説明

手榴弾防護物

榴散弾などの破片の貫通に対する耐性に優れた布帛積層物。この布帛はエラストマー母材組成物約7重量%〜約15重量%で圧密化された高強度繊維と、前記布帛のそれぞれの表面上のポリマーフィルム保護層との組み合わせから形成される。この布帛は、優れた耐弾性も保持しつつ、従来の布帛と比較して耐破片性が非常に改善されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、優れた耐弾性(ballistic resistant properties)並びに、榴散弾(shrapnel)などの破片の貫通に対して優れた耐性をもつ布帛積層物に関する。特に、本発明は、エラストマー母材中で高強度ポリマー繊維から形成した、軽量、柔軟、不織の耐破片性及び耐弾性材料に関連する。
【背景技術】
【0002】
関連する技術の記載
変形可能な発射体(deformable projectile)に対して優れた耐性をもつ高強度繊維を含む耐弾性物品(ballistic resistant article)は公知である。軍装備品の防弾チョッキ、ヘルメット及び構造部材などの物品は、通常、そのような高強度繊維を含む布帛(fabric)から製造される。通常使用される繊維としては、ポリエチレン繊維、パラ-アラミド繊維、たとえばポリ(フェニレンジアミンテレフタルアミド)、グラファイト繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維などが挙げられる。チョッキまたはチョッキの部品などの多くの用途に関しては、その繊維は織り布帛(woven fabric)または編み布帛(knitted fabric)である。他の用途の多くに関しては、繊維を複合材料中に封入または埋め込んで、硬質または軟質布帛を形成する。
【0003】
ヘルメット、パネル及びチョッキなどの物品の形成に有用な種々の耐弾性構築物が公知である。たとえば、本明細書中、その全てが参照として含まれる米国特許第4,403,012号、同第4,457,985号、同第4,613,535号、同第4,623,574号、同第4,650,710号、同第4,737,402号、同第4,748,064号、同第5,552,208号、同第5,587,230号、同第6,642,159号、同第6,841,492号、同第6,846,758号は、長鎖超高分子量ポリエチレンなどの材料から製造した高強度繊維などを含む耐弾性複合体について記載する。これらの複合体は、銃弾、砲弾、榴散弾などの発射体からの高速度衝撃による貫通に対して様々な度合いの抵抗性を示す。
【0004】
米国特許第4,403,012号及び同第4,457,985号は、高分子量ポリエチレンまたはポリプロピレン繊維の網状構造から構成される耐弾性複合体物品と、オレフィンポリマー及びコポリマー、不飽和ポリエステル、エポキシ及び繊維の融点未満で成形可能な他のポリマーから構成される母材について開示する。米国特許第4,623,574号及び同第4,748,064号は、エラストマー母材中に埋め込まれた高強度繊維を含む簡単な複合体構造について開示する。米国特許第4,737,402号及び同第4,613,535号は、エラストマー母体材料中に埋め込まれた、本明細書中、参照として含まれる米国特許第4,413,110号にも開示の超高分子量ポリエチレン及びポリプロピレンなどの高強度繊維の網状構造と、母材中の繊維の主表面に少なくとも一つの追加の硬質層とを含む高い耐衝撃性をもつ複合硬質複合体物品を開示する。米国特許第4,650,710号は、高強度、長鎖ポリオレフィン(ECP)繊維から構成される複数の柔軟な層を含む柔軟物品について開示する。この網状構造の繊維は、低弾性率エラストマー材料でコーティングされている。
【0005】
米国特許第5,552,208号及び同第5,587,230号は、高強度繊維の少なくとも一つの網状構造と、ビニルエステルとジアリルフタレートとを含む母材組成物とを含む物品及び製造法について開示する。米国特許第6,642,159号は、母材中に配置されたフィラメントの網状構造を含む複数の繊維層と、その間にエラストマー層とを含む耐衝撃性硬質複合体を開示する。この複合体は硬質プレートに結合して、徹甲弾に対する防御を高める。米国特許第6,841,492号は、双方向性及び多軸繊維(bi-directional and multi-axial fibers)、繊維複合体、その耐弾性アセンブリ及びその製造法について開示する。繊維は、平行面に、上下に横たわる強い、実質的に平行な一方向性のヤーン(yarn)のセットから構成される。米国特許第6,846,758号は、弾道発射体(ballistic projectile)による貫通に対し優れた抵抗性をもつ織り布帛ラミネートを開示する。この発明のラミネートは、高強度、高弾性率ヤーンで編まれた布帛、低弾性率エラストマーの表面コーティングとそのエラストマーをコーティングした表面に結合されたプラスチックフィルムとから構成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現行の耐弾性布帛及び物品に関連する一つの問題は、榴散弾(shrapnel)などの破片の貫通に対してその抵抗性が限定的である。本発明は、この問題に対する解決策を提供する。布帛のそれぞれの表面上にポリマーフィルムの保護層と組み合わせた、エラストマー母材組成物約7重量%〜約15重量%で圧密化した高強度繊維の圧密化網状構造体から形成した不織布帛は、変形可能な発射体に対して優れた特性も保持しつつ、従来の布帛と比較して耐破片性が非常に改善された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、
a)繊維からなる少なくとも一つの圧密化網状構造であって、前記繊維の圧密化網状構造は、複数の交差して積み重ねられた不織繊維層を含み、それぞれの繊維層は実質的に平行配列に配列された複数の繊維を含み、前記繊維は約7g/デニール以上の靱性と約150g/デニール以上の引っ張り弾性率(tensile modulus)を有し;前記繊維は、その上にエラストマー母材組成物を有し、前記エラストマー母材組成物は、前記繊維の圧密化網状構造の約7重量%〜約15重量%を構成し;複数の交差して積み重ねられた不織繊維層は前記母材組成物で圧密化されて、前記繊維の圧密化網状構造を形成し;前記繊維の圧密化網状構造は、前部表面と後部表面とを有し:ここで前記繊維がアラミド繊維またはポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を含む場合、前記母材組成物は前記繊維の圧密化網状構造の少なくとも約11重量%を構成するようにしたもの;及び
b)前記の繊維からなる圧密化網状構造の前部表面と後部表面のそれぞれに結合した、少なくとも1層のポリマーフィルムを含む、耐破片性材料を提供する。
【0008】
また本発明は、耐破片性材料を組み込んだ耐破片性物品も提供し、ここで耐破片性材料は、
a)繊維からなる少なくとも一つの圧密化網状構造であって、前記繊維の圧密化網状構造は、複数の交差して積み重ねられた不織繊維層を含み、それぞれの繊維層は実質的に平行配列に配列された複数の繊維を含み、前記繊維は約7g/デニール以上の靱性と約150g/デニール以上の引っ張り弾性率を有し;前記繊維は、その上にエラストマー母材組成物を有し、前記エラストマー母材組成物は、前記繊維の圧密化網状構造の約7重量%〜約15重量%を構成し;複数の交差して積み重ねられた不織繊維層は前記母材組成物で圧密化されて、前記繊維の圧密化網状構造を形成し;前記繊維の圧密化網状構造は、前部表面と後部表面とを有し:ここで前記繊維がアラミド繊維またはポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を含む場合、前記母材組成物が前記繊維の圧密化網状構造の少なくとも約11重量%を構成するもの;及び
b)前記の繊維からなる圧密化網状構造の前部表面と後部表面のそれぞれに結合された少なくとも1層のポリマーフィルムを含む。
【0009】
本発明は、さらに耐破片性材料の製造法であって、
a)少なくとも二つの繊維層において、各繊維層が、実質的に平行な一方向性配列となるように複数の繊維を配列することによって形成され;前記繊維が約7g/デニール以上の靱性と、約150g/デニール以上の引っ張り弾性率とを有し;前記繊維はその上にエラストマー母材組成物が結合されるように、前記少なくとも二つの繊維層を形成すること;
b)前記繊維層において、各層の繊維の一方向性配列が、それぞれの隣接する繊維層の長手繊維方向(longitudinal fiber direction)に対して90°の角度で交差して積み重なるように、前記繊維層を配列すること;
c)交差して積み重ねられている前記層を、繊維の圧密化網状構造を形成するのに十分な条件下で結合し、前記繊維の圧密化網状構造が前部表面と後部表面とを有し、前記母材組成物が前記繊維の圧密化網状構造の約7重量%〜約15重量%を構成し、前記繊維がアラミド繊維またはポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を含む場合、前記母材組成物は前記繊維の圧密化網状構造の少なくとも11重量%を構成するようにすること;及び
d)ポリマーフィルムの少なくとも一つの層を前記繊維の圧密化網状構造の前記前部表面と後部表面とに結合させること、
を含む、前記方法を提供する。
【0010】
さらに本発明は、
a)繊維からなる少なくとも一つの圧密化網状構造であって、前記繊維の圧密化網状構造が、複数の交差して積み重ねられた繊維層を含み、それぞれの繊維層は配列された複数の繊維を含み;前記繊維は約7g/デニール以上の靱性と約150g/デニール以上の引っ張り弾性率を有し;前記繊維は、その上にエラストマー母材組成物を有し、前記エラストマー母材組成物は、前記繊維の圧密化網状構造の約7重量%〜約15重量%を構成し;複数の交差して積み重ねられた繊維層は前記母材組成物で圧密化されて、前記繊維の圧密化網状構造を形成し;前記繊維の圧密化網状構造が、前部表面と後部表面とを有するもの;及び
b)繊維の前記圧密化網状構造の前部表面と後部表面のそれぞれに結合した少なくとも1層のポリマーフィルムを含む、前記耐破片性物品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、優れた弾貫入抵抗性に加えて優れた破片貫入抵抗性(fragment penetration resistance)をもつ不織布帛複合体を提示する。本発明の目的に関して、優れた弾道貫入抵抗性(ballistic penetration resistance)をもつ本発明の耐破片性物質は、変形可能な発射体に対して優れた特性を示すものを表す。
【0012】
本発明の繊維は低弾性率材料でコーティングするのが好ましく、ここで前記母材は前記布帛の約7〜約15重量%を構成する。この繊維はさらに、圧密化網状構造のそれぞれの外部表面に結合しれた少なくとも一つの外部ポリマー層を含む。本明細書中で使用するように、「引っ張り弾性率」なる用語は、繊維に関してはASTM 2256試験法により、エラストマー母材材料に関してはASTM D638試験法により測定した弾性率を意味する。
【0013】
本発明の目的に関しては、繊維とは、縦方向が幅及び厚さという横の寸法よりもずっと大きい細長い物体である。本発明で使用するための繊維の断面は種々に変動することができる。断面は円、平坦または楕円形であってもよい。従って、「繊維」なる用語としては、規則的または非規則的な断面をもつフィラメント、リボン、ストリップなどが挙げられる。これらは、繊維の線状、または縦方向の軸から突出する一つ以上の規則的なまたは非規則的なローブをもつ非規則的または規則的なマルチローバル(multi-lobal)の断面であってもよい。繊維は単一ローブ(single-lobed)であり、実質的に円形の断面をもつのが好ましい。
【0014】
本発明の耐破片性材料は、エラストマー母材をその上にもつ、高強度、高引っ張り弾性率の繊維からなる少なくとも一つの圧密化網状構造(consolidated network)を含んでおり、ここで一つの圧密化網状構造体は、二つ以上の繊維層を含む「単層(single layer)」の布帛構造体(fabric structure)である。本明細書中で使用するように、繊維「網状構造」なる用語は、複数の配列または相互接続された繊維またはヤーン層を指す。「圧密化網状構造」なる用語は、繊維層と母材組成物との圧密化結合体を指す。本明細書中において、「単層(single layer)」構造なる用語は、一つの単一構造内に圧密化された一つ以上の個々の繊維層から構成された構造体を指す。通常、「布帛」とは、織り材料または不織材料のいずれか一方を表すことができる。本発明の好ましい態様では、耐破片性布帛は不織材料である。「配列」とは、繊維またはヤーンの規則的な平行配列を指す。繊維「層」なる用語は、織り繊維または不織繊維またはヤーンの平行配列を指す。繊維網状構造は、種々の構造(配置)をもつことができる。たとえば繊維は、フェルトまたは別の織物、不織物若しくは編物として形成させることができ、あるいは別の任意の慣用方法により網状構造に形成させることができる。特に好ましい圧密化網状構造では、複数の繊維層を組み合わせられており、これによってそれぞれの繊維層が一方向性に配列された繊維を含み、共通の長手繊維方向に沿って互いに実質的に平行となる。
【0015】
本明細書中で使用するように、「高強度、高い引っ張り弾性率繊維」とは、それぞれASTM D2256試験法にしたがって測定して少なくとも約7g/デニール以上の好ましい靱性、少なくとも約150g/デニール以上の好ましい引っ張り弾性率と、少なくとも約8J/g以上の好ましい破断エネルギー」をもつものである。本明細書中で使用するように、「デニール」なる用語は、線密度の単位であり、繊維またはヤーン9000メートル当たりのグラムで表した質量に等しい。本明細書中で使用するように、「靱性」なる用語は、緊張状態にない試験片の線密度(デニール)当たりの力(グラム)として表した引っ張り応力を指す。繊維の「初期弾性率」なる用語は、変形に対するその耐性を示す材料の特性である。「引っ張り弾性率」なる用語は、元の繊維長の関数(インチ/インチ)として表した、グラム-力/デニール(g/d)対歪みの変化で表した、靱性における変化の割合を指す。
【0016】
特に好適な高強度、高い引っ張り弾性率繊維材料としては、長鎖(extended chain)ポリオレフィン繊維、たとえば高度に配向した、高分子量ポリエチレン繊維、特に超高分子量ポリエチレン繊維、及び超高分子量ポリプロピレン繊維が挙げられる。また好ましいものは、長鎖ポリビニルアルコール繊維、長鎖ポリアクリロニトリル繊維、パラ-アラミド繊維、ポリベンザゾール繊維、たとえばポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維及びポリベンゾチアゾール(PBT)繊維並びに液晶コポリエステル繊維が挙げられる。
【0017】
ポリエチレンの場合、好ましい繊維は、少なくとも500,000、好ましくは少なくとも1,000,000、より好ましくは2,000,000〜5,000,000の分子量をもつ長鎖ポリエチレンである。そのような長鎖ポリエチレン(ECPE)繊維は、本明細書中、参照として含まれる米国特許第4,137,394号または同第4,356,138号に記載のように溶液紡糸プロセスによって作ることができるか、または本明細書中、参照として含まれる米国特許第4,551,296号及び同第5,006,390号に記載のように溶液から紡糸してゲル構造を形成することができる。
【0018】
本発明で使用するのに最も好ましいポリエチレン繊維は、Honeywell International Inc.からSpectra(登録商標)の商標で市販されているポリエチレン繊維である。Spectra繊維は当業界で周知である。Spectra高性能繊維は水に浮くほど十分に軽いのに、重量比で言えばスチールより10倍も強い。この繊維は、衝撃、水分、化学的摩耗及び穿刺に対する耐性などの他の重要な特性ももつ。これらの繊維は、ゲル紡糸として公知のプロセスを使用して製造するのが好ましい。このプロセスでは、長鎖ポリエチレン分子を溶媒に溶解し、これを加熱して、紡糸口金と呼ばれる小さなノズルを通して押し出す。溶液から得られた噴出物は冷えてポリマー繊維に固化して、次いでこれを延伸し、乾燥させ、さらなる製造用に糸巻きに巻き取る。そのような方法は当業界で周知である。このプロセスにより長鎖ポリエチレン分子が配列して、それぞれの分子の水素原子が隣の分子と水素原子と結合する。繊維内での強度の炭素-炭素分子結合が、Spectra繊維に大きな引っ張り強度を与える。Spectra繊維はそれ自体としてかなり長い間公知であり、たとえば共同出願のHarpellらの米国特許第4,623,547号及び同第4,748,064号に記載されている。
【0019】
好適なポリプロピレン繊維としては、本明細書中、参照として含まれる米国特許第4,413,110号に記載の高配向の長鎖ポリプロピレン(ECPP)繊維が挙げられる。好適なポリビニルアルコール(PV-OH)繊維は、本明細書中、参照として含まれる米国特許第4,440,711号及び同第4,599,267号に記載されている。好適なポリアクリロニトリル(PAN)繊維は、本明細書中、参照として含まれる米国特許第4,535,027号に開示されている。これらの繊維の種類はどれも通常、公知であり、広く市販されている。
【0020】
好適なポリアミド(芳香族ポリアミド)繊維は市販されており、たとえば米国特許第3,671,542号に記載されている。たとえば有用なポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)フィラメントは、KEVLAR(登録商標)の商標名のもとDupont社より商業生産されている。本発明の実施では、NOMEX(登録商標)のもとDupont社より商業生産されているポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)繊維がある。本発明の実施に好適なポリベンズアゾール繊維は市販されており、本明細書中、それぞれ参照として含まれる米国特許第5,286,833号、同第5,296,185号、同第5,356,584号、同第5,534,205号及び同第6,040,050号に開示されている。好ましいポリベンズアゾール繊維は、Toyobo Co.製のZYLON(登録商標)ブランドの繊維である。本発明の実施に好適な液晶コポリエステル繊維は市販されており、本明細書中、それぞれ参照として含まれる米国特許第3,975,487号、同第4,118,372号及び同第4,161,470号に開示されている。
【0021】
本発明で使用するための他の好適な繊維の種類としては、ガラス繊維、炭素から形成した繊維、玄武岩(basalt)又は他の鉱物から形成した繊維、M5(登録商標)繊維並びに上記材料の組み合わせが挙げられ、これらは全て市販されている。M5繊維はMagellan Systems International(バージニア州リッチモンド)により製造されており、そのそれぞれが本明細書中、参照として含まれる米国特許第5,674,969号、同第5,939,553号、同第5,945,537号、及び同第6,040,478号に記載されている。特に好ましい繊維としては、M5繊維、ポリエチレンSpectra繊維、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)及びポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)繊維が挙げられる。より好ましくは、繊維は高強度、高弾性率ポリエチレンSpectra繊維である。
【0022】
本発明の目的に関して最も好ましいものは、高強度、高引っ張り弾性率の長鎖ポリエチレン繊維である。上記のごとく、高強度、高引っ張り弾性率繊維としては、ASTM D2256により測定して約7g/デニール以上の好ましい靱性、約150g/デニール以上の好ましい引っ張り弾性率と、約8J/g以上の破断エネルギーをもつものがある。本発明の好ましい態様では、繊維の靱性は約15g/デニール以上、好ましくは約20g/デニール以上、より好ましくは約25g/デニール以上であり、最も好ましくは約30g/デニール以上である。本発明の繊維は、また、300g/デニール以上、より好ましくは約400g/デニール以上、より好ましくは500g/デニール以上、より好ましくは約1,000g/デニール以上、最も好ましくは約1,500g/デニール以上の引っ張り弾性率をもつ。本発明の繊維はまた、約15J/g以上、より好ましくは約25J/g以上、より好ましくは約30J/g以上、最も好ましくは約40J/g以上の破断エネルギーをもつ。これらの組み合わされた高強度特性は、溶液成長またはゲル繊維プロセスを使用することにより得ることができる。米国特許第4,413,110号、同第4,440,711号、同第4,535,027号、同第4,457,985号、同第4,623,547号、同第4,650,710号及び同第4,748,064号は一般に、本発明で使用する好ましい高強度長鎖ポリエチレン繊維について議論しており、これらの特許の開示は、本明細書中、参照として含まれる。
【0023】
本発明の布帛を形成するための好ましい方法は、繊維の少なくとも一つの表面にエラストマー組成物をコーティングし、好ましくは個々の繊維それぞれを実質的にコーティングまたは封入し、続いてそのようにコーティングされた複数の繊維を一緒に圧縮し、融合させることである。このエラストマー組成物を、本明細書中では母材組成物と称する。本明細書中で使用する「母材(matrix)」なる用語は当業界で周知であり、圧密化後に繊維を一緒に結合するポリマー材料を表すために使用する。「複合体(composite)」なる用語は、繊維と母材材料との圧密化結合物(consolidated combination)を指す。本発明の好ましい態様では、本発明の繊維は最初にエラストマー母材組成物でコーティングされ、続いて複数の繊維を不織繊維層に配列する。あるいは、繊維を一緒に配列し、続いてエラストマー母材組成物でコーティングすることもできる。
【0024】
エラストマー母材組成物は、種々のポリマー性及び非ポリマー性材料を包含することができる。好ましいエラストマー母材組成物は、低弾性率エラストマー組成物を含む。本発明の目的に関しては、低弾性率エラストマー組成物は、ASTM D638試験法に従って測定して約6,000psi(41.4MPa)以下の引っ張り弾性率をもつ。好ましくはエラストマーの引っ張り弾性率は、約4,000psi(27.6MPa)以下、より好ましくは約2400psi(16.5MPa)以下、より好ましくは1200psi(8.23MPa)以下、最も好ましくは約500psi(3.45MPa)以下である。エラストマーのガラス転移温度(Tg)は好ましくは約0℃未満であり、より好ましくは約−40℃未満であり、最も好ましくは約−50℃未満である。エラストマーは、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%の破断点伸びも有し、最も好ましくは少なくとも約300%の破断点伸びを有する。
【0025】
広汎な種類のエラストマー材料及び配合物を本発明で使用することができる。好適なエラストマーの代表例は、the Encyclopedia of Polymer Science、第5巻 (John Wiley & Sons. Inc.1964年)の「合成エラストマー」のセクションにまとめられている構造、特性、配合物と架橋方法を有する。必須条件は、本発明の母材材料が好適に低い弾性率をもち、且つ繊維の融点未満で成形可能であるということである。好適な低弾性率エラストマー材料としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、ポリスルフィドポリマー、ポリウレタンエラストマー、エポキシ、ポリクロロプレン、可塑化ポリ塩化ビニル、ブタジエンアクリロニトリルエラストマー、ポリ(イソブチレン-コ-イソプレン)、ポリアクリレート、フェノール樹脂、ポリブチラール、ポリエステル、ポリエーテル、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、熱可塑性エラストマー及びスチレンブロックコポリマー、たとえばスチレン-イソプレン-スチレンまたはスチレン-ブタジエン-スチレンタイプなどが挙げられる。
【0026】
特に有用なのは、共役ジエンとビニル芳香族モノマーとのブロックコポリマーである。ブタジエンとイソプレンは好ましい共役ジエンエラストマーである。スチレン、ビニルトルエン及びt-ブチルスチレンは好ましい共役芳香族モノマーである。ポリイソプレンを含むブロックコポリマーを水素化して、飽和炭化水素エラストマーセグメントをもつ熱可塑性エラストマーを製造することができる。このポリマーはA-B-A型の単純な三ブロックコポリマー、(AB)n型(n=2〜10)のマルチブロックコポリマー、またはR-(BA)x型(x=3〜150)のラジカル配置コポリマー(radical configuration copolymer)であってもよく、ここでAはポリビニル芳香族モノマー由来のブロックであり、Bは共役ジエンエラストマー由来のブロックである。これらのポリマーの多くはKraton Polymers(テキサス州ヒューストン)により商業製造されており、“Kraton(登録商標)Thermoplastic Rubber”速報、SC-68-81に記載されている。最も好ましい母材ポリマーは、Kraton Polymersより商業生産されているKraton(登録商標)商標のもと市販されているスチレンブロックコポリマーを含む。
【0027】
最も好ましくは、低弾性率エラストマー材料は本質的に上記エラストマーの少なくとも一つからなる。この低弾性率エラストマー材料は、カーボンブラック、シリカなどの充填剤も含むことができ、ゴム業界で公知の方法を使用して、油で増量し、硫黄、過酸化物、酸化金属若しくは放射線硬化系によって加硫することができる。種々のエラストマー材料のブレンドを一緒に使用することができるか、一種以上のエラストマー材料を一種以上の熱可塑性樹脂とブレンドすることができる。高密度、低密度及び線状低密度ポリエチレンを架橋して、単独またはブレンドとして好適な特性のコーティング母材材料を得ることができる。いかなる場合においても、コーティングの弾性率は、ASTM D638試験法で測定して6,000psi(41.4MPa)を超えてはならない。
【0028】
コーティングは、繊維表面にエラストマー溶液を噴霧またはロールコーティングし、続いて乾燥するなどの種々の方法で繊維に適用することができる。一つの方法は、液体、粘性固体若しくは懸濁液中の粒子として、または流動床として繊維にニートのコーティング材料を適用することである。あるいは、コーティングは、適用温度で繊維の特性に悪影響を与えない好適な溶媒中の溶液またはエマルションとして適用することができる。コーティングポリマーを溶解または分散させることが可能な任意の液体を使用することができるが、好ましい溶媒群としては、水、パラフィン油並びに芳香族溶媒または炭化水素溶媒が挙げられ、代表的な溶媒としては、パラフィン油、キシレン、トルエン、オクタン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン(MEK)及びアセトンが挙げられる。溶媒中にコーティングポリマーを溶解または分散させるために使用する方法は、種々の支持体に同様のエラストマー材料をコーティングするのに通常使用されるものである。
【0029】
コーティングを繊維に適用する別の方法として、例えば、高弾性率前駆体(ゲル繊維)をコーティングしてから、 (ゲル紡糸繊維形成法を使用する場合)繊維から溶媒を除去する前又は後のいずれかの時点で、繊維を高温延伸操作にかける方法を用いることができる。次いで繊維を高温で延伸してコーティング化繊維を製造することができる。このゲル繊維を、所望のコーティングを得るための条件下で好適なコーティングポリマーの溶液内を通すことができる。繊維が溶液を通過する前に、ゲル繊維中での高分子量ポリマーの結晶化は起きても起きなくてもよい。あるいは繊維を好適なポリマー粉末の流動床中に押し出すことができる。さらに延伸操作または他の操作プロセス、たとえば溶媒交換、乾燥などを実施する場合、コーティングは最終繊維の前駆体材料に適用することができる。
【0030】
別のコーティング法では、最初に繊維層を形成し、続いてその層を、低弾性率エラストマーコーティング材料を含む溶液浴に浸漬する。溶媒を蒸発させると、エラストマー材料がコーティングした繊維網状構造ができる。この浸漬手順は、繊維上に所定量のエラストマー材料のコーティングを適用するのに必要な場合に、数回繰り返すことができる。
【0031】
布帛全体に対する乾燥母材組成物の割合は比較的低く、好ましくは布帛の全重量をベースとして約7重量%〜約15重量%である。より好ましくは、乾燥母材組成物は、布帛の約11重量%〜約15重量%を構成する。より好ましくは、乾燥母材組成物は布帛の約7重量%〜約14重量%を構成し、より好ましくは約7重量%〜約13重量%、より好ましくは約7重量%〜約12重量%、より好ましくは約7重量%〜約11重量%を構成する。意外にも、布帛上の外部ポリマーフィルム層と組み合わせて布帛中の全母材含有量を減らすと、優れた耐弾性に加えて優れた耐破片性をもつ繊維が得られた。もし前記繊維がアラミド繊維またはポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を含む場合、母材組成物は好ましくは繊維の前記圧密化網状構造の少なくとも約11重量%を構成する。
【0032】
本発明の好ましい態様において、本発明の繊維を最初に上記手順の一つを用いてコーティングし、続いて複数の繊維を配列して不織繊維層とする。好ましくは、個々の繊維を互いに隣に且つ接触させて配置し、繊維のシート様配列に配置させて、そこでは繊維が共通する長手繊維方向に沿って互いに実質的に平行に配列するようにする。繊維をそのような配置に配列させる特に効果的な方法では、繊維をエラストマー材料の溶液を含む浴を通して引き出し、次いでシリンダーなどの好適な形の周り及びその長さに沿って一枚のシート様の層に螺旋状に巻き付ける。次いで溶媒を蒸発させてと、平行に配置させた繊維のプレプリグシートが残るので、これをシリンダー形から剥がして所望のサイズに切断する。あるいは、複数の繊維を同時にエラストマー溶液の浴を通して引き出し、好適な表面上で互いに近接した位置で、実質的に平行になるように配置する。溶媒を蒸発させると、エラストマーコーティングされた繊維から構成されるプレプリグシートが残り、該繊維は共通する繊維方向に沿って実質的に平行であり、且つこれに沿って整列している。
【0033】
好ましくは上記方法に従い少なくとも二つの一方向性繊維層(unidirectional fiber layer)を形成することにより、繊維が全ての繊維表面上で低弾性率エラストマー母材組成物によって実質的にコーティングされるようにする。その後、好ましくは繊維層を圧密化して単層の圧密化繊維網状構造体にする。これは、一つの層の上面に別の層が積層されるように各層を積み重ね、続いて熱及び圧力のもと一緒に結合させて全体の構造をヒートセットし、母材材料を流して全ての残りの空隙を塞ぐことによって実施することができる。当業界で公知のとおり、一つの層の繊維配列方向が、もう一つの層の繊維配列方向に対して回転して、これらが平行でないように交差して積み重ねられると、優れた耐弾性が得られる。たとえば、好ましい構造体は、一つの層の長手繊維方向が別の層の長手繊維方向に対して直角であるように、本発明の二つの繊維層が互いに配置させられている。別の例では、必ずしもこの順ではないが、第一の層に対して第二、第三、第四及び第五層を+45°、−45°、90°及び0°で回転させた五層構造体を形成する。本発明の目的に関しては、隣接層は、もう一つの層の長手繊維方向に対して約0°〜約90°の間の事実上任意の角度で配列させることができるが、約0°と約90°の繊維配向が好ましい。上記の例は二つまたは五つの個別の繊維層を含む布帛について説明しているが、これらへの限定を意図するものではない。本発明の単層圧密化網状構造は、通常、種々の用途に望ましい場合には、たとえば約20〜約40層以上の任意の数の交差して積み重ねられた層を含んでよいものと理解すべきである。
【0034】
繊維層を圧密化し、ポリマーフィルム層を結合させるための好適な結合条件としては、慣用の公知ラミネート法が挙げられる。典型的なラミネートプロセスとしては、約200psi(1379kPa)の圧力下、約30分間、約110℃で交差して積み重ねられた材料上にポリマーフィルムを圧縮することが挙げられる。本発明の個別の繊維層の圧密化は、好ましくは約200°F(〜93℃)〜約350°F(〜177℃)の温度、より好ましくは約200°F〜約300°F(〜149℃)の温度、最も好ましくは約200°F〜約250°F(〜121℃)の温度で、約25psi(〜172kPa)〜約500psi(3447kPa)以上の圧力で実施する。当業界で公知のように、圧密化はオートクレーブ中で実施することができる。
【0035】
加熱する際、母材を完全に融解させずに付着させたり又は流動させることができる。しかしながら、通常、母材材料を融解させる場合、複合材料を形成するためには比較的小さな圧力しか必要ではないが、母材材料を付着させる点でのみ加熱する場合には、通常、もっと圧力が必要である。圧密化段階は通常、約10秒〜約24時間を要することがある。しかしながら、ラミネート温度、圧力及び時間は、通常、母材ポリマー、母材ポリマー含有量及び繊維の種類に依存する。
【0036】
繊維層の圧密化後、ポリマー層は、好ましくは慣用法により、単層の圧密化網状構造体の前部及び後部表面のそれぞれに結合する。前記ポリマー層への使用に好適なポリマーとしては、非限定的には、熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーとが挙げられる。好適な熱可塑性ポリマーは、非限定的には、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ビニルポリマー、フルオロポリマー並びにそれらのコポリマー及び混合物からなる群から選択することができる。これらの中でもポリオレフィン層が好ましい。好ましいポリオレフィンはポリエチレンである。ポリエチレンフィルムの非限定的な例は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖中密度ポリエチレン(LMDPE)、直鎖超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状超低密度(linear ultra-low density)ポリエチレン(ULDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。これらの中でもLLDPEが最も好ましい。好適な熱硬化性ポリマーとしては、非限定的には熱硬化性アリル、アミノ、シアナト、エポキシ、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ビスマレイミド、硬質ポリウレタン、シリコーン、ビニルエステル並びにそのコポリマー及びブレンド、たとえば米国特許第6,846,758号及び、同第6,841,492号及び同第6,642,159号に記載されているものが挙げられる。本明細書中に記載するように、ポリマーフィルムにはポリマーコーティングを含む。
【0037】
ポリマーフィルム層は好ましくは、公知のラミネート法を使用して単層の圧密化網状構造に結合させる。通常、ラミネート化は、層を単一層に結合させるのに十分な熱及び圧力条件のもと、個々の層を交互に配置することによって実施する。個別の層を互いに配置し、次いで結合物(combination)を当業界で公知の方法により一対の加熱ラミネートローラーのニップに通す。ラミネート化の加熱は、約95℃〜約175℃の温度、好ましくは約105℃〜約175℃の温度で、約5psig(0.034MPa)〜約100psig(0.69MPa)の圧力で、約5秒〜約36時間、好ましくは約30秒〜約24時間実施する。本発明の好ましい態様では、ポリマーフィルム層は好ましくは全布帛の約2重量%〜約25重量%、より好ましくは約2重量%〜約17重量%、最も好ましくは2重量%〜12重量%を構成する。ポリマーフィルム層の重量比は通常、多層フィルムを形成する布帛層の数に応じて変動する。圧密化段階及び外部ポリマー層ラミネート段階は本明細書中では2つの別個の段階として記載したが、これらは当業界の慣用の方法により一体化して単一の圧密化/ラミネート段階とすることもできる。
【0038】
ポリマーフィルム層は好ましくは、約1μm〜約250μm、より好ましくは約5μm〜約25μm、最も好ましくは約5μm〜約9μmの厚さをもつ、非常に薄い層である。個別の布帛層の厚さは、個々の繊維の厚さに対応する。従って、本発明の好ましい単層の圧密化網状構造は、約25μm〜約500μm、より好ましくは約75μm〜約385μm、最も好ましくは約125μm〜約255μmの好ましい厚さをもつ。そのような厚さが好ましいが、特定の要求を満足するために他のフィルム厚さも製造することができ、それも本発明の範囲内に含まれる。
【0039】
本発明の布帛は優れた剥離強度も示す。剥離強度は、繊維層の間の結合強度の指標である。原則として、母材ポリマー含有量が低ければ低いほど、結合強度は低くなるが、耐破片性は高くなる。しかしながら、限界結合強度未満では、チョッキなどの製品の切断及び組み立ての間に耐弾性材料は耐久性を失って、製品の長期耐久性が低下することにもなる。好ましい態様では、SPECTRAシールド(0°、90°)構造体のSPECTRA(登録商標)繊維材料の剥離強度は、好ましい耐破片性に関しては少なくとも約0.17 lg/ft2であり、より好ましくは少なくとも約0.188 lg/ft2であり、より好ましくは0.206 lg/ft2である。最良の剥離強度は、特にアラミド及びポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維に関し、少なくとも約11%〜約15%の母材含有量をもつ本発明の布帛で得られるという知見が得られた。
【0040】
布帛の形成後、これらを種々の用途で使用することができる。例えば、これらに熱及び圧力をかけることによって、製品に成型することができる。成型温度は約20℃〜約175℃、好ましくは約100℃〜約150℃、より好ましくは約110℃〜約130℃の範囲である。また、例えば米国特許第4,623,574号、同第4,650,710号、同第4,748,064号、同第5,552,208号、同第5,587,230号、同第6,642,159号、6,841,492号及び同第6,846,758号に記載の製品を形成するための好適な方法がある。
【0041】
本発明の好ましい態様では、複数の単層圧密化繊維網状構造体を一緒に配置して、当業界で周知のように、チョッキ、パンツ、帽子または他の装身具などの軟質の製品を成形する。本発明の布帛は、ヘルメットなどの他の個人用保護用具にも成型することができ、所望により防護用遮蔽体、カバーまたはブランケットに成形することができる。この繊維網状構造はそれぞれテキスタイル布帛の高柔軟性という特徴を保持し、好ましくは、互いに分離したままの状態であってよい(即ち互いに結合していなくてもよい)。あるいは複数層の布帛を一緒に縫い合わせるか、または接着性物質または熱可塑性若しくは非熱可塑性繊維または材料を使用して一緒に結合することができる。従って、本発明の物品は、結合状態の配列または非結合状態の配列に作り上げられた複数の不織耐破片性布帛を含んでいることもある。
【0042】
本発明の衣料品(garment)は、当業界で公知の方法により形成することができる。好ましくは衣料品は、本発明の耐破片性布帛と衣類製品とを接合させることにより形成することができる。たとえば、耐破片性ベストは、本発明の耐破片性布帛と接合している通常の布帛ベストを含むことができ、これにより、本発明の布帛は戦略的に配されたポケットに挿入される。これによって、ベストの重量を可能な限り軽量化しつつ、破片及び弾道に対する保護を最大化することができる。本明細書中で使用するように、「接合している(adjoining)」または「接合した(adjoined)」なる用語は、耐破片性布帛が必要に応じてベストまたは他の衣料品から容易に取り外すことができるように、別の布帛と一緒に縫い込みまたは接着など、並びに非付着的結合(un-attached coupling)または並置(juxtaposition)により取り付けることを含めるものとする。
【0043】
本発明に従って作られた複数層からなる布帛から構成されるベスト及び他の衣料品は、優れた耐弾性及び耐破片性とともに、優れた柔軟性及び着心地をもたらす。小さな先のとがった発射体(弾丸など)は、繊維を破壊することなく、横方向に繊維を押しのけることによって防護用具を貫くことがある。この場合、耐貫通性は、どれだけ迅速に繊維が脇へ押しのけられるかに依存するので、繊維網状構造の性質に依存する。不織布帛の耐弾性または耐破片性の重要な要素は、交差して積み重ねられた一方向性複合体の交差部分(cross-over)の周期性及び繊維のデニール、繊維と繊維との摩擦、母材の特性、ラミネート間の結合強度などである。
【0044】
鋭利な破片は繊維を剪断することによって貫通することがある。発射体も緊張状態の繊維を破断することもある。発射体の布帛への衝撃により、布帛を通してひずみ波が伝播する。このひずみ波が布帛の中を迅速に伝播し、妨げられず、大きな容積の繊維を巻き込むと、耐衝撃性はより大きい。実施態様の層間の界面結合が弱いと、より大きなエネルギーを吸収する。実験及び分析研究から、全ての実例において、全ての貫通モードが存在し、その相対的重要度は、複合体の設計により大きく影響を受けることが示された。
【0045】
耐弾性及び耐破片性は、当業界で周知の標準的な試験法を使用して決定する。たとえば、弾道複合体(ballistic composite)のスクリーニング研究では通常、22口径の、特定の重量、硬度及び寸法の非変形性スチール破片(Mil-Spec、MIL-P-46593A(ORD))を使用する。
【0046】
ある構造体の保護力または耐貫通性は、通常、発射体の50%が複合体を貫通する時点での衝突速度(V50としても知られる。防御物によって50%が遮蔽される。)を引用することにより表す。本明細書中で使用する、物品の「貫入抵抗性(penetration resistance)」なる用語は、銃弾、破片、榴散弾などの物理的物体及び、爆発の爆風などの非物理的物体などの指定された脅威物体による貫通に対する耐性である。同一面密度(面密度は表面積で除した複合体パネルの重量である。)を有する複合体の場合、V50が高ければ高い程、複合体の抵抗性も優れている。指定された脅威物体に対する貫入抵抗は、耐弾性物質の全比エネルギー吸収(total specific energy absorption:SEAT)によっても表すことができる。全SEATは、複合体の面密度で除した脅威物体の運動エネルギーである。SEAT値が高ければ高いほど、複合体の脅威物体に対する抵抗性が高くなる。
【0047】
本発明の布帛の耐弾性及び耐破片性は、多くの因子、特に布帛を製造するのに使用した繊維の種類に応じて変動する。しかしながら意外にも、本発明の布帛は、以下の実施例及びデータの表から見ることができるように、より多量の母材ポリマーを有する同等の布帛と比較して高いV50値と、目的物の優れた比エネルギー吸収とをもつという知見が得られた。
【実施例】
【0048】
以下の非限定的な実施例は、本発明を説明するためのものである。
実施例
実施例1(比較例)
弾道シュートパック(ballistic shoot pack)は、18枚の布帛層を重ねて製造し、それぞれの布帛層は、Kraton(登録商標)熱可塑性ポリマーで含浸させた一方向性の高弾性率ポリエチレン(HMPE)繊維の二枚のシート(層:pile)からなる圧密化網状構造によって構成されており、それぞれの層は、互いに直角に(0度/90度)で交差して積み重ねられ、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムの二枚のシートの間にラミネートされている。
【0049】
HMPE繊維は、Honeywell International,Inc.より製造されたSPECTRA(登録商標)1000、1100デニールであり、36g/デニールの靱性と1250g/デニールの引っ張り弾性率であった。使用したKratonポリマーは、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレン-ブロックコポリマーである。ポリエチレンフィルムを添加する前、布帛層はそれぞれ、布帛の全重量を基準として繊維79重量%とKratonポリマー21重量%を含んでいた。
【0050】
LLDPEフィルムはそれぞれ9μmの厚さであった。それぞれLLPDEフィルムの面密度は8gsm(グラム/m2)であった。このLLDPEフィルムを、110℃、約200psi(1379kPa)の圧力で少なくとも30分間ラミネートして、交差して積み重ねられた材料とした。一つの布帛層の全面密度は116 gsmであった。材料の連続ラミネート化シートを形成してロールに巻き取った。このラミネート化シートは厚さ0.006”(0.1524mm)であった。次いでこのシートを18枚の別々の層に切断した。それぞれの層は18”×18”(45.7mm×14.7mm)の長さと幅であった。次いでこの18枚の層を緩く積み重ねてシュートパックを形成した。層は互いに結合させなかった。このシュートパックの面密度は、0.43 lb/ft2(2.09kg/m2)であった。
【0051】
耐破片性を試験するために、このシュートパックを試験フレームに据え付け、フレーム上部で固くクランプした。フレームを、固く据え付けたユニバーサルレシーバー(universal receiver)から発射した破片のラインに対して90度の方向性で据え付けた。17グレインの破片シミュレート用発射体(FSP)を試験用に使用し、MIL-P-46593Aにより形、サイズ及び重量を合わせた。V50弾道試験は、MIL-STD-662Fの手順に従って実施した。V50弾道限界試験は、銃弾が試験物体を貫通する確率が50パーセントである速度を実験的に確認する統計試験である。
【0052】
幾つかの17グレインFSP破片を、それぞれの破片の速度を変えながら発射した。それぞれの破片の速度は、先の破片ショットがシュートパックを完全に貫通、または部分的に幾層かを貫通したかどうかに応じて変動させた。平均速度は、好ましくは約125フィート/秒(fps)の速度範囲内で約4回の部分貫通と約4回の完全な破片貫通を含むようにして達成された。部分貫通及び完全貫通の平均速度はV50と呼ぶ。このシュートパックのV50は1201 fpsであった。標的
の比エネルギー吸収(SEAT)は34.88 J-m2/kgと計算された。
【0053】
実施例1A(比較例)
実施例1を繰り返したが、シュートパックは0.44 lb/ft2(2.15kg/m2)の面密度をもつ19枚積み重ねた布帛層であった。試験の結果、このシュートパックのV50は、1217 fpsであった。標的の比エネルギー吸収は、35.01 J-m2/kgと計算された。
【0054】
実施例2
弾道シュートパックは、実施例1に記載のようにSPECTRA(登録商標)1000、1100デニールの20枚の布帛層を一緒に積み重ねることによって製造した。それぞれの布帛層は、布帛層の重量を基準として88.7重量%の繊維を含み、布帛層の重量をベースとして母材ポリマー11.3重量%を含んでいた。LLDPEフィルムの厚さは9μmであった。LLDPEフィルムの面密度は8gsmであった。一つの布帛層の全面密度は103.9gsmであった。材料のラミネート化シートの厚さは、0.1524mmであった。
【0055】
シュートパックのサイズは、18”×18”(45.7mm×45.7mm)であった。シートのスタックは互いに結合していなかった。シュートパックの面密度は0.43 lb/ft2(2.09kg/m2)であった。このパックを実施例1のように耐破片性に関して試験した。このシュートパックのV50は、1412 fpsであった。標的の比エネルギー吸収は、48.2 J-m2/kgと計算された。この実施例は、実施例1の21%と比較して、11%の母材ポリマーをもつSPECTRA(登録商標)1000、1100デニール布帛を使用して達成された耐破片性の方が優れていることを示している。
【0056】
実施例3(比較例)
実施例1を繰り返した。但し、シュートパックは32枚の布帛層を含み、9mmのフルメタルジャケット(FMJ)弾丸に対して試験した。シュートパックのサイズは、18”×18”(45.7mm×45.7mm)であった。シュートパックの面密度は0.74 lb/ft2(3.61kg/m2)であった。9mmFMJ弾丸抵抗に対する試験に関しては、シュートパックをPlastilina #1クレーを充填した試験フレームに据え付け、フレーム上に固定した。Plastilina充填フレームを、しっかりと固定したユニバーサルレシーバーから発射した破片のラインに対して90度の方向性で据え付けた。試験に使用した9mm FMJ弾丸から、the National Institute of Justice(NIJ)0101.04試験標準に従って形状、サイズ及び重量を合わせた。
【0057】
弾道試験は、MIL-STD-662Fの手順に従って実施した。幾つかの9mmFMJ弾丸を、それぞれの弾丸の速度を変えながら発射した。それぞれの9mmFMJ弾丸の速度は、先の破片ショットがシュートパックを完全に貫通、または部分的に幾層かを貫通したかどうかに応じて変動させた。平均速度は、約125フィート/秒(fps)の速度内で約4回の部分貫通と約4回の完全な破片貫通を含めることによって達成された。部分貫通及び完全貫通の平均速度を計算し、これをV50という。このシュートパックのV50は1525 fpsであった。標的の比エネルギー吸収(SEAT)は236.81J-m2/kgと計算された。
【0058】
実施例4
実施例2を繰り返したが、9mmFMJ弾丸に関して試験した。シュートパックのサイズは、18”×18”(45.7mm×45.7mm)であった。シュートパックの面密度は0.43 lb/ft2(2.09kg/m2)であった。弾丸試験は実施例3の通りに実施した。このシュートパックのV50は1272 fpsであった。標的の比エネルギー吸収(SEAT)は284.46J-m2/kgと計算された。この実施例は、実施例3の21%と比較して、11%の母材ポリマーをもつSPECTRA(登録商標)1000、1100デニール布帛を使用して達成された耐破片性の方が優れていることを示している。
【0059】
実施例5(比較例)
弾丸シュートパックは、27枚の布帛層を積み重ねることによって製造し、そのそれぞれの布帛層は、直角に交差して積み重ねられたKraton(登録商標)ポリマーで含浸した一方向性のHMPE繊維2シートをもつ圧密化網状構造から構成され、LLDPEフィルムの二枚のシートの間にラミネートされている。
【0060】
HMPE繊維は、Honeywell International、Inc.により製造されたSPECTRA(登録商標)1000、1300であり、36g/デニールの靱性と1150g/デニールの引っ張り弾性率であった。それぞれの布帛層は、布帛の重量を基準として繊維79重量%を含み、布帛の重量をベースとして母材ポリマー21重量%を含んでいた。LLDPEフィルムはそれぞれ厚さ9μmであった。LLDPEフィルムの面密度は8gsmであった。一つの布帛層の総面密度は150.0gsmであった。材料のラミネート化シートは厚さ0.1651mmであった。
【0061】
シュートパックのサイズは、18”×18”(45.7mm×45.7mm)であった。27枚のシートのスタックは互いに結合していなかった。シュートパックの面密度は0.84 lb/ft2(4.1kg/m2)であった。破片試験は実施例1の通りに実施した。このシュートパックのV50は1501 fpsであった。標的の比エネルギー吸収(SEAT)は27.86 J-m2/kgと計算された。
【0062】
実施例6
弾道シュートパックは、実施例5の記載のようにSPECTRA(登録商標)1000、1300デニールの29枚の布帛層を一緒に積み重ねることによって製造した。それぞれの布帛層は、布帛層の重量をベースとして92.9重量%の繊維を含み、布帛層の重量をベースとして母材ポリマー7.1重量%を含んでいた。一つの布帛層の全面密度は129.0gsmであった。シュートパックのサイズは、18”×18”(45.7mm×45.7mm)であった。シートのスタックは互いに結合していなかった。シュートパックの面密度は0.77 lb/ft2(3.75 kg/m2)であった。
【0063】
破片試験を実施例1のよう試験した。8回の部分貫通及び完全貫通速度の平均を計算し、これをV50と呼ぶ。このシュートパックのV50は、1660 fpsと計算された。標的の比エネルギー吸収(SEAT)は37.12J-m2/kgと計算された。この実施例は、実施例5の21%と比較して、7%の母材ポリマーをもつSPECTRA(登録商標)1000、1100デニール布帛を使用して達成された耐破片性の方が優れていることを示している。
【0064】
実施例7
SPECTRA(登録商標)1000、1300繊維を実施例5の通りに28枚の布帛層を積み重ねることによって弾道シュートパックを製造した。それぞれの層は布帛層の重量をベースとして繊維89.9重量%を含み、布帛層の重量をベースとして母材ポリマー10.1重量%を含んでいた。一つの布帛層の総面密度は132.8gsmであった。シュートパックのサイズは18”×18”(45.7mm×45.7mm)であった。シートのスタックは互いに結合していなかった。シュートパックの面密度は0.77 lb/ft2(3.75kg/m2)であった。
【0065】
破片試験を実施例1のよう試験した。このシュートパックのV50は、1616 fpsと計算された。目標の比エネルギー吸収(SEAT)は35.73 J-m2/kgと計算された。この実施例は、実施例5の21%と比較して10%母材ポリマーをもつSPECTRA(登録商標)1000、1100デニール布帛を使用して達成された耐破片性の方が優れていることを示している。
【0066】
実施例7A
SPECTRA(登録商標)1000、1300繊維を実施例7の通りに29枚の布帛層を積み重ねることによって弾道シュートパックを製造した。それぞれの布帛層は布帛層の重量を基準として繊維85.0重量%を含み、布帛層の重量を基準として母材ポリマー15.0重量%を含んでいた。シュートパックの面密度は0.83 lb/ft2(4.05kg/m2)であった。
【0067】
破片試験を実施例1のように試験した。このシュートパックのV50は、1648 fpsと計算された。標的の比エネルギー吸収(SEAT)は34.03 J-m2/kgと計算された。この実施例は、実施例5の21%と比較して15%の母材ポリマーをもつSPECTRA(登録商標)1000、1100デニール布帛を使用して達成された耐破片性の方が優れていることを示している。
【0068】
実施例8(比較例)
実施例5を、実施例3の通りに9mm FMJ弾丸に対して試験を繰り返した。このシュートパックのV50は1450 fpsであった。標的の比エネルギー吸収(SEAT)は189.22 J-m2/kgと計算された。
【0069】
実施例9
実施例7を、実施例3の通りに、但し9mm FMJ弾丸に対して試験を繰り返した。試験は実施例3の通りに実施した。このシュートパックのV50は、1519 fpsであった。標的の比エネルギー吸収(SEAT)は226.54 J-m2/kgと計算された。この実施例は、実施例8の21%と比較して、10%の母材ポリマーをもつSPECTRA(登録商標)1000、1300デニール布帛を使用して達成された耐破片性の方が優れていることを示している。
【0070】
実施例1〜9で集めたデータを以下の表にまとめる。
【0071】
【表1】

【0072】
(*)Kraton(登録商標)ポリマーと、溶媒としてシクロヘキサン。
(**)エマルションポリマー−ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン−ブロックコポリマー。
シュートパック(標的)サイズは18”×18”:面密度はlb/ft2(psf)として弾道シュートパックの重量である。SEATは、Specific Energy Absorption of Targetである。
【0073】
実施例10〜12
SPECTRA(登録商標)シールドLCRの三種類のサンプルを剥離強度特性に関して試験した。それぞれのサンプルは異なる母材ポリマー含有量であった。SPECTRA(登録商標)シールドLCRサンプルはそれぞれ、以下の層構造の4層構造であった:LLDPEフィルム/0°繊維層/90°繊維層/LLDPEフィルム。標準剥離強度試験は繊維層間を剥離することによって実施した。結果を以下の表にまとめる。
【0074】
【表2】

【0075】
実施例10〜12は母材ポリマー含有量が低ければ低いほど、結合強度が低くなることを示している。しかしながら、臨界結合強度より低い場合、チョッキなどの製品の材料切断及び組み立ての間に、耐衝撃性材料は耐久性を失い、製品の長期耐久性も低下する。母材ポリマー含有量が6.04%の実施例10のサンプルは、0.089 lb/ft2の許容不可能な剥離強度を示した。母材ポリマー含有量が11.43%の実施例11のサンプルは、0.188 lb/ft2の優れた剥離強度を示した。このサンプルは、非常に優れた耐破片性及び耐弾道性能も示すだろう。母材ポリマー含有量20.0%の実施例12のサンプルは、1.766 lb/ft2の優れた剥離強度を示したが、サンプルは不十分な破片防御性能しか示さないだろう。
【0076】
本発明は好ましい態様に関して特に示され且つ説明されてきたが、当業者には、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく種々の変更及び変形が可能であることは容易に理解されよう。本請求の範囲、上記代替物及びその全ての等価物は、開示された態様を網羅するために説明したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)繊維からなる少なくとも一つの圧密化網状構造であって、前記繊維の圧密化網状構造は、複数の交差して積み重ねられた不織繊維層を含み、それぞれの繊維層は実質的に平行配列に配列された複数の繊維を含み、前記繊維は約7g/デニール以上の靱性と約150g/デニール以上の引っ張り弾性率を有し;前記繊維は、その上にエラストマー母材組成物を有し、前記エラストマー母材組成物は、前記繊維の圧密化網状構造の約7重量%〜約15重量%を構成し;複数の交差して積み重ねられた前記不織繊維層は前記母材組成物で圧密化されて、前記繊維の圧密化網状構造を形成し;前記繊維の圧密化網状構造は、前部表面と後部表面とを有し:ここで前記繊維がアラミド繊維またはポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を含む場合、前記母材組成物が前記繊維の圧密化網状構造の少なくとも約11重量%を構成するもの;及び
b)前記の繊維からなる圧密化網状構造の前部表面と後部表面のそれぞれに結合した、少なくとも1層のポリマーフィルム
を含む、耐破片性材料。
【請求項2】
前記繊維が約15g/デニール以上の靱性と、約400g/デニール以上の引っ張り弾性率をもつ繊維を含む、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項3】
前記繊維が、約30g/デニール以上の靱性と、約1000g/デニール以上の引っ張り弾性率とを有する繊維を含む、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項4】
前記繊維が、長鎖ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、ポリベンザゾール繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアクリロニトリル繊維、液晶コポリエステル繊維、ガラス繊維及び炭素繊維からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項5】
前記繊維がポリエチレン繊維を含む、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項6】
前記母材組成物が、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、ポリスルフィドポリマー、ポリウレタンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリクロロプレン、可塑化ポリ塩化ビニル、ブタジエンアクリロニトリルエラストマー、ポリ(イソブチレン-コ-イソプレン)、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリエーテル、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、エチレンのコポリマー及びその組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項7】
前記母材組成物がポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレン-ブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項8】
前記母材組成物が前記繊維の圧密化網状構造の約7重量%〜約14重量%を構成する、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項9】
前記母材組成物が前記繊維の圧密化網状構造の約7重量%〜約13重量%を構成する、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項10】
前記母材組成物が前記繊維の網状構造の約7重量%〜約12重量%を構成する、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項11】
前記母材組成物が前記繊維の網状構造の約7重量%〜約11重量%を構成する、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項12】
前記母材組成物が前記繊維の網状構造の約11重量%〜約15重量%を構成する、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項13】
前記繊維がアラミド繊維またはポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維によって構成され、且つ前記母材組成物が前記繊維の網状構造約11重量%〜約15重量%を構成する、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項14】
前記ポリマーフィルム層が、全材料の約2重量%〜約25重量%を構成する、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項15】
前記ポリマーフィルム層が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ビニルポリマー、フルオロポリマー並びにそのコポリマー及びその組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項16】
前記ポリマーフィルム層が線状低密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項17】
前記繊維層のそれぞれが、それぞれの隣接する繊維層の長手繊維方向に対して90°の角度で交差して積み重ねられている、請求項1に記載の耐破片性材料。
【請求項18】
耐破片性材料を組み込んだ耐破片性物品であって、前記耐破片性材料が、
a)繊維からなる少なくとも一つの圧密化網状構造であって、前記繊維の圧密化網状構造が、複数の交差して積み重ねられた不織繊維層を含み、それぞれの繊維層は実質的に平行配列に配列された複数の繊維を含み、前記繊維は約7g/デニール以上の靱性と約150g/デニール以上の引っ張り弾性率を有し;前記繊維は、その上にエラストマー母材組成物を有し、前記エラストマー母材組成物は、前記繊維の圧密化網状構造の約7重量%〜約15重量を構成し;複数の交差して積み重ねられた不織繊維層は前記母材組成物で圧密化されて、前記繊維の圧密化網状構造を形成し;前記繊維の圧密化網状構造は、前部表面と後部表面とを有し:ここで前記繊維がアラミド繊維またはポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を含む場合、前記母材組成物は前記繊維の圧密化網状構造の少なくとも約11重量%を構成するもの;及び
b)前記の繊維からなる圧密化網状構造の前部表面と後部表面のそれぞれに結合された少なくとも1層のポリマーフィルムを含む、前記耐破片性物品。
【請求項19】
結合された配列で組み立てられた繊維の複数の圧密化網状構造を含む、請求項18に記載の耐破片性材料。
【請求項20】
結合されていない配列で組み立てられた繊維の複数の圧密化網状構造を含む、請求項18に記載の耐破片性材料。
【請求項21】
前記の繊維からなる複数の圧密化網状構造が接合されている衣服を含む、請求項18に記載の耐破片性材料。
【請求項22】
前記衣服が、前記の繊維からなる複数の圧密化網状構造が接合されているチョッキを含む、請求項18に記載の耐破片性材料。
【請求項23】
前記母材組成物が、前記繊維の網状構造の約7重量%〜約11重量%を構成する、請求項18に記載の耐破片性材料。
【請求項24】
前記母材組成物が、前記繊維の網状構造の約11重量%〜約15重量%を構成する、請求項18に記載の耐破片性材料。
【請求項25】
前記繊維がアラミド繊維またはポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維によって構成され、且つ前記母材組成物が前記繊維の網状構造の約11重量%〜約15重量%を構成する、請求項18に記載の耐破片性材料。
【請求項26】
前記繊維層のそれぞれが、それぞれの隣接する繊維層の長手繊維方向に対して90°の角度で交差して積み重ねられている、請求項18に記載の耐破片性材料。
【請求項27】
耐破片性材料の製造法であって、
a)少なくとも二つの繊維層において、各繊維層が、実質的に平行な一方向性配列となるように複数の繊維を配列することによって形成され;前記繊維は約7g/デニール以上の靱性と、約150g/デニール以上の引っ張り弾性率とを有し;前記繊維はその上に結合されたエラストマー母材組成物を有するように前記少なくとも二つの繊維層を形成すること;
b)前記繊維層において、各層の繊維の一方向性配列が、それぞれの隣接する繊維層の長手繊維方向に対して平行でない角度で交差して積み重なるように、前記繊維層を配列すること;
c)前記交差して積み重ねられている層を、繊維の圧密化網状構造を形成するのに十分な条件下で結合し、前記繊維の圧密化網状構造が前部表面と後部表面とを有し、ここで前記母材組成物が前記繊維の圧密化網状構造の約7重量%〜約15重量%を構成し、前記繊維がアラミド繊維またはポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維を含む場合、前記母材組成物は前記繊維の圧密化網状構造の少なくとも11重量%を構成するようにすること;及び
d)ポリマーフィルムの少なくとも一つの層を前記繊維の圧密化網状構造の前記前部表面と後部表面とに結合させること、
を含む、前記方法。
【請求項28】
前記母材組成物が前記繊維の圧密化網状構造の約7重量%〜約11重量%を構成する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記母材組成物が前記繊維の圧密化網状構造の約11重量%〜約15重量%を構成する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記繊維がアラミド繊維またはポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維によって構成され、且つ前記母材組成物が前記繊維の圧密化網状構造の約11重量%〜約15重量%を構成する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記繊維層のそれぞれが、それぞれの隣接する繊維層の長手繊維方向に対して90°の角度で交差して積み重ねられている、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
a)繊維からなる少なくとも一つの圧密化網状構造であって、前記繊維の圧密化網状構造が、複数の交差して積み重ねられた繊維層を含み、それぞれの繊維層は配列された複数の繊維を含み;前記繊維は約7g/デニール以上の靱性と約150g/デニール以上の引っ張り弾性率を有し;前記繊維は、その上にエラストマー母材組成物を有し、前記エラストマー母材組成物は、前記繊維の圧密化網状構造の約7重量%〜約15重量%を構成し;複数の交差して積み重ねられた繊維層は前記母材組成物で圧密化されて、前記繊維の圧密化網状構造を形成し;前記繊維の圧密化網状構造が、前部表面と後部表面とを有しているもの;及び
b)繊維の前記圧密化網状構造の前部表面と後部表面のそれぞれに結合した少なくとも1層のポリマーフィルムを含む、前記耐破片性物品。
【請求項33】
請求項32に記載の耐破片性材料を含む物品。

【公表番号】特表2009−517623(P2009−517623A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542390(P2008−542390)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/044831
【国際公開番号】WO2007/089317
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】