説明

成形用樹脂組成物の製造方法

【課題】窒化アルミニウム粉末に対して焼結助剤が均一に分散された構造欠陥の少ない窒化アルミニウム焼結体を得ることが可能で、生産性に優れる成形用樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】焼結助剤を、平均粒子径0.1〜5μm、最大粒子径20μm以下の状態で含有する、該焼結助剤と熱可塑性樹脂との予備分散物を調製し、次いで、該予備分散物と、熱可塑性樹脂及び窒化アルミニウム粉末とを溶融混練して、上記熱可塑性樹脂、窒化アルミニウム粉末及び焼結助剤を含有する組成物を得ることを特徴とする成形用樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融混練法により、窒化アルミニウム粉末及び焼結助剤を含有した成形用樹脂組成物の製造方法に関する。詳しくは、窒化アルミニウム粉末に対して焼結助剤が均一に分散され、これを脱脂、焼成して得られる窒化アルミニウム焼結体における構造欠陥を著しく減少することができる前記窒化アルミニウム成形用樹脂組成物の製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウム焼結体は、高い熱伝導性や優れた電気絶縁性を有しており、半導体素子搭載用のサブマウントやパワーモジュール用の各種電子回路基板、或いはパッケージ材料、絶縁材料として広く利用されている。
一般に、窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウム粉末をバインダ樹脂と混合した組成物を様々な成形方法により所望の形状に成形した後に、必要に応じて脱脂し、次いで、焼成することによって得られる。
【0003】
上記窒化アルミニウム成形体の製造方法として、バインダ樹脂を溶解した溶媒に窒化アルミニウム及び焼結助剤を分散せしめ、これをシート状等の所定の形状に成形する方法が広く実施されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、上記窒化アルミニウム成形体の製造方法に対して、溶媒を使用せず、熱可塑性樹脂と窒化アルミニウム粉末を溶融混練して樹脂組成物とし、これを押出成形等の熱成形を行う方法が提案されている(特許文献2参照)。上記熱可塑性樹脂との溶融混練により成形体を得る方法は、成形体に溶媒を含まないため、成形体の密度を高くでき、その後の脱脂、焼成における寸法安定性がよく、しかも、溶媒の乾燥工程が必要ないことにより生産性も良好であるというメリットを有する。
【0005】
熱可塑性樹脂との溶融混練により窒化アルミニウム成形用組成物を得る前記特許文献1には、組成物中に焼結助剤を使用する実施例等は存在しないが、上記窒化アルミニウム成形体を脱脂、焼成して窒化アルミニウム焼結体を得る際には、一般に、焼結助剤が併用される。即ち、窒化アルミニウムは、共有結合性が強く難焼結性であるため、希土類元素の酸化物やアルカリ土類元素の酸化物などの焼結助剤を用いられるのが一般的である。焼結助剤は、窒化アルミニウム粉末の表面に形成されている酸化アルミニウムと反応して液相を生成させ、焼結体を緻密化し、熱伝導率を向上させる働きがある。
【0006】
【特許文献1】特開平5−124866号公報
【特許文献2】特開平5−43304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、窒化アルミニウム粉末、焼結助剤及び熱可塑性樹脂を加圧式ニーダーなどの混練機で加熱混練(溶融混練)して得られる、焼結助剤を含む窒化アルミニウム成形用樹脂組成物は、これを使用して焼結体を製造した場合、製造される焼結体に構造欠陥が発生し、焼結体密度が充分に上がらず、これにより強度の向上効果が不十分であったり、バラつきが生じたりするという問題が存在することが判明した。特に、平均粒子径が3μm以下の小さい焼結助剤を用いた場合にその傾向が顕著に現れる。
【0008】
従って、本発明の目的は、窒化アルミニウム、焼結助剤及び熱可塑性樹脂を溶融混練により得られる窒化アルミニウム成形用組成物を使用して製造される窒化アルミニウム焼結体において、焼結助剤による構造欠陥が低減され、強度の向上効果の高い窒化アルミニウム成形用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、溶融混練による窒化アルミニウム成形用樹脂組成物の製造方法における前記目的を達成すべく鋭意研究を行った。その結果、焼結助剤は、乾燥状態で扱う場合には比較的凝集し易いという知見を得た。特に、平均粒子径が3μm以下となった場合その傾向が著しい。そして、かかる焼結助剤は、溶融混練時に窒化アルミニウム粉末と共に熱可塑性樹脂に溶融混練する時点で凝集し、予想外の大きな粒子として樹脂組成物中に存在することが判明した。そのため、この樹脂組成物を成形して、脱脂、焼成して得られる焼結体中に、助剤相を均一に形成することができず、構造欠陥が増加するものと推定される。
【0010】
本発明者らは、上記知見に基づいて更に研究を重ねた結果、焼結助剤の凝集性を低下させた状態として窒化アルミニウム、熱可塑性樹脂との溶融混練を実施することにより、焼結助剤の凝集が防止でき、焼結助剤が均一に分散した樹脂組成物が得られ、前記目的が達成し得ることを見出した。
【0011】
また、焼結助剤の凝集性を低下させた状態とする手法として、前記熱可塑性樹脂の少なくとも一部と焼結助剤とを、該熱可塑性樹脂を溶解し得る有機溶媒の存在下に湿式粉砕などの手段により分散せしめ、該有機溶媒を除去する等の方法によって焼結助剤の予備分散物として扱うことが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、窒化アルミニウム粉末、焼結助剤及び熱可塑性樹脂を溶融混練して、上記熱可塑性樹脂、窒化アルミニウム粉末及び焼結助剤を含有する組成物を得るに際し、上記熱可塑性樹脂の少なくとも一部と焼結助剤との予備分散物を調製し、次いで、該予備分散物を前記溶融混練に供することを特徴とする窒化アルミニウム成形用樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、凝集し易い焼結助剤の粒子が熱可塑性樹脂と予備分散物を形成することによって凝集し難い状態とされているため、溶融混練により得られた窒化アルミニウム成形用樹脂組成物中に焼結助剤を均一に分散することが可能であり、これを使用した押出成形等の熱成形によってかかる焼結助剤が高度に分散した成形体を得ることができ、該成形体を脱脂、焼成することにより、構造欠陥が少なく、機械的強度、に優れた窒化アルミニウム焼結体を工業的に低コストかつ大量生産することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
〔窒化アルミニウム粉末〕
本発明の窒化アルミニウム成形用樹脂組成物(以下、単に成形用組成物ともいう)の製造に用いられる窒化アルミニウム粉末は、直接窒化法やアルミナ還元法等の公知の方法で製造されたもの、またはこれらの混合物が特に制限なく使用できる。最終的に得られる窒化アルミニウム焼結体が良好な熱伝導率を有する点では、還元窒化法で得られた窒化アルミニウム粉末が好ましい。また、上記窒化アルミニウム粉末の不純物については、特に制限はないが、酸素、陽イオン等の不純物が少ないものが好ましく、例えば、酸素含有量が好ましくは2.0重量%以下、より好ましくは0.4重量%〜1.3重量%の範囲であり、陽イオン不純物の含有量が好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下であることが好ましい。このような窒化アルミニウム粉末を原料とした場合には、熱伝導性に優れた窒化アルミニウム焼結体を得ることができる。
【0015】
上記窒化アルミニウム粉末の平均粒子径についても、特に制限されないが、通常1.0μm〜10.μm、好ましくは1.0μm〜5.0μm、最も好ましくは1.0μm〜3.0μmである。窒化アルミニウム粉末の平均粒子径が上記範囲内にある場合に、高熱伝導性且つ高機械強度を有する窒化アルミニウム焼結体が得られる。
【0016】
〔焼結助剤〕
本発明の成形用樹脂組成物の製造に用いられる焼結助剤は、公知の焼結助剤が用いられ、一般的には、アルカリ土類金属又は希土類元素の酸化物から選ばれる。上記アルカリ土類金属元素としては、一般にベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が用いられ、特にカルシウム、ストロンチウム、バリウムが好適に用いられる。また、希土類元素としては、イットリウム、ランタン、セリウム、ブラセオシウム、ネオジウム、プロメシウム、サマリウム、ユーロピウム、カドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等が用いられ、特にイットリウム、ランタン、セリウム、ネオジウムが好適に用いられる。
【0017】
また、上記焼結助剤は、通常前記した金属の酸化物が用いられるが、窒化アルミニウム粉末が焼結される条件下で、該金属酸化物を形成する金属化合物、例えば、硝酸塩、炭酸塩、塩化物等として用いることもできる。
【0018】
また、上記希土類金属化合物とアルカリ土類金属化合物とは併用しても良く、さらに、それぞれ数種類を用いても良い。
【0019】
本発明の方法は、上記焼結助剤が、特に凝集性が高い、酸化イットリウムを含む場合においてより効果的である。
【0020】
〔熱可塑性樹脂〕
本発明において、成形用樹脂組成物の製造に用いる熱可塑性樹脂は、公知のものが何等制限なく使用できる。具体的な熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン樹脂などの炭化水素系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ2−エチルヘキシルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアクリレートなどのアクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニルなどの極性ビニル系樹脂、ニトロセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、スチレン・ブタジエン系,ポリオレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2−ポリブタジエン、アイオノマーなどの熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
これらの熱可塑性樹脂のうち、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ2−エチルヘキシルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体よりなる群より選ばれる熱可塑性樹脂は、窒化アルミニウム粉末と優れた化学親和性を有し、押出成形等の熱成形性、脱脂性が良好である点で好ましい。
【0022】
〔焼結助剤と熱可塑性樹脂との予備分散物〕
本発明の成形用樹脂組成物の製造方法における最大の特徴は、窒化アルミニウム粉末、焼結助剤及び熱可塑性樹脂を溶融混練して成形用樹脂組成物を得る前に、上記熱可塑性樹脂の少なくとも一部と焼結助剤との予備分散物を調製することにある。
【0023】
即ち、前記熱可塑性樹脂の少なくとも一部と焼結助剤とを予備分散物とすることにより、焼結助剤は熱可塑性樹脂で被覆され、全組成を溶融混練する際の再凝集を効果的に防止できる。
【0024】
尚、上記予備分散物の調製において使用される熱可塑性樹脂は、成形用樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂が1種類であれば、その一部或いは全部を使用することができる。また、複数種の熱可塑性樹脂を混合して使用する場合、それらの熱可塑性樹脂の中から選ばれた一部の種類の樹脂を使用しても良いし、熱可塑性樹脂の混合物の一部又は、全部を使用してもよい。
【0025】
本発明において、予備分散物の調製は、焼結助剤が所定の粒径において熱可塑性樹脂に被覆された状態で分散し得ることができる方法であれば特に制限されない。
【0026】
例えば、前記熱可塑性樹脂の少なくとも一部と焼結助剤とを、該熱可塑性樹脂を溶解し得る有機溶媒の存在下に湿式分散した後、該有機溶媒を除去することによって調整する方法(湿式法)、焼結助剤及び熱可塑性樹脂を公知の混練装置により、混練トルクを高めに設定して混合する方法(乾式法)が挙げられる。しかし、焼結助剤の分散性を高度に実現するためには、湿式法が推奨される。
【0027】
(湿式法)
本発明において、予備分散物を調製するための湿式法は、前記熱可塑性樹脂の少なくとも一部と焼結助剤とを、該熱可塑性樹脂を溶解し得る有機溶媒の存在下に湿式分散した後、該有機溶媒を除去することによって調整する方法である。
【0028】
上記湿式法による予備分散物の調製において用いる有機溶剤としては、熱可塑性樹脂を溶解し得るものであれば、適宜選択することができる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ブロムクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類などが好適である。これらの有機溶媒は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
湿式分散は、上記焼結助剤、熱可塑性樹脂及び有機溶媒を混合して、熱可塑性樹脂が溶解した有機溶媒中に焼結助剤の粒子を分散させる方法であれば特に制限されないが、焼結助剤、熱可塑性樹脂及び有機溶媒よりなる混合物を、ボールミル等の湿式破砕機により所望の粒子径まで破砕しながら分散する方法が推奨される。他の方法として、焼結助剤を乾式破砕機により破砕しておき、熱可塑性樹脂及び有機溶媒と混合物とした後、前記粉砕機や攪拌装置等により、焼結助剤の凝集物を解砕する方法も実施することができる。
【0030】
上記ボールミルに用いるボールの材質は特に制限されず、一般にセラミックスの湿式混合に用いるセラミックス製或いはナイロン製のものが使用される。焼結助剤の粉砕及び分散を効率的に行う観点からは、セラミックス製ボール、特に、アルミナ製ボールを用いることが好ましく、大きさの異なるボールを任意の割合で組み合わせて使用するのがより好ましい。
【0031】
湿式法においては、上記焼結助剤及び熱可塑性樹脂を有機溶媒に分散物を得た後、該有機溶媒を除去する操作を行う。かかる操作は、公知の乾燥機が特に制限無く使用されるが、有機溶媒を除去後、予備分散物が顆粒状で得られるスプレードライヤーが好適に使用される。
【0032】
(乾式法)
本発明において、予備分散物を調製するための乾式法は、焼結助剤及び熱可塑性樹脂を公知の混練装置により、混練トルクを高めに設定して混合する方法が好適である。
【0033】
上記乾式法に使用される混練装置としては、例えば、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、ディスクニーダー、1軸あるいは2軸連続式混練機等の公知の混練装置を挙げることができる。そのうち、加圧ニーダーにより混練する場合、温度50〜250℃、好ましくは70〜200℃、時間5分〜10時間、好ましくは10分〜5時間の条件下で行うことができる。上記焼結助剤及び熱可塑性樹脂を一度に全量仕込んで加圧混練してもよく、それの一部を加圧混練した後、残余の原料を仕込んでさらに加圧混練してもよい。焼結助剤を効率よく分散させるためには、混練トルクが好ましくは5N・m以上、さらに好ましくは10N・m以上になるように、焼結助剤の充填量、熱可塑性樹脂分子量、混練条件などを設定することが好ましい。
【0034】
従来の方法ように、窒化アルミニウム粉末、焼結助剤及び熱可塑性樹脂を一括で溶融混練する場合には、混練トルクは小さく、通常は3N・m以下となる。
【0035】
上述した各種の方法によって得られる予備分散物は、該熱可塑性樹脂中において、平均粒子径0.2〜5μm、特に、0.5〜3μmの粒径で焼結助剤を分散したものであることが望ましい。また、予備分散物における焼結助剤は、最大粒子径は20μm以下、特に、15μm以下であることが望ましい。
【0036】
本発明の該焼結助剤と熱可塑性樹脂との予備分散物において、上記焼結助剤の配合量は、特に制限されないが、熱可塑性樹脂100重量部に対して50〜800重量部、好ましくは60〜700重量部、さらに好ましくは100〜600重量部含有している。上記焼結助剤の含有量が上記範囲にあると、焼結助剤の分散が良好となる。
【0037】
また、上記予備分散物には、必要に応じて、界面活性剤、可塑剤、滑剤を配合することができる。
【0038】
本発明において好適に用いられる界面活性剤を具体的に例示すると、カルボキシル化トリオキシエチレントリデシルエーテル、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンモノステアレート、カルボキシル化ヘプタオキシエチレントリデシルエーテル、テトラグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等が挙げられる。
【0039】
上記可塑剤としては、特に制限は無く、具体的には、ポリエチレングリコールおよびその誘導体、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルステアレート、トリクレゾールフォスフェート、トリ−N−ブチルフォスフェート、グリセリンなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
上記滑剤としては、特に制限はなく、具体的には、パラフィン等の石油系ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸及びそれらのエステル等が挙げられる。
【0041】
〔成形用樹脂組成物〕
本発明において、の成形用樹脂組成物は、上記焼結助剤と熱可塑性樹脂との予備分散物、熱可塑性樹脂及び窒化アルミニウム粉末とを溶融混練することによって得られる。
【0042】
上記溶融混練において、予備分散物、熱可塑性樹脂、窒化アルミニウム粉末の配合比率は特に限定されず、成形用樹脂組成物として、公知の組成が特に制限無く採用される。
【0043】
例えば、得られる成形用樹脂組成物において、焼結助剤は、酸化物換算で窒化アルミニウム粉末100重量部に対して、0.05〜10重量部、好ましくは1〜6重量部の範囲で用いることが好ましく、かかる範囲内で、窒化アルミニウム粉末中の酸素含有量、不純物含有量、粒子径等を勘案して好適な配合量を適宜決定すればよい。
【0044】
また、熱可塑性樹脂は、窒化アルミニウム粉末100重量部に対して、5〜20量部、好ましくは、8〜15量部の割合になるように調整することが成形性、脱脂性、得られる焼結体の物性も良好となり好ましい。
【0045】
本発明の成形用樹脂組成物は、その他成分として、前記した界面活性剤、可塑剤、滑剤、さらに、脂肪族アミン等の解膠剤、鉱油、椰子油等の油等をさらに含有していてもよい。
【0046】
上記界面活性剤は、前記したものが特に制限なく用いることができ、窒化アルミニウム粉末100重量部に対して、通常0.01重量部〜10重量部、好ましくは0.02重量部〜3.0重量部の範囲の量で使用することができる。
【0047】
上記可塑剤は、前記したものが特に制限なく用いることができ、窒化アルミニウム粉末100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。
【0048】
上記滑剤は、前記したものが特に制限なく用いることができ、窒化アルミニウム粉末100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。
【0049】
本発明の方法によって得られる成形用樹脂組成物においては、焼結助剤を平均粒子径、0.2〜5μmが好ましく、0.5〜3μmの大きさで均一に分散せしめることが可能であり、最大粒径は、20μm以下、特に、15μm以下とすることができる。
【0050】
上記成形用樹脂組成物及びこれを使用して得られる成形体は、上述した組成により、2.20〜2.80g/cm、特に、2.35〜2.60g/cmという高い密度を達成することができ、これにより、成形体の強度が高くなり、また、脱脂、焼結時の寸法安定性も向上する。
【0051】
本発明の成形用樹脂組成物を押出成形に使用する場合、120℃、せん断速度100(1/S)での粘度が、50〜10000Pa・sの範囲にあることが好ましく、100〜6000Pa・sであることがさらに好ましい。粘度が上記範囲にあると、押出成形性が良好となり押出成形体の強度も高い。
【0052】
本発明の成形用樹脂組成物の上記粘度は、たとえば、使用される窒化アルミニウム粉末の粒径や比表面積、充填量を勘案し、熱可塑性樹脂の種類や分子量、可塑剤、滑剤の量を増減させることにより増減させることができる。
【0053】
〔成形樹脂組成物の調整方法〕
本発明において、成形用樹脂組成物は、上記焼結助剤と熱可塑性樹脂との予備分散物、熱可塑性樹脂及び窒化アルミニウム粉末とを、公知の混練装置により溶融混練して得られる。かかる混練装置としては、例えば、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、ディスクニーダー、連続式混練機等を挙げることができる。例えば、加圧ニーダーにより混練する場合、温度50〜200℃、好ましくは70〜150℃、時間5分〜3時間、好ましくは10分〜2時間の条件下で行うことができる。
【0054】
前記混練装置への供給は、予備分散物、熱可塑性樹脂、窒化アルミニウム粉末、その他の成分を一度に全量仕込んで加圧混練してもよく、それら成分の一部を加圧混練した後、残余の原料を仕込んでさらに加圧混練してもよい。
【0055】
本発明の方法によって得られる成形用樹脂組成物の形態は特に制限されないが、造粒(ペレット化)されていることが望ましい。造粒には、フィーダー・ルーダー等、公知の装置を使用することができる。
【0056】
[成形用樹脂組成物を用いた成形体及び焼結体の製造方法]
本発明において、前記成形用樹脂組成物を用いて成形体を製造する方法は、公知の熱成形法が特に制限無く採用されるが、押出成形が好適である。
【0057】
押出成形には、公知の1軸あるいは2軸押出成形機および公知の金型を使用することができる。また、押出成形条件は、押出成形物の形状や使用する押出成形機の能力に応じて異なるが、一般には押出圧力0.5〜100MPa、好ましくは1〜50MPa、押出速度1〜300mm/秒、好ましくは5〜200mm/秒、シリンダー温度50〜300℃、好ましくは50〜200℃とすることができる。
【0058】
得られた成形体は、脱脂(脱有機成分)された後、焼成して、窒化アルミニウム焼結体とされる。
【0059】
上記脱脂は、常圧雰囲気、加圧雰囲気、減圧雰囲気等での加熱による方法、溶剤等による抽出による方法、および加熱と抽出とを組み合わせた方法等、公知の手法により行うことができる。
【0060】
また、脱脂は、常圧雰囲気にて、空気中、窒素中、水素中等の任意の雰囲気で加熱することにより行うことが好ましいが、残留炭素量および残留酸素量の調整がし易い、空気中で脱脂を行うことがさらに好ましい。また、脱脂温度は、通常200〜900℃、好ましくは300〜600℃である。
【0061】
次いで、上記脱脂によって得られた脱脂体を焼成し、窒化アルミニウム焼結体が得られる。焼成条件は、公知の条件が特に制限無く採用されるが、アルゴン、窒素などの中性雰囲気中で行うことが好ましい。
【0062】
上記焼成用の容器として、非カーボン製、例えば、窒化アルミニウム焼結体、窒化ホウ素成形体等の容器を使用し、該容器中に上記成形体を収納して焼結を行ってもよい。
【0063】
脱脂体の焼成は、温度1500〜2000℃、好ましくは1600〜1900℃で、少なくとも1時間、特に3時間以上実施することが好ましい。焼成時間の上限は特に制限はされないが、通常は6時間程度である。
【実施例】
【0064】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0065】
<焼結助剤および窒化アルミニウム粉末の粒度分布>
窒化アルミニウム粉末をホモジナイザーにてピロリン酸ソーダ中に分散させ、レーザー回折粒度分布装置(日機装株式会社製MICROTRAC HRA)にて平均粒子径(D50)を測定した。
【0066】
<窒化アルミニウム粉末の陽イオン不純物含有量>
陽イオン不純物含有量(金属元素濃度)は、窒化アルミニウム粉末をアルカリ溶融後、酸で中和し、島津製作所製「ICP−1000」を使用して溶液のICP発光分析により定量した。
【0067】
<窒化アルミニウム粉末の酸素含有量>
酸素含有量(酸素濃度)は、堀場製作所製「EMGA−2800」を使用して、グラファイトるつぼ中での高温熱分解法により発生したCOガス量から求めた。
【0068】
<予備分散物及び成形用樹脂組成物中の焼結助剤の平均粒子径及び最大粒子径>
(1)平均粒子径
予備分散物を走査型電子顕微鏡(SEM)により、倍率5000倍、20μm×20μmの反射電子像の任意10視野選択し、すべての粒子系について粒径を測定し、次式に従って数平均粒子径Dnを算出した。
【0069】
Dn =ΣnD/n
(2)最大粒子径
予備分散物を走査型電子顕微鏡(SEM)により、倍率1000倍、100μm×100μmの反射電子像の任意50視野観察し、その粒径が最大のものを最大粒子径(Dmax)とした。
【0070】
<成形用樹脂組成物の粘度>
東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを用いて(長さ20mm、直径1mmのキャピラリー使用)、測定温度120℃、押出速度5〜200mm/minの範囲の粘度を測定した。そのグラフからせん断速度が100(1/秒)の時の粘度を求めた。
【0071】
<押出成形体の密度>
東洋精機製「高精度比重計D−H」を使用して、アルキメデス法により求めた。
【0072】
<曲げ強度>
JIS R1601に準じて、クロスヘッド速度0.5mm/分、スパン30mmで3点曲げ強度測定を行なった。試験片の幅は4mmで平面研削して作製した。曲げ強度は、5サンプルの平均値を測定値とした。
【0073】
<熱伝導率>
理学電気株式会社製熱定数測定装置PS−7を用いて、レーザーフラッシュ法により測定した。厚み補正は検量線により行った。
【0074】
また、実施例における原料は下記の通りである。
【0075】
・熱可塑性樹脂
A1:エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
製品名:三井・デュポン・ポリケミカル社製 EV220
A2:ポリブチルメタクリレート(PBMA)
製品名:根上工業株式会社製 M6003
・焼結助剤
酸化イットリウム(日本イットリウム製高純度酸化イットリウム(純度99.9%以上)、平均粒子径(D50):1.5μm、比表面積:12.5m/g)
・窒化アルミニウム粉末
窒化アルミニウム粉末(株式会社トクヤマ製Hグレード、平均粒子径(D50):1.25μm、酸素含有量:0.8重量%、陽イオン不純物含有量Ca:220ppm、Si:45ppm、Fe:15ppm)
・可塑剤
フタル酸ビス(2−エチルヘキシル) (DOP)
・滑剤
ステアリン酸
実施例1
エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部、酸化イットリウム125重量部、ステアリン酸5重量部をバンバリーミキサー(東洋精機製 ラボプラストミル型式100C ミキサータイプB−250)を用いて、100℃で30分混練した。これら原料の合計の仕込み量は、ミキサー混練容量に対して70容量%となるように調整した。混練時のトルクは10N・mであった。ついで、得られた混練物を1軸押出機100℃にて造粒し、熱可塑性樹脂と焼結助剤の予備分散物(A)を得た。得られた予備分散物(A)中の酸化イットリウムの平均粒子径(Dn)及び最大粒子径(Dmax)を表1に示す。
【0076】
次に、窒化アルミニウム粉末100重量部、得られた予備分散物(A)9.2重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体8重量部、ステアリン酸0.8重量部、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)4重量部を上記バンバリーミキサーに投入し、100℃で20分混練した。ついで、得られた混練物を押出機で造粒し、ペレット状の成形用樹脂組成物を得た。得られた成形用樹脂組成物中の酸化イットリウムの平均粒子径(Dn)及び最大粒子径(Dmax)を表2に示す。
【0077】
得られた成形用樹脂組成物は、真空押出機(宮崎鉄工製 FM−20)を用いて成形し、厚さ1mm×幅60mmのシート状の押出成形体を得た。シリンダー温度は80℃として、押出圧力は2MPa、押出速度16mm/secであった。
【0078】
得られた押出成形体は、空気雰囲気下、10℃/時間の速度で昇温して500℃で5時間脱脂し、窒素雰囲気下、1730度で6時間焼結を行い、焼結体を得た。得られた焼結体の曲げ強度を測定した。
【0079】
成形用樹脂組成物の最終的な配合割合と粘度、押出成形体の密度、焼結体の曲げ強度、熱伝導率の測定結果を表2に示す。
【0080】
実施例2
実施例1において、エチレン−酢酸ビニル共重合体の代わりにポリブチルメタクリレートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂と焼結助剤の予備分散物(B)を得た。混練時のトルクは15N・mであった。得られた予備分散物(B)中の酸化イットリウムの平均粒子径(Dn)及び最大粒子径(Dmax)を表1に示す。
【0081】
次に、実施例1と同様にして、成形用樹脂組成物、押出成形体を得た。得られた成形用樹脂組成物中の酸化イットリウムの平均粒子径(Dn)及び最大粒子径(Dmax)を表2に示す。また、押出圧力は5MPa、押出速度14mm/secであった。
得られた押出成形体は、空気雰囲気下、10℃/時間の速度で昇温して500℃で5時間脱脂し、窒素雰囲気下、1730度で6時間焼結を行い、焼結体を得た。成形用樹脂組成物の最終的な配合割合と粘度、押出成形体の密度、焼結体の曲げ強度、熱伝導率の測定結果を表2に示す。
【0082】
実施例3
ポリブチルメタクリレート100重量部、酸化イットリウム500重量部、ステアリン酸10重量部をバンバリーミキサー(東洋精機製 ラボプラストミル型式100C ミキサータイプB−250)を用いて、100℃で30分混練した。混練時のトルクは13N・mであった。これら原料の合計の仕込み量は、ミキサー混練容量に対して70容量%となるように調整した。ついで、得られた混練物を1軸押出機100℃にて造粒し、熱可塑性樹脂と焼結助剤の予備分散物(C)を得た。得られた予備分散物(C)中の酸化イットリウムの平均粒子径(Dn)及び最大粒子径(Dmax)を表1に示す。
【0083】
次に、窒化アルミニウム粉末100重量部、得られた予備分散物(C)6.3重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体8重量部、ポリブチルメタクリレート3重量部、ステアリン酸0.7重量部、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)4重量部を上記バンバリーミキサーに投入し、100℃で20分混練した。ついで、得られた混練物を押出機で造粒し、ペレット状の成形用樹脂組成物を得た。得られた成形用樹脂組成物中の酸化イットリウムの平均粒子径(Dn)及び最大粒子径(Dmax)を表2に示す。
【0084】
次に、実施例1と同様にして、押出成形体を得た。押出圧力は4.5MPa、押出速度14mm/secであった。
【0085】
得られた押出成形体は、空気雰囲気下、10℃/時間の速度で昇温して500℃で5時間脱脂し、窒素雰囲気下、1730度で6時間焼結を行い、焼結体を得た。成形用樹脂組成物の最終的な配合割合と粘度、押出成形体の密度、焼結体の曲げ強度、熱伝導率の測定結果を表2に示す。
【0086】
実施例4
内容積が10Lのナイロン製ポットに、ボール径25mmの鉄心入りナイロン製ボールを見掛け充填率で40%入れた。ついで、ポリブチルメタクリレート100重量部、酸化イットリウム粉末500重量部、トルエン100重量部、およびエタノール20重量部を添加して、ボールミル混合を16時間行い、焼結助剤溶液(分散液)を得た。
【0087】
得られた焼結助剤溶液をスプレードライヤーにて乾燥させ、熱可塑性樹脂と焼結助剤の予備分散物(D)を得た。得られた予備分散物(D)中の酸化イットリウムの平均粒子径(Dn)及び最大粒子径(Dmax)を表1に示す。
【0088】
次に、窒化アルミニウム粉末100重量部、得られた予備分散物(D)6重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体8重量部、ポリブチルメタクリレート3重量部、ステアリン酸1重量部、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)4重量部を上記バンバリーミキサーに投入し、100℃で20分混練した。ついで、得られた混練物を押出機で造粒し、ペレット状の成形用樹脂組成物を得た。得られた成形用樹脂組成物中の酸化イットリウムの平均粒子径(Dn)及び最大粒子径(Dmax)を表2に示す。
【0089】
得られた成形用樹脂組成物は、真空押出機(宮崎鉄工製 FM−20)を用いて成形し、厚さ1mm×幅60mmのシート状の押出成形体を得た。シリンダー温度80℃として、押出圧力は4.5MPa、押出速度14mm/secであった。
【0090】
得られた押出成形体は、空気雰囲気下、10℃/時間の速度で昇温して500℃で5時間脱脂し、窒素雰囲気下、1730度で6時間焼結を行い、焼結体を得た。成形用樹脂組成物の最終的な配合割合と粘度、押出成形体の密度、焼結体の曲げ強度、熱伝導率の測定結果を表2に示す。
【0091】
実施例5
実施例3において、ナイロン製ボールの代わりにビッカース硬さ1200でボール径10mmのアルミナ製ボールを用いたこと以外は実施例3と同様にして、熱可塑性樹脂と焼結助剤の予備分散物(E)を得た。得られた予備分散物(E)中の酸化イットリウムの平均粒子径(Dn)及び最大粒子径(Dmax)を表1に示す。
【0092】
次に、実施例3と同様にして、成形用樹脂組成物、押出成形体を得た。得られた成形用樹脂組成物中の酸化イットリウムの平均粒子径(Dn)及び最大粒子径(Dmax)を表2に示す。また、押出圧力は4MPa、押出速度15mm/secであった。
【0093】
得られた押出成形体は、空気雰囲気下、10℃/時間の速度で昇温して500℃で5時間脱脂し、窒素雰囲気下、1730度で6時間焼結を行い、焼結体を得た。成形用樹脂組成物の最終的な配合割合と粘度、押出成形体の密度、焼結体の曲げ強度、熱伝導率の測定結果を表2に示す。
【0094】
実施例6
内容積が10Lのナイロン製ポットに、ビッカース硬さ1200でボール径10mmのアルミナ製ボールを見掛け充填率で40%入れた。ついで、ポリブチルメタクリレート100重量部、酸化イットリウム粉末250量部、窒化アルミニウム粉末100重量部、トルエン400重量部、およびエタノール200重量部を添加して、ボールミル混合を16時間行い、焼結助剤溶液(分散液)を得た。
【0095】
得られた焼結助剤溶液をスプレードライヤーにて乾燥させ、熱可塑性樹脂と焼結助剤の予備分散物(F)を得た。得られた予備分散物(F)中の酸化イットリウムの平均粒子径(Dn)及び最大粒子径(Dmax)を表1に示す。
【0096】
次に、窒化アルミニウム粉末重量部、得られた予備分散物(F)12重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体8重量部、ポリブチルメタクリレート2重量部、ステアリン酸1重量部、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)4部を上記バンバリーミキサーに投入し、100℃で20分混練した。ついで、得られた混練物を押出機で造粒し、ペレット状の成形用樹脂組成物を得た。得られた成形用樹脂組成物中の酸化イットリウムの平均粒子径(Dn)及び最大粒子径(Dmax)を表2に示す。
【0097】
次に、実施例3と同様にして、押出成形体を得た。押出圧力は4MPa、押出速度15mm/secであった。
【0098】
得られた押出成形体は、空気雰囲気下、10℃/時間の速度で昇温して500℃で5時間脱脂し、窒素雰囲気下、1730度で6時間焼結を行い、焼結体を得た。成形用樹脂組成物の最終的な配合割合と粘度、押出成形体の密度、焼結体の曲げ強度、熱伝導率の測定結果を表2に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
比較例1
窒化アルミニウム粉末100重量部、酸化イットリウム5重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体12重量部、ステアリン酸1部、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)4部をバンバリーミキサー(東洋精機製 ラボプラストミル型式100C ミキサータイプB−250)を用いて、100℃で30分混練した。これら原料の合計の仕込み量は、ミキサー混練容量に対して70%となるように調整した。ついで、得られた混練物を押出機で造粒し、ペレット状の成形用樹脂組成物を得た。得られた成形用樹脂組成物中の酸化イットリウムの平均粒子径(Dn)及び最大粒子径(Dmax)を表3に示す。
【0102】
酸化イットリウムの最大粒子径は50μmであり、20μmを超える酸化イットリウムの凝集体が数多く見られた。
次に、実施例1と同様にして、押出成形体を得た。押出圧力は5MPa、押出速度13mm/secであった。
【0103】
得られた押出成形体は、空気雰囲気下、10℃/時間の速度で昇温して500℃で5時間脱脂し、窒素雰囲気下、1730度で6時間焼結を行い、焼結体を得た。成形用樹脂組成物の最終的な配合割合と粘度、押出成形体の密度、焼結体の曲げ強度、熱伝導率の測定結果を表3に示す
比較例2
窒化アルミニウム粉末100重量部、酸化イットリウム5重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体8重量部、ポリブチルメタクリレート4重量部、ステアリン酸1部、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)4部をバンバリーミキサー(東洋精機製 ラボプラストミル型式100C ミキサータイプB−250)を用いて、100℃で3時間混練した。これら原料の合計の仕込み量は、ミキサー混練容量に対して70%となるように調整した。ついで、得られた混練物を押出機で造粒し、ペレット状の成形用樹脂組成物を得た。得られた成形用樹脂組成物中の酸化イットリウムの平均粒子径(Dn)及び最大粒子径(Dmax)を表3に示す。
【0104】
次に、実施例1と同様にして、押出成形体を得た。押出圧力は5MPa、押出速度13mm/secであった。得られた押出成形体は、空気雰囲気下、10℃/時間の速度で昇温して500℃で5時間脱脂し、窒素雰囲気下、1730度で6時間焼結を行い、焼結体を得た。成形用樹脂組成物の最終的な配合割合と粘度、押出成形体の密度、焼結体の曲げ強度、熱伝導率の測定結果を表3に示す。
【0105】
比較例3
内容積が10Lのナイロン製ポットに、ビッカース硬さ1200でボール径10mmのアルミナ製ボールを見掛け充填率で40%入れた。ついで、酸化イットリウム粉末100重量部、トルエン400重量部、およびエタノール200重量部を添加して、ボールミル混合を16時間行い、焼結助剤溶液(分散液)を得た。
【0106】
得られた焼結助剤溶液をスプレードライヤーにて乾燥させ、顆粒状の焼結助剤を得た。
【0107】
窒化アルミニウム粉末100重量部、上記顆粒状の酸化イットリウム5重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体12重量部、ステアリン酸1.0部、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)4部をバンバリーミキサー(東洋精機製 ラボプラストミル型式100C ミキサータイプB−250)を用いて、100℃で30分混練した。これら原料の合計の仕込み量は、ミキサー混練容量に対して70%となるように調整した。ついで、得られた混練物を押出機で造粒し、ペレット状の成形用樹脂組成物を得た。得られた成形用樹脂組成物中の酸化イットリウムの平均粒子径(Dn)及び最大粒子径(Dmax)を表3に示す。
【0108】
次に、実施例1と同様にして、押出成形体を得た。押出圧力は5MPa、押出速度13mm/secであった。
【0109】
得られた押出成形体は、空気雰囲気下、10℃/時間の速度で昇温して500℃で5時間脱脂し、窒素雰囲気下、1730度で6時間焼結を行い、焼結体を得た。成形用樹脂組成物の最終的な配合割合と粘度、押出成形体の密度、焼結体の曲げ強度、熱伝導率の測定結果を表3に示す
【0110】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の方法により得られた成形用樹脂組成物を用いることにより、棒状、角柱状、パイプ状、シート状など押出成形法が適用できる窒化アルミニウム焼結体を生産性よく得ることが可能である。さらに、焼結助剤が均一に分散された構造欠陥の少ない窒化アルミニウム焼結体を得ることが可能であることから、半導体素子搭載用のサブマウント、パワーモジュール用の各種電子回路基板、或いはパッケージ材料にも適応可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化アルミニウム粉末、焼結助剤及び熱可塑性樹脂を溶融混練して、上記熱可塑性樹脂、窒化アルミニウム粉末及び焼結助剤を含有する組成物を得るに際し、上記熱可塑性樹脂の少なくとも一部と焼結助剤との予備分散物を調製し、次いで、該予備分散物を前記溶融混練に供することを特徴とする窒化アルミニウム成形用樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記予備分散物の調製を、熱可塑性樹脂の少なくとも一部と焼結助剤を有機溶媒に分散せしめた後、該有機溶媒を除去することにより行なう、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂の少なくとも一部と焼結助剤の有機溶媒への分散を、湿式粉砕によって行なう、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記有機溶媒の除去を、噴霧乾燥によって行なう、請求項2記載の製造方法。
【請求項5】
窒化アルミニウム成形用樹脂組成物が、窒化アルミニウム粉末100重量部に対して、熱可塑性樹脂を5〜20量部、及び、焼結助剤を0.05〜10重量部の割合で含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4項のいずれか一項の製造方法によって得られた窒化アルミニウム成形用樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−105893(P2010−105893A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282369(P2008−282369)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】