説明

把持装置

【課題】 本発明は、小型で、耐久性および位置決め精度がよく、数種類の長尺円柱状ワークが把持できる把持装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 下方が開放された円筒状のボディ1と、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダ2と、スライダのテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材5を同心円状に配置するとともに、複数の爪部材が離反する方向に負荷のかかるスプリング6,7を配置し、独立した複数の爪部材が長尺円柱状ワーク9をボディ内部の中空部で把持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長尺円柱状のワークを把持するのに適した把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺円柱状のワークを把持する方法として様々な方法が知られている。
【0003】
特開平8−229868号公報の様に円筒状のフランジの内周にゴムシートなどの弾性体を固定し、フランジとゴムシートで形成された圧力室に圧縮空気を送り込むことで弾性体を変形させ、ワークを把持する方法がある。
【0004】
ただし、この方法は弾性体を変形させて把持するため、位置決め精度が悪く、弾性変形量のバランスが狂い、ワークの位置ズレや傾きが発生することがある。
【0005】
また、ゴムの変形や劣化により破れてしまうなど、耐久性に問題がある。
【特許文献1】特開平8−229868号公報
【0006】
他の従来例として、特開平3−190611号公報の様にコレットを使用した方法が用いられている。
【0007】
コレットは、スリット付き円筒状材にテーパ面を形成したものであり、ワーク形状に合わせて内面を形成し、弾性変形させて把持する方法である。
【0008】
この方法によれば位置決め精度良く把持できるが、主に金属部品からなるコレットを弾性変形させて把持するため、特定のワーク寸法しか把持できない。
【0009】
そのため、ワーク寸法が違うものを把持するためには、そのワーク寸法にあわせたコレットを新たに用意しなければならない。
【特許文献2】特開平3−190611号公報
【0010】
さらに他の方法として、流体圧力を使用したエアーチャックや電気により駆動するモーターハンドの様なチャック装置を使用して把持する方法がある。
【0011】
これらのチャックは、流体圧力やモーターなどの推力を変換し、複数のスライド部材を同期して開閉させる装置であり、スライド部材にワークの形状にあわせて形成した爪部材を固定し、爪部材でワークを把持する方法が一般的にとられている。
【0012】
ただし、スライド部材に爪部材を固定して把持するため、ワークと爪部材はチャックよりも離れた位置でクランプすることになるので、スライド部のガイドのクリアランスが摩耗などにより大きくなると、爪部材がワークをクランプしたときに傾いてしまい、ワークの位置決め精度が悪くなる現象が発生する。
【0013】
さらに、チャックの大きさが大きく、爪部材が長手方向に付くことで長さが長くなってしまい、重量も重くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、小型で、耐久性および位置決め精度がよく、数種類の長尺円柱状ワークが把持できる把持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記した課題を解決する手段として、下方が開放された円筒状のボディと、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダと、スライダのテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材を同心円状に配置するとともに、複数の爪部材が離反する方向に負荷のかかるスプリングを配置し、独立した複数の爪部材が長尺円柱状ワークをボディ内部の中空部で把持するものである。
【0016】
また、下方が開放された円筒状のボディと、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダと、スライダのテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材を同心円状に配置するとともに、複数の爪部材が離反する方向に負荷のかかるスプリングを配置し、ボディの上方に配置した操作プレートと、ボディの内周面と摺動して上下にスライドするスライダを、ボディ上面を貫通するシャフトで連結し、ボディと操作プレートを離反する方向に圧縮されて挿入されたスプリングにより把持するものである。
【0017】
さらに、下方が開放された円筒状のボディと、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダと、スライダのテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材を同心円状に配置するとともに、複数の爪部材が離反する方向に負荷のかかるスプリングを配置し、ボディの上方に配置したシリンダと、ボディの内周面と摺動して上下にスライドするスライダをピストンに連結し、空気圧力により把持するものである。
【発明の効果】
【0018】
上記構成にすることにより、独立した複数の爪部材が長尺円柱状ワークをボディ内部の中空部で把持するので、全長が長くなることがなく、薄肉円筒状部品に形成されているため外形も小さく、小型に構成できる。
【0019】
また、それぞれの部品が金属部品で構成されており、摩耗による爪部材の傾きが発生しないので位置決め精度が良く、耐久性も良い。
【0020】
爪部材は中空部の内側に長く配置することができるので、長尺円柱状ワークとの接触面が長くなり、長尺円筒状ワークの把持に適している。
【0021】
さらに、複数の爪部材がスライダのテーパ面に勘合して放射状に配置されているので、コレットに較べて移動量が大きく、ワーク寸法の違う複数の長尺円柱状ワークを同じ把持装置で把持することができる。
【0022】
請求項2の方法では、把持はスプリングの弾性力で行うため、搬送途中でエアー切れなどによるワークの落下を防止することができ、ワーク解放の時だけ駆動源を用いるだけで良い。
【0023】
また、駆動源を外部または一体のどちらにも設定できるので、その装置にあわせた様々な装置構成に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0025】
図1に示すように本実施例の把持装置は、下方が開放された円筒状のボディ1と、内周面にテーパ面8が形成された円筒状のスライダ2と、スライダ2のテーパ面8に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材5を同心円状に配置し、ボディ1の上方に配置した操作プレート4と、ボディ1の内周面と摺動して上下にスライドするスライダ2を、ボディ1上面を貫通するシャフト3で連結する。
【0026】
ボディ1と操作プレート4の間には、離反する方向に負荷がかかるスプリングA6を配置するとともに、爪部材5同士が離反する方向に負荷のかかるスプリングB7を配置されている。
【0027】
次に動作について説明する。
【0028】
ボディ1と操作プレート4の間にスプリングA6が配置されているため、操作プレート4にシャフト3で連結されたスライダ2は上方に移動しようとする力が働いている。
【0029】
そのため、スライダ2の内周面に形成されたテーパ面8と勘合する3個の爪部材5は、スプリングB7を圧縮しながら中心方向に移動している。
【0030】
次に、図4に示すように、プッシャー14などにより外部負荷が操作プレートにかかった場合、操作プレート4にシャフト3で連結されたスライダ2は下方に移動するため、スライダ2のテーパ面8にあわせて爪部材5は、スプリングB7の力で開放方向に移動する。
【0031】
この状態でワーク9を把持装置の中空部に挿入し、プッシャー14を上昇させると、スプリングA6の力により操作プレート4が上昇し、スライダ2のテーパ面8に勘合する爪部材5はワーク9の方向に移動し、把持を行う。
【0032】
このとき、図6に示すようにワーク9を把持しているが、図1に示す閉状態になる前に把持を行うことで、常にスプリングA6の力がワーク9にかかっているので確実にクランプすることができる。
【実施例2】
【0033】
他の実施例として図7に示すように、下方が開放された円筒状のボディ1と、内周面にテーパ面8が形成された円筒状のスライダ2と、スライダ2のテーパ面8に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材5を同心円状に配置し、ボディ1の上方に配置したシリンダ154と、ボディ1の内周面と摺動して上下にスライドするスライダ2を、ボディ1上面を貫通するピストン16で連結する。
【0034】
シリンダ15とピストン16で圧力室を形成し、空気圧力によりピストン16を上下に作動させることにより、スライダ2を上下させる構成である。
【0035】
動作については、操作プレート4とシャフト3とスプリングA6の代わりにシリンダ15とピストン16に変わっただけであるため、省略する。
【0036】
なお、シリンダは復動式の他に単動式でもよい。
【0037】
テーパ面の形状については、円錐状のほか、円錐状など、要旨を満足する形状なら有効である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
上記把持装置は、長尺円柱状ワークを把持するのに適した把持装置であるが、搬送用のほか、治具などの固定装置として使用することも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施例の閉状態を示す断面図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】本実施例の閉状態を示す上面図
【図4】本実施例の開放状態を示す断面図
【図5】図4のB−B断面図
【図6】本実施例の把持状態を示す断面図
【図7】第2実施例の把持状態を示す断面図
【図8】従来例を示す断面図
【図9】他の従来例を示す説明図
【符号の説明】
【0040】
1 ボディ
2 スライダ
3 シャフト
4 操作プレート
5 爪部材
6 スプリングA
7 スプリングB
8 テーパ面
9 ワーク
10 フランジ
11 ゴムシート
12 チャック
13 スライド
14 プッシャー
15 シリンダ
16 ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、下方が開放された円筒状のボディと、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダと、スライダのテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材を同心円状に配置するとともに、複数の爪部材が離反する方向に負荷のかかるスプリングを配置し、独立した複数の爪部材が長尺円柱状ワークをボディ内部の中空部で把持することを特徴とする把持装置。
【請求項2】
下方が開放された円筒状のボディと、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダと、スライダのテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材を同心円状に配置するとともに、複数の爪部材が離反する方向に負荷のかかるスプリングを配置し、ボディの上方に配置した操作プレートと、ボディの内周面と摺動して上下にスライドするスライダを、ボディ上面を貫通するシャフトで連結し、ボディと操作プレートを離反する方向に圧縮されて挿入されたスプリングにより把持することを特徴とする把持装置。
【請求項3】
下方が開放された円筒状のボディと、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダと、スライダのテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材を同心円状に配置するとともに、複数の爪部材が離反する方向に負荷のかかるスプリングを配置し、ボディの上方に配置したシリンダと、ボディの内周面と摺動して上下にスライドするスライダをピストンに連結し、空気圧力により把持することを特徴とする把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−334746(P2006−334746A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164892(P2005−164892)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(591113024)株式会社近藤製作所 (33)
【Fターム(参考)】