説明

把持装置

【課題】被把持物の重量が局所的に集中するのを防止できるハンドリングマシン用の把持装置を提供する。
【解決手段】ハンドリングマシン1のアーム20の先端部に取り付けられた把持装置30は、アーム20の先端に傾動可能に取り付けられる第一部材31と、この第一部材31に回転可能に取り付けられる第二部材51とを備えており、第二部材51には、少なくとも一対の支持片55,55が設けられており、一対の支持片55,55は、被把持物(鋼製セグメント)に設けられた一対のプレートをその内側から押圧することで被把持物を把持するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドリングマシン用の把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事や建築工事に用いられるハンドリングマシンとしては、アームの先端に設けられた把持アームで被把持物を挟持する構成のものが知られている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−314880号公報
【特許文献2】特開2001−82095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のハンドリングマシンでは、一対の把持アームで一枚のプレートを挟持しているので、被把持物の重量が一枚のプレートに局所的に集中して作用するので好ましくないという問題があった。
【0005】
このような観点から、本発明は、ハンドリングマシンにおいて被把持物の重量が局所的に集中するのを防止できる把持装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するための請求項1に係る発明は、ハンドリングマシンのアームの先端部に取り付けられる把持装置において、前記アームの先端に傾動可能に取り付けられる第一部材と、この第一部材に回転可能に取り付けられる第二部材とを備えており、前記第二部材には、少なくとも一対の支持片が設けられており、一対の前記支持片は、被把持物に設けられた一対のプレートをその内側から押圧することで前記被把持物を把持することを特徴とするハンドリングマシンの把持装置である。
【0007】
前記のような構成によれば、被把持物を一対のプレートを介して把持するので、被把持物の重量が分散されて局所的に集中しない。また、一対の支持片を、被把持物に設けられた一対のプレート間に挿入してその内側から押圧して、被把持物を把持しているので、把持装置が被把持物の外側に突出することなく、容易に固定することができる。
【0008】
そして、請求項2に係る発明は、一対の前記支持片のうち、一方の前記支持片は、前記第二部材に固定されており、他方の前記支持片は、一方の前記支持片に対して近接離反可能に設けられていることを特徴とする。このような構成によれば、支持片の位置合わせを容易に行えるとともに、支持片の移動機構の簡素化を達成できる。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、前記支持片には、前記プレートに形成された貫通孔に挿入される突起部が形成されていることを特徴とする。このような構成によれば、支持片でプレートを係止できるので、被把持物のずれを防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のハンドリングマシンの把持装置によれば、被把持物の重量が局所的に集中するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る把持装置を示した側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る把持装置を示した上面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る把持装置を示した正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る把持装置をアームに設置して上方を向いた状態を示した側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る把持装置をアームに設置して下方を向いた状態を示した側面図である。
【図6】鋼製セグメントを示した斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る把持装置で鋼製セグメントを把持する状態を示した図であって、(a)は支持片の挿入工程を示した側面図、(b)は固定支持片の係止工程を示した側面図、(c)は移動支持片の係止工程を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るハンドリングマシンの把持装置を、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図4に示すように、ハンドリングマシン1は、例えば、鋼製セグメント2(図6参照)等の被把持物を固定して、所望の位置に移動させて組み付けるためのものである。ハンドリングマシン1は、自走式車両10と、この自走式車両10に設けられたアーム20と、このアーム20の先端部に取り付けられた把持装置30とを備えて構成されている。
【0013】
鋼製セグメント2は、例えば、図6に示すように、一面が開放された直方体の箱形状を呈しており、その内側に補強用のプレート3が複数段形成されている。各プレート3は、互いに平行に配置されている。各プレート3には、貫通孔3aが形成されている。貫通孔3aは、円形に形成されている。貫通孔3aは、両側の壁面2a,2aからそれぞれ等しい距離離間した位置の二箇所にそれぞれ形成されている。なお、図6で示した鋼製セグメント2の形状は、一例であって、この形状に限定する趣旨ではない。
【0014】
自走式車両10は、走行部11上に旋回部12を設けてなる。旋回部12には、運転室ユニット12aや油圧パワーユニット12bが設けられている。旋回部12には、アーム20がマスト15を介して取り付けられている。アーム20およびマスト15は、旋回部12と共に旋回する。マスト15は、内筒15aと外筒15bと油圧シリンダ15cとを備えており、伸縮可能に構成されている。内筒15aは、旋回部12に立設固定されており、外筒15bは、内筒15aに対して上下移動可能に設けられている。油圧シリンダ15cは、上下方向に延在して内筒15a内に設けられ、その一端が外筒15bに連結されている。油圧シリンダ15cが伸縮することで、外筒15bが上下移動する(図4では油圧シリンダ15cが伸長した状態を示している)。
【0015】
アーム20は、マスト15の頂部に傾動可能に取り付けられている。アーム20は、水平方向に延在するピン16を介してマスト15に連結されている。アーム20とマスト15の間には油圧シリンダ17が設けられており、油圧シリンダ17の伸縮によってアーム20が上下方向に傾動する(図4では油圧シリンダ17が伸長した状態を示している)。
【0016】
アーム20は、内筒20aと外筒20bと油圧シリンダ20cとを備えて、伸縮可能に構成されている。外筒20bが、マスト15に連結されており、内筒20aが、外筒20bの長手方向に沿って移動可能に設けられている。油圧シリンダ20cは、アーム20の長手方向に略沿って延在して内筒20a内に設けられ、その一端が内筒20aに連結されている。油圧シリンダ20cが伸縮することで、アーム20の長さが伸縮する(図4では油圧シリンダ20cが伸長した状態を示している)。内筒20aの先端には、把持装置30を連結するためのブラケット21が設けられている。
【0017】
以上のような構成によれば、例えば、図5に示すように、地面上に置いた被把持物(図示せず)を把持するときは、各油圧シリンダ15c,17,20cを縮退させて、把持装置30を下に向けることができる。
【0018】
把持装置30は、図4に示すように、第一部材31と第二部材51とを備えている。第一部材31は、アーム20の先端のブラケット21に傾動可能に取り付けられている。第一部材31は、水平方向に延在するピン22を介してブラケット21に連結されている。第一部材31とアーム20の間には油圧シリンダ23が設けられており、油圧シリンダ23の伸縮によって第一部材31を含む把持装置30が上下方向に傾動する。油圧シリンダ23は、リンク24を介して第一部材31に接続されている。
【0019】
図1および図2に示すように、第一部材31は、ブラケット21(図4参照)に連結される基端部31aと、基端部31aに対して左右に揺動可能な揺動部31bとを備えている。揺動部31bは、ピン32を介して基端部31aに連結されている。ピン32は、上下方向に延在して基端部31aおよび揺動部31bの上下にそれぞれ設けられている。2つのピン32は、同軸上に配置されている。基端部31aと揺動部31bの間には油圧シリンダ33が設けられている。油圧シリンダ33は、第一部材31の左右幅方向両側にそれぞれ設けられている(図2参照)。油圧シリンダ33は、シリンダ部33aが基端部31aにピン結合され、ピストンロッド部33bの先端部が揺動部31bにピン結合されている。左右一対の油圧シリンダ33,33は、一方が伸長するとともに他方が縮退し、その動作によって、揺動部31bがピン32を中心として左右に揺動(首振り)する。
【0020】
第二部材51は、箱状の回転フレーム51aを備えている。回転フレーム51aは、第一部材31の揺動部31bに回転可能に取り付けられている。揺動部31bには、外輪34が設けられ、回転フレーム51aには、内輪52が設けられている。内輪52は、外輪34の内周に回転可能に取り付けられている。内輪52の内周には内歯歯車(図示せず)が形成されている。揺動部31bには、回転用モータ35が設けられている。回転用モータ35は、その出力軸に取り付けられたピニオン35aが内輪52の内歯歯車に噛合するように配置されている。回転用モータ35を回転させることで、外輪34の内側で内輪52が回転するので、第二部材51の全体が回転する。
【0021】
図1乃至図3に示すように、回転フレーム51aには、一対の支持片55,55が設けられている。支持片55,55は、被把持物である鋼製セグメント2(図6参照)に設けられた一対のプレート3,3間に挿入され、その内側から一対のプレート3,3を押圧する。支持片55,55は、図1の状態において上下に配置されている。なお、支持片55,55の配置方向は、プレート3,3の離間方向(図6参照)であって、第二部材51が回転すると上下方向から変化する。本実施形態では、正面視で左右に一対ずつの、二対の支持片55が設けられている(図3参照)。なお、正面視で左右の「左右」とは図3の状態における左右方向であって、プレートの幅方向(図6参照)である。第二部材51が回転するとその方向は変化する。
【0022】
一対の支持片55,55のうち、一方の支持片55(図1において下側の支持片55)は、回転フレーム51aに固定されており、他方の支持片55(図1において上側の支持片55)は、固定された一方の支持片55に対して近接離反可能に設けられている。なお、以下において、固定された支持片と移動可能の支持片とを区別するときは、固定された支持片を「固定支持片55a」と称し、移動可能の支持片を「移動支持片55b」と称し、区別しないときは、単に「支持片55」と称する。固定支持片55aは、回転フレーム51aの表面に突設された固定ブラケット52aに固定されている。移動支持片55bは、回転フレーム51aの内部から外側に突出する移動ブラケット52bに固定されている。図3に示すように、回転フレーム51aの表面には、移動支持片55bの移動方向に延びる長孔53が形成されている。移動ブラケット52bは、長孔53に挿通されており、回転フレーム51aの内部から外側に延出している。回転フレーム51aの内部には、油圧シリンダ54が設けられている。油圧シリンダ54は、移動支持片55bの移動方向に沿って配設されている。油圧シリンダ54は、シリンダ部54aが固定支持片55a側に位置して配置されており、ピストンロッド部54bが固定支持片55aから離反する方向に出没するようになっている。ピストンロッド部54bの先端には、移動ブラケット52bの内側端部が連結されている。
【0023】
支持片55は、図2および図3に示すように、一対の片持ちプレート56a,56aと接続プレート56bと当接プレート56cとを備えてなる。片持ちプレート56aは、固定ブラケット52aまたは移動ブラケット52bを両側から挟むように配置され、ボルト(図示せず)によって固定ブラケット52aまたは移動ブラケット52bに固定される。接続プレート56bは、一対の片持ちプレート56a,56a間に架け渡される。当接プレート56cは、プレート3に当接する部位であり、接続プレート56bの表面に重ねて配置されている。当接プレート56cの表面は、プレート3との摩擦力を高めるために、目荒らし加工されている。当接プレート56cの表面には、突起部57が設けられている。一対の支持片55,55に設けられた突起部57は、それぞれが互いに外側を向いて突出するように配置されている。突起部57は、鋼製セグメント2のプレート3に形成された貫通孔3aに挿入される部位であり、先端が縮径した円柱形状を呈している。
【0024】
次に、前記構成のハンドリングマシン1の把持装置30を用いて鋼製セグメント2を把持する作業工程を、図7を参照しながら説明する。まず、図7の(a)に示すように、移動支持片55bを固定支持片55a側に近接させた状態で、移動支持片55bと固定支持片55aを、鋼製セグメント2のプレート3,3間に挿入する(支持片挿入工程)。
【0025】
次に、図7の(b)に示すように、把持装置30全体を固定支持片55aがある側に移動させ、固定支持片55aの突起部57を一方のプレート3の貫通孔3aに挿入させる(固定支持片係止工程)。これと同時に、固定支持片55aの当接プレート56cの表面を一方のプレート3の表面に面接触させる。
【0026】
続いて、図7の(c)に示すように、移動支持片55bを、固定支持片55aから離反させ、移動支持片55bの突起部57を他方のプレート3の貫通孔3aに挿入させる(移動支持片係止工程)。これと同時に、移動支持片55bの当接プレート56cの表面を他方のプレート3の表面に当接させる。このとき、移動支持片55bは、所定の圧力で他方のプレート3を押圧する。この結果、一対の支持片55,55が所定の圧力で一対のプレート3,3を内側から押圧することとなる。これによって、各支持片55の当接プレート56cとプレート3との間に摩擦力が発生し、鋼製セグメント2が把持される。また、当接プレート56cの表面は目荒らしされているので、摩擦力が向上する。さらに、突起部57が貫通孔3aに挿入されているので、鋼製セグメント2が係止され、固定強度が高められ、鋼製セグメント2のズレが防止される。
【0027】
鋼製セグメント2を把持した後は、ハンドリングマシン1の各部を適宜作動(自走式車両10の走行、旋回部12の旋回、マスト15の伸縮、アーム20の傾動・伸縮、把持装置30の傾動、揺動部31bの揺動、第二部材51の回転など)させ、鋼製セグメント2を設置位置まで搬送して設置する。このとき、ハンドリングマシン1の各部の移動に合わせて、第一部材31が上下に傾動可能および左右に揺動可能であるとともに、第二部材51が第一部材31に対して回転可能であるので、鋼製セグメント2を設置するに際して、位置決めの微調整を容易に行うことができる。そして、鋼製セグメント2を他の鋼製セグメント(図示せず)固定した後に、前記各工程を逆順に行うことで、把持を解除する。また、前記ハンドリングマシン1によれば、把持装置30の届く範囲であれば、鋼製セグメント2を種々の回転角度および姿勢で把持することができる。
【0028】
前記したように、本実施形態に係る把持装置30によれば、鋼製セグメント2を一対のプレート3,3を介して把持しているので、鋼製セグメント2の重量が分散されて支持片55に伝達される。したがって、重量が1枚のプレート3に局所的に集中しない。また、一対の支持片55,55でプレート3,3の内側から押圧して、鋼製セグメント2を固定しているので、プレート3の外側に鋼製セグメント2の外周プレートが近接していて、外側のスペースが小さい場合であっても、プレート3,3間のスペースは確保できる。よって、支持片55の挿入スペースを確保でき、容易に固定することができる。
【0029】
また、本実施形態に係る把持装置30では、一対の支持片55,55のうち、一方を固定支持片55aとし、他方を移動支持片55bとしているので、支持片55の移動装置の簡略化を達成できる。
【0030】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、前記実施形態に係る把持装置30では、左右に二対の支持片55,55を備えているが、これに限定されるものではない。例えば、三対以上の支持片を設けてもよいし、幅の広い支持片であれば一対であってもよい。また、前記実施形態では左右の支持片55,55の離間距離は一定であるが、離間距離を調整できるように、支持片55,55を左右方向にも移動できるように構成すれば、種々のサイズの鋼製セグメントに対応することができ、汎用性が高くなる。
【0031】
また、図6で示した鋼製セグメント2の形状は、前記実施形態の形状に限定されるものではない。例えば、貫通孔の形状は円形に限定されず、他の形状であってもよい。また、板厚が厚い場合には、孔が貫通していなくてもよく、突起部57が挿入可能な深さ(例えば40mm程度)を有する凹部(ザグリ穴)が形成されていてもよい。さらには、貫通孔または凹部が形成されたプレートが、内側あるいは外周部に二枚以上設けられた鋼製セグメントであれば、前記ハンドリングマシン1にて把持することができる。特に、鋼製セグメントの寸法が小さい場合には、外周部のプレートに貫通孔または凹部が直接形成される。また、貫通孔が形成されたプレートがコンクリート充填の際の型枠として利用される場合は、支持片55が位置する面とは逆側(外側)の面に、プレートを溶接して蓋を設けるようにした鋼製セグメントが用いられる。
【符号の説明】
【0032】
1 ハンドリングマシン
2 鋼製セグメント(被把持物)
3 プレート
3a 貫通孔
10 自走式車両
20 アーム
30 把持装置
31 第一部材
51 第二部材
55 支持片
55a 固定支持片
55b 移動支持片
57 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドリングマシンのアームの先端部に取り付けられる把持装置において、
前記アームの先端に傾動可能に取り付けられる第一部材と、この第一部材に回転可能に取り付けられる第二部材とを備えており、
前記第二部材には、少なくとも一対の支持片が設けられており、
一対の前記支持片は、被把持物に設けられた一対のプレートをその内側から押圧することで前記被把持物を把持する
ことを特徴とする把持装置。
【請求項2】
一対の前記支持片のうち、一方の前記支持片は、前記第二部材に固定されており、他方の前記支持片は、一方の前記支持片に対して近接離反可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記支持片には、前記プレートに形成された貫通孔に挿入される突起部が設けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−229589(P2012−229589A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99991(P2011−99991)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】