説明

扉用錠装置

【課題】扉用錠装置に関し、解錠動作の速度を高めることによって使い勝手を向上させることを目的とする。
【解決手段】
デッドボルト駆動用アクチュエータ1により施解錠位置間で駆動され、施錠位置において扉2の開放操作を規制するデッドボルト3を備えた電気錠部4と、
利用者が所持し、応答要求信号に対して認証用ID信号を出力する携帯器5に所定時間間隔で応答要求信号を出力し、受信したID信号に対する認証結果を格納する先読み部6と、
前記先読み部6への認証成立情報の格納を条件に電気錠部4を解錠駆動し、前記先読み部の格納情報が認証不成立に変化するまで解錠状態を維持した後、施錠状態に移行させる電気錠制御部7と、
扉2から突出して扉枠8に係止し、扉2への没入状態で扉枠8との係止状態を解除するラッチ9を備えたラッチ部10により構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉用錠装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータにより施解錠駆動される扉用錠装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、扉用錠装置は、扉枠に進退するデッドボルトを備えた電気錠と、ソレノイド等により駆動されるラッチボルトとを有し、デッドボルトとラッチボルトの双方が突出した施錠状態の解錠は、利用者による電気錠への解錠操作と、タッチセンサ等の人体検知センサによる人体検知により行われる。
【特許文献1】特開平11-293975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来例において、解錠動作には、利用者の認証、認証成立後のデッドボルトの引き込み駆動、ラッチボルトの解除駆動を行う必要があり、利用者はこれらの動作が完全に完了するまで扉の前で待っていなければならず、使い勝手が悪いという欠点がある。
【0004】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、解錠動作の速度を高めることによって使い勝手を向上させた扉用錠装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
扉用錠装置は電気錠部4に加え、先読み部6と、電気錠制御部7と、ラッチ部10とを有し、同一ケース内に、あるいは扉2周辺に分散配置される。
【0006】
電気錠部4はデッドボルト駆動用アクチュエータ1により施解錠位置間で駆動されるデッドボルト3を備え、該デッドボルト3が施錠位置にあるとき、扉2から突出して扉枠8に係止し、扉2の開放操作を規制する。
【0007】
先読み部6は、利用者が所持する携帯器5に対して応答要求信号を所定時間間隔で出力し、応答要求信号に対する携帯器5からのレスポンスを受信する。レスポンスには、携帯器毎に与えられた携帯器固有の認証用ID信号が含まれ、当該認証用ID信号が予め認証成立可能なIDとして登録されたものであるか否かが格納される。先読み部6での認証可否情報は、応答要求信号に対するレスポンスに対応して書き替えられる。また、応答要求信号の送出間隔は、固定したものであっても、あるいは巡回動作により認証可能な携帯器5が検出された場合には、携帯器5が検出されなくなるまで、巡回間隔を短くするように、可変のものであってもよい。
【0008】
電気錠制御部7は、先読み部6が認証成立信号を保持したとき、すなわち認証可能な携帯器5が先読み部6での交信可能範囲に進入してきたときにデッドボルト駆動用アクチュエータ1を駆動し、電気錠部4を解錠状態に遷移させる。解錠状態は、先読み部6における認証成立信号が消失するまで維持され、その後、再びデッドボルト駆動用アクチュエータ1を駆動して電気錠部4を施錠状態に復帰させる。
【0009】
認証可能な携帯器5が交信可能範囲に進入したタイミングで電気錠部4を解錠状態にする本発明において、扉2の前で解錠操作を行い、携帯器5に対する認証、デッドボルト3の解錠動作完了を待つ場合に比して、早く扉2の開放操作を行うことができるために、利便性が向上する。
【0010】
また、置き忘れの携帯器5による誤動作の防止のためにレスポンス信号の出力をモーション検出部等による動き検出を条件とする携帯器5を使用する場合、静止した状態で行われることの多い扉2の前での認証動作では、携帯器5がレスポンス信号を出力しない可能性がある。これに対し、携帯器5交信開始時から扉2までの移動は携帯器5の動きを必然的に伴うために、この期間で認証動作を終了させる本発明においては、上述した問題の発生を確実に防止できる。
【0011】
さらに、電気錠部4は、先読み部6における認証成立信号が消失することにより自動的に施錠状態に復帰するために、例えば、一旦交信可能エリアに進入した後、入室することなく再び交信可能エリアから退出した場合であっても電気錠部4が解錠状態のまま放置させる不具合が発生しない。認証成立信号の消失は、先読み部6における認証可否信号の書き替え動作時に認証可能携帯器5が交信範囲内に存在しない場合に発生し、上述したように、入室前の待避に加え、入室による交信遮断、あるいは入室後に携帯器5を置くことによるモーション停止等、種々の設定された条件の満足によりもたらされる。
【0012】
また、ラッチ部10は、ラッチ9を扉枠8に係止させることにより、電気錠部4におけるデッドボルト3の係止解除によって扉2が風圧等により妄りに開放されることを防止する。
【0013】
さらに、扉用錠装置には、扉2または扉2近傍に設置され、携帯器5との交信距離に比して短い検出距離内で操作者を検出する操作者検出部11を含めることができる。この場合、ラッチ部10は、
ロック位置においてラッチ9の没入操作を規制し、ロック解除位置においてラッチ9の没入を許容するラッチストッパ12と、
電気錠部4が解錠状態であること、および操作者検出部11における操作者検出を条件としてラッチストッパ12をロック解除位置に駆動するラッチ駆動用アクチュエータ13とを有して構成される。
【0014】
以上のように構成すると、ラッチストッパ12の動作を電気錠部4の動作に関連付けることができ、結果、電気錠部4が施錠状態にあるとき、ラッチ9の没入も規制されるために、二重施錠の状態になり、防犯性能が向上する。また、ラッチストッパ12の解除タイミングを、携帯器5との交信距離に比して短い検出距離内で操作者を検出する操作者検出部11での操作者検出により決定することによって、利用者の扉2の直近位置への移動に伴ってラッチ9を没入操作することが可能な状態になっているために、利用者は何等の動作完了を待たされることなく直ぐに開扉操作を行うことができる。
【0015】
ラッチ9には、扉2からの進退移動のみが許容されるものに加え、扉枠8との当接面が開扉軌跡に直交する係止姿勢と、開扉軌跡に対して斜行し、開扉操作による没入方向の分力が発生する没入可能姿勢との間を回転自在な反転ラッチ9の双方を使用することができる。並進移動のみによって扉枠8との係止が解除されるラッチ9において、ラッチ9の没入操作は、ハンドル、あるいは扉2表面に設置された可動操作部材への操作が必要となるが、反転ラッチ9においては、ラッチストッパ12の解除をラッチ駆動用アクチュエータ13により行うことによって、扉2を押すだけで開扉操作を行うことができる。この結果、扉2に可動操作部材を配置する必要がないために、構造が簡単になる。
【0016】
上記操作者検出部11には、例えば赤外線近接センサ等により形成されるヒトセンサが使用できるが、ラッチ部10に反転ラッチ9を使用する場合には、扉操作ハンドル14に組み込まれた接触センサ11を使用するのが望ましい。すなわち、反転ラッチを使用する場合、ラッチストッパ解除により扉2は風圧等によっても開放可能な状態となるが、扉操作ハンドル14に組み込まれた接触センサ11を使用すると、扉操作ハンドル14に触れた状態でのラッチストッパ12の解除が保証される。接触センサ11には、通常の押しボタンスイッチに加え、静電容量センサを使用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電気錠部への解錠動作は認証可能な携帯器が交信エリア内に進入したことによって開始され、利用者が扉の前に立ったときにはすでにデッドボルトは解錠状態となっているために、解錠動作の速度が早くなり、使い勝手を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に示すように、扉用錠装置は、電気錠部4と、ラッチ部10と、電気錠部4、およびラッチ部10の動作を制御する錠制御部15とを有する。図1には、電気錠部4、ラッチ部10、および錠制御部15を扉2に固定した場合を示すが、錠制御部15は、扉2以外に配置することもできる。
【0019】
また、扉2には、扉2の開放操作を行う際の手掛けとなる扉操作ハンドル14と、施解錠操作を行う際の施錠ボタン16、および解錠ボタン17が配置され、扉操作ハンドル14の適宜箇所には、操作者検出部11としての静電容量センサが配置される。
【0020】
電気錠部4は、上記錠制御部15により制御されて施解錠駆動されるデッドボルト駆動用アクチュエータ1と、デッドボルト駆動用アクチュエータ1により扉枠8に向けて施解錠位置間を進退駆動され、扉2から一端が突出する施錠位置において扉枠8に係止して扉2への開放操作を規制するデッドボルト3とを錠ケース18内に固定して形成される。
【0021】
デッドボルト3の施解錠位置を検出するために、扉2には解錠状態検出スイッチが配置され、デッドボルト3が扉2内に没入する解錠位置にあると、解錠状態検出信号として”ON”を出力する。
【0022】
一方、ラッチ部10は、ラッチケース19内に収容されるラッチ9、ラッチストッパ12、およびラッチ駆動用アクチュエータ13とを有する。ラッチ9は後に詳述するように、反転ラッチであり、閉扉時の扉枠8との係止状態の維持、解除をラッチ駆動用アクチュエータ13により駆動されるラッチストッパ12のセット、セット解除操作により制御でき、閉扉状態でラッチストッパ12をロック位置に駆動してセットすると、ラッチ9の扉枠8内への没入が規制され、実質的に扉2を施錠したのと同様の状態となる。これに対し、ラッチストッパ12をロック解除位置に移動させたセット解除状態で扉2に開放操作力を与えると、ラッチ9が所定角度回転した後、扉2内に没入し、扉枠8との係止が解除される。
【0023】
錠制御部15は、携帯器5が発信する認証用IDの認証を条件として電気錠部4の施解錠状態を遷移させる。図2に示すように、携帯器5は、制御部20(CPU)により制御されるRF送出部21、LF受信部22、携帯器固有の認証用IDが格納されるID記憶部23、施錠ボタン操作検出部24、および解錠ボタン操作検出部25を有する。
【0024】
携帯器5には、利用者により操作可能な施錠ボタン26と解錠ボタン27とが配置されており、いずれかへの操作が施解錠ボタン操作検出部25により検出されると、CPU20は、ID記憶部23内の認証用ID、および施解錠の区別を含む認証用無線信号(認証用ID信号)を生成してRF送出部21に出力し、アンテナ28から発信する。
【0025】
また、携帯器5は、扉用錠装置から出力される応答要求信号を受信するLF受信部22を有しており、LF受信部22が応答要求信号を受信すると、CPU20は、携帯器5側の施解錠ボタン操作による交信開始時と同様に認証用ID信号をセットし、RF送出部21から出力する。
【0026】
上記錠制御部15は、アクティブモード、パッシブモード、および先読みモードにより電気錠部4、ラッチ部10を制御する。アクティブモードは、利用者が携帯器5に配置された施解錠ボタン27を操作することによる施解錠操作モードであり、携帯器5から出力された認証用ID信号に対する認証が成立すると、操作されたボタン種に応じて施解錠操作が行われる。
【0027】
パッシブモードは、扉2側に配置された施解錠ボタン27を操作することによる施解錠操作モードであり、施解錠ボタン27を操作すると、錠制御部15は携帯器5に応答要求信号を出力し、これに応答した携帯器5から出力される認証用ID信号に対する認証成立を条件に施解錠操作が行われる。
【0028】
これに対し、先読みモードは、錠制御部15から所定時間間隔で出力される応答要求信号に基づく解錠操作モードであり、利用者による明示的な操作を要することなく解錠操作が開始される点でアクティブモード、およびパッシブモードと相違する。
【0029】
図3に錠制御部15の機能ブロック図を示す。錠制御部15は、制御部(CPU29)に接続されるID記憶部31、RF受信部31、認証部32、施錠ボタン操作検出部33、および解錠ボタン操作検出部25を有する。扉2に配置された施解錠ボタン16、17への操作が施錠ボタン操作検出部33、あるいは解錠ボタン操作検出部34により検出されると、パッシブ動作が開始される。パッシブ動作が開始されると、CPU29は応答要求信号をLF送出部35にセットし、アンテナ36を経由して携帯器5に送信する。応答要求信号には、操作された施解錠ボタン16、17に対応する施解錠識別信号が付与され、応答要求信号出力後、CPU29は所定時間、RF受信部31からの出力を監視して携帯器5からのレスポンスを待ち、携帯器5からの認証用ID信号を受信すると、認証部32に出力する。
【0030】
認証用ID信号を受領した認証部32は、認証用IDがID記憶部31内に存在するか否かを判定し、存在する場合に認証成立信号をCPU29に出力する。認証成立信号を受領したCPU29は、上記施解錠種信号に基づき、デッドボルト制御部(電気錠制御部7)に施錠、あるいは解錠信号をセットし、デッドボルト制御部7に接続されるデッドボルト駆動用アクチュエータ1を駆動する。
【0031】
また、上述したパッシブ動作、および後述する先読み動作が行われていないときに、RF受信部31に認証可能な認証用ID信号を受信した場合、アクティブ動作が開始する。アクティブモード下で認証用ID信号を受信したCPU29は、上述したパッシブ動作と同様に、認証部32での認証成立を条件に、デッドボルト3を駆動する。
【0032】
さらに、錠制御部15は先読み部6を有する。先読み部6は、所定期間間隔で応答要求信号の出力タイミング情報を出力する計時部37を有し、出力タイミング情報を受信したCPU29は、応答要求信号をセットしてLF送出部35から出力し、パッシブ動作と同様に、認証用ID信号の認証に備える。
【0033】
応答要求信号に対する認証が成立すると、電気錠部4の駆動を行い、さらに、認証成立信号を先読み部6の認証結果格納部38に格納する。認証結果格納部38は、先読みモード下で認証可否信号が出力されるたびに、最新値に書き替えられる。
【0034】
また、錠制御部15には、扉2の開閉状態を検出するための扉開閉検出部40が設けられ、扉2側に固定された扉開閉検出スイッチ39に接続される。開扉状態での施解錠、とりわけ電気錠部4に対する施錠操作は、閉扉操作に伴うデッドボルト3の破損の原因となるために、錠制御部15による制御は、扉開閉検出部40における扉閉信号の検出を条件とする。
【0035】
さらに錠制御部15は、ラッチ制御部41と、扉操作ハンドル14に組み込まれた接触センサ11(静電容量センサ)に接続されるハンドル操作検出部43とを備える。ハンドル操作検出部43が利用者の扉操作ハンドル14への操作を検知すると、ラッチ制御部41は、解錠状態検出スイッチ43の出力を監視する解錠状態検出部44の状態からデッドボルト3の状態を検出し、デッドボルト3の解錠位置への移動完了が確認されると、ラッチ駆動用アクチュエータ13にロック、ロック解除信号を出力し、ラッチストッパ12を駆動する。
【0036】
ラッチストッパ12のロック解除動作に先立ってデッドボルト3の移動済み状態を確認することによって、電気錠部4を施錠状態から解錠状態に移行させる際のデッドボルト3の背圧による作動不良を防止することができる。
【0037】
図4、5、6に上記錠制御部4の動作を示す。錠制御部15における制御は、先読み部6における所定時間間隔での応答要求信号の出力、これに対する携帯器5からのレスポンスの待ち受け、レスポンスがあった場合の認証、および電気錠部4の駆動動作という一連の動作を行いつつ、動作途中に利用者からの明示的な施解錠指示、すなわち、アクティブ、あるいはパッシブ操作があった場合、これらを優先的に処理するように進められる。
【0038】
まず、運用開始によりCPU29は扉開閉検出部40の出力を監視する(ステップS1)。ステップS1で扉2閉信号が検出されると、パッシブ操作の検出のために、施錠ボタン操作検出部33、および解錠ボタン検出部34の出力を確認し(ステップS2、S3)、これらの出力がない場合、RF受信部31の出力確認、RF受信部31の出力があった場合、受信した認証用ID信号の認証の可否を判定してアクティブ操作を検出する(ステップS4)。なお、この実施の形態においては、パッシブ操作による解錠命令は、扉2の解錠ボタン17への操作によって行う場合が示されているが、扉操作ハンドル14が先読み動作中のラッチストッパ解除動作のトリガとして使用されていないタイミング、すなわち、後述するように、解錠状態検出スイッチ43が解錠状態を検出していない場合には、扉操作ハンドル14を解錠ボタンとして使用することもできる。
【0039】
これらステップS2、3、4において利用者による明示的な施解錠操作が検出されなかった場合、図示しないルーチンにより所定時間間隔をおいて出力されている先読み動作用の応答要求信号に対する携帯器5の応答を検出することにより、錠制御部15との交信エリアの利用者の進入を検出する(ステップS5)。
【0040】
ステップS5で先読み動作による携帯器5の認証が行われると、認証結果格納部38に認証成立情報を格納するとともに、デッドボルト駆動用アクチュエータ1を駆動して電気錠部4を解錠状態に移行させ(ステップS6)、次いで、解錠スイッチ検出部により解錠動作の完了を検出する(ステップS7)。ステップS7で解錠動作の完了が確認されると、まず、利用者による明示的な反対操作、すなわち、アクティブ、あるいはパッシブ操作による施錠操作がないことを確認した後(ステップS8)、静電容量センサ11の出力を検知する(ステップS9)。ステップS8で施錠操作が検出されると、図6に示す電気錠部施錠ルーチン(ステップS4-12)が実行される。
【0041】
また、ステップS9において扉操作ハンドル14への操作が検出されると、ラッチ駆動用アクチュエータ13を駆動してラッチストッパ12のロック状態を解除し(ステップS10)、解除時間を制限するためのタイマーをセットする。ステップS11でセットした時間が経過すると(ステップS12)、扉開閉検出部40によって扉2が開いていることを確認した後(ステップS13)、ラッチストッパ12をロック状態に移行させ(ステップS14)、開始ステップに戻る。
【0042】
一方、ステップS9で扉操作ハンドル14への操作が検出されなかった場合には、認証結果格納部38での結果情報が認証不成立情報で書き替えられるのを待って(ステップS9-1)、電気錠部4を施錠状態に移行させた後(ステップS9-2)、開始ステップに戻る。
【0043】
これに対し、ステップS2で扉2の施錠ボタン操作が検出されると、CPU29はLF送出部35に応答要求信号をセットして携帯器5に応答要求信号を出力する(ステップS2-1)。この応答要求信号に対する携帯器5からのレスポンスがあり、認証部32での認証が成立すると(ステップS2-2)、電気錠部施錠ルーチン(ステップS4-12)が実行され、認証が成立しなかった場合には、開始ステップ(ステップS1)が実行される。
【0044】
また、ステップS3で扉2の解錠ボタン操作が検出されると、携帯器5に応答要求信号を出力した後(ステップS3-1)、この応答要求信号に対する携帯器5からのレスポンスを待ち(ステップS3-2)、携帯器5からの認証用IDに対する認証が成立しなかった場合には、開始ステップ(ステップS1)が実行される。これに対し、携帯器5の認証が成立すると、ステップS6以下の処理が実行される。
【0045】
さらに、ステップS4でアクティブ操作が検出されると施解錠種を判定し(ステップS4-1)、施錠要求であるときには電気錠部施錠ルーチン(ステップS4-12)を実行する。また、ステップS4-1で解錠要求が検出された場合には、電気錠部4を解錠駆動し(ステップS4-2)、デッドボルト3の解錠位置への移動を確認した後(ステップS4-3)、扉操作ハンドル14の操作によるラッチ部10の解除動作可能時間を設定するために計時を開始し(ステップS4-4)、タイムアップと同時に電気錠部4を施錠状態に復帰させる(ステップS4-5、4-6)。
【0046】
扉操作ハンドル14の静電容量センサ検出ルーチン内では、タイムアップ前の明示的な施解錠処理の検出が行われ、パッシブ操作による施錠要求が検出された場合(ステップS4-7、4-7-1、4-7-2、4-7-3)には電気錠部4を施錠状態に移行させた後(ステップS4-7-4)、開始ステップに戻り、アクティブ操作による施錠操作が検出された場合には(ステップS4-9、S4-10、S4-11)、電気錠部施錠ルーチン(ステップS4-12)が実行される。
【0047】
さらに、計時ルーチン中に解錠要求があった場合には(ステップS4-7-3、S4-10)、タイマーを設定し直すことにより自動施錠(ステップS4-6)までの時間が延長される。
【0048】
また、上記計時ルーチン内で扉操作ハンドル14が操作されて静電容量センサ11により検出されると(ステップS4-8)、ステップS10以下が実行されてラッチストッパ12が解除される。
【0049】
図6に示すように、上記電気錠部施錠ルーチンは、電気錠部4への施錠駆動により開始され(ステップS4-12)、次いで、利用者による明示的な施解錠操作の検出時間を設定するためのタイマーが設定される(ステップS4-13)。タイマーによる設定時間内にパッシブ操作(ステップS4-15-1、S4-15-2、S4-17)、あるいはアクティブ操作(ステップS4-16、S4-17)が検出され、施錠要求である場合には計時を再開して実質的にタイマーを延長し、解錠要求である場合には、ステップS4-2から始まる電気錠部4の解錠動作ルーチンが実行される。
【0050】
図7以下に電気錠部4とラッチ部10の詳細を示す。図示の例は、電気錠部4の錠ケース18と、ラッチ部10のラッチケース19を連結して形成されたものが示されているが、双方に機械的伝力関係はないために、離接して扉2に固定することも可能である。
【0051】
図7、8に示すように、電気錠部4のデッドボルト駆動用アクチュエータ1にはモータが使用され、モータ1の駆動力は、モータ1とともにギアボックス45内に収容されるギア列45、およびラック47を介してデッドボルト操作カム48に伝達される。デッドボルト操作カム48には、アーム48aが突設されるとともに、中心部には、図外のシリンダ錠、あるいはサムターン装置による手動施解錠操作が可能なように、シリンダ錠等の連結孔48bが形成される。
【0052】
また、電気錠部4のデッドボルト3はU字断面形状を有し、上記デッドボルト操作カム48のアーム48aの作動領域に干渉する位置に施錠用被押動部3aと、解錠用被押動部3bとが、ギアボックス45に対向する位置にストッパ段部3cが各々一体形成される。
【0053】
図8(a)に示すようにデッドボルト3が錠ケース18から突出する施錠位置からモータ1を解錠方向に駆動すると、デッドボルト操作カム48が時計回りに回転する。デッドボルト操作カム48の回転によりアーム48aが解錠用被押動部3bに干渉した後、後方に押し出してデッドボルト3を解錠位置に移動させる。
【0054】
この解錠状態からモータ1を施錠方向に駆動すると、図8(a)に示すように、デッドボルト操作カム48が反時計方向に回転する。デッドボルト操作カム48の回転に伴ってアーム48aが施錠用被押動部3aを押し付け、デッドボルト3を施錠位置に移動させる。
【0055】
また、デッドボルト3には鎌部材49が枢軸50周りに回転自在に連結され、図7(b)に示すように、鎌部材49は施錠状態において扉枠8に開設されたストライク開口8aに係止し、扉枠8が図7(b)に示すF方向に引張られたときのデッドボルト3の抜去を防止する。この鎌部材49は一端部に作動突部49aを有しており、デッドボルト3が施錠位置から解錠位置に移動するときに錠ケース18の干渉突部18aに当接して鎌部材49をストライク開口8aとの係止解除位置側に回転させる。
【0056】
デッドストッパ51のギアボックス45への接近は、デッドストッパ51に固定された永久磁石51aと、ギアボックス45内に固定されたホール素子からなる解錠状態検出スイッチ43により検出され、デッドボルト3が解錠状態にあることが検知される。
【0057】
図9、10に示すように、ラッチ部10のラッチケース19には、前方と上下側壁が開放されるともに、後端がバネ受け壁52により閉塞されたラッチ保持筒53が固定され、ラッチ9はこのラッチ保持筒53内に前後移動自在に収容される。ラッチ9は、前端部にラッチ9の移動方向に平行な係止面と、この係止面に鋭角で交差するストッパ面とを有し、上下が水平面からなる三角柱形状のブロック部9aを備え、ブロック部9aをラッチ保持筒53の前方開口53cから露出させた姿勢でラッチ保持筒53内に挿入される。
【0058】
また、ラッチ9にはラッチ保持筒53の上下側壁開口53a、53b内に張り出すストッパアーム9b、9bが後方に向けて突設され、これら一対のストッパアーム9b、9bに挟まれるようにしてスライダ54がラッチ保持筒53内に前後移動自在に配置される。スライダ54と上記バネ受け壁52との間には圧縮スプリング55が装着され、ラッチ9は、スライダ54により前方に付勢される。図10(b)に示すように、圧縮スプリング55は、ストッパ面寄りに偏位して配置される。
【0059】
さらに、ブロック部9aの上下面にはラッチ保持筒53の上下側壁開口53a、53b内に突出するカム突起9dが突設され、このカム突起9dに正対するように、上下側壁開口53a、53bの前端面にはカム受け面53dが形成される。
【0060】
図11(a)に示すように、ラッチ9は扉2の開放方向(図11(a)における矢印O方向)に係止面を向けた係止姿勢で扉枠8側のストライク開口8aに係止される。図7(a)に示すように、ラッチ9とデッドボルト3とが各々ストライク開口8a、8bに係止した状態で、ラッチ9と対応するストライク開口8bとの開扉方向の間隙(δ0)は、デッドボルト3と対応するストライク開口8aとの間隙(δ1)より小寸に設定されており、開扉操作が行われた場合、ラッチ9がデッドボルト3に先立ってストライク開口8bに当接する。
【0061】
解錠状態において、図11(a)に示すストライク開口8bへの係止状態から扉2に開放方向の操作力が付与されると、ラッチ9の係止面はストライク開口8bから矢印Oと反対方向の力を受ける。この結果、ラッチ9は、図11(b)に示すように、ストッパ面がラッチ保持筒53の内壁面に当接するまで時計回りに回転して没入可能姿勢に移行する。この状態からさらに開扉操作を続けると、開扉方向線に対して斜めとなった係止面はストライク開口8aの周縁からラッチ9没入方向の分力を受け、ラッチ9は圧縮スプリング55の反力に抗して扉2内に没入してストライク開口8bから脱離する(図11(c)参照)。
【0062】
この後、扉2が扉枠8から完全に離れると、圧縮スプリング55の復元力によりラッチ9は前方に押し出され、カム突起9dはカム受け面53dに当接する。図11(c)に示す姿勢で、ラッチ9とスライダ54との接触部は、カム受け面53dとカム突起9dとの接触部に対して開扉方向に偏位しているために、ラッチ9には反時計回りに回転力が作用し、ラッチ9は、自動的に係止姿勢に復帰する。
【0063】
開扉状態でラッチ9が係止姿勢にあるとき、ストッパ面が扉枠8に正対しているために、この状態から閉扉2操作を行うと、ラッチ9はストッパ面からの没入分力により一旦没入した後、ストライク開口8bに係止する。
【0064】
図10に示すように、閉扉2状態においてラッチ9を係止姿勢に維持し、ラッチ9の係止状態を維持するためのラッチストッパ12は、ラッチ9のストッパアーム9bの移動を拘束してラッチ9の回転を規制する。図9に示すように、ラッチストッパ12はラッチケース19に連結されるストッパレバー56の一端に形成される。ストッパレバー56は枢軸57周りに回転自在であり、トーションスプリング58によりラッチストッパ12がラッチ9を拘束するストッパセット方向に付勢される。
【0065】
ラッチ駆動用アクチュエータ13にはソレノイドが使用される。ソレノイド13は、図9(a)に示す非励磁状態がラッチストッパセット状態、図9(b)に示す励磁状態がストッパ解除状態に対応する。このソレノイド13の駆動力は、ソレノイド13の駆動軸13aに連結されるソレノイドレバー59、および中継レバー60を経由して上記ストッパレバー56に伝達される。
【0066】
ソレノイドレバー59は、枢軸61周りに、中継レバー60は枢軸62周りに各々回転自在であり、ソレノイドレバー59から中継レバー60への動力伝達は、ソレノイドレバー59に形成される突部59aにより中継レバー60の第1ピン60aを押し付けることにより行われる。また、中継レバー60とストッパレバー56とは、中継レバー60に立設した第2ピン60bをストッパレバー56の長孔56aに移動自在に挿通させて連結される。
【0067】
図9(a)に示すラッチストッパ12セット状態からソレノイド13を励磁すると、図9(b)に示すように、ソレノイドレバー59は反時計方向に回転し、突部59aが第1ピン60aを押圧する。この結果、中継レバー60は時計回りに回転し、ストッパレバー56は反時計回りに回転し、ラッチストッパ12とラッチ9のストッパアーム9bとの係止が解除される。
【0068】
このラッチストッパ12解除状態からソレノイド13の励磁を停止すると、駆動軸13aが図9(a)に示す突出位置に復帰してソレノイドレバー59を原位置に復帰させる。ソレノイドレバー59の復帰により、第1ピン60aへの押圧力が解除されて中継レバー60に対する反時計回りへの回転拘束が解除され、トーションスプリング58の復元力によりラッチストッパセット位置側に付勢されたストッパレバー56はラッチストッパセット位置に移動する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明を示す機能ブロック図である。
【図2】携帯機の機能ブロック図である。
【図3】錠制御部の機能ブロック図である。
【図4】錠制御部の動作を示すフローである。
【図5】錠制御部の動作を示すフローである。
【図6】錠制御部の動作を示すフローである。
【図7】扉用錠装置を示す図で、(a)は(b)の7A方向矢視図、(b)は断面図である。
【図8】電気錠部を示す図で、(a)は施錠状態を示す図、(b)は解錠状態を示す図である。
【図9】ラッチ部を示す図で、(a)はラッチストッパセット状態を示す図、(b)はラッチストッパセットの解錠状態を示す図。
【図10】ラッチを示す図で、(a)は図9(a)の10A方向矢視図、(b)の10B-10B線断面図である。
【図11】ラッチの動作を示す図で、(a)は扉枠への係止状態を示す図、(b)は反転状態を示す図、(c)は扉への没入状態を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 デッドボルト駆動用アクチュエータ
2 扉
3 デッドボルト
4 電気錠部
5 携帯器
6 先読み部
7 電気錠制御部
8 扉枠
9 ラッチ
10 ラッチ部
11 操作者検出部(接触センサ)
12 ラッチストッパ
13 ラッチ駆動用アクチュエータ
14 扉操作ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッドボルト駆動用アクチュエータにより施解錠位置間で駆動され、施錠位置において扉の開放操作を規制するデッドボルトを備えた電気錠部と、
利用者が所持し、応答要求信号に対して認証用ID信号を出力する携帯器に所定時間間隔で応答要求信号を出力し、受信したID信号に対する認証結果を格納する先読み部と、
前記先読み部への認証成立情報の格納を条件に電気錠部を解錠駆動し、前記先読み部の格納情報が認証不成立に変化するまで解錠状態を維持した後、施錠状態に移行させる電気錠制御部と、
扉から突出して扉枠に係止し、扉への没入状態で扉枠との係止状態を解除するラッチを備えたラッチ部とを有する扉用錠装置。
【請求項2】
扉または扉近傍に設置され、携帯器との交信距離に比して短い検出距離内で操作者を検出する操作者検出部を有するとともに、
前記ラッチ部は、ロック位置において前記ラッチの没入操作を規制し、ロック解除位置においてラッチの没入を許容するラッチストッパと、
電気錠部が解錠状態であること、および操作者検出部における操作者検出を条件として前記ラッチストッパをロック解除位置に駆動するラッチ駆動用アクチュエータとを有する請求項1記載の扉用錠装置。
【請求項3】
前記ラッチ駆動用アクチュエータは、ラッチストッパのロック解除動作完了から所定時間経過後に再び駆動されてラッチストッパをロック位置に復帰させる請求項2記載の扉用錠装置。
【請求項4】
前記操作者検出部が扉操作ハンドルに組み込まれた接触センサである請求項2または3記載の扉用錠装置。
【請求項5】
前記ラッチ部は、扉枠との当接面が開扉軌跡に直交する係止姿勢と、開扉軌跡に対して斜行し、開扉操作による没入方向の分力が発生する没入可能姿勢との間を回転自在で、ラッチストッパにより係止姿勢から没入可能姿勢への移行が規制される反転ラッチ装置として形成される請求項1、2、3または4記載の扉用錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−101124(P2010−101124A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275469(P2008−275469)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000170598)株式会社アルファ (433)
【Fターム(参考)】