説明

手切れ性に優れた包装袋

【課題】 プラスチックフィルムからなる包装袋を開封するに際に従来必要であったノッチ付与、傷加工、あるいは微細孔加工等を施すことなく、セロハンを使った包装袋と同様に、シール部(フィルム端部)およびフィルム縁辺部(フィルム胴部)のどこからでも手で容易に開封することができる、透明性に優れた包装袋を提供する。
【解決手段】 二軸延伸ポリエステルフィルムにシーラント層を積層した積層フィルムからなる包装袋であり、前記積層フィルムの端裂抵抗値が長手方向および幅方向のいずれの方向においても80N以下であり、破断伸び率が長手方向および幅方向のいずれの方向においても80%以下であることを特徴とすることを特徴とする包装袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手切れ性に優れ、工業資材、医薬品、衛生資材、食品等の包装袋として、手切れ性、透明性に優れた包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業資材、医薬品、衛生資材、食品等の包装材では、1回の使用ごとに個々の袋を開封する必要があることが多く、これらの包装袋では手切れ性が良いことが求められており、例えば、調味料、菓子、粉薬等の小袋包装材では、手切れ性が良いと内容物を取り出しやすいという大きなメリットがある。また近年、個々の小袋の内容物が確認できることへの要望が多く、透明でかつ手切れ性に優れた包装袋が求められてきた。
【0003】
しかしながら、プラスチックを用いて製造した袋は、開封を容易にするために端部にノッチを付与したり、傷加工が施されたりしているが、ノッチを付与する方法ではノッチ以外の場所から引裂くことができないため、開封方法の自由度が低く、また、ノッチ部分からの引裂に失敗した場合には、内容物が上手く取り出せないという問題がある。傷加工を施す方法では、開封時の利便性は向上するが、フィルム本来の強度が低下するだけではなく、後加工によるコストアップが避けられない。
【0004】
特に、三方袋、四方袋、スタンディング包装袋、ピロー包装袋のような形態では、シール部に切り込みによるVノッチ、Iノッチを形成して、そこを開封起点として開封できるようにしている。しかしこの場合、どの位置に切り込みが有るかわかりにくく、またVノッチの場合、切り欠いた三角状の辺が異物となって袋に付着する恐れがある。また、これらいずれのノッチの場合にも開封位置が特定され、常に望ましい位置から開封できるとは限らない。
【0005】
一方、フィルム素材自体に引裂性を有するフィルムを積層し、開封性を向上させる方法がある。手切れ性に優れたフィルムとしてセロハンが知られており、その優れた手切れ性、透明性からセロハン/ポリエチレンのような構成で使用されているが、セロハンは吸湿性が高く吸湿により寸法が変化しやすいためカールが酷く、また、季節により特性が変動し、一定品質の製品を供給することが困難である。またセロハン/ポリエチレンの構成では、引き裂く際に爪を立てて切らないと上手く引き裂くことができず、誰でもが容易に引き裂けるものとは言い難いものである。さらにセロハンは、高価であり、将来的に供給面での不安もある。
【0006】
また、融点の低い共重合ポリエステル層と融点の高いポリエステル層を積層し、低融点ポリエステル層の分子配向を殆ど完全に崩壊させた積層ポリエステルを基材とした包装袋も提案されているが(特許文献1および2)、これらの方法ではアルミニウム箔や紙を含む構成体では十分な手切れ性があるが、基材/ポリエチレンのような構成では引き裂く際、フィルムが伸びてしまい、爪を立てて力を入れないと上手く引き裂くことができないという問題や、基材とポリエチレンを押出ラミネートするとフィルムが白化し、透明性が損なわれるという問題が残っている。
【0007】
非晶性ポリエステル樹脂層と結晶性ポリエステル樹脂層を積層したポリエステルフィルムを基材とした包装袋も提案されているが(特許文献3〜6)、これらの方法も引き裂く際にフィルムが伸びたり、爪を立てて切らないと上手く引き裂くことができなかったりするため、誰でもが容易に引き裂けるとは言い難いものである。
【特許文献1】特開2002−337269号公報
【特許文献2】特開2002−337289号公報
【特許文献3】特開2003−192023号公報
【特許文献4】特開2003−205949号公報
【特許文献5】特開2003−205967号公報
【特許文献6】特開2003−205969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、プラスチックフィルムからなる包装袋を開封するに際に従来必要であったノッチ付与、傷加工、あるいは微細孔加工等を施すことなく、セロハンを使った包装袋と同様に、シール部(フィルム端部)およびフィルム縁辺部(フィルム胴部)のどこからでも手で容易に開封することができる、透明性に優れた包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定の構成を採用することにより、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、二軸延伸ポリエステルフィルムにシーラント層を積層した積層フィルムからなる包装袋であり、前記積層フィルムの端裂抵抗値が長手方向および幅方向のいずれの方向においても80N以下であり、破断伸び率が長手方向および幅方向のいずれの方向においても80%以下であることを特徴とすることを特徴とする包装袋に存する。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムは、シーラント等の他素材と積層し、包装袋の形状になった際に十分な手切れ性が発現するように、端裂抵抗値がフィルムの長手方向および幅方向のいずれの方向においても80N以下であることが好ましく、破断伸び率についてもフィルムの長手方向および幅方向のいずれも方向においても50%以下であることが好ましい。端裂抵抗については、さらに5〜60N、特に5〜40N、破断伸び率については、さらに30%以下、特に20%以下であることがそれぞれ好ましい。端裂抵抗値が80Nより大きいとフィルムを容易に手で引き裂くが困難となる傾向があり、破断伸び率が40%を超えると、シーラント層をラミネートした積層フィルムを手で引き裂こうとした時、フィルムが伸びて上手く引き裂くことができないことがある。
【0012】
本発明で用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムのヘーズは、シーラント層とラミネート後、内容物が容易に確認できるものであればよいが、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0013】
本発明で用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムの種類は特に限定されるものではないが、機械的特性、耐熱性、耐水性、作業性、製膜安定性から、代表的には、ブチレンテレフタレート単位を含む融点が240℃以下のポリエステル層(A)の両面にポリエステル層(A)の融点より高いポリエステル層(B)を積層した積層ポリエステルフィルムであって、ポリエステル層(B)の総厚みが、積層ポリエステルフィルム全厚みに対し25%以下であることが好ましい。
【0014】
上記二軸延伸ポリエステルフィルムを構成するブチレンテレフタレート単位は、酸成分としてテレフタル酸と、グリコール成分として1,4−ブタンジオールとから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマー構成単位を指す。かかるポリマーはホモポリマーであってもよく第3成分を共重合させたものでもよい。
【0015】
上記二軸延伸ポリエステルフィルムのポリエステル層(A)の融点を240℃以下にするため、ポリエステル層(A)のブチレンテレフタレート単位のポリマーに第3成分を共重合させたり、他の共重合ポリエステルを混合させたりしてもよい。ここでいう共重合ポリエステルとは、酸成分がテレフタル酸およびイソフタル酸、グリコール成分がエチレングリコールからなるポリエステルで代表される。また、さらに他の共重合成分を共重合させてもよい。
【0016】
他の共重合成分として酸成分としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸等を例示することができる。またアルコール成分としてはジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール等を例示することができる。これらは単独あるいは2種以上を使用することができる。
【0017】
ポリエステル層(B)としては、例えば、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボン酸とから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーからなるものを例示できる。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。その製法としては、例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して 重縮合させる方法が採用される。ポリエステル層(B)の融点は、ポリエステル層(A)より高く、好ましくは10℃以上高い融点にするとよい。
【0018】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムには、微粒子を含有させることが、フィルムの巻上げ工程、塗工工程、蒸着工程等での作業性を向上させる上で望ましい。この微粒子としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、カオリン等の無機粒子やアクリル樹脂、グアナミン樹脂等の有機粒子や触媒残差を粒子化させた析出粒子を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これら粒子の粒径や量は目的に応じ適宜決めることができる。含有させる微粒子は、単成分でもよく、また、2成分以上を同時に用いてもよい。原料ポリエステルに対する前記各粒子の配合方法は、特に限定されないが、例えばポリエステルの重合工程に各粒子を添加する方法または原料ポリエステルと各粒子を溶融混練する方法などが好適である。また、適宜、各種安定剤、潤滑剤、帯電防止剤等を加えることもできる。
【0019】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムは、上記したポリエステル原料をエクストルーダーに代表される周知の溶融押出装置に供給し、当該ポリマーの融点以上の温度に加熱し溶融する。次いでスリット状のダイより溶融ポリマーを押出しながら、回転冷却ドラム状でガラス転移温度以下の温度になるよう急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。このシートを2軸方向に延伸してフィルム化し、熱固定を施すことで得られる。この場合、延伸方法は逐次2軸延伸でも同時2軸延伸でもよい。また、必要に応じ、熱固定を施す前または後に再度縦および/または横方向に延伸してもよい。本発明においては、包装材料として十分な寸法安定性、腰を得るため延伸倍率を面積倍率として9倍以上、好ましくは12倍以上であることが好ましい。また、延伸後の熱固定温度はポリエステル層(A)の融解開始温度以上、好ましくは融点以上であることが好ましい。
【0020】
本発明において上記二軸延伸ポリエステルフィルムは必要に応じて印刷し、シーラント層とラミネートされて、積層フィルムとして使用される。このため、印刷インキや接着剤などとの密着性を向上させるために、フィルム表面に化学的、または物理的処理が施されてもよい。
【0021】
本発明の包装袋は、二軸延伸ポリエステルフィルムに融着層または接着層のようなシーラント層を設け、1枚のフィルムを折って重ね合わせ、例えば三方シール型製袋機等を使用して端部を熱または圧着によりシールすることにより得られる。このシール層は、好ましくはヒートシール性を有する樹脂あるいはフィルムを積層することにより安定した接着力を得ることができる。このようなヒートシール性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ポリプロピレンコポリマー、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、エチレン−アクリル酸共重合物、エチレン−メタクリル酸共重合物、エチレン−アクリル酸メチル共重合物、エチレン−メタクリル酸メチル共重合物、エチレン−アクリル酸メチル共重合物、アイオノマーなどのポリオレフィンが挙げられる。
【0022】
シーラント層は、シール性を有する樹脂の未延伸シートを、接着剤を介して二軸延伸フィルムに積層するドライラミネーション、または前記樹脂を二軸延伸ポリエステルフィルム上に溶融押出する押出ラミネーションにより積層される。ドライラミネーションによる場合には種々の接着剤が用いられ、また押出ラミネーションによる場合には、種々のアンカーコート剤が用いられる。積層方法はこれらに限定されるものではないが、引き裂いた時に二軸延伸ポリエステルフィルムとシーラント層が剥離しないよう適度に十分なラミネート強度が得られていればよい。シーラント層の厚みは10〜100μmにするのが好ましい。
【0023】
また、本発明において、上記二軸延伸ポリエステルフィルムを含む積層フィルムにはガスバリア層を設けることもできる。これにより酸素および水蒸気を効率よく遮断することができ、内容物の劣化を防止することができる。このようなガスバリア層を構成する素材としては、従来から包装材料にガスバリア性を付与する目的で使用しているものを用いることができる。例としてポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、メタキシリレンジアミン共重合体からなるフィルム層あるいはコート層、または酸化ケイ素や酸化アルミニウムなどの金属酸化物からなる蒸着層を挙げることができる。
【0024】
ガスバリア層の積層方法は、特に限定されず、ガスバリア層の素材に応じて適宜選択できる。例えば、塩化ビニリデンのようなフィルム状のものであれば、ドライラミネート法や押出ラミネート法により積層することができる。また、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、メタキシリレンジアミン共重合体の樹脂であればコーティング法や共押出法等により積層することができ、金属酸化物であれば蒸着法を用いることができる。上記ガスバリア層は、二軸延伸ポリエステルフィルムの片面あるいは両面、好ましくはシーラント側と接着させる面側に積層することができるが、二軸延伸ポリエステルフィルムに積層しないでその他のフィルムやシーラントに積層した後に、ドライラミネート法や押出ラミネート法により積層することもできる。
【0025】
本発明において積層フィルムを構成する各層は本発明の作用を阻害しない範囲で可塑剤等の他の成分を含有していてもよい。また、積層体は、本発明の作用を阻害しない範囲で上記各層の他に層を有していてもよく、積層フィルムの総厚みは特に限定されない。
【0026】
本発明の包装袋の形体は特に限定されないが、調味料、粉末スープ、ふりかけ、鰹節、粉薬等の粉末、洗剤、薬等の顆粒、ジャム、味噌等の粘性体などに1回使い切りの分量の包装に用いられる三方袋、四方袋、調味料や味噌等の包装に用いられるスタンディング包装袋、スナック菓子、飴等の包装に用いられるピロー包装袋では特に好適である。
【0027】
本発明の包装袋は、引裂性(手切れ性)に優れ、容易にどの部分からでも開封することができ、特にシール部(フィルム端部)、およびフィルム縁辺部(フィルム胴部)から手で容易に開封することができるという利点を有するが、それ以外の場合でも手で容易に開封が可能であり、特に開封する場所を限定するものではない。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、工業資材、医薬品、衛生資材、食品等の包装袋において、機械的特性、透明性に優れた、どこからでも容易に手で開封することができる包装袋を供給することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法やサンプルの処理方法は下記のとおりである。また、実施例および比較例中の「部」は「重量部」を示す。
【0030】
(1)フィルム厚みの測定方法
フィルムを10枚重ねてマイクロメータ法にて厚さを測定し10で除して平均値を求めフィルム厚みとした。
【0031】
(2)積層ポリエステル層の厚みの測定方法
フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、ミクロトームで切断し、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡写真にて観察した。その断面のうちフィルム表面とほぼ平行に2本、明暗によって界面が観察される。その2本の界面とフィルム表面までの距離を10枚の写真から測定し、平均値を積層厚さとした。
【0032】
(3)融解開始温度、融点の測定方法
融解開始温度(Tim)融点(Tpm)の測定はパーキンエルマー製示差走査カロリーメーターDSC7型を用いて測定した。DSC測定条件は以下のとおりである。すなわち、試料フィルム6mgをDSC装置にセットし、300℃の温度で5分間溶融保持した後、液体窒素にて急冷した。急冷試料を0℃より10℃/分の速度で昇温し、JIS K7121のDSC曲線の読み方に従い融点を検知した。
【0033】
(4)引っ張り破断強度、破断伸び率の測定方法
インテスコ社製引張り試験機モデル2001型を用いて、温度23℃、湿度50%RHに調節された室内において長さ(チャック間)50mm、幅15mmの試料サンプルを200mm/分の歪み速度で引張り、フィルム破断時の荷重を測定し、下記式により引張破断強度を求めた。
引っ張り破断強度(MPa)=切断時の荷重(N)/試料フィルムの断面積(mm
破断伸び率(%)=(切断時のチャック間距離−試験前のチャック間距離)/(試験前のチャック間距離)×100
【0034】
(5)ヘーズの測定方法
JIS K7136に準じ、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH−2000によりフィルムのヘーズを測定した。
【0035】
(6)端裂抵抗の測定方法
JIS C2318−1975の方法で端裂抵抗値を測定した。
【0036】
(7)引裂性の測定方法
三方袋の端部(シール部)と縁辺部(胴部)を両手で爪を立てずにひねって引き裂けるかどうか下記基準で評価した。
評価A:容易に手でスムーズに引き裂くことができるもの
評価B:引き裂くことはできるが、フィルムが伸びたり、抵抗が強かったりしてスムーズに引き裂くことができないもの
評価C:容易には手で引き裂くことができないもの
【0037】
以下の実施例および比較例にて使うポリエステル原料は次の方法にて製造した。
<ポリエステル1の製造法>
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を使用し、多価アルコール成分として1.4ブタンジオールを使用し、常法の溶融縮重合法でポリブチレンレテフタレートを製造した。 このポリエステル原料の極限粘度([η])=0.80dl/gで、原料から得られるポリエステルフィルムの融解開始温度(Tim)=213℃、 融点(Tpm)=222℃であった。
【0038】
<ポリエステル2の製造法>
ジカルボン酸成分としてイソフタル酸およびテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールをそれぞれ使用し、常法の溶融縮重合法で製造した。ジカルボン酸成分中のイソフタル酸含量は15モル%であった。このポリエステル原料の極限粘度([η])=0.69dl/gで、この原料から得られるポリエステルフィルムの融解開始温度(Tim)=198℃、融点(Tpm)=220℃であった。
【0039】
<ポリエステル3>
PETG(イーストマンケミカル社製 EASTAR 6763)を使用した。このポリエステル原料は極限粘度([η])=0.75dl/g、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)の含有量は32モル%であった。
【0040】
<ポリエステル4の製造法>
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールをそれぞれ使用し 常法の溶融縮重合法にて 平均粒径2.5μmの非晶質シリカを 0.18部含有する 極限粘度([η])=0.70dl/g のポリエステルチップを得た。この原料から得られるポリエステルフィルムの融解開始温度(Tim)=242℃、 融点(Tpm)=254℃であった。
【0041】
<ポリエステル5の製造法>
ポリエステル1を25部とポリエステル3を75部ブレンドして得た。ポリエステル8に含まれるポリブチレンテレフタレートの量は25%、ジカルボン酸成分中のイソフタル酸含量は11モル%であった。この原料得られるポリエステルフィルムの融解開始温度(Tim)=195℃、融点(Tpm)=217℃であった。
【0042】
<フィルム1(F1)の製造法>
ポリエステル4とポリエステル5のペレットをそれぞれ別の押出機に溶融させて、積層ダイを用い、ポリエステル4(B層)/ポリエステル5(A層)/ポリエステル4(B層)の構成の2種3層積層ポリエステル樹脂を表面温度30℃の冷却ドラムに押出して、急冷し厚さ約290μmの未延伸フィルムを得た。次いで、75℃にて縦方向に4.0倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て85℃で4.5倍の横延伸、235℃で5秒間の熱処理を行い、厚さ16μmのポリエステルフィルムを得た。B層/A層/B層の厚み構成は、1μm/14μm/1μmだった。得られたフィルムの特性を下記表1に示す。
【0043】
<フィルム2(F2)の製造法>
ポリエステルフィルムのB層/A層/B層の厚み構成を1μm/10μm/1μmとした以外はフィルム1(F1)と同じ方法で厚さ12μmのポリエステルフィルムを作成した。得られたフィルムの特性を下記表1に示す。
【0044】
<フィルム3(F3)の製造法>
ポリエステルフィルムのB層/A層/B層の厚み構成を1.5μm/13μm/1.5μmとした以外はフィルム1(F1)と同じ方法で厚さ16μmのポリエステルフィルムを作成した。得られたフィルムの特性を下記表1に示す。
【0045】
<フィルム4(F4)の製造法>
ポリエステルフィルムのB層/A層/B層の厚み構成を2.0μm/16μm/2.0μmとした以外はフィルム1(F1)と同じ方法で厚さ16μmのポリエステルフィルムを作成した。得られたフィルムの特性を下記表1に示す。
【0046】
<フィルム5(F5)の製造法>
ポリエステルフィルムのB層/A層/B層の厚み構成を2.5μm/11μm/2.5μmとした以外はフィルム1(F1)と同じ方法で厚さ16μmのポリエステルフィルムを作成した。得られたフィルムの特性を下記表1に示す。
【0047】
<フィルム6(F6)の製造法>
縦延伸倍率を3.3倍、横延伸倍率を4.6倍にした以外はフィルム1(F1)と同じ方法で厚さ16μmのポリエステルフィルムを作成した。得られたフィルムの特性を下記表1に示す。
【0048】
<フィルム7(F7)の製造法>
A層の原料にポリエステル2を使用し、熱処理温度を220℃にした以外はフィルム1(F1)と同じ方法で厚さ16μmのポリエステルフィルムを作成した。得られたフィルムの特性を下記表2に示す。
【0049】
<フィルム8(F8)の製造法>
A層の原料にポリエステル3を使用し、熱処理温度を220℃にした以外はフィルム1(F1)と同じ方法で厚さ16μmのポリエステルフィルムを作成した。得られたフィルムの特性を下記表2に示す。
【0050】
<フィルム9(F9)>
セロハン(東セロ製 普通セロハンPT#300)を使用した。
【実施例1】
【0051】
フィルム1(F1)の片面にイソシアネート系接着剤を均一に塗布し、70℃で5秒間乾燥させた後、325℃に溶融した低密度ポリエチレン(LDPE)を厚み30μmになるように押出ラミネートし、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を下記表3に示す。得られた積層フィルムから三方シール型製袋機を使用して三方袋(縦100mm×横70mm、シール幅8mm)を作成した。この三方袋の引裂性(手切れ性)はシール部、縁辺部共に良好であった。
【実施例2】
【0052】
フィルム1(F1)の片面にポリエステル系接着剤を均一に塗布し、80℃で10秒間乾燥させた後、60℃の熱ロール上で厚み30μmの低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)をドライラミネートし、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を下記表3に示す。得られた積層フィルムから実施例1と同じ方法で三方袋を作成した。この三方袋の引裂性(手切れ性)はシール部、縁辺部共に良好であった。
【実施例3】
【0053】
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を押出ラミネートした以外は実施例1と同じ方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を下記表3に示す。得られた積層フィルムから実施例1と同じ方法で三方袋を作成した。この三方袋の引裂性(手切れ性)はシール部、縁辺部共に良好であった。
【実施例4】
【0054】
フィルム1(F1)の片面にイソシアネート系接着剤を均一に塗布し、70℃で5秒間乾燥させた後、低密度ポリエチレン(LDPE)を厚み15μmとなるように押出し、このLDPEを介して30μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を貼り合わせて積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を下記表3に示す。得られた積層フィルムから実施例1と同じ方法で三方袋を作成した。この三方袋の引裂性(手切れ性)はシール部、縁辺部共に良好であった。
【実施例5】
【0055】
フィルム2(F2)を使用した以外は実施例1と同じ方法で積層フィルムおよび三方袋を作成した。得られた積層フィルムの特性を下記表3に示す。この三方袋の引裂性(手切れ性)はシール部、縁辺部共に良好であった。
【実施例6】
【0056】
フィルム3(F3)を使用した以外は実施例1と同じ方法で積層フィルムおよび三方袋を作成した。得られた積層フィルムの特性を下記表3に示す。この三方袋の引裂性(手切れ性)はシール部、縁辺部共に良好であった。
【実施例7】
【0057】
フィルム4(F4)を使用した以外は実施例1と同じ方法で積層フィルムおよび三方袋を作成した。得られた積層フィルムの特性を下記表3に示す。この三方袋の引裂性(手切れ性)はシール部、縁辺部共に良好であった。
【0058】
(比較例1)
フィルム5(F5)を使用した以外は実施例1と同じ方法で積層フィルムおよび三方袋を作成した。得られた積層フィルムの特性を下記表3に示す。この三方袋の引裂性(手切れ性)は、シール部については抵抗があるものの、辛うじて引き裂くことはできたが、フィルムが伸びてスムーズに引き裂くことができなかった。縁辺部については爪を立てて力を入れないと引き裂くことができなかった。
【0059】
(比較例2)
フィルム6(F6)を使用した以外は実施例1と同じ方法で積層フィルムおよび三方袋を作成した。得られた積層フィルムの特性を下記表3に示す。シール部については良好であったが、縁辺部は爪を立てて力を入れないと引き裂くことができなかった。
【0060】
(比較例3)
フィルム7(F7)を使用した以外は実施例1と同じ方法で積層フィルムおよび三方袋を作成した。得られた積層フィルムの特性を下記表3に示す。この三方袋の引裂性(手切れ性)は、シール部については抵抗があるものの、辛うじて引き裂くことはできたが、フィルムが伸びてスムーズに引き裂くことができなかった。縁辺部については爪を立てて力を入れないと引き裂くことができなかった。
【0061】
(比較例4)
フィルム8(F8)を使用した以外は実施例1と同じ方法で積層フィルムおよび三方袋を作成した。得られた積層フィルムの特性を下記表3に示す。この三方袋の引裂性(手切れ性)は、シール部については抵抗があるものの辛うじて引き裂くことはできたが、フィルムが伸びてスムーズに引き裂くことができなかった。縁辺部については爪を立てて力を入れないと引き裂くことができなかった。
【0062】
(比較例5)
フィルム9(F9)を使用した以外は実施例1と同じ方法で積層フィルムおよび三方袋を作成した。得られた積層フィルムの特性を下記表3に示す。この三方袋の引裂性(手切れ性)は、シール部については抵抗があるものの辛うじて引き裂くことはできたが、フィルムが伸びてスムーズに引き裂くことができなかった。縁辺部については爪を立てて力を入れないと引き裂くことができなかった。
【0063】
【表1】

【0064】
上記表中、PETはポリエチレンテレフタレート、PBTはポリブチレンテレフタレート、IPAはイソフタル酸をそれぞれ意味する
【0065】
【表2】

【0066】
上記表中、PETはポリエチレンテレフタレート、PBTはポリブチレンテレフタレート、IPAはイソフタル酸、CHDMは1.4−シクロヘキサンジメタノールをそれぞれ意味する
【0067】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のフィルムは、例えば、調味料、粉末スープ、ふりかけ、鰹節、粉薬等の粉末、洗剤、薬等の顆粒、ジャム、味噌等の粘性体などに1回使い切りの分量の包装に用いられる三方袋、四方袋、調味料や味噌等の包装に用いられるスタンディング包装袋、スナック菓子、飴等の包装に用いられるピロー包装袋に好適に利用することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリエステルフィルムにシーラント層を積層した積層フィルムからなる包装袋であり、前記積層フィルムの端裂抵抗値が長手方向および幅方向のいずれの方向においても80N以下であり、破断伸び率が長手方向および幅方向のいずれの方向においても80%以下であることを特徴とすることを特徴とする包装袋。

【公開番号】特開2006−193178(P2006−193178A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6091(P2005−6091)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000108856)三菱化学ポリエステルフィルム株式会社 (187)
【Fターム(参考)】