説明

成形用包装材

【課題】成形高さの深い深絞り成形や張り出し成形等の成形を行ってもピンホールや割れが発生することがない優れた成形性を備えた成形用包装材を提供する。
【解決手段】この発明の成形用包装材1は、外側層としての耐熱性樹脂層2と、内側層としての熱可塑性樹脂層3と、これら両層間に配設された金属箔層4とを含む成形用包装材であって、熱可塑性樹脂層3と金属箔層4との間に二軸延伸ポリプロピレンフィルム層5が積層配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型のリチウムイオン二次電池等の二次電池のケースとして好適に用いられる包装材、或いは食品、医薬品の包装材として好適な包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材中の食品、医薬品等の内容物の化学変化、劣化、腐敗等を防止するために、酸素や水分のバリア性に優れている金属箔を使用したラミネート包装材が、従来から広く用いられている。
【0003】
一方、近年、パソコン等のOA機器、携帯電話、ゲーム機、ヘッドフォンステレオ、電子手帳等の各種電子機器の小型化、軽量化に伴い、電源部の電池としても、小型化、軽量化を図る観点からリチウムイオンポリマー二次電池が多く用いられるようになってきている。このリチウムイオンポリマー二次電池は、電池内の電解液が水と反応してフッ酸が生成すると、電池の性能低下を来したり、アルミニウム箔の腐食により液漏れが発生してしまうことから、リチウムイオンポリマー二次電池のケース(収容ケース)に用いられる材料として、水蒸気バリア性に優れた金属箔を使用した密封性の高いラミネート包装材が用いられるようになってきている。
【0004】
リチウムイオンポリマー二次電池のケース用材料(包装材)としては、耐熱性樹脂フィルムからなる外層、水蒸気バリア層としてのアルミニウム箔からなる中間層、内容物のポリマー電解質を密封するためのポリオレフィンフィルムからなる内層が順に積層一体化されてなるラミネート包装材が用いられている。
【0005】
上記ラミネート包装材は、ポリマー電解質を充填するべくできるだけ容量を増大させるために、張り出し成形や深絞り成形によって立体的な直方体形状等に成形して、電池ケースを製作する。
【0006】
しかしながら、上記アルミニウム箔は、合成樹脂フィルムのような延展性がないから、ラミネート包装材が直方体形状等に成形される際にアルミニウム箔にピンホールが発生したり、アルミニウム箔に破断部(割れ)が発生するという問題があった。特に、体積エネルギー密度を高めるために、シャープで、かつ成形高さの深い形状のケースを得る場合に顕著に現われる。
【0007】
上記問題を解決するために、特許文献1には、少なくとも基材層、接着層、化成処理層、アルミニウム、化成処理層、酸変性ポリオレフィン層、ポリオレフィン層からなる積層体であって、少なくとも基材層表面に脂肪酸アマイド系のスリップ剤がコーティングされたことを特徴とするリチウムイオン電池用包装材料を用いることが提案されている。
【0008】
また、特許文献2には、電池本体を挿入し周縁部をヒートシールにより密封する電池の外装体を形成する包装材料が、少なくとも基材層、接着層、アルミニウム、化成処理層、接着樹脂層、ポリプロピレン樹脂系シーラント層から構成される積層体であって、接着樹脂層が、メルトインデックス=5〜30g/10分、230℃の溶融張力が0.5cN以上の酸変性ポリプロピレンからなることを特徴とする電池用包装材料を用いることが提案されている。
【0009】
また、特許文献3には、電池本体を挿入し周縁部をヒートシールにより密封する電池の外装体を形成する包装材料が、少なくとも基材層、接着層、バリア層、接着樹脂層、シーラント層から構成される積層体であって、少なくともシーラント層が、ヒートシールによる熱と加圧によりつぶれ難い低流動性ポリプロピレン層と、つぶれ易い高流動性ポリプロピレン層とを最内層を高流動性ポリプロピレン層とすることを特徴とする電池用包装材料を用いることが提案されている。
【0010】
また、特許文献4には、少なくとも、基材層、接着層、アルミニウム箔層、接着層、押し出し樹脂層、シーラント層からなる、リチウム電池用外装材であって、アルミニウム箔層は少なくとも接着層側の面が処理されており、押し出し樹脂層がポリエチレン樹脂であって、シーラント層が2層以上の共押し出しのポリプロピレン系樹脂からなり、ラミ面側がホモポリプロピレンとポリエチレンをブレンドした樹脂乃至は更にランダム共重合ポリプロピレンをブレンドした樹脂からなり、シール面側がホモポリプロピレン乃至は更にランダム共重合ポリプロピレンをブレンドした樹脂からなることを特徴とするリチウム電池用外装材を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−216714号公報
【特許文献2】特開2003−31188号公報
【特許文献3】特開2003−7261号公報
【特許文献4】特開2006−134692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、外層フィルム表面にアマイド系スリップ剤をコーティングする工程を設けなければならず、生産性が低下する上に、コーティングしたアマイド系スリップ剤により外層フィルムとアルミニウム箔とのラミネート強度が十分に得られないという問題があった。
【0013】
また、特許文献2〜4に記載の技術では、アルミニウム箔より内層側に未延伸ポリプロピレン樹脂フィルムのみが配置された構成、或いはアルミニウム箔より内層側にポリプロピレンとポリエチレンのブレンド樹脂のフィルムのみが配置された構成であるので、直方体形状等に成形される際にアルミニウム箔にピンホールが発生したり、或いはアルミニウム箔に破断部(割れ)が発生し易く、十分な成形性が得られないという問題があった。
【0014】
本発明者らは上記現象と包材構成との関係について鋭意検討した結果、アルミニウム箔の外層側のみならず内層側にも成形時の伸びに対して均一な伸びが得られる層を配することが有効であることを見出した。
【0015】
この発明は、かかる新規な技術思想(知見)に基づいてなされたものであって、成形高さの深い深絞り成形や張り出し成形等の成形を行ってもピンホールや割れが発生することのない優れた成形性を備えた成形用包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0017】
[1]外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としての熱可塑性樹脂層と、これら両層間に配設された金属箔層とを含む成形用包装材であって、
前記熱可塑性樹脂層と前記金属箔層との間に二軸延伸ポリプロピレンフィルム層が積層配置されていることを特徴とする成形用包装材。
【0018】
[2]前記熱可塑性樹脂層は、共重合成分として少なくともプロピレンとエチレンを含有してなる融点が135〜155℃の共重合体樹脂からなる前項1に記載の成形用包装材。
【0019】
[3]前記熱可塑性樹脂層は、2以上の熱可塑性樹脂層が積層された積層体からなり、該熱可塑性樹脂層における少なくともシール面側(最も内面側)の樹脂層は、共重合成分として少なくともプロピレンとエチレンを含有してなる融点が135〜155℃の共重合体樹脂からなる前項1に記載の成形用包装材。
【0020】
[4]前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム層における少なくとも熱可塑性樹脂層側の表面が、該熱可塑性樹脂層の融点と同等もしくはそれ以下の低融点の樹脂層で被覆されている前項1〜3のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【0021】
[5]前記金属箔層の少なくとも片面に化成処理が施されている前項1〜4のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【0022】
[6]電池用ケースとして用いられる前項1〜5のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【0023】
[7]食品または医薬品の包装材として用いられる前項1〜5のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【発明の効果】
【0024】
[1]の発明では、熱可塑性樹脂層と金属箔層との間に二軸延伸ポリプロピレンフィルム層が積層配置されているから、この包装材に深絞り成形や張り出し成形等の成形を行ってもピンホールや割れが発生することがなく、成形性に優れており、シャープで、かつ成形高さの深い形状の成形が可能である。また、この二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、水蒸気バリア性に優れており、その水蒸気透過率は、例えば未延伸ポリプロピレンフィルムの水蒸気透過率の半分以下であるから、包装材の水蒸気バリア性を顕著に向上できる。
【0025】
[2]の発明では、熱可塑性樹脂層は、共重合成分として少なくともプロピレンとエチレンを含有してなる融点が135〜155℃の共重合体樹脂からなる構成であるから、十分な耐熱性を確保できると共に優れたシール性能を確保できる。
【0026】
[3]の発明では、熱可塑性樹脂層は、2以上の熱可塑性樹脂層が積層された積層体からなり、該熱可塑性樹脂層における少なくともシール面側(最も内面側)の樹脂層は、共重合成分として少なくともプロピレンとエチレンを含有してなる融点が135〜155℃の共重合体樹脂からなる構成であるから、十分な耐熱性を確保できると共に優れたシール性能を確保できる。
【0027】
[4]の発明では、二軸延伸ポリプロピレンフィルム層における少なくとも熱可塑性樹脂層側の表面が、該熱可塑性樹脂層の融点と同等もしくはそれ以下の低融点の樹脂層で被覆されているから、熱可塑性樹脂層を押出ラミネートする際に容易に接着させることができ、二軸延伸ポリプロピレンフィルム層と熱可塑性樹脂層とのラミネート強度を十分に確保することができる。
【0028】
[5]の発明では、金属箔層の少なくとも片面に化成処理が施されているから、内容物(電池の電解液、食品、医薬品等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。
【0029】
[6]の発明によれば、成形性に優れた電池ケース用材料が提供される。
【0030】
[7]の発明によれば、成形性に優れた食品包装材または成形性に優れた医薬品包装材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明に係る成形用包装材の一実施形態を示す断面図である。
【図2】この発明に係る成形用包装材の他の実施形態を示す断面図である。
【図3】比較例1の成形用包装材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この発明に係る成形用包装材1の一実施形態を図1に示す。この成形用包装材1は、例えば直方体形状等に成形されてリチウムイオンポリマー二次電池のケースとして用いられるものである。
【0033】
前記成形用包装材1は、金属箔層4の上面に第一樹脂接着剤層11を介して耐熱性樹脂層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の下面に第二樹脂接着剤層12を介して二軸延伸ポリプロピレンフィルム層5が積層され、さらに該二軸延伸ポリプロピレンフィルム層5の下面に熱可塑性樹脂層(内側層)3が積層一体化されてなる。
【0034】
前記耐熱性樹脂層(外側層)2としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記耐熱性樹脂層2としては、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂層2は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えばPETフィルム/ナイロンフィルムからなる複層で形成されていても良い。
【0035】
前記耐熱性樹脂層2の厚さは、12〜50μmであるのが好ましい。ポリエステルフィルムを用いる場合には厚さは12〜50μmであるのが好ましく、ナイロンフィルムを用いる場合には厚さは15〜50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで包装材として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくできて成形性を向上できる。
【0036】
前記金属箔層4は、包装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層4としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられ、アルミニウム箔が一般的に用いられる。前記金属箔層4の厚さは、20〜100μmあるのが好ましい。20μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、100μm以下であることで張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくできて成形性を向上できる。
【0037】
前記金属箔層4は、その少なくとも片面に、特に熱可塑性樹脂層側の表面に、化成処理が施されているのが好ましく、このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解液、食品、医薬品等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば次のような処理をすることによって金属箔4に化成処理を施す。即ち、例えば脱脂処理を行った金属箔4の表面に、
1)リン酸、クロム酸及びフッ化物の金属塩の混合物からなる水溶液
2)リン酸、クロム酸、フッ化物金属塩及び非金属塩の混合物からなる水溶液
3)アクリル系樹脂又は/及びフェノール系樹脂と、リン酸と、クロム酸と、フッ化物金属塩との混合物からなる水溶液
を塗工することにより化成処理を施す。
【0038】
前記熱可塑性樹脂層(内側層)(シーラント層)3としては、特に限定されるものではないが、未延伸のものが用いられ、具体的には、例えば
1)共重合成分としてプロピレンとエチレンを含有する共重合体からなる単層フィルム層
2)共重合成分としてプロピレン、エチレン及びブテンを含有する共重合体からなる単層フィルム層
3)共重合成分としてプロピレンとエチレンを含有するブロック共重合体からなる単層フィルム層
4)少なくともシール面側(内容物側)の樹脂層がプロピレンとエチレンを含有する共重合体で構成される複層フィルム層
5)少なくともシール面側(内容物側)の樹脂層が共重合成分としてプロピレン、エチレン及びブテンを含有する共重合体で構成される複層フィルム層
6)少なくともシール面側(内容物側)の樹脂層が共重合成分としてプロピレンとエチレンを含有するブロック共重合体で構成される複層フィルム層
等が挙げられる。
【0039】
前記1)〜3)の未延伸単層フィルムにオレフィン系の熱可塑性エラストマーがブレンドされていても良い。また、前記4)〜6)の未延伸複層フィルムにおけるシール面側の樹脂層にも同様にオレフィン系の熱可塑性エラストマーがブレンドされていても良い。
【0040】
前記熱可塑性樹脂層(内側層)3における少なくともシール面側(最も内面側)の樹脂層としては、DSC(示差走査熱量計)によって昇温速度20℃/分で測定されるピーク温度(融点)が135〜155℃であるものを用いるのが好ましい。前記融点が135℃以上であることで十分な耐熱性を確保できると共に、融点が155℃以下であることで優れたシール性を確保できる。
【0041】
前記熱可塑性樹脂層3の厚さは、10〜80μmであるのが好ましい。10μm以上であることで十分なシール強度を得ることができると共に80μm以下であることで端面からの水蒸気バリアを損ねることが十分に防止される。前記熱可塑性樹脂層3は、単層で構成されていても良いし、複層で構成されていても良い。複層とすることにより、例えば流動性の低い樹脂層の外側(最内層側)に流動性の高い樹脂層を配置し、シール時の熱可塑性樹脂層の異常流れによりシール厚みが極端に薄くなることを十分に防止することができる。
【0042】
前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム層5としては、実質的に引張試験時の降伏点が不明確になる程度に延伸されていることが必要であり、その延伸倍率については、フィルム流れ方向(生産時の流れ方向、縦方向)で3〜6倍、該フィルム流れ方向に直交する方向で8〜12倍に延伸されているのが好ましい。延伸倍率が上記好適範囲の下限より小さくなると引張試験時の降伏点が出現し、成形時に均一な伸びが阻害されることが懸念される。延伸方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、テンター法による逐次二軸延伸、チューブラー法による同時二軸延伸等の方法が挙げられる。
【0043】
前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム層5としては、特に限定されるものではないが、例えば、二軸延伸ホモポリプロピレンフィルム、二軸延伸プロピレン−エチレン共重合体樹脂フィルム、或いはホモポリプロピレン又はエチレンが10質量%以下で共重合されてなるランダムポリプロピレンにエチレンとポリプロピレンからなるエラストマー成分が添加された樹脂層を上記方法で二軸延伸したフィルム等が挙げられる。
【0044】
前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム層5の厚さは、15〜80μmであるのが好ましい。厚さが15μm以上であることで深絞り等の成形時に金属箔層4にピンホールが発生したり金属箔層4が破断することを十分に防止できると共に、厚さが80μm以下であることでシールがし易いものとなると共に、張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくできて成形性を向上できる。
【0045】
前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム層5には、本発明の効果を阻害しない限り、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、中和剤等の各種添加剤を含有せしめても良い。ただ、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム層5と前記金属箔4層とを接着剤を用いてラミネートする(積層する)場合には、ラミネート強度の低下を防止するために、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム層5にスリップ剤、帯電防止剤を含有せしめないものとするのが好ましく、特に帯電防止剤は非含有とするのが良い。
【0046】
前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム層5における少なくとも熱可塑性樹脂層3側の表面が、該熱可塑性樹脂層3の融点と同等もしくはそれ以下の低融点の樹脂層(低融点樹脂層)20で被覆された構成(図2参照)を採用するのが好ましい。この低融点樹脂層20を設けることにより、二軸延伸ポリプロピレンフィルム層5に熱可塑性樹脂層3を押出ラミネートする際に容易に接着させることができる。前記低融点樹脂としては、特に限定されるものではないが、DSC(示差走査熱量計)によって昇温速度20℃/分で測定されるピーク温度(融点)が120〜155℃である樹脂を用いるのが好ましい。融点が120℃以上であることで十分な耐熱性を確保できると共に、融点が155℃以下であることで熱可塑性樹脂層とのラミネート強度を十分に確保できる。前記融点が120〜155℃の樹脂としては、例えばプロピレン−エチレン共重合体、エチレン−プロピレンエラストマー、これらのブレンド物などが挙げられる。
【0047】
本発明の成形用包装材1を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、その一例を挙げると、金属箔(金属箔層)4の一方の面に耐熱性樹脂延伸フィルム(耐熱性樹脂層)2を接着剤(第一接着剤層)11を用いたドライラミネート法により接着し、次いで前記金属箔4の他方の面に二軸延伸ポリプロピレンフィルム5を接着剤(第二接着剤層)12を用いたドライラミネート法により接着した後、DSCで測定した融点が135〜155℃である未延伸熱可塑性樹脂フィルム(熱可塑性樹脂層)3を前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム5の表面に押出ラミネート法により貼合することにより、図1に示すような本発明の成形用包装材1が得られる。
【0048】
この時、二軸延伸ポリプロピレンフィルム5として、その表面(熱可塑性樹脂層3と貼合される側の面)に予め、DSC(示差走査熱量計)によって昇温速度20℃/分で測定されるピーク温度(融点)が例えば120〜155℃である樹脂(熱可塑性樹脂層3と同等の融点の樹脂もしくはそれより低い融点の低融点樹脂)20を貼合した構成のものを用いるのが好ましい。この場合には、図2に示す構成の成形用包装材1が得られる。この低融点樹脂層20の厚さは、5〜10μmに設定されるのが好ましい。
【0049】
前記第一接着剤層11、前記第二接着剤層12を構成する接着剤としては、特に限定されるものではないが、例えばポリオール成分及びイソシアネート成分を含有してなる二液硬化型のウレタン系接着剤等が挙げられる。この二液硬化型のウレタン系接着剤は、特にドライラミネート法で接着する際に好適に用いられる。前記ポリオール成分としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。前記イソシアネート成分としては、特に限定されるものではないが、例えばTDI(トリレンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、MDI(メチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート)等のジイソシアネート類などが挙げられる。前記第一接着剤層11の厚さ、前記第二接着剤層12の厚さは、いずれも、2〜5μmに設定されるのが好ましく、中でも3〜4μmに設定されるのが特に好ましい。
【0050】
また、上記実施形態では、第一接着剤層11と第二接着剤層12を設けた構成を採用しているが、これら両接着剤層11、12は、いずれも必須の構成層ではなく、これらを設けない構成を採用することもできる。例えば、ヒートラミネート法(熱ラミネート法)を用いれば、前記耐熱性樹脂層2と前記金属箔層4とを直接に積層一体化することができるし、同様にヒートラミネート法(熱ラミネート法)を用いれば、前記金属箔層4と前記二軸延伸ポリプロピレン層5とを直接に積層一体化することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、二軸延伸ポリプロピレン層5と熱可塑性樹脂層3とを直接に積層一体化しているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば二軸延伸ポリプロピレン層5と熱可塑性樹脂層3とを接着剤を用いたドライラミネート法により接着した構成としても良い。
【0052】
また、この発明の効果を阻害しない範囲であれば、無機系や有機系のアンチブロッキング剤、アマイド系のスリップ剤が構成樹脂に添加されていても良い。
【0053】
この発明の成形用包装材1を、例えば成形高さの深い直方体形状等の各種形状に成形(張り出し成形、深絞り成形等)することにより、体積エネルギー密度が高い電池用ケース、食品の包装材、医薬品の包装材等を得ることができる。このような成形を行って得られた電池用ケース、食品包装材、医薬品包装材は、ピンホールや割れが発生していないので、酸素や水分のバリア性に優れていて高い信頼性が得られる。
【実施例】
【0054】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0055】
<実施例1>
厚さ40μmのアルミニウム箔4の両面に、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布し、次いで180℃で5秒間乾燥しクロム付着量が10mg/m2となるようにした後、該アルミニウム箔4の一方の面に厚さ25μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(二軸延伸ナイロンフィルム)(耐熱性樹脂層)2を二液硬化型のウレタン系接着剤11でドライラミネートし、次いでアルミニウム箔4の他方の面に、二軸延伸ポリプロピレンフィルム5を二液硬化型のウレタン系接着剤12でドライラミネートした後、DSCで測定した融点が140℃であるプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂(熱可塑性樹脂層)3を20μmの厚さで前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム5の表面に押出ラミネート法により積層一体化することにより、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0056】
<実施例2>
厚さ40μmのアルミニウム箔4の両面に、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布し、次いで180℃で5秒間乾燥しクロム付着量が10mg/m2となるようにした後、該アルミニウム箔4の一方の面に厚さ25μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(二軸延伸ナイロンフィルム)(耐熱性樹脂層)2を二液硬化型のウレタン系接着剤11でドライラミネートして第1積層体を得た。次に、20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム5の表面に、DSCで測定した融点が135℃であるプロピレン−エチレン−ブテン三元共重合体樹脂(熱可塑性樹脂層)3を20μmの厚さで押出ラミネートして第2積層体を得た。この第2積層体の二軸延伸ポリプロピレンフィルム5と、前記第1積層体のアルミニウム箔4とを二液硬化型のウレタン系接着剤12でドライラミネート法により積層一体化することにより、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0057】
<実施例3>
厚さ40μmのアルミニウム箔4の両面に、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布し、次いで180℃で5秒間乾燥しクロム付着量が10mg/m2となるようにした後、該アルミニウム箔4の一方の面に厚さ25μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(二軸延伸ナイロンフィルム)(耐熱性樹脂層)2を二液硬化型のウレタン系接着剤11でドライラミネートし、次いでアルミニウム箔4の他方の面に、二軸延伸ポリプロピレンフィルム5を二液硬化型のウレタン系接着剤12でドライラミネートした後、DSCで測定した融点が155℃であるプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂(熱可塑性樹脂層)3を20μmの厚さで前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム5の表面に押出ラミネート法により積層一体化することにより、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0058】
<実施例4>
厚さ40μmのアルミニウム箔4の両面に、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布し、次いで180℃で5秒間乾燥しクロム付着量が10mg/m2となるようにした後、該アルミニウム箔4の一方の面に厚さ25μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(二軸延伸ナイロンフィルム)(耐熱性樹脂層)2を二液硬化型のウレタン系接着剤11でドライラミネートし、次いでアルミニウム箔4の他方の面に、片面が融点が130℃のプロピレン−エチレン−ブテン三元共重合体からなる低融点樹脂層20で被覆された二軸延伸ポリプロピレンフィルム5を二液硬化型のウレタン系接着剤12でドライラミネートした後、DSCで測定した融点が140℃であるプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂(熱可塑性樹脂層)3を20μmの厚さで前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム5の低融点樹脂層20の表面に押出ラミネート法により積層一体化することにより、図2に示す成形用包装材1を得た。
【0059】
<比較例1>
厚さ40μmのアルミニウム箔4の一方の面に厚さ25μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(二軸延伸ナイロンフィルム)(耐熱性樹脂層)2を二液硬化型のウレタン系接着剤11でドライラミネートし、次いでアルミニウム箔4の他方の面に、DSCで測定した融点が140℃であるポリプロピレンフィルム(熱可塑性樹脂層)3を二液硬化型のウレタン系接着剤12でドライラミネートすることにより、図3に示す成形用包装材を得た。
【0060】
なお、上記融点は、株式会社島津製作所製の自動示差走査熱量計(品番:DSC−60A)を用いて昇温速度20℃/分で測定した融点である。
【0061】
上記のようにして得られた各成形用包装材について下記評価法に基づいて成形性とシール性能の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
<成形性評価法>
株式会社アマダ製の張り出し成形機(品番:TP−25C−X2)を用いて縦55mm×横35mm×深さ8mmの直方体形状に張り出し成形を行い、下記判定基準に基づいて成形性を評価した。
(判定基準)
「○」…ピンホールが全くなく、割れも全く発生しなかった
「△」…ピンホールがごく一部で僅かに発生したものの実質的に殆どなかった
「×」…ピンホールがほぼ全面に多数発生した。
【0064】
<シール性能評価法>
株式会社オリエンテック製のテンシロンRTA−100及び株式会社ボールドウィン製の恒温槽TCF−III1−Bを用いて25℃及び100℃の条件下でシール剥離試験を行いシール性能の評価を行った。シール条件は、各成形用包装材について、シール幅5mm、シール圧0.3MPa、シール時間1秒、シール温度160℃及び180℃両面加熱で行った。
(シール性能判定基準)
「○」…160℃でシールし25℃でシール剥離試験を行った場合及び180℃でシールし100℃でシール剥離試験を行った場合のいずれにおいても30N/15mmの強度が得られたもの
「×」…上記に該当しなかったもの(シール性能が悪い)。
【0065】
表1から明らかなように、この発明の実施例1〜4の成形用包装材は、上記条件の張り出し成形を行って直方体形状に成形したところ、ピンホール、割れが全く発生しておらず、成形性に優れていた。
【0066】
これに対し、熱可塑性樹脂層と金属箔層との間に二軸延伸ポリプロピレンフィルム層を設けていない比較例1の成形用包装材では、張り出し成形により直方体形状に成形すると、ピンホールが多数生じており、成形性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
この発明に係る成形用包装材は、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型のリチウムイオンポリマー二次電池等の電池のケースとして好適に用いられ、これ以外にも、食品の包装材、医薬品の包装材として好適であるが、特にこれらの用途に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
1…成形用包装材
2…耐熱性樹脂層(外側層)
3…熱可塑性樹脂層(内側層)
4…金属箔層
5…二軸延伸ポリプロピレンフィルム層
20…低融点樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としての熱可塑性樹脂層と、これら両層間に配設された金属箔層とを含む成形用包装材であって、
前記熱可塑性樹脂層と前記金属箔層との間に二軸延伸ポリプロピレンフィルム層が積層配置されていることを特徴とする成形用包装材。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂層は、共重合成分として少なくともプロピレンとエチレンを含有してなる融点が135〜155℃の共重合体樹脂からなる請求項1に記載の成形用包装材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂層は、2以上の熱可塑性樹脂層が積層された積層体からなり、該熱可塑性樹脂層における少なくともシール面側の樹脂層は、共重合成分として少なくともプロピレンとエチレンを含有してなる融点が135〜155℃の共重合体樹脂からなる請求項1に記載の成形用包装材。
【請求項4】
前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム層における少なくとも熱可塑性樹脂層側の表面が、該熱可塑性樹脂層の融点と同等もしくはそれ以下の低融点の樹脂層で被覆されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項5】
前記金属箔層の少なくとも片面に化成処理が施されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項6】
電池用ケースとして用いられる請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項7】
食品または医薬品の包装材として用いられる請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形用包装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−98759(P2011−98759A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254873(P2009−254873)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(501428187)昭和電工パッケージング株式会社 (110)
【Fターム(参考)】