説明

扉装置

【課題】扉体を閉じる際に、扉体の戸尻と扉枠の戸当たり部との間に指や物が挟まりにくくできるとともに強く挟まるのを防止でき、扉体の戸先が閉じた状態でも通風性を確保できる扉装置を提供する。
【解決手段】ヒンジ14により、扉枠12に対して扉体13の戸尻13aを回動可能に支持する。ヒンジ14により、扉体13の戸先を扉枠12の扉体収容凹部23に収容している状態で、扉体13の戸尻13aが扉枠12の扉体収容凹部23の外側のシフト位置S2へシフトするのを許容する。ヒンジ14により、扉体13の戸尻13aがシフト位置にある状態で、扉体13の戸先が扉枠12の扉体収容凹部23に対して開閉するのを許容する。扉体13を閉じる際、扉体13の戸尻13aと扉枠12の戸当たり部24との間に隙間64を形成する。扉体13の戸先が閉じた状態でも、隙間64で通風性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開き戸である扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開き戸では、扉枠が建物側に設置され、この扉枠に対してヒンジにより扉体が開閉可能に取り付けられている。
【0003】
扉枠は、内側域に開口部を有し、一面側である戸開き側に開口して扉体が嵌り込んで収容される扉体収容凹部が形成され、この扉体収容凹部の他面側に閉じた扉体が当接する戸当たり部が形成されており、この戸当たり部には閉じた扉体が密着して気密性および遮音性を確保するパッキングが取り付けられている。
【0004】
ヒンジは、扉枠および扉体の上下2箇所に設置され、扉枠に取り付けられる固定側ヒンジ部、扉体の戸尻に取り付けられる回動側ヒンジ部、およびこれら固定側ヒンジ部と回動側ヒンジ部とを回動可能に連結するヒンジ軸を有し、この1軸のヒンジ軸を支点として扉体の戸先側が回動するようにして開閉される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−138849号公報(第2−3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、扉体を閉じる際に、扉体の戸尻と扉枠の戸当たり部との間に指や物が挟まるおそれがある。
【0007】
また、通風性を確保したい場合には、扉体の戸先が少し開いた状態となるように、扉体をつっかえ棒で支えたり、扉体と扉枠との間に物を挟み込む必要があり、扉体の開閉時につっかえ棒や物が外れてしまい、再度、通風性を確保する操作が必要となることがあり、しかも、扉体の戸先が開くために防犯上も好ましくない。
【0008】
従来、扉装置では、扉体で戸枠のパッキングをつぶしてラッチを掛ける構造であるため、強い閉じ力を有するクローザが必要で、扉体を閉じる際のラッチングアクション(パタンと閉めること)が大きい問題などもある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、扉体を閉じる際に、扉体の戸尻と扉枠の戸当たり部との間に指や物が挟まりにくくすることができるとともに強く挟まるのを防止でき、さらに、扉体の戸先が閉じた状態でも、通風性を確保することができる扉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の扉装置は、内側域に開口部を有し、一面側に開口する扉体収容凹部が形成されているとともにこの扉体収容凹部の他面側に戸当たり部が形成されている扉枠と、この扉枠の扉体収容凹部に収容されて前記扉枠の開口部を閉鎖する扉体と、前記扉枠に対して前記扉体の戸尻を回動可能に支持し、前記扉体の戸先が前記扉枠の扉体収容凹部に収容されている状態で前記扉体の戸尻が前記扉枠の扉体収容凹部の外側のシフト位置へシフトするのを許容するとともに、前記扉体の戸尻が前記シフト位置にある状態で前記扉体の戸先が前記扉枠の扉体収容凹部に対して開閉するのを許容するヒンジとを具備しているものである。
【0011】
請求項2記載の扉装置は、請求項1記載の扉装置において、前記ヒンジは、前記扉枠に取り付けられる固定側ヒンジ部、および一端が前記固定側ヒンジ部に対して第1のヒンジ軸によって回動可能に支持されるとともに他端が前記扉体の戸尻に第2のヒンジ軸によって回動可能に支持される回動側ヒンジ部を有し、前記扉体の戸尻を前記シフト位置へシフト可能とするものである。
【0012】
請求項3記載の扉装置は、請求項2記載の扉装置において、前記扉体を閉じるときには、前記扉体の戸尻を前記シフト位置へシフトさせておくシフト手段を具備しているものである。
【0013】
請求項4記載の扉装置は、請求項3記載の扉装置において、前記シフト手段は、前記ヒンジの第1のヒンジ軸に対する前記扉体の回動抵抗が前記第2のヒンジ軸に対する前記扉体の回転抵抗より大きいものである。
【0014】
請求項5記載の扉装置は、請求項3記載の扉装置において、前記シフト手段は、前記ヒンジの回動側ヒンジ部と前記扉体との間に介在されて、前記扉体の戸尻を前記シフト位置へシフトするように付勢するシフト用付勢体を有するものである。
【0015】
請求項6記載の扉装置は、請求項3ないし5いずれか一記載の扉装置において、前記扉枠の戸当たり部に取り付けられたパッキングと、前記扉体の戸尻寄り位置に連結されて前記扉体を閉鎖方向に引き込むクローザとを具備しているものである。
【0016】
請求項7記載の扉装置は、請求項6記載の扉装置において、前記パッキングは、環状に形成されているものである。
【0017】
請求項8記載の扉装置は、請求項2記載の扉装置において、前記ヒンジは、前記扉体の戸尻を前記シフト位置から元の非シフト位置に戻す方向に付勢するシフト戻し付勢体を有しているものである。
【0018】
請求項9記載の扉装置は、請求項2記載の扉装置において、前記ヒンジの第1のヒンジ軸に対する前記扉体の回動抵抗が前記第2のヒンジ軸に対する前記扉体の回転抵抗より小さいものである。
【0019】
請求項10記載の扉装置は、請求項1記載の扉装置において、前記ヒンジは、前記扉枠に取り付けられるとともにヒンジ軸孔が設けられた固定側ヒンジ部、および前記扉体の戸尻に取り付けられるとともに前記固定側ヒンジ部のヒンジ軸孔に回動可能に係合するヒンジ軸が突設された回動側ヒンジ部をそれぞれ有する上部ヒンジおよび下部ヒンジを備え、前記下部ヒンジは、前記固定側ヒンジ部のヒンジ軸孔が前記扉枠の扉体収容凹部の外側へ向けて長い長孔に形成され、前記扉体の戸尻を前記シフト位置へシフト可能とするものである。
【0020】
請求項11記載の扉装置は、請求項1記載の扉装置において、前記ヒンジは、前記扉枠に取り付けられるとともにヒンジ軸孔が設けられた固定側ヒンジ部、および前記扉体の戸尻に取り付けられるとともに前記固定側ヒンジ部のヒンジ軸孔に回動可能に係合するヒンジ軸が突設された回動側ヒンジ部を有する上部ヒンジおよび下部ヒンジを備え、前記上部ヒンジは、前記固定側ヒンジ部のヒンジ軸孔が前記シフト位置へ向けて長い長孔に形成され、前記扉体の戸尻を前記扉枠の扉体収容凹部の外側へシフト可能とし、前記扉体の上部側に連結されて前記扉体を閉鎖方向に引き込むクローザを具備しているものである。
【0021】
請求項12記載の扉装置は、請求項1ないし11いずれか一記載の扉装置において、前記扉体の戸先には、前記扉枠側に係合するラッチ錠およびデットボルト錠の少なくとも一方が設けられ、これらラッチ錠およびデットボルト錠の少なくとも一方が前記扉枠側に係合している状態で前記ヒンジによって前記扉体の戸尻が前記シフト位置へシフトするのを許容するものである。
【0022】
請求項13記載の扉装置は、請求項1ないし12いずれか一記載の扉装置において、前記扉枠に設けられ、前記扉体の戸尻が前記シフト位置へシフトした位置でその扉体収容凹部に収容されるのを規制する規制位置と前記扉体の戸尻が前記扉枠の扉体収容凹部に収容されるのを許容する退避位置との間で移動可能とするシフト部材を具備しているものである。
【0023】
請求項14記載の扉装置は、請求項6、7および11いずれか一記載の扉装置において、前記クローザによって前記扉体を閉鎖する引き込み力で反発力が蓄積され、前記扉体の戸先側を開放方向に付勢する開放用付勢体を具備しているものである。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の扉装置によれば、ヒンジにより、扉枠に対して扉体の戸尻を回動可能に支持し、扉体の戸先が扉枠の扉体収容凹部に収容されている状態で扉体の戸尻が扉枠の扉体収容凹部の外側のシフト位置へシフトするのを許容するとともに、扉体の戸尻がシフト位置にある状態で扉体の戸先が扉枠の扉体収容凹部に対して開閉するのを許容するため、扉体を閉じる際に、扉体の戸尻と扉枠の戸当たり部との間に隙間を形成できて指や物が挟まりにくくすることができるとともに強く挟まるのを防止でき、また、扉体の戸先が閉じた状態でも、扉体の戸尻がシフト位置にシフトしていることにより、通風性を確保することができる。
【0025】
請求項2記載の扉装置によれば、請求項1記載の扉装置の効果に加えて、2軸構造のヒンジにより、扉体の戸尻をシフト位置へ平行シフトさせることができる。
【0026】
請求項3記載の扉装置によれば、請求項2記載の扉装置の効果に加えて、シフト手段により、扉体を閉じるときには、扉体の戸尻をシフト位置へ強制的にシフトさせておくことができ、挟まり防止および通風性の確保が確実にできる。
【0027】
請求項4記載の扉装置によれば、請求項3記載の扉装置の効果に加えて、シフト手段として、ヒンジの第1のヒンジ軸に対する扉体の回動抵抗を第2のヒンジ軸に対する扉体の回転抵抗より大きくするため、扉体を閉じるときには、扉体の戸尻をシフト位置へ強制的にシフトさせることができる。
【0028】
請求項5記載の扉装置によれば、請求項3記載の扉装置の効果に加えて、シフト手段として、ヒンジの回動側ヒンジ部と扉体との間に介在されて、扉体の戸尻をシフト位置へシフトするように付勢するシフト用付勢体を有するため、扉体を閉じるときには、扉体の戸尻をシフト位置へ強制的にシフトさせることができる。
【0029】
請求項6記載の扉装置によれば、請求項3ないし5いずれか一記載の扉装置の効果に加えて、扉体を閉じるときには、まず、扉体の戸先が扉枠のパッキングに接触し、扉体の戸先のラッチ錠などで戸枠に係止される状態となることで、その扉体の戸先を支点として、扉体の戸尻寄り位置に連結されたクローザにより扉体の戸尻をシフト位置から扉枠のパッキングに接触する閉鎖位置に引き寄せることができるため、扉体と扉枠のパッキングとの密着性を高め、気密性および遮音性を高くでき、しかも、従来の扉装置では扉体でパッキングをつぶしてラッチを掛ける構造であるため、強い閉じ力を有するクローザが必要で、扉体を閉じる際のラッチングアクション(パタンと閉めること)が大きいが、そのようなクローザが必要なく、軽い操作力で扉体を静かに閉じることができる。また、扉体を開くときには、クローザの連結位置より離れている扉体の戸先を軽い操作力で開くことができる。
【0030】
請求項7記載の扉装置によれば、請求項6記載の扉装置の効果に加えて、環状のパッキングを用いるため、気密性および遮音性をより高くすることができる。
【0031】
請求項8記載の扉装置によれば、請求項2記載の扉装置の効果に加えて、ヒンジは、扉体の戸尻をシフト位置から元の非シフト位置に戻す方向に付勢するシフト戻し付勢体を有するため、扉体の戸尻がシフト位置へシフトするのを許容しながら、一般的な扉体と同様の開閉形態を採ることができる。
【0032】
請求項9記載の扉装置によれば、請求項2記載の扉装置の効果に加えて、ヒンジの第1のヒンジ軸に対する扉体の回動抵抗が第2のヒンジ軸に対する扉体の回転抵抗より小さいため、扉体の戸尻をシフト位置に位置させた状態のまま、扉体を開閉することができる。
【0033】
請求項10記載の扉装置によれば、請求項1記載の扉装置の効果に加えて、ヒンジとして上部ヒンジおよび下部ヒンジを備え、下部ヒンジは、固定側ヒンジ部のヒンジ軸孔が扉枠の扉体収容凹部の外側へ向けて長い長孔に形成されているため、扉体の下部側をシフト位置へ傾斜シフトさせることができる。
【0034】
請求項11記載の扉装置によれば、請求項1記載の扉装置の効果に加えて、ヒンジとして上部ヒンジおよび下部ヒンジを備え、上部ヒンジは、固定側ヒンジ部のヒンジ軸孔がシフト位置へ向けて長い長孔に形成されているため、扉体の上部側を扉枠の扉体収容凹部の外側へ傾斜シフトさせることができ、扉体の上部側に連結されたクローザによってシフト位置にシフトしている扉体を確実に閉鎖できる。
【0035】
請求項12記載の扉装置によれば、請求項1ないし11いずれか一記載の扉装置の効果に加えて、扉体の戸先には、扉枠側に係合するラッチ錠およびデットボルト錠の少なくとも一方が設けられ、これらラッチ錠およびデットボルト錠の少なくとも一方が扉枠側に係合している状態でヒンジによって扉体の戸尻がシフト位置へシフトするのを許容するため、防犯性を確保した上で通風性を確保できる。
【0036】
請求項13記載の扉装置によれば、請求項1ないし12いずれか一記載の扉装置の効果に加えて、扉枠に設けたシフト部材を規制位置に移動させることにより、扉体の戸尻がシフト位置へシフトした位置でその扉体収容凹部に収容されるのを規制することができ、また、退避位置に移動させることにより、扉体の戸尻が扉枠の扉体収容凹部に収容されるのを許容することができ、扉体のシフト状態を容易に変更設定できる。
【0037】
請求項14記載の扉装置によれば、請求項6、7および11いずれか一記載の扉装置の効果に加えて、クローザによって扉体を閉鎖する引き込み力で開放用付勢体に反発力が蓄積され、この開放用付勢体により扉体の戸先側を開放方向に付勢するため、扉体を開くときに、扉体の戸先を軽い力で開くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す扉装置の一部の断面図を示し、(a)は扉体の閉鎖位置の断面図、(b)は扉体のシフト位置の断面図、(c)は扉体の開放位置の断面図である。
【図2】同上扉装置の一部の斜視図である。
【図3】同上扉装置の一部を切り欠いた平面図である。
【図4】同上扉装置の戸開き方向に対して反対側から見た正面図である。
【図5】同上扉装置の一部を切り欠いた側面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す扉装置を平面方向から見た説明図を示し、(a)は扉体の戸尻がシフト位置にある説明図、(b)は扉体の閉鎖位置の説明図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態を示す扉装置の一部の断面図を示し、(a)は扉体の閉鎖位置の断面図、(b)は扉体の戸尻がシフト位置にある断面図、(c)は扉体の開放位置の断面図である。
【図8】同上扉装置の一部の斜視図である。
【図9】同上扉装置の扉体のシフトを説明する説明図である。
【図10】同上扉装置の扉体のシフトを説明する説明図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態を示す扉装置の一部の斜視図である。
【図12】同上扉装置の扉体のシフトを説明する説明図である。
【図13】同上扉装置の扉体のシフトを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0040】
まず、図1ないし図5に第1の実施の形態を示す。
【0041】
扉装置11は、建物側に設置される扉枠12、この扉枠12に対して開閉可能な扉体13、この扉体13を扉枠12に対して開閉可能に支持するヒンジ14、および扉体13を閉じる方向に引き込むクローザ15を備えている。以下、扉装置11の一面側を扉体13が開く戸開き側Aとし、扉装置11の他面側を反戸開き側Bとして説明する。
【0042】
扉枠12は、幅方向一側の側枠部18、他側の側枠部19、天井側の天枠部20および床側の床枠部21を有する縦長の四角形枠状に形成され、これら枠部18〜21の内側域に人や物が出入り可能とする開口部22が形成されている。
【0043】
扉枠12の開口部22に臨む内周面には、戸開き側Aに開口して扉体13が嵌め込み収容される扉体収容凹部23が形成されているとともに、この扉体収容凹部23より反戸開き側Bに閉じた扉体13が当たる戸当たり部24が形成されている。戸当たり部24の扉体収容凹部23に臨む面には、閉じた扉体13の周辺部が密着するパッキング25が突出した状態に取り付けられている。
【0044】
また、扉体13は、扉枠12の開口部22の横幅寸法および高さ寸法より大きく、かつ扉枠12の扉体収容凹部23の部分の開口域の横幅寸法および高さ寸法より小さく形成されている。なお、ヒンジ14で支持される扉体13の一側を戸尻13aとし、回動開閉される扉体13の他側を戸先13bという。
【0045】
扉体13の戸尻13a側の側端面にはヒンジ14を取り付けるためのヒンジ取付凹部28が形成され、扉体13の戸先13b側の側端面には扉枠12の側枠部19に取り付けられている図示しないストライクに係脱可能とするラッチ錠29が突出されている。ラッチ錠29がストライクに係止された状態で、扉体13が扉枠12に閉じた状態が維持される。扉体13の戸先13b側には、扉体13の戸開き側Aの一面である外面13cと反戸開き側Bの他面である内面13dとの両面に、扉枠12の側枠部19のストライクに係止されているラッチ錠29を扉体13内に引き込んでストライクから外すハンドル30が回動操作可能に取り付けられている。なお、扉装置11が玄関用などの用途の場合には、扉体13に鍵機構が設置され、この鍵機構のデットボルトが扉体13の戸先13b側の側端面から出没して扉枠12の側枠部19のストライクに係脱される。
【0046】
また、ヒンジ14は、上部ヒンジ33および下部ヒンジ34を有し、これら上部ヒンジ33および下部ヒンジ34が、扉枠12に取り付けられる固定側ヒンジ部35、および一端が固定側ヒンジ部35に対して第1のヒンジ軸36によって回動可能に支持されるとともに他端が扉体13の戸尻13aに第2のヒンジ軸37によって回動可能に支持される回動側ヒンジ部38を有している。
【0047】
各固定側ヒンジ部35は、先端側が扉枠12の側枠部18の戸開き側Aの面より外側に突出し、その先端に回動側ヒンジ部38を回動可能に支持する第1のヒンジ軸36が上方へ突設されている。
【0048】
各回動側ヒンジ部38は、扉体13に対して一体的に取り付けられるヒンジユニット39に組み込まれている。このヒンジユニット39は、扉体13のヒンジ取付凹部28に埋め込まれて取り付けられる取付ケース40を有し、この取付ケース40内に第2のヒンジ軸37によって支持部材41が揺動可能に支持され、この支持部材41の上下部に回動側ヒンジ部38が一体に形成されている。各回動側ヒンジ部38は、取付ケース40に形成された窓孔42から突出するベース部材43と、このベース部材43に取り付けられて固定側ヒンジ部35の第1のヒンジ軸36に回動可能に支持される軸受部材44とで構成されている。したがって、各回動側ヒンジ部38は、ベース部材43および軸受部材44によって、扉体13の戸尻13aの側端面から突出する先端側が扉体13の外面13cより外側に突出するように平面視断面略L字形に形成されている。なお、ベース部材43と軸受部材44とは一体に形成してもよい。
【0049】
取付ケース40の内部空間および窓孔42は、回動側ヒンジ部38が第2のヒンジ軸37を支点として相対的に揺動するのを許容する寸法に形成されている。取付ケース40内には、相対的に揺動する回動側ヒンジ部38が取付ケース40と直接衝突するのを防止する例えばゴムなどの緩衝体45が配置されている。
【0050】
そして、ヒンジ14は、扉枠12に対して第1のヒンジ軸36を支点として扉体13が回動開閉するように支持し、また、扉体13の戸先13bが扉枠12の扉体収容凹部23に収容されてラッチ錠29が扉枠12の側枠部19のストライクに係止している状態で、扉体13の戸尻13aも扉枠12の扉体収容凹部23に収容されている閉鎖位置である非シフト位置S1(図1(a)に示す位置)と、扉枠12に対して第1のヒンジ軸36および第2のヒンジ軸37との2軸の作用によって、扉体13の戸尻13aが扉枠12の扉体収容凹部23の外側へシフトするシフト位置S2(図1(b)に示す位置)との間で、平行移動(平行シフト)するのを許容する。さらに、扉体13の戸尻13aがシフト位置S2にある状態で、扉体13の戸先13bが扉枠12の扉体収容凹部23に対して開閉移動するのを許容する。なお、扉体13が非シフト位置S1からシフト位置S2にシフトすると、扉体13が戸先13b側に少し移動するが、戸枠12の扉体収容凹部23の幅が広いために、扉体13が戸先13bが戸枠12の側枠部19に当たらず、開閉もできる。
【0051】
扉体13を閉じるときには、扉体13の戸尻13aをシフト位置S2へシフトさせておくシフト手段46を備えている。このシフト手段46としては、ヒンジ14の回動側ヒンジ部38と扉体13との間に介在されて、扉体13の戸尻13aをシフト位置S2へシフトするように付勢するシフト用付勢体としてのねじりばね47が用いられている。なお、シフト手段46としては、ヒンジ14の第1のヒンジ軸36に対する扉体13の回動抵抗を第2のヒンジ軸37に対する扉体13の回転抵抗より大きくすることでも、扉体13を閉じるときには、扉体13の戸尻13aをシフト位置S2へシフトさせておくことができる。なお、このねじりばね47の付勢力は、クローザ15の引き込み力より小さい。
【0052】
また、クローザ15は、クローザ本体50が扉枠12の天枠部20の反戸開き側Bの面で扉体13の戸尻寄り位置に対応して取り付けられ、このクローザ本体50にリンク51が連結され、このリンクの先端にリンク52が回動可能に連結され、このリンク52の先端が扉体13の内面13dで戸尻寄り位置に取り付けられた連結部材53に回転可能に連結されている。そして、クローザ15により、扉体13の戸尻寄り位置を扉枠12に閉じる方向に引き込む。
【0053】
また、扉枠12の側枠部18の内周面で上下方向中間位置には、シフト部材57が支軸58を中心として回動操作可能に取り付けられている。このシフト部材57は、戸開き側Aに倒した位置を、扉体13の戸尻13aがシフト位置S2へシフトした位置でその扉体収容凹部23に収容されるのを規制する規制位置(図1(b)(c)および図2の2点鎖線位置)とし、また、反戸開き側Bへ回動させて立ち上げた位置を、扉体13の戸尻13aが扉枠12の扉体収容凹部23に収容されるのを許容する退避位置(図1(a)および図2の実線位置)としている。
【0054】
また、クローザ15によって扉体13を扉枠12に閉じる引き込み力の一部で反発力が蓄積され、扉体13の戸先13b側を開放方向に付勢する開放用付勢体としての圧縮ばね61を備えている。この圧縮ばね61は、クローザ15が連結された扉体13の位置より戸先13b側であって扉体13の幅方向中間部に対応して、扉枠12の天枠部20に配置されている。なお、圧縮ばね61の反発力はクローザ15による扉体13の引き込み力より弱く設定され、クローザ15による引き込み力によって扉体13が扉枠12に確実に閉じるように構成されている。
【0055】
次に、第1の実施の形態の扉装置11の動作を説明する。
【0056】
図1(a)、図3ないし図5に示すように、扉体13が扉枠12に閉じている閉鎖状態では、扉体13の戸先13bのラッチ錠29が扉枠12の側枠部19のストライクに係止され、扉体13の戸尻13aがクローザ15の引き込み力によって非シフト位置S1に引き込まれ、扉体13の全体が扉枠12の扉体収容凹部23に収容されているとともに扉体13の内面13dの周辺部が扉枠12の戸当たり部24のパッキング25を押し潰した状態でそのパッキング25に密着されている。また、扉体13が閉じられた際に、圧縮ばね61に扉体13の戸開き側Aへ向けた反発力が蓄積されている。また、シフト部材57は、反戸開き側Bへ回動させて立ち上げた退避位置とし、扉体13の戸尻13aが扉枠12の扉体収容凹部23に収容されるのを許容している。
【0057】
そして、閉じている扉体13を開く場合には、ハンドル30を操作し、ラッチ錠29が扉枠12の側枠部19のストライクから外れると、圧縮ばね61の反発力により扉体13の戸先13bがヒンジ14で支持された扉体13の戸尻13a側を支点として戸開き側Aへ自動的に移動して少し開く。なお、圧縮ばね61によって必ずしも扉体13が自動で開くのではなく、扉体13を開けようとしたときのアシスト力として働く程度のものであってもよい。
【0058】
さらに、扉体13の戸先13b側を戸開き側Aに押動操作することにより、図1(c)に示すように、扉体13の戸先13bがヒンジ14の第1のヒンジ軸36を支点として戸開き側Aに大きく回動開放される。これにより、扉枠12の開口部22が開放され、人や物の出入りが可能となる。
【0059】
また、開いた扉体13を閉じる場合には、戸開き側Aへの扉体13の押動操作を解除することにより、クローザ15の引き込み力によって扉体13を扉枠12に閉じる方向に引き込んで自動的に回動閉鎖していく。
【0060】
このクローザ15によって扉体13を引き込むとき、ヒンジ14の第2のヒンジ軸37に装着されているシフト手段46としてのねじりばね47により、ヒンジ14の回動側ヒンジ部38と扉体13とがシフト位置S2の関係となるように強制的に移動させるとともに移動後にはそのシフト位置S2の関係を保持する。
【0061】
このようにヒンジ14の回動側ヒンジ部38と扉体13とがシフト位置S2の関係にあるため、扉体13が閉じる際には、まず、扉体13の戸先13bが扉枠12の扉体収容凹部23に侵入し、扉枠12の側枠部19のパッキング25の部分を押し潰して止まるとともに、ラッチ錠29が扉枠12の側枠部19のストライクに係止される。この状態では、図1(b)に示すように、扉体13の戸尻13aが扉枠12の扉体収容凹部23の外側へシフトしているシフト位置S2にある。なお、図1(b)では、シフト部材57が戸開き側Aに倒した規制位置にあるが、ここの説明では、図1(a)のように、シフト部材57が反戸開き側Bへ回動して立ち上がった退避位置にあり、扉体13の戸尻13aが扉枠12の扉体収容凹部23に収容されるのを許容しているものとする。
【0062】
続いて、クローザ15の引き込み力によって、扉体13の戸尻13aが扉枠12の扉体収容凹部23に侵入して非シフト位置S1に引き込まれ、扉体13の全体が扉枠12の扉体収容凹部23に収容されるとともに扉体13の内面13dの周辺部全体が扉枠12のパッキング25を押し潰した状態でそのパッキング25に密着される。また、この扉体13が閉じられる際に、扉体13が圧縮ばね61に当接し、クローザ15の引き込み力の一部によって、圧縮ばね61を圧縮してこの圧縮ばね61に扉体13の戸開き側Aへ向けた反発力を蓄積させる。
【0063】
したがって、扉体13が閉じる際、まず、扉体13の戸先13bが扉枠12に閉じたときには、扉体13の戸尻13aがシフト位置S2にあって、扉体13の戸尻13aと扉枠12の側枠部18の戸当たり部24との間に隙間64が形成されるため、その隙間64に指や物が挟まりかけたときでも、挟まれる前にその隙間64から指や物を抜きやすくできる。
【0064】
さらに、扉体13が閉じる際、まず、扉体13の戸先13bが扉枠12に閉じることにより、その扉体13の戸先13bを支点として、扉体13の戸尻寄り位置に連結されたクローザ15により扉体13の戸尻13aをシフト位置S2から扉枠12のパッキング25に接触する非シフト位置S1に引き寄せることになるため、つまり、扉体13の戸尻13aを扉枠12の戸当たり部24の正面側から略平行に近付くような動きになるため、このときの扉体13の戸尻13aと扉枠12の側枠部18の戸当たり部24との間における挟み込み力は、従来の1軸のヒンジの場合のようなてこの原理で発生する強い挟み込み力に比べて弱くでき、仮に指や物を挟み込んでも大事には至らない。
【0065】
また、扉体13を開いた際に、シフト部材57を戸開き側Aに倒した規制位置(図1(b)(c)および図2の2点鎖線位置)としておくことにより、扉体13を閉じる際、扉体13の戸先13bが扉枠12の扉体収容凹部23に侵入し、扉枠12の側枠部19のパッキング25の部分を押し潰して止まるとともに、ラッチ錠29が扉枠12の側枠部19のストライクに係止された後、扉体13の戸尻13aがシフト部材57に当接し、扉体13の戸尻13aが扉枠12の扉体収容凹部23に収容されるのを規制し、つまり扉体13の戸尻13aをシフト位置S2に保持する。これにより、扉体13の戸尻13aと扉枠12との間に戸開き側Aと反戸開き側Bとに連通する隙間64が形成されるため、通風性が確保される。なお、扉体13が閉じている状態でも、クローザ15の引き込み力に抗して扉体13の戸尻13aを非シフト位置S1からシフト位置S2にシフトさせ、シフト部材57を戸開き側Aに倒した規制位置に位置させることもできる。
【0066】
このように、扉装置11によれば、ヒンジ14により、扉枠12に対して扉体13の戸尻13aを回動可能に支持し、扉体13の戸先13bが扉枠12の扉体収容凹部23に収容されている状態で扉体13の戸尻13aがシフト位置S2へシフトするのを許容するとともに、扉体13の戸尻13aがシフト位置S2にある状態で扉体13の戸先13bが扉枠12の扉体収容凹部23に対して開閉するのを許容するため、扉体13を閉じる際に、扉体13の戸尻13aと扉枠12の戸当たり部24との間に隙間64を形成できて指や物が挟まりにくくすることができるとともに強く挟まるのを防止でき、また、扉体13の戸先13bが閉じた状態でも、扉体13の戸尻13aがシフト位置S2にシフトしていることにより、通風性を確保することができる。
【0067】
また、第1のヒンジ軸36および第2のヒンジ軸37を有する2軸構造のヒンジ14により、扉体13の戸尻13aをシフト位置S2へ平行シフトさせることができる。
【0068】
また、シフト手段46により、扉体13を閉じるときには、扉体13の戸尻13aをシフト位置S2へ強制的にシフトさせておくことができ、挟まり防止および通風性の確保が確実にできる。このシフト手段46として、ヒンジ14の回動側ヒンジ部38と扉体13との間に介在されて、扉体13の戸尻13aをシフト位置S2へシフトするように付勢するシフト用付勢体としてのねじりばね47を有するため、扉体13を閉じるときには、扉体13の戸尻13aをシフト位置S2へ強制的にシフトさせることができる。なお、シフト手段46として、ヒンジ14の第1のヒンジ軸36に対する扉体13の回動抵抗を第2のヒンジ軸37に対する扉体13の回転抵抗より大きくすることによっても、扉体13を閉じるときには、扉体13の戸尻13aをシフト位置S2へ強制的にシフトさせることができる。
【0069】
また、扉体13を閉じるときには、まず、扉体13の戸先13bが扉枠12のパッキング25に接触し、扉体13の戸先13bのラッチ錠29で扉枠12に係止される状態となることで、その扉体13の戸先13bを支点として、扉体13の戸尻寄り位置に連結されたクローザ15により扉体13の戸尻13aをシフト位置S2から扉枠12のパッキング25に接触する非シフト位置S1に引き寄せて閉鎖することができるため、扉体13と扉枠12のパッキング25との密着性を高め、気密性および遮音性を高くでき、また、扉体13を開くときには、クローザ15の連結位置より離れている扉体13の戸先13bを軽い力で開くことができる。なお、扉体13におけるクローザ15の連結位置とクローザ15の引き込み力を調整すれば、戸先13bの操作力は変えずに、戸尻13aの引き込み力を強くすることができる。
【0070】
さらに、クローザ15によって扉体13を閉鎖する引き込み力で開放用付勢体としての圧縮ばね61に反発力が蓄積され、この圧縮ばね61により扉体13の戸先13b側を開放方向に付勢するため、扉体13を開くときに、扉体13の戸先13bを軽い力で開くことができる。
【0071】
また、扉体13の戸先13bには、扉枠12側に係合するラッチ錠29が設けられ、これらラッチ錠29が扉枠12側に係合している状態でヒンジ14によって扉体13の戸尻13aがシフト位置S2へシフトするのを許容するため、防犯性を確保した上で通風性を確保できる。
【0072】
しかも、従来の扉装置では扉体でパッキングをつぶしてラッチを掛ける構造であるため、強い閉じ力を有するクローザが必要で、扉体を閉じる際のラッチングアクション(パタンと閉めること)が大きいが、そのようなクローザが必要なく、軽い操作力で扉体13を静かに閉じることができる。
【0073】
なお、例えば玄関用として、扉体13の戸先13bに、扉枠12側に係合して施錠するデットボルト錠が設けられる場合にも、このデットボルト錠が扉枠12側に係合している状態でヒンジ14によって扉体13の戸尻13aがシフト位置S2へシフトするのを許容するため、防犯性を確保した上で通風性を確保できる。
【0074】
また、扉枠12に設けたシフト部材57を規制位置に移動させることにより、扉体13の戸尻13aがシフト位置S2へシフトした位置でその扉体収容凹部23に収容されるのを規制することができ、また、退避位置に移動させることにより、扉体13の戸尻13aが扉枠12の扉体収容凹部23に収容されるのを許容することができ、扉体13のシフト状態を容易に変更設定できる。
【0075】
なお、第1の実施の形態において、シフト手段46を設けず、ヒンジ14の第1のヒンジ軸36に対する扉体13の回動抵抗を第2のヒンジ軸37に対する扉体13の回転抵抗より小さくすることにより、扉体13の戸尻13aをシフト位置S2または非シフト位置S1に位置させた状態のまま、扉体13を開閉することができる。この場合には、扉体13の少なくとも内面13dに取手を設け、扉体13が閉じている状態で取手によって扉体13の戸尻13aをシフト位置S2または非シフト位置S1に移動させるようにすればよい。また、この場合には、クローザ15は設けなくてもよい。そして、この場合にも、扉体13の戸尻13aをシフト位置S2に移動させておけば、扉体13の閉じた際に扉体13の戸尻13aと扉枠12との間に隙間64が形成され、挟み込みを防止できるとともに通風性を確保できる。また、扉体13の戸尻13aを非シフト位置S1に移動させた状態で、扉体13の閉じた際に、扉体13の戸尻13aと扉枠12との間に指や物が挟まりかけても、扉体13の戸尻13aがシフト位置S2へシフトすることにより、強く挟み込むことはなく、大事には至らない。
【0076】
また、第1の実施の形態において、シフト手段46を設けず、ヒンジ14に、扉体13の戸尻13aをシフト位置S2から元の非シフト位置S1に戻す方向に付勢するシフト戻し付勢体を設けてもよい。このシフト戻し付勢体は、第1の実施の形態のシフト用付勢体としてのねじりばね47に代えて、扉体13の戸尻13aをシフト位置S2から元の非シフト位置S1に戻す方向に付勢するねじりばねで構成すればよい。これにより、扉体13の戸尻13aがシフト位置S2へシフトするのを許容しながら、一般的な扉体と同様の開閉形態を採ることができる。この場合、クローザ15は設けなくても、扉体13の戸尻13aを扉枠12に閉じることができる。
【0077】
次に、図6に第2の実施の形態を示す。なお、第1の実施の形態と同様の構成については同一符号を用いてその説明を省略する。
【0078】
パッキング25として、扉枠12に沿って環状で、内部に空気が封入された密閉空間25aを有するチューブ状パッキングを用いる。
【0079】
そして、図6(a)に示すように、扉体13を閉じる際、ヒンジ14の回動側ヒンジ部38と扉体13とがシフト位置S2の関係にあることにより、まず、扉体13の戸先13bが扉枠12の扉体収容凹部23に侵入し、扉枠12の側枠部19のパッキング25の部分の密閉空間25aを押し潰して止まるとともに、ラッチ錠29が扉枠12の側枠部19のストライクに係止される。このとき、扉枠12の側枠部19のパッキング25の部分の密閉空間25aを押し潰されることで、密閉空間25aの空気が扉枠12の側枠部18側に逃げるので、パッキング25の反発力が小さく、ラッチ錠29が扉枠12の側枠部19のストライクに軽くかつ静かに係止することができる。
【0080】
図6(b)に示すように、続いて、クローザ15の引き込み力によって、扉体13の戸尻13aが扉枠12の扉体収容凹部23に侵入して非シフト位置S1に引き込まれ、扉体13の全体が扉枠12の扉体収容凹部23に収容されるとともに扉体13の内面13dの周辺部が扉枠12のパッキング25を押し潰した状態でその環状のパッキング25に密着される。この状態で、環状のパッキング25が均一に押し潰されて密閉空間25aの全体に空気が均一に行き渡り、環状のパッキング25の全周が扉体13に均一に圧接し、気密性および遮音性を確保できる。さらに、扉体13のがたつきを抑制できるとともに、扉体13に反りや歪みが生じていても、それに対してパッキング25が追従するため、気密性および遮音性を確実に確保できる。
【0081】
次に、図7ないし図10に第3の実施の形態を示す。なお、第1の実施の形態と同様の構成については同一符号を用いてその説明を省略する。
【0082】
ヒンジ14として上部ヒンジ33および下部ヒンジ34を備える。これら上部ヒンジ33および下部ヒンジ34は、扉枠12に取り付けられるとともにヒンジ軸孔35aが設けられた固定側ヒンジ部35、および扉体13の戸尻13aに取り付けられるとともに固定側ヒンジ部35のヒンジ軸孔35aに回動可能に係合するヒンジ軸38aが下方へ向けて突設された回動側ヒンジ部38を有している。
【0083】
上部ヒンジ33は、一般的な1軸のヒンジ構造となっている。
【0084】
下部ヒンジ34は、固定側ヒンジ部35のヒンジ軸孔35aが扉枠12の扉体収容凹部23の外側へ向けて長い長孔35bに形成されている。
【0085】
そして、ヒンジ14の上部ヒンジ33および下部ヒンジ34は、扉体13の戸先13bが扉枠12の扉体収容凹部23に収容されている状態で、下部ヒンジ34の回動側ヒンジ部38のヒンジ軸38aが固定側ヒンジ部35の長孔35b内における扉枠12側に寄った位置に位置していることにより、扉体13の全体が扉枠12の扉体収容凹部23に収容される閉鎖位置である非シフト位置S1(図7(a)に示す位置)と、下部ヒンジ34の回動側ヒンジ部38のヒンジ軸38aが固定側ヒンジ部35の長孔35b内における扉枠12側から離反した外側域に移動することにより、扉体13の下部側が扉枠12の扉体収容凹部23の外側へシフトするシフト位置S2(図7(b)に示す位置)との間で、傾斜移動(傾斜シフト)するのを許容する。さらに、扉体13の下部側がシフト位置S2にある状態で、扉体13の戸先13bが扉枠12の扉体収容凹部23に対して開閉移動するのを許容する。
【0086】
また、シフト部材57は、扉枠12の側枠部18の下部側に配設されている。
【0087】
扉体13を開くために、扉体13の内面13dには押しプレート71が取り付けられ、外面13cには取手72が取り付けられる。
【0088】
なお、ラッチ錠29は、図示していないが、扉体13の下部側のシフトに影響がないように扉体13の上部側に配設されている。
【0089】
また、クローザ15を図示してないが、第1の実施の形態と同様に備えていてもよいし、あるいは無くてもよい。
【0090】
次に、第3の実施の形態の扉装置11の動作を説明する。
【0091】
図7(a)に示すように、シフト部材57を使用しない場合には、シフト部材57を反戸開き側Bへ回動させて立ち上げた退避位置としておく。下部ヒンジ34では、扉体13の自重により、回動側ヒンジ部38のヒンジ軸38aが固定側ヒンジ部35の長孔35b内における扉枠12側に寄った位置に位置しており、扉体13の下部側が非シフト位置S1に保たれる。そのため、一般的な扉体の開閉形態と同様に、扉枠12に対して上部ヒンジ33および下部ヒンジ34のヒンジ軸38aを支点として扉体13が回動開閉される。
【0092】
図7(b)(c)に示すように、シフト部材57を使用する場合には、扉体13が開いた状態で、シフト部材57を戸開き側Aに倒した規制位置とすることにより、扉体13を閉じる際、扉体13の下部側がシフト部材57に当接し、扉体13の下部側が扉枠12の扉体収容凹部23に収容されるのを規制し、つまり扉体13の下部側をシフト位置S2に保持する。
【0093】
これにより、扉体13の下部側と扉枠12との間に戸開き側Aと反戸開き側Bとに連通する隙間64が形成されるため、通風性が確保される。なお、扉体13が閉じている状態でも、扉体13の下部側を非シフト位置S1からシフト位置S2にシフトさせ、シフト部材57を戸開き側Aに倒した規制位置に位置させることもできる。
【0094】
また、扉体13の下部側のシフトを解除するには、扉体13を開き、シフト部材57を反戸開き側Bへ回動させて立ち上げた退避位置とし、扉体13を閉じることにより、この扉体13の開閉動作に伴い、かつ扉体13の自重により、回動側ヒンジ部38のヒンジ軸38aが固定側ヒンジ部35の長孔35b内における扉枠12側に寄った位置に移動し、シフトを解除する。
【0095】
このように、扉装置11では、ヒンジ14として上部ヒンジ33および下部ヒンジ34を備え、下部ヒンジ34は、固定側ヒンジ部35のヒンジ軸孔35aが扉枠12の扉体収容凹部23の外側へ向けて長い長孔35bに形成されているため、扉体13の下部側をシフト位置S2へ傾斜シフトさせることができる。
【0096】
そのため、扉体13を閉じる際に、扉体13の下部側と扉枠12の戸当たり部24との間に隙間64を形成できて指や物が挟まりにくくすることができるとともに強く挟まるのを防止でき、また、扉体13の戸先13bが閉じた状態でも、扉体13の下部側がシフト位置S2にシフトしていることにより、隙間64を通じて通風性を確保することができる。
【0097】
次に、図11ないし図13に第4の実施の形態を示す。なお、第1および第3の実施の形態と同様の構成については同一符号を用いてその説明を省略する。
【0098】
ヒンジ14として上部ヒンジ33および下部ヒンジ34を備える。これら上部ヒンジ33および下部ヒンジ34は、扉枠12に取り付けられるとともにヒンジ軸孔35aが設けられた固定側ヒンジ部35、および扉体13の戸尻13aに取り付けられるとともに固定側ヒンジ部35のヒンジ軸孔35aに回動可能に係合するヒンジ軸38aが下方へ向けて突設された回動側ヒンジ部38を有している。
【0099】
上部ヒンジ33は、固定側ヒンジ部35のヒンジ軸孔35aが扉枠12の扉体収容凹部23の外側へ向けて長い長孔35bに形成されている。
【0100】
下部ヒンジ34は、一般的な1軸のヒンジ構造となっている。
【0101】
そして、ヒンジ14の上部ヒンジ33および下部ヒンジ34は、扉体13の戸先13bが扉枠12の扉体収容凹部23に収容されてラッチ錠29が扉枠12の側枠部19のストライクに係止している状態で、上部ヒンジ33の回動側ヒンジ部38のヒンジ軸38aが固定側ヒンジ部35の長孔35b内における扉枠12側に寄った位置に位置していることにより、扉体13の全体が扉枠12の扉体収容凹部23に収容される閉鎖位置である非シフト位置S1と、上部ヒンジ33の回動側ヒンジ部38のヒンジ軸38aが固定側ヒンジ部35の長孔35b内における扉枠12側から離反した外側域に移動することにより、扉体13の上部側が扉枠12の扉体収容凹部23の外側へシフトするシフト位置S2との間で、傾斜移動(傾斜シフト)するのを許容する。さらに、扉体13の上部側がシフト位置S2にある状態で、扉体13の戸先13bが扉枠12の扉体収容凹部23に対して開閉移動するのを許容する。
【0102】
また、ラッチ錠29は、扉体13の上部側のシフトに影響がないように、扉体13の下部側に配設されている。
【0103】
また、シフト部材57は、扉枠12の側枠部18の上部側に配設されている。
【0104】
次に、第4の実施の形態の扉装置11の動作を説明する。
【0105】
扉体13が閉じている閉鎖状態では、扉体13の戸尻13aの上部側がクローザ15(図示していないが、第1の実施の形態と同様である)の引き込み力によって非シフト位置S1に引き込まれ、扉体13の全体が扉枠12の扉体収容凹部23に収容されている。また、シフト部材57は、反戸開き側Bへ回動して立ち上げた退避位置とし、扉体13の戸尻13aが扉枠12の扉体収容凹部23に収容されるのを許容している。
【0106】
扉体13を開くと、扉体13の自重により、上部ヒンジ33の回動側ヒンジ部38のヒンジ軸38aが固定側ヒンジ部35の長孔35b内における扉枠12側から離反した外側域に移動し、扉体13の上部側が自動的にシフト位置S2となる。
【0107】
扉体13を閉じる際には、クローザ15の引き込み力によって扉体13を扉枠12に閉じる方向に引き込んで自動的に回動閉鎖していく。このとき、扉体13の上部側がシフト位置S2にあるため、扉体13が閉じる際には、まず、扉体13の下部側が扉枠12の扉体収容凹部23に侵入し、扉枠12の底枠部21のパッキング25の部分を押し潰して止まるとともに、ラッチ錠29が扉枠12の側枠部19のストライクに係止される。
【0108】
続いて、クローザ15の引き込み力によって、扉体13の上部側が扉枠12の扉体収容凹部23に侵入して非シフト位置S1に引き込まれ、扉体13の全体が扉枠12の扉体収容凹部23に収容されるとともに扉体13の内面13dの周辺部全体が扉枠12のパッキング25を押し潰した状態でそのパッキング25に密着される。
【0109】
したがって、扉体13が閉じる際、まず、扉体13の下部側が扉枠12に閉じたときには、扉体13の上部側がシフト位置S2にあって、扉体13の上部側と扉枠12の戸当たり部24との間に隙間64が形成されるため、その隙間64に指や物が挟まりかけたときでも、挟まれる前にその隙間64から指や物を抜きやすくできる。
【0110】
また、シフト部材57を使用する場合には、扉体13が開いた状態で、シフト部材57を戸開き側Aに倒した規制位置とすることにより、扉体13を閉じる際、扉体13の上部側がシフト部材57に当接し、扉体13の上部側が扉枠12の扉体収容凹部23に収容されるのを規制し、つまり扉体13の上部側をシフト位置S2に保持する。これにより、扉体13の上部側と扉枠12との間に戸開き側Aと反戸開き側Bとに連通する隙間64が形成されるため、通風性が確保される。
【0111】
また、扉体13の上部側のシフトを解除するには、扉体13を開き、シフト部材57を反戸開き側Bへ回動させて立ち上げた退避位置とし、扉体13を閉じることにより、クローザ15の引き込み力によって、扉体13の上部側も含む全体を扉枠12に引き込み、シフトを解除する。
【0112】
このように、扉装置11では、ヒンジ14として上部ヒンジ33および下部ヒンジ34を備え、上部ヒンジ33は、固定側ヒンジ部35のヒンジ軸孔35aがシフト位置S2へ向けて長い長孔35bに形成されているため、扉体13の上部側を扉枠12の扉体収容凹部23の外側へ傾斜シフトさせることができ、扉体13に連結されたクローザ15によってシフト位置S2にシフトしている扉体13を確実に閉鎖できる。
【符号の説明】
【0113】
11 扉装置
12 扉枠
13 扉体
13a 戸尻
13b 戸先
14 ヒンジ
15 クローザ
22 開口部
23 扉体収容凹部
24 戸当たり部
25 パッキング
29 ラッチ錠
33 上部ヒンジ
34 下部ヒンジ
35 固定側ヒンジ部
35a ヒンジ軸孔
35b 長孔
36 第1のヒンジ軸
37 第2のヒンジ軸
38 回動側ヒンジ部
38a ヒンジ軸
46 シフト手段
47 シフト用付勢体としてのねじりばね
57 シフト部材
61 開放用付勢体としての圧縮ばね
S2 シフト位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側域に開口部を有し、一面側に開口する扉体収容凹部が形成されているとともにこの扉体収容凹部の他面側に戸当たり部が形成されている扉枠と、
この扉枠の扉体収容凹部に収容されて前記扉枠の開口部を閉鎖する扉体と、
前記扉枠に対して前記扉体の戸尻を回動可能に支持し、前記扉体の戸先が前記扉枠の扉体収容凹部に収容されている状態で前記扉体の戸尻が前記扉枠の扉体収容凹部の外側のシフト位置へシフトするのを許容するとともに、前記扉体の戸尻が前記シフト位置にある状態で前記扉体の戸先が前記扉枠の扉体収容凹部に対して開閉するのを許容するヒンジと
を具備していることを特徴とする扉装置。
【請求項2】
前記ヒンジは、前記扉枠に取り付けられる固定側ヒンジ部、および一端が前記固定側ヒンジ部に対して第1のヒンジ軸によって回動可能に支持されるとともに他端が前記扉体の戸尻に第2のヒンジ軸によって回動可能に支持される回動側ヒンジ部を有し、前記扉体の戸尻を前記シフト位置へシフト可能とする
ことを特徴とする請求項1記載の扉装置。
【請求項3】
前記扉体を閉じるときには、前記扉体の戸尻を前記シフト位置へシフトさせておくシフト手段を具備している
ことを特徴とする請求項2記載の扉装置。
【請求項4】
前記シフト手段は、前記ヒンジの第1のヒンジ軸に対する前記扉体の回動抵抗が前記第2のヒンジ軸に対する前記扉体の回転抵抗より大きい
ことを特徴とする請求項3記載の扉装置。
【請求項5】
前記シフト手段は、前記ヒンジの回動側ヒンジ部と前記扉体との間に介在されて、前記扉体の戸尻を前記シフト位置へシフトするように付勢するシフト用付勢体を有する
ことを特徴とする請求項3記載の扉装置。
【請求項6】
前記扉枠の戸当たり部に取り付けられたパッキングと、
前記扉体の戸尻寄り位置に連結されて前記扉体を閉鎖方向に引き込むクローザとを具備している
ことを特徴とする請求項3ないし5いずれか一記載の扉装置。
【請求項7】
前記パッキングは、環状に形成されている
ことを特徴とする請求項6記載の扉装置。
【請求項8】
前記ヒンジは、前記扉体の戸尻を前記シフト位置から元の非シフト位置に戻す方向に付勢するシフト戻し付勢体を有している
ことを特徴とする請求項2記載の扉装置。
【請求項9】
前記ヒンジの第1のヒンジ軸に対する前記扉体の回動抵抗が前記第2のヒンジ軸に対する前記扉体の回転抵抗より小さい
ことを特徴とする請求項2記載の扉装置。
【請求項10】
前記ヒンジは、前記扉枠に取り付けられるとともにヒンジ軸孔が設けられた固定側ヒンジ部、および前記扉体の戸尻に取り付けられるとともに前記固定側ヒンジ部のヒンジ軸孔に回動可能に係合するヒンジ軸が突設された回動側ヒンジ部をそれぞれ有する上部ヒンジおよび下部ヒンジを備え、
前記下部ヒンジは、前記固定側ヒンジ部のヒンジ軸孔が前記扉枠の扉体収容凹部の外側へ向けて長い長孔に形成され、前記扉体の戸尻を前記シフト位置へシフト可能とする
ことを特徴とする請求項1記載の扉装置。
【請求項11】
前記ヒンジは、前記扉枠に取り付けられるとともにヒンジ軸孔が設けられた固定側ヒンジ部、および前記扉体の戸尻に取り付けられるとともに前記固定側ヒンジ部のヒンジ軸孔に回動可能に係合するヒンジ軸が突設された回動側ヒンジ部を有する上部ヒンジおよび下部ヒンジを備え、前記上部ヒンジは、前記固定側ヒンジ部のヒンジ軸孔が前記シフト位置へ向けて長い長孔に形成され、前記扉体の戸尻を前記扉枠の扉体収容凹部の外側へシフト可能とし、
前記扉体の上部側に連結されて前記扉体を閉鎖方向に引き込むクローザを具備している
ことを特徴とする請求項1記載の扉装置。
【請求項12】
前記扉体の戸先には、前記扉枠側に係合するラッチ錠およびデットボルト錠の少なくとも一方が設けられ、これらラッチ錠およびデットボルト錠の少なくとも一方が前記扉枠側に係合している状態で前記ヒンジによって前記扉体の戸尻が前記シフト位置へシフトするのを許容する
ことを特徴とする請求項1ないし11いずれか一記載の扉装置。
【請求項13】
前記扉枠に設けられ、前記扉体の戸尻が前記シフト位置へシフトした位置でその扉体収容凹部に収容されるのを規制する規制位置と前記扉体の戸尻が前記扉枠の扉体収容凹部に収容されるのを許容する退避位置との間で移動可能とするシフト部材を具備している
ことを特徴とする請求項1ないし12いずれか一記載の扉装置。
【請求項14】
前記クローザによって前記扉体を閉鎖する引き込み力で反発力が蓄積され、前記扉体の戸先側を開放方向に付勢する開放用付勢体を具備している
ことを特徴とする請求項6、7および11いずれか一記載の扉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−38309(P2011−38309A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186335(P2009−186335)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】