説明

手摺

【課題】屈曲部と直線部を連続的に形成することができると共に、直線部では強度をもたせて、手摺支持部の間隔を広げることができ、かつ外観の向上及びコストの低廉化を図れるようにした手摺を提供する。
【解決手段】金属製心材20の外周に合成樹脂材21を被覆してなり、屈曲することが必要な部位において屈曲可能な第1の手摺体2と、金属製心材30の外周に合成樹脂材21Aを被覆してなる直線状の高剛性を有する第2の手摺体3と、設置面に立設される支柱の上端、又は建物の壁面に設けられ、第1の手摺体と第2の手摺体の少なくとも一方を固定・支持するブラケットと、を具備する手摺において、第1の手摺体及び第2の手摺体の金属製心材の内部に同径の長手通しの挿通部25,35を形成し、両手摺体の挿通部に共通のジョイント材40を挿入すると共に、固定ねじ50によって両手摺体とジョイント材とをそれぞれ固定して、両手摺体を連続的に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば玄関先のアプローチに設けられる手摺に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、玄関先にアプローチ手摺を設けることが多く行われている。このアプローチ手摺は、建物の形態により長さや傾斜などに対応させるために、傾斜部やコーナ部に屈曲部を設ける必要がある。
【0003】
複数の手摺体(笠木)を長手方向につなぐ継手構造として、手摺体の端部に装着されるエンドキャップを介して手摺体をつなぐ曲げ自在な心材と、心材が挿通される継ぎ部材を有する継手構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、出願人等は、手摺体を金属製パイプ心材の外周面に合成樹脂製のカバー材で被覆して形成し、人の手で屈曲可能に形成したアプローチ用手摺を開発した(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−131450号公報(特許請求の範囲、図1,図3)
【特許文献2】特開2009−46943号公報(段落0023、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の構造のものにおいては、屈曲部の構造が複雑であり、施工が面倒な上、屈曲部において手摺体同士間に段差が生じるという問題があった。
【0007】
これに対して、特許文献2に記載の構造のものは、手摺体自体が屈曲可能に形成されるため、階段部分においても段差のない連続的な手摺の設置が可能である。しかし、特許文献2に記載の構造のものは、手摺体自体が屈曲可能であるため、手摺の剛性は、一般的に見られる屈曲部を有しない手摺に比較して低くなることは否めず、平坦部に直線的に手摺を設ける場合、手摺支持部(支柱、ブラケット等)の間隔を小さくせざるを得なかった。このように、手摺支持部(支柱、ブラケット等)の間隔を小さくすることにより、外観的な問題やコストが嵩む等の懸念があった。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、屈曲部と直線部を連続的に形成することができると共に、直線部では強度をもたせて、手摺支持部の間隔を広げることができ、かつ外観の向上及びコストの低廉化を図れるようにした手摺を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明に係る手摺は、金属製心材の外周に合成樹脂材を被覆してなり、屈曲することが必要な部位において屈曲可能な第1の手摺体と、 金属製心材の外周に合成樹脂材を被覆してなる直線状の高剛性を有する第2の手摺体と、 設置面に立設される支柱の上端、又は建物の壁面に設けられ、上記第1の手摺体と第2の手摺体の少なくとも一方を固定・支持するブラケットと、を具備し、 上記第1の手摺体及び第2の手摺体の金属製心材の内部に同径の長手通しの挿通部を形成し、両手摺体の挿通部に共通のジョイント材を挿入すると共に、固定部材によって上記両手摺体とジョイント材とをそれぞれ固定して、上記両手摺体を連続的に連結してなる、ことを特徴とする。
【0010】
この発明において、上記第2の手摺体の金属製心材の内部に形成される挿通部は、中心方向に向かって突出する少なくとも3つ以上のリブの先端部を結んだ円形の部位にて形成される構成とする方がよい。この場合、リブの数は少なくとも3つ以上であれば各リブ間の間隔は必ずしも等間隔である必要はないが等間隔である方が好ましい。また、第2の手摺体とジョイント材とを固定する固定部材がリブを回避して、第2の手摺体の鉛直方向の上下位置、水平の左右位置又はその中間の45度の位置に取り付けるには、リブの数を8つの等間隔に設ける方が好ましい。この場合、第2の手摺体の金属製心材は、例えばアルミニウム合金製の押出形材にて形成される。
【0011】
また、この発明において、上記壁面に設けられるブラケットに、上記第1の手摺体又は第2の手摺体の金属製心材の内部に設けられる挿通部内に挿入可能なジョイント部を設け、上記挿通部内に上記ジョイント部を挿入すると共に、固定部材によって上記第1の手摺体又は第2の手摺体とブラケットとを固定する方がよい。
【0012】
加えて、この発明において、上記第1の手摺体又は第2の手摺体の端部に被着可能な端部キャップを更に具備し、上記端部キャップに、上記第1の手摺体又は第2の手摺体の金属製心材の内部に設けられる挿通部内に挿入可能なジョイント部を設け、上記挿通部内に上記ジョイント部を挿入すると共に、固定部材によって上記第1の手摺体又は第2の手摺体と端部キャップとを固定してもよい。
【0013】
この発明によれば、屈曲可能な第1の手摺体と直線状の高剛性を有する第2の手摺体の金属製心材の内部に、それぞれ同径の長手通しの挿通部を形成し、両手摺体の挿通部に共通のジョイント材を挿入した状態で、固定部材によって両手摺体とジョイント材とをそれぞれ固定して、両手摺体を連続的に連結することができる。
【0014】
また、この発明によれば、第2の手摺体の金属製心材の内部に形成される挿通部を、中心方向に向かって突出する少なくとも3つのリブの先端部を結んだ円形の部位にて形成することにより、第2の手摺体の金属製心材の材料の節約が図れると共に、第2の手摺体を軽量にすることができ、かつリブを外した部位に固定部材を位置させて手摺体とジョイント材とを固定することができる。
【0015】
また、この発明によれば、壁面に設けられるブラケットに、第1の手摺体又は第2の手摺体に設けられる挿通部内に挿入可能なジョイント部を設け、挿通部内にジョイント部を挿入した状態で、固定部材によって第1の手摺体又は第2の手摺体とブラケットとを固定することができる。
【0016】
更に、この発明によれば、第1の手摺体又は第2の手摺体の端部に被着可能な端部キャップに、第1の手摺体又は第2の手摺体に設けられる挿通部内に挿入可能なジョイント部を設け、挿通部内にジョイント部を挿入した状態で、固定部材によって第1の手摺体又は第2の手摺体と端部キャップとを固定することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような優れた効果が得られる。
【0018】
(1)屈曲可能な第1の手摺体と直線状の高剛性を有する第2の手摺体にそれぞれ形成された挿通部に、共通のジョイント材を挿入した状態で、固定部材によって両手摺体とジョイント材とをそれぞれ固定して、両手摺体を連続的に連結することができるので、屈曲部と直線部を連続的に形成することができると共に、直線部では強度をもたせて、手摺支持部の間隔を広げることができ、かつ外観の向上及びコストの低廉化を図ることができる。
【0019】
(2)第2の手摺体の挿通部を、中心方向に向かって突出する少なくとも3つ以上のリブの先端部を結んだ円形の部位にて形成することにより、金属製心材の材料の削減及び軽量化が図れ、かつリブを外した部位に固定部材を位置させて手摺体とジョイント材とを固定することができるので、上記(1)に加えて更にコストの低廉化及び軽量化が図れると共に、手摺体とジョイント材との固定を容易にすることができる。
【0020】
(3)壁面に設けられるブラケットに設けられたジョイント部を、第1の手摺体又は第2の手摺体の挿通部内に挿入した状態で、固定部材によって第1の手摺体又は第2の手摺体とブラケットとを固定することができるので、上記(1),(2)に加えて更に手摺体の固定・支持を強固にすることができ、手摺の強度を更に高めることができる。
【0021】
(4)第1の手摺体又は第2の手摺体の端部に被着可能な端部キャップに設けられるジョイント部を、第1の手摺体又は第2の手摺体の挿通部内に挿入した状態で、固定部材によって第1の手摺体又は第2の手摺体と端部キャップとを固定することができるので、上記(1)〜(3)に加えて更に手摺体への端部キャップの被着を強固にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係る手摺の全体を示す側面図である。
【図2】図1のI−I線に沿う拡大断面図である。
【図3】図1のII−II線に沿う拡大断面図である。
【図4】図1のIII−III線に沿う拡大断面図である。
【図5】この発明における第1の手摺体と第2の手摺体とをジョイント材を用いて連結する手順を示す一部断面斜視図である。
【図6】図1のIV−IV線に沿う拡大断面図(a)及び(a)の側面図(b)である。
【図7】図1のV部の拡大平面図(a)及び(a)の断面図(b)である。
【図8】図1のVI−VI線に沿う拡大断面図である。
【図9】図8の一部を断面で示す側面図である。
【図10】この発明における第2の手摺体の別の形態を示す拡大断面図である。
【図11】この発明における屈曲可能な第1の手摺体と高剛性を有する第2の手摺体の支柱ブラケットのピッチを比較して説明する概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、この発明に係る手摺の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、図1に示すように、手摺が玄関先のアプローチにおける階段部や階段部に設置される場合について説明する。
【0024】
この発明の手摺1は、金属製心材例えば、金属製パイプ心材20の外周に合成樹脂材21を被覆してなり、屈曲することが必要な部位、例えば階段の最下段部と最上段部において屈曲可能な第1の手摺体2と、金属製心材例えば、アルミニウム合金製押出形材からなる心材30(以下に、アルミ心材30という)の外周に合成樹脂材21Aを被覆してなる直線状の高剛性を有する第2の手摺体3と、階段等の設置面4に立設される支柱5の上端に取り付けられ、第1の手摺体2と第2の手摺体3を固定・支持するブラケット10(以下に支柱ブラケット10という)と、建物の壁面6に設けられ、第1の手摺体2を固定・支持するブラケット7(以下に、壁ブラケット7という)と、第1の手摺体2の端部を固定・支持する端部ブラケット8と、第2の手摺体3の端部に被着される端部キャップ9を具備する。また、第1の手摺体2と第2の手摺体3はジョイント材40を介して連続的に連結(接合)されている。
【0025】
第1の手摺体2は、図2に示すように、金属製パイプ心材20の外周を、耐候性を有する例えば軟質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂製の基材22と、該基材22の外周面を被覆する表面に木目等の模様が施された例えば半硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂製の表面材23とで構成されている。この場合、パイプ心材20は内径が約13.5mm、肉厚が約1.2mm、直径が約15.9mmのスチール鋼管によって形成され、合成樹脂材21は、基材22の肉厚が8.35mm、表面材23の肉厚が0.5mm、直径が34mmに形成されており、人の手によって階段部の傾斜等に合わせた角度に屈曲可能に形成されている。また、パイプ心材20の内部に、ジョイント材40が挿入可能な挿通部25が長手通しに形成されている。
【0026】
第2の手摺体3は、図3に示すように、アルミ心材30の外周を、耐候性を有する例えば軟質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂製の基材22Aと、該基材22Aの外周面を被覆する表面に木目等の模様が施された、第1の手摺体2と同様の例えば半硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂製の表面材23とで構成されている。また、アルミ心材30の内部に、中心方向に向かって突出する少なくとも3つ(図面では8つの場合を示す)のリブ31が形成されており、各リブ31の先端部を結んだ円形の部位によって、ジョイント材40が挿入可能な挿通部35が形成されている。この場合、アルミ心材30は、外径が30mm、肉厚が2.5mmの環状基部30aの内周面に45度の等間隔で中心方向に向かって突出する8つのリブ31が形成され、各リブ31の先端部を結んだ円形の部位によって形成される挿通部35の内径がパイプ心材20と同等の約13.5mmに形成されている。また、第2の手摺体3の基材22Aの肉厚は1.5mm、表面材23の肉厚は0.5mmであり、外径は第1の手摺体2と同様に34mmに形成されている。
【0027】
なお、第1の手摺体2及び第2の手摺体3の各構成部材の上記寸法は一例であって、必ずしも上記寸法に設定する必要はない。
【0028】
上記第1の手摺体2と第2の手摺体3を連結(接合)するジョイント材40は、図4及び図5に示すように、角部が円弧状の断面略四角形状のアルミニウム合金製の押出形材を所定の長さに切断した棒状に形成されている。なお、ジョイント材40の4面の平坦部41の中央部には断面V字状のねじ案内溝42が形成されている。このように形成されるジョイント材40の中央部には位置決め用の合成ゴム製のリングパッキン43が嵌装されている。
【0029】
なお、第1の手摺体2と第2の手摺体3の連結部(接合部)の外面には、筒状のカバー材44が被着されて、第1の手摺体2と第2の手摺体3の連結部(接合部)の継ぎ目を外部から目隠ししている。この場合、カバー材44は、例えばASA等の合成樹脂製の円筒状基部45と、この基部45の中央部の内周面に突設される仕切壁46と、仕切壁46の中心部に設けられるジョイント材40が挿通可能な連通孔47とを具備している。なお、ジョイント材40に嵌装されるリングパッキン43は仕切壁46に当接される。
【0030】
次に、第1の手摺体2と第2の手摺体3を連結(接合)する場合の手順の一例について、図5を参照して説明する。まず、ジョイント材40の一端側を第1の手摺体2の挿通部25(パイプ心材20の内径部)内に挿入し、リングパッキン43を第1の手摺体2の端面に当接する。この状態で、固定部材である固定ねじ50を第1の手摺体2の外方からねじ込んで第1の手摺体2とジョイント材40を固定する。次に、カバー材44の一端側を第1の手摺体2の外周面に嵌装する(図5(b)参照)。次に、ジョイント材40の他端部を第2の手摺体3の挿通部35(各リブの先端部を結んだ円形部)内に挿入し、リングパッキン43を第2の手摺体3の端面に当接する。この状態で、固定部材である固定ねじ50を第2の手摺体3の外方からカバー材44に設けられた案内孔48を介してねじ込んで第2の手摺体3とジョイント材40を固定する(図4及び図5(c)参照)。
【0031】
なお、上記手順は一例であって、ジョイント材40の挿入の順番を第2の手摺体3を先にし、第1の手摺体2への挿入を後に行ってもよい。また、カバー材44に設けられた案内孔48を第1の手摺体2側に位置させてもよい。
【0032】
上記第2の手摺体3の端部には、端部キャップ9が被着されている。この場合、端部キャップ9は、例えばASA等の合成樹脂製のエルボ状に形成されており、一端側には、第2の手摺体3の端部外周面を嵌装する嵌装筒部90が設けられると共に、嵌装筒部90の中心部に、嵌装筒部90より外方に向かって突出する中空棒状のジョイント部91が突設されている。なお、ジョイント部91は、断面略中空矩形状に形成され、内部に棒状の金属片91aが挿入され、各角部に内方側に向かう凹条部92が設けられている(図6参照)。
【0033】
上記のように形成される端部キャップ9のジョイント部91を第2の手摺体3のアルミ心材30の内部に設けられた挿通部35内に挿入した状態で、外方から固定部材である固定ねじ50をねじ込んで第2の手摺体3の端部に端部キャップ9を固定する。
【0034】
ここでは、第2の手摺体3の端部に端部キャップ9を被着した場合について説明したが、第1の手摺体2の端部においても同様に端部キャップ9を被着することができる。すなわち、端部キャップ9のジョイント部91を第1の手摺体2のパイプ心材20の内部に設けられた挿通部25内に挿入した状態で、外方から固定部材である固定ねじ50をねじ込んで第1の手摺体2の端部に端部キャップ9を固定することができる。
【0035】
一方、第1の手摺体2の端部は、建物の壁面6に設けられる端部ブラケット8によって支持されている。この場合、端部ブラケット8は、図7に示すように、固定ねじ(図示せず)によって壁面6に固定される中央に貫通孔81を有する略截頭円錐状の取付座80と、この取付座80の貫通孔81内に摺動及び回動可能に嵌挿される軸部82の先端に膨隆支持部83を有するブラケット本体84とで構成されている。また、ブラケット本体84の一端部には、第1の手摺体2の端部外周面を嵌装する嵌装筒部85が設けられると共に、嵌装筒部85の中心部に、嵌装筒部85より外方に向かって突出する中実棒状のジョイント部86が突設されている。この場合、取付座80とブラケット本体84は、例えばアルミダイキャストにて形成されている。
【0036】
上記のように形成される端部ブラケット8のジョイント部86を第1の手摺体2のパイプ心材20の内部に設けられた挿通部25内に挿入した状態で、外方から固定部材である固定ねじ50をねじ込んで第1の手摺体2の端部を壁面6に固定された端部ブラケット8によって支持・固定する。
【0037】
ここでは、第1の手摺体2の端部を端部ブラケット8によって支持・固定する場合について説明したが、第2の手摺体3の端部においても同様に端部ブラケット8によって支持・固定することができる。すなわち、端部ブラケット8のジョイント部86を第2の手摺体2のアルミ心材30の内部に設けられた挿通部35内に挿入した状態で、外方から固定部材である固定ねじ50をねじ込んで第2の手摺体2の端部を壁面6に固定された端部ブラケット8によって支持・固定することができる。
【0038】
また、上記第1の手摺体2と第2の手摺体3は、階段部や階段部に連なる設置面4に立設された支柱ブラケット10によって同様に保持されている。以下に、第2の手摺体3を支柱ブラケット10によって保持する構造について、図8及び図9を参照して説明する。
【0039】
支柱ブラケット10は、図8及び図9に示すように、第2の手摺体3の軸方向に沿う側面を保持する受止部11と、この受止部11の下部に延在する係止部12とからなる一対の上部ブラケット13a,13bと、支柱5に立設され、上端部に上部ブラケット13a,13bの係止部12の内方面を接触して係止する係止受部15eを有する下部ブラケット15と、上部ブラケット13a,13bの係止部12と下部ブラケット15の係止受部15eとを締め付ける固定ボルト14A及びこの固定ボルト14Aに螺合する袋ナット14Bとで主に構成されている。
【0040】
この場合、上部ブラケット13a,13bは、例えばアルミダイキャストにて形成されている。この上部ブラケット13a,13bは、第2の手摺体3の軸方向に沿う一側面を保持する湾曲状の受止部11と、この受止部11の下部中央から下方に延在する先端が円弧状の係止部12とからなり、係止部12には、固定ボルト14Aを貫通する取付孔16と、この取付孔16と同心軸線上に突出する係止突軸17とが形成されている。係止突軸17は突出方向に向かって漸次狭小となる狭小テーパ面18が形成されている。この場合、係止突軸17は円筒状に形成されているが、少なくとも下面部に狭小テーパ面18が形成されていれば、1つの扇状あるいは複数の扇状にて形成したものであってもよい。なお、係止突軸17を半円筒状に形成する場合は、強度を高めるために肉厚を厚くする方が好ましい。
【0041】
また、係止部12の内方面には、取付孔16と同心円上に突出する筒状部19が形成されている。この場合、筒状部19の内周面は、係止部12の内方面側の開口部に向かって拡開テーパ状に形成されている(図8参照)。また、係止部12の外方面の取付孔16の開口部には、固定ボルト14Aの円柱状の頭部14a又は六角状の袋ナット14Bが収納可能な凹所16aが設けられている。なお、固定ボルト14Aの頭部14aには六角穴14bが設けられており、例えば六角レンチ等の工具によって固定ボルト14Aの締め付け等が行えるようになっている。
【0042】
なお、上部ブラケット13a,13bの受止部11には、支柱5の軸線(鉛直線)に対して約45度の位置にそれぞれ貫通孔11aが設けられており、この貫通孔11aを貫通する固定部材である固定ねじ50が受止部11により保持される第2の手摺体3にねじ込まれることにより、第2の手摺体3が固定されるようになっている。この場合、固定ねじ50は第2の手摺体3のアルミ心材30の内部に設けられた8つのリブ31の間に位置するので、第2の手摺体3の固定を容易にすることができる。
【0043】
なお、係止部12の内方面における受止部11の近傍部位の両側の一方には、位置決めピン(図示せず)が突設され、他方には位置決めピンと嵌合可能な位置決め用穴(図示せず)が設けられており、これら位置決めピンと位置決め用穴を嵌合することで、両上部ブラケット13a,13bが左右対称の状態で結合されるように構成されている。
【0044】
なお、下部ブラケット15は、上部ブラケット13a,13bと同様に、例えばアルミダイキャストにて形成されている。この下部ブラケット15は、支柱5の上端部に筒状キャップ部材15aを介して高さ調整可能に挿入されるパイプ部材15bの上端部内に挿入される脚部15cと、この脚部15cの上端に外向きフランジ部15dを介して立設する、上端が略円筒形状の係止受部15eとで構成されている。係止受部15eには、固定ボルト14Aが挿通可能な取付孔15fが設けられており、この取付孔15fには、縦中心を境にして両側に向かって係止突軸17の狭小テーパ面18が摺動可能に接触する拡開テーパ面15gが形成されている。
【0045】
また、係止受部15eの外周には、縦中心を境にして両側に向かって上部ブラケット13a,13bの筒状部19の内面が摺動及び回動可能に接触する角度調整面15hが形成されている。この角度調整面15hは、先端に向かって狭小テーパ状に形成されている(図8参照)。
【0046】
なお、脚部15cの下端には固定ねじ15iによってばね性を有する皿状の抜け防止金具15jが止着されている。したがって、パイプ部材15b内に挿入される脚部15cは抜け防止金具15jの弾発力によってパイプ部材15b内に圧入・固定される。
【0047】
なお、筒状キャップ部材15a内に高さ調整可能に挿入されるパイプ部材15bは、図9に示すように、支柱5の上部の一側の上下2箇所に設けられた貫通孔15kを挿通する止めねじ15mを、筒状キャップ部材15aの一側の上下2箇所に刻設されたねじ孔15nに螺入し、止めねじ15mの先端をパイプ部材15bの側面に押圧することで固定されるようになっている。
【0048】
第1の手摺体2はパイプ心材20を有する以外は第2の手摺体3と同様の構造であるので、上記のように構成される支柱ブラケット10によって、第1の手摺体2も同様に支持・固定することができる。
【0049】
なお、第1の手摺体2における、階段部の最上段側から水平に延在する部分は、建物の壁面6に固定される壁ブラケット7によって支持され、固定ねじ(図示せず)によって固定されている。
【0050】
上記実施形態の手摺によれば、屈曲可能な第1の手摺体2のパイプ心材20と直線状の高剛性を有する第2の手摺体3のアルミ心材30の内部に、それぞれ同径の長手通しの挿通部25,35を形成し、両手摺体2,3の挿通部25,35に共通のジョイント材40を挿入した状態で、固定ねじ50によって両手摺体2,3とジョイント材40とをそれぞれ固定して、両手摺体2,3を連続的に連結することができる。
【0051】
また、上記実施形態の手摺によれば、第2の手摺体3のアルミ心材30の内部に形成される挿通部35を、中心方向に向かって突出する8つのリブ31の先端部を結んだ円形の部位にて形成することにより、第2の手摺体3のアルミ心材30の材料の節約が図れると共に、第2の手摺体3を軽量にすることができ、かつリブ31を外した部位、すなわち上下鉛直位置、左右水平位置又はその中間の45度の位置に固定ねじ50を位置させて、第2の手摺体3とジョイント材40とを容易に固定することができる。
【0052】
更に、上記実施形態の手摺によれば、図11(a),(b)に示すように、屈曲可能な第1の手摺体2においては、強度を持たせるために支柱ブラケット10のピッチP1は最大800mmであるが、高剛性を有する第2の手摺体3においては、支柱ブラケット10のピッチP2は最大1200mmとすることができる。したがって、直線部に第2の手摺体3を用いることにより、同一の長さL(例えば2400mm)に使用した場合、第2の手摺体3を用いることにより支柱ブラケット10の数を低減(図11では1本低減)することができるので、施工を容易にすることができると共に、コストの低廉化が図れる。
【0053】
なお、上記実施形態では、第2の手摺体3のアルミ心材30が中心方向に向かって突出する8つのリブ31を有する場合について説明したが、リブ31の数は必ずしも8つである必要はなく、少なくとも3つ以上であればよい。例えば、図10に示すように、第2の手摺体3のアルミ心材30の環状基部30aの内周面に120度の等間隔で中心方向に向かって突出する3つのリブ31としてもよい。また、第2の手摺体3とジョイント材40とを固定する固定ねじ50がリブを回避して、第2の手摺体3の鉛直方向の上下位置、水平の左右位置又はその中間の45度の位置に取り付け可能であれば、リブ31を3つ以上の任意の数に設定してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 手摺
2 第1の手摺体
3 第2の手摺体
4 設置面
5 支柱
6 壁面
7 壁ブラケット
8 端部ブラケット
9 端部キャップ
10 支柱ブラケット
20 パイプ心材(金属製心材)
21,21A 合成樹脂材
22,22A 基材
23 表面材
25 挿通部
30 アルミ心材(金属製心材)
31 リブ
35 挿通部
40 ジョイント材
50 固定ねじ(固定部材)
86 端部ブラケットのジョイント部
91 端部キャップのジョイント部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製心材の外周に合成樹脂材を被覆してなり、屈曲することが必要な部位において屈曲可能な第1の手摺体と、
金属製心材の外周に合成樹脂材を被覆してなる直線状の高剛性を有する第2の手摺体と、
設置面に立設される支柱の上端、又は建物の壁面に設けられ、上記第1の手摺体と第2の手摺体の少なくとも一方を固定・支持するブラケットと、を具備し、
上記第1の手摺体及び第2の手摺体の金属製心材の内部に同径の長手通しの挿通部を形成し、両手摺体の挿通部に共通のジョイント材を挿入すると共に、固定部材によって上記両手摺体とジョイント材とをそれぞれ固定して、上記両手摺体を連続的に連結してなる、ことを特徴とする手摺。
【請求項2】
請求項1記載の手摺において、
上記第2の手摺体は、上記金属製心材の内部に、中心方向に向かって突出する少なくとも3つ以上のリブが形成されており、各リブの先端部を結んだ円形の部位にて上記挿通部が形成されている、ことを特徴とする手摺。
【請求項3】
請求項1又は2記載の手摺において、
上記壁面に設けられるブラケットに、上記第1の手摺体又は第2の手摺体の金属製心材の内部に設けられる挿通部内に挿入可能なジョイント部を設け、上記挿通部内に上記ジョイント部を挿入すると共に、固定部材によって上記第1の手摺体又は第2の手摺体とブラケットとを固定してなる、ことを特徴とする手摺。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の手摺において、
上記第1の手摺体又は第2の手摺体の端部に被着可能な端部キャップを更に具備し、上記端部キャップに、上記第1の手摺体又は第2の手摺体の金属製心材の内部に設けられる挿通部内に挿入可能なジョイント部を設け、上記挿通部内に上記ジョイント部を挿入すると共に、固定部材によって上記第1の手摺体又は第2の手摺体と端部キャップとを固定してなる、ことを特徴とする手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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