説明

扁平形電池及びそれを備えたタイヤ空気圧検出装置

【課題】扁平形電池の重量を効果的に軽減できるような構成を得る。
【解決手段】扁平形電池は、有底筒状の正極缶(10)と、該正極缶(10)の開口を覆うように配置されるとともに、外周側で前記正極缶(10)に接続される負極缶(20)と、前記正極缶(10)と前記負極缶(20)との間に形成される空間内に収納される発電要素(40)と、を備えている。前記正極缶(10)及び負極缶(20)の少なくとも一方は、樹脂材料からなる。該正極缶(10)及び負極缶(20)のうち樹脂材料からなる部材の表面に、少なくとも前記発電要素(40)から外部への導電経路を形成するようにニッケルメッキ層(20b)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイン形電池等の扁平形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有底筒状の外装缶と、該外装缶の開口を覆うように配置され、外周側で外装缶に接続される封口缶とを備えた扁平形電池は知られている。このような扁平形電池では、例えば特許文献1に開示されるように、外装缶及び封口缶をステンレスなどの金属材料によって構成したものが一般的である。このような構成では、外装缶及び封口缶は、単なるケースとしての役割を果たしているだけでなく、内部の発電要素を外部と電気的に接続するための外部端子としての役割も果たしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−262905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、装置の小型化・軽量化に伴い、装置の電力供給源としての電池も小型化・軽量化が求められている。特に、タイヤなどの回転体に取り付けられる装置の電力供給源として扁平形電池を用いる場合には、該扁平形電池に作用する遠心力を低減するため、該扁平形電池の軽量化を図る必要がある。
【0005】
電池の軽量化を図る一つの方法として、外装缶及び封口缶の軽量化が考えられる。しかしながら、上述のように外装缶及び封口缶は外部端子としての役割も有しているため、該外装缶及び封口缶を導電性の材料によって構成する必要があり、該外装缶及び封口缶の重量を大幅に軽減するのは難しい。
【0006】
本発明の目的は、扁平形電池の重量を効果的に軽減できるような構成を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態にかかる扁平形電池は、有底筒状の外装缶と、該外装缶の開口を覆うように配置されるとともに、外周側で前記外装缶に接続される封口缶と、前記外装缶と前記封口缶との間に形成される空間内に収納される発電要素と、を備え、前記外装缶及び封口缶の少なくとも一方は、樹脂材料からなり、前記外装缶及び封口缶のうち樹脂材料からなる部材の表面には、少なくとも前記発電要素から外部へ導電経路を形成するように金属膜が設けられている(第1の構成)。
【0008】
この構成により、外装缶及び封口缶の少なくとも一方が金属材料よりも軽い樹脂材料によって構成されるため、電池全体として重量を大幅に軽減することが可能となる。しかも、樹脂材料によって構成された部材の表面には、発電要素から外部への導電経路を形成するように金属膜が設けられるため、従来の構成と同様、外装缶及び封口缶が電池の外部端子として機能する。
【0009】
前記第1の構成において、前記金属膜は、樹脂材料からなる部材の全体を覆うように設けられているのが好ましい(第2の構成)。これにより、樹脂材料の外表面に、電池内部の発電要素から外部への導電経路が形成される。したがって、外装缶及び封口缶の少なくとも一方を樹脂材料によって構成しても、電池としての機能を確保できる。
【0010】
前記第1または第2の構成において、前記封口缶は、樹脂材料からなり、前記外装缶は、金属材料からなり、その外周側で前記封口缶の外周側にかしめられるのが好ましい(第3の構成)。一般的に、封口缶に対して外装缶の外周側をかしめることにより、該封口缶と外装缶とを接続する。上述のように、外装缶を金属材料によって構成することで、該外装缶の外周側を封口缶の外周側に対してかしめることが可能になる。すなわち、上述の構成により、封口缶に樹脂材料を用いても、該封口缶と外装缶とを強固に接続することができる。
【0011】
前記第3の構成において、前記封口缶は、負極缶であるのが好ましい(第4の構成)。例えば、正極缶を樹脂材料によって形成して、その表面に金属膜を設けると、金属膜の種類によっては金属膜がイオン化して溶け出してしまう。そうすると、電池内で正極材と負極材とを仕切るセパレータに金属が析出して電池内部で短絡を生じる可能性がある。これに対し、上述の構成のように、負極缶を樹脂材料によって形成してその表面に金属膜を設けるようにすれば、上述のように金属膜がイオン化して溶け出すことがないため、電池の内部短絡の発生も防止できる。
【0012】
前記第1から第4の構成のうちいずれか一つの構成において、前記外装缶と前記封口缶とを組み合わせた状態で、該外装缶の外周側と封口缶の外周側との間に挟みこまれるガスケット、をさらに備え、前記樹脂材料からなる部材は、前記ガスケットよりも大きい曲げ剛性を有するのが好ましい(第5の構成)。
【0013】
これにより、外装缶及び封口缶のうち樹脂材料によって構成される部材は、シールや絶縁として機能するガスケットよりも高い強度を有する。したがって、樹脂材料によって、扁平形電池のケースとして或る程度の強度が必要となる外装缶や封口缶を構成することが可能となる。
【0014】
前記第1から第5の構成のうちいずれか一つの構成において、前記樹脂材料は、ベースとなる樹脂に強度向上のための補強材を混入してなるのが好ましい(第6の構成)。こうすることで、樹脂材料の強度の向上を図れる。よって、扁平形電池のケース、すなわち封口缶及び外装缶のうち樹脂材料によって構成される部材の強度を向上することができる。
【0015】
本発明の一実施形態にかかるタイヤ空気圧検出装置は、前記第1から第6の構成のいずれか一つの構成を備えた扁平形電池を電力供給源として用いる(第7の構成)。
【0016】
タイヤ周辺に設置されるタイヤ空気圧検出装置は、タイヤの回転によって遠心力を受ける。よって、このタイヤ空気圧検出装置の電力供給源として用いられる扁平形電池も、タイヤの回転によって遠心力を受ける。前記第1から第6の構成のように、扁平形電池の軽量化を図ることにより、該扁平形電池に作用する遠心力を低減できる。したがって、その分、該扁平形電池を保持する構造等を簡略化できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施形態にかかる扁平形電池は、外装缶及び封口缶の少なくとも一方を樹脂材料によって構成することで、軽量化を図れる。しかも、樹脂材料からなる部材の表面に導電経路を形成する金属膜を設けることで、電池としての機能を確保できる。
【0018】
また、外装缶を金属材料によって構成し、該外装缶の外周側を封口缶の外周側にかしめることにより、樹脂製の封口缶に対して外装缶を強固に接続することができる。
【0019】
また、封口缶を負極缶とすることで、樹脂材料の表面に形成された金属膜がイオン化して溶け出すのを防止できる。これにより、電池内部での短絡発生を防止できる。
【0020】
また、樹脂材料からなる部材の曲げ剛性を、外装缶の外周側と封口缶の外周側との間に挟みこまれるガスケットよりも大きくすることで、扁平形電池のケースとして必要な強度を得る事が可能になる。さらに、樹脂材料を樹脂に補強材を混入したものとすることで、樹脂材料の強度向上を図れる。
【0021】
本発明の一実施形態にかかるタイヤ空気圧検出装置は、上述の第1から第6の構成の扁平形電池を電力供給源とすることにより、扁平形電池を保持する構造等を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる扁平形電池の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、扁平形電池を備えたタイヤ空気圧センサのタイヤへの実装例を示す図である。
【図3】図3は、負極缶にガスケットを装着した状態を示す図である。
【図4】図4は、負極缶内に負極材、セパレータ及び正極材を配置した状態を示す図である。
【図5】図5は、負極缶に正極缶を組み合わせた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態である扁平形電池1の概略構成を示す断面図である。この扁平形電池1は、有底円筒状の正極缶10(外装缶)と、該正極缶10の開口を覆う負極缶20(封口缶)と、正極缶10の外周側と負極缶20の外周側との間に配置されるガスケット30と、正極缶10及び負極缶20の間に形成される空間内に収納される発電要素40とを備えている。扁平形電池1は、正極缶10と負極缶20とを合わせることによって、全体が扁平なコイン状に形成されている。扁平形電池1の正極缶10及び負極缶20の間に形成される空間内には、発電要素40以外に、非水電解液(図示省略)も封入されている。
【0025】
正極缶10は、ステンレスなどの金属材料からなり、プレス成形によって有底円筒状に形成されている。正極缶10は、円形状の底部11と、その外周に該底部11と連続して形成される円筒状の周壁部12とを備えている。周壁部12は、縦断面視で、底部11に対して垂直に延びるように設けられている。正極缶10は、後述するように、負極缶20との間にガスケット30を挟んだ状態で、周壁部12の開口端側が内側に折り曲げられて、該負極缶20の外周部に対してかしめられている。
【0026】
負極缶20は、正極缶10とは異なり、樹脂材料からなり、外表面をニッケルメッキによって覆われている。すなわち、負極缶20は、樹脂材料からなる樹脂部20aと、その外表面を覆うニッケルメッキ層20b(金属膜)とを備えている。このニッケルメッキ層20bは、樹脂部20aの両面及び端部を含む全体を覆うように設けられている。このニッケルメッキ層20bによって、扁平形電池1内の発電要素40から外部への導電経路が形成される。よって、樹脂製の負極缶20でも、扁平形電池1の外部端子としての機能を確保できる。
【0027】
ここで、例えば、正極缶20を樹脂製にしてその表面をニッケルメッキで覆うと、正極に用いる材料の種類によってはニッケルメッキ層がイオン化して溶け出し、セパレータ43で析出する。そうすると、電池の内部で短絡が生じる。しかしながら、上述のように、負極缶20を樹脂製にしてその表面にニッケルメッキ層20bを形成することで、該ニッケルメッキ層20bがイオン化して溶け出すことはない。よって、本実施形態の構成であれば、電池内部での短絡発生を防止できる。
【0028】
なお、樹脂部20aの材料の詳細については後述する。
【0029】
また、負極缶20は、全体として略有底円筒状に形成されている。すなわち、負極缶20は、円形状の平面部21と、その外周に該平面部21と連続して形成される円筒状の周壁部22とを備えている。この周壁部22も、正極缶10と同様、縦断面視で、平面部21に対して垂直に延びるように設けられている。周壁部22は、該周壁部22の基端部22aに対して径が段状に大きくなる拡径部22bを有している。すなわち、周壁部22には、基端部22aと拡径部22bとの間に段部22cが形成されている。図1に示すように、この段部22cに対して、正極缶10の周壁部12の開口端側が折り曲げられてかしめられている。これにより、正極缶10と負極缶20とが、それらの外周側で接続されている。
【0030】
ガスケット30は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を主成分としており、PPSにオレフィン系エラストマーを含有した樹脂組成物からなる。ガスケット30は、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間に挟みこまれるように配置される。具体的には、ガスケット30は、リング状のベース部31と、該ベース部31の外周縁から突出する外筒壁32と、該ベース部31の内周縁から該外筒壁32と同じ方向に伸びる内筒壁33とを備えている。本実施形態では、ガスケット30は、ベース部31、外筒壁32及び内筒壁33が一体で形成されている。
【0031】
ガスケット30は、図1に示すように、ベース部31が、正極缶10の底部11の外周側と負極缶20の拡径部22bの開口端との間に挟みこまれるように、正極缶20の内側の底部11上に配置されている。これにより、負極缶20の拡径部22bは、ガスケット30の外筒壁32と内筒壁33との間に位置づけられる。ガスケット30の外筒壁32は、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間に挟みこまれている。ガスケット30のベース部31及び外筒壁32は、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間に挟みこまれた状態で、該正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との隙間をシールできるような厚みを有している。
【0032】
このように、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間にガスケット30を配置することにより、該正極缶10と負極缶20とをそれらの外周側で絶縁することができる。また、後述するように、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間にガスケット30を挟みこんだ状態で、該正極缶10の周壁部12を折り曲げて負極缶20の周壁部22にかしめることにより、該ガスケット30によって正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間を封止することができる。すなわち、ガスケット30は、正極缶10の周壁部12と負極缶20の段部22cとの間に挟みこまれる外筒壁32、及び、負極缶20の周壁部22の開口端と正極缶10の底部11との間に挟みこまれるベース部31が、それぞれ、シールとして機能する。
【0033】
発電要素40は、正極活物質等を円盤状に成形した正極材(電極材)41と、負極活物質の金属リチウムまたはリチウム合金を円盤状に形成した負極材42と、不織布製のセパレータ43とを備えている。図1に示すように、正極缶10の内方には正極材41が位置付けられている一方、負極缶20の内方には負極材42が位置付けられている。正極材41と負極材42との間にはセパレータ43が配置されている。
【0034】
正極材41は、正極活物質として二酸化マンガンを含有している。この正極材41は、次のようにして形成される。まず、二酸化マンガンに、黒鉛、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びヒドロキシプロピルセルロースを混合して正極合剤を調整する。所定の金型内に後述する正極リング44をセットした後に、前記正極合剤を金型内に充填して加圧成形し、成形された部材を加熱して円盤状に形成する。これにより、正極材41が得られる。
【0035】
正極材41には、該正極材41を保持するように、該正極材41の底面及び側面のそれぞれ一部を覆う正極リング44が装着されている。この正極リング44は、所定の剛性及び導電性を有するステンレス鋼等によって構成されている。正極リング44は、正極材41の側面に接する円筒部44aと、該円筒部44aの一端側から該円筒部44aの内方に向かって延びて正極材41の底面に接する円環状のフランジ部44bとが一体形成されたものである。このような構成の正極リング44によって、該正極リング44内の正極材41の径方向及び一端側への変形を規制することができる。そして、正極リング44の円筒部44aの他端側にはフランジ部を設けない構成にすることで、正極材41は、放電時に正極リング44の円筒部44aの他端側へ自由に膨張することができる。よって、放電時に、負極材42の厚みが小さくなっても、正極材41は正極リング44に沿って負極材42側へ膨張するため、該正極材41と負極材42とが離間するのを防止できる。
【0036】
セパレータ43は、ポリブチレンテレフタート製の繊維を素材とする不織布を用いて構成される。このセパレータ43は、扁平形電池1内で非水電解液によって含浸されている。なお、セパレータ43の厚みは、例えば、約0.3〜0.4mm程度である。
【0037】
非水電解液は、プロピレンカーボネイトと1,2−ジメトキシエタンとを混合した溶液にLiClOを溶解した溶液である。
【0038】
上述のような構成の扁平形電池1は、例えば、図2に示すような車両用のタイヤ空気圧センサ101(タイヤ空気圧検出装置)の電力供給源として用いられる。すなわち、タイヤ空気圧センサ101は、扁平形電池1を内蔵している。このタイヤ空気圧センサ101は、タイヤ102が取り付けられる略円柱状のホイール103の円周面上に設置される。タイヤ空気圧センサ101は、タイヤ102の空気圧の変化を図示しない無線通信装置によってドライバに報知する。
【0039】
このようなタイヤ空気圧センサ101に、本実施形態の構成を有する扁平形電池1を電力供給源として用いることで、従来の金属製の負極缶20を有する扁平形電池に比べて、遠心力を低減できる。よって、タイヤ空気圧センサ101において、扁平形電池1を保持する構造などを簡略化することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、扁平形電池1の適用例として、タイヤ空気圧センサ101を挙げているが、これ以外の機器の電力供給源として扁平形電池1を用いてもよい。
【0041】
(樹脂部)
樹脂部20aは、ガスケット30よりも大きい曲げ剛性を有する。すなわち、樹脂部20aは、例えばガラスフィラー(補強材)が混入されたPPS(樹脂)を用いて略有底円筒状に形成されているため、リング状のガスケット30よりも曲げ剛性が大きくなっている。樹脂部20aは、曲げ弾性率が20GPa以上の強化樹脂であれば、ガラスフィラー入りのPPS以外であってもよい。なお、ガスケット30に用いられる樹脂は、例えばエラストマーが混入されていて且つ曲げ弾性率が約3GPaのPPSである。すなわち、樹脂部20aに用いられる樹脂は、ガスケット30に用いられる樹脂よりも数倍大きな曲げ弾性率を有する。
【0042】
ここで、ガラスフィラーの含有量は約40%であるのが好ましい。また、ガラスフィラーは、例えば繊維径が9〜13μm、引張強度が2.7GPa、引張弾性率が70GPaである。
【0043】
なお、PPSに含有するフィラーは、上述のガラスフィラーだけでなく、ガラスフィラーに炭酸カルシウムやチタン酸カリウムなどの無機フィラーを加えたものであってもよい。この場合、フィラーの含有量は65〜70%が好ましい。例えばフィラーとして用いられるチタン酸カリウムは、繊維長が10〜20μm、平均繊維径が0.3〜0.6μm、引張強度が7GPa、引張弾性率が280GPaである。
【0044】
また、樹脂部20aに用いる樹脂材料として、PPSではなく、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)を用いてもよい。
【0045】
(扁平形電池の製造方法)
次に、扁平形電池1の製造方法を、図3から図5に基づいて説明する。なお、扁平形電池1を組み立てる際は、図3から図5に示すように、図1の状態とは上下逆の状態で組み立て作業を行う。
【0046】
図3に示すように、負極缶20を平面部21が底面になるように配置し、該負極缶20の周壁部22の開口端部にガスケット30を装着する。負極缶20の内面に負極材42を導電性接着剤等で固定した後、該負極材42の上にセパレータ43及び正極材41を重ねて配置する(図4参照)。次に、負極缶20内に非水電解液を注入し、該負極缶20に対して正極缶10を被せる(図5参照)。このとき、負極缶20の周壁部22と正極缶10の周壁部12との間にガスケット30を挟みこんだ状態で、該周壁部12の開口端側を、負極缶20の段部22cを覆うように正極缶10の内側に折り曲げてかしめる。
【0047】
これにより、ガスケット30は、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間に挟みこまれた状態となる。すなわち、上述のような製造方法によって、ガスケット30は、外筒壁32が負極缶20の段部22cと正極缶10の周壁部12の開口端側との間に挟みこまれる。また、ベース部31も負極缶20の周壁部22の開口端と正極缶10の底部11との間に挟みこまれる。
【0048】
以上により、図1に示すような構成の扁平形電池1が得られる。
【0049】
(実施形態の効果)
以上の構成を有する扁平形電池1では、負極缶20を樹脂製にすることで、軽量化を図れる。よって、タイヤ空気圧センサ101の電力供給源として扁平形電池1を用いた場合には、金属製の負極缶を有する従来の扁平形電池に比べて、扁平形電池1に作用する遠心力を低減することができる。したがって、タイヤ空気圧センサ101において、扁平形電池1を保持する構造などを、従来のものに比べて簡略化することが可能になる。
【0050】
また、負極缶20の外表面はニッケルメッキによって覆われているため、扁平形電池1の内部に配置される負極材11と外部との導電経路を確保できる。よって、負極缶20を樹脂製にしても、該負極缶20は扁平形電池1の外部端子として機能する。
【0051】
上述のように、負極缶20のみを樹脂製にすることで、ニッケルメッキ層20bはイオン化して溶け出さないため、正極缶20にニッケルメッキを施した場合のような電池内部での短絡の発生を防止できる。
【0052】
また、樹脂部20aの材料として、ガラスフィラー入りのPPSを用いることにより、負極缶10として必要な強度を得ることが可能となる。
【0053】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0054】
前記実施形態では、樹脂部20aの全体を覆うようにニッケルメッキ層20bを設けている。しかしながら、扁平形電池1内の発電要素40から外部への導電経路を確保できるように、樹脂部20aの表面の一部のみにニッケルメッキ層20bを設けてもよい。例えば、負極缶20の周壁部22にはニッケルメッキ層20bを形成せずに、平面部21のみに該ニッケルメッキ層20bを形成してもよい。この場合、平面部21に貫通穴部を設けて、該貫通穴部内にニッケルメッキを充填することで、該平面部21の両面に形成されるニッケルメッキ層20b同士を電気的に接続すればよい。
【0055】
前記実施形態では、負極缶20の樹脂部20aの外表面を、ニッケルメッキ層20bで覆っている。しかしながら、ニッケルメッキ層20bの代わりに金メッキ層で覆ってもよい。このように金メッキを用いることで、正極缶側に金メッキ層を設けても該金メッキ層がイオン化して溶け出すことはなく、電池内部での短絡発生を防止できる。
【0056】
前記実施形態では、正極材41の正極活物質として二酸化マンガンを含有した材料を用いていて、負極材42の負極活物質として金属リチウムまたはリチウム合金を用いている。しかしながら、正極活物質または負極活物質として機能する材料であれば、これ以外のものを正極材41及び負極材42として用いてもよい。
【0057】
前記実施形態では、正極缶10を外装缶としていて、負極缶20を封口缶としているが、逆に正極缶が封口缶で、負極缶が外装缶であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明による扁平形電池は、例えばタイヤ空気圧センサなど、高温環境下で使用される機器の電池として利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 扁平形電池
10 正極缶(外装缶)
11 底部
12 周壁部
20 負極缶(封口缶)
20a 樹脂部
20b ニッケルメッキ層(金属膜)
21 平面部
22 周壁部
30 ガスケット
40 発電要素
41 正極材(電極材)
42 負極材
43 セパレータ
44 正極リング(保持部材)
101 タイヤ空気圧センサ
103 ホイール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の外装缶と、
前記外装缶の開口を覆うように配置されるとともに、外周側で前記外装缶に接続される封口缶と、
前記外装缶と前記封口缶との間に形成される空間内に収納される発電要素と、
を備え、
前記外装缶及び封口缶の少なくとも一方は、樹脂材料からなり、
前記外装缶及び封口缶のうち樹脂材料からなる部材の表面には、少なくとも前記発電要素から外部への導電経路を形成するように金属膜が設けられている、扁平形電池。
【請求項2】
請求項1に記載の扁平形電池において、
前記金属膜は、樹脂材料からなる部材の全体を覆うように設けられている、扁平形電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載の扁平形電池において、
前記封口缶は、樹脂材料からなり、
前記外装缶は、金属材料からなり、その外周側で前記封口缶の外周側にかしめられる、扁平形電池。
【請求項4】
請求項3に記載の扁平形電池において、
前記封口缶は、負極缶である、扁平形電池。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の扁平形電池において、
前記外装缶と前記封口缶とを組み合わせた状態で、該外装缶の外周側と封口缶の外周側との間に挟みこまれるガスケット、をさらに備え、
前記樹脂材料からなる部材は、前記ガスケットよりも大きい曲げ剛性を有する、扁平形電池。
【請求項6】
請求項5に記載の扁平形電池において、
前記樹脂材料は、ベースとなる樹脂に強度向上のための補強材を混入してなる、扁平形電池。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の扁平形電池を電力供給源として用いるタイヤ空気圧検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−187401(P2011−187401A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54205(P2010−54205)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】