説明

成膜用基板、成膜方法、及び発光装置の作製方法

【課題】光による加熱成膜法により均一な膜厚分布を有し、かつ良質な膜を成膜し、高信頼性な発光装置を生産性よく作製できる技術を提供することを課題の一とする。
【解決手段】光による加熱成膜法において、成膜する材料層(有機化合物材料を含む層)が設けられる成膜用基板の光吸収部表面を凹凸を有する粗面(梨子地形状)とする。光による加熱により溶融した有機化合物材料は粗面上にあるために凝集せず、被成膜用基板に均一な膜厚で成膜することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
成膜用基板、成膜方法、及び発光装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセンス(以下、ELとも記す)素子を備える発光装置には、フルカラー表示を行うため、カラー発光するカラー発光素子を用いる。カラー発光素子を形成するには、各色の発光材料を微細なパターンに電極上に形成する必要がある。
【0003】
一般的に発光材料は、蒸着法によって成膜されるが、蒸着法は、材料利用効率が低いことや基板サイズが限られるなどの問題点を有しており、低コストで高生産性が要求される工業化には不向きである。
【0004】
上記問題を解決する技術として、発光材料をレーザーやフラッシュランプからの光を用いて有機ドナー層を有するドナー基板より、素子作成用基板に転写し発光層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−308974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような転写法においては、素子作成用基板に成膜される発光層の膜厚分布の不均一、膜質の不良などの問題があった。この問題は発光装置の信頼性や歩留まりの低下を招く。従って、さらに均一で良質な膜が成膜できる成膜方法が望まれている。
【0007】
上記問題を鑑みて、光による加熱成膜法により膜厚分布が均一で、かつ良質な膜を成膜することを課題の一とする。
【0008】
効率よく光のエネルギーを材料に供給し、照射エネルギーを低減することを課題の一とする。
【0009】
高信頼性な発光装置を生産性よく作製できる技術を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
透光性基板上に光吸収部及び有機化合物材料を含む層が形成された成膜用基板に光を照射し、透光性基板を透過させて、光吸収部に光を照射することによって有機化合物材料を含む層に含まれる材料を、対向して配置された被成膜基板へ成膜する。有機化合物材料を含む層に含まれる材料の加熱手段として光照射工程を用いる。
【0011】
光による加熱成膜法で成膜する場合、材料が昇華して系内の圧力が高くなる。そのため、材料の気化温度が融点より高くなり有機化合物材料を含む層に含まれる材料は液化し、吸収層上において局所的に凝集してしまうために、成膜される薄膜の膜厚分布が不均一となる。
【0012】
そこで、光による加熱成膜法において、成膜する材料層(有機化合物材料を含む層)が設けられる成膜用基板の光吸収部表面を凹凸を有する粗面(梨子地形状)とする。光による加熱により溶融した有機化合物材料は粗面上にあるために凝集せず、被成膜基板に均一な膜厚で成膜することができる。
【0013】
光吸収部は表面に凸部が設けられており、表面に凹凸を有している。このような凹凸形状を梨子地形状ともいう。光吸収部は単層構造でも積層構造であってもよい。
【0014】
光吸収部が積層構造を有する場合、第1の基板側から光吸収膜と凸部を有する膜とを積層してもよいし、第1の基板側から凸部を有する膜と光吸収膜とを積層してもよい。
【0015】
光吸収部において上層に形成される膜が凹凸を有するように加工されてもよいし、下層に形成される膜が凹凸を有し、結果上層に形成される膜表面にも下層の膜の凹凸が反映されるように加工されてもよい。
【0016】
光吸収部が積層構造を有する場合、少なくとも一層が光を吸収し、熱を供給する光吸収膜であればよい。光吸収膜以外の膜は、光吸収膜より下層に設けられる場合は光透過性を有し、光吸収膜より上層に設けられる場合は熱を遮断しない高い熱伝導率を有する膜を用いる。
【0017】
よって、光吸収膜以外の膜は、光吸収膜より下層に設けられる場合は熱伝導率が低い膜であってもよく(熱伝導率が低い膜が好ましい)、光吸収膜より上層に設けられる場合は光透過性を有さない膜であってもよい。
【0018】
凸部は光吸収部表面に凹凸を形成できれば特に形状は限定されず、柱状、錐状、格子状などを用いればよい。また、凹凸は連続的なストライプ構造や、不連続的なドット構造などを用いることができる。光吸収部の凹凸の差(凸部の高さ)は、50nm以上2μm以下、より好ましくは500nm以上2μm以下とすればよい。本明細書において、該凹凸の差の好ましい範囲は成膜用基板最表面に材料層まで形成した際材料層表面に形成される凹凸の差にあてはまるものとする。
【0019】
光吸収部を成膜パターンを反映して選択的に形成すれば、被成膜基板に該パターンで薄膜を形成することができる。
【0020】
また、光吸収部に光が照射されないように、透光性基板と光吸収部との間に反射層を選択的に形成してもよい。反射層によって光は反射されるので、反射層のパターンを反映した薄膜を被成膜基板に形成することができる。
【0021】
さらに、反射層と有機化合物材料を含む層との間に熱の伝導を妨げる断熱層を設けてもよい。断熱層を、光に対する透過率は60%以上とし、かつ熱伝導率が反射層及び光吸収部に用いる材料の熱伝導率よりも小さい材料を用いて形成することが好ましい。熱伝導率が低いと、照射された光から得られる熱を効率よく成膜に用いることができる。
【0022】
成膜用基板の一形態は、凹凸を有する光吸収部と、凹凸を有する光吸収部上に有機化合物材料を含む層とを含み、有機化合物材料を含む層は凹凸を反映して形成される。
【0023】
成膜用基板の他の一形態は、凹凸を有する光吸収部と、凹凸を有する光吸収部上に有機化合物材料を含む層とを含み、光吸収部は光吸収膜と透光性膜との積層構造であり、透光性膜表面に凹凸を有し、有機化合物材料を含む層は凹凸を反映して形成される。
【0024】
成膜用基板の他の一形態は、凹凸を有する光吸収部と、凹凸を有する光吸収部上に有機化合物材料を含む層とを含み、光吸収部は透光性膜と光吸収膜との積層構造であり、透光性膜表面に凹凸を有し、光吸収膜表面は透光性膜表面の凹凸を反映し、有機化合物材料を含む層は凹凸を反映して形成される。
【0025】
成膜方法の一形態は、凹凸を有する光吸収部と、凹凸を有する光吸収部上に有機化合物材料を含む層とを含み、有機化合物材料を含む層は凹凸を反映して形成される成膜用基板を用い、成膜用基板の有機化合物材料を含む層形成面と、被成膜基板とを向き合うように、成膜用基板と被成膜基板とを配置し、透光性基板を通過させて、光を光吸収部に照射して光を照射された光吸収部上の有機化合物材料を含む層に含まれる材料を被成膜基板上に成膜する。
【0026】
上記成膜用基板及び成膜方法を用いて、被成膜基板上に設けられた第1の電極層上に発光層を形成し、発光層上に第2の電極層を形成して発光素子を有する発光装置を作製することができる。また、発光層を形成する場合、被成膜領域を一画素ごとに対応させてもよいし、被成膜領域を複数の画素を含むように対応させ複数の画素の発光層を一度に作製してもよい。
【0027】
蒸着材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に微細なパターンの薄膜を形成することができる。
【0028】
光吸収部に光を照射する工程は減圧下で行うことが好ましい。減圧下で光を照射し、被成膜基板に材料を成膜する工程を行うと、成膜される膜へのゴミ等の汚染物の影響を軽減することができる。
【0029】
広範囲を処理することも可能なため、大面積基板であっても生産性よく被成膜基板に薄膜を形成することができる。よって、高信頼性な発光装置及び電子機器を安価で作製することができる。
【発明の効果】
【0030】
蒸着材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に膜厚分布が均一で、かつ膜質の良好な薄膜を形成することができる。
【0031】
光による加熱成膜法により膜厚分布が均一で、かつ良質な膜を成膜することができる。
【0032】
効率よく光のエネルギーを材料に供給し、照射エネルギーを低減することができる。
【0033】
このような成膜用基板及び成膜方法を用いて発光素子を形成し、高信頼性の発光装置を作製することができる。また、大面積の被成膜基板に薄膜を形成することができるため、大型の発光装置及び電子機器を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】成膜用基板の一例の断面図である。
【図2】成膜用基板の一例の平面図である。
【図3】成膜方法を示した図である。
【図4】成膜用基板の一例の断面図である。
【図5】成膜用基板の一例の断面図である。
【図6】成膜用基板の一例の断面図である。
【図7】成膜用基板の一例の断面図である。
【図8】発光装置を示した平面図及び断面図である。
【図9】発光装置の作製工程を示した断面図である。
【図10】発光素子の構成を示した断面図である。
【図11】発光表示モジュールを示した断面図である。
【図12】発光表示モジュールを示した平面図及び断面図である。
【図13】電子機器を示した図である。
【図14】電子機器を示した図である。
【図15】実施例の成膜用基板のSTEM写真である。
【図16】実施例及び比較例の成膜用基板を用いて形成した薄膜の膜厚分布を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態では、被成膜基板に均一な膜厚分布を有する良質の薄膜を形成することを目的とした成膜用基板及び成膜方法の一例について図1乃至図5を用いて説明する。
【0037】
図1(A)に成膜用基板の一例を示す。第1の基板101a上に選択的に光吸収部104aが形成されている。第1の基板101aと光吸収部104aとの間に下地膜となる絶縁膜を形成してもよい。
【0038】
光吸収部104aは表面に凸部150aが設けられており、表面に凹凸を有している。このような凹凸形状を梨子地形状ともいう。図1(A)は、光吸収部104aは単層構造であり、光吸収部104a表面に凸部150aが形成される構成である。本明細書において、成膜用基板を構成する材料の吸収、透過、遮断性は、照射される光に対しての性質である。
【0039】
図1(B)は、光吸収部が積層構造を有する例であり、第1の基板101b上に光吸収膜151aと凸部150bを有する膜151bの積層構造からなる光吸収部104bが形成されている。凸部150bを有する膜151bは光吸収膜151aから供給される熱を遮断する材料でなければよく、光吸収性でも光透過性でもよい。
【0040】
図1(B)は光吸収部104bにおいて上層に形成される膜が凹凸を有するように加工された例を示したが、図1(C)は、下層に形成される膜が凹凸を有し、結果上層に形成される膜表面にも下層の膜の凹凸が反映される例である。図1(C)は、第1の基板101c上に凸部150cを有する光吸収部104cが設けられ、光吸収部104cは凹凸を有する膜152aと、凹凸を有する膜152a上に形成された光吸収膜152bとで構成されている。光吸収膜152bは、下層の凹凸を有する膜152aの形状を反映し、表面に凹凸を有する。
【0041】
光吸収部が積層構造を有する場合、少なくとも一層が光を吸収し、熱を供給する光吸収膜であればよい。光吸収膜以外の膜は、光吸収膜より下層に設けられる場合は光透過性を有し、光吸収膜より上層に設けられる場合は熱を遮断しない高い熱伝導率を有する膜を用いる。
【0042】
光吸収膜は被成膜基板において薄膜形成領域を連続して覆う膜である必要があるが、光吸収部を構成する他の膜は不連続な膜であってもよい。例えば、凹凸を形成するために、柱状や錐状の凸部を並べて形成し、その上、又は下に光吸収膜を形成してもよい。光吸収膜を複数積層する場合は、複数の光吸収膜で被成膜基板における薄膜形成領域を連続して覆う構成としてもよい。
【0043】
凸部の形状例を図4(A)(B)(C)(D)に示す。図4(A)(B)(C)(D)は凸部を有する光吸収部においてある一面で分断した断面図である。図4(A)は柱状の凸部153aを複数有する光吸収部160aであり、図4(B)は上方に向かってテーパーを有する台形の凸部153bを複数有する光吸収部160bである。凸部は錐形であってもよく、図4(C)は錐形の凸部153cを間隔を有して複数有する光吸収部160cであり、図4(D)は錐形の凸部153dを底面が接するように隣接して複数有する光吸収部160dである。図4(A)(B)(C)(D)では同じ形状の凸部を複数設ける例を示したが、形状の異なる凸部を複数設けて光吸収部表面に凹凸を形成してもよい。
【0044】
なお、図4は光吸収部をある面で分断した2次元的な断面図であり、3次元的にみると、光吸収部における凹凸は、図2(B)のような連続的なストライプ構造であっても、図2(A)のような不連続的なドット構造であってもよい。
【0045】
なお、図4(A)(B)(C)のように凸部の間に間隔を有して設ける場合、その間隔(凸部の繰り返し周期の距離)は300nm以上2μm以下程度とすればよい。
【0046】
図2(A)(B)(C)に成膜用基板の平面図を示す。図1(A)は図2(A)の線Z1−Z2の断面図に相当する。
【0047】
図2(A)において、第1の基板101a上に設けられた光吸収部104a表面には突起状の凸部150aが複数並んで形成されている。
【0048】
凹凸を構成する凸部は、突起状の他、長方体でもよく、格子状でもよい。図2(B)(C)において、点線のハッチ領域が凸部領域を示している。図2(B)は、第1の基板101d上に設けられた光吸収部104d表面には、ストライプ状の凹部を形成する凸部150dが形成されている。図2(C)は、第1の基板101e上に設けられた光吸収部104e表面には、格子状の凸部150eが形成されている。
【0049】
光吸収部表面に設けられる凹凸は、光吸収部上に形成される材料層である有機化合物材料を含む層が光照射による加熱で溶融した際に、複数の微細な凹部に流動するため、光吸収部表面において材料が局所的に凝集することを防止する効果がある。
【0050】
凹凸を有する光吸収部上に設けられた有機化合物材料を含む層が溶融する例を図5及び図6を用いて説明する。図5及び図6において(A1)(B1)が光照射前であり、(A2)(B2)が光照射後の成膜用基板を示している。
【0051】
図5(A1)において、光吸収部161aは平坦な光吸収膜156aと柱状の凸部155aを有する膜156bより構成されており、その凹凸上に有機化合物材料を含む層162aが形成されている。光175aの照射により光吸収部161aは有機化合物材料を含む層162aに熱を供給して有機化合物材料を含む層162aを溶融し、溶融した有機化合物材料163aは図5(A2)に示すように光吸収部161aの凹部に流動する。
【0052】
同様に、図5(B1)において、光吸収部161bは平坦な光吸収膜157aと台形の断面を有する凸部155bを有する膜157bより構成されており、その凹凸上に有機化合物材料を含む層162bが形成されている。光175bの照射により光吸収部161bは有機化合物材料を含む層162bに熱を供給して有機化合物材料を含む層162bを溶融し、溶融した有機化合物材料163bは図5(B2)に示すように光吸収部161bの凹部に流動する。
【0053】
図6(A1)において、錐状の凸部155cを有する光吸収部161cは凸部を有する膜158aと光吸収膜158bにより構成されており、その凹凸上に有機化合物材料を含む層162cが形成されている。光175cの照射により光吸収部161cは有機化合物材料を含む層162cに熱を供給して有機化合物材料を含む層162cを溶融し、溶融した有機化合物材料163cは図6(A2)に示すように光吸収部161cの凹部に流動する。
【0054】
同様に、図6(B1)において、錐状の凸部155dを有する光吸収部161dは凸部を有する膜159aと光吸収膜159bにより構成されており、その凹凸上に有機化合物材料を含む層162dが形成されている。光175dの照射により光吸収部161dは有機化合物材料を含む層162dに熱を供給して有機化合物材料を含む層162dを溶融し、溶融した有機化合物材料163dは図6(B2)に示すように光吸収部161dの凹部に流動する。
【0055】
図6の光吸収部161c、161dのように凸部を有する膜上に光吸収膜を積層する構成であると、凸部を有する膜が光175c、175dに対して反射防止膜として機能するので、光から熱の変換効率を高めることができる。よって、より低い光照射エネルギーとすることが可能となる。
【0056】
図1(A)の成膜用基板を用いた成膜方法を図3を用いて説明する。図3(A)の成膜用基板は図1(A)に相当する成膜用基板である。
【0057】
成膜用基板に形成される光吸収部104aに第1の基板101a側より光を照射して、被成膜基板に膜を成膜する。従って、用いる光に対して、第1の基板101a〜101cは透光性を、光吸収部104a〜104eは光吸収性をそれぞれ有する必要がある。よって、照射される光の波長により、第1の基板101a〜101c、光吸収部104a〜104eに好適な材料の種類が変化するため、適宜材料を選択する必要がある。
【0058】
また、第1の基板101a〜101cは熱伝導率が低い材料であることが好ましい。熱伝導率が低いと、照射された光から得られる熱を効率よく成膜に用いることができる。第1の基板101a〜101cとしては、例えば、ガラス基板、石英基板、無機材料を含むプラスチック基板などを用いることができる。ガラス基板としては、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような無アルカリガラスと呼ばれる電子工業用に使われる各種ガラス基板を適用することができる。
【0059】
光吸収部104a〜104eは、成膜の際に照射された光を吸収する層である。よって、光吸収部104a〜104eは光吸収膜を有する必要があり、光吸収膜は照射する光に対して低い反射率を有し、高い吸収率を有する材料で形成されていることが好ましい。具体的には、光吸収部104a〜104eは、照射される光に対して、70%以下の反射率を示すことが好ましい。
【0060】
光吸収部104a〜104eの光吸収膜には、種々の材料を用いることができる。例えば、窒化チタン、窒化タンタル、窒化モリブデン、窒化タングステンなどの金属窒化物、チタン、モリブデン、タングステンなどの金属、カーボンなどを用いることができる。なお、照射される光の波長に応じて、光吸収部104に好適な材料の種類が変化することから、適宜材料を選択する必要がある。また、光吸収膜は一層に限らず複数の層により構成されていてもよい。例えば、金属と金属窒化物の積層構造としてもよい。光吸収部を光吸収膜の積層構造とする場合、光の吸収波長の異なる材料を用いた光吸収膜で積層すると、光吸収部において光の吸収波長の領域が広がるため、光利用効率を高めることができる。
【0061】
また光吸収部104a〜104eに含まれる光吸収膜以外の膜としては、吸収膜より下層に設けられる場合は光透過性を有し、光吸収膜より上層に設けられる場合は熱を遮断しない高い熱伝導率を有する膜を用いる。よって、光吸収膜以外の膜は、光吸収膜より下層に設けられる場合は熱伝導率が低い膜であってもよく(熱伝導率が低い膜が好ましい)、光吸収膜より上層に設けられる場合は光透過性を有さない膜であってもよい。
【0062】
例えば、光吸収膜より上層に形成される膜としては、窒化珪素膜や窒化酸化珪素膜などを用いることができる。また、光吸収膜より下層に形成される膜としては、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、酸化珪素膜、酸化アルミニウム膜などを用いることができる。光吸収膜より上層に形成される膜としては窒化珪素膜を、光吸収膜より下層に形成される膜としては酸化珪素膜を好適に用いることができる。
【0063】
光吸収部104a〜104eは、種々の方法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法などにより形成することができる。
【0064】
光吸収部104a〜104eの膜厚は、材料によって異なるが、照射した光が透過しない膜厚であることが好ましい。具体的には、10nm以上2μm以下の膜厚であることが好ましい。また、光吸収部の膜厚が薄い方がより小さいエネルギーの光で成膜することができるため、10nm以上600nm以下の膜厚であることがより好ましい。例えば、波長532nmの光を照射した場合、光吸収部104の膜厚を50nm以上200nm以下の膜厚とすることにより、照射した光を効率良く吸収して発熱させることができる。また、光吸収部104a〜104eの膜厚を50nm以上200nm以下とすることで、被成膜基板上への成膜を精度良く行うことができる。
【0065】
光吸収部104a〜104eの凹凸の差は、50nm以上2μm以下、より望ましくは500nm以上2μm以下が好ましい。また、断面において凹凸の繰り返し周期が300nm以上2μm以下程度とすればよい。
【0066】
光吸収部104a〜104eは、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料の成膜可能温度(材料層に含まれる材料の少なくとも一部が被成膜基板へ成膜される温度)まで加熱できるのであれば、照射する光の一部が透過してもよい。ただし、一部が透過する場合には、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料として、光によって分解しない材料を用いることが必要である。
【0067】
光吸収部104a〜104e上に被成膜基板上に成膜される材料を含む有機化合物材料を含む層105を形成する(図3(B)参照。)。
【0068】
有機化合物材料を含む層105は、被成膜基板上に成膜する材料を含んで形成される層である。そして、成膜用基板に光を照射することにより、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料が加熱され、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料の少なくとも一部が被成膜基板上に成膜される。有機化合物材料を含む層105が加熱されると、有機化合物材料を含む層に含まれる材料の少なくとも一部が溶融し、気化することによって、被成膜基板上に成膜される。
【0069】
有機化合物材料を含む層105は、種々の方法により形成される。例えば、湿式法であるスピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレー法、キャスト法、ディップ法、液滴吐出(噴出)法(インクジェット法)、ディスペンサ法、各種印刷法(スクリーン(孔版)印刷、オフセット(平版)印刷、凸版印刷やグラビア(凹版)印刷など所望なパターンで形成される方法)などを用いることができる。また、乾式法である真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法等を用いることができる。
【0070】
有機化合物材料を含む層105に含まれる材料としては、種々の有機化合物材料を用いることができ、さらに種々の無機化合物材料を含んでも良い。発光素子のEL層を形成する場合には、EL層を形成する成膜可能な材料を用いる。例えば、EL層を形成する発光性材料、キャリア輸送性材料などの有機化合物の他、EL層を構成するキャリア輸送層やキャリア注入層、発光素子の電極などに用いられる金属酸化物、金属窒化物、ハロゲン化金属、金属単体といった無機化合物を用いることもできる。
【0071】
また、有機化合物材料を含む層105は、複数の材料を含んでいてもよい。また、有機化合物材料を含む層105は、単層でもよいし、複数の層が積層されていてもよい。
【0072】
湿式法を用いて有機化合物材料を含む層105を形成する場合には、所望の材料を溶媒に溶解あるいは分散させ、液状の組成物(溶液あるいは分散液)を調整すればよい。溶媒は、材料を溶解あるいは分散させることができ、且つ材料と反応しないものであれば特に限定されない。例えば、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、或いはクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、或いはシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、或いはキシレンなどの芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、或いは炭酸ジエチルなどのエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、或いはジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、或いはジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド、ヘキサン、又は水等を用いることができる。また、これらの溶媒複数種を混合して用いてもよい。湿式法を用いることにより、材料の利用効率を高めることができ、製造コストを低減させることができる。
【0073】
有機化合物材料を含む層105は、光吸収部104a表面の凸部150aの形状を反映し、凹凸を有する形状で形成される。よって、有機化合物材料を含む層105は必ずしも連続的な薄膜である必要はなく、不連続な微細な島状に形成されていてもよい。
【0074】
次に、第1の基板101aの一方の面であって、光吸収部104a及び有機化合物材料を含む層105が形成された面に対向する位置に、被成膜基板である第2の基板107を配置する。第2の基板107は、成膜処理により所望の層が成膜される被成膜基板である。
【0075】
成膜用基板における有機化合物材料を含む層105表面と、被成膜基板における被成膜面との距離を至近距離となるように近づけて対向させることが好ましい。距離が短いと有機化合物材料を含む層105に含まれる材料が被成膜面に移動する距離も短くなるため、より被成膜面に成膜される膜のパターンぼけを防止でき精度良く成膜することができる。
【0076】
基板の大きさや配置方法によっては、第1の基板101a上の最表面の膜と第2の基板107上の最表面の膜とは一部接触する場合もある。
【0077】
第1の基板101a上に光吸収部104a及び有機化合物材料を含む層105が形成された成膜用基板において、より成膜される膜に高い信頼性を付与したい場合は、成膜用基板に真空中での加熱処理を行うこと好ましい。同様に、被成膜基板である第2の基板107も成膜前に真空中での加熱処理を行うと、成膜される膜の信頼性が向上する。特に、被成膜基板に隔壁となる絶縁層などを設ける場合、真空中での加熱処理により水などの汚染物を除去することで、より信頼性の高い膜を成膜することができ、作製する発光素子、及び発光装置の信頼性も高めることができる。
【0078】
第1の基板101aの裏面(光吸収部104a及び有機化合物材料を含む層105が形成されていない面)側から光源121より光110を照射する(図3(C)参照。)。このとき、第1の基板101aに照射された光は、第1の基板101aを透過し、光吸収部104aに吸収される。そして、光吸収部104aは、吸収した光から得た熱を、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料に与える。
【0079】
このとき、図3(C)に示すように、供給された熱により、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料は溶融し、光吸収部104a表面の凹部に流動し、有機化合物材料170となる。光吸収部104a表面の複数の微細な凹部に流動するため、光吸収部104a表面において有機化合物材料170が凝集することを防止することができる。よって有機化合物材料170は被成膜基板の薄膜形成領域に対応して均一に存在するので、被成膜基板に均一な膜厚分布で薄膜を形成することができる。
【0080】
図3(D)に示すように、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料の少なくとも一部を、第2の基板107上に膜111として成膜する。膜111は膜厚分布が均一な、良質な膜である。また、表面に凹凸を有する光吸収部上に形成された複数の混合有機化合物材料を含む層を用いて、光照射による成膜を行うと、有機化合物材料を含む層の混合状態を保ったまま、混合膜を被成膜基板に成膜することができる。第2の基板107上に所望のパターンに成形された膜111が形成される(図3(E)参照。)。
【0081】
光吸収部104aに光110を照射する工程は減圧下で行うことが好ましい。減圧下で光110を照射し、被成膜基板に材料を成膜する工程を行うと、成膜される膜へのゴミ等の汚染物の影響を軽減することができる。また、光吸収部104aに光110を照射する工程は有機化合物材料を含む層105を加熱状態(熱を保持している状態)として行ってもよい。有機化合物材料を含む層105に加熱処理を行い、加熱状態にしておくと、低いパワーの光の光源を用いた光照射でも材料層に含まれる材料を被成膜基板に成膜することができる。また、加熱状態にしておくと、光の照射条件のマージンを広げることができる。光110を照射する工程を、有機化合物材料を含む層105を形成する際に行う加熱処理直後に行うと、有機化合物材料を含む層105は加熱状態とすることができる。また、ヒータなどの加熱手段を用いて、有機化合物材料を含む層105を加熱しながら光110を照射してもよい。
【0082】
用いる光110は、光吸収部104aが吸収する光であり、光源121など光の種類には特に限定されない。
【0083】
光源121に好適に用いられる例としてはフラッシュランプ(キセノンフラッシュランプ、クリプトンフラッシュランプなど)がある。フラッシュランプは短時間で強度の高い光を繰り返し、大面積に照射することができるため、処理基板の面積にかかわらず、効率よく均一に加熱することができる。また、フラッシュランプは寿命が長く、発光待機時の消費電力が低いため、ランニングコストを低く抑えることができる。また、ランプ光は一度に広範囲を処理することができるため、作製工程時間を短縮し、スループットを向上することが可能となる。
【0084】
光110は、光源121にランプを用いたランプ光による強光、光源121にレーザ発振器を用いたレーザ光などを用いることができる。
【0085】
用いる光110は、赤外光、可視光、または紫外光のいずれか一またはそれらの組み合わせを用いることが可能である。例えば、紫外線ランプ、ブラックライト、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、または高圧水銀ランプから射出された光(ランプ光)を用いてもよい。その場合、ランプ光源は、必要な時間点灯させて照射してもよいし、複数回照射してもよい。
【0086】
また、光としてレーザ光を用いてもよく、レーザ発振器としては、紫外光、可視光、又は赤外光を発振することが可能なレーザ発振器を用いることができる。様々な波長のレーザ光を用いることができ、例えば、355、515、532、1030、1064nmなどの波長のレーザ光を用いることができる。
【0087】
レーザ光には、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザなどの気体レーザ、単結晶のYAG、YVO、フォルステライト(MgSiO)、YAlO、GdVO、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y、YVO、YAlO、GdVOに、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザのうち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。また、上記固体レーザから発振される第2高調波や第3高調波、さらに高次の高調波を用いることもできる。なお、レーザ媒体が固体である固体レーザを用いると、メンテナンスフリーの状態を長く保てるという利点や、出力が比較的に安定している利点を有している。
【0088】
また、レーザスポットの形状は、線状または矩形状とすることが好ましい。線状または矩形状とすることにより、処理基板にレーザ光を効率よく走査することができる。よって、成膜に要する時間(タクトタイム)が短くなり、生産性が向上する。また、レーザスポットの形状は楕円形状でもよい。
【0089】
また、光照射による成膜は、減圧雰囲気下で行うことが好ましい。従って、成膜室内を5×10−3Pa以下、好ましくは10−6Pa以上10−4Pa以下の雰囲気とすることが好ましい。
【0090】
本実施の形態のように光吸収部104aを成膜パターンを反映して選択的に形成すれば、被成膜基板に該パターンで薄膜を形成することができる。
【0091】
また、光吸収部104aに光が照射されないように、第1の基板101aと光吸収部104aとの間に反射層を選択的に形成してもよい。反射層によって光は反射されるので、反射層のパターンを反映した薄膜を被成膜基板に形成することができる。
【0092】
さらに、反射層と有機化合物材料を含む層との間に熱の伝導を妨げる断熱層を設けてもよい。
【0093】
第1の基板上に形成された有機化合物材料を含む層105に含まれる材料を均一に成膜することができる。また、有機化合物材料を含む層105が複数の材料を含む場合でも、有機化合物材料を含む層105と同じ材料をほぼ同じ重量比で含有する膜を被成膜基板である第2の基板上に成膜することができる。従って、本実施の形態に係る成膜方法は、成膜温度の異なる複数の材料を用いて成膜する場合でも、共蒸着のようにそれぞれ蒸着レートを制御する必要がない。そのため、蒸着レート等の複雑な制御を行うことなく、所望の異なる材料を含む層を容易に精度良く成膜することができる。
【0094】
本実施の形態を用いて発光装置の発光層を形成する場合、成膜する膜を一画素ごとに対応させてもよいし、成膜する膜を複数の画素を含むように対応させ複数の画素の発光層を一度に作製してもよい。例えば、三色の色要素(例えばRGB)でフルカラー表示を行いストライプ配置とする場合、複数の同色の発光を示す画素を含む領域を、成膜用基板の材料層の加熱領域と対応させ、被成膜基板に複数の画素の発光層を形成することができる。
【0095】
フルカラーディスプレイを作製する場合には、発光層を作り分ける必要があるため、本実施の形態の成膜方法を用いて発光層を形成すれば、容易に所望のパターンで発光層を作り分けることができる。また、精度良く発光層を作り分けることができる。
【0096】
また、本実施の形態の成膜方法では、所望の材料を無駄にすることなく、被成膜基板に成膜することが可能である。よって、材料の利用効率が向上し、製造コストの低減を図ることができる。また、成膜室内壁に材料が付着することも防止でき、成膜装置のメンテナンスを容易にすることができる。
【0097】
また、本実施の形態を適用することにより、平坦でムラのない膜を成膜することが可能となる。また、所望の領域のみに成膜することが可能であるため、微細パターンの形成が可能となり、高精細な発光装置を作製することができる。
【0098】
また、本実施の形態を適用することにより、光を用いた成膜の際に選択的に所望の領域に成膜することができるので、材料の利用効率を高めることができ、精度良く、所望の形状に成膜することが容易であるため生産性向上を図ることができる。
【0099】
蒸着材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に膜厚分布が均一で、かつ膜質の良好な薄膜を形成することができる。
【0100】
光による加熱成膜法により膜厚分布が均一で、かつ良質な膜を成膜することができる。
【0101】
効率よく光のエネルギーを材料に供給し、照射エネルギーを低減することができる。
【0102】
このような成膜用基板及び成膜方法を用いて発光素子を形成し、高信頼性の発光装置を作製することができる。また、大面積の被成膜基板に薄膜を形成することができるため、大型の発光装置及び電子機器を作製することができる。
【0103】
(実施の形態2)
本実施の形態では、成膜用基板の他の例を図7を用いて説明する。実施の形態1と同様な機能を有する構成の材料や作製方法は、実施の形態1と同様とすればよい。
【0104】
図7(A)乃至(C)は、成膜用基板に光吸収部の他に、反射層や断熱層を設ける例である。
【0105】
光吸収部に光が照射されないように、透光性基板と光吸収部との間に反射層を選択的に形成することができる。反射層によって光は反射されるので、反射層のパターンを反映した薄膜を被成膜基板に形成することができる。
【0106】
また、反射層と有機化合物材料を含む層との間に熱の伝導を妨げる断熱層を設けることもできる。断熱層を、光に対する透過率は60%以上とし、かつ熱伝導率が反射層及び光吸収部に用いる材料の熱伝導率よりも小さい材料を用いて形成することが好ましい。熱伝導率が低いと、照射された光から得られる熱を効率よく成膜に用いることができる。なお、断熱層は熱を完全に遮断することが好ましいが、本明細書では、少なくとも光吸収部よりも熱の伝導を妨げるものも断熱層という。
【0107】
図7(A)は、第1の基板711と光吸収部714との間に選択的に反射層712を設けており、光吸収部714上に有機化合物材料を含む層715が形成されている。反射層712上の光吸収部714には光は照射されないために、反射層712の形成領域以外の領域のパターンが被成膜基板における薄膜の成膜パターンとすることができる。光吸収部714は、凸部713aと光吸収膜713bとで構成されており、複数隣接して設けられた凸部713aによって光吸収膜713bは表面に凹凸形状を有し、光吸収部714表面には凹凸が形成される。
【0108】
図7(B)は、図7(A)において、光吸収部714に含まれる光吸収膜713bを選択的に形成し、第1の基板711上の反射層712の形成領域以外に光吸収部714を形成する例である。
【0109】
図7(C)は、図7(A)において、反射層712上に断熱層716を設ける例である。
【0110】
断熱層716を設けることで反射層712上に光吸収部714は形成されなくなるために熱の伝わりをより防止することができる。さらに、被成膜基板への熱の伝わりを防ぐことができる。また、この断熱層は被成膜基板と成膜用基板との距離を制御する機能もある。
【0111】
このように断熱層を複数設けると、より被成膜基板において薄膜を成膜しない領域へ、薄膜を成膜する領域からの熱が伝わることを防止する効果を高めることができる。よって、より被成膜基板における薄膜のパターン形状を正確に制御することができ、高精細なパターン形状の薄膜を得ることが可能となる。
【0112】
反射層712は、成膜の際、光吸収部714の一部分に選択的に光を照射するために、それ以外の部分に照射される光を反射するための層である。よって、反射層712は、照射する光に対して高い反射率を有する材料で形成されていることが好ましい。具体的には、反射層712は、照射される光に対して、反射率が85%以上、さらに好ましくは、反射率が90%以上であることが好ましい。
【0113】
反射層712に用いることができる材料としては、例えば、銀、金、白金、銅、アルミニウムを含む合金、又は銀を含む合金などを用いることができる。
【0114】
反射層712の膜厚は、材料により異なるが、100nm以上とすることが好ましい。100nm以上の膜厚とすることにより、照射した光が反射層を透過することを抑制することができる。
【0115】
また、反射層712を所望の形状に加工する際には種々の方法を用いることができるが、ドライエッチングを用いることが好ましい。ドライエッチングを用いることにより、側壁が鋭くなり、微細なパターンを形成することができる。
【0116】
断熱層716は、熱伝導率が反射層712および光吸収部714を形成する材料よりも低い材料を用いる必要がある。また、光を、断熱層を透過させて光吸収部に照射する構成の場合には、断熱層は透光性を有する必要がある。この場合、断熱層は、熱伝導率の低い材料であると共に光透過率の高い材料を用いる必要がある。具体的には、断熱層には、光に対する透過率が60%以上となる材料を用いることが好ましい。ただし光を透過させる必要のない場合は、断熱層は透光性を有する必要はない。
【0117】
断熱層716に用いる材料としては、例えば、酸化チタン、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化ジルコニウム、炭化珪素等を用いることができる。
【0118】
断熱層716の膜厚は、光吸収部に設けられる凹凸より高くなるように調整する。材料により異なるが、10nm以上5μm以下とすることが好ましく、より好ましくは、100nm以上3μm以下とする。10nm以上5μm以下の膜厚とすることにより、光を透過させつつ、熱が有機化合物材料を含む層に伝わるのを遮断する効果を有する。
【0119】
反射層712、断熱層716、及び光吸収部714(凸部713a、光吸収膜713b)は、種々の方法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法などにより形成することができる。
【0120】
さらに、反射層712と光吸収部714の反射率は差が大きいほど好ましい。具体的には、照射する光の波長に対して、反射率の差が25%以上、より好ましくは30%以上であることが好ましい。
【0121】
図7(A)乃至(C)に示す成膜用基板を用いて、実施の形態1と同様に光を照射して、被成膜基板へ所望のパターンで膜を成膜することができる。従って本実施の形態に示す成膜用基板を用いて、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0122】
本実施の形態では、材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に微細なパターンの薄膜を形成することができる。
【0123】
(実施の形態3)
本実施の形態では、発光素子および発光装置を作製する方法について説明する。
【0124】
上記実施の形態を適用して、例えば、図10(A)、(B)に示す発光素子を作製することができる。図10(A)に示す発光素子は、基板901上に第1の電極902、発光層913のみで形成されたEL層903、第2の電極904が順に積層して設けられている。第1の電極902及び第2の電極904のいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極から注入される正孔及び陰極から注入される電子がEL層903で再結合して、発光を得ることができる。本実施の形態において、第1の電極902は陽極として機能する電極であり、第2の電極904は陰極として機能する電極であるとする。
【0125】
また、図10(B)に示す発光素子は、図10(A)のEL層903が複数の層が積層された構造である場合を示しており、具体的には、第1の電極902側から正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914、および電子注入層915が順次設けられている。なお、EL層903は、図10(A)に示すように少なくとも発光層913を有していれば機能するため、これらの層を全て設ける必要はなく、必要に応じて適宜選択して設ければよい。
【0126】
図10に示す基板901には、絶縁表面を有する基板または絶縁基板を適用する。具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板又はサファイヤ基板等を用いることができる。
【0127】
また、第1の電極902および第2の電極904は、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0128】
これらの材料は、通常スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。その他、ゾル−ゲル法などを応用して、インクジェット法、スピンコート法などにより作製してもよい。
【0129】
また、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、アルミニウムを含む合金等を用いることができる。その他、仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(アルミニウム、マグネシウムと銀との合金、アルミニウムとリチウムの合金)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。
【0130】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金の膜は、真空蒸着法を用いて形成することができる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む合金はスパッタリング法により形成することも可能である。また、銀ペーストなどをインクジェット法などにより成膜することも可能である。また、第1の電極902および第2の電極904は、単層膜に限らず、積層膜で形成することもできる。
【0131】
なお、EL層903で発光する光を外部に取り出すため、第1の電極902または第2の電極904のいずれか一方、または両方が光を通過するように形成する。例えば、インジウム錫酸化物等の透光性を有する導電材料を用いて形成するか、或いは、銀、アルミニウム等を数nm乃至数十nmの厚さとなるように形成する。また、膜厚を薄くした銀、アルミニウムなどの金属薄膜と、ITO膜等の透光性を有する導電材料を用いた薄膜との積層構造とすることもできる。
【0132】
なお、本実施の形態で示す発光素子のEL層903(正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914又は電子注入層915)は、実施の形態1で示した成膜方法を適用して形成することができる。また、電極を実施の形態1で示した成膜方法を適用して形成することもできる。
【0133】
発光層913としては種々の材料を用いることができる。例えば、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
【0134】
発光層913に用いることのできる燐光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))などが挙げられる。また、橙色系の発光材料として、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)(acac))などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0135】
発光層913に用いることのできる蛍光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,13−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0136】
また、発光層913として、発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いることもできる。発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いるにより、発光層の結晶化を抑制することができる。また、発光性の高い物質の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0137】
発光性の高い物質を分散させる物質としては、発光性の高い物質が蛍光性化合物の場合には、蛍光性化合物よりも一重項励起エネルギー(基底状態と一重項励起状態とのエネルギー差)が大きい物質を用いることが好ましい。また、発光性の高い物質が燐光性化合物の場合には、燐光性化合物よりも三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)が大きい物質を用いることが好ましい。
【0138】
発光層913に用いるホスト材料としては、例えば4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)などの他、4,4’−ジ(9−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9−[4−(9−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)などが挙げられる。
【0139】
また、ドーパント材料としては、上述した燐光性化合物や蛍光性化合物を用いることができる。
【0140】
発光層913として、発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いる場合には、成膜用基板上の有機化合物材料を含む層として、ホスト材料とゲスト材料とを混合した層を形成すればよい。または、成膜用基板上の有機化合物材料を含む層として、ホスト材料を含む層とドーパント材料を含む層とが積層した構成としてもよい。このような構成の有機化合物材料を含む層を有する成膜用基板を用いて発光層913を形成することにより、発光層913は発光材料を分散させる物質(ホスト材料)と発光性の高い物質(ドーパント材料)とを含み、発光材料を分散させる物質(ホスト材料)に発光性の高い物質(ドーパント材料)が分散された構成となる。なお、発光層913として、2種類以上のホスト材料とドーパント材料を用いてもよいし、2種類以上のドーパント材料とホスト材料を用いてもよい。また、2種類以上のホスト材料及び2種類以上のドーパント材料を用いてもよい。
【0141】
また、図10(B)に示す発光素子を形成する場合には、EL層903(正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914、および電子注入層915)のそれぞれの層を形成する材料で形成された有機化合物材料を含む層を有する実施の形態1で示した成膜用基板を各層毎に用意し、各層の成膜毎に異なる成膜用基板を用いて、実施の形態1で示した方法により、基板901上の第1の電極902上にEL層903を形成することができる。そして、EL層903上に第2の電極904を形成することにより、図10(B)に示す発光素子を得ることができる。なお、この場合には、EL層903の全ての層に実施の形態1で示した方法を用いることもできるが、一部の層のみに実施の形態1で示した方法を用いても良い。
【0142】
湿式法で被成膜基板に膜を積層する場合、直接下層の膜上に材料を含む液状の組成物を付着させて形成するために、組成物中に含まれる溶媒によっては下層の膜が溶解してしまうため、積層できる材料が限定されてしまう。しかし、本明細書に開示する成膜方法を用いて積層を形成する場合、下層の膜に直接溶媒が付着しないため、溶媒による下層の膜への影響を考慮しなくてよい。従って、積層できる材料の選択性において自由度が広い。湿式法で直接被成膜基板に膜を形成してしまうと被成膜基板に既に成膜されている下層の膜に影響を与えない加熱条件で加熱処理を行わねばならないために、十分な膜質の向上を達成できない場合がある。
【0143】
例えば、正孔注入層911としては、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層を形成することができる。
【0144】
また、正孔注入層911として、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質を含む層を用いることができる。正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層は、キャリア密度が高く、正孔注入性に優れている。また、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層を、陽極として機能する電極に接する正孔注入層として用いることにより、陽極として機能する電極材料の仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。
【0145】
正孔注入層911に用いる電子受容性を示す物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族から第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0146】
正孔注入層911に用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、正孔注入層に用いる正孔輸送性の高い物質としては、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、正孔注入層911に用いることのできる正孔の輸送性の高い物質を具体的に列挙する。
【0147】
例えば、正孔注入層911に用いることのできる芳香族アミン化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等を用いることができる。また、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)(p−トリル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0148】
正孔注入層911に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
【0149】
また、正孔注入層911に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0150】
また、正孔注入層911に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチル−アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0151】
なお、正孔注入層911に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0152】
また、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層は、正孔注入性だけでなく、正孔輸送性も優れているため、上述した正孔注入層911を正孔輸送層として用いてもよい。
【0153】
また、正孔輸送層912は、正孔輸送性の高い物質を含む層であり、正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0154】
電子輸送層914は、電子輸送性の高い物質を含む層であり、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ01)バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0155】
また、電子注入層915としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属化合物、又はアルカリ土類金属化合物を用いることができる。さらに、電子輸送性を有する物質とアルカリ金属又はアルカリ土類金属が組み合わされた層も使用できる。例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたものを用いることができる。なお、電子注入層として、電子輸送性を有する物質とアルカリ金属又はアルカリ土類金属を組み合わせた層を用いることは、第2の電極904からの電子注入が効率良く起こるためより好ましい。
【0156】
なお、EL層903は、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質または正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等を含む層と、発光層とを適宜組み合わせて構成すればよい。
【0157】
EL層903で得られた発光は、第1の電極902または第2の電極904のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極902または第2の電極904のいずれか一方または両方は、透光性を有する電極である。第1の電極902のみが透光性を有する電極である場合、光は第1の電極902を通って基板901側から取り出される。また、第2の電極904のみが透光性を有する電極である場合、光は第2の電極904を通って基板901と逆側から取り出される。第1の電極902および第2の電極904がいずれも透光性を有する電極である場合、光は第1の電極902および第2の電極904を通って、基板901側および基板901と逆側の両方から取り出される。
【0158】
なお、図10では、陽極として機能する第1の電極902を基板901側に設けた構成について示したが、陰極として機能する第2の電極904を基板901側に設けてもよい。
【0159】
また、EL層903の形成方法としては、実施の形態1で示した成膜方法を用いればよく、他の成膜方法と組み合わせてもよい。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。乾式法としては、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。また、湿式法としては、インクジェット法またはスピンコート法などが挙げられる。
【0160】
本実施の形態に係る発光素子は、EL層の形成が可能であり、それにより、高精度な膜が効率よく形成される為、発光素子の特性向上のみならず、歩留まり向上やコストダウンを図ることができる。
【0161】
本実施の形態は、上記の実施の形態1又は実施の形態2と適宜組み合わせることができる。
【0162】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本明細書に開示する成膜用基板及び成膜方法を用いて作製されたパッシブマトリクス型の発光装置について図8及び図9を用いて説明する。
【0163】
本実施の形態では、パッシブマトリクスの発光装置において、発光素子間を分離する隔壁(絶縁層)を設ける例を示す。2層の隔壁を有する発光装置の例を図8(A)乃至(C)及び図9(A)乃至(D)に示す。
【0164】
図8(A)は発光装置の平面図であり、図8(B)は図8(A)における線Y3−Z3の断面図、図8(C)は図8(A)における線V3−X3の断面図である。しかし、図8(A)は隔壁782を形成した工程までの平面図であり、EL層及び第2の電極層は省略している。
【0165】
図8(A)の発光装置は、素子基板759上に第1の方向に延びた発光素子に用いる電極層である第1の電極層751a、751b、751c、第1の電極層751a、751b、751c上に選択的に形成されたEL層752a、752b、752cと、第1の方向と垂直な第2の方向に延びた発光素子に用いる電極層である第2の電極層753a、753b、753cとを有している(図8(A)(B)(C)参照。)。
【0166】
図8において、データ線(信号線)として機能する第1の電極層751bと、走査線(ソース線)として機能する第2の電極層753bとはEL層752bを間に挟持して交差しており、発光素子750を形成している。
【0167】
図8(A)乃至(C)に示すように、第1の電極層751a、751b、751c上に、画素領域に開口部を有して隔壁780が選択的に形成されている。図8(B)に示すように、隔壁780は、第1の電極層751a、751b、751cの端部を覆うようにテーパーを有する形状で形成されている。
【0168】
隔壁780上に選択的に隔壁782を形成する。隔壁782は隔壁782上に形成するEL層及び第2の電極層を非連続に分断する機能を有する。隔壁782の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁782の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(隔壁780の面方向と同様の方向を向き、隔壁780と接する辺)の方が上辺(隔壁780の面方向と同様の方向を向き、隔壁780と接しない辺)よりも短い。隔壁782はいわゆる逆テーパー形状であるために、自己整合的にEL層752bは、隔壁782によって分断され、第1の電極層751b上に選択的に形成することができる。従ってエッチングにより形状を加工しなくても、隣接する発光素子間は分断されており発光素子間のショートなどの電気的不良を防止することができる。
【0169】
本明細書に開示する成膜方法を用いた図8(B)に示す本実施の形態の発光装置の作製方法を図9(A)乃至(D)を用いて説明する。
【0170】
図9(A)は実施の形態2で示した図7(C)の成膜用基板と同様な構造である。
【0171】
成膜用基板において第1の基板711上に選択的に反射層712が形成され、反射層712上に断熱層716が形成されている。反射層712と重畳しない領域に光吸収部714が形成されている。成膜用基板の最上層には有機化合物材料を含む層715が形成されている。光吸収部714は、凸部713aと光吸収膜713bとで構成されており、複数隣接して設けられた凸部713aによって光吸収膜713bは表面に凹凸形状を有し、光吸収部714表面には凹凸が形成される。
【0172】
被成膜基板である素子基板759には、第1の電極層751a、751b、751c、及び隔壁780が形成されており、第1の電極層751a、751b、751c及び隔壁780と、有機化合物材料を含む層715とが向き合うように、素子基板759と第1の基板711とを配置する(図9(B)参照。)。図9(B)のように、隔壁780と断熱層716を形成し、成膜用基板と被成膜基板とを接して設けると、各被成膜領域をごとに他の画素領域と遮断することができる。よって、光照射により有機化合物材料を含む層より蒸発した材料が、他の画素領域へ付着することを抑制することができる。
【0173】
第1の基板711の裏面(有機化合物材料を含む層715の形成面と反対の面)側から光源721より光720を照射する。このとき、第1の基板711に照射された光は、第1の基板711を透過し、光吸収部714の光吸収膜713bに吸収される。そして、光吸収部714は、吸収した光から得た熱を、有機化合物材料を含む層715に含まれる材料に与える。
【0174】
このとき、図9(B)に示すように、供給された熱により、有機化合物材料を含む層715に含まれる材料は溶融し、光吸収部714表面の凹部に流動し、有機化合物材料717となる。光吸収部714表面の複数の微細な凹部に流動するため、光吸収部714表面において有機化合物材料717が凝集することを防止することができる。よって有機化合物材料717は被成膜基板の薄膜形成領域に対応して均一に存在するので、被成膜基板に均一な膜厚分布で薄膜を形成することができる。
【0175】
図9(C)に示すように、有機化合物材料を含む層715に含まれる材料の少なくとも一部を、素子基板759へEL層752a、752b、752cとして成膜する。EL層752a、752b、752cは膜厚分布が均一な、良質な膜である。また、表面に凹凸を有する光吸収部上に形成された複数の混合有機化合物材料を含む層を用いて、光照射による成膜を行うと、有機化合物材料を含む層の混合状態を保ったまま、混合膜を被成膜基板に成膜することができる。
【0176】
上記工程によって、素子基板759上に設けられた第1の電極層751a、751b、751c上にそれぞれ、選択的にEL層752a、752b、752cを形成することができる(図9(D)参照。)。
【0177】
図9(D)のEL層752a、752b、752c上に第2の電極層753bを形成し、充填層781を形成し、封止基板758を用いて封止して図8(B)の発光装置を完成させることができる。
【0178】
封止基板758としては、ガラス基板や石英基板等を用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン等からなる、プラスチック基板の他、高温では可塑化されてプラスチックと同じような成型加工ができ、常温ではゴムのような弾性体の性質を示す高分子材料エラストマー等が挙げられる。また、フィルム(ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニルなどからなる)、無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0179】
隔壁780、隔壁782としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、その他の無機絶縁性材料、又はアクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体、又はポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾールなどの耐熱性高分子、又はシロキサン樹脂を用いてもよい。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂材料を用いる。作製法としては、プラズマCVD法や熱CVD法などの気相成長法やスパッタリング法を用いることができる。また、液滴吐出法や、印刷法を用いることもできる。塗布法で得られる膜なども用いることができる。
【0180】
次に、図8に示したパッシブマトリクス型の発光装置にFPCなどを実装した場合の上面図を図11に示す。
【0181】
図11において、画像表示を構成する画素部は、走査線群とデータ線群が互いに直交するように交差している。
【0182】
ここで、図8における第1の電極層751a、751b、751cが、図11のデータ線1102に相当し、図8における第2の電極層753a、753b、753cが、図11の走査線1103に相当し、図8におけるEL層752a、752b、752cが図11のEL層1104に相当する。データ線1102と走査線1103の間にはEL層1104が挟まれており、領域1105で示される交差部が画素1つ分(図8では発光素子750で示される)となる。
【0183】
なお、走査線1103は配線端で接続配線1108と電気的に接続され、接続配線1108が入力端子1107を介してFPC1109bに接続される。また、データ線は入力端子1106を介してFPC1109aに接続される。
【0184】
また、必要であれば、射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0185】
なお、図11では、駆動回路を基板上に設けない例を示したが、特に限定されず、基板上に駆動回路を有するICチップを実装させてもよい。
【0186】
また、ICチップを実装させる場合、画素部の周辺(外側)の領域に、画素部へ各信号を伝送する駆動回路が形成されたデータ線側IC、走査線側ICをCOG(Chip on Glass)方式によりそれぞれ実装する。COG方式以外の実装技術としてTCPやワイヤボンディング方式を用いて実装してもよい。TCPはTAB(Tape Automated Bonding)テープにICを実装したものであり、TABテープを素子形成基板上の配線に接続してICを実装する。データ線側IC、および走査線側ICは、単結晶シリコン基板を用いたものであってもよいし、ガラス基板、石英基板もしくはプラスチック基板上にTFTで駆動回路を形成したものであってもよい。また、片側に一つのICを設けた例を説明しているが、片側に複数個に分割して設けても構わない。
【0187】
なお、パッシブマトリクスの発光装置において、隔壁は必ずしも設けなくてもよい。この場合でも第1の電極層と第2の電極層との間に設けられるEL層を本明細書に開示する成膜方法を用いて、均一な膜厚で選択的に形成することができる。
【0188】
材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に微細なパターンの薄膜を形成することができる。本実施の形態のように、このような成膜方法を用いて発光素子を形成し、高信頼性な発光装置を作製することができる。
【0189】
本実施の形態は、上記の実施の形態1乃至3と適宜組み合わせることができる。
【0190】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本明細書に開示する成膜用基板及び成膜方法を用いて作製されたアクティブマトリクス型の発光装置について図12を用いて説明する。
【0191】
図12(A)は、発光装置を示す上面図、図12(B)は図12(A)をA−BおよびC−Dで切断した断面図である。点線で示された601は駆動回路部(ソース側駆動回路)、602は画素部、603は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0192】
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0193】
次に、断面構造について図12(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0194】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型トランジスタ623とpチャネル型トランジスタ624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するトランジスタは、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0195】
また、画素部602はスイッチング用トランジスタ611と、電流制御用トランジスタ612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁層614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。第1の電極613は層間絶縁層である絶縁層619上に形成されている。
【0196】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁層614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁層614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁層614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁層614として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0197】
なお、トランジスタの構造は、特に限定されない。トランジスタはチャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造でも、二つ形成されるダブルゲート構造もしくは三つ形成されるトリプルゲート構造であっても良い。また、周辺駆動回路領域のトランジスタも、シングルゲート構造、ダブルゲート構造もしくはトリプルゲート構造であっても良い。
【0198】
トランジスタは、トップゲート型(例えば順スタガ型、コプラナ型)、ボトムゲート型(例えば、逆コプラナ型)、あるいはチャネル領域の上下にゲート絶縁膜を介して配置された2つのゲート電極層を有する、デュアルゲート型やその他の構造においても適用できる。
【0199】
また、トランジスタに用いる半導体の結晶性についても特に限定されない。半導体層を形成する材料は、シランやゲルマンに代表される半導体材料ガスを用いて気相成長法やスパッタリング法で作製される非晶質半導体、該非晶質半導体を光エネルギーや熱エネルギーを利用して結晶化させた多結晶半導体、また単結晶半導体などを用いることができる。
【0200】
非晶質半導体としては、代表的には水素化アモルファスシリコン、結晶性半導体としては代表的にはポリシリコンなどがあげられる。ポリシリコン(多結晶シリコン)には、800℃以上のプロセス温度を経て形成されるポリシリコンを主材料として用いた所謂高温ポリシリコンや、600℃以下のプロセス温度で形成されるポリシリコンを主材料として用いた所謂低温ポリシリコン、また結晶化を促進する元素などを用いて非晶質シリコンを結晶化させたポリシリコンなどを含んでいる。また、このような薄膜プロセスに換えて、絶縁表面に単結晶半導体層を設けたSOI基板を用いても良い。SOI基板は、SIMOX(Separation by IMplanted Oxygen)法や、Smart−Cut法を用いて形成することができる。SIMOX法は、単結晶シリコン基板に酸素イオンを注入し、所定の深さに酸素含有層を形成した後、熱処理を行い、表面から一定の深さで埋込絶縁層を形成し、埋込絶縁層の上に単結晶シリコン層を形成する方法である。また、Smart−Cut法は、酸化された単結晶シリコン基板に水素イオン注入を行い、所望の深さに相当する所に水素含有層を形成し、他の支持基板(表面に貼り合わせ用の酸化シリコン膜を有する単結晶シリコン基板など)と貼り合わせる、加熱処理を行うことにより水素含有層にて単結晶シリコン基板を分断し、支持基板上に酸化シリコン膜と単結晶シリコン層との積層を形成する方法である。
【0201】
第1の電極613上には、EL層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。本実施の形態で示す発光素子のEL層616は、実施の形態1で示した成膜方法を適用して形成することができる。
【0202】
シール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。
【0203】
なお、シール材605には可視光硬化性、紫外線硬化性または熱硬化性の樹脂を用いるのが好ましい。具体的にはエポキシ系樹脂を用いることができる。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。また、フィルム(ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニルなどからなる)、無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0204】
また、発光素子上にパッシベーション膜(保護膜)として絶縁層を設けてもよい。パッシベーション膜としては、窒化珪素、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒素含有量が酸素含有量よりも多い窒化酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウム、ダイアモンドライクカーボン(DLC)、窒素含有炭素膜を含む絶縁膜からなり、該絶縁膜を単層もしくは組み合わせた積層を用いることができる。又はシロキサン樹脂を用いてもよい。
【0205】
充填材の代わりに、窒素雰囲気下で封止することによって、窒素等を封入してもよい。充填材を通して光を発光装置外に取り出す場合、充填材も透光性を有する必要がある。充填材は、例えば可視光硬化、紫外線硬化または熱硬化のエポキシ樹脂を用いればよい。充填材は、液状の状態で滴下し、発光装置内に充填することもできる。充填材として、乾燥剤などの吸湿性を含む物質を用いる、または充填材中に吸湿物質を添加すると、さらなる吸湿効果が得られ、素子の劣化を防ぐことができる。
【0206】
また、位相差板や偏光板を用いて、外部から入射する光の反射光を遮断するようにしてもよい。隔壁となる絶縁層を着色しブラックマトリクスとして用いてもよい。この隔壁は液滴吐出法により形成することができ、ポリイミドなどの樹脂材料に、カーボンブラック等を混合させてもよく、その積層でもよい。液滴吐出法によって、異なった材料を同領域に複数回吐出し、隔壁を形成してもよい。位相差板としてはλ/4板、λ/2板を用い、光を制御できるように設計すればよい。構成としては、順に素子基板、発光素子、封止基板(封止材)、位相差板(λ/4、λ/2)、偏光板となり、発光素子から放射された光は、これらを通過し偏光板側より外部に放射される。この位相差板や偏光板は光が放射される側に設置すればよく、両面放射される両面放射型の発光装置であれば両方に設置することもできる。また、偏光板の外側に反射防止膜を有していても良い。これにより、より高繊細で精密な画像を表示することができる。
【0207】
本実施の形態では、上記のような回路で形成するが、これに限定されず、周辺駆動回路としてICチップを前述したCOG方式やTAB方式によって実装したものでもよい。また、ゲート線駆動回路、ソース線駆動回路は複数であっても単数であっても良い。
【0208】
また、発光装置において、画面表示の駆動方法は特に限定されず、例えば、点順次駆動方法や線順次駆動方法や面順次駆動方法などを用いればよい。代表的には、線順次駆動方法とし、時分割階調駆動方法や面積階調駆動方法を適宜用いればよい。また、発光装置のソース線に入力する映像信号は、アナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよく、適宜、映像信号に合わせて駆動回路などを設計すればよい。
【0209】
発光層は、発光波長帯の異なる発光層を画素毎に形成して、カラー表示を行う構成としても良い。典型的には、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応した発光層を形成する。この場合にも、画素の光放射側にその発光波長帯の光を透過するフィルターを設けた構成とすることで、色純度の向上や、画素領域の鏡面化(映り込み)の防止を図ることができる。フィルターを設けることで、発光層から放射される光の損失を無くすことができる。さらに、斜方から画素領域(表示画面)を見た場合に起こる色調の変化を低減することができる。
【0210】
材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に微細なパターンの薄膜を形成することができる。本実施の形態のように、このような成膜方法を用いて発光素子を形成し、高信頼性な発光装置を作製することができる。
【0211】
本実施の形態は、上記の実施の形態1乃至4と適宜組み合わせることができる。
【0212】
(実施の形態6)
本明細書に開示する成膜用基板、成膜方法、及び発光装置の作製方法を適用して、様々な表示機能を有する発光装置を作製することができる。即ち、それら表示機能を有する発光装置を表示部に組み込んだ様々な電子機器に本明細書に開示する成膜用基板、成膜方法、及び発光装置の作製方法を適用できる。
【0213】
その様な電子機器として、テレビジョン装置(単にテレビ、又はテレビジョン受信機ともよぶ)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、携帯電話装置(単に携帯電話機、携帯電話ともよぶ)、PDA等の携帯情報端末、携帯型ゲーム機、コンピュータ用のモニタ、コンピュータ、カーオーディオ等の音響再生装置、家庭用ゲーム機等の記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD))等が挙げられる。また、パチンコ機、スロットマシン、ピンボール機、大型ゲーム機など発光装置を有するあらゆる遊技機に適用することができる。その具体例について、図13及び図14を参照して説明する。
【0214】
本明細書に開示する発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。実施の形態1に示す成膜方法を用いるため、大型の表示部又は照明部を有する高信頼性の電子機器を安価で提供することができる。
【0215】
図13(A)に示す携帯情報端末機器は、本体9201、表示部9202等を含んでいる。表示部9202は、本明細書に開示する発光装置を適用することができる。その結果、高信頼性の携帯情報端末機器を安価で提供することができる。
【0216】
図13(B)に示すデジタルビデオカメラは、表示部9701、表示部9702等を含んでいる。表示部9701は本明細書に開示する発光装置を適用することができる。その結果、高信頼性のデジタルビデオカメラを安価で提供することができる。
【0217】
図13(C)に示す携帯電話機は、本体9101、表示部9102等を含んでいる。携帯電話機としては、上記構成に加えて、非接触ICチップ、小型記録装置等を内蔵していてもよく、赤外線通信機能、テレビ受信機能等を備えたものであってもよい。表示部9102は、本明細書に開示する発光装置を適用することができる。その結果、高信頼性の携帯電話機を安価で提供することができる。
【0218】
図13(D)に示す携帯型のコンピュータは、本体9401、表示部9402等を含んでいる。表示部9402は、本明細書に開示する発光装置を適用することができる。その結果、高信頼性の携帯型のコンピュータを安価で提供することができる。
【0219】
本明細書に開示する発光装置は、小型の電気スタンドや室内の大型な照明装置として用いることもできる。図13(E)は卓上照明器具であり、照明部9501、傘9502、可変アーム9503、支柱9504、台9505、電源9506を含む。本明細書に開示する発光装置を照明部9501に用いることにより作製される。なお、照明器具には天井固定型の照明器具または壁掛け型の照明器具なども含まれる。大型な照明器具も安価で提供することができる。
【0220】
さらに、本明細書に開示する発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることもできる。本明細書に開示する発光装置は、面発光の照明装置であり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化が可能であり、液晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、本明細書に開示する発光装置は薄型であるため、液晶表示装置の薄型化も可能となる。
【0221】
図13(F)に示す携帯型のテレビジョン装置は、本体9301、表示部9302等を含んでいる。表示部9302は、本明細書に開示する発光装置を適用することができる。その結果、高画質の携帯型のテレビジョン装置を安価で提供することができる。またテレビジョン装置としては、携帯電話機などの携帯端末に搭載する小型のものから、持ち運びをすることができる中型のもの、また、大型のもの(例えば40インチ以上)まで、幅広いものに、本明細書に開示する発光装置を適用することができる。
【0222】
図14(A)は大型の表示部を有するテレビジョン装置である。本明細書に開示する発光装置により主画面2003が形成され、その他付属設備としてスピーカー部2009、操作スイッチなどが備えられている。このように、テレビジョン装置を完成させることができる。
【0223】
図14(A)に示すように、筐体2001に発光素子を利用した表示用パネル2002が組みこまれ、受信機2005により一般のテレビ放送の受信をはじめ、モデム2004を介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、又は受信者間同士)の情報通信をすることもできる。テレビジョン装置の操作は、筐体に組みこまれたスイッチ又は別体のリモコン操作機2006により行うことが可能であり、このリモコン装置にも出力する情報を表示する表示部2007が設けられていても良い。
【0224】
また、テレビジョン装置にも、主画面2003の他にサブ画面2008を第2の表示用パネルで形成し、チャネルや音量などを表示する構成が付加されていても良い。
【0225】
図14(B)は例えば20〜80インチの大型の表示部を有するテレビジョン装置であり、筐体2010、表示部2011、操作部であるリモコン装置2012、スピーカー部2013等を含む。本明細書に開示する発光装置は、表示部2011の作製に適用される。大型でかつ高信頼性なテレビジョン装置を安価で提供することができる。また図14(B)のテレビジョン装置は、壁かけ型となっており、設置するスペースを広く必要としない。
【0226】
勿論、本明細書に開示する発光装置は鉄道の駅や空港などにおける情報表示盤や、街頭における広告表示盤など大面積の表示媒体としても様々な用途に適用することができる。
【0227】
本実施の形態は、上記の実施の形態1乃至5と適宜組み合わせることができる。
【実施例1】
【0228】
光吸収部表面を凹凸を有する粗面とした成膜用基板を用いて薄膜を成膜し、その薄膜の評価を行った。本実施例として作製した成膜用基板及び被成膜用基板に形成された薄膜の膜厚分布の結果を示す。
【0229】
図15に、実施例の成膜用基板を、FIB(Focused Ion beam)により端面を切り出し、走査透過型電子顕微鏡(日立製作所製「HD−2300」:STEM)で加速電圧を200kVとし、断面観察を行い、15000倍で観察した写真図を示す。
【0230】
ガラス基板80上に下地膜81としてスパッタ法により酸化珪素膜(膜厚300nm)が設けられ、下地膜81上に選択的に反射層82としてスパッタ法によりアルミニウム膜(300nm)が設けられている。下地膜81及び反射層82上に光吸収膜83としてスパッタ法によりチタン膜(膜厚200nm)が設けられ、光吸収膜83上に凸部84が複数形成され、凹凸を有する光吸収部を構成している。凸部84はCVD法により酸化窒化珪素膜(膜厚1000nm)を形成し、エッチングにより凸部形状に加工して形成した。なお、図15に示す断面写真において、凸部84の幅は700nm、隣接する凸部84同士の中央部からの距離は1.5μmである。凸部84上には材料層として有機化合物材料を含む層85を共蒸着法によって膜厚50nm形成した。
【0231】
有機化合物材料を含む層85に用いた9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、9,10−ジフェニル−2−[N−フェニル−N−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)アミノ]アントラセン(略称:2PCAPA)の構造式を化1に示す。なお、CzPA:2PCAPA膜中の2PCAPAは6wt%とした。
【0232】
【化1】

【0233】
一方、比較例として上記実施例より凸部84を形成せず、概略平坦な光吸収膜83上に有機化合物材料を含む層85を形成し、成膜用基板を作製した。比較例の他の構成は実施例と同様に形成したので詳細な説明は省略する。
【0234】
実施例及び比較例の成膜用基板にそれぞれ光照射を行い、被成膜用基板に薄膜(CzPA:2PCAPA膜)を形成した。光照射条件は、光源として波長532nmのレーザ発振器を用い、出力パワーは10W、照射時間は0.2msec、成膜用基板が配置されたステージの移動速度は500mm/secとした。
【0235】
図16に被成膜用基板に形成された実施例及び比較例の薄膜の膜厚分布の結果を示す。図16において、実施例の結果は実線で、比較例の結果は点線で示しており、横軸は得られたCzPA:2PCAPA膜において中央部を0とした時の距離(グラフ作成の便宜上図面右方向を正、左方向を負として示すが実際には絶対値である)、縦軸が膜厚を示している。比較例の薄膜の方が端部において膜厚の変化が緩慢でありグラフがなだらかに変化しているのに対し、実施例の薄膜は端部における膜厚の変化がより急峻であり、いわゆるパターンぼけによる形状不良が改善されていることがわかる。
【0236】
従って、本実施例の成膜用基板及び成膜方法においては、光による加熱により溶融した有機化合物材料は凹凸形状を有する粗面上にあるために凝集せず、被成膜基板により正確なパターン形状で膜厚の均一な薄膜を成膜できることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸を有する光吸収部と、前記凹凸を有する光吸収部上に有機化合物材料を含む層とを含み、
前記有機化合物材料を含む層は前記凹凸を反映して形成されることを特徴とする成膜用基板。
【請求項2】
凹凸を有する光吸収部と、前記凹凸を有する光吸収部上に有機化合物材料を含む層とを含み、
前記光吸収部は光吸収膜と透光性膜との積層構造であり、前記透光性膜表面に凹凸を有し、
前記有機化合物材料を含む層は前記凹凸を反映して形成されることを特徴とする成膜用基板。
【請求項3】
凹凸を有する光吸収部と、前記凹凸を有する光吸収部上に有機化合物材料を含む層とを含み、
前記光吸収部は透光性膜と光吸収膜との積層構造であり、前記透光性膜表面に凹凸を有し、前記光吸収膜表面は前記透光性膜表面の凹凸を反映し、
前記有機化合物材料を含む層は前記凹凸を反映して形成されることを特徴とする成膜用基板。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記凹凸は梨子地形状であることを特徴とする成膜用基板。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記凹凸は複数の柱状の凸部により構成されることを特徴とする成膜用基板。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記凹凸は複数の錐状の凸部により構成されることを特徴とする成膜用基板。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記凹凸はストライプ構造であることを特徴とする成膜用基板。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項において、前記凹凸の高さの差は50nm以上2000nm以下であることを特徴とする成膜用基板。
【請求項9】
凹凸を有する光吸収部と、前記凹凸を有する光吸収部上に有機化合物材料を含む層とを含み、
前記有機化合物材料を含む層は前記凹凸を反映して形成される成膜用基板を用い、
前記成膜用基板の前記有機化合物材料を含む層形成面と、被成膜基板とを向き合うように、前記成膜用基板と前記被成膜基板とを配置し、
前記透光性基板を通過させて、光を前記光吸収部に照射して前記光を照射された前記光吸収部上の前記有機化合物材料を含む層に含まれる材料を前記被成膜基板上に成膜することを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
請求項9において、前記有機化合物材料を含む層に含まれる材料は、前記凹凸の凹部に流動することを特徴とする成膜方法。
【請求項11】
請求項9又は請求項10において、前記光吸収部は凹凸を有する透光性膜と光吸収膜との積層構造であり、
前記光は、前記凹凸を有する透光性膜を透過して前記光吸収部に照射することを特徴とする成膜方法。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか一項に記載の成膜方法を用いて、
前記光を照射された前記光吸収部上の前記有機化合物材料を含む層に含まれる材料を前記被成膜基板の第1の電極層上に成膜して発光層を形成し、
前記発光層上に第2の電極層を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項13】
請求項12において、前記光を照射された前記光吸収部上の前記有機化合物材料を含む層に含まれる材料を前記被成膜基板の前記第1の電極層上に成膜して複数の画素の発光層を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−121207(P2010−121207A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239102(P2009−239102)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】