説明

成形金型

【課題】BMC等の熱硬化性樹脂を射出・圧縮成形するにあたり、成形品にピンホールやウェルドラインが発生することを防止する。
【解決手段】固定型11と可動型12との間に形成されるキャビティ13の所定位置に連通するガス抜き穴3と、このガス抜き穴3を開閉自在に閉鎖する閉鎖部材(弁棒)5を設け、キャビティ13内に熱硬化性樹脂原料Mを射出した後、その原料Mを圧縮成形する際に、ガス抜き穴3を通じてキャビティ13内の排気を行い、熱硬化性樹脂原料Mがガス抜き穴3に到達する直前にガス抜き穴3を閉鎖することで、キャビティ13内の空気や発生ガスによる影響を無くす。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、BMC(バルクモールドコンパウンド)等の熱硬化性樹脂原料を射出・圧縮成形する際に使用する成形金型に関する。
【0002】
【従来の技術】BMC等の熱硬化性樹脂の成形品を成形する方法としては、固定型と、固定型に対して型閉め・型開き自在に設けられた可動型とを備え、型閉め状態で固定型と可動型との間に成形用のキャビティが形成される成形金型を使用し、型開き状態から可動型を固定側に向けて移動し、可動型が型閉め位置の手前(例えば10mm手前の位置)に達した時点で、固定型と可動型との間のキャビティ内に熱硬化性樹脂原料を射出し、次いで可動型の移動により型閉めを行うことにより、キャビティ内の熱硬化性樹脂原料を圧縮成形する。そして、キャビティ内の熱硬化性樹脂原料を硬化させた後、可動型の移動により型開きを行うとともに、成形品を離型するという射出・圧縮成形法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、BMC等の熱硬化性樹脂を原料として成形品を射出・圧縮成形する場合、成形金型のキャビティ内の空気や発生ガス(樹脂の揮発分等)の影響によって、成形品にピンホールが生じたり、また圧縮成形時に熱硬化性樹脂原料が、空気や発生ガスを巻き込んでウェルドラインが発生する等の成形不良が起こりやすい。
【0004】本発明はそのような実情に鑑みてなされたもので、BMC等の熱硬化性樹脂を射出・圧縮成形するにあたり、成形品にピンホールやウェルドラインが発生することを防止することが可能な構造の成形金型の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、型閉め状態でキャビティが形成される固定型と可動型を備え、型開き状態から可動型を固定型に向けて移動し、可動型が型閉め位置に達する前に固定型と可動型との間のキャビティ内に熱硬化性樹脂原料を射出し、次いで可動型の移動により熱硬化性樹脂原料を圧縮成形する構造の成形金型において、固定型と可動型との間に形成されるキャビティの所定位置に連通するガス抜き穴と、このガス抜き穴を開閉自在に閉鎖する閉鎖部材を備え、キャビティ内に熱硬化性樹脂原料を射出した後、その原料を圧縮成形する際に、ガス抜き穴を通じてキャビティ内の排気を行い、熱硬化性樹脂原料がガス抜き穴に到達する直前にガス抜き穴を閉鎖するように構成されていることによって特徴づけられる。
【0006】本発明の成形金型によれば、キャビティ内に射出した熱硬化性樹脂原料の圧縮(型閉め)を開始した時点から、熱硬化性樹脂原料がガス抜き穴に達する直前まで、キャビティ内の排気を行うので、キャビティ内の空気や発生ガスによるピンホールやウェルドラインの問題を解消でき、良好な品質の熱硬化性樹脂成形品を得ることができる。
【0007】なお、ガス抜き穴を設ける位置(キャビティへの連通位置)は、ウェルドラインの解消を考慮すると、圧縮成形時に、キャビティ内において熱硬化性樹脂の原料が合流する部分とすることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】図1は本発明の実施形態の縦断面図である。図2は本発明の実施形態の要部縦断面図である。
【0010】成形金型10は、BMC等の熱硬化性樹脂の射出・圧縮成形に用いられる金型であって、固定型11と可動型12を備えている。
【0011】可動型12は、固定型11に対して水平方向に移動可能となっており、可動型12を固定型11に合わせた状態(型閉め)状態で、固定型11と可動型12との間に成形用のキャビティ13が形成される。固定型11と可動型12との間にはパッキン14が設けられている。なお、図示はしないが、可動型12には、射出・圧縮成形後の型開き状態のときに、可動型12側に残った成形品を突き出して離型するための突出装置が設けられている。
【0012】固定型11にはガス抜き装置1が設けられている。ガス抜き装置1は、図2(A)及び(B)に示すように、装置本体2、弁棒5及びエアシリンダ6などを備えている。
【0013】装置本体2は、固定型11に対して着脱自在に装着されている。装置本体2には、円筒形状で装置本体2を貫通するガス抜き穴3と、このガス抜き穴3に連通するバキューム穴4が形成されている。ガス抜き穴3には弁棒5が摺動自在に配設されている。
【0014】装置本体2及び弁棒5の各先端面2a,5aは、固定型11の成形面11aの一部を形成する形状に加工されている。装置本体2及び弁棒5は、耐熱性・耐摩耗性に優れた材料、例えば、いわゆる工具鋼や合金工具鋼等によって製作されている。
【0015】弁棒5は、エアシリンダ6にて移動され、バキューム穴4をガス抜き穴3に開放する開放位置(図2R>2(B)の位置)と、バキューム穴4を閉鎖し、かつ先端面5aが固定型11の成形面11a(装置本体2の先端面2a)に一致する閉鎖位置(図2(A)の位置)の2位置に選択的に配置される。
【0016】バキューム穴4には、真空排気装置(例えば真空ポンプ等)7が接続されており、エアシリンダ6の駆動によって、弁棒5を開放位置に移動したときに、ガス抜き穴3がバキューム穴4に連通して、キャビティ13内の排気(ガス抜き)が行われる。なお、エアシリンダ6は、図示しないコントローラによって、後述するタイミングで駆動制御される。
【0017】次に、ガス抜き装置1の動作を成形工程とともに説明する。
【0018】■型閉めの開始図3に示すように、成形金型10を型開きした状態から、可動型12を固定型11に向けて移動する。ガス抜き装置1の弁棒5は、ガス抜き穴3の閉鎖位置(図2(A)の位置)に配置しておく。
【0019】■原料射出可動型12が型閉め位置(図1の位置)に対して10mm手前の位置に達した時点で、図4に示すように、原料(BMC)Mをキャビティ13内に射出する。
【0020】■原料圧縮・ガス抜き図5に示すように、可動型12を固定型11に向けて更に移動して、原料Mの圧縮成形(型閉め)を開始する。これと同時に、図5及び図2(B)に示すように、ガス抜き装置1のエアシリンダ6を駆動し、弁棒5をガス抜き穴3の開放位置に移動させてキャビティ13内の排気(ガス抜き)を行う。
【0021】■ガス抜き穴の閉鎖図6に示すように、原料Mがガス抜き穴3に到達する直前に、ガス抜き装置1のエアシリンダ6を駆動して、ガス抜き穴3を閉鎖するとともに、弁棒5の先端面5aを固定型11の成形面11aに一致させる(図2(A)参照)。
【0022】■原料硬化可動型12の型閉めが完了した後、その状態(図7に示す状態)を所定時間だけ維持して、圧縮成形を行った原料Mを硬化させて成形品Sを得る。
【0023】■型開き・成形品離型原料Mの硬化が完了した時点で、可動型12を移動させて型開きを行うとともに、可動型12に設置の突出装置(図示せず)を駆動して、可動型12側に残った成形品Sを突き出して成形品Sの離型を行う。
【0024】以上で成形の1サイクルを完了し、以下同様な工程■〜■を順次繰り返してゆく。
【0025】ここで、以上の成形工程において、■のガス抜き穴3の閉鎖のタイミングは、例えば、キャビティ13の形状・容量、及び原料Mの射出量などの条件に基づいて、原料Mの射出を行った時点から、原料Mがガス抜き穴3の直前に到達するまでの時間を、あらかじめ計算あるいは実験等により求めておき、その時間を基に設定するようにすればよい。
【0026】以上の実施形態において、ガス抜き装置1のガス抜き穴3の位置(キャビティ13への連通位置)は、圧縮成形時に、BMC等の原料Mがキャビティ13内において合流する部分としている。このような位置にガス抜き穴3を設けることにより、ウェルドラインの発生をより効果的に防止することができる。
【0027】なお、図1の実施形態によれば、ガス抜き装置1を構成する装置本体2、弁棒5及びエアシリンダ6が、固定型11に対して着脱自在に装着されているので、圧縮成形時に作用する高圧樹脂によって、弁棒5の先端面5aや装置本体2の先端面2aが損傷した場合、あるいはガス抜き穴3に樹脂が付着堆積してガス抜き装置1が動作不良になった場合などにおいて、装置本体2や弁棒5等を部分的に交換することができるという利点もある。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の成形金型によれば、キャビティ内に熱硬化性樹脂原料を射出した後、その原料を圧縮成形する際に、ガス抜き穴を通じてキャビティ内の排気を行い、熱硬化性樹脂原料がガス抜き穴に到達する直前にガス抜き穴を閉鎖するように構成されているので、BMC等の熱硬化性樹脂の射出・圧縮成形において、従来問題とされていたピンホールやウェルドラインの発生を防止することができ、品質の高い熱硬化性樹脂成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態の要部縦断面図である。
【図3】成形工程の説明図である。
【図4】成形工程の説明図である。
【図5】成形工程の説明図である。
【図6】成形工程の説明図である。
【図7】成形工程の説明図である。
【符号の説明】
1 ガス抜き装置
2 装置本体
3 ガス抜き穴
4 バキューム穴
5 弁棒(閉鎖部材)
6 エアシリンダ
7 真空排気装置
10 成形金型
11 固定型
11a 成形面
12 可動型
13 キャビティ
14 パッキン
M 原料(BMC)
S 成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】 型閉め状態でキャビティが形成される固定型と可動型を備え、型開き状態から可動型を固定型に向けて移動し、可動型が型閉め位置に達する前に固定型と可動型との間のキャビティ内に熱硬化性樹脂原料を射出し、次いで可動型の移動により熱硬化性樹脂原料を圧縮成形する構造の成形金型において、固定型と可動型との間に形成されるキャビティの所定位置に連通するガス抜き穴と、このガス抜き穴を開閉自在に閉鎖する閉鎖部材を備え、キャビティ内に熱硬化性樹脂原料を射出した後、その原料を圧縮成形する際に、ガス抜き穴を通じてキャビティ内の排気を行い、熱硬化性樹脂原料がガス抜き穴に到達する直前にガス抜き穴を閉鎖するように構成されていることを特徴とする成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2002−192572(P2002−192572A)
【公開日】平成14年7月10日(2002.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−394534(P2000−394534)
【出願日】平成12年12月26日(2000.12.26)
【出願人】(000147888)株式会社積水工機製作所 (3)
【Fターム(参考)】