部の回転周方向で向い合う内壁面に開口している場合では、その後に窪み部に固定される入れ子部材により、凹状部の回転方向両端部の開口部分は塞がれる。これにより、凹状部の回転周方向の長さが決定されることとなる。つまり、第一領域の回転周方向の長さが凹状部の回転周方向の長さとなる。
【0024】
また、第二領域に形成される凸状部の回転周方向の両端部が入れ子部材の回転周方向の外壁面の一部となっている場合では、第二領域の回転周方向の長さが凸状部の回転周方向の長さとなる。
【0025】
請求項4記載の製造方法では、凹状部はその両端部が窪み部の内壁面に開口するように形成されており、請求項5記載の製造方法では、凸状部はその両端部が入れ子部材の外壁面の一部となるように形成されているので、窪み部の内壁面、または入れ子部材の外壁面を削るだけで、凹状部の回転周方向の長さ、または凸状部の回転周方向の長さを調整することができる。また、窪み部の内壁面、または入れ子部材の外壁面を削るという一つの作業で、それぞれの領域に形成される複数の凹状部、または複数の凸状部の回転周方向の長さを調整することができる。
【0026】
なお、請求項4において窪み部の内壁面を削る時期は、第一領域形成工程であっても良いし、凹状部形成工程において、凹状部を第一領域に形成した後であっても良い。また、請求項5において入れ子部材の外壁面を削る時期は、第二領域形成工程であっても良いし、凸状部形成工程において、凸状部を第二領域に形成した後であっても良い。
【0027】
窪み部の回転周方向で向い合う内壁面を外周側に向うほど互いの距離が長くなるようなテーパ面とし、窪み部の各内壁面に対向する入れ子部材の外壁面を外周側に向うほど互いの距離が長くなるようなテーパ面とすると、これらのテーパ面の開き角度によっては、入れ子部材の窪み部に対する径方向の位置が変化する。これは、テーパ面の開き角度が変化すると、窪み部のテーパ面に対する入れ子部材のテーパ面の当接位置が変化するからである。
【0028】
請求項6記載の製造方法は、上記のことを利用したものであって、窪み部のテーパ面の開き角度、および入れ子部材のテーパ面の開き角度のいずれかを調整して、窪み部に入れ子部材を嵌めるようにすれば、入れ子部材と窪み部の底部との間に確実に隙間を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の製造方法によって製造されたルーバー成形ローラを適用したコルゲートフィン成形装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】図1のコルゲートフィン成形装置によって成形されるコルゲートフィンを示す斜視図である。
【図3】ルーバーが形成されている部位を山部の稜線方向に平行な平面で切断した断面を示す断面図である。
【図4】ローラの基本的な構造を模式的に示した模式図である。
【図5】第一ローラの断面を示した断面図であり、(a)は、第一ローラの凹状部の断面を示し、(b)は、第一ローラの凸状部の断面を示している。
【図6】第二ローラの断面を示した断面図であり、(a)は、第二ローラの凹状部の断面を示し、(b)は、第二ローラの凸状部の断面を示している。
【図7】第三ローラの断面を示した断面図であり、(a)は、第三ローラの凹状部の断面を示し、(b)は、第三ローラの凸状部の断面を示している。
【図8】第一領域形成工程を経た後のローラの状態を示す図である。
【図9】凹状部形成工程を経た後のローラの状態を示す図である。
【図10】第二領域形成工程を経た後のローラの状態を示す図である。
【図11】凸状部形成工程を経た後のローラの状態を示す図である。
【図12】従来技術によるルーバー成形ローラの構造を模式的に示した模式図である。
【図13】図12のルーバー成形ローラを分解した分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明をさらに具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0031】
図1には、本発明の製造方法によって製造された微細形状成形用ローラとしての第一〜第三ルーバー成形ローラ40a〜cを適用したコルゲートフィン成形装置10の概略が示されている。図2には、コルゲートフィン成形装置10によって成形されるコルゲートフィン80が示されている。図2に示すように、コルゲートフィン80は、熱交換器(図示せず)のチューブ間に介在されるものであり、全体として波形状を呈するように長手方向に連続する山部82および谷部84と、この山部82と谷部84との間の傾斜面86に等しい角度で傾斜するように曲げ起こされた複数個のルーバー88とから構成されている。
【0032】
図2に示すように、傾斜面86の一部が曲げ起こされてなるルーバー88は、板状を呈しており、谷部84から山部82に向かって延び、かつ山部82の稜線方向に間隔をあけて傾斜面86に設けられている。図3は、ルーバー88が形成されている部位を山部82の稜線方向に平行な平面で切断した断面を示している。図3に示すように、ルーバー88は、金属製板材90の傾斜面86となる部分より一方の方向に向って曲げ起こされている。ルーバー88の傾斜面86からの高さは約0.2mmとなっている。なお、本実施形態の成形装置10によって成形されるコルゲートフィン80は、板厚5μm〜20μmの金属製板材90から構成されている。金属製板材90としては、アルミニウムや銅を含んだものが用いられる。
【0033】
(コルゲートフィン成形装置)
コルゲートフィン成形装置10は、材料供給部20、ルーバー成形部30、コルゲートフィン成形部60、裁断部70などからなっている。
【0034】
材料供給部20は、コルゲートフィン80の材料である金属製板材90をコイル状に巻いたコイル材22およびコイル材22の金属製板材90を巻き戻して直線状の条材とするアンコイラー24を有しており、アンコイラー24によって巻き戻した金属製板材90をルーバー成形部30に供給する。
【0035】
ルーバー成形部30は、金属製板材90の送り方向(ルーバー成形部30からコルゲートフィン成形部60に向かう方向)と交差する方向(図1の奥行き方向、金属製板材90の幅方向)に互いに間隔をあけて配列されるように、当該送り方向に沿った板状を呈するルーバー88を成形する。ルーバー成形部30は、三つの対となる第一〜第三ルーバー成形ローラ40a〜c(以下、単にローラという)から構成され、これら三つのローラ40a〜cがルーバー88となる部位を少しずつ曲げ起こして、最終的に図2,3に示すような金属製板材90に対して略垂直となるようなルーバー88を金属製板材90に成形する。このルーバー成形部30では、三つの段階を経て図2,3に示すようなルーバー88を成形している。
【0036】
ここで、第一〜第三ローラ40a〜cの基本的な構造について説明する。各ローラ40a〜cの基本的な構造はどれも同じである。図4は、第一〜第三ローラ40a〜cの基本的な構造を模式的に示したものである。ローラ40は、図1および図4に示すように、複数の凹状部42および複数の凸状部48を外周面54に有している。凹状部42は、外周面54から凹んでおり回転周方向に延びている、凸状部48は、外周面54から突き出ており回転周方向に延びている。また、ローラ40は、凹状部42が回転軸方向に沿って複数並んでいる第一領域56、および凸状部48が回転軸方向に沿って複数並んでいる第二領域58をそれぞれ複数有している。そして、これら第一領域56および第二領域58は、間隔をあけて交互に回転周方向に並んで設けられている。
【0037】
ローラ40は、二つを一組として使用される。一対のローラ40は、一方のローラ40の凹状部42が他方のローラ40の凸状部48に入り込むように互いに逆回りに回転するように配置される。一対のローラ40が互いに逆回りに回転することにより、ローラ40間に金属製板材90が送り込まれる。金属製板材90が一対のローラ40間に送り込まれることにより、一方のローラ40の凹状部42に向って他方のローラ40の凸状部48が金属製板材90の一部を押圧し、金属製板材90の一部が曲げ起こされルーバー88が成形される。
【0038】
凹状部42および凸状部48のローラ40の回転軸方向に平行な平面で切断した断面形状は、各ローラ40a〜cの機能によってそれぞれ異なる。凹状部42の一方の回転軸方向の外壁面44および他方の回転軸方向の外壁面46、ならびに凸状部48の一方の回転軸方向の内壁面50および他方の回転軸方向の内壁面52のローラ40の径方向側面に対する傾斜角度を第一〜第三ローラ40a〜cごとに異ならせることにより、金属製板材90の一部をせん断したり、ルーバー88の曲がり角度を調整したりすることができる。
【0039】
図5〜図7は、各ローラ40a〜cにおける凹状部42a〜cおよび凸状部48a〜cの第一〜第三ローラ40a〜cの回転軸方向に平行な平面で切断した断面を示している。図5〜図7において、図示する凹状部42および凸状部48に添えられている符号a〜cは、第一〜第三ローラ40a〜cごとの凹状部および凸状部を示している。
【0040】
図5(a)は、一方の第一ローラ40aの凹状部42aの断面を示し、図5(b)は、一方の第一ローラ40aの凸状部48aの断面を示している。他方の第一ローラ40aの凹状部42aおよび凸状部48aは、図5の一方の第一ローラ40aの構造と同じであるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0041】
図5(a)に示すように、凹状部42aの回転軸方向の一方の内壁面44aは、外周面54aに対して垂直となっている。凹状部42aの回転軸方向の他方の内壁面46aは、外周面54aに対して所定の角度で傾斜している。
【0042】
図5(b)に示すように、凸状部48aの回転軸方向の一方の外壁面50aは、一方の第一ローラ40aの凸状部48aが他方の第一ローラ40aの凹状部42aに入り込んだとき、他方の第一ローラ40aの凹状部42aの内壁面44aと対面するように外周面54aに対して垂直となっている。凸状部48aの回転軸方向の他方の外壁面52aは、一方の第一ローラ40aの凸状部48aが他方の第一ローラ40aの凹状部42aに入り込んだとき、他方の第一ローラ40aの凹状部42aの内壁面46aと対面するように傾斜している。
【0043】
また、一対のローラ40aが金属製板材90を挟んだ状態で他方の第一ローラ40aの凸状部48aが凹状部42aに入り込んだとき、当該凸状部48aの先端が凹状部42aの底部に接触しないようになっている。
【0044】
このように形成された第一ローラ40aによれば、一方の第一ローラ40aの凸状部48aが他方の第一ローラ40aの凹状部42aに入り込み、一方の第一ローラ40aの凸状部48aが金属製板材90の一部を他方の第一ローラ40aの凹状部42aに向かって押圧すると、凹状部42aの内壁面44aおよび凸状部48aの外壁面50aによって、金属製板材90の一部が板厚方向にせん断される。そして、凹状部42aの内壁面46aおよび凸状部48aの外壁面52aによって、せん断された部位を含む金属製板材90の一部が金属製板材90に対して約45°となるように曲げ起こされる。第一ローラ40aの凹状部42aおよび凸状部48aのそれぞれの内壁面46aおよび外壁面52aの傾斜角度は、金属製板材90が曲げ起こされたときに約45°となるような傾斜角度となっている。
【0045】
図6(a)は、一方の第二ローラ40bの凹状部42bの断面を示し、図6(b)は、一方の第二ローラ40bの凸状部48bの断面を示している。他方の第二ローラ40bの凹状部42bおよび凸状部48bは、図6の一方の第二ローラ40bの構造と同じであるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0046】
図6(a)に示すように、凹状部42bの回転軸方向の一方の内壁面44bは、外周面54bに対して所定の角度で傾斜している。凹状部42bの回転軸方向の他方の内壁面46bは、外周面54bに対して内壁面44bと異なる角度で傾斜している。内壁面46bの傾斜角度は、内壁面44bに比べ大きい。
【0047】
図6(b)に示すように、凸状部48bの回転軸方向の一方の外壁面50bは、一方の第二ローラ40bの凸状部48bが他方の第二ローラ40bの凹状部42bに入り込んだとき、他方の第二ローラ40bの凹状部42bの内壁面44aと対面するように傾斜している。凸状部48bの回転軸方向の他方の外壁面52bは、一方の第二ローラ40bの凸状部48bが他方の第二ローラ40bの凹状部42bに入り込んだとき、他方の第二ローラ40bの凹状部42bの内壁面46bと対面するように傾斜している。
【0048】
また、一対のローラ40bが金属製板材90を挟んだ状態で他方の第二ローラ40bの凸状部48bが凹状部42bに入り込んだとき、当該凸状部48bの先端が凹状部42bの底部に接触しないようになっている。
【0049】
このように形成された第二ローラ40bによれば、一方の第二ローラ40bの凸状部48bが他方の第二ローラ40bの凹状部42bに入り込み、一方の第二ローラ40bの凸状部48bが金属製板材90の一部を他方の第二ローラ40bの凹状部42bに向かって押圧すると、凹状部42bの内壁面46bおよび凸状部48bの外壁面52bによって、第一ローラ40aによって曲げ起こされた部位が金属製板材90に対して約60°となるように曲げ起こされる。そして、凹状部42bの内壁面44bおよび凸状部48bの外壁面50bによって、第一ローラ40aによって曲げ起こされた部位とは金属製板材90の幅方向において反対側のせん断された部位を含む金属製板材90の一部が金属製板材90に対して約45°に曲げ起こされる。
【0050】
図7(a)は、一方の第三ローラ40cの凹状部42cの断面を示し、図7(b)は、一方の第三ローラ40cの凸状部48cの断面を示している。他方の第二ローラ40cの凹状部42cおよび凸状部48cは、図7の一方の第三ローラ40cの構造と同じであるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0051】
図7(a)に示すように、凹状部42cの回転軸方向の一方の内壁面44cは、外周面54cに対して垂直となっている。凹状部42cの回転軸方向の他方の内壁面46cは、外周面54cに対して垂直となっている。
【0052】
図7(b)に示すように、凸状部48cの回転軸方向の一方の外壁面50cは、一方の第三ローラ40cの凸状部48cが他方の第三ローラ40cの凹状部42cに入り込んだとき、他方の第三ローラ40cの凹状部42cの内壁面44cと対面するように外周面54cに対して垂直となっている。凸状部48cの回転軸方向の他方の外壁面52cは、一方の第三ローラ40cの凸状部48cが他方の第三ローラ40cの凹状部42cに入り込んだとき、他方の第三ローラ40cの凹状部42cの内壁面46cと対面するように外周面54cに対して垂直となっている。
【0053】
また、一対のローラ40cが金属製板材90を挟んだ状態で他方の第三ローラ40cの凸状部48cが凹状部42cに入り込んだとき、当該凸状部48cの先端が凹状部42cの底部に接触しないようになっている。
【0054】
このように形成された第三ローラ40cによれば、一方の第三ローラ40cの凸状部48cが他方の第三ローラ40cの凹状部42cに入り込み、一方の第三ローラ40cの凸状部48cが金属製板材90の一部を他方の第三ローラ40cの凹状部42cに向かって押圧すると、凹状部42cの内壁面46cおよび凸状部48cの外壁面52cによって、第二ローラ40bによって曲げ起こされた部位が金属製板材90に対して約90°となるように曲げ起こされる。そして、凹状部42cの内壁面44cおよび凸状部48cの外壁面50cによって、第二ローラ40bによって曲げ起こされた部位が金属製板材90に対して約90°となるように曲げ起こされる。
【0055】
コルゲートフィン成形部60は、ルーバー成形部30によって金属製板材90にルーバー88が成形された状態のものをコルゲートフィン80として成形する。コルゲートフィン成形部60は、一対のコルゲートフィン成形ローラ62から構成される。当該成形ローラ62は、成形ローラ62間を通過する金属製板材90を押圧し、波形状に折り曲げ、金属製板材90を図2に示すようなコルゲートフィン80として成形する。
【0056】
裁断部70は、コルゲートフィン成形部60によって成形されたコルゲートフィン80を用途に合わせて裁断する。
【0057】
次に、ルーバー88を成形する第一〜第三ローラ40a〜cの製造方法について説明する。図4で説明したように、第一〜第三ローラ40a〜cは基本的な構造は同じであるので、ここでは図4に示すローラの概略構成図と、図8〜図11を用いて説明する。
【0058】
ローラ40は、「第一領域形成工程」、「凹状部形成工程」、「第二領域形成工程」、および「凸状部形成工程」の四つの工程を経て製造される。以下、各工程ごとに説明する。なお、図8〜図11は、各工程が実施された後の状態を示している。図8〜図11では、ローラ40の一部分のみを示しているが、各工程はローラ40の全周に亘って施されている。
【0059】
(第一領域形成工程)
まず、ローラ40の母材となる一つの円盤部材92を用意する。円盤部材92は焼入れされたSKH11材からなっている。以下、単に回転周方向といった場合は、円盤部材92またはローラ40の回転周方向を指し、そして、単に回転軸方向といった場合は、円盤部材92またはローラ40の回転軸方向を指すものとする。
【0060】
円盤部材92の回転軸方向の厚さは、ローラ40の回転軸方向の厚さよりも若干厚くなっている。この工程では、図8に示すように、円盤部材92の外周面93に、外周面93から内側に窪む複数の窪み部94を回転周方向に間隔をあけて形成する。本実施形態では、30個の窪み部94を円盤部材92に形成する。これにより、各窪み部94間に第一領域56が形成される。なお、第一領域56の回転周方向の長さは、凹状部42の回転周方向の長さと一致するように形成される。また、窪み部94の回転周方向に向い合う内壁面98は、円盤部材92の外周側に向かうほど互いの距離が長くなるテーパ面となっている。
【0061】
具体的には、以下の手順によって第一領域56が形成される。まず、ワイヤ放電加工により円盤部材92の一部を大まかに取り除く。そして、窪み部94間に形成される第一領域56の回転周方向の長さを凹状部42の回転周方向の長さとなるように、また内壁面98(テーパ面)の開き角度が所定の角度となるように、光学式倣い研削によって内壁面98を削る。また、この工程では、第一領域56の表面を湿式の円筒研削によって削り、第一領域56部分の外径を所定の寸法に仕上げている。
【0062】
(凹状部形成工程)
第一領域形成工程が終了すると、第一領域56に凹状部42を形成する工程を実施する。この工程では、回転周方向に延びる溝を複数個、互いに回転軸方向に間隔をあけて形成することにより凹状部42を第一領域56に形成している。この工程では、29個の凹状部42が形成されるように溝が形成される。この第一領域56に形成される溝の回転軸方向と平行な平面で切断した断面形状は、形成しようとする凹状部42の形状によって異なる(図5(a),図6(a),図7(a)を参照)。また、凹状部42の回転周方向両端部は、窪み部94の内壁面98に開口している。この工程では、回転する砥石を第一領域56の径方向外方からあてることにより凹状部42を形成している。そして、この工程では、光学式倣い研削によって凹状部42の表面を所定の寸法に仕上げている。
【0063】
具体的には、以下のようにして凹状部42を形成する。まず、窪み部94から回転周方向に沿って第一領域56に光を当て、第一領域56に光を当てることにより形成される凹状部42の影を拡大し、拡大された影をスクリーンに投影する。そうすると、スクリーンには実際の凹状部42の形状の数十倍の影が投影される。スクリーンには予め影の拡大率と同じ拡大率で作成した凹状部42の原図が貼り付けられている。研削装置操作者は、その貼り付けられた原図のケガキ線に倣って、回転する砥石を操作し、凹状部42を形成する。スクリーンに投影される凹状部42の影が原図のケガキ線と一致するまで砥石を操作することにより、寸法精度の高い凹状部42が得られる。このようにして研削された凹状部42の仕上がり寸法誤差は±1μm程度となる。
【0064】
(第二領域形成工程)
凹状部形成工程が終了すると、入れ子部材110を円盤部材92に固定して、第二領域58を形成する工程を実施する。この入れ子部材110は、角柱状の部材であり、窪み部94を埋めるためのものであって、円盤部材92の30個の窪み部94のそれぞれに固定される。窪み部94に固定された入れ子部材110の外周面には凸状部48を形成するための第二円弧面112が形成される。凸状部48の形成については、後の凸状部形成工程において説明する。入れ子部材110の回転周方向両側の外壁面114は、円盤部材92の外周側に向うにほど互いの距離が長くなるようなテーパ面となっている。入れ子部材110の径方向の寸法は、窪み部94に固定された状態で、第二領域58が、第一領域56つまり凹状部42よりも外周側に突き出るように設定されている。このように、入れ子部材110の第二領域58が凹状部42よりも外周側に突き出ているため、入れ子部材110の回転周方向両側には、凹状部42から突き出た分だけの空間が形成されることとなる。
【0065】
このような形状となっている入れ子部材110は、次のような手順で円盤部材92に固定される。まず、窪み部94のテーパ状の内壁面98と入れ子部材110のテーパ状の外壁面114とを当接させて、入れ子部材110を窪み部94に嵌める。入れ子部材110の外壁面114(テーパ面)の開き角度または径方向の寸法は、入れ子部材110が窪み部94に嵌められたとき、窪み部94の底部100と、入れ子部材110との間に0.2mmほどの隙間102が形成されるような傾斜角度または径方向の寸法となっている。その後、窪み部94の底部100と入れ子部材110とを溶接する。このようにして入れ子部材110は窪み部94に固定されるのである。入れ子部材110と窪み部94の底部100との間に隙間102が形成されていると、両者94,110を溶接する際、この隙間102に溶融金属が満遍なく流入して、凝固し得るため、強固に両者94,110を固定させることができる。なお、本実施形態では、レーザ溶接により両者94,110を固定している。
【0066】
この工程では、予め所定の寸法に形成した入れ子部材110を単に窪み部94に嵌めるのではなく、一つひとつの入れ子部材110を窪み部94に合わせ、窪み部94の底部100と入れ子部材110との間に所定の隙間102が形成されるように、入れ子部材110の外壁面114または窪み部94の内壁面98を研削する、所謂現合加工を施す。そして、入れ子部材110が窪み部94に固定された後、入れ子部材110の第二領域58の表面を湿式の円筒研削によって削り、第二領域58における外径を所定の寸法に仕上げる。
【0067】
なお、入れ子部材110が窪み部94に固定されることにより、第一領域56に形成された凹状部42の回転周方向両端部の開口部位が入れ子部材110により塞がれる。これにより、凹状部42の回転周方向長さが決定される。本実施形態では、凹状部42の回転周方向両端部が窪み部94の内壁面98に開口しているため、第一領域56の回転周方向の長さが、そのまま凹状部42の回転周方向の長さとなる。第一領域形成工程において、窪み部94の内壁面98を削り、第一領域56の回転周方向長さを調整するのは、形成される凹状部42の回転周方向の長さを調整するためである。
【0068】
(凸状部形成工程)
第二領域形成工程が終了すると、第二領域58に凸状部48を形成する工程を実施する。この工程では、まず、各入れ子部材110の回転方向の両端に位置する角部116を削る。入れ子部材110における角部116が削り取られた部位は、凹状部42の頂面と面一の関係となる。
【0069】
次に、第二領域58に凸状部48を形成する。この工程では、回転周方向に延びる溝を複数個、互いに回転軸方向に間隔をあけて形成することにより凸状部48を第二領域58に形成している。この第二領域58に形成される溝の回転軸方向と平行な平面で切断した断面形状は、形成しようとする凸状部48の形状によって異なる(図5(b),図6(b),図7(b)を参照)。また、凸状部48の回転周方向両端部は、入れ子部材110の外壁面114の一部となる。凸状部48の回転周方向両端部が外壁面114に開口しているため、第二領域58の回転周方向の長さが、凸状部48の回転周方向の長さとなる。よって、入れ子部材110の外壁面114を削ることにより、凸状部48の回転方向の長さを調整することができる。
【0070】
具体的には、以下のようにして凸状部48を形成する。まず、第二領域58の回転周方向外側に形成される空間から回転周方向に沿って第二領域58に光を当て、第二領域58に光を当てることにより形成される凸状部48の影を拡大し、拡大された影をスクリーンに投影する。そうすると、スクリーンには実際の凸状部48の形状の数十倍の影が投影される。スクリーンには予め影の拡大率と同じ拡大率で作成した凸状部48の原図が貼り付けられている。研削装置操作者は、その貼り付けられた原図のケガキ線に倣って、回転する砥石を操作し、凸状部48を形成する。スクリーンに投影される凸状部48の影が原図のケガキ線と一致するまで砥石を操作することにより、寸法精度の高い凸状部48が得られる。このようにして研削された凸状部48の仕上がり寸法誤差は±1μm程度となる。
【0071】
以上の四つの工程を経て、凹状部48および凸状部48を有するローラ40が製造されているので、寸法精度の高い凹状部42および凸状部48を複数個形成することができる。以下、このことを単に、円盤部材の外周面に複数の凹状部と複数の凸状部とを形成する場合と比較することにより説明する。
【0072】
単に、円盤部材の外周面に、複数の凹状部と凸状部とを形成しようとすると、特に凹状部は円盤部材の外周面から内側に凹む形状となっているため、凹状部形成予定の外周面に光学式倣い研削時に用いる光を回転周方向から当てることができない。これは、凹状部形成予定の回転周方向両側には、凸状部となる外壁面よりも外周側に突き出る部位が存在しているため、光を放射する光学部材を設置するスペースが確保できないからである。
【0073】
このように、単に円盤部材の外周面に複数の凹状部と凸状部とを形成しようとすると、特に凹状部の寸法精度を高めることができない。比較的加工精度の高いといわれている放電加工は、寸法誤差は約10μmであり、光学式倣い研削の数μmよりも加工精度は低い。これでは、要求寸法誤差が数μmである場合に対処することができない。
【0074】
これに対し、本実施形態では、図8および図9に示すように、単一の円盤部材92の外周面93に回転周方向に間隔をあけて窪み部94を形成した後に、窪み部94間に形成される第一領域56に回転周方向に沿って延びる凹状部42を形成するようにしている。このような手順で凹状部42を形成することによれば、凹状部42は、第一領域56の回転周方向両側に窪み部94が存在している状態で形成されることとなる。第一領域56に凹状部42を形成する際に第一領域56の回転周方向両側に窪み部94が存在していれば、これらの窪み部94から回転周方向に沿って第一領域56に光を当てながら研削をする光学式倣い研削を用いて第一領域56に凹状部42を形成することができる。このようにして凹状部42は第一領域56に形成されるため、凹状部42の寸法精度が非常に高くなるのである。
【0075】
また、本実施形態では、図10および図11に示すように、凹状部42を形成した円盤部材92の窪み部94に、凹状部42より外周側に突き出るように入れ子部材110を固定し、その入れ子部材110の外周面に第二領域58を形成している。このように入れ子部材110は凹状部42よりも外周側に突き出るように窪み部94に固定されるので、第二領域58の回転周方向両側、つまり第一領域56の外周側には、入れ子部材110が突き出た分の空間が形成されることとなる。
【0076】
そして、本実施形態では、入れ子部材110の回転周方向両側に空間が形成された状態で、入れ子部材110の第二領域58に凸状部48を形成している。第二領域58に凸状部48を形成する際に第二領域58の回転周方向両側に空間が存在していれば、これらの空間から回転周方向に沿って第二領域58に光を当てながら研削する光学式倣い研削を用いて第二領域58に凸状部48を形成することができる。このようにして凸状部48は第二領域58に形成されるため、凸状部48の寸法精度が非常に高くなるのである。
【0077】
ここで、凹状部および凸状部の寸法精度を高める方法としては、図13に示すように、一つのローラ200を複数のブレード240に分け、複数のブレード240を重ね合わせることにより凹状部210および凸状部220となるように、各ブレード240に段差部250と突起部260とを形成することが考えられる。このようにブレード240を形成することによれば、光学式倣い研削を用いて段差部250および突起部260を形成することができるので、凹状部210および凸状部220の寸法精度を高めることができる。
【0078】
しかしながら、このような工法で製造されるローラ200では、本実施形態の製造方法よりも工数が多くなり生産効率が低い。以下このことを説明する。
【0079】
図13に示す例では、凹状部210および凸状部220の中央部で分断されるようになっている。段差部250は、ブレード240の板厚方向の側面を削ることにより形成される。そして、突起部260は、ブレード240の外周面の中央部を内側に向って削ることにより形成される。凹状部210および凸状部220のそれぞれは、隣り合うブレード240に形成された段差部250同士、および突起部260同士が組み合わされることによりなる。このような形態のブレード240では、特に一つの凹状部210を形成するのに、凹状部210の数よりも多くの数の工数が必要となる。
【0080】
これに対し、本実施形態では、上述したようにローラ40を複数のブレードに分割して凹状部42および凸状部48を形成してはおらず、回転軸方向に沿って複数並ぶように第一領域56に凹状部42を形成し、回転軸方向に沿って複数並ぶように第二領域58に凸状部48を形成している。このため、凹状部42および凸状部48を形成する工数としては、凹状部42および凸状部48の数分の工数だけで良い。よって、ローラ40の生産効率を高めることができる。ローラ40の生産効率を高めることができれば、ローラ40の製造コストを低くすることが可能となる。
【0081】
また、本実施形態のローラ40の生産効率が高められるという効果は、凹状部42および凸状部48が回転周方向に並んでいなくても効果を発揮する。ローラを複数のブレードに分割すると、いずれかの凹状部または凸状部がその中央部で分断されるはずであり、分断された凹状部または凸状部を形成する工数が増大するはずであるからである。
【0082】
また、本実施形態の第二領域形成工程では、窪み部94の底部100と入れ子部材110との間に所定の隙間102が形成されるように、入れ子部材110を窪み部94に嵌めてから、レーザ溶接によって隙間102部分を溶接して、入れ子部材110を窪み部94に固定している。
【0083】
このように隙間102が形成された状態で溶接することにより、窪み部94または入れ子部材110の溶融金属がこの隙間102に満遍なく流入して、凝固するため、入れ子部材110を窪み部94に強固に固定させることができる。
【0084】
また、本実施形態では、凹状部42の回転方向両端部は、窪み部94の内壁面98に開口しており、凸状部48の回転方向両端部は、入れ子部材110の外壁面114の一部となっている。このため、凹状部42の回転周方向の長さの調整を、窪み部94の内壁面98を削って、第一領域56の回転周方向の長さを調整することにより行うことができる。また、凸状部48の回転周方向の長さの調整を、入れ子部材110の外壁面114を削って、第二領域58の回転周方向の長さを調整することにより行うことができる。
【0085】
また、特定の第一領域56および第二領域58のそれぞれに形成されている複数の凹状部42および凸状部48の回転周方向の長さを、窪み部94の内壁面98および入れ子部材110の外壁面114を削るという一つの作業で揃えることができる。
【0086】
また、本実施形態では、窪み部94に入れ子部材110を嵌めるとき、窪み部94の内壁面98(テーパ面)の開き角度または入れ子部材110の外壁面114(テーパ面)の開き角度の少なくともいずれかを調整している。このように窪み部94および入れ子部材110のいずれかのテーパ面の開き角度を調整すると、入れ子部材110の窪み部94に対する径方向の位置が変化する。これは、テーパ面の開き角度が変化すると、窪み部94の内壁面98に対する入れ子部材110の外壁面114の当接位置が変化するからである。
【0087】
窪み部94の内壁面98(テーパ面)または入れ子部材110の外壁面114(テーパ面)の開き角度を調整することによれば、入れ子部材110を窪み部94に嵌めたとき、入れ子部材110と窪み部94の底部100との間に隙間102が確実に形成されるようにできる。
【0088】
(その他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明した。本発明は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0089】
例えば、窪み部94の内壁面98を削る時期は、凹状部形成工程において、凹状部42を第一領域56に形成した後であっても良い。また、これと同様に、入れ子部材110の外壁面114を削る時期は、凸状部形成工程において、凸状部48を第二領域58に形成した後であっても良い。
【符号の説明】
【0090】
10 コルゲートフィン成形装置、20 材料供給部、30 ルーバー成形部、40 ローラ、40a 第一ルーバー成形ローラ(第一ローラ)、40b 第二ルーバー成形ローラ(第二ローラ)、40c 第三ルーバー成形ローラ(第三ローラ)、42 凹状部、48 凸状部、54 外周面、56 第一領域、58 第二領域、60 コルゲートフィン成形部、62 コルゲートフィン成形ローラ、70 裁断部、80 コルゲートフィン、82 山部、84 谷部、86 傾斜面、88 ルーバー、90 金属製板材、92 円盤部材、93 外周面、94 窪み部、98 内壁面、100 底部、102 隙間、110 入れ子部材、114 外壁面、116 角部、200 ローラ、210 凹状部、220 凸状部、240 ブレード、250 段差部、260 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面から凹む凹状部が回転軸方向に沿って複数並ぶ第一領域と、前記外周面から突き出る凸状部が回転軸方向に沿って複数並ぶ第二領域とが回転周方向に交互に設けられている成形用ローラの製造方法であって、
前記ローラの母材となる円盤部材の外周面から内側に窪む窪み部を回転周方向に沿って複数並ぶように形成することにより、隣り合う前記窪み部間に前記第一領域を形成する第一領域形成工程と、
前記第一領域形成工程の後に、前記窪み部から回転周方向に沿って前記第一領域に光を当てながら研削をする光学式倣い研削により、回転軸方向に沿って複数並ぶ前記凹状部を前記第一領域に形成する凹状部形成工程と、
前記窪み部を埋めるための入れ子部材を前記凹状部より外周側に突き出るように前記窪み部に固定することにより、前記入れ子部材の外周面に前記第二領域を形成する第二領域形成工程と、
前記第二領域形成工程の後に、前記第一領域の外周側から回転周方向に沿って前記第二領域に光を当てながら研削をする前記光学式倣い研削により、回転軸方向に沿って複数並ぶ前記凸状部を前記第二領域に形成する凸状部形成工程と、を含むことを特徴とする成形用ローラの製造方法。
【請求項2】
前記凸状部形成工程では、前記第一領域の前記凹状部と前記第二領域の前記凸状部とを、回転周方向において並んで形成することを特徴とする請求項1に記載の成形用ローラの製造方法。
【請求項3】
前記第二領域形成工程では、前記窪み部の底部に対して隙間が形成されるように前記入れ子部材を前記窪み部に嵌め、その後、前記入れ子部材と前記窪み部の前記底部とを溶接することにより前記入れ子部材を前記窪み部に固定することを特徴とする請求項1または2に記載の成形用ローラの製造方法。
【請求項4】
前記第一領域に形成される前記凹状部の回転周方向の両端部は前記窪み部の回転周方向で向い合う内壁面に開口しており、
前記凹状部の回転周方向長さは、前記第一領域形成工程において、前記窪み部の前記内壁面を削って前記第一領域の回転周方向長さを調整することにより行うか、前記凹状部形成工程において、前記凹状部を前記第一領域に形成した後に前記窪み部の前記内壁面を削って前記第一領域の回転周方向長さを調整することにより行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の成形用ローラの製造方法。
【請求項5】
前記第二領域に形成される前記凸状部の回転周方向の両端部は前記入れ子部材の前記回転周方向の外壁面の一部となっており、
前記凸状部の回転周方向長さは、前記第二領域形成工程において、前記第二領域の回転周方向長さを前記入れ子部材の前記外壁面を削って前記第二領域の回転周方向長さを調整することにより行うか、前記凸状部形成工程において、前記凸状部を前記第二領域に形成した後に前記入れ子部材の前記外壁面を削って前記第二領域の回転周方向長さを調整することにより行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の成形用ローラの製造方法。
【請求項6】
前記窪み部の回転周方向で向い合う内壁面を外周側に向うほど互いの距離が長くなるようなテーパ面とし、
前記窪み部の前記各内壁面のそれぞれに対面する前記入れ子部材の外壁面を外周側に向うほど互いの距離が長くなるようなテーパ面とし、
前記第二領域形成工程では、前記窪み部の前記テーパ面の開き角度、および前記入れ子部材の前記テーパ面の開き角度の少なくともいずれかを調整して、前記窪み部に前記入れ子部材を嵌めることを特徴とする請求項3に記載の成形用ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−57735(P2012−57735A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202192(P2010−202192)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】