扉開閉装置
【課題】例えば、回動機構として、機構構成部分を形成容易にしたり作動特性を良好にしたり、開位置で扉の基体側からの張出量を抑える。
【解決手段】扉3が基体2に対し回動機構を介して閉位置と開位置とに切り換えられる扉開閉装置において、前記回動機構は、扉3が支持用アーム32及び該アームに設けられた円弧状ギア部32a並びに該ギア部の円弧略中心に設けられた摺動部34を有していると共に、基体2が所定間隔を保って互いに略平行に設けられたギア部32aと噛み合うラック部11及び摺動部34の動きを案内するガイド部13を有し、扉3がラック部11及びガイド部13に沿って開位置と閉位置とに切り換えられる。
【解決手段】扉3が基体2に対し回動機構を介して閉位置と開位置とに切り換えられる扉開閉装置において、前記回動機構は、扉3が支持用アーム32及び該アームに設けられた円弧状ギア部32a並びに該ギア部の円弧略中心に設けられた摺動部34を有していると共に、基体2が所定間隔を保って互いに略平行に設けられたギア部32aと噛み合うラック部11及び摺動部34の動きを案内するガイド部13を有し、扉3がラック部11及びガイド部13に沿って開位置と閉位置とに切り換えられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉を基体に対し回動機構を介して開閉する扉開閉装置に関する。なお、本明細書において、「基体」は各種のケースやハウジング等を含み、「扉」は蓋や遮蔽板等を含む広義なものである。また、「ラッチ機構」はロックや係止機構と実質的に同じ意味である。
【背景技術】
【0002】
図11は特許文献1の扉開閉装置を、(a)が扉の閉位置、(b)が扉の開位置で示している。この扉開閉装置は、扉3が基体2に対し回動機構を介し閉位置と開位置とに切り換えられ、閉位置でラッチ機構を介して解除可能に係止される。ここで、基体2は、上側がフランジ部26で縁取りされ、側壁23が後側23aを前側23bに比べて外へ張り出しており、該張出端面に内外を連通する窓部を形成している。扉3は、基体2の内側から前記窓部を通して外へ配置される支持用アーム31を有している。そして、回動機構特徴は、扉3のアーム31に設けられた円弧状ギア部37及び該ギア部37の円弧中心に付設された回転ギア7を有していること、基体2が弓形リブ27に設けられてギア部37と噛み合う内歯形の第1固定ギア部27a及び該第1固定ギア27aの内側に設けられて回転ギア7と噛み合う歯車形第2固定ギア部28を有していること、回転ギア7がダンパー手段6の出力軸に装着されていることにある。また、ラッチ機構4は、扉3に突設した係合突部34を基体2側に組み付けられているプッシュ・プッシュ係止機構(この機構は、プッシュオープン機構、又は、プッシュロック・プッシュオープン機構と称されることもある)に係脱する構成であり、扉3が付勢手段5の付勢力に抗して開から閉位置へ押し操作されると、扉側の係合突部34を係止し、扉3が更に閉方向へ押されることで係止解除する。なお、付勢手段5は、コイル形のばね部材であり、一端5aが基体側に設けられた突起29に係止され、他端5bがアーム側に設けられた軸部35に係止されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−129742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献1の扉開閉装置では、扉3が回動機構を構成している第1固定ギア部27aに沿った軌跡で開閉動作される。すなわち、回動機構としては、扉3が閉から開位置、開から閉位置に回動切り換えられるとき、扉3の回動支点を内歯形の第1固定ギア部27aに応じ下又は上に動かすことにより、開位置で扉3の基体2内からの張出量を抑えたり、ダンパー手段6の制動と共にギア同士の噛み合いに起因した良好な作動を得られるようにする。しかし、以上の回動機構では、円弧状ギア部37が第2固定ギア28と同心の第1固定ギア部27aに噛み合わせられるため扉の開閉軌跡を決めるときの自由度に欠け、しかもギア間の精度がだしづらく、ギア間の精度が出ないと、確実な作動が得られない。一方、ラッチ機構4としては、扉3が外力を受けたり熱変形すると、それが扉3に付設されている係合突部34に直ちに影響し、例えば、係合突部34の係止状態を不用意に解除したり誤作動を生じる虞があった。また、扉3が内面に突設した係合突部34を介して係脱される関係で、扉の開位置で係合突部34が基体内の上方に突出して外観を損ねたり、基体2内に物品を出し入れする際に邪魔となる。
【0005】
本発明の目的は、以上のような課題を解消して、回動機構としては、特に、機構構成を簡素化したり切換作動特性を良好にして使い勝手をより向上する。ラッチ機構としては、特に、外観特性を改善したり扉の変形等によっても誤作動を生じないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1の発明は、主に回動機構から特定したもので、扉が基体に対し回動機構を介して閉位置と開位置とに切り換えられる扉開閉装置において、前記回動機構は、前記扉が支持用アーム及び前記アームに設けられた円弧状ギア部並びに前記ギア部の円弧略中心に設けられた摺動部を有していると共に、前記基体が所定間隔を保って互いに略平行に設けられた前記円弧状ギア部と噛み合うラック部及び前記摺動部の動きを案内するガイド部を有し、前記扉が前記ラック部及びガイド部に沿って開位置と閉位置とに切り換えられることを特徴としている。
【0007】
以上の扉開閉装置は次のように具体化されることがより好ましい。
・前記基体側のガイド部が第2ラック部として形成されていると共に、前記扉側の摺動部が前記第2ラック部に噛み合う歯車である構成(請求項2)、
・前記基体に対し摺動可能に組み付けられ、かつ前記扉に作動連結されているスライダーと、前記スライダーを一方向へ付勢している付勢手段とを有し、前記扉が前記スライダーの摺動により開閉されると共に、前記付勢手段の付勢力に抗して開位置から閉位置に切り換えられる構成(請求項3)、
・前記扉がリンクを介して前記スライダーに揺動自在に連結されていると共に、前記リンクとの間に介在されたばね部材を有している構成(請求項4)、
・前記スライダーに取り付けられたロータリー式ダンパー手段を有し、該ダンパー手段の出力軸に装着された回転ギアを前記基体に設けられたラック歯に噛み合わせている構成(請求項5)である。
【0008】
また、上記した目的を達成するために、請求項6と7の発明は回動機構及びラッチ機構から特定したものである。すなわち、請求項6の発明は、扉が基体に対し回動機構を介して閉位置と開位置とに切り換えられ、前記閉位置でラッチ機構を介して解除可能に係止される扉開閉装置において、前記回動機構は請求項2から5の何れかの機構を採用していると共に、前記ラッチ機構は前記スライダー及び前記基体に対応して設けられた係脱機構部と、前記扉に設けられた解除用ノブとを有し、前記扉を付勢力に抗して開位置から閉位置方向へ切り換えられたときに前記係脱機構部を介して係止し、前記ノブの操作により係止解除することを特徴としている。これに対し、請求項7の発明は、扉が基体に対し回動機構を介して閉位置と開位置とに切り換えられ、前記閉位置でラッチ機構を介して解除可能に係止される扉開閉装置において、前記回動機構は請求項2から4の何れかの機構を採用していると共に、前記ラッチ機構は前記スライダー及び前記基体に対応して設けられて、前記扉を付勢力に抗して開位置から閉位置方向へ切り換えられたときに係止し、更に前記扉を同方向へ押して手を離すと係止解除するプッシュ・プッシュ係止機構であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
・請求項1の発明では、例えば、文献1の従来機構に比べて、ラック部(第1ラック部)及びガイド部が所定間隔を保っているため簡易となり、扉の開閉軌跡を決める上で設計自由度を拡大できる。
・請求項2の発明では、扉が基体側のラック部(第1ラック部)に対し支持アーム側の円弧状ギア部を噛み合わせ、第2ラック部に対し支持アーム側の歯車を噛み合わせた状態でより良好かつ安定した切り換え作動が実現される。
・請求項3の発明では、扉が基体に対するスライダーの摺動により開閉されるようにしたので、開閉作動をスライダーを介してより良好に維持したり、扉を基体側の対応面により接近しながら開閉されるようにしたり、形態例のごとく付勢手段の付勢力を扉側へ左右均等に加わるよう設定容易にする。
・請求項4の発明では、扉がスライダーにリンクを介して連結されているため動きが異なる扉(回動と移動)とスライダー(直線移動)との間に不要な応力が生じないようにリンクで吸収し、また、扉とリンクとの間に介在されたばね部材により扉の開及び閉位置でのがたつきを吸収したり、例えば、扉がスライダーの移動(付勢手段の付勢力による移動)に伴って閉から開方向へ切り換えられるときにばね部材をバネチャージするようにして扉の均等な動きを実現し易くする。
・請求項5の発明では、扉の開又は/及び閉速度をロータリー式ダンパー手段で制動する場合、該ダンパー手段が直線運動するスライダーに取り付けられることでダンパー手段に予定外の外力を加わらないようにして、ダンパー手段の破損等を防止する。
【0010】
・請求項6と7の発明では、係脱機構部やプッシュ・プッシュ係止機構を扉と基体との間ではなく、スライダーと基体との間に設けることで、例えば、扉に加わる外力や熱変形等で不用意に係止解除される虞を解消できるようにする。また、請求項6の場合は、係脱機構部を介した扉の係止状態を解除用ノブの操作により係止解除するため手操作となるが、誤作動の虞を確実に解消できる。請求項7の場合は、プッシュ・プッシュ係止機構の利点、つまり係止と係止解除を共に扉の押し操作により行えるため操作性に優れ、解除用ノブ等を必要とないため外観特性を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の最良な形態を図面を参照しながら説明する。なお、図1〜図9は扉開閉装置を適用したボックス構造を示し、図10はラッチ機構の他の例を示している。以下の説明では、概要、構造、作動、変形例の順に詳述する。
【0012】
(概要)形態例のボックス1は、箱状基体2が一側面に開口部を有し、該開口部が本発明の扉開閉装置を適用した扉3により開閉される。基体2は、扉3で開閉される開口部又はそれに相当する操作盤等の操作面(ここではそのような態様を含めて便宜上、開口と称する)を有しておればよく、適用製品に応じて設計される。よって、扉3も、閉位置で略垂直方向、開位置で略水平方向に配置されるものに限られず、例えば、基体が上側を開口しており、閉位置で略水平方向、開位置で略垂直方向に配置される態様でもよい。そして、扉開閉装置の特徴は、回動機構に関係してスライダー4と、付勢手段としてのコンストンバネ5と、制動用のダンパー手段6などを有し、ラッチ機構に関係して解除ノブ7などを有している。
【0013】
(構造)基体2は、図5に示されるごとく、上下面20,21及び両側面22と背面23により内部を区画し前側を開口した容器状をなしている。上面20には、前両側に突出された取付片部20aと、左右中間で前後方向に延びている配置板24と、配置板24の前側で前後方向に延びている係止壁部29(図9を参照)などが設けられている。このうち、配置板24は、略矩形状をなし、両側のうち、一側に沿って設けられている歯形状のラック歯25と、他側に沿って設けられている案内壁部26と、後側の略中間に隙間を保って対に突設されている支持部27とを有している。係止壁部29は、ラッチ機構の主要部を構成している後述するストライカー8を係止する箇所であり、前片側がテーパー状の誘導面29aに形成され、前端が係止面29bに設定されている。なお、係止壁部29は配置板24側に形成してもよい。下面21には後両側に突出された取付片部21aが設けられている
【0014】
両側面22は、下側22aが上側22bより外に張り出しており、その段差部から上側に略矩形状の枠部材10がねじ等の手段で取り付けられている。枠部材10は、多数の縦リブ22cに支持されて、前より後側を高くした傾斜状態に配設され、枠下片部及び枠上片部の内面にそれぞれ対向して設けられた歯形状の第1ラック部11及び第2ラック部12と、第2ラック部12の下側に位置しかつ該第2ラック部12に沿って設けられているガイド溝13(図1を参照)とを有している。
【0015】
配置部24には、スライダー4が摺動自在に組み込まれると共に、コンストンバネ5が両支持部27に保持される。すなわち、スライダー4は、作図上一部を省略したり簡略化しているが、両側が配置部24の対応側縁を摺動自在に挟み込む略コ形状をなし、中間部40が一段高い逆凹状に形成されている。また、中間部40と一方側との間の部分41にはロータリー式のダンパー手段6が取り付けられている。ダンパー手段6は、オイルダンパー等からなり、作動油等の抵抗を受けている回転軸と、該回転軸の先端側に装着されたギアとを有し、取付状態で前記ギアがラック歯25の一部と噛合している。このため、ダンパー手段6は、スライダー4の摺動速度を制動すると共に、配置部24に対するスライダー4の不用意ながたつきを吸収可能にする。
【0016】
コンストンバネ5は、本体が両支持部27に対し保持され、該本体から引き出された板バネ5aの引き出し端側をスライダー4の中間部40の逆凹状内を通って、中間部40の前部分に設けられた掛止部40a(図8を参照)に係止した状態で、スライダー4を付勢力により常に後方へ付勢している。これに対し、中間部と他方側との間の部分42には前方へ突出した延長部43が設けられている。延長部43は、図9から推察されるように、片側部を開口した空洞部43aを有し、該空洞部43aに対しストライカー8及びストライカー8を突出する方向へ付勢する不図示の付勢手段を配置している。ストライカー8は、空洞部43aに配置される支持部8aと、支持部8aの突出端に設けられた小ブロック状の係合部8bと、係合部8bの前端に下設された当接部8cとを有している。当接部8cの下端面はテーパー状に形成されている。そして、ストライカー8は、スライダー4がコンストンバネ5の付勢力に抗して前方移動される途中で、誘導面29aに当接し、該誘導面29aから受ける反力により付勢力に抗して空洞部内へ後退されながら該誘導面を通り過ぎると、図9(a)のごとく付勢力により再び突出して、前端の係止面29bに係止される。該係止状態では、スライダー4がコンストンバネ5の付勢力に抗して最前方位置(扉の開位置)に保持される。
【0017】
扉3は、図8に示されるごとく接合された外板30及び内板31で形成され、全体が側面視で略くの字形に湾曲され、ラッチ機構を構成している解除用ノブ7及びばね部材18が内部に組み込まれている。ここで、ノブ7は、図9に示されるごとく全体が上下に長いレバー状をなし、下側が一段幅広に形成され、その幅広になった外面に突設された操作部7aと、上側が折り曲げられ、その折曲部7bの上向きとなった端面に形成されたテーパー状の押圧部7cと、ばね部材18を位置決め支持する不図示の突起とを有している。なお、当接部8c及び押圧部7cは、押圧部7cが当接部8cに接した状態で上昇されると、ストライカー8が退避方向へ動き易いテーパー形状に設定されている。これに対し、外板30には、前記操作部6aを内側より外へ上下動可能に配置する通し孔30aが下側中間部に設けられている。内板31には、両側に対向している支持用アーム32と、両アーム32の内側に突出している遮蔽用の横リブ31aと、上側中間部に突出している対の取付用片部35と、一方の片部35の外側に開口されて前記折曲部7bを上下動可能に挿通する細長い通し孔36とが設けられている。符号31bはノブ7の下側部分を配置する逃げ用の張出部である。また、外板30及び内板31は、対向面に不図示のリブなどを有し、そのリブなどで形成される空間部3a(図4を参照)にノブ7をコイル形のばね部材18と共に可動自在に配置している。
【0018】
支持用アーム32は、先端外周に形成されて第1ラック11と噛み合う円弧状ギア部32aと、ギア部32aの円弧中心に止め具15などを介して枢支されて第2ラック部12と噛み合う歯車33と、歯車33と同軸線上に配置されてガイド溝13に嵌合された状態で移動される突起状の摺動部34とを有している。そして、この形態では、回動機構として、第1ラック部11に対する円弧状ギア部32aの噛み合い状態での動きと、第2ラック部12に対する歯車33の噛み合い状態での動きと、ガイド溝13に対する摺動部34の嵌合状態での動きにより扉3の回動及び移動運動を伴った開閉軌跡をほぼ確定すると共に、次に述べるように扉3をスライダー4にリンク9を介して連結することで扉3の良好な開閉作動を実現している。
【0019】
すなわち、リンク9は、図8に示されるように、前側が同軸線上に設けられ2カ所の突起9aを扉側の対応する片部35の軸孔35aに嵌合した状態で扉3に対し揺動自在に連結され、後側がスライダー側中間部40の前側に設けられた掛止部40aに引っ掛けた状態でスライダー4に対し揺動自在に連結されている。また、リンク9と扉3との間にはコイルスプリング16が介在されている。該コイルスプリング16は、突起9a及び対応端面から突出した2カ所の支持部9bに支持され、一端が扉側に係止され、他端がリンク側に係止されて、扉3がスライダー4の後方移動により回動及び移動運動するのに伴って付勢力を蓄積増大するよう巻き込まれる。但し、扉3は、リンク9を介さず直にスライダー4に揺動自在に連結し、かつ、該連結部にコイルスプリング16に相当するばね部材を介在するようにしてもよい。
【0020】
(作動)図7及び図9(a)は扉3が基体2の開口部を完全に閉じた閉位置の状態である。この閉位置において、ラッチ機構としては、スライダー4がコンストンバネ5の付勢力に抗して最前方位置にあり、図9(a)のごとくスライダー側のストライカー8を係止壁部29の係止面29bに係止した状態で保持され、扉3がその位置規制されたスライダー4にリンク9を介して保持されている。回動機構としては、扉両側のアーム32において、円弧状ギア部32aが第1ラック部11の歯と噛み合い、歯車33が第2ラック部12の歯と噛み合い、摺動部34がガイド溝13と嵌合している。
【0021】
扉3を閉位置から開に切り換えるときは、ノブ7が操作部7aを介して上向きに押圧操作されると、ばね部材18の付勢力に抗して上方移動されて、押圧部7cがストライカー側当接部8cの下端面に当接し、更に互いのテーパー形状の滑り作用によってストライカー8を付勢力に抗して空洞部43a内に後退させる。このようにして、ストライカー8は、後退されると、係合部8bが上記した係止壁部29の係止面29bから外れて、係止解除される。図9(b)はその係止解除時の状態を示している。なお、ノブ7は操作部6aから手を離すとばね部材18の付勢力により初期位置に移動される。この解除状態では、スライダー4がコンストンバネ5の付勢力により後方移動され、扉3がリンク9を介してそのスライダー4で駆動される。開位置では、扉3が前記した第1と第2ラック部11,12及びガイド溝13に沿った移動により基体2から張り出す張出部分を大きく減じており、外観特性等も改善されている。
【0022】
そして、扉3の開閉は、第1ラック部11に対する円弧状ギア部32aの噛み合い状態での動きと、第2ラック部12に対する歯車33の噛み合い状態での動きと、ガイド溝13に対する摺動部34の嵌合状態での動きにより扉3の回動及び移動運動を伴った軌跡となる。また、切換過程では、歯同士の噛み合いにより速度を緩和し、かつダンパー手段6による制動を受ける。なお、回動機構としては、例えば、第2ラック部12と歯車33との噛み合いを省略して、第1ラック部11と円弧状ギア部32aとの噛み合いと、ガイド溝13に対する摺動部34の嵌合状態での動きにより扉3の回動及び移動運動を伴った開閉軌跡をほぼ確定することも可能である。
【0023】
扉3を再び閉位置にする場合は、扉3をコンストンバネ5の付勢力などに抗して前側に引き寄せる。すると、今度は、前記とは逆に円弧状ギア部32aが第1ラック部11の歯に噛み合いながら、歯車33が第2ラック部12の歯と噛み合いながら、摺動部34がガイド溝13に案内されながら回動と下移動する。すると、ストライカー8は、スライダー4がコンストンバネ5の付勢力に抗して前方移動される途中で、誘導面29aに当接し、該誘導面29aから受ける反力により付勢力に抗して空洞部内へ後退されながら該誘導面を通り過ぎると、図9(a)のごとく付勢力により再び突出して、前端の係止面29bに係止される。該係止状態では、スライダー4がコンストンバネ5の付勢力に抗して最前方位置に保持され、扉3がそのスライダー4にリンク9を介して開位置に保持されることになる。
【0024】
以上の構造では、作動特徴として、まず、扉3の動きが回動及び移動運動であるため、直進運動するスライダー4との間に互いの動きを吸収するリンク9を介在するようにした点、扉3をスライダー4を介してコンストンバネ5の付勢力にて駆動する場合、扉3の重心点が移動する関係で扉3の開き速度が変化し易くなる(この例では扉が開くほど加速され易くなる)ので、扉3の開量(スライダー4の移動量)に比例して扉3の開き速度がコイルスプリング16の付勢作用で減速されるようにした点、コンストンバネ5及びコイルスプリング16の各付勢力を扉3の左右中間部で受けるようにして、扉3の両側に設けられた各アーム32のギア32aなどに極力均等な駆動力を伝達可能にしている点、ダンパー手段6を直進運動するスライダー4に設けるようにしてダンパー手段に予期せぬ外力が極力加わらないようにした点などでも工夫されている。
【0025】
(変形例)図10のラッチ機構は、扉3をリンク9及びスライダー4を介し、かつコンストンバネ5の付勢力に抗して開位置から閉位置方向へ切り換えたときに係止し、更に扉3を同方向へ押して手を離すと係止解除するプッシュ・プッシュ係止機構を採用したときの一例である。すなわち、この変形例では、プッシュ・プッシュ係止機構として、特開2004−137725や特願2004−201050等に記載されているラッチ装置50を基体側配置部24に設けた取付枠部24aに装着し、スライダー4の部分42の後端面に突設したストライカー45をラッチ装置50に係脱するようにしたものである。勿論、この場合には、上記形態のノブ7、ストライカー8、係止壁部29、扉側のノブ配置部などが省略される。ラッチ装置50は、一端側を開口したハウジング51と、ストライカー45と当接する突当部52及びカム溝53を有し、ハウジング51内に配置されてばね部材55の付勢力に抗して移動される摺動体54と、トレース用ピン部材56と、衝撃吸収用応動体57と、先端側の爪58a及び基端側のピン58bを有し、摺動体54に回転可能に枢支されている係合爪58とを備えている。このうち、係合爪58は、摺動体54の対応部に対し軸部を嵌合した状態で枢支されていて、摺動体54の移動により、摺動体内にほぼ退避した係止解除位置と、同図のごとく摺動体内から爪58aを突出してストライカー45を押さえる係止位置とに切り換えられる。係止解除位置では、摺動体54がばね部材55の付勢力でハウジング51の入口側に移動されると共に、係合爪58がハウジング内に設けられた不図示のリブにピン58bを乗り上げることでその状態を保つ。係止位置では、摺動体54がストライカー45の押し力によりばね部材55の付勢力に抗してハウジング内側に移動され、該移動後の位置でカム溝53及びピン部材56の係合を介し維持されると共に、係合爪58がピン58bを前記したリブの張出部から低くなった部分に移動し、かつ傾動して爪58aを摺動体内から突出する。つまり、以上の係止機構では、係合爪58が摺動体54に対するストライカー45の押し力(扉3の押操作によりリンク9を介してスライダー4を動かすこと)により係止解除位置から係止位置に切り換えられ、摺動体54に対するストライカー45の次の押し力により係止解除することから使い勝手に優れている。
【0026】
なお、本発明は、請求項1で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】形態例の扉開閉装置を適用したボックスを扉の開位置で示す外観図である。
【図2】図1のボックスを前側から見た正面図である。
【図3】図1のボックスを上から見た上面図である。
【図4】(a)は上記ボックスの側面図、(b)は図3のA−A線断面図である。
【図5】上記ボックスを扉の閉位置で示す外観図である。
【図6】図5のボックスを上から見た上面図である。
【図7】(a)は図6のボックスの側面図、(b)は図6のB−B線断面図である。
【図8】上記扉及びスライダー等の一部を破断して示す構成図である。
【図9】上記扉開閉装置のラッチ機構を模式的に示す図である。
【図10】上記ラッチ機構の他の例を示す図である。
【図11】特許文献1の扉開閉装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1…ボックス
2…基体(24は配置部、25はラック歯)
3…扉(32はアーム、32aは円弧状ギア部、33は歯車、34は摺動部)
4…スライダー(40は中間部、41と42は部分、43は空洞部)
5…コンストンバネ(付勢手段)
6…ダンパー手段
8…ストライカー(係脱機構部に相当し、8bは係合部、8cは当接部)
11…第1ラック部
12…第2ラック部
13…ガイド溝(ガイド部)
16…コイルスプリング(ばね部材)
29…係止壁部(係脱機構部に相当し、29bは係止面)
45…ストライカー
50…ラッチ装置(プッシュ・プッシュ係止機構)
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉を基体に対し回動機構を介して開閉する扉開閉装置に関する。なお、本明細書において、「基体」は各種のケースやハウジング等を含み、「扉」は蓋や遮蔽板等を含む広義なものである。また、「ラッチ機構」はロックや係止機構と実質的に同じ意味である。
【背景技術】
【0002】
図11は特許文献1の扉開閉装置を、(a)が扉の閉位置、(b)が扉の開位置で示している。この扉開閉装置は、扉3が基体2に対し回動機構を介し閉位置と開位置とに切り換えられ、閉位置でラッチ機構を介して解除可能に係止される。ここで、基体2は、上側がフランジ部26で縁取りされ、側壁23が後側23aを前側23bに比べて外へ張り出しており、該張出端面に内外を連通する窓部を形成している。扉3は、基体2の内側から前記窓部を通して外へ配置される支持用アーム31を有している。そして、回動機構特徴は、扉3のアーム31に設けられた円弧状ギア部37及び該ギア部37の円弧中心に付設された回転ギア7を有していること、基体2が弓形リブ27に設けられてギア部37と噛み合う内歯形の第1固定ギア部27a及び該第1固定ギア27aの内側に設けられて回転ギア7と噛み合う歯車形第2固定ギア部28を有していること、回転ギア7がダンパー手段6の出力軸に装着されていることにある。また、ラッチ機構4は、扉3に突設した係合突部34を基体2側に組み付けられているプッシュ・プッシュ係止機構(この機構は、プッシュオープン機構、又は、プッシュロック・プッシュオープン機構と称されることもある)に係脱する構成であり、扉3が付勢手段5の付勢力に抗して開から閉位置へ押し操作されると、扉側の係合突部34を係止し、扉3が更に閉方向へ押されることで係止解除する。なお、付勢手段5は、コイル形のばね部材であり、一端5aが基体側に設けられた突起29に係止され、他端5bがアーム側に設けられた軸部35に係止されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−129742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献1の扉開閉装置では、扉3が回動機構を構成している第1固定ギア部27aに沿った軌跡で開閉動作される。すなわち、回動機構としては、扉3が閉から開位置、開から閉位置に回動切り換えられるとき、扉3の回動支点を内歯形の第1固定ギア部27aに応じ下又は上に動かすことにより、開位置で扉3の基体2内からの張出量を抑えたり、ダンパー手段6の制動と共にギア同士の噛み合いに起因した良好な作動を得られるようにする。しかし、以上の回動機構では、円弧状ギア部37が第2固定ギア28と同心の第1固定ギア部27aに噛み合わせられるため扉の開閉軌跡を決めるときの自由度に欠け、しかもギア間の精度がだしづらく、ギア間の精度が出ないと、確実な作動が得られない。一方、ラッチ機構4としては、扉3が外力を受けたり熱変形すると、それが扉3に付設されている係合突部34に直ちに影響し、例えば、係合突部34の係止状態を不用意に解除したり誤作動を生じる虞があった。また、扉3が内面に突設した係合突部34を介して係脱される関係で、扉の開位置で係合突部34が基体内の上方に突出して外観を損ねたり、基体2内に物品を出し入れする際に邪魔となる。
【0005】
本発明の目的は、以上のような課題を解消して、回動機構としては、特に、機構構成を簡素化したり切換作動特性を良好にして使い勝手をより向上する。ラッチ機構としては、特に、外観特性を改善したり扉の変形等によっても誤作動を生じないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1の発明は、主に回動機構から特定したもので、扉が基体に対し回動機構を介して閉位置と開位置とに切り換えられる扉開閉装置において、前記回動機構は、前記扉が支持用アーム及び前記アームに設けられた円弧状ギア部並びに前記ギア部の円弧略中心に設けられた摺動部を有していると共に、前記基体が所定間隔を保って互いに略平行に設けられた前記円弧状ギア部と噛み合うラック部及び前記摺動部の動きを案内するガイド部を有し、前記扉が前記ラック部及びガイド部に沿って開位置と閉位置とに切り換えられることを特徴としている。
【0007】
以上の扉開閉装置は次のように具体化されることがより好ましい。
・前記基体側のガイド部が第2ラック部として形成されていると共に、前記扉側の摺動部が前記第2ラック部に噛み合う歯車である構成(請求項2)、
・前記基体に対し摺動可能に組み付けられ、かつ前記扉に作動連結されているスライダーと、前記スライダーを一方向へ付勢している付勢手段とを有し、前記扉が前記スライダーの摺動により開閉されると共に、前記付勢手段の付勢力に抗して開位置から閉位置に切り換えられる構成(請求項3)、
・前記扉がリンクを介して前記スライダーに揺動自在に連結されていると共に、前記リンクとの間に介在されたばね部材を有している構成(請求項4)、
・前記スライダーに取り付けられたロータリー式ダンパー手段を有し、該ダンパー手段の出力軸に装着された回転ギアを前記基体に設けられたラック歯に噛み合わせている構成(請求項5)である。
【0008】
また、上記した目的を達成するために、請求項6と7の発明は回動機構及びラッチ機構から特定したものである。すなわち、請求項6の発明は、扉が基体に対し回動機構を介して閉位置と開位置とに切り換えられ、前記閉位置でラッチ機構を介して解除可能に係止される扉開閉装置において、前記回動機構は請求項2から5の何れかの機構を採用していると共に、前記ラッチ機構は前記スライダー及び前記基体に対応して設けられた係脱機構部と、前記扉に設けられた解除用ノブとを有し、前記扉を付勢力に抗して開位置から閉位置方向へ切り換えられたときに前記係脱機構部を介して係止し、前記ノブの操作により係止解除することを特徴としている。これに対し、請求項7の発明は、扉が基体に対し回動機構を介して閉位置と開位置とに切り換えられ、前記閉位置でラッチ機構を介して解除可能に係止される扉開閉装置において、前記回動機構は請求項2から4の何れかの機構を採用していると共に、前記ラッチ機構は前記スライダー及び前記基体に対応して設けられて、前記扉を付勢力に抗して開位置から閉位置方向へ切り換えられたときに係止し、更に前記扉を同方向へ押して手を離すと係止解除するプッシュ・プッシュ係止機構であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
・請求項1の発明では、例えば、文献1の従来機構に比べて、ラック部(第1ラック部)及びガイド部が所定間隔を保っているため簡易となり、扉の開閉軌跡を決める上で設計自由度を拡大できる。
・請求項2の発明では、扉が基体側のラック部(第1ラック部)に対し支持アーム側の円弧状ギア部を噛み合わせ、第2ラック部に対し支持アーム側の歯車を噛み合わせた状態でより良好かつ安定した切り換え作動が実現される。
・請求項3の発明では、扉が基体に対するスライダーの摺動により開閉されるようにしたので、開閉作動をスライダーを介してより良好に維持したり、扉を基体側の対応面により接近しながら開閉されるようにしたり、形態例のごとく付勢手段の付勢力を扉側へ左右均等に加わるよう設定容易にする。
・請求項4の発明では、扉がスライダーにリンクを介して連結されているため動きが異なる扉(回動と移動)とスライダー(直線移動)との間に不要な応力が生じないようにリンクで吸収し、また、扉とリンクとの間に介在されたばね部材により扉の開及び閉位置でのがたつきを吸収したり、例えば、扉がスライダーの移動(付勢手段の付勢力による移動)に伴って閉から開方向へ切り換えられるときにばね部材をバネチャージするようにして扉の均等な動きを実現し易くする。
・請求項5の発明では、扉の開又は/及び閉速度をロータリー式ダンパー手段で制動する場合、該ダンパー手段が直線運動するスライダーに取り付けられることでダンパー手段に予定外の外力を加わらないようにして、ダンパー手段の破損等を防止する。
【0010】
・請求項6と7の発明では、係脱機構部やプッシュ・プッシュ係止機構を扉と基体との間ではなく、スライダーと基体との間に設けることで、例えば、扉に加わる外力や熱変形等で不用意に係止解除される虞を解消できるようにする。また、請求項6の場合は、係脱機構部を介した扉の係止状態を解除用ノブの操作により係止解除するため手操作となるが、誤作動の虞を確実に解消できる。請求項7の場合は、プッシュ・プッシュ係止機構の利点、つまり係止と係止解除を共に扉の押し操作により行えるため操作性に優れ、解除用ノブ等を必要とないため外観特性を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の最良な形態を図面を参照しながら説明する。なお、図1〜図9は扉開閉装置を適用したボックス構造を示し、図10はラッチ機構の他の例を示している。以下の説明では、概要、構造、作動、変形例の順に詳述する。
【0012】
(概要)形態例のボックス1は、箱状基体2が一側面に開口部を有し、該開口部が本発明の扉開閉装置を適用した扉3により開閉される。基体2は、扉3で開閉される開口部又はそれに相当する操作盤等の操作面(ここではそのような態様を含めて便宜上、開口と称する)を有しておればよく、適用製品に応じて設計される。よって、扉3も、閉位置で略垂直方向、開位置で略水平方向に配置されるものに限られず、例えば、基体が上側を開口しており、閉位置で略水平方向、開位置で略垂直方向に配置される態様でもよい。そして、扉開閉装置の特徴は、回動機構に関係してスライダー4と、付勢手段としてのコンストンバネ5と、制動用のダンパー手段6などを有し、ラッチ機構に関係して解除ノブ7などを有している。
【0013】
(構造)基体2は、図5に示されるごとく、上下面20,21及び両側面22と背面23により内部を区画し前側を開口した容器状をなしている。上面20には、前両側に突出された取付片部20aと、左右中間で前後方向に延びている配置板24と、配置板24の前側で前後方向に延びている係止壁部29(図9を参照)などが設けられている。このうち、配置板24は、略矩形状をなし、両側のうち、一側に沿って設けられている歯形状のラック歯25と、他側に沿って設けられている案内壁部26と、後側の略中間に隙間を保って対に突設されている支持部27とを有している。係止壁部29は、ラッチ機構の主要部を構成している後述するストライカー8を係止する箇所であり、前片側がテーパー状の誘導面29aに形成され、前端が係止面29bに設定されている。なお、係止壁部29は配置板24側に形成してもよい。下面21には後両側に突出された取付片部21aが設けられている
【0014】
両側面22は、下側22aが上側22bより外に張り出しており、その段差部から上側に略矩形状の枠部材10がねじ等の手段で取り付けられている。枠部材10は、多数の縦リブ22cに支持されて、前より後側を高くした傾斜状態に配設され、枠下片部及び枠上片部の内面にそれぞれ対向して設けられた歯形状の第1ラック部11及び第2ラック部12と、第2ラック部12の下側に位置しかつ該第2ラック部12に沿って設けられているガイド溝13(図1を参照)とを有している。
【0015】
配置部24には、スライダー4が摺動自在に組み込まれると共に、コンストンバネ5が両支持部27に保持される。すなわち、スライダー4は、作図上一部を省略したり簡略化しているが、両側が配置部24の対応側縁を摺動自在に挟み込む略コ形状をなし、中間部40が一段高い逆凹状に形成されている。また、中間部40と一方側との間の部分41にはロータリー式のダンパー手段6が取り付けられている。ダンパー手段6は、オイルダンパー等からなり、作動油等の抵抗を受けている回転軸と、該回転軸の先端側に装着されたギアとを有し、取付状態で前記ギアがラック歯25の一部と噛合している。このため、ダンパー手段6は、スライダー4の摺動速度を制動すると共に、配置部24に対するスライダー4の不用意ながたつきを吸収可能にする。
【0016】
コンストンバネ5は、本体が両支持部27に対し保持され、該本体から引き出された板バネ5aの引き出し端側をスライダー4の中間部40の逆凹状内を通って、中間部40の前部分に設けられた掛止部40a(図8を参照)に係止した状態で、スライダー4を付勢力により常に後方へ付勢している。これに対し、中間部と他方側との間の部分42には前方へ突出した延長部43が設けられている。延長部43は、図9から推察されるように、片側部を開口した空洞部43aを有し、該空洞部43aに対しストライカー8及びストライカー8を突出する方向へ付勢する不図示の付勢手段を配置している。ストライカー8は、空洞部43aに配置される支持部8aと、支持部8aの突出端に設けられた小ブロック状の係合部8bと、係合部8bの前端に下設された当接部8cとを有している。当接部8cの下端面はテーパー状に形成されている。そして、ストライカー8は、スライダー4がコンストンバネ5の付勢力に抗して前方移動される途中で、誘導面29aに当接し、該誘導面29aから受ける反力により付勢力に抗して空洞部内へ後退されながら該誘導面を通り過ぎると、図9(a)のごとく付勢力により再び突出して、前端の係止面29bに係止される。該係止状態では、スライダー4がコンストンバネ5の付勢力に抗して最前方位置(扉の開位置)に保持される。
【0017】
扉3は、図8に示されるごとく接合された外板30及び内板31で形成され、全体が側面視で略くの字形に湾曲され、ラッチ機構を構成している解除用ノブ7及びばね部材18が内部に組み込まれている。ここで、ノブ7は、図9に示されるごとく全体が上下に長いレバー状をなし、下側が一段幅広に形成され、その幅広になった外面に突設された操作部7aと、上側が折り曲げられ、その折曲部7bの上向きとなった端面に形成されたテーパー状の押圧部7cと、ばね部材18を位置決め支持する不図示の突起とを有している。なお、当接部8c及び押圧部7cは、押圧部7cが当接部8cに接した状態で上昇されると、ストライカー8が退避方向へ動き易いテーパー形状に設定されている。これに対し、外板30には、前記操作部6aを内側より外へ上下動可能に配置する通し孔30aが下側中間部に設けられている。内板31には、両側に対向している支持用アーム32と、両アーム32の内側に突出している遮蔽用の横リブ31aと、上側中間部に突出している対の取付用片部35と、一方の片部35の外側に開口されて前記折曲部7bを上下動可能に挿通する細長い通し孔36とが設けられている。符号31bはノブ7の下側部分を配置する逃げ用の張出部である。また、外板30及び内板31は、対向面に不図示のリブなどを有し、そのリブなどで形成される空間部3a(図4を参照)にノブ7をコイル形のばね部材18と共に可動自在に配置している。
【0018】
支持用アーム32は、先端外周に形成されて第1ラック11と噛み合う円弧状ギア部32aと、ギア部32aの円弧中心に止め具15などを介して枢支されて第2ラック部12と噛み合う歯車33と、歯車33と同軸線上に配置されてガイド溝13に嵌合された状態で移動される突起状の摺動部34とを有している。そして、この形態では、回動機構として、第1ラック部11に対する円弧状ギア部32aの噛み合い状態での動きと、第2ラック部12に対する歯車33の噛み合い状態での動きと、ガイド溝13に対する摺動部34の嵌合状態での動きにより扉3の回動及び移動運動を伴った開閉軌跡をほぼ確定すると共に、次に述べるように扉3をスライダー4にリンク9を介して連結することで扉3の良好な開閉作動を実現している。
【0019】
すなわち、リンク9は、図8に示されるように、前側が同軸線上に設けられ2カ所の突起9aを扉側の対応する片部35の軸孔35aに嵌合した状態で扉3に対し揺動自在に連結され、後側がスライダー側中間部40の前側に設けられた掛止部40aに引っ掛けた状態でスライダー4に対し揺動自在に連結されている。また、リンク9と扉3との間にはコイルスプリング16が介在されている。該コイルスプリング16は、突起9a及び対応端面から突出した2カ所の支持部9bに支持され、一端が扉側に係止され、他端がリンク側に係止されて、扉3がスライダー4の後方移動により回動及び移動運動するのに伴って付勢力を蓄積増大するよう巻き込まれる。但し、扉3は、リンク9を介さず直にスライダー4に揺動自在に連結し、かつ、該連結部にコイルスプリング16に相当するばね部材を介在するようにしてもよい。
【0020】
(作動)図7及び図9(a)は扉3が基体2の開口部を完全に閉じた閉位置の状態である。この閉位置において、ラッチ機構としては、スライダー4がコンストンバネ5の付勢力に抗して最前方位置にあり、図9(a)のごとくスライダー側のストライカー8を係止壁部29の係止面29bに係止した状態で保持され、扉3がその位置規制されたスライダー4にリンク9を介して保持されている。回動機構としては、扉両側のアーム32において、円弧状ギア部32aが第1ラック部11の歯と噛み合い、歯車33が第2ラック部12の歯と噛み合い、摺動部34がガイド溝13と嵌合している。
【0021】
扉3を閉位置から開に切り換えるときは、ノブ7が操作部7aを介して上向きに押圧操作されると、ばね部材18の付勢力に抗して上方移動されて、押圧部7cがストライカー側当接部8cの下端面に当接し、更に互いのテーパー形状の滑り作用によってストライカー8を付勢力に抗して空洞部43a内に後退させる。このようにして、ストライカー8は、後退されると、係合部8bが上記した係止壁部29の係止面29bから外れて、係止解除される。図9(b)はその係止解除時の状態を示している。なお、ノブ7は操作部6aから手を離すとばね部材18の付勢力により初期位置に移動される。この解除状態では、スライダー4がコンストンバネ5の付勢力により後方移動され、扉3がリンク9を介してそのスライダー4で駆動される。開位置では、扉3が前記した第1と第2ラック部11,12及びガイド溝13に沿った移動により基体2から張り出す張出部分を大きく減じており、外観特性等も改善されている。
【0022】
そして、扉3の開閉は、第1ラック部11に対する円弧状ギア部32aの噛み合い状態での動きと、第2ラック部12に対する歯車33の噛み合い状態での動きと、ガイド溝13に対する摺動部34の嵌合状態での動きにより扉3の回動及び移動運動を伴った軌跡となる。また、切換過程では、歯同士の噛み合いにより速度を緩和し、かつダンパー手段6による制動を受ける。なお、回動機構としては、例えば、第2ラック部12と歯車33との噛み合いを省略して、第1ラック部11と円弧状ギア部32aとの噛み合いと、ガイド溝13に対する摺動部34の嵌合状態での動きにより扉3の回動及び移動運動を伴った開閉軌跡をほぼ確定することも可能である。
【0023】
扉3を再び閉位置にする場合は、扉3をコンストンバネ5の付勢力などに抗して前側に引き寄せる。すると、今度は、前記とは逆に円弧状ギア部32aが第1ラック部11の歯に噛み合いながら、歯車33が第2ラック部12の歯と噛み合いながら、摺動部34がガイド溝13に案内されながら回動と下移動する。すると、ストライカー8は、スライダー4がコンストンバネ5の付勢力に抗して前方移動される途中で、誘導面29aに当接し、該誘導面29aから受ける反力により付勢力に抗して空洞部内へ後退されながら該誘導面を通り過ぎると、図9(a)のごとく付勢力により再び突出して、前端の係止面29bに係止される。該係止状態では、スライダー4がコンストンバネ5の付勢力に抗して最前方位置に保持され、扉3がそのスライダー4にリンク9を介して開位置に保持されることになる。
【0024】
以上の構造では、作動特徴として、まず、扉3の動きが回動及び移動運動であるため、直進運動するスライダー4との間に互いの動きを吸収するリンク9を介在するようにした点、扉3をスライダー4を介してコンストンバネ5の付勢力にて駆動する場合、扉3の重心点が移動する関係で扉3の開き速度が変化し易くなる(この例では扉が開くほど加速され易くなる)ので、扉3の開量(スライダー4の移動量)に比例して扉3の開き速度がコイルスプリング16の付勢作用で減速されるようにした点、コンストンバネ5及びコイルスプリング16の各付勢力を扉3の左右中間部で受けるようにして、扉3の両側に設けられた各アーム32のギア32aなどに極力均等な駆動力を伝達可能にしている点、ダンパー手段6を直進運動するスライダー4に設けるようにしてダンパー手段に予期せぬ外力が極力加わらないようにした点などでも工夫されている。
【0025】
(変形例)図10のラッチ機構は、扉3をリンク9及びスライダー4を介し、かつコンストンバネ5の付勢力に抗して開位置から閉位置方向へ切り換えたときに係止し、更に扉3を同方向へ押して手を離すと係止解除するプッシュ・プッシュ係止機構を採用したときの一例である。すなわち、この変形例では、プッシュ・プッシュ係止機構として、特開2004−137725や特願2004−201050等に記載されているラッチ装置50を基体側配置部24に設けた取付枠部24aに装着し、スライダー4の部分42の後端面に突設したストライカー45をラッチ装置50に係脱するようにしたものである。勿論、この場合には、上記形態のノブ7、ストライカー8、係止壁部29、扉側のノブ配置部などが省略される。ラッチ装置50は、一端側を開口したハウジング51と、ストライカー45と当接する突当部52及びカム溝53を有し、ハウジング51内に配置されてばね部材55の付勢力に抗して移動される摺動体54と、トレース用ピン部材56と、衝撃吸収用応動体57と、先端側の爪58a及び基端側のピン58bを有し、摺動体54に回転可能に枢支されている係合爪58とを備えている。このうち、係合爪58は、摺動体54の対応部に対し軸部を嵌合した状態で枢支されていて、摺動体54の移動により、摺動体内にほぼ退避した係止解除位置と、同図のごとく摺動体内から爪58aを突出してストライカー45を押さえる係止位置とに切り換えられる。係止解除位置では、摺動体54がばね部材55の付勢力でハウジング51の入口側に移動されると共に、係合爪58がハウジング内に設けられた不図示のリブにピン58bを乗り上げることでその状態を保つ。係止位置では、摺動体54がストライカー45の押し力によりばね部材55の付勢力に抗してハウジング内側に移動され、該移動後の位置でカム溝53及びピン部材56の係合を介し維持されると共に、係合爪58がピン58bを前記したリブの張出部から低くなった部分に移動し、かつ傾動して爪58aを摺動体内から突出する。つまり、以上の係止機構では、係合爪58が摺動体54に対するストライカー45の押し力(扉3の押操作によりリンク9を介してスライダー4を動かすこと)により係止解除位置から係止位置に切り換えられ、摺動体54に対するストライカー45の次の押し力により係止解除することから使い勝手に優れている。
【0026】
なお、本発明は、請求項1で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】形態例の扉開閉装置を適用したボックスを扉の開位置で示す外観図である。
【図2】図1のボックスを前側から見た正面図である。
【図3】図1のボックスを上から見た上面図である。
【図4】(a)は上記ボックスの側面図、(b)は図3のA−A線断面図である。
【図5】上記ボックスを扉の閉位置で示す外観図である。
【図6】図5のボックスを上から見た上面図である。
【図7】(a)は図6のボックスの側面図、(b)は図6のB−B線断面図である。
【図8】上記扉及びスライダー等の一部を破断して示す構成図である。
【図9】上記扉開閉装置のラッチ機構を模式的に示す図である。
【図10】上記ラッチ機構の他の例を示す図である。
【図11】特許文献1の扉開閉装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1…ボックス
2…基体(24は配置部、25はラック歯)
3…扉(32はアーム、32aは円弧状ギア部、33は歯車、34は摺動部)
4…スライダー(40は中間部、41と42は部分、43は空洞部)
5…コンストンバネ(付勢手段)
6…ダンパー手段
8…ストライカー(係脱機構部に相当し、8bは係合部、8cは当接部)
11…第1ラック部
12…第2ラック部
13…ガイド溝(ガイド部)
16…コイルスプリング(ばね部材)
29…係止壁部(係脱機構部に相当し、29bは係止面)
45…ストライカー
50…ラッチ装置(プッシュ・プッシュ係止機構)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉が基体に対し回動機構を介して閉位置と開位置とに切り換えられる扉開閉装置において、
前記回動機構は、前記扉が支持用アーム及び前記アームに設けられた円弧状ギア部並びに前記ギア部の円弧略中心に設けられた摺動部を有していると共に、前記基体が所定間隔を保って互いに略平行に設けられた前記円弧状ギア部と噛み合うラック部及び前記摺動部の動きを案内するガイド部を有し、
前記扉が前記ラック部及びガイド部に沿って開位置と閉位置とに切り換えられることを特徴とする扉開閉装置。
【請求項2】
前記基体側のガイド部が第2ラック部として形成されていると共に、前記扉側の摺動部が前記第2ラック部に噛み合う歯車である請求項1に記載の扉開閉装置。
【請求項3】
前記基体に対し摺動可能に組み付けられ、かつ前記扉に作動連結されているスライダーと、前記スライダーを一方向へ付勢している付勢手段とを有し、前記扉が前記スライダーの摺動により開閉されると共に、前記付勢手段の付勢力に抗して開位置から閉位置に切り換えられる請求項1に記載の扉開閉装置。
【請求項4】
前記扉がリンクを介して前記スライダーに揺動自在に連結されていると共に、前記リンクとの間に介在されたばね部材を有している請求項3に記載の扉開閉装置。
【請求項5】
前記スライダーに取り付けられたロータリー式ダンパー手段を有し、該ダンパー手段の出力軸に装着された回転ギアを前記基体に設けられたラック歯に噛み合わせている請求項1から4の何れかに記載の扉開閉装置。
【請求項6】
扉が基体に対し回動機構を介して閉位置と開位置とに切り換えられ、前記閉位置でラッチ機構を介して解除可能に係止される扉開閉装置において、
前記回動機構は請求項3から5の何れかの機構を採用していると共に、前記ラッチ機構は前記スライダー及び前記基体に対応して設けられた係脱機構部と、前記扉に設けられた解除用ノブとを有し、前記扉を付勢力に抗して開位置から閉位置方向へ切り換えたときに前記係脱機構部を介して係止し、前記ノブの操作により係止解除することを特徴とする扉開閉装置。
【請求項7】
扉が基体に対し回動機構を介して閉位置と開位置とに切り換えられ、前記閉位置でラッチ機構を介して解除可能に係止される扉開閉装置において、
前記回動機構は請求項3から5の何れかの機構を採用していると共に、前記ラッチ機構は前記スライダー及び前記基体に対応して設けられて、前記扉を付勢力に抗して開位置から閉位置方向へ切り換えたときに係止し、更に前記扉を同方向へ押して手を離すと係止解除するプッシュ・プッシュ係止機構であることを特徴とする扉開閉装置。
【請求項1】
扉が基体に対し回動機構を介して閉位置と開位置とに切り換えられる扉開閉装置において、
前記回動機構は、前記扉が支持用アーム及び前記アームに設けられた円弧状ギア部並びに前記ギア部の円弧略中心に設けられた摺動部を有していると共に、前記基体が所定間隔を保って互いに略平行に設けられた前記円弧状ギア部と噛み合うラック部及び前記摺動部の動きを案内するガイド部を有し、
前記扉が前記ラック部及びガイド部に沿って開位置と閉位置とに切り換えられることを特徴とする扉開閉装置。
【請求項2】
前記基体側のガイド部が第2ラック部として形成されていると共に、前記扉側の摺動部が前記第2ラック部に噛み合う歯車である請求項1に記載の扉開閉装置。
【請求項3】
前記基体に対し摺動可能に組み付けられ、かつ前記扉に作動連結されているスライダーと、前記スライダーを一方向へ付勢している付勢手段とを有し、前記扉が前記スライダーの摺動により開閉されると共に、前記付勢手段の付勢力に抗して開位置から閉位置に切り換えられる請求項1に記載の扉開閉装置。
【請求項4】
前記扉がリンクを介して前記スライダーに揺動自在に連結されていると共に、前記リンクとの間に介在されたばね部材を有している請求項3に記載の扉開閉装置。
【請求項5】
前記スライダーに取り付けられたロータリー式ダンパー手段を有し、該ダンパー手段の出力軸に装着された回転ギアを前記基体に設けられたラック歯に噛み合わせている請求項1から4の何れかに記載の扉開閉装置。
【請求項6】
扉が基体に対し回動機構を介して閉位置と開位置とに切り換えられ、前記閉位置でラッチ機構を介して解除可能に係止される扉開閉装置において、
前記回動機構は請求項3から5の何れかの機構を採用していると共に、前記ラッチ機構は前記スライダー及び前記基体に対応して設けられた係脱機構部と、前記扉に設けられた解除用ノブとを有し、前記扉を付勢力に抗して開位置から閉位置方向へ切り換えたときに前記係脱機構部を介して係止し、前記ノブの操作により係止解除することを特徴とする扉開閉装置。
【請求項7】
扉が基体に対し回動機構を介して閉位置と開位置とに切り換えられ、前記閉位置でラッチ機構を介して解除可能に係止される扉開閉装置において、
前記回動機構は請求項3から5の何れかの機構を採用していると共に、前記ラッチ機構は前記スライダー及び前記基体に対応して設けられて、前記扉を付勢力に抗して開位置から閉位置方向へ切り換えたときに係止し、更に前記扉を同方向へ押して手を離すと係止解除するプッシュ・プッシュ係止機構であることを特徴とする扉開閉装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−138567(P2007−138567A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334335(P2005−334335)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
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