説明

扁平部材用の整列装置

【課題】扁平部材を搬送しながら姿勢変換をする際に扁平部材に擦り傷が発生し難い扁平部材用の整列装置を提供すること。
【解決手段】扁平部材を移送する間にその姿勢を水平から略直立に変換し且つ整列させる扁平部材用の整列装置が、螺旋溝13を有するスクリュー11と、該スクリュー11をその軸心12を中心に回転させる駆動手段とを具備し、スクリュー11の螺旋溝13は、横長の矩形の断面形状を有する水平移送区間14と、搬送方向の上流側の辺15aが傾斜した略三角形及び略三角形から変化した略台形の断面形状を有する姿勢変換区間15と、縦長の矩形の断面形状を有する直立整列区間16とを含み、姿勢変換区間15における螺旋溝13の断面形状の略三角形の下流側の辺が斜辺15bである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用エアコンの熱交換器に使用される扁平チューブのような扁平部材を搬送して所定間隔に整列させる扁平部材用の整列装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱交換器に使用される扁平チューブを比較的高速で移動させながら姿勢を変換して整列させる整列装置が特許文献1に記載されている。特許文献1では、スクリュー(回転シャフト)の外周面に、断面形状及びピッチが変化する螺旋溝が形成されており、このスクリューを駆動モータによって回転させることにより、前記螺旋溝上に水平に載置された扁平チューブを搬送するとともに扁平チューブの姿勢を水平から直立に徐々に起こし、最終的には直立にされた扁平チューブを所定の間隔を空けて整列させている。
【0003】
図5は、特許文献1に記載された整列装置で用いられているスクリューと同等のものの縦断面図である。スクリューに形成された螺旋溝53の断面形状は、扁平チューブをほぼ水平姿勢で搬送する基端側の区間54では幅が比較的広く深さが比較的浅い横長の矩形であり、姿勢変換を行う中間の区間55では搬送方向の上流側が斜辺で下流側がスクリューの軸心52に垂直な辺である略直角二等辺三角形であり、ほぼ直立にされた扁平チューブを整列させる先端側の区間56では姿勢変換を行う区間55の溝の深さと同等の深さを有する縦長の矩形となっている。
【0004】
図6及び図7は姿勢変換を行う区間での扁平チューブ40の状態を示した図であり、図6は扁平チューブ40の横断面を投影する方向で見た正面図であり、図7は平面図である(分かりやすくするために螺旋溝53は一周分に満たない一部のみを抽出して図示する)。このスクリュー51を用いた場合、扁平チューブ40が移動して姿勢変換を行う区間に進入すると、前記略直角三角形の上流側の斜辺55aの傾斜が急になるにつれて、扁平チューブ40の姿勢は水平状態から次第に起こされてゆくこととなる。そして扁平チューブ40は、比較的高速で移動しているため、この区間の概ね後半に至ると前記略直角三角形の下流側の辺55bで表される螺旋溝の下流側の鉛直面に倒れ込んで、扁平チューブの側面と螺旋溝の下流側の鉛直面のエッジとが接触して扁平チューブに擦り傷が発生することがあった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−43149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述した従来技術の課題に鑑みてなされたもので、扁平部材を搬送しながら姿勢変換をする際に扁平部材に擦り傷が発生し難い扁平部材用の整列装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明は、扁平部材用の整列装置(10)が、略円筒形状の軸心(12)に沿って螺旋状に延びる螺旋溝(13)を有するスクリュー(11)と、該スクリュー(11)を軸心(12)を中心に回転させる駆動手段(19)とを具備し、螺旋溝(13)に水平に載置された扁平部材(40)を移送する間に扁平部材(40)の姿勢を水平から略直立に変換し且つ整列させ、スクリュー(11)の螺旋溝(13)は、扁平部材(40)をほぼ水平姿勢で移送する水平移送区間(14)にして、横長の矩形の断面形状を有する水平移送区間(14)と、扁平部材(40)を水平姿勢からほぼ直立した姿勢に変化させながら移送する姿勢変換区間(15)にして、搬送方向の上流側の辺(15a)が傾斜した略三角形及び該略三角形から変化した略台形の断面形状を有する姿勢変換区間(15)と、ほぼ直立にされた扁平部材(40)を所定間隔で離間して整列させる直立整列区間(16)にして、縦長の矩形の断面形状を有する直立整列区間(16)とを含み、姿勢変換区間(15)における螺旋溝(13)の断面形状の略三角形の搬送方向の下流側の辺が斜辺(15b)であることを特徴としている。
【0009】
このように、姿勢変換区間の斜辺(15b)で表されるとおり螺旋溝(13)の下流側の面が傾斜しているので、扁平チューブ(40)が姿勢変換中に下流側の面に倒れ込んだ場合においても扁平チューブ(40)の側面と下流側の面のエッジとが接触することがなく、したがって扁平チューブ(40)の擦り傷の発生を防ぐことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、姿勢変換区間(15)において、螺旋溝(13)のピッチが次第に短縮するように変化するとともに、略三角形状の下流側の斜辺(15b)の軸心(12)に対する傾斜角度が次第に増大するように変化することを特徴としている。これにより、姿勢変換区間(15)の長さを短縮することができ、また短縮した場合でも扁平チューブ(40)の擦り傷の発生を防ぐことができる。
【0011】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施例に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の扁平部材用の整列装置10の実施例を模式的に示す正面図であり、この図には、本発明の整列装置10と協働して用いられるスタッカ装置20及び整列搬送装置30が破線によって示されている。
【0013】
本発明による扁平部材用の整列装置10を説明する前に、前記スタッカ装置20と整列搬送装置30について説明する。スタッカ装置20は、扁平な横断面を有する長尺状の多数の扁平部材40を水平に積み重ねた状態で保持しており、その下端に設けられた排出口21から扁平部材40を整列装置10の後述するスクリュー11の基端側に水平姿勢で載置することができる。また整列搬送装置30は、スクリュー11の先端側でほぼ直立にされて整列された扁平部材40をスクリュー11から受取り搬送する装置である。このために整列搬送装置30は、駆動モータ31により回転軸線32周りに回転される一対の回転シャフト33を具備しており、この回転シャフト33の周面には回転軸線周りに螺旋状に延びるシャフト螺旋溝34が形成されている。図1では一対の回転シャフト33のうちの1本が描かれているが、一対の回転シャフト33は、扁平部材40の両端部がシャフト螺旋溝34に係合する間隔で平行に離間して配置されている。一対の回転シャフト33はそれが回転することにより、スクリュー11で直立し一定間隔で離間された扁平部材40を受取り、その状態を維持しながら搬送することができる。
【0014】
なお、本実施例では、扁平部材40は、熱交換器等で使用される、横断面の輪郭が長円形状を呈する扁平チューブ40であるが、扁平部材40は金属板又はプラスチック板のような中実の板状部材等であってもよい。
【0015】
本発明による整列装置10は、扁平チューブ40を搬送すると共にその姿勢を水平からほぼ直立にまで変換するための一対の略円筒形状のスクリュー11と、前記一対のスクリュー11のそれぞれの基端側に連結されスクリュー11をその軸心12周りに回転させる駆動モータ19とを具備している。スクリュー11は、扁平チューブ40を搬送し且つ姿勢変換をするために、その周面には軸心12に沿って螺旋状に延びる螺旋溝13が形成されていて、この螺旋溝13の断面形状は、詳細には後述するが、スクリュー11の基端側から先端側に進むにつれて、横長の矩形、不等辺三角形、略台形、及び縦長の矩形と変化している。また、図1では一対のスクリュー11のうちの1本のみが示されているが、図示されない他の1本が、図示された1本に平行に離間されて配置されている。その結果、扁平チューブ40は2本のスクリュー11によって支持されている。なお、上記図示されない他の1本は、図示された1本と平行に離間されて配置されていなくてもよく、ハの字に配置されるものであってもよい。この場合、スクリューのねじれ方向は右ねじれと左ねじれの組合せとなる。
【0016】
なお、本実施例ではスクリュー11は2本設けられているが、扁平チューブ40を例えば1本のスクリューと平滑で摩擦の小さな面とで支持すること、あるいは3本以上のスクリューで支持することも可能である。
【0017】
次に、スクリューの縦断面図である図2を参照してスクリュー11をより詳細に説明する。スクリュー11の螺旋溝13は、右ねじの方向でねじれており、また3つの区間、即ち扁平チューブ40をほぼ水平姿勢で搬送する水平移送区間14と、水平姿勢からほぼ直立の姿勢に回転させる姿勢変換区間15と、ほぼ直立の姿勢で所定の間隔をあけて整列させる直立整列区間16とを含んでいる。螺旋溝13の断面形状は一定ではなく、搬送方向の上流側から下流側に進むにしたがって以下のように変化している。つまり、水平移送区間14では扁平チューブ40を水平に載置できるように溝幅が比較的広く溝深さが比較的浅い横長の矩形であり、姿勢変換区間15では、上流側の斜辺15a及び下流側の斜辺15bを有する三角形から、前記下流側の斜辺15bが軸心12に垂直な辺15cに変化した略台形に変化し、直立整列区間16では、縦長の矩形に変化している。
【0018】
ここで、姿勢変換区間15における螺旋溝13の断面形を示す前記不等辺三角形の上流側の斜辺15aにより表される面を案内面15a、及び下流側の斜辺15bによって表される面を位置決め面15bと呼称すると、案内面15aは扁平チューブ40を回転させるために次第に傾斜が急になるとともに、位置決め面15bも傾斜が急になってゆく。また、姿勢変換区間15において、溝深さが次第に深くなる一方で、溝幅が次第に狭まり螺旋溝13のピッチが次第に短くなるように変化している。一方、直立整列区間16における螺旋溝13のピッチは一定である。
【0019】
前述のような螺旋溝13が形成されているので、水平移送区間14で水平に螺旋溝13上に載置された扁平チューブ40は、スクリュー11が駆動モータ19によって図1の矢印の方向に回転されると、図の右方へ移送されて、姿勢変換区間15に進入する。姿勢変換区間15では、扁平チューブ40は、前記案内面15aの傾斜の増大にしたがって水平姿勢から右回りに回転して次第に起こされてゆく。
【0020】
図3及び図4は、姿勢変換区間15における扁平チューブ40を示した図であり、図3は図1と同一の投影方向で見た正面図で、図4は上から見た平面図である(分かりやすくするために螺旋溝13は一周分に満たない一部のみを抽出して図示する)が、姿勢変換区間15の概ね後半の領域に扁平チューブ40が進入すると、扁平チューブ40の移動速度が比較的高速であるため、扁平チューブ40は図3及び4に示されるように、位置決め面15b側に倒れて扁平チューブ40の側面が位置決め面15bに接することが起こる。そのような状態になったときでも、特に図4に示されているように、螺旋溝13の位置決め面15bは前述したとおりスクリューの軸心12に垂直ではなく傾斜が付いているために、扁平チューブ40の側面が位置決め面15bの外周部のエッジに接触することはない。
【0021】
姿勢変換区間15の最終段階でほぼ直立にされた扁平チューブ40は、直立整列区間16に進入するとほぼ直立状態で一定のピッチで整列され、前記整列搬送装置30に引き渡される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の扁平部材用の整列装置の実施例を模式的に示す正面図である。
【図2】前記扁平部材用の整列装置のスクリューの縦断面図である。
【図3】螺旋溝の姿勢変換区間における扁平チューブを示した正面図である。
【図4】螺旋溝の姿勢変換区間における扁平チューブを示した平面図である。
【図5】従来技術の整列装置で用いられているスクリューの縦断面図である。
【図6】従来技術の整列装置で用いられているスクリューの螺旋溝の姿勢変換区間における扁平チューブを示した正面図である。
【図7】従来技術の整列装置で用いられているスクリューの螺旋溝の姿勢変換区間における扁平チューブを示した平面図である。
【符号の説明】
【0023】
11 スクリュー
12 軸心
13 螺旋溝
14 水平移送区間
15 姿勢変換区間
15a 案内面
15b 位置決め面
16 直立整列区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形状の軸心(12)に沿って螺旋状に延びる螺旋溝(13)を有するスクリュー(11)と、該スクリュー(11)を前記軸心(12)を中心に回転させる駆動手段(19)とを具備し、前記螺旋溝(13)に水平に載置された扁平部材(40)を移送する間に前記扁平部材(40)の姿勢を水平から略直立に変換し且つ整列させる扁平部材用の整列装置(10)であって、
前記スクリュー(11)の前記螺旋溝(13)は、前記扁平部材(40)をほぼ水平姿勢で移送する水平移送区間(14)にして、横長の矩形の断面形状を有する水平移送区間(14)と、前記扁平部材(40)を水平姿勢からほぼ直立した姿勢に変化させながら移送する姿勢変換区間(15)にして、搬送方向の上流側の辺(15a)が傾斜した略三角形及び前記略三角形から変化した略台形の断面形状を有する姿勢変換区間(15)と、ほぼ直立にされた前記扁平部材(40)を所定間隔で離間して整列させる直立整列区間(16)にして、縦長の矩形の断面形状を有する直立整列区間(16)とを含み、
前記姿勢変換区間(15)における前記螺旋溝(13)の断面形状の前記略三角形の搬送方向の下流側の辺が斜辺(15b)であることを特徴とする扁平部材用の整列装置(10)。
【請求項2】
前記姿勢変換区間(15)において、前記螺旋溝(13)のピッチが次第に短縮するように変化するとともに、前記略三角形状の前記下流側の斜辺(15b)の前記軸心(12)に対する傾斜角度が次第に増大するように変化することを特徴とする、請求項1に記載の扁平部材用の整列装置(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−19086(P2008−19086A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194368(P2006−194368)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】