説明

成膜成形品およびその製造方法

【課題】基材2の表面に施される成膜面3を、歪補正がなされて転写性がよい凸面鏡1を形成する。
【解決手段】型合わせされた第一、第二金型5、6で基材2を射出成形した後、該基材2の表面に成膜装置7によって成膜面3を施した後、射出用型面5aに基材2を型入れした状態で第二金型6に設けた子金型6bを突出させて基材2の裏面を加圧することで高密度化し、これによって反射面となる成膜面2を、歪補正が成されて転写性が良い凸面鏡1を製造するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラー等に利用することができる歪み補正度の高い成膜成形品およびその製造方法の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形された射出成形体の表面に成膜を施す場合、射出成形用の金型から取出した射出成形体の複数を成膜室に持ち運び、その表面に射出するようにしていた。ところがこのものでは、射出成形体の持ち運び過程で埃が成膜面に付着したり指が触れたりすると、該部位での成膜が不良になるという問題がある。
そこで成膜装置を射出成形用の金型に組み込み、成形された射出成形体の表面に成膜を施すという一連の加工工程で射出成形、成膜成形を行うようにし、これによって成膜面に埃が付着したり指で触ることがないようにして不良率の著しい低減が図れ大幅なコストダウンを達成できるようにしたものを提唱した(例えば特許文献1、2)。
【特許文献1】国際公開WO2004−101253号公報
【特許文献2】国際公開WO2004−101254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで前記成形成膜を一連の工程で行うものは、通常の射出成形の場合と同じく、射出成形体の熱による収縮があり、この結果、成膜面には歪がどうしても発生し、この歪は、大型化すればするほど大きいものになるという問題があって、ミラーのように極端に歪発生を嫌う製品に採用することは難しいという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、互いに型合わせされる第一、第二の金型を用いて樹脂材を射出成形する射出工程、該成形した樹脂材の表面に成膜を施す成膜工程とを備えた成膜成形品の製造方法において、前記成膜工程後、樹脂材に圧力を付与して加圧する加圧工程が設けられていることを特徴とする成膜成形品の製造方法である。
請求項2の発明は、加圧工程は、少なくとも一方の金型側に設けられる金型を突出させて行うものであることを特徴とする請求項1記載の成膜成形品の製造方法である。
請求項3の発明は、金型は射出材を形成するための型面の一部または全部を突出するものであることを特徴とする請求項2記載の成膜成形品の製造方法である。
請求項4の発明は、加圧工程は、樹脂材の二次射出をすることを特徴とする請求項1記載の成膜成形品の製造方法である。
請求項5の発明は、互いに型合わせされる第一、第二の金型を用いて樹脂材を射出成形した後、該樹脂材に成膜を施すことで製造される成膜成形品であって、該成膜成形品は、成膜が施された後、加圧されていることを特徴とする成膜成形品である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1または5の発明とすることにより、歪補正されて転写正の良い成膜成形品を効率よく製造できることになる。
請求項2乃至4の何れか一つの発明とすることにより、簡単に加圧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次ぎに、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図中、1は凹面鏡であって、該凹面鏡1は、樹脂材を射出することによって成形された部分球形状をし、アクリルにトリルのように透明素材で形成された基材2と、該基材2の裏面に施され、反射面を構成する成膜面3と、該成膜面3の裏面に施された不透明な保護膜4とによって層状に形成され、基材2の表面からみたときに成膜面3が凹面となって反射する凹面鏡1を形成しているが、斯かる凹面鏡1は、次のようにして形成される。
【0007】
図2、3に本発明の実施の形態を示すが、このものにおいて、5、6は互いに対向する金型面に対して垂直な方向と平行な方向とに互いに相対移動するように構成された第一、第二の金型(ベース金型)であって、本実施の形態では第一金型5が固定金型、第二金型6が移動金型となっているが、固定、移動を逆にしても良く、また両者を移動するものにしても構成できる。
【0008】
そして本実施の形態では第一金型5に、凹面鏡1の裏面側を形成するため凹型になった射出用型面5aと、凹面鏡1の裏面に成膜を施すための成膜装置(真空蒸着やスパッタリング等の通常知られた成膜装置を用いることができる)7を組込んだ(内装した)成膜用型面5bとが形成され、第二金型6には凹面鏡1の表面側を形成するため凹型になった射出用型面6aが形成されているが、前記射出用型面6aには、前記基材2の表面全体(射出用型面6aに型嵌めされている面)を加圧するため射出用型面6aに対して出没移動できる金型(以降、第一、第二金型5、6と区別するため「子金型」とする。「加圧用金型」と称することもできる。)6bが設けられている。
【0009】
そしてこのものでは、まず図2(A)に示すように、子金型6bが型面6aに対して突出したり没入したりすることがない状態、つまり面一状になった状態で射出用型面5a、6a同士が対向している姿勢から、第一、第二金型5、6を型合わせして射出用型面5a、6a同士を付き合わせ、ここに樹脂材を射出して基材2を形成する(図2(B)参照)。ついで第一、第二金型5、6を型離れさせることになるが、このとき基材2は第二金型6に残るように型設計されている。この状態で第二金型6の射出用型面6aを第一金型5の成膜用型面5bとが型合わせされるよう型移動させた後、成膜装置7によって基材2の裏面(型面5aからの脱型面)にアルミニウム、銅、銀、金等の反射面になる金属素材を成膜して成膜面3を形成する(図2(C)参照)。
【0010】
しかる後、第一、第二金型5、6の相対移動によって、前記成膜面3が施された基材2を第一金型5の射出用型面5aに型入れし、そして第二金型6側の子金型6bを射出用型面6aから突出移動させる(図2(D)参照)。これによって前記基材2は、表面側から加圧(押圧)されることになって高密度状態となり、これによって成膜面3は、射出用型面6aによって補正され、転写性が良い反射面となって凹面鏡1が形成されるようになっている。因みに、子金型6bによって加圧する工程では、射出した樹脂材の温度がまだ高く、子金型6bによる押圧で樹脂材がまだ流動できる状態、つまりゲル状態に維持されていることが必要である。また保護膜4は、必要である場合に施されるが、この保護膜4は、前記押圧工程後に施すことが好ましい。
【0011】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態にすることで、基材2の表面に成膜面3を形成したものについて、子金型6bによる加圧で基材2を高密度化して成膜面3を歪補正されたものにでき、この結果、転写性に優れた成膜面3を有する凹面鏡1とすることができる。因みに、凹面鏡に限らず、平面鏡、凸面鏡についても同様にして形成することができる。
【0012】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されないものであることは勿論であって、鏡の製造に限定されるものでなく、ランプ等の反射面を有するものやエンブレム等、各種の製品に適用することができ、また加圧工程としては、第一金型5側に、成膜された樹脂材を型入れして加圧するため用いる加圧専用の型面を形成しておいてもよい。また、図3(A)に示すように、樹脂材2の一部を加圧する子金型6cとすることもでき、また図3(B)に示すように樹脂材2の成膜面3が形成された表面を加圧する子金型5cとすることもでき、さらには図3(C)に示すように二次射出するための型面5dを形成しておき、ここに樹脂材を二次射出して加圧するようにしてもよく、この場合、二次射出される樹脂材が成膜面側としておけば、該二次射出される加圧用の樹脂材を保護膜4に兼用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】成膜成形体の断面図である。
【図2】(A)〜(D)は成膜成形品の製造工程を示す概略工程図である。
【図3】(A)〜(C)はそれぞれ他の実施の形態の加圧工程を示す概略工程図である。
【符号の説明】
【0014】
1 凹面鏡
2 樹脂材
2a 加圧部
3 成膜面
4 保護膜
5 第一金型
6 第二金型
6b 子金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに型合わせされる第一、第二の金型を用いて樹脂材を射出成形する射出工程、該成形した樹脂材の表面に成膜を施す成膜工程とを備えた成膜成形品の製造方法において、前記成膜工程後、樹脂材に圧力を付与して加圧する加圧工程が設けられていることを特徴とする成膜成形品の製造方法。
【請求項2】
加圧工程は、少なくとも一方の金型側に設けられる金型を突出させて行うものであることを特徴とする請求項1記載の成膜成形品の製造方法。
【請求項3】
金型は射出材を形成するための型面の一部または全部を突出するものであることを特徴とする請求項2記載の成膜成形品の製造方法。
【請求項4】
加圧工程は、樹脂材の二次射出をすることを特徴とする請求項1記載の成膜成形品の製造方法。
【請求項5】
互いに型合わせされる第一、第二の金型を用いて樹脂材を射出成形した後、該樹脂材に成膜を施すことで製造される成膜成形品であって、該成膜成形品は、成膜が施された後、加圧されていることを特徴とする成膜成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−154402(P2009−154402A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335493(P2007−335493)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000149468)株式会社大嶋電機製作所 (89)
【Fターム(参考)】