説明

扁平形アルカリ一次電池

【課題】安価で電池電圧が高く、長時間の使用に耐える信頼性の高い扁平形アルカリ一次電池を提供する。
【解決手段】扁平形アルカリ一次電池1は正極缶2及び負極缶3を有している。正極缶2の円形の開口部2aに、負極缶3をガスケット4を装着した開口部3a側から嵌合させ、該正極缶2の開口部2aを該ガスケット4に向かってかしめて封口することによって、ガスケット4を介して正極缶2と負極缶3との間には、密閉空間が形成される。密閉空間には、正極合剤5、セパレータ6、負極合剤7が収容され、セパレータ6を挟んで正極缶2側に正極合剤5,負極缶3側に負極合剤7が収容配置される。この密閉空間には、アルカリ電解液が充填されている。そして、セパレータ6は、少なくとも不織布6bと微多孔膜6aの二層構造を有し、その不織布6bの材質を耐アルカリ性に優れたポリプロピレン若しくはポリエチレンとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平形アルカリ一次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電子腕時計、携帯用電子計算機等の小型電子機器に使用されるコイン形或いはボタン形等の扁平形アルカリ一次電池は、正極缶内に二酸化マンガンを正極活物質とする正極合剤が収容されて、負極缶内には、亜鉛又は亜鉛合金粉末を負極活物質とする負極合剤が配置されている。
【0003】
正極合剤と負極合剤は、セパレータを介して対向しており、電池の内部にはアルカリ電解液が注入されている。そして、正極合剤は、二酸化マンガンに導電剤としてグラファイト粉末、正極合剤の結着性が低い場合は結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂粉末若しくはエマルジョンを混合した後に、ペレット状に打錠して正極としている。
【0004】
また、扁平形アルカリ一次電池の正極活物質として酸化銀を用いた、所謂、酸化銀電池も、広く一般市場に出回っている。酸化銀は、二酸化マンガンと比較し、体積エネルギー密度が高く、かつ、負極活物質を亜鉛とした電池電圧が1,56ボルト付近で平坦なため、主に、終止電圧は1.2ボルト以上の電子腕時計、携帯用電子計算機等の小型電子機器用の電源として用いられている。
【0005】
しかしながら、酸化銀は、性能的にも良好であるももの貴金属である銀が主成分であるため高価であり、銀相場により価格が変動し、製造原価の低減や安定を図る上で使用し難い物質である。
【0006】
そこで、酸化銀に対して体積エネルギー密度が低く、しかも、放電に伴う電圧降下が大きいけれども、質量当たりの価格が200分の1程度と圧倒的に安価な二酸化マンガンを正極活物質とした、所謂、アルカリマンガン電池が酸化銀電池同様、一般市場に数多く出回っている。
【0007】
このため、二酸化マンガン等の安価な活物質に種々の添加剤を加えて、体積エネルギー密度等を酸化銀電池に近付けることが検討されている(例えば、特許文献1,2,3)。
【特許文献1】特開2003−234107号 公報(第2頁〜第3頁、図1)
【特許文献2】特開2004−6092号 公報(第2頁〜第3頁、図1)
【特許文献3】特開2005−19349号 公報(第2頁〜第4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、二酸化マンガン等の材料を正極活物質として用いた扁平形アルカリ一次電池では、放電に伴い電圧が大幅に降下する問題点を有していた。電子腕時計など終止電圧が酸化銀電池の電池電圧に合わせて高めに設定されている機器においては、二酸化マンガンの放電に伴う電圧降下から、機器使用時間が極端に短くなってしまうという課題があった。電圧降下の防止について、種々の検討が行われているが、十分なものではなかった。
【0009】
その解決策としては、正極活物質にオキシ水酸化ニッケルを用いる電池が考案されているが、この電池の場合、セパレータの材質として従来からアルカリ電池に用いられてきたビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン、及び、マーセル化パルプのようなセルロー
ス系セパレータを用いるとセルロースが正極活物質であるオキシ水酸化ニッケルにより分解し、内部ショートが発生するという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、安価で電池電圧が高く、長時間の使用に耐える信頼性の高い扁平形アルカリ一次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、正極缶の開口部に負極缶の開口部を嵌合し、正極缶と負極缶とをガスケットを介して密封して形成された密封空間に、セパレータを配置するとともに、前記セパレータを挟んで、正極側にはオキシ水酸化ニッケルを主成分とした正極合剤を配置し、負極側には亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末を主成分とした負極合剤を配置し、さらに、その密封空間にアルカリ電解液を充填した扁平形アルカリ一次電池であって、前記セパレータとして、少なくともポリプロピレン若しくはポリエチレン製不織布と微多孔膜を用いた。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池において、前記不織布の厚さが、50μm以上、150μm以下である。
請求項3の発明は、請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池において、前記不織布の秤量が、20g/m以上、50g/m以下である。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池において、前記不織布の通気度が、10m/s以上、30m/s以下である。
請求項5の発明は、請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池において、前記不織布の引っ張り強度が、10N/15mm以上、50N/15mm以下である。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池において、前記不織布の保液率が、150%以上、250%以下である。
請求項7の発明は、請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池において、前記不織布の平均繊維径が、1μm以上、30μm以下である。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池において、前記微多孔膜の材質が、ポリプロピレン、ポリエチレン、又は、ポリテトラフルオロエチレン製である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、不織布と微多孔膜からなるセパレータにおいて、セパレータの不織布の材質を、セルロース系に対して圧倒的に耐アルカリ性に優れるポリプロピレン若しくはポリエチレン製にしたので、セパレータはオキシ水酸化ニッケル共存下例え高温環境に電池を放置してもアルカリ電解液に分離しない。従って、電子腕時計などの機器への使用において、長時間の使用に耐え信頼性を高めることができる扁平形アルカリ一次電池を提供できる。
【0017】
この結果、正極活物質に高価である酸化銀を使用することなく電子腕時計など終止電圧が酸化銀一次電池の電池電圧に合わせて高く設定されている機器に適した良好な扁平形アルカリ一次電池を得ることができる。しかも、酸化銀一次電池のように高価な材料を使用しないため、安価に製造することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、不織布の厚さを50μm以上にしたので、セパレータとしてのバリアー性を確保し、負極活物質である亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末と正極活物質であるオキシ水酸化ニッケルの内部ショートの発生を防止することができる。また、不織布の厚
さを150μm以下にしたので、不織布の厚さ分電池内部に充填すべき活物質量を確保できるため、放電容量に優れる扁平形アルカリ一次電池を提供することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、不織布の秤量を、20g/m以上にしたので、セパレータのバリアー性を確保し、負極活物質である亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末と正極活物質であるオキシ水酸化ニッケルの内部ショートの発生を防止することができる。また、不織布の秤量を50g/m以下にしたので、電池組立直後の不織布のアルカリ電解液吸収による膨潤で、電池総高が規格を上回ってしまう不具合を防止することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、不織布の通気度を10m/s以上にしたので、セパレータとしてのバリアー性を確保し、負極活物質である亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末と正極活物質であるオキシ水酸化ニッケルの内部ショートの発生を防止することができる。また、不織布の通気度を10m/s以上、30m/s以下にしたので、電池の内部抵抗の上昇を抑制し、電池として必要な閉路電圧特性を確保できる。
【0021】
請求項5の発明によれば、不織布の引っ張り強度を、10N/15mm以上にしたので、ハンドリング上必要な強度を確保できるため、電池組立のセパレータの裂け等、強度不足が起因で発生する不具合を防止することができる。また、不織布の引っ張り強度を50N/15mm以下にしたのは、前述した材質、厚さ、秤量、及び、通気度で、引っ張り強度を50N/15mmを超えるよう製造することは現在の技術では困難なことによる。
【0022】
請求項6の発明によれば、不織布の保液率を150%以上にしたので、正負極間の反応に必要な電解液を効果的に不織布内に確保できるため、電池として必要な閉路電圧特性を確保することができる。また、不織布の保液率を250%以下したので、電池組立直後の不織布のアルカリ電解液吸収による膨潤で、電池総高が規格を上回ってしまう不具合を防止することができる。
【0023】
請求項7の発明によれば、不織布の平均繊維径を1μm以上にしたので、正負極間の反応に必要な電解液を効果的に不織布内に確保できるため、電池として必要な閉路電圧特性を確保することができる。また、不織布の平均繊維径を30μm以下したので、電池組立直後の不織布のアルカリ電解液吸収による膨潤で、電池総高が規格を上回ってしまう不具合を防止することができる。
【0024】
請求項8の発明によれば、微多孔膜の材質を、セルロース系に対し圧倒的に耐アルカリ性に優れるポリプロピレン、ポリエチレン、又は、ポリテトラフルオロエチレン製とすることにより、微多孔膜はオキシ水酸化ニッケル共存下、たとえ高温環境に電池を放置させてもアルカリ電解液に分解しない。従って、電子腕時計などの機器への使用において、長時間の使用に耐え信頼性を高めることができる扁平形アルカリ一次電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態を、図面に従って説明する。
図1は、ボタン形(扁平形)のアルカリ一次電池の概略断面図を示す。図1において、アルカリ一次電池1はボタン形の一次電池であって、有底円筒状の正極缶2及び有蓋円筒状の負極缶3を有している。正極缶2は、鋼板にニッケルメッキを施した構成であって、正極端子を兼ねている。一方、負極缶3は、ニッケルよりなる外表面層と、ステンレススチール(SUS)よりなる金属層と、銅よりなる集電体層との3層クラッド材がカップ状にプレス加工されて構成されている。又、負極缶3は、その円形の開口部3aが折り返し形成され、その折り返し形成された開口部3aには、例えば、ナイロン製のリング状のガスケット4が装着されている。
【0026】
そして、正極缶2の円形の開口部2aに、負極缶3を、ガスケット4を装着した開口部3a側から嵌合させ、該正極缶2の開口部2aを該ガスケット4に向かってかしめて封口することによって、正極缶2と負極缶3は、互いに連結固定されている。正極缶2と負極缶3を連結固定することによって、ガスケット4を介して正極缶2と負極缶3の間には、密閉空間が形成される。
【0027】
この密閉空間には、正極合剤5、セパレータ6、負極合剤7が収容され、セパレータ6を挟んで正極缶2側に正極合剤5、負極缶3側に負極合剤7が収容配置されている。この密閉空間には、アルカリ電解液が充填されている。
【0028】
詳述すると、正極合剤5は、正極缶2の底面に配設されている。正極合剤5は、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケル粉末、導電剤としてのグラファイト、結着剤としてのポリアクリル酸ソーダ、アルカリ電解液として水酸化カリウム水溶液を混合後、打錠機等でプレス成型した円柱状のペレット構造である。
【0029】
セパレータ6の上側には、負極合剤7が配置される。負極合剤7は、亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末、アルカリ電解液、増粘剤等からなるジェル状をなし、負極缶3の底面に圧着され、セパレータ6の上側に収容されている。
【0030】
正極合剤5と負極合剤7の間には、セパレータ6が配置される。セパレータ6は、正極から微多孔膜6aと不織布6bの二重構造である。
まず、初めに、不織布6bは、その材質をポリプロピレン若しくはポリエチレン製とすることが好ましい。これは、不織布6bの材質をセルロース系に対し圧倒的に耐アルカリ性に優れるポリプロピレン若しくはポリエチレンとすることにより、オキシ水酸化ニッケル共存下、たとえ高温環境にアルカリ一次電池1を放置させても、該不織布6bはアルカリ電解液に分解しない。その結果、電子腕時計などの機器へのアルカリ一次電池1の使用において、長時間使用に耐え信頼性を高めることができる。
【0031】
次に、不織布6bの厚さは、50μm以上、150μm以下とすることが好ましい。
これは、不織布6bの厚さを50μm以上にすることにより、セパレータ6としてのバリアー性を確保し、負極活物質である亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末と正極活物質であるオキシ水酸化ニッケルの内部ショートの発生を防止することができるためである。また、不織布6bの厚さを150μm以下にすることにより、不織布6bの厚さ分、電池内部(密閉空間)に充填すべき活物質量を確保できるため、放電容量に優れる扁平形アルカリ一次電池1を提供できる。
【0032】
次に、不織布6bの秤量は、20g/m以上、50g/m以下とすることが好ましい。
これは、不織布6bの秤量を20g/m以上にすることにより、セパレータ6としてバリアー性を確保し、負極活物質である亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末と正極活物質であるオキシ水酸化ニッケルの内部ショートの発生を防止することができる。また、不織布6bの秤量を50g/m以下とすることにより、電池組立直後の不織布6bの電解液吸収による膨潤で、電池総高が規格を上回ってしまう不具合を防止することができる。
【0033】
次に、不織布6bの通気度は、10m/s以上、30m/s以下とすることが好ましい。
これは、不織布6bの通気度を10m/s以上とすることにより、セパレータ6としてバリアー性を確保し、負極活物質である亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末と正極活物質であるオキシ水酸化ニッケルの内部ショートの発生を防止することができる。また、不織布6b
の通気度を30m/s以下とすることにより、アルカリ一次電池1の内部抵抗の上昇を抑制し、電池としての必要な閉路電圧特性を確保することができる。
【0034】
次に、不織布6bの引っ張り強度は、10N/15mm以上、50N/15mm以下とすることが好ましい。
これは、不織布6bの引っ張り強度を10N/15mm以上にすることにより、ハンドリング上必要な強度を確保できるため、電池組立時のセパレータの裂けなどの強度不足が起因で発生する不具合を防止することができる。また、不織布6bの引っ張り強度は50N/15mm以下とする。これは、材質、厚さ、秤量及び通気度で、50N/15mmを超えるように製造することは現在の技術が困難なことによる。
【0035】
次に、不織布6bの保液率は、150%以上、250%以下とすることが好ましい。
これは、不織布6bの保液率を150%以上にすることにより、正負極間の反応に必要な電解液を効果的に不織布6b内に確保でき、電池として必要な閉路電圧特性を確保することができる。また、不織布6bの保液率を250%以下とすることにより、これも電池組立直後の不織布6bの電解液吸収による膨潤で、電池総高が規格を上回ってしまう不具合を防止することができる。
【0036】
次に、不織布6bの平均繊維径は、1μm以上、30μm以下とすることが好ましい。
これは、不織布6bの平均繊維径を1μm以上にすることにより、正負極間の反応に必要な電解液を効果的に不織布6bに確保でき、電池として必要な閉路電圧特性を確保することができる。不織布6bの平均繊維径を30μm以下にすることにより、電池組立直後の不織布6bの電解液吸収による膨潤で、電池総高が規格を上回ってしまう不具合を防止することができる。
【0037】
最後に、微多孔膜6aは、その材質をポリプロピレン、ポリエチレン、または、ポリテトラフルオロエチレン製とするのが好ましい。
これは、微多孔膜6aの材質をセルロース系に対し圧倒的に耐アルカリ性に優れるポリプロピレン、ポリエチレン、または、ポリテトラフルオロエチレン製にすることにより、オキシ水酸化ニッケル共存下、たとえ高温環境に電池を放置させてもアルカリ電解液に微多孔膜6aは分解しない。その結果、電子腕時計などの機器へのアルカリ一次電池1の使用において、長時間使用に耐え信頼性を高めることができる。
【0038】
このように構成した扁平形アルカリ一次電池1は、セパレータ6の構成として、正極側から、微多孔膜6aと不織布6bの二層構造とし、オキシ水酸化ニッケル共存下、高温環境に該電池1を放置してもアルカリ電解液に該セパレータ6が分解されないことから、電子腕時計などの機器の使用において、長時間に耐え信頼性を高めることができる。その結果、電子腕時計など終止電圧が扁平形の酸化銀一次電池の電池電圧に合わせて高めに設定されている機器において、このアルカリ一次電池1は、長時間の使用に耐えることができる。
【0039】
ちなみに、セパレータ6の各種条件を変更した実施例を行い検証した。
(実施例1)
図1に示す電池構造で、負極缶3は、ニッケル外表面層と、ステンレススチール(SUS)による金属層と、銅による集電体層の3層による厚さ0.18mmクラッド材をプレス加工によって成型した。
【0040】
正極合剤5は、導電剤としてグラファイトを4mass%、オキシ水酸化ニッケルを93.8mas%、結着剤としてポリアクリル酸ソーダを0.2mass%、電解液として濃度40%の水酸化カリウム水溶液を2mass%、をブレンダーで混合した後、打錠機
にてペレット状に成型した。
【0041】
次に、正極合剤5を、正極缶2内に挿入し、水酸化カリウムを含むアルカリ電解液を注入して正極合剤5にアルカリ電解液を吸収させる。
この正極合剤5上に、微多孔膜6aと不織布6bの二層構造の円形状に打ち抜いたセパレータ6を装填する。
【0042】
なお、実施例1で使用した不織布6bの材質は、ポリプロピレン(P.P.)製、微多孔膜6aの材質はポリエチレン(P.E.)製である。そして、不織布6bについて、厚さを85μm、その秤量を30g/m、通気度を20m/s、引っ張り強度を25N/15mm、保液率を200%、平均繊維径を10μmとする。
【0043】
この装填したセパレータ6に水酸化カリウムを含むアルカリ電解液を滴下して含浸させる。このセパレータ6上に、亜鉛合金粉末、酸化亜鉛、増粘剤、水酸化ナトリウム、及び、水からなるジェル状の負極合剤7を載置する。そして、正極缶2と負極缶3の間には、ガスケット4が挟持され密閉性を高めている。
(実施例2)
実施例2は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの材質を、ポリプロピレン製からポリエチレン製とした。
(実施例3)
実施例3は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの厚さを、85μmから50μmとした。
(実施例4)
実施例4は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの厚さを、85μmから150μmとした。
(実施例5)
実施例5は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの秤量を、30g/mから20g/mとした。
(実施例6)
実施例6は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの秤量を、30g/mから50g/mとした。
(実施例7)
実施例7は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの通気度を、20m/sから10m/sとした。
(実施例8)
実施例8は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの通気度を、20m/sから30m/sとした。
(実施例9)
実施例9は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの引っ張り強度を、25N/15mmから10N/15mmとした。
(実施例10)
実施例10は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの引っ張り強度を、25N/15mmから50N/15mmとした。
(実施例11)
実施例11は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの保液率を、200%から150%とした。
(実施例12)
実施例12は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの保液率を、200%から250%とした。
(実施例13)
実施例13は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの平均繊維径を、10μmから1μmとした。
(実施例14)
実施例14は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの平均繊維径を、10μmから30μmとした。
(実施例15)
実施例15は、実施例1と同様な構成にするものの、微多孔膜6aの材質をポリエチレン(P.E.)製からポリプロピレン(P.P.)製とした。
(実施例16)
実施例16は、実施例1と同様な構成にするものの、微多孔膜6aの材質をポリエチレン(P.E.)製からポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製とした。
(比較例1)
比較例1は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの材質をポリエチレン(P.E.)製からマーセル化パルプとした。
(比較例2)
比較例2は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの厚さを85μmから40μmとした。
(比較例3)
比較例3は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの厚さを85μmから180μmとした。
(比較例4)
比較例4は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの秤量を30g/mから15g/mとした。
(比較例5)
比較例5は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの秤量を30g/mから55g/mとした。
(比較例6)
比較例6は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの通気度を20m/sから5m/sとした。
(比較例7)
比較例7は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの通気度を20m/sから35m/sとした。
(比較例8)
比較例8は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの引っ張り強度を25N/15mmから5N/15mmとした。
(比較例9)
比較例9は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの保液率を200%から130%とした。
(比較例10)
比較例10は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの保液率を200%から270%とした。
(比較例11)
比較例11は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの平均繊維径を10μmから0.5μmとした。
(比較例12)
比較例12は、実施例1と同様な構成にするものの、不織布6bの平均繊維径を10μmから35μmとした。
(比較例13)
比較例13は、実施例1と同様な構成にするものの、微多孔膜6aの材質をポリエチレン(P.E.)製からセロファンとした。
【0044】
そして、上記した実施例1〜実施例16、比較例1〜比較例13のアルカリ一次電池をそれぞれ110個作製し、以下の検証を行った。
具体的には、これら100個ずつ電池を30kΩで定抵抗放電させ、1.2Vの終止電圧とした時の放電容量[mAh]を表1に示す。
【0045】
また、10個ずつの電池を−10℃の環境下、DoDo%(放電深度0%)、負荷抵抗が200Ωで5秒の閉路電圧(CCV:放電特性)[V]を表1に示す。
最後に、前述した放電容量試験を行った電池の内部ショートの有無、放電容量試験を行う前の電池総高[mm]、及び、電池作製時のセパレータ裂け等の強度結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

(1)はじめに、この表1より、実施例1,2と比較例1とを比較するに、不織布6bの材質をセルロース系に対し圧倒的に耐アルカリ性に優れるポリプロピレン若しくはポリエチレンとすることにより、負極活物質である亜鉛合金粉末と正極活物質であるオキシ水酸化ニッケルの内部ショートの発生を防止することがわかる。
【0047】
これは、不織布6bの材質をポリプロピレン若しくはポリエチレンとすることで、不織布6bはオキシ水酸化ニッケル共存下、たとえ高温環境に電池を放置させともアルカリ電解液に分解せず、セパレータ6として必要な正負極間のバリアー性が確保できるからである。
【0048】
(2)次に、この表1により、実施例3,4と比較例2,3を比較するに、不織布6bの厚さを50μm〜150μmとすることで、所定の電池総高内で放電容量に優れる扁平形アルカリ一次電池を提供できる。
【0049】
これは、不織布6bの厚さを50μm以上にすることで内部ショートの発生を防止し、また、不織布6bの厚さを150μm以下にすることで不織布6bの厚さ分、電池内部に充電すべき活物質量を確保できるためである。
【0050】
(3)次に、この表1により、実施例5,6と比較例4,5を比較するに、不織布6bの秤量を20g/m〜50g/m以下にすることで、所定の電池総高内で放電容量に優れる扁平形アルカリ一次電池を提供できる。これも、不織布6bの秤量を20g/m以上にすることで内部ショートの発生を防止し、また、不織布6bの秤量を50g/m以下にすることで電池組立直後の不織布6bの電解液吸収による膨潤を抑制できるためと考えられる。
【0051】
(4)次に、この表1により、実施例7,8と比較例6,7を比較するに、不織布6bの通気度を10m/s〜30m/sにすることで、閉路電圧特性に優れる扁平形アルカリ一次電池を提供できる。これは、不織布6bを、通気度を10m/s以上にすることで、内部ショートの発生を防止し、また、不織布6bの通気度を30m/s以下にすることで電池の内部抵抗の上昇を抑制できるためと考えられる。
【0052】
(5)次に、この表1により、実施例1〜実施例16と比較例8を比較するに、不織布6bの引っ張り強度を10N/15mm〜50N/15mmにすることで、生産性に優れた扁平形アルカリ一次電池を提供できる。これは、不織布6bの引っ張り強度を10N/15mm以上にすることでハンドリング上必要な強度を確保できるためである。
【0053】
(6)次に、この表1により、実施例11,12と比較例9,10を比較するに、不織布6bの保液率を150%〜250%とすることで、所定の電池総高内で閉路電圧特性に優れたアルカリ一次電池を提供できる。これは、不織布6bの保液率を150%以上にすることで正負極間の反応に必要な電解液を効果的に不織布6b内に確保できることから、電池として必要な閉路電圧特性を確保することができるためである。また、不織布6bの保液率を250%以下にすることで電池組立直後の不織布6bの電解液吸収による膨潤の抑制ができるためと考えられる。
【0054】
(7)次に、この表1により、実施例13,14と比較例11,12を比較するに、不織布6bの平均繊維径を1μm〜30μmにすることで、所定の電池総高内で閉路電圧特性に優れたアルカリ一次電池を提供できる。これは、不織布6bの平均繊維径を1μm以上にすることで正負極間の反応に必要な電解液を効果的に不織布内に確保できるため、電池として必要な閉路電圧特性を確保することができるためである。また、不織布6bの平
均繊維径を30μm以下にすることで電池組立直後の不織布6bの電解液吸収による膨潤の抑制ができるためと考えられる。
【0055】
(8)次に、この表1により、実施例15,16と比較例13を比較するに、微多孔膜6aの材質を、セルロース系に対し圧倒的に耐アルカリ性に優れるポリプロピレン、ポリエチレン、又は、ポリテトラフルオロエチレン製とすることにより、負極活物質である亜鉛合金粉末と正極活物質であるオキシ水酸化ニッケルの内部ショートの発生を防止することがわかる。これは、微多孔膜6aの材質をポリプロピレン、ポリエチレン、又は、ポリテトラフルオロエチレン製とすることで、微多孔膜6aはオキシ水酸化ニッケル共存下、たとえ高温環境に電池を放置させてもアルカリ電解液に分解せず、セパレータ6として必要な正負極間のバリアー性が確保できるためである。
【0056】
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、扁平形アルカリ一次電池1は、負極活物質として亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末を使用し、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを使用し、それらのセパレータ6の構成としては少なくとも不織布6bと微多孔膜6aの二層構造を有し、その不織布6bの材質を従来のアルカリ一次電池で使用されてきたセルロース系に対し圧倒的に耐アルカリ性に優れるポリプロピレン若しくはポリエチレンにした。そのため、不織布6bはオキシ水酸化ニッケル共存下、たとえ高温環境に電池を放置させてもアルカリ電解液に分解しないことから、扁平形アルカリ一次電池1は電子腕時計などの機器への使用において、長時間の使用に耐え信頼性を高めることができる。
【0057】
しかも、本実施形態の扁平形アルカリ一次電池1は、酸化銀一次電池のように高価な材料(銀)を使用しないため、貴金属市場に左右されず安価に製造することができる。
(2)本実施形態によれば、扁平形アルカリ一次電池1は、不織布6bの厚さを、50μm以上、150μm以下にしたので、所定の電池総高内で放電容量に優れる扁平形アルカリ一次電池を提供できる。
【0058】
(3)本実施形態によれば、不織布6bの秤量を、20g/m以上、50g/m以下にしたので、所定の電池総高内で放電容量に優れる扁平形アルカリ一次電池1を提供できる。
【0059】
(4)本実施形態によれば、不織布6bの通気度を、10m/s以上、30m/s以下にしたので、内部ショートの発生を防止し、閉路電圧特性に優れる扁平形アルカリ一次電池1を提供できる。
【0060】
(5)本実施形態によれば、不織布6bの引っ張り強度を、10N/15mm以上にしたので、生産性に優れる扁平形アルカリ一次電池1を提供できる。
(6)本実施形態では、不織布6bの保液率を、150%以上、250%以下にしたので、所定の電池総高内で閉路電圧特性に優れるアルカリ一次電池1を提供できる。
【0061】
(7)本実施形態によれば、微多孔膜6aの材質を、セルロース系に比べて耐アルカリ性に優れたポリプロピレン、ポリエチレン、又は、ポリテトラフルオロエチレン製にしたので、微多孔膜6aはオキシ水酸化ニッケル共存下、たとえ、高温環境に電池を放置されてもアルカリ電解液に分解しないことから、扁平形アルカリ一次電池1は電子腕時計などの機器への使用において、長時間の使用に耐え信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態のアルカリ電池の概略断面図。
【符号の説明】
【0063】
1…扁平形アルカリ電池、2…正極缶、2a…開口部、3…負極缶、3a…開口部、4…ガスケット、5…正極合剤、6…セパレータ、6a…微多孔膜、6b…不織布、7…負極合剤。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極缶の開口部に負極缶の開口部を嵌合し、正極缶と負極缶とをガスケットを介して密封して形成された密封空間に、セパレータを配置するとともに、前記セパレータを挟んで、正極側にはオキシ水酸化ニッケルを主成分とした正極合剤を配置し、負極側には亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末を主成分とした負極合剤を配置し、さらに、その密封空間にアルカリ電解液を充填した扁平形アルカリ一次電池であって、
前記セパレータとして、少なくともポリプロピレン若しくはポリエチレン製不織布と微多孔膜を用いることを特徴とする扁平形アルカリ一次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池において、
前記不織布の厚さが、50μm以上、150μm以下であることを特徴とする扁平形アルカリ一次電池。
【請求項3】
請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池において、
前記不織布の秤量が、20g/m以上、50g/m以下であることを特徴とする扁平形アルカリ一次電池。
【請求項4】
請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池において、
前記不織布の通気度が、10m/s以上、30m/s以下であることを特徴とする扁平形アルカリ一次電池。
【請求項5】
請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池において、
前記不織布の引っ張り強度が、10N/15mm以上、50N/15mm以下であることを特徴とする扁平形アルカリ一次電池。
【請求項6】
請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池において、
前記不織布の保液率が、150%以上、250%以下であることを特徴とする扁平形アルカリ一次電池。
【請求項7】
請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池において、
前記不織布の平均繊維径が、1μm以上、30μm以下であることを特徴とする扁平形アルカリ一次電池。
【請求項8】
請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池において、
前記微多孔膜の材質が、ポリプロピレン、ポリエチレン、又は、ポリテトラフルオロエチレン製であることを特徴とする扁平形アルカリ一次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2008−282660(P2008−282660A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125582(P2007−125582)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】